中古文における助詞「を」について : その解釈をめぐって
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(2) 2. 中古文 における助詞「 を」について そ もそ も格助詞 とか接続助詞 とかは,文 法機 能 に 関す る こ とか らで あ るか. ら,現 代語 の「 ヲ」 に あた らな いか らとい う理 由で 格助詞 か ら除外す るとい う こ とはで きな い。 た とえ,ど ん な語 に置 きかえ よ う とも,ま た,現 代語 と して適 当な訳 がで きな くとも,原 文 の「 を」 が対象語 格を示 して い るので あれ ばや は り格助詞 で あ ると した い。 ここで は中古文 の源氏物語 ,特 に桐壺 を中心 と して 問題 にな って い る「 を」 2)が 言われ るよ うに,こ の に あた ってみ よ うと思 うので あ るが,今 泉忠 義氏 時代 の文章 を あ ま りに こ まか く捉 え て「今 の人 が あ ま りに論 理 的 にかた ず け よ うと し過 ぎると ころか ら」 いろい ろの問題 が起 るので あ って,あ ま り論 理 的論 理 的 とい う こ とで考え るのはかえ って正 しい解釈 と言 えな いか も知れ な い, とい うこ とは十分考 えておかね ばな らな いだろ う。 また,山 崎良幸氏. 3)の. 次 の説 は重要 で あ る。 「 同一 の形態 において は機能. は同 じで あ るはず だ,と い うのは,言 語 が表現 で あ る限 り,言 語 その ものの 要請 で あろ うと思 うので あ る。 そ うで な けれ ば,わ れわれ は言語 によ って誤 りな く思 想を表現 し,ま た理 解す る こ とは望 みがた いで あろ うと思 う」 と. ,. 三 氏 それぞれの面 において 大切 なお言葉 と思 われ る。 この こ とを念頭 にお きつつ 以下 を進 めてい きた い。. 2 「 を」 の用法 を見 るに先立 ち,桐 壺 の文 につ いて,そ の文構造 の特徴 を考え ておかな けれ ばな らな い。 それ には次 の二つ の こ とが言 え るか と思 う。 その一 つ は,長 文 が多 い が文末 の述 部 が その途 中 にあ る述部 を直接 に受 け る こ とが多 い とい う こ と。 も う一 つ は,時 間的 に異 るもの,あ るいは,立 場 の異 るものを一文 に入 れ 2)「 源氏物語 の解釈 と文法上の問題点」『講座解釈 と文法 3』. 3)『 日本語 の文法機能 に関す る体系的研究』.
(3) 鎌. 田 良. 二. て しって い るため,そ れを括弧で括 っていかね ばな らな い文 が 多 い とい う こ とで あ る。 まず,は じめの方 の例 と して 次 の よ うな文 が あ る。 父 の大納言 は亡 くな りて母北 の方 なん,い に しへ の人 の 由あ る人 にて, 親 うち具 しさ しあた りて世 のお ぼえ花 やかな る御 方方 に も劣 らず,何 事 の 儀式 を ももて な し給 ひ けれ ど,取 立 てて はか ば しき御後見 しな けれ ば,事 とあ る時 は,な ほ拠所 な く心細 げな り。 この文 は まず,「 劣 らず―一 もてな し給 ひ けれ ど一一 な けれ ば一一 時 は一一 心 細 げな り」 とい う形 にな ってい る。 さ らに極 端 な言 い方 をすれ ば,「 劣 らず」 が 直接 に「 もてな し給 ひ けれ ど」 に続 くと見 て よい。. や 一 か 花. I:詈 I[[〉. ひ な し ら ど れ ずて 給 け 劣 。 ,も. さ らに この「 もてな し給 ひ けれ ど」 は文末 の D己 ヽ 細 げな り」にかか る。 「 取 立 てて一一 御後見 しな けれ ば」 は,そ の原 因理 由 につ いての説 明 と して 挿 入 された もので あ る。 これ も「 な けれ ば一一 心 細 げな り」 と直接 に続 く。 「 事 とあ る時 は」 は,い つ も心細 げな りで はな く,特 に,事 とあ る時 は,で. あるか ら,こ れ も挿入 されたものである。 この こ とか ら,こ の文 は次 の よ うにな る。 劣 らず一― もて な し給 ひ けれ ど\ 一― な けれ ば (上 ノ原 因理 由)一 → 心 細 げな り 一一 時 は (特 ニ コ ノ時 ニハ )/ しか し,こ の こ とは広 く解すれ ば源 氏物語 ,中 古文 の特色 とい うよ りは, 連 用修飾句 を多 く含 んだ文 の特色 で あ るとも言 え るか と思 うが,解 釈上 この よ うに 考えな けれ ば 意 味が 複雑 にな りす ぎる文 が 多 い とい う こ とは 言 え よ う。 「 を」 を 含 む文 を解釈す る前提 と して この形 を考えてお くので あ る..
(4) 4. 中古文 における助詞「 を」について. この形 で「 を」 を含 ん だ例 と して次 の文 を あ げ る。 命婦 は,ま だ大殿籠 らせ 給 は ざ りけ るをあはれ に見 奉 る。. 4). 御前 の壺前栽 のい とお もしろ き盛 りな るを御覧 ず るや うにて,忍 びや か に. ,. 心 に くき限 りの 女房 四五人 さぶ らはせ 給 ひて,御 物語 せ させ給 ふ な りけ り。 この 頃 あけ くれ御覧 ず る長恨歌 の御絵 ,帝 子 院 の画 かせ給 ひて,伊 勢 ・ 貫 之 によませ 給 へ 大和言葉を も,唐 土 の詩 を も,唯 その筋 をのぞ ま くらご とにせ させ給 ふ 。. 今泉忠義氏は「切れ るのか切れないのか,ど ち らか にきめな くては承知で きないとい う態度がよ くないので ある」 とし, この文 についても「『 まだ大 殿 ごもらせ給はざりける帝をあはれ に見奉 る』 と考えれば,な るほど論理 的 で,今 の人 には賛成せ られそ うで あるが,平 安時代 の表現 として,そ うい う 気持 で読んで受 けとれ るかど うかで ある」 とし ,. さらに「切れ そ うで も切れないで, しきりに『 を』を繰 りかえ して行 くの が平安 の 女房文学 の 特徴 のある表現 で もあ りそ うに 思われ ることか ら い う な らば「『帝はおやすみ に もな ってい らっしゃらなか ったので』 でよ く「 『真 盛 りに見頃であるので』 でよ く,今 の人 としてそれで不足 な ら『 真盛 りに見 頃で あるので,そ れを』 と補 って通す とい う,こ んな態度 をとりたいので あ る」 (文 中 の下線 は鎌 田)と 述 べ てお られ る。 ここで ,私 は,ま ず,は じめ の文 を 今泉氏 の よ うに「 一一 給 は ざ りけ る帝 を」 とす るので はな く,「 大殿籠 らせ 給 は ざ りける (コ ト)を ,一一 あ はれ に 見 奉 る」 と したい。 帝 は更衣 を亡 くした悲 しさのあ ま りに,あ るいは,命 婦 が更衣 の里 か ら帰 っ て くるのを待 ってお られ て「 大殿籠 らせ 給 は ざ りける」 で あ る。そんな帝 を. ,. 命婦 は「 あはれ に見 奉 る」 で あ って,「 ―一 ざ りける (ソ ノ状態 )を 」 そ し て ,そ の状態 を通 して感 じ られ る こ とを「 あはれ に見 奉 る」 で あ って これを 「 ざ りけ るので」 とす る方 がかえ って理 屈 っぽ いので はな い か。 4)「 大殿籠 らせ給はざりけ るを」が河内本 では「 と」になっている。.
(5) 鎌. 田. 良. 二. 要 す るに「 命 婦 は,一 ――― を,一 ―― 見 奉 る」 で あ る。 第 二 文 の「 お も しろ き盛 りな るを御覧 ず る」 もそ の まま「御覧ず る」 の対 象 を示 す「 を」 とと ってお きたぃ。 これを「 盛 りな るので」 とは と りた くな い。 この文 もす べ て文末 に直結 して いて次 の よ うにな る。. T一 御覧 す るや うにて 、. ゝ 忍 びやか に一→ 御物語 せ させ給 ふ な りけ り. ―一さぶ らはせ給ひそ/々 同 じよ うに先 の第 一 文 も次 の よ うにな る。 命婦 は 、 ゝ ―一 ざ りけるを一→ 見 奉 る あはれ に / 第 二 文 の「 御物語せ させ給 ふ な りけ り」 の Fけ り」 は,や は り,「 は じめて 物 を発 見 した 時 の驚 きの気持 を あ らわす」 とい う説 に従 って,命 婦 の発見 の 気持 をあ らわす ので あ るとみ る。即 ち,命 婦 が更衣 の里 か ら帰 ってみ ると帝 は「 まだ大 殿籠 らせ 給 はざ りける」 で あ って. (ソ. レヲ)「 あはれ に見 奉 る」. そ こで, 次 に, 帝 は何 を してお られたか, それ は 「 御物語 せ させ給 ふ な りけ り」 で あ った。 この二 つ ,「 見 奉 る」 と「 一 な りけ り」 とは命婦 が ここ に来 た とたん に 目に入 った こ とで あ る。命婦 が暫 くそ こに居 ると,帝 のお話 の 内容 がわか って くる。 それ は「 この頃 あけ くれ―一 」以下 の文 で あ る。 こ うい う時間的順序 を経 て,帝 は命婦 に「 い と こ まやか に有様 を間 はせ給 ふ」 で あ り,そ れ に対 して,命 婦 が「 あはれ な りつ る こ と しのびやか に奏す」 で あ る。命婦 の 目の位置 によ って文 が動 いてい るので あ る。 命婦 を中心 と して 時間が,叙 述 が進んで い るので あ る。 だか ら「 有様 を問 はせ給ふ」 の 「 せ 給 ふ」も,作 者 か ら帝 の動作 を描写 しての敬意 表現 とい うよ りも,命 婦 か らの敬意表現 とみたい。 それで ,「 しのびやか に奏す」 となるの で あ る。も し,作 者 か らの敬意表現 で あ るな ら「奏 サ レタノデ ア ッタ」 とい う.
(6) 6. 中古文 における助詞「を」について. よ うな表現 にな る筈 で あ る。「 間 はせ給 ふ」 に対 して「奏す 」 とな って い る の は命婦 にな りき って書 いて い ると見 て もよ い が,命 婦 の 目を通 して とい う 書 き方 で あ る。 これ は,玉 上琢弥氏 が,そ の著「源氏物語評釈第 一巻」で ,「 命婦 か し こに まか で つ きて,か どに引 き入 るよ りけは ひあはれ な り」 につ いて,「 作者 の 情 景描写 で あ ると,現 代 の われわれ は読 み とる けれ ども,実 は,命 婦 の 目を 通 して見 てい るので あ る」 とい うの と相通 ず る。 そ うい うこ とか ら言 えは,第 二 文 の「 ま くらごとにせ させ給 ふ」 も同様で あ る。 「 命婦 は,一 一 を,一 一 見 奉 る」 (命 婦 の動作 ) 「 御物語 せ させ給 ふ な りけ り」 (命 婦 の発見 ) 「 一一 ま くらごとにせ させ給 ふ」 (命 婦 か らの尊敬表現 ) 「 一一 間 はせ給ふ」 (命 婦 か らの尊敬表現 ) 「 一一 奏す」 (命 婦 の動作 ) この よ うな表現方法 で あ る。作者 の立 場 か らの客観的描写法 とい うよ り作 中人物 にな りき って の主観的描写法 と言え よ うか。 あ るいは舞 台劇 で あれ ば観 客席 か らなが めてい るので はな く,劇 中 の 登場 人 物 にな りき って の文 で あ る。 これ と「 を」 との関連 につ いて はあ とで述 べ る。. 3 文 の型 の第 二 と して,次 の よ うな こ とが見 られ る。 即 ち,一 文 の 中 に,時 間的順序 ,立 場 の異 るものを助詞 を置 いて次 々 とつ な いで い くので あ る。 括 弧で つつ んで いかね ばな らな い形 と言 え るもので あ る。現代語 で 簡単 な も のを あげる と次 の よ うな もので あ る。 「 a氏 が C氏 を支持 した のは b氏 が C氏 は人 格者 だ と保証 したのは正 しい.
(7) 7. 鎌 田 良 二. と判 断 したか らだ と d氏 は青年 た ち に説 明 した」 の文 は助詞 「 と」 で括 って い くと次 の よ うにな る。 ︱ 一と. a氏 が C氏 を. 判断 した. 一. 支持 したのは. か らだ. 電 :雇 司二. 説明 した. 次 の例を見 よう。 ① とにか くにもののみ思ひ続 け られて見 出したるに,② 斑 らな る犬 の竹 の台 の もとなどあ るが,③ 昔 うちの御方 にあ りしが,④ 御使 などに参 りたる 折 々,① よびで袖 うちきせなどせ しかば,⑥ 見知 りてなれむつれ尾をはた らか しなどせ しに,⑦ いとよ うぼおえたる,③ 見 るもすずるにあはれな り。 (建 礼門院右京 大夫集) る一 た一. し. い え一 ぼ一 お一 ⑦ に. せ 一 ⑥. l③. 一ば 一. ありしが ④―折 々 ⑤一せ しか. ① 一たるに ②Iと る_が. │. ③あはれなり 説 明す るまで もな いが,① 見 出 した るに一一 ③見 るもす ず るにあはれ な り, と続 く。 ②一一 あ るが一一 ⑦ い とよ うお ぼえた る,と 続 く,そ の 間 に,そ れ の説 明 が 入 って い る。. どんな犬が, どのよ うに慣れて来 たか,③ 一一 ぬn_し _が 2__⑥. 袖. _う. 主主. せ などせ しに,で あ り ,. また,そ れはいつか,ま た何故 か,④ 参_金 上_る _折 生 ,⑤ せ_し 力」三,で ある。 このよ うに括弧 に入れ てい く形 の文 を入子型 と言 ってもよいな ら,入 子型 文 とい うことになるが,時 枝文法 の入子型 とやや意 味が違 うので入子型的 と 言 うか。別 に名前 はい らないが要す るに,時 間 とか,立 場 を異 にす る文が続 くので ある。 これを源氏物語型に直す と次 のよ うになる。次 の文 は「 夕顔」 の文 ではな.
(8) 中古文 にお け る助詞「 を」について. く, ここで説明のために作 ったもので ある。 を ,一― 見 奉 る. 即 ち「 A一 一 を, Bス ル を,・ Cス ル」 の形 で, Bス ル人 と,Cス ル人 とが 異 るので あ る。 この文 で 言 うな ら「 尼 にな るた るを,と ぶ らふ」 ので あ り,さ らに「 とぶ らひ給ふ. (コ. ト)を 一一 見 奉 る」 ので あ る。 この よ うな場合「見 奉 る」に「 あ. はれ に」 の よ うな語 が つ くこ ともあ る。 この よ うな時 の「 を」 はや は り格助詞 と見 るべ きで あろ う。 源氏物語 で 問題 にな って い る「 を」 は「一一 を一一 を」 と,「 を」 が二 つ三 つ と続 く場合 で あ る。 が, ここに―夕1,実 際 には「 を」 は一 つ で あ るが,二 つ な らべ て 出 るの と 同 じ形 式 の もの をあげてみ よ う。 先帝 の 四 の宮 の,御 かた ちす ぐれ給 へ る聞え高 くおは します ,母 后世 に な くか しづ き聞 え給 ふを,上 に候 ふ 典侍 は,先 帝 の御 ン時 の人 にて,か の 宮 に も親 しう参 り周1れ た りけれ ば,い は けな くおは しま しし時 よ り見 奉 り,. 「 か しづ き聞え給 ふを」 の「 を」. 5)を. して「 ノデ」 と してい るものが 多 い が. (桐 壺 ). 以下 の文 が長 く続 くので 接続助詞 と. ,. まず ,「 先帝 の 四 の宮 の」 の「 の」 は主格 だか ら「四 の宮 が一一 おは しま す」 で あ り「 ソ レヲ」 の意 に と って次 のよ うにす る。 先帝一 の,一 おは します. │(を. ). (ソ レ ヲ). 一か しづ き聞え給ふ │を ,一 ―一一 (ソ レ ヲ). 「 上 に候 ふ 典侍 は,(先 帝 の御 ン時 の人 にて,か の宮 に も親 し う参 り嗣1れ た りけれ ば)い けな くおは しま しし時 よ り見 奉 り」 とな り,( 5)「 待ちおは します らむを」が河内本 では「 に」 にな っている。. )内. は典.
(9) 鎌. 田. 良. 二. 侍 の説 明 で 典侍 が 何故「 いは けな くおは しま しし時 よ り見 奉」 るか とい う理. ( )に 入 れ て一 応 この文 か らはず し て 考え ると, この文 の最後 の「見 奉 り」 が,何 を,見 奉 るのか,と 言 え ば それ は,「 か しづ き聞 え給ふ (よ うす一一 状態 )を 」 で あ る。 だか ら,先 の現代文 「 a氏 が C氏 を」一一 の形 にすれ ば次 のよ うにな る。 由 を述 べ た もので あ る。 だか らこれ は. ,. , │. 10-か. しづ き聞え給ふ. を一. 典侍 は. 一 見奉 り. このよ うな形式 にな る文 がかな り多 いよ うに思 われ る。源氏物語 の解釈 に お いて は こ うい う形式 を考えて おかね ばな らな いので はなか ろ うか。. 4 以上 のよ うな考 え方 を もとに して,桐 壺 の文 中,問 題に な ってい る「 を」 につ いて検討 してみ る。 何事 か あ らん とも思 ほ した らず,候 ふ人 々の泣 き惑 ひ,上 も御涙 のひ ま な く流れ おは しますを,あ や しと見奉 り給 へ るを,よ ろ しき事 だに,か か る別 れの悲 しか らぬはな きわ ざな るを,ま して あはれ にいふかひな し。 「 を」 が三 つ 連 らな って い る例で あ る。 この文 の「見 奉 り給 へ るを」 につ いて,玉 上琢弥著「 源氏物語評釈第 一巻」 に 次 の よ うに記 して あ る。 「『 を』 を格助詞 とす ると,そ れを受 ける述語 がな いので,文 を脱 したか 〔玉 の小櫛補遺〕,『 を』 は術文 か 〔広道〕な どの説 が あ る。接続助詞 で は後文 が省 略 されて い るもの と して訳 してみたが,感 動助詞 とも見 られ よ う」 と。 この文 につ いて私 は次 のよ うに見 る。. : [l倉 1:::]11]itま. を 〉 す. この① と② とが並ぶものであることは「人 々2」 に対 し,「 上二」とある ことか らもそれがわかる。「候ふ人 々が泣き惑ふ」し,ま た,「 上三御涙の.
(10) ゴ θ. 中古文 における助詞「 を」について. 一―」 で ある。「 (ソ レ)を 一一 あや しと見 奉 り給 へ る」 で あ る。 そ して,こ こ まで は御子 の状態 で あ る。即 ち. ,. い. の か― 壁 墜 ビ ― 〉Lぁ ゃしと墜 墜 重 く重な生 〕. \. /. 御子 の状態. 御子 は「―一 思 ほ した らず,一― を,見 奉 り給 へ る」 で あ る。 この 〔御子 ノ状 態 (見 奉 り給 へ る)〕 を,一 → 「 あはれ にいふかひな し」 (卜. 思 ウ)(卜 感 ジル). この場合 も っとも自然 な形 と して は ① あや しと見 奉 り給 へ るは,あ はれ にいふ かひな し。 ② あや しと見 奉 り給 へ るを (見 テ)あ はれ にいふかひ な し。 ③ あや しと見 奉 り給 へ る生 あはれ にいふか ひな し. (卜. 感 ジタ)。. の二 つの形 が考え られ るが,こ こで は「 を」 にな ってい るか ら② か③ で あ る。② の「 見」 とい う意 味 の動作 を省 い た,ま たは,そ れを解釈 で補 う とい う こ ともで きよ うが,な るべ く原文 の ままで とる方 が よいか ら, ここで は③ を採 る。① の後 に (感 ジタ)の 語 を補 うので あれ ば,② と同 じ条 件 にな るで はないか,と も言 え よ うが. ,. 「 あはれ にいふか ひな し」 が その まま,そ の 時 の感情表現で あ り, これ に 「 思 ウ」「 感 ジタ」 とかの意で「 お ぼゆ」 な どを つ けると第二 者 的,客 観的 な立 場 で ながめて い るとい う感 じにな り,そ の 時 の卒直な,そ の ままの表現 にな らな いので はないか。先 に記 した主観 的描写 とも言 うべ き立 場 か ら言 え ば「 あはれ にいふか ひな し」 の ままの方が よい。 この「 を」 を「 あはれ にいふか ひな し」 の対象 を示ず対 象格 の格助詞 とみ たい。 「 二対 シテ」 の意 に とる。 この「 を」 と「 あはれ にいふかひな し」 との 間 に「 よろ しき事 だに… … ま して……」 が入 っていてそ こに第 三 の「 を」 が あ る。 これ につ いて次 のよ うに見 る.
(11) 鎌 (よ. 田 良 二. ノ 合は) ろしき事どに一一なる)(I鼻 り )し て(コ 場. (御 子 ノ状態 ). に て は れ に し き を 事だ 丁)を ,ま し }あ {は ろ __. ↑. → ︱. ↑. 「 よろ しき事 だに一一 を ,ま して」 は挿入 された説 明部分 とみ るが,ま た. に は れ 型 「ダ認長 あ 一 し き はろ )〉. (御 子 ノ状態)を ,あ. はれに一一 と思 うと同時 に「 よろしき事だに一一 わ. ざなるを,(ま して)あ はれに一一」 と思 う。 この二つの「 を」を並列 とみ てもよいが。 しか し,単 なる並列ではな く「 あはれ に一一」 の対象 を示 して いることに変 りはない。 「 (御 子 ノ状態)を 」 と「 よろしき事だに一一 を」 との二つが「 あはれ に 一一」 にかか ることを不 自然 と思 うな ら,同 じことなが ら次 の形 にしてもよ い。 (御 子 ノ状態 )を ,一 一 ※ あはれ に一一. よろしき事だに一一を,ま してあ11_れ に一一 (御 子 ノ状態 )を 「 あはれ に」 で あ り,「 よろ しき事 だに一一 を」 「 事 レ. て,あ はれ に一一 」 で あ り,こ の二 つ が「 あはれ に」 で あ る為 には じめ の※ 印を つ けた「 あはれ に一一 」 が省 かれた もの と見 て もよ い。 何 れ に して も,「 あはれ に一一 」 は,二 つ を受 けてい る。 この二 つ の こと 「 二対 シテーーーー あはれ に一一 」 と思 った ので あ る。 このよ うに, この「 を」 を「 二対 シテ」 の意 の対象格 を示す格助詞 とす る のだが,対 象 を示す格助詞 の次 に形 容詞句 とか,状 態を あ らわす句 が来 る こ とは現代語 の感 覚 で は慣 れ ていない。「 月 ガ出 タノヱ 美 シイ」 で は現代語 と して はおか しい。や は り 「 美 シイ ト感 ジル」とか「 美 シイ ト思 ウ」 とか に しな けれ ばな らな い。 しか し,「 感 ジル」 とか「 思 ウ」 を入 れ て も この「 を」 が.
(12) 中古文 にお ける助詞「を」につ いて. ■2. 対 象格を示す こ とには変 りはな い。 なお, この よ うに見 るとき「 かか る別 れ」 につ いて,玉 上氏 の 同書 に「 帝 と更衣 との死別」 ととる場合 と「 帝 と若宮 との生 別」 ととる場合 とが あ ると して お られ るが。以上 の よ うな考え方 か ら,何 もわか らな い若宮 の状態 を「 あ はれ にいふか れな し」 と思 い,ま た,普 通 の場合 で あ って さえ (よ ろ しき事 だ に), 子 供 と母 親 との死別 は悲 しい もの で あ るの に, この よ うに幼 い宮 の よ うすを見 てい ると「 ま して」 「 あはれ にいふ か ひな し」 ととることにな る。. 5 問題 にな って い る「 を」 は,連 体形 につ いた「 を」 で あ るが,次 の よ うな 場 合 が あ る。 `. いは けな き人 も如何 に と思 ひや りつつ ,諸 共 には ぐくまぬ覚東 な さを, 今 はなほ,昔 の形見 にな ず らへ て もの し給 へ 」 な ど こ まやか に書 かせ給 へ り。 この文 の「 覚 東 な さを」 につ いて玉上氏 の 同書 の注 に次 のよ うに記 して あ. る。 「『 玉 の小櫛』 は『 これ は もろ ともには ぐくま ぬがおぼつ かな きを とあ り けんを誤 れ るな るべ し』 とい って い る。諸本 この部分 に異 同はな いが,こ の ま まで は解 しがたい。 しいていえ ば こ う言 い さ して,あ とは言 わず においた もので あろ うか,句 点 にす べ きと ころで あ るか も しれぬ」 と。(文 中,字 の下 の. 0,一 は鎌 田) そ して 同書 の通釈 で「 もの し給 へ」 は,「 この上 は (若 宮 を)亡 き人 の形. 見 と思 うて参 られ よ」 とあ る。 松尾聰氏 の「 全釈源氏物語. 巻一」 の注 で「覚 東 な さを」 につ いて次 の よ. う に記 してあ る。 「『 覚東 な さを』 の『 を』 を『 よ』 の意 と解 したのは無理 で あろ う。 或 は 『 諸共 には ぐくまぬ覚東 な さなのだか ら』 の意 と して,下 に続 けて行 くべ き.
(13) 鎌. 田. 良. 二. Jθ. か,(北 山氏 は,ほ ぼその よ うに解 かれ る)池 田博士 は原文 の ままで『 一 緒 に若宮を育 てないのが気 がか りな もの を』 と訳 してお られ るが,特 別 の説 明 はつ けてお られ ない」 と。 さ らに,「 昔 の形見 になづ らへ て」 の注 で は,「 若宮 は更衣 を思 い 出す じ る しの 品 それ 自体 で はないか ら『 なづ らへ て』 とい ってい るので あろ う。秋 山氏 (評 釈 国文学大系第 二 巻河 出書房 刊 )は ,『 更衣 の形見 になず らえ る対 象 は帝 で あ る。 これを若 宮 とす る説 もあ るけれ どもとれない。 もともと若宮 が更衣 の形見 で あ ることは 自明 で あ るか ら,わ ざわ ざな ず ららうとい うの は ・」 と。 あた らな い』 と説 かれ るが・…・ ここで 秋 山虔氏 の説 に従 って,形 見 を帝 と して と り,ま た,「覚東 な きを」 で はな く, この文 の まま「覚 東 な さを」 ととると次 の よ うに解釈 で きるので はないだろ うか。 この「覚 東 な さを」 を 受 けるもの は「 形見 になづ らへ て」 とは とれないか ら,当 然 「 もの し給 へ」 で 受 けな けれ ばな らな い。 そ うす ると「今 はな ほ. ,. 昔 の形見 になづ らへ て」 を挿入 ととるか,あ るいは, ともに「 もの し給 へ」 にかか るととるかの何れ かで あ る。 即ち. ,. へ の し も 給 〉 蚕 に 景 形 :ミ 亀 見. か ―一覚東 な さを (形 見 になづ らへ て)も の し給 へ。 で あ る。 何 れ に して も「覚東 な さを」 は「 もの し給 へ」 にかか る こ とにな る。 更衣 の母 と「 諸共 には ぐくまぬ覚 東 な さを一一 もの し給 へ」 とな る。 この 場 合「 もの し給 へ」 を 「 その気持 を感 じと って下 さい」 「 おわか りにな って 下 さい」 「私 の気持 を 察 して下 さい」 の よ うな意 に とれ な いだろ うか。 そ して,さ らに「 宮城野 の」 の歌 に続 いて「 (小 萩 が もとを )思 ってお りま す」 とい う意 に と っては ど うだ ろ うか。 「 もの し給 へ」 を普通 には「 参 られ よ」 の意 に とってい るが ,こ れ はあ と.
(14) 14. 中古文 における助詞「 を」について. の母君 の言葉「百敷 に行 きか ひ侍 らん事 は一一 」 な どか らか と も思 われ るが. ,. い ずれ に して も若宮 は更衣 の里 に在 り,「 諸共 には ぐくまぬ」 が,帝 と母君 と,と い うことに なれ ば,母 君 の参 内を うなが してい る こ とには変 りはな い。 しか し,「 もの し給 へ」 を この よ うな意 に とることは,い ささか「 を」 に こだ わ った感 もな いで もな い。 そ こで,「 参 られ よ」 の意 に と った と して も,「 覚束 な さ二対 シテ,(私 ヲ形 見 ニ ナ ズ ラエ テ)参 られ よ」 とな り,こ の「を」 を 格助詞 ととることに 変 わ りはな い。. 6 見 奉 りて くは しく御有様 も奏 し侍 らまほ しきを,待 ちおは します らむを. ,. 6)。. 夜更 け侍 りぬべ し」 とて急 ぐ. この「 一一 を一一 を」 につ いて 山田孝雄著 「平 安 朝文法史」 で は,「 共存 の事実 を示す」 接続 助詞 とな って い る。 は じめの「 を」 を逆 接 に と って 「 ケ レ ドモ」 と し,後 の方 を順接 に とって 「 ダカ ラ」 「 ノデ」 とす ると,意 味 と して はす っき りした形 で続 くけれ ども. ,. 上 の二 つ の こ とが ら二対 シテ「 夜更 け侍 りぬ べ し」 が あ ると見 る ことがで き る。. 8 薄. べ ぬ し 夜 け ③ 更 侍 り 〉 信 :]写 憲 童 言 :息. ①② が意味上,直 接 に「 夜更 け侍 りぬべ し」 に続 くのではないにして も ,. ①② を並列 ととる以上,形 式的 にはやは り①②がそれぞれ③ に続 かなければ 7). な らない。. 朝夕の宮仕 につ けて も,人 の心を動か し,恨 を負ふつ もりにやあ りけむ. ,. いとあつ しくな りゆき,物 心細 げに里が ちなるを,い よいよ飽かずあはれ 6)「 待 ちおは します らむを」が河内本 では「 に」 になつている。. 7)山 崎良幸氏 も『古典語 の文法』 で,こ の「 を」を「 に対 して」 ととってお られ る。.
(15) ヱ5. 鎌 田 良 二 な るもの に思 ほ して. ,. この場合「 を」 は一 つ で あ るが,「 物心細 げ に」 の次 に「 を」 を 入 れ る と 先 の形 式 にな る。. の に ほ て を は る し な 思 れ も ,― あ ≦ II[:〉 ,. 物 の に ほ て る は な し れ 思 ぁ も 一 ― 量 架 [:看 〉 」 ,. 「 物 心 細 げな る (コ. (コ. ト)を 一一 あはれ な るもの に思 ほ して」 「 里 が ちな る. ト)を 一一 あはれな るものに思 ほ して」 ととる。 ① あ る時 は大 殿籠 り過 して,② やがて さぶ らはせ 給 ひな ンど,③ あなが. ち に,④ 御前去 らず もてな させ給 ひ し程 に,⑤ おの づ か ら軽 き方 に も見 え. しを,⑥ この御子生 まれ給 ひて後 は,⑦ いと心 ことに思 ほ しおきてたれば. ,. ③坊 にもようせ ずは,① この御子 の居給 ふべ きな ンめ りと,⑩ 一 の御子 の 女御は思 し疑へ り。 この文 の「 軽 き方 に も見 え しを」 について,松 尾聰氏 の同書 の注 に次 のよ うに記 してある。 「順接 にとって『 見 えたものだか ら』 とも,逆 接 にとって『 見 えたけれ ど も』 とも解 けるが,も ともと上の文 と下 の文 とをつ なげるだけの役 を してい る点『 に』 と同 じである」 と。 この「見え しを」 については次 のよ うに考え る。 やや文が長いので 略 して説明す る。 ①② ノヨウニ,③ ④ シタノデ,⑤ ノ ヨウニ見 エタノヲ (見 エタ人 ヲ),⑥ カラハ,⑦ ダカラ,③ ⑨⑩ 卜思 ツタ。 即 ち,「 ⑤おのづか ら軽 き方 に も見え しを」を 「⑦ いと心 ことに思 ほ しおき てたれば」 に続 け,「 軽 き方 に も見え しを,(こ の御子―― 後 は)い と心 ことに 思 ほ しおきてたれば」 とな り,⑥ は挿入 された部分である。見 え し人を一一 い と心 ことに思 ほしおきてたれば,と 直接 に結 んでよいものと思 う。.
(16) 中古文 にお け る助詞「 を」について. 7 以上 ,桐 壺 の文 を 中心 と して 問題 にな ってい る「 を」 につ いてみて きた の で あ るが, これ らの ま とめの意 味 もふ くめて一 般 には接続助詞 に とってい る 文 を例 と して分 類整理 してみ る。 r)「 を」 の次 に動詞句 が来 るもので,逆 接「 ノニ」 ととって い るもの。 大殿 の新 中将 と物言ふ に,そ ばにあ る人 ,「 この 中将 に扇 の絵 の こ とい へ 」 とささめ けば,「 今 かの君 た ち給 ひなむ にを」 とい とみ そかに言 ひ入. (枕. るるを ,そ の人 だにえ 聞 きつ けで,一 一. 草子 ). この文 の,「 言 ひ入 るるを ,一 一 え 聞 きつ けで ,」 と,(コ トフ)の 意 とと (コ. トヲ). る。 心 の 中 のみな らず,ま た これが こ とを ば,か れ にい ひ,か れが ことを ば. ,. これ にいひ,か たみ に聞 か す べ かめ るを ,わ が ことを ば知 らで,か う語 る はなほ人 よ りは こよな きなめ りと思 ふ らん と思 ふ こそ はづ か しけれ。 (枕 草子 ). 「 わが こ とを ば知 らで」 は挿入 と見 られ るか ら 聞 か す べ かめ るを (わ が こ とを ば知 らで)か う語 るは. ,. (コ トヲ ). この二 つ は対象 を示す「 を」 の ままで 充分 理 解 され るもの で, この場合. ,. 受 ける方 が動詞句 で あ る。 伸)「 を」 の次 に形 容詞 ,状 態語 が来 る。 動詞が省 かれ た と見 て もよ い。 「 『 参 りてはい とど心苦 しう,心 肝 もつ くるや うになん 』 と典侍 の奏 し給 ひ しを,物 思 ひ給 へ 知 らぬ心地 に も,げ に こそい と忍 び難 う侍 りけれ」 と て,. (桐. これを 「奏 上 な さい ま したが ,一一 」 とい う形 に解釈 して い るが. 壷) ,. これ は「 奏 し給 ひ しを,一一 心地 に も,一一 忍 び難 う侍 りけれ」 で あ り. ,. 「 奏 し給 ひ し コ トを,一一 忍 び難 う思 イマ ス」 で,そ の間 に,「 物思 ひ給 へ 知 らぬ心地 に も」 が入 って い る。.
(17) 鎌. 田 良. 二. 17. 即 ち,「 典侍 が奏上 な さい ま した ことを,私 のよ うな ものの身 に も,や は り忍 び難 う一一 」 と続 くので あ る。 ただ,前 に「 を」 が くるな らそれを受 けて「 忍 び難 う思 ひ侍 りけれ」 と来 るとは っき りす るのだが,こ の「 思 ふ」 とい う動詞 がないためにやや受 け に くい感 じもす る。 しか し,「 忍 び難 う侍 りけれ」 で,「 忍 び難 う存 じます一一 忍 び難 う思 い ます」 の意 に とって もよ いだ ろ う。 │⇒. 3項 に「 A一 を,Bス ル を,Cス ル」 の形 で示 した もの。. 心 もとな き御 ほ どを,わ が心 をや りて ささげ うつ くしみ給 ふ も, こ とわ り に めで た し。 EI. (紫 式部 日記 ). 心 も とな き御 ほ ど │を. ,. つくし めでたし み給ふ∃も 一一う ,一一 ↑. 0「 二対 シテーー. ト感 ジル」 即 ち,「 を」 の 前 に感情 の対 象 を示 した もの。. 世 に あ るべ き人 か ず とは思 はずなが ら, さ しあた りて,は づ か しいみ じ と思 ひ知 るかた ばか り,の がれた りしを,さ も残 せ る こ とな く思 ひ知 る身 の うさか な。 問. (紫 式部 日記 ). 「 を」 の下文 が長 く,そ の 中 に主述 関係 が入 って い るもの。 その年 の夏 ,御 息所 はかな き心地 に煩 ひて,ま かで なん と し給 ふを,暇. 更 に許 させ給 はず。. (桐 壷 ). や もめ住 み なれ ど,人 一 人 の 御 か しづ きに,と か くつ くろ ひ立 て て ,め や す き程 にて 過 し給 へ るを ,闇 に 昏 れ て 伏 し沈 み給 へ る程 に,草 も高 くな り,野 分 に い と ど荒 れ た る心 地 して ,月 影 ばか りぞ ,八 重 葎 に も さは らず. さし入 りたる。. (桐 壺 ). И)は ,「 を」 とそれを受 ける句 との間 に,あ る条件 を挿入 された もので. ,. この形 が桐壷 の文 に多 い こ とは先 に記 した通 りで あ る。「を」 の上接部 にお いて叙述 されてい ることに対 して,下 接部 が存 在 また は動 作 を なす とい う こ とを 示す もので ,下 接 の文末部 に動詞が来 る形 で あ る。 伸)は ,受 ける文末部 に動詞 がな く,形 容詞 で受 けるもので あ る。 これ は先 の 4の 項 で 記 した よ うに形容詞 の後 に動詞 を 補 え ば補 い得 るもので あ るが. ,.
(18) 18. 中古文 における助詞「を」について. 主観 的描写法 とい うための もので あろ うか,と もか くこの よ うな表現法 が成 ニ 二 り立 って いた もの と思 われ る。「 コ レコ レノ事 対 シテ,コ ウイウ感情 ナ ル」 とい う形 で ,「 を」 の上 接部 が下接部 の感 情 に対す るもの で あ る。 この 場合 は現代語 で はぴ った りと した言 い表 し方 がな い。 しか し,「 を」 は感情 対 象 を示す とい う働 きか らみ て格 助詞 とみた い もので あ る。 │⇒. は,前 項 まで に記 した もの よ りも簡単 な形 の例 にな って い るが,入 子型. 的 ともい うべ きもの で , この よ うに文構造 を捉 え ると「 を」 を 受 けるものが は っき りす る形 で あ る。 この「 を」 は明 らか に対象格表示 の格 助詞 で あ る。 日 は(口 )と 同 じよ うに も見 られ るもので あ る。即 ち,「 のがれ た り し コ トニ 対 シテ,今 ハ,さ も残 せ る ことな く思 ひ知 る身 の うさかな」 で あ る。 ただ. ,. この場合 は前件 と後件 とが 相 反す る事柄 で あ るので逆接 とい う接続 助詞 に と るとい う形 がで て くる。 国 の二 つ は同 じよ うに,「 を」 に対 す る下接文 の独立 性 が認 め られ るもの で あ る。 「 暇レ)更 に許 させ給 はず」 で あ り,ま た,「 月影 ばか りぞ,一一 さ し入 りた る」で ,後 の方 は特 に下接文 が長 い文 にな って い る。 この よ うに下 接 文 の独立性 が強 くな って来 た と ころか ら接続 助詞 にな って い くもので あ る。 が,本 稿 として は「 を」 を「 二対 シテ」 の意 とと りた い,次 の場合 の よ う に考 え る。 本 ヲ読 む よい本 ヲ くりかえ し読 む. ××氏 の書 いたよい本 ヲくりかえ し読む この場合,今 までにあげたように中古文 では「書 きたる空 」 とか,「 よき を」 のよ うに「本」 とい う体言が略されていることが多 いが,「 ×X氏 の書 きたる生」を「書 いたノデ」 とか,「 よき生」を「 よいノデ」 とす るのはや は りおか しい。 この場合「 を」の働 きとしては変 りはないので はなかろうか。 「 を」が「 二対 シテ」の意であることは,前 件 二対 シテ後件 の行為があ り あるいは,前 件 二対 シテ後件 の感情 を持つ,の 意である。 ,.
(19) 鎌. 19. 田 良 二. 御 心地 い み じ うな らせ 給 へ ば,松 君 の少将 な どを,「 と りわ きて い み じ きものに いひ思 ひ しか ど……」. (栄. 華物語 ). で も「を」 は「 二対 シテ」 ととるべ きで あろ う。 以上 のよ うにみ るとき中古文 の「 を」 はや は り対象格 を 示す もので あ り. ,. 「 二対 シテ」 の意 を もつ格 助詞 で み るとみ たいので あ る。 しか し,多 くの文 に接 して い ない私で あ り,ま た近 視 眼的 な見方 を して い ると ころか らの誤 りもあ るか と思 う。先学 の説 に対 して誤解 してい ると ころ もあ るか と思 うが,な に とぞ御 高評 を仰 ぎた い。 本稿は,昭 和46年 11月 28日 ,国 学院大学国語国文学会秋季大会 において口頭発表 した「源氏物語物 における助詞『を』 の用法―一 その文構造とともに一一」と重複 す る部分もあることを記 しておく。.
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