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魚類の化学感覚に関する環境生理学的研究

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Academic year: 2021

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(1)博 士 学 位 論 文. 魚 類 の化 学感 覚 に関 す る環境 生 理 学 的研 究. 近 畿 大 学 大 学 院 農 学研究 科水 産 学 専 攻. 石. 田. 義. 成.

(2) 博 士 学 位 論 文. 魚 類 の化学感 覚に関する 環境 生理学的研 究. 平 成8年1月. 近畿大学大学院農学研究科 博士後期課程(水産学專攻). 石 田 義 成.

(3) 目. 1. 序. 次. 論. 7・. 第1章 摂餌刺 激物質 に対 する摂餌行動 と化学感覚. 7. 緒 言 配 合飼料抽 出液 に対 する摂餌行動. ΩU. 第1節. 材料 と方法 結 果. 第2節. 1 1. 考察 アミ ノ酸 に対す る嗅覚 の電気 生理 学的応答. 材 料 と方 法 結 果 考 察 第3節. ア ミノ酸 ・核酸 関連物 質 ・有機酸な どに対する味覚 の. 電気生理学的応答. 15. 材料 と方法 結果 ① 種 々の魚種 にお けるア ミノ酸. ヌク レオチ ド、. ベ タイン に対 する応答 (2)シ マ イサキ にお ける種 々の化 学物質 に対する応答. 考察 第2章. 農 薬及 びその関連物質 に対する忌避反応 と化学感 覚. 25. 緒 言 第1節. 25. 農薬に対する忌避行動. 26. 材料 と方法 結果 考察 農 薬 に対 す る 嗅 覚 ・味 覚 ・孔 器受 容 に お け る. 電気生理学的応答. 0 3. 第2節. 材料 と方法 結果 第3節. 農 薬 に対 する条件付 け手法 による忌避反応. 材料 と方法. 7 3. 考察.

(4) 結果 考察 第4節. 農薬及びその関連物質に対する嗅覚応答特性. 42. 材料と方法 結果 考察 第5節. 忌避物質添加農薬の忌避増強効果. 47. 材料 と方法 結果 考察 第3章. 農薬曝露が嗅覚器に及ぼす生理学的,形 態学的影響. 50. 緒 言 第1節. 50. 50. 農 薬曝 露が摂餌行動 に及ぼす影響. 材 料 と方法 結 果 考 察 第2節. 農 薬曝露 が嗅上皮 に及 ぼす組織学 的影響. 53. 材料 と方 法 結 果 考 察 第3節. 60. 農 薬曝露 が嗅覚応答 に及ぼす影 響. 材料 と方 法 結 果 考察. 第4章. ピコプ ラン ク トン(Synechococcusspp.)培. 養濾液及 び. シ ャ トネラ赤 潮(Chattone〃asp.)培 養濾液 に対する忌避. 反応と化学感覚. 65 65. 緒 言 第1節Synechococcus培. 養 濾 液 に対 す る 忌 避 行 動. 6s. 材 料 と方 法 結 果 考 察 第2節Synechococcus培. 電気生理学的応答. 養 濾 液 に対 す る 嗅 覚 に お け る 70.

(5) 材料 と方法 結果 考察 第3節Cわa㈲. ηθ〃a培養濾液 に対 する嗅覚 における. 電気生理学的応答. 74. 材料 と方法 結果 考察 要約. 78. Summary. 81. 謝辞. 84. 文献. 85. 図表. 101.

(6) 序. 論. 水 生 生 物 は,外. 界 の 環 境 変 化 に 対 応 して 生 存 を 続 け る た め に,特. 殊 化 した 感 覚 器 官 を 通 して. 自分 の お か れ た 環 境 の 状 況 を 知 り,こ れ に 対 し て 適 切 に 反 応 す る 機 能 を有 す る 。 感 覚 器 官 に は, 光,ニ. オ イ",味,音,接. 触,水. ぞ れ に 対 応 し た 器 官,す. の 動 揺,熱,電. な わ ち,眼,鼻(嗅. 気 な ど の 環 境 要 因 の 情 報 を 得 る た め に,そ 覚 器),味. 蕾(味 覚 器),耳,皮. 膚,側. 線,温. れ 度や. 電 気 の 受 容 器 な ど が あ る 。 こ れ らの 感 覚 の う ち 化 学 物 質 に よ る 刺 激 を 受 容 す る 嗅 覚 や 味 覚 な ど の 感 覚 は,一. 般 にs化. 学 感 覚(chemicalsenses)と. 質 は 多 種 多 様 で あ り,そ. 総 称 され て い る 。 外 界 に存 在 す る 化 学 物. の 濃 度 も 広 範 囲 に わ た っ て 存 在 して い る が,水. 生生物 の化学 感覚 受容. 器 は 刺 激 の 種 類 と そ の 濃 度 に お い て 多 様 な 化 学 物 質 を 受 容 で き る 特 性 を 有 し て い る(Hara, 1993)o 魚 類 の 生 息 す る 環 境 水 中 に 存 在 す る 化 学 物 質 は,海 く,そ. 水 や 河 川 水 に含 まれ る無 機 塩 類 だ け で な. こ に 生 息 す る 生 物 に 由 来 す る 物 質 も 多 く 存 在 して い る 。 た と え ば,水. の 排 出 物 や フ エ ロ モ ン 等 の 分 泌 物 質}生 ま た,近. 生生 物 の代謝産 物. 物 の 損 傷や 死 亡 分 解に よ って 溶出 した 物 質な ど が あ る。. 年 急 激 に 増 加 して き た 工 場 排 水,生. 活 排 水,農. 業 排 水 な ど,生. 物 が 今 ま で に経 験 した. こ と の な い 様 々 な 人 工 化 学 物 質 も 多 くみ ら れ る 。 こ の よ うな 多 種 の 化 学 物 質 が 混 在 し て い る 環 境 下 で,魚. 類 は 外 界 に 存 在 す る ほ と ん ど の 物 質 を 感 知 し,そ. の 中 か ら生 活 に必 要 な化 学 情 報 を. 検 出 す る た め の 鋭 敏 な 感 度 と 高 い 識 別 能 力 を も つ 化 学 感 覚 器 官 を 発 達 さ せ て い る(Ham, 1992)o 魚 類 の 化 学 感 覚 の 主 要 な も の は 嗅 覚(olfaction)と あ る 孔 器(pitorgan),体 以 後,SCCsと. 記 す),脊. (chem(rrecepLion)に. 味 覚(taste)で. あ る が,側. 線 系 の1種. で. 表 皮 に 分 布 す る 孤 立 化 学 受 容 細 胞(solitarychemosensoryce11s, 髄 神 経(spinalnerve)の. 自 由 終 末(freenerveending)も. 化学 受容. 関 与 す る こ と が 知 られ て い る(Whitear,1992;BardachetαL,. 1967;Belousovaet(法,1983)。. こ れ ら化 学 感 覚 の そ れ ぞ れ の 受 容 器(receptor)は,外. 界. の 化 学 物 質 を 感 知 す る と 受 容 細 胞 の 刺 激 受 容 部 位 で の 局 所 電 位 で あ る 受 容 器 電 位 を 発 生 し,引 き 続 い て 受 容 細 胞 は 活 動 電 位(イ. ン パ ル ス)を 発 生 さ せ,そ. の活 動電位 は求心性 の 神経 線 維 を. 経 由 し て 諸 中 枢 に 伝 達 さ れ る 。 中 枢 に 伝 え られ た 外 界 化 学 物 寅 の 情 報 は 複 雑 な 処 理 を 経 て,過 去 の 経 験 や 学 習 に も と つ い た 知 覚(perception)が 次 中 枢 を経 て 運 動 ニ ュ ー 一ロ ン へ 渡 さ れ,筋 果,感. 肉 な ど の 効 果 器(effector)へ. 知 し た 化 学 物 質 に対 し て 誘 引(attraction)や. 魚 類 の 嗅 覚 器 は 頭 部 の 左 右 に1対 x匂. な され る。 知 覚 され た 感 覚 情 報 は さ らに 高. 逃 避(escape)等. 伝 え られ る 。 そ の結. の 行 動 が 引 き起 こ され る。. あ る 鼻 孔 下 の 録 腔 底 而 に 存 在 す る 。 通 常,鼻. い を表 す 文 字 に は. 孔 は板 鯉 類 で. ,良 い に お い を 意 味 す る匂 と番 が,悪 い にお い を 意味 す る 臭 が 使 わ れ て い るが, にお い全 休 を 意 味 す る 文 字 が な い た め,こ こで は,最 近 の 慣 例 に従 い,ニ オ イ と して 片 仮 名 表 記 と し た。. 1.

(7) は 頭 部 腹 面 に,硬. 骨 魚 類 で は 頭 部 背 面 に 位 置 し て い る 。 多 くの 魚 種 で は,鼻. の 嗅 板(olfactorylamella)が. 配 列 し て い る 嗅 房(olfactoryrosette)が. 膜 状 の 組 織 で あ る 嗅 上 皮(olfactoryepithelium)に. 覆 わ れ,そ. 腔の 底面 にひだ状. 形 成 さ れ る。 嗅 板 は粘. の 嗅 上 皮 は 嗅 細 胞,支. 持 細 胞,. 基 底 細 胞 に よ っ て 構 築 さ れ て い る 。 嗅 細 胞 は ニ オ イ受 容 ニ ュ ー ロ ン で あ る 第 一 次 感 覚 細 胞 で, 1本 の 樹 状 突 起 と1本 の 無 髄 の 軸 索 を も つ 双 極 性 ニ ュ ー ロ ン(bipolarneuron)の. 形 態 を 有 し,. そ の 細 胞 体 は 上 皮 中 層 に あ る 。 樹 状 突 起 は 細 胞 体 か ら 嗅 上 皮 の 自 由 表 面 へ と 伸 び,そ 小 膨 大 部 を つ く っ た 嗅 小 胞(olfactoryvesicle)に わ ず か に 突 出 し,そ. な って い る。 嗅 小 胞 は 嗅 上 皮 自 由 表 面 か ら. こ か ら 嗅 上 皮 自 由 表 面 を 覆 う粘 液 層 へ 長 い 嗅 繊 毛(olfactorycilia)を. し て い る 。 ニ オ イ 分 子 は 粘 液 層 の 中 に 浸 透 し,嗅 れ て い る 。 嗅 細 胞 に は,嗅. 1977)。. 毛 型 の 嗅 細 胞 は,. ェ ロ モ ン の 受 容 器 と 考 え ら れ て い る 鋤 鼻 器 官(vomeronasal. 存 在 す る こ と が 知 られ て い る(鈴 木,1995;Halpern,1987)。. の な い 魚 類 で は,嗅. しか し,鋤. 鼻器官. 上 皮 に 繊 毛 型 と 絨 毛 型 の も の が 混 在 して い る(YamamotoandUeda,. 嗅 細 胞 の 軸 索 は 上 皮 の 基 底 膜 を 貫 通 し,他 の 嗅 細 胞 の 軸 索 と 合 流 し て,い. 神 経(olfactorynerve)を. 投 射 し,糸. 球 体 で 僧 帽 細 胞(mitralcell>な. 形 成 し,嗅. 葉(olfactorylobe)の. 魚 類 の 味 覚 器 は 数 個 の 感 覚 細 胞(味 細 胞),支 か ら 形 成 さ れ て い る 。 魚 類 の 味 蕾 は 口 唇,触. 持 細 胞,基. 巽,口. 腔,鯉. 明 細 胞(t一 ㏄11)と 暗 細 胞(f-cell)が apicalprocess)を,後. 細 胞 で あ る とい う説 が あ る(杉 本,1993)。 味 細 胞 の 寿 命 は 短 く,た. 頭,食. 道 な どの 上 皮 の み な ら. マ ズ 類 で は体 表 一 面 や 鰭 に 高密. 味 蕾 の 形 態 は 樽 型 で,そ. の大 き さ は. 子 顕 微 鏡 像 か ら,. 者 は 味 孔 内 に 伸 び る 桿 状 突 起(thickrod-shaped. 者 は 絨 毛(microvilli)を. 細 胞 で あ る と い う 説(DelayetaL,1986)と. 腔,咽. よ っ て 表 面 に 開 く 。 味 蕾 内 に は,電. あ り,前. 触 す る 。 他 に 中 間 型 の 細 胞 も み ら れ,こ. 底 細 胞 を 収 め た 味 蕾(tastebud). く に,ナ. 度 に 分 布 し て い る こ と が 知 ら れ て い る(Atema,1971)。 孔(tastepore)に. の 軸 索束 は嗅 索. 高 次 中 枢 へ 連 絡 して い る。. 表 や 鰭 の 表 皮 中 に も 皮 膚 味 蕾 と して 分 布 し,と. 上 皮 の 全 層 を 占 め,味. 達 し,嗅. どの 樹 状 突 起 と シ. ナ プ ス を 形 成 す る 。 僧 帽 細 胞 は 他 の ニ ュ ー ロ ン か らの 入 力 と を 統 合 し た 後,そ (olfactorytract)を. わ ゆ る,嗅. 形 成 す る。 喋 神 経 は 第 一 次 中 枢 の 嗅 球(olfactorybutb)に. 球 に あ る 糸 球 体(glomerulus)へ. ず,体. 派生. 繊 毛 や 嗅 小 胞 の 形 質膜 で 受 容 さ れ る と考 え ら. 繊 毛 の 形 態 か ら繊 毛 型 と 絨 毛 型 の も の が あ り,絨. 両 生 類 以 上 の 脊 椎 動 物 が 有 し,フ organ)に. の先端 は. 有 し,味. 物 質(味. 覚 刺 激 物 質)は こ の 部 位 で 接. れ らの3種 類 の 細 胞 は 同 一 起 源 の 細 胞 で,す 中 間 型 の も の が 受 容 細 胞 で あ り,他. べ て受容. の 細 胞 は支 持. 味 細 胞 は 上皮 細 胞 が 分 化 した 第 二 次 感 覚 細 胞 で あ り,. え ず 新 生 し 交 代 し て い る 。 常 に 外 界 か ら の 損 傷 を 受 け や す い 味 蕾 は,. この タ ー ン オ ー バ に よ つ て 味 覚 機 能 の恒 常 的 維 持 を行 っ て い る 。 味 覚 刺 激 に よ って 発 生 し た受 容 器 電 位 は シ ナ プ ス を 介 し て 味 覚 神 経 の 求 心 性 線 維 を 興 奮 さ せ}イ. ン パ ル ス を 発 火 さ せ る 。1. 本 の 求 心 性 線 維 は 分 枝 し て 多 くの 味 細 胞 か ら味 覚 情 報 を 受 け 取 り,第VII脳 経(facialnerve),第IX脳. 神 経 で あ る 舌 咽 神 経(glossopharyngealnerve),第X脳. る 迷 走 神 経(vagusnerve)の (faciallobe),迷. 経 路 を 通 り,味. 走 葉(vaguslobe)の. 神 経で あ る顔面神 神 経で あ. 覚情 報 を 味覚 中枢 の ある延 髄 に ある 顔 面葉. そ れ ぞ れ に伝 達 す る 。 味 覚 情 報 が 顔 面 葉 へ 入 力 され る. 2.

(8) 顔 面 味 覚 系 は,食. 物 の 判 別 に 関 与 し,一. 方,迷. 走 葉 へ入 力 さ れ る迷 走 味 覚 系 は食 物 の 嚥 下 や 吐. き 出 し に 関 与 す る と い わ れ て い る(Atema,197D。 側 線 系(laterallinesystem)の く,化. 孔 器 は,機. 学 受 容 に も 関 与 して い る 。 孔 器 は,体. 械 受 容 器(mechano-receptor)と. して だ け で な. 表 上 に 点 状 に 並 ぶ 遊 離 感 丘(freeneuromast)と. 皮 膚 内 に 沈 下 し 管 状 構 造 に な る 管 器(canalorgan)に. 分 類 され る側 線 器官 の 中 で 前 者 に属 す る. 器 官 で あ る 。 孔 器 は 頭 部 に 分 布 し 顔 面 神 経(第VII脳. 神 経)分 枝 の 副 側 線 神 経(buccalnerve). の 支 配 を 受 け た 第 二 次 感 覚 細 胞 か ら 形 成 さ れ て い る 。 通 常 の 側 線 器 官 と構 造 上 異 な る 点 は,機 械 受 容 に 重 要 な 役 割 を 果 た す ク プ ラ(cupula)が とで あ る 。 機 能 的 相 違 に お い て も,サ. 管 器 に は 存 在 す る が,孔. 器 に は存 在 し な い こ. メ や コ イ の 孔 器 は 塩 類 に 応 答 す る が,管. 器 は これ らの 化. 学 物 質 に 応 答 し な い こ と が 電 気 生 理 学 的 に 確 か め られ て い る(Katsukietai.,1970)。 孤 立 化 学 受 容 細 胞 は皮 膚 味 蕾 と同 様 に顔 面神 経 あ るい は 迷 走 神 経 の 支 配 を受 け た 第 二 次 感 覚 細 胞 で あ る が,味. 蕾 と は 形 態 が 明 ら か に 異 な り,多. い る(Whitear,1992)。. タ ラ の 一 種Cilia.taの 背 鰭 に あ る 孤 立 化 学 受 容 細 胞 は 種 々 の 魚 種 の 皮. 膚 粘 液 の 抽 出 液 に 対 して は 応 答 す る が,ア (Petersetα. 様 な 形 態 を 示 す細 胞 が 体 表 や 鰭 に 散 在 して. 乙,1991)。. し か し,皮. ミノ 酸 に対 して は 応 答 しな い こ とが 報 告 さ れ て い る. 膚 味 蕾 は ア ミ ノ 酸 に よ く 応 答 す る こ と か ら,孤. 立 化学受. 容 細 胞 は皮 膚 味 蕾 と異 な る化 学 受 容 細 胞 で あ る と考 え られ て い る。 脊 髄 神 経 の 自 由 終 末 に よ る 化 学 受 容 は,ホ. ウ ボ ウ の 胸 鰭 の 遊 離 鰭 条 で み ら れ,そ. 出 液 や ア ミ ノ 酸 に 応 答 す る 。 そ こ に は 味 蕾 等 の 器 官 が 何 も存 在 し な い が,脊 含 ま れ る こ と か ら,脊. れ は餌料抽. 髄神経 線維 のみ が. 髄 神 経 の 自 由終 末 が 化 学 受 容 に関 与 して い る と考 え られ て い る. (SilverandFinger,1984)。 細 胞 と 思 わ れ る 細 胞(孤. し か し,こ. の 応 答 は,脊. 髄神 経 の 自由終 末 の 周 辺 に あ る感 覚. 立 化 学 受 容 細 胞 と 考 え ら れ て い る)の も の で あ る と い う 説 も あ り,脊. 髄. 神 経 の 自 由 終 末 に つ い て は 不 明 な 部 分 が 多 く残 さ れ て い る 。 魚 類 に お け る 化 学 感 覚 の 行 動 学 的 お よ び 電 気 生 理 学 的 解 析 は,種 維 持,仲. 間 と の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に お い て,重. ら か に して い る 。 た と え ば,索. 々の 化 学 物 質 が 生 命 や 種 の. 要 な化 学 信 号 と して 用 い られ て い る こ と を 明. 餌 ・摂 餌 行 動 で は,行. 動 実 験 に よ って 嗅 覚 お よび 味 覚 の 両 感 覚. と も に 誘 引 や 摂 餌 促 進 に 関 与 す る こ と が 知 られ て い る(Parker,1911,1914;Sato,1937; BardachetaL,1967;GohandTamura,1980b)。. ま た,電. 気 生 理 学 的 研 究 に よ って 嗅. 覚 器 お よ び 味 覚 器 と も に 餌 抽 出 液 や 餌 生 物 に 多 く含 ま れ て い る ア ミ ノ 酸 に 対 し て 高 い 感 受 性 を もつ こ と が 明 らか に さ れ て い る(..,1993;日. 高,1991)。. 嗅 覚,味. 覚 以 外 の 化 学 感 覚 で は,. ホ ウ ボ ウ の 胸 鰭 の遊 離 鰭 条 を神 経 支 配 して い る 脊 髄 神経 もイ カの 抽 出 液 や ア ミノ 酸 等 に 応 答 す る こ と か ら,脊 1984)。. ま た,コ. Tarnura,1980),摂. 髄 神 経 の 自 由 終 末 も 摂 餌 行 動 に 関 与 す る も の と 思 わ れ る(SilverandFinger, イ の 孔 器 も い く つ か の ア ミ ノ 酸 に 応 答 す る こ と が 報 告 さ れ(Kawamuraand 餌 行 動 に 何 ら か の 関 与を し て い る 可 能 性 も 考え ら れ る が,脊. 髄 神 経や 孔. 器 に お け る 摂 餌 の 関 与 に つ い て は 不 明 点 が 多 い 。 摂 餌 抑 制 を 示 す も の と し て,フ tetrodotoxinは. ニ ジ マ ス の 摂 餌 を 阻 害 す る こ と が 観 察 さ れ,電. 3. グ毒の. 気生 理学的研 究 に よって もニジ.

(9) マ ス な ど の サ ケ 科 魚 類 の 味 覚 器 がtetrodotoxinや. 麻 痺 性 貝 毒 のsaxitoxinに. を 示 す こ と が 明 ら か に さ れ て い る(YamamorietQt.,1988)。 関 係 で は,サ よ っ て}サ. 対 して高い 感受 性. 一 方,生. 殖行動 と化学感 覚の. ケ の 母 川 回 帰 が よ く知 られ て い る 。 これ は 多 く の 行 動 学 的,電. ケ が 産 卵 遡 河 す る と き,自. 分 の 生 ま れ た 母 川 の ニ オ イ を 嗅 覚 に よ っ て 識 別 し,母. へ 正 確 に 回 帰 で き る こ と が 知 ら れ て い る(Hasler …iandHirsch,1982)。 明 で あ る 。 ま た,生. 気生理 学的研 究 に. し か し,母. 川. ,1966,1983;Hara,1970;. 川 水 中の 有 効 ニ オ イ物 質 が何 で あ る か は 現 在 も不. 殖 フ ェ ロ モ ンに よる 嗅 覚刺 激 が求 愛 行 動 や 産 卵 行 動 を 誘 発 す る こ と は 行 動. 学 的 お よび 電 気 生 理 学 的 研 究 に よ っ て 明 ら か に さ れ て い る(Sorensen,1992)。 電 気 生 理 学 的 な 証 明 は な さ れ て い な い が,行. 動 実 験 に よ って 化 学 感 覚 と行 動 と の 関 連 が 指 摘. さ れ て い る も の も 多 く 報 告 さ れ て い る 。 た と え ば,傷. 害 を受 け た 魚 か ら分 泌 さ れ る警 告 物 質 に. よ る 逃 避 行 動(Pfeiffer,1963;Smith,1982),上. 流 にい る哺 乳 動 物 の 皮 膚 か ら溶 出 し た物. 質 に よ る サ ケ 遡 上 の 一 時 的 停 止(BrettandMackengie,1952;Idler,1956),個 別 に よ る 社 会 的 地 位 の 形 成(Toddetal.,1967),母 1963,1964),ハ. 子 の 関 係 や 同 種 の 仲 間 の 認 識(Kuhme,. ヤ の1種 の 稚 魚 に お け る 水 生 植 物 の ニ オ イ 識 別 に よ る 餌 場 や 隠 れ 場 所 の 認 識. (WalkerandHasler,1949),ゴ. ン ズ イ の 成 群 行 動(木. れ て い る 。 こ れ らの 行 動 実 験 で は,嗅. ら,1994)な. どが知 ら. 覚 遮 断 に よ って 反 応 が 消 失 す る こ と か ら,各. 行 動 にお け. る 嗅 覚 の 重 要 性 が 示 唆 さ れ て い る 。 そ れ に 対 し て,行 い る も の に,サ. 体 臭の識. 下,1977;林. 動 実験 に よ って 味 覚 の 関 与 が 示 唆 され て. メ に ミ ナ ミ ウ シ ノ シ タ の も つ 毒(pardaxin)を. 入 れ た餌 を食 べ させ た と き に み. ら れ る 摂 餌 回 避 行 動(PrimoretαL,1983;橘,1987,1992),魚. 毒 性 を 有 す る 海 藻 か ら抽. 出 さ れ た 防 御 物 質 に よ る 摂 餌 阻 害(PaulandFenica,1983;PaulandHay,・..; Hay,1987)が. 知 ら れ て い る 。 さ ら に,ど. の 器 官 が 関 与 し た 行 動 な の か 調 べ られ て い な い が,. 化 学 感 覚 の 重 要 性 が 示 唆 さ れ て い る も の に,ク. マ ノ ミ が 共 生 して い る イ ソ ギ ン チ ャ ク の 分 泌 す. る 物 質 を 識 別 認 識 で き る こ と(Murataofai.,1986;納. 谷,1987),低. 酸 素 水(山. 元,1987). 及 び 農 薬 や 重 金 属 等 の 有 害 物 質(GiattinaandGarton,1983;BeitingerandFreeman, 1983;山. 元,1991)に. (Smith,1991),タ. 対 す る 忌 避 行 動,サ. メの 界 面活 性 剤 な ど の 忌 避 物 質 に対 す る 忌 避 行 動. イ リ ク バ ラ タ ナ ゴ の 雄 に お け る ア ミ ノ 酸 刺 激 に よ る 放 精 行 動(Kawabata. etα 乙,1992a,b)な. ど の 研 究 が あ り,魚. 類 の 行 動 と 化学 感 覚 は密 接 な 関 係 にあ る こ とが 明 ら. か に さ れ て い る。 一方. ,種. 郷,1991)や. 々 の 魚 類 の 嗅 覚 器 に お け る 塩 類,ア ブ リ,マ. ル コ ー ル,脂. 肪 酸 等 の 物 質 に 対 す る 応 答(小 林 ・. ダ イ の 嗅 覚 器 に お け る 赤 潮 プ ラ ン ク トン 培 養 濾 液 に 対 す る 応 答. (KobayashiandIshida,1985),コ. イ,ウ. (Hidaka,1970;Yoshiietat,1980;YamasYiitaetal.,1989),コ. ナ ギ,ニ. ジ マ ス の 味 覚 器 に お け るCO2応. 答. イの孔器 にお けるア. ミノ 酸 応 答 の よ う に 化 学 感 覚 器 官 の 電 気 生 理 学 的 な 解 明 が 多 く の 研 究 に よ っ て な され て い る が, その行動学 的 意義が 確認 されていない場合が多い。 上 記 の よ う に 現 在 ま で に,魚. 類 の 化 学 感 覚 に 関 す る 多 くの 研 究 が な さ れ て い る が,そ. 4. の知見.

(10) は未 だ 断 片 的 で あ り,い か な る物 質 が どの よ う な 行 動 学的 意義 を もち,か つ,化 学 感 覚 の そ れ ぞ れ の 受 容 器 に有 効 な 刺 激 物 質 は何 で あ るか を電 気 生 理 学的 に調 べ た研 究 は 少 な い 。 本 研 究 は大 別 して 二 つ の 視 点 か ら,魚 類 の 化 学 感 覚 の 役 割 や 応答 性 につ い て 検 討 を行 っ た 。 そ の 一 つ は,摂 餌 行 動 にお け る嗅 覚 器,味 覚 器,孔 器 の 役 割 分 担 を 明 らか にす る こ とで あ る 。 空 気 を 媒 体 と し た環 境 に生 息 す る 陸 上動 物 で は,嗅 覚 器 は空 気 中 を伝 播 で き る 揮 発 性 物 質 を 感 知 す る が,昧 覚 器 は 食 物 中 に 含 ま れ る水 溶 性物 質 を 感知 す る とい う よ うに,そ れ ぞ れ の 器 官 は 種 類 や 状 態 の 異 な る 化 学 物 質 を 感 知 す る。 そ れ に対 して,水 を媒 体 と した環 境 に生 活 し て い る 魚 類 の 場 合 は,い ず れ の器 官 も水 に溶 解 して い る化 学物 質 を 感知 す る 。 た と え ば,ア. ミ ノ酸 は. 人 の 嗅 覚 器 で は感 知 で き な い 物 質 で あ るが,魚 類 で は,上 記 の よ うに 摂 餌 促 進 や 誘 引効 果 を も た ら し,嗅 覚 器,味 覚 器,孔 器 の い ず れ の 器官 に お いて も感 知 され る。 これ らの 受 容 器 か らの 中 枢 へ の神 経 伝 達 経 路 は異 な って い る に もか か わ らず,各 器 官 が 同 じ刺 激 物 質 を 同 時 に 受 容 す る こ と は,そ れ ぞれ の 器 官 が 摂 餌 行 動 に 対 して ど の よう な役 割 を果 た して い る の か 疑 問 を 投 げ か け る。 ま た,各 器 官 の 感 度 にっ い て も陸 上 動 物 の 化学 感 覚 と異 な る点 が み られ る 。 陸 上 動 物 で は,嗅 覚 の感 度 は 高 く,遠 くか ら飛 来 し,拡 散 希釈 され た低 濃 度 の 化学 物 質 を 感知 で き る が, そ れ に対 して,味 覚 の 感 度 は比 較 的 低 く,口 腔 内 に 摂取 した 食 物 中 に比 較 的 高 濃 度 で 含 まれ て い る味 物 質 を 感 知 す る。 魚 類 にお い て も,概 し て,同 様 の 傾 向 で あ るが,顔 面 昧 覚 系 の 発 達 し た 魚 種 の味 覚 器 が 嗅 覚 器 と 同 等 以 上 の 感 度 を もっ こ とは よ く知 られ て い る(Caprio,1978; Yoshiietai.,1979;Ki.yoharaetai.,1981Maruietai.,1983;Hidakaand Ishida,1985)。. ナ マ ズの1種 で は,味 覚 の み を用 い て用 い て,離 れ た と こ ろ に あ る餌 を 探 索. で き る こ とが 報 告 され て い る(Bardachetai.f1967;MaruiandCaprio,1992)。. これ ら. の味 覚 の 発 達 した 魚 種 で は,嗅 覚 と味 覚 の 間 に 明 確 な機 能 的差 異 が 認 め られ ず,摂 餌 行 動 に お け る そ れ ぞ れ の 役 割 に つ い て の 理 解 を困 難 な も の に して い る。 そ こで 著者 は,摂 餌 に お け る化 学 感 覚 の 各 器 官 の 役 割 分 担 を明 らか にす る こと を一 つの 目的 と して,研 究 を行 っ た。 二 番 目の 視 点 は,農 薬 や 赤 潮 ・ア オ コ 関 連物 質等 の環 境 汚 染 物 質 に対 す る 化 学 感 覚 の 応 答 性 と これ が 受 け る 影 響 を 明 らか にす る こ とで あ る 。 河 川 や 湖 沼 にお け る農薬 や 赤 潮 ・ア オ コ に対 して 鋭 敏 な 感 度 を有 す る 魚類 の 化 学 感 覚 器 官 は,こ れ らの 化 学 物 質 を感 知 し,魚 が 高 濃 度 に曝 露 さ れ る前 に 逃 避 で き る か 否 か と い う問 題 や,曝 露 され た と き化 学 感 覚 器 が 受 け る 影 響 に つ い て の 問 題 を 惹 起 し,魚 類 の 生 存 戦 略 を考 え る点 にお いて 重 要 で あ る。 また,農 薬 は水 生 生 物 に と っ て 今 まで に 経 験 した こ との な い 全 くの 異物 で あ る。 これ に対 して 化 学 感 覚 器 官 は 有 効 に機 能 す る の か,ま た,そ の と きの 受 容 メ カ ニ ズ ム は どの よ うな 仕 組 み で あ るの か 興 味 の あ る 問 題 で あ る。 最 近,栗. 原(1990a)は,ニ. オ イ受 容 に お いて ニ オ イ分 子(疎 水 性 物 質)が 受 容 タ ンパ. ク 質 を 介 せ ず,嗅 細 胞 膜 の脂 質 二 分 子 膜 の 間 隙 に吸 着 され る こ と に よ って 受 容 され る と い う受 容 メ カニ ズ ム の 存 在 を示 した 。 農 薬 の 多 くの も の は 疎水 性 で あ り,脂 質 膜 に 吸 着 さ れ る もの と 思わ れ る 。 農 薬 に 対 す る 応 答 と,受 容 タ ンパ ク 質 と結 合 す る こ と が 知 られ て い る ア ミ ノ酸 (BrandandBruch,1992)に. 対 す る応 答 との 比 較 は,化 学 感 覚 器 の 受 容 メ カ ニ ズ ム の 解 明. 5.

(11) へ の 貢 献が 期 待 さ れ る。 本 研 究 は感 覚 生 理 学 的 な 手 法 を用 い て,魚 類 の 生活 環 境 に存 在 す る 化 学 物 質 に 対 して,そ れ ぞ れ の 化 学 感 覚 器 官 が 果 た す 役 割 を 明 らか にす る こと を 目的 と して 行 っ た。 第1章 で は,餌 料 エキ ス 成 分 物 質 に 対 す る化 学 感 覚 器官 の 応 答 特 性 と魚 種 に よる食 性 の差 異 との 関 係を 検 討 した 。 第2章 で は,コ イ の 農 薬 に 対 す る感 知 お よび 忌 避 行 動 にお い て 嗅 覚 が 重 要 な役 割 を 果 た す こ と を 明 示 した 。 ま た,コ イ 嗅 覚 器 の 農 薬 に対 す る 応 答特 性 に つ い て 考 察 した 。 さ ら に,コ イ の 農 薬 に対 す る忌 避 行 動 に お い て,そ. の 忌 避反 応 を 増 強 させ る 方 法 を 検 討 した。 第3章 で は,農 薬. 曝 露 が コイ 嗅 覚 器 に 及 ぼ す 影 響 を検 証 した 。第4章 で は,魚 類 は ピ コ プ ラ ンク ト ン及 び シ ャ ト ネ ラ赤 潮 の 培 養 路 液 に 含 まれ るニ オ イ物 質 を 嗅 覚 で感 知 して 忌 避 す るが,魚 種 に よ っ て そ の 感 知 能 力 が 異 な る こ と を 示 した 。. 6.

(12) 第1章. 摂 餌 刺激物 質 に対す る摂餌行動 と化学感 覚. 緒 言 環 境 水 中 に溶 出 され た餌 料 生 物 に 由来 す る化 学 物 質は,魚 類 の索 餌 や摂 餌 行 動 にお け る化 学 信 号 と して 利 用 され て い る 。 す な わ ち,魚 類 は 餌生 物 か ら水 中 へ 溶 出 ・拡 散 した 化 学 物 質 を 鋭 敏 な 感 度 を もつ 化 学 受 容 器 を 用 い て 餌 生 物 の い る 場所 を探 索 し,摂 餌 を行 う。 魚 類 の 餌 と な る 生 物 の 組 織 中 に はfア ミ ノ酸,ペ. プ チ ド,有 機 酸,糖,核. 物 質 が種 々 の 濃 度 で 含 まれ(坂 口,1991),餌. 酸 関 連 物 質,グ ア ニ ジ ン 化 合 物 等 の. 料 生物 の外 傷 や 死 亡 に よ る組 織 の 分 解,あ. 無脊椎 動物 の 浸透 圧 調 整 の ため の ア ミノ 酸代 謝(091esby,1978)等. るい は. に よ って 水 中へ 放 出 さ れ る。. 餌 生 物 の 含 有 成 分物 質 の 中 で 遊 離 した状 態 で 存 在 し,か つ水 溶 性 の物 質 は,水 中 へ 溶 出 しや す く,遠 くま で 拡 散 さ れ る。 魚 類 の 化 学 感 覚 器 官 は これ らの拡 散 ・希釈 され た 僅 か な 化 学 物 質 を 感 知 し,索 餌 や 摂 餌 行 動 にお け る 重 要 な 情 報 を提 供 す る こと が 多 くの研 究 に よ っ て 明 らか に さ れ て い る(Hara,1992)。. しか し,餌 料 エ キ ス成 分 物 質 に対 す る化 学 感 覚 器 官 の 役 割 に つ い て. の 知 見 は未 だ に 断片 的 で あ り,ま だ 解 決 す べ く多 くの 課 題 が 多 く残 さ れて い る。 本 章 で は,下 記 の 課 題 を 明 らか にす る こ と を 目的 と して,実 験 を行 った 。 第1の 課 題 と して,索 餌 ・摂 餌 行 動 にお い て 嗅覚 器 や 味 覚 器 が 関 与 して い る こ と は 多 くの 知 見 が 得 られ て い るが(小 林 ・郷,1991;日. 高,1991),孔. 器 の 働 き につ い て は ほ と ん ど知 られ. て い な い。 ま た,索 餌 ・摂 餌 行 動 に お け る 各 器 官 の 役割 分 担 の 関 係 につ い て も明 らか に さ れ て い な い 。 そ こ で,第1節 け る嗅 覚器,味. で は,コ イ の 配 合 飼 料抽 出 液 に対 す る 摂 餌 誘 引行 動 を 調 べ,摂. 餌 にお. 覚 器,孔 器 の そ れ ぞ れ の 器 官 の 関 与 に っ い て検 討 し た。 第2節 で は,コ イ の 配. 合 飼 料 抽 出 液 に対 す る そ れ ぞ れ の 器 官 の 電 気 生 理 学 的 応答 を調 べ た 。 次 の 課 題 と して,餌 料 由 来 の 物 質 に対 す る化 学 感 覚 器の 応 答 特 性 に は,動 物 の 食 性 の差 異 を 反 映 した特 異 性 が 認 め られ る か 否 か と い う問 題 が あ る。 陸 上 動物 で は,Na含. 量 の少 な い植物. を食 物 と して い る草 食 動 物 の 味 覚 は 塩 味 感 受 性 が 高 く,そ れ に 対 して 肉食 動 物 で は 塩 味 感 受 性 が 低 い こ と が 知 られ て い る(佐藤,1991)。. しか し,魚 類 にお い て は,味 覚 の 応 答 性 が 魚 種 特 異. 性 を示 す こ と は報 告 さ れ て い るが(IshidaandHidaka,1987),そ. れ が食 性 の差 異 を 反 映 し. た もの なの か を 明確 に で き る 十 分 の 知 見 は まだ 得 られ て い な い 。 また,餌 料 エ キ ス 成 分 物 質 に 対 して 味覚 と同 等 か そ れ 以 上 の 高 い 感 受 性 を示 す 嗅 覚の 食 性 の 差 異 と の 関 連 性 に つ い て は ほ と ん ど知 られ て い な い 。 そ こ で,第3節. で は,植 物 食 性 魚種 の 嗅 覚器 に お け る 餌 料 エ キ ス 成 分 物. 質 の 代 表 的 な 物 質 で あ るア ミノ 酸 に 対す る 電 気 生 理 学的 応答 を 調 べ,既 報 の 種 々 の 食 性 を もっ 魚 種 と の比 較 検 討 を 行 い,第4節. で は,食 性 の 異 な る種 々 の 海産 魚6種 の 味 覚 器 の ア ミ ノ酸,. 核 酸 関 連物 質,ベ タ イ ン に対 す る電 気生 理 学 的 応 答 を調 べ,既 報 の 種 々の 食 性 を もっ 魚 種 との 比 較 検 討 を 行 っ た 。 さ らに,第4節. で は,高 い 感 受 性 を示 し た シマ イサ キ の 味 覚 器 に お け る 他 7.

(13) の 餌 料 エ キ ス 成 分 物 質 で あ るペ プチ ド,有 機 酸 ,糖,グ. ァ ニ ジ ン化 合 物 等 の 物 質 に対 して も 詳. 細 に調 べ た 。 第5節 で は,種 々 の 魚 種 にお け る嗅覚 器 と味 覚 器 の ア ミノ 酸 に 対 す る 応 答 特 性 を 比 較 し,そ れ ぞ れ の 器 官 の 役 割 に っ いて 考 察 した 。. 第1節. 配合飼 料抽 出液 に対する摂餌行 動. 本 節 で は,Y字. 型 水 槽 を用 い て 飼料 抽 出 液 に対 す る コ イの 誘 引 行 動 を嗅 覚 器 及 び 孔 器 の 感 覚. 機 能 を遮 断 し た と き に 起 こ る 影 響 を 調 べ,摂 餌 にお け る 各 化 学 感 覚器 官 の 役 割 に っ い て 検 討 し た。. 材料 と方法. 供 試 魚 と して,体 重32.2±4.5gの. コイ40尾(化 学 感 覚 遮 断 実 験)と 体 重745.0±30.2gの. コイ. 20尾(化 学 感 覚 刺 激 実 験)を 用 い た 。 コイ は 東大 阪市 に あ る 養 殖 場 か ら入 手 し,水 温23±1℃ 調 節 し た5001水. に. 槽 内で3ヵ 月 以 上順 化飼 育 され た 。 飼 育 期 間 中 は コ イ 用 配 合 飼 料(日 本 農 産 工. 業)の 投 餌 を 一 日 一 回 と し,実 験終 了後 に投 与 した 。 飼 育 水 は,嗅 覚 器 の 脱 感 作 な ど の影 響 を で き る 限 り少 な くす る た め,循 環 濾 過 に よ る水 質 の 浄 化 と,曝 気 に よ って 脱 塩 素 処 理 した 水 道 水 で 飼 育水 の 全 量 を 毎 日換 水 を 行 う方 法 と を併 用 して,常 に 良 好 な水 質 を維 持 す る よ う注 意 し た 。 飼 育 及 び 実 験 に 用 い た 脱 塩 素 処 理 した 水 道水 の水 質 を表1-1に 炭 素 分 圧,pHは. 血 液 ガ ス 分 析 装 置(IL社,ILメ. 示 し た 。酸 素 分 圧,二 酸 化. ー タ)に よっ て 測 定 し,そ の 他 の 項 目に つ い て. は(株)新 日本 気 象 海洋 に分 析 を依 頼 した。 実 験 は飼 育水 温 と 同 一 条 件 の23±1℃ で 行 っ た。 試 験 液 と して,誘 引 行 動 及 び 索 餌 行 動 の 観 察 の た め に 飼料 抽 出 液 を用 い た 。 飼 料 抽 出 液 の 調 製 方 法 は,飼 育 時 に 用 い て い る コ イ用 配 合 飼 料(ニ ュ ー カー プ,日 本 農 産 工 業)の 所 定 量 の 粉 末 を10分 間 蒸 留 水 中 に 浸 漬 し,iO,102,103,104オg/1の4段. 階 の 濃 度 の 溶 液 を 作 製 し,そ の. 上 澄 液 を ろ 過 して 実 験 に供 した 。 飼 料 抽 出液 の 調 製 は 実験 の 直 前 に行 っ た 。 実 験 は,ま ず,正. 常 な コイ40尾(体 重43±31g)を. 用 いて飼料抽出液 に対す る誘引 行動 を調. べ た 後,そ の 中 か ら20尾 を 嗅 覚 遮 断 処 理 を,残 り20尾 を孔 器 を含 む 側 線 感 覚 の 遮 断 処 理 を 行 た 。 感 覚 遮 断 の 処 理 方 法 は ・%000濃. 度 のMS222(tricsinemethanesulfonate)で. く麻 酔 した 後,嗅 覚 遮 断 の 場 合 は歯 科 用 接 着 剤(G・C'Repairsin,而. 軽. 至 陶 歯 工 業)を 左 右 両. 鼻 孔 に 注入 し て 鼻 孔 を 閉 塞 し,孔 器 及 び 側 線 感 覚 遮断 の 場合 は 孔 器 及 び 側 線 孔 の 開 口部 か ら接 着 剤(ア ロ ン ア ル フ ア,東 亜 合 成)を 注 入 した 。 この処 理 方法 に よ って 各 器 官 の 感 知 能 力 が 完 全 に消 失 して い る こ と を 他 の コ イ を 用 い て 第2節 に示 す 電 気 生 理 学 的 手 法 に よ って 確 認 し た 。 処 理 を 受 け た コ イ は3日 間 休 息 させ た 後,再 び 誘 引行 動 実験 に 用 い,感 覚 遮 断 に よ る 影 響 を調 べ た。 た だ し,こ の 休 息 時 に 摂 餌 を 行 な わ な か った 個体 や 遊 泳 行 動 等 の 外 見 上 異 常 の み られ た 個 体 は 処 理 に よ る 影 響 か ら 回 復 し て い な い と思 わ れ るた め,実 験 に は用 い なか っ た。 対 照 実 験 の .. a.

(14) 感 覚 器 官 を遮 断 し な い 対 照 魚 に お い て も同 様 の 方法 で麻 酔 を行 い,手 術 台 に 乗 せ 遮 断 処 理 操 作 に要 し た時 間 だ け その ま ま魚 を放 置 した後 に 実験 に用 い た 。 コ イ の 飼 料 抽 出液 に 対 す る誘 引 行 動の 実 験 は,Y字 型 水 槽(腕 部 水 路 の 長 さ90cm,水 10cm,水. 路 の幅. 深10cm〕 を 用 い て 行 っ た(図1-1)。Y字 型水 槽 の周 囲 を遮 蔽 幕で 囲 み,後 方 の 遮 蔽 幕. の 隙 間 か ら コ イの 行 動 観 察 を行 っ た 。 実験 水 槽 の 上 に照 明 を 設 置 し,水 深10cmで 50Luxで. の照 度 は. あ っ た 。 実 験 の 際 はY字 型 水 槽 の 両 腕 水 路 そ れ ぞれ か ら脱塩 素 水 を常 に51/minの. 一. 定 流 速 で 流 し た 。 牛 乳 及 び メ チ レ ンブ ル ー 染 色 液 を 用い た流 水 試 験 に よ って,こ の 実 験 条 件 下 で は,水 は水 槽 内 に停 滞 残 留 す る こ と な く注 水 口か ら排 水 口まで3分 で 運 ば れ,両 腕 水 路 か ら の 流 水 は ス ター ト地 点 に お い て も両 流 水 が ほ とん ど混 合 す る こ と な く流 れ る こ と を 確 認 し た (図1-2)。 実 験 は次 の 手 順 で 行 った 。 まず,Y字. 型 水 槽 に コイ を1尾 収 容 し,水 路 合 流 部 に暗 幕 で 覆. いを した 暗 所 を 設 け,そ こ を ス タ ー ト地 点 と した(図H)。. コイ が暗 所 に隠 れ,安 静 状 態 に な っ. て か ら実 験 を 開 始 し た 。 実 験 開 始 後 は静 か に暗 幕 を取 り外 して コイ の 行 動 を観 察 し た 。Y字 型 水 槽 の 一 方 の腕 部 水 路 に 試 験 液 を2.5ml/minの. 一定 流 速で ペ リ ス タ テ ィ ッ ク ポ ン プ を 用 い て. 水 路 へ 供 給 さ れ る流 水 中 に 注 入 し た 。試 験 液 が流 水 に よ って 希 釈 され,ス タ ー ト地 点 に 到 達 し た と き 所 定 の 濃 度 に な る よ う に 試 験 液 の 濃 度 を調 整 した 。他 方 の 腕 部水 路 は,対 照 と して 蒸 留 水 を 同 様 の 方 法 で 流 した 。 試 験 液 を流 す 水 路 を 試行 毎 に ラ ンダ ム に選 択 し た 。 実 験 は1尾 の コ イで 一 つの 試 験 液 に 対 して 低 濃 度 か ら高 濃 度 へ と順 次 試 行 を行 い,こ れ を1シ り一 ズ と し た 。 試 行 と試 行 の 間 隔 は10分 以 上 あ けて 行 い,と くに 高 濃度 の 試 験 液 に よ る試 行 の 場 合 は,十 分 に 間 隔 を あ け,コ イ が ス ター ト地 点 で 安静 にな る まで 休息 させ た 。 ま た,こ の10分 間 の 休 息 期 間 中 は,ペ. リス タ テ ィ ック ポ ン プ の逆 送 に よ って 実 験 水槽 への 配 送 チ ュ ーブ 内 に残 留 して い る試. 験 液 を 逆 洗 除 去 した 。 行 動 の 評 価 方 法 は,一 方 の 水 路 か ら試 験 液 を,他 方 の水 路 か ら蒸 留 水 を流 し た と き,コ イ が 誘 引 さ れ,ス. タ ー ト地 点 か ら前 進 す る行 動 を5分 間 観 察 し,そ れ ぞ れの 腕 部 水 路 に位 置 して い. た 時 間 の 測 定 を 行 い,01s6nandH691und(1985)の (BehavioralReactiollvalue,以 TA‐Ta Ta+Ts .,:反. 用 い た 次 式 に 従 っ て,行. 動 反応 値. 後 ・rと 記 す)を 求 め た。. x100BRv=. 応値. TA:試. 験 液 を流 した水 路Aに い た 時 間 砂). TB:蒸. 留 水 を流 した水 路Bに い た 時 間(秒). この 式 か ら求 め られ た反 応 値 が 正 の 値 を 示 し た と きを 誘 引,負 の 価 を示 し た と き を 忌 避 とみ な した 。 各 実 験 の20例 の デ ー タ に よ る誘 引 行 動 の 有 効 性 は,そ れ ぞ れ の 濃 度 の 試 験 液 に 対 す る 反 応 値 と両 水 路 か ら蒸 留 水 を流 し た と きの 対 照 実 験 の反 応 値 とをWlleoxonの 定 に よ って 比 較 判 定 し,有 意 差(P<0.05)の. 符 号付 順 位 和 検. 認 め られ た 最低 濃 度 を誘 引行 動 を起 こす 閾 値 と し 9.

(15) た 。. 結. 果. 104μg/1の 配 合 飼 料 抽 出 液 を 一 方 の水 路 に,蒸 留 水 を 他 方 の水 路 に 流 し た と き の コ イ の 遊 泳 行 動 の 軌 跡 を 図1-3に. 示 した 。 コ イ はY字 型水 槽 の腕 部 先 端 に あ る 配 合 飼 料 抽 出 液 の 流 入 口へ. す ば や く泳 い で い き,水 槽 の 底 面 や 壁 面 を盛 ん に つい ば む行 動 が 観 察 され た 。 対 照 と して 蒸 留 水 を 両 水 路 か ら流 し た と き の 平 均 反 応 値 は3±32で あ り,対 照 実験 に お い て コイ は ど ち らか の 水 路 に偏 在 しな い こ とが 示 さ れ た(図1-4,a)。. 配 合 飼 料 抽 出 液 に 対 して は,平 均 反 応 値 は 濃. 度 の 増 加 と と も に増 加 し,対 照 の平均 反 応 値 と比 較 した とき,102Ng/は 有 意 な 増 加 が み られ(P<0.05),104オg〃. で の 反 応 値 は85±15に. り高 い 濃 度 に おい て 。. 達 し,強 い 誘 引 効 果 を 示 す こ. とが 明 らか に さ れ た 。 嗅 覚 遮 断 処 理 は,配 合 飼 料 抽 出 液 に 対 す る誘 引 効 果 を 阻 害 し,調 べ た もの の 中 で 最 高 濃 度 で あ る104μg〃 に 対 し て も,誘 引 効 果 はみ られ な か った(図1-4,b)。 孔 器 感 覚 を遮 断 さ れ た コ イ は,正 常 な コ イの場 合 と同 様 に,配 合 飼 料 抽 出 液 に 対 して 誘 引 効 果 が み られ,平 均 反 応 値 は 濃 度 の 増 加 と と もに 増 加 を 示 した 。反 応 の 閾 値 は142オg/1で. あ っ た(. 図1-4,C)。. 考. 察. 本 実 験 は,低 濃 度 の 配 合 飼 料 抽 出 液 に対 して 明 確 な 誘 引 行 動 を示 した 。 しか し,実 験 前 の 水 温 順 化 の と き,飼 育 水 槽 の 異 な って い た コイ を用 いた 実 験 にお い て,未 処 理 で あ る に も か か わ らず,誘 引 効 果の み られ な か っ た 実 験 例 があ っ た。 この飼 育 水 槽 で は,過 密 飼 育 して い た た め, 水 質 の 悪化 が 懸 念 さ れ た 。 そ こで,そ の水 槽 の飼 育水 の 全 量 交換 を 毎 日1回 行 い な が ら,1ヶ 月 間 飼 育 した 後,実 験 に 供 した と ころ,そ の コ イ は低 濃 度 の 配 合 飼 料 抽 出 液 に対 して 誘 引 効 果 が み られ る よ う にな っ た 。 山森(1995)は,エ. ゾ イワ ナ のL-serfne嗅. 応 答 が,そ の 物 質 に順. 応 さ せ る こ と に よ って,応 答 の 低 下が み られ る こ とを報 告 した 。 上 記 の 過 密 飼 育 は,飼 育 魚 の 排 泄 や 分 泌 に よ る 飼 育 水 へ の ア ミノ酸 等 の 有 機 物 の蓄 積 を もた ら し,そ の結 果,コ. イの 嗅 覚 器. の 順 応 に よ る 感 受 性 の 低 下 を 引 き起 こ した もの と思わ れ る 。 し た が って,以 後,コ. イ飼 育 水 の. 全 量 交 換 を1日1回 必 ず 行 った 。 魚類 の 摂 餌 行 動 に は,餌 か ら受 け る刺 激 に よ って 餌 の 存在 に気 付 く段 階(arousa1),餌 探 索(search),口. 腔 内へ の 取 り込 み(uptake),摂. れ て い るが(BardachandVillars,1974),本. 取(ingestion)の. の. 各 行 動 要 素 か ら構 成 さ. 実験 で 得 られ た誘 引 行 動 の 結 果 は,餌 か ら. 受 け る 刺 激 に よ っ て 餌 の存 在 に気 付 く段 階 と餌 の 探索 に 関 与 す る もの で あ る。 嗅 覚 遮 断 は,顕 著 な 配 合 飼 料 に対 す る誘 引効 果 の 低 下 を示 し た。 こ の こ と は,コ イの 配 合 飼 料 に対 す る誘 引 行 動 にお い て,嗅 覚 が 重 要 な 役 割 を果 た して い る こ とを示 唆 す る 。 ナ マ ズ の1 種 のbullheadは. 嗅 覚 を遮 断 して も離 れ た と こ ろ にあ る餌 を 味 覚 に よ っ て 探 索 で き る こ と を 明 ら 10.

(16) か に し た(BardachetαL,1967)。. こ れ は,本. 実 験 の 結 果 と 異 な る が,餌. の探索 の ときに. 用 い る 化 学 感 覚 器 官 は 魚 種 に よ っ て 異 な る こ と が 示 唆 さ れ る 。 嗅 覚 の 重 要 性 は,農 忌 避 行 動 に お い て も 報 告 さ れ,嗅. 薬 に対す る. 覚 遮 断 に よ って 忌 避 効 果 の 低 下 す る こ とが 示 され た. CHidaka,1989)0 孔 器 感 覚 遮 断 は,顕 こ と は,孔. 著 な 配 合 飼 料 に対 す る誘 引 効 果 に ほ とん ど影 響 を及 ぼ さ な か っ た 。 この. 器 感 覚 の 索 餌 ・摂 餌 に お け る 貢 献 低 い も の で あ る と 思 わ れ る 。 孔 器 感 覚 の 電 気 生 理. 学 的 研 究 に お い て も,一. 部 の 酸 性 ア ミ ノ 酸 を 除 い て,ア. ミノ酸 に対 して 孔 器 は 応 答 性 を 示 さな. か っ た こ と が 明 らか に さ れ て い る(KawamuraandTatnura,1980)。 嗅 覚,味. 覚,孔. 器 感 覚 の 種 々 の 刺 激 物 質 に 対 す る 応 答 性,な. らび に 行 動 へ の 役 割 に つ い て は,. 第2章 で さ ら に 詳 細 な 検 討 を 行 っ た 。. 第2節. ア ミノ酸 に対す る嗅覚の電気生理学的応答. 本 節 で は,魚 類 の 嗅 覚 に お け る応 答 特 性 と食 性 の差 異 との 関 係 を明 らか にす る こ と を 目的 と して,今 まで に ほ と ん ど報 告 さ れ て い な い 植物 食 性 魚類 に注 目 し,海 藻 を食 べ る ア イ ゴ及 び 付 着 藻 類 を主 食 とす る ア ユ を 用 い て,餌 料 エ キ ス 成 分物 質 の代 表 的 な物 質で あ るア ミ ノ酸 に 対 す る嗅 応 答 を 電 気 生 理 学 的 に調 べ た。. 材料と方法 供 試 魚 と して 海 藻 食 の ア イ ゴSiganusfuscescens(内 アユPlecoglossusaitiveiis(落. 合,1986)を. 田,1932)及. び 付着 珪 藻 を 主 食 とす る. 用 い た 。 ア イ ゴ は 山 口県 下 関市 の 安 岡 漁 業 協 同 組. 合 の 設 置 した 小 型 定 置 網 に よ っ て 採 捕 後,た だ ち に水産 大 学 校(下 関 市)に 運 搬 し,天 然 海 水 の 流 水 方 式 に よ る 室 内 飼 育 水 槽(16∼20℃)に. 収 容 し た 。 こ の 中 か ら 健 全 な20尾(体. 重220∼. 480g)を 数 日内 に実 験 に 供 した 。 実 験 は水 産 大 学校 魚類 生理 学研 究 室 で 行 っ た 。 ア ユ は京 都 市 に あ る水 産 業 者 か ら20尾(体 重54±6g)の. 琵 琶 湖産 ア ユ を 入 手 し,近 畿 大 学 水 産 生 物 研 究 室 の. 循 環 濾 過 方 式 と1日1回 飼 育 水 の 全 量 を換 水 す る方 法 とを併 用 した室 内水 槽 《20±1℃)内 で3週 間順 化 飼 育 した もの を 同研 究 室 で 実 験 に供 した。 供 試 魚 を筋 弛 緩 剤(d-tubocurarinechloride)を2.4∼2.6mg/kg体. 重の筋 肉注射 に よって不. 動 化 し た後,図1-5に. 示 した 実 験 装 置 内 に 固定 し,呼 吸 水 を鯉 へ 強 制 灌 流 し た 。 呼 吸 水 は,ア. イ ゴ の 場 合 は20±1℃. に調 節 した 天 然 海 水 を,ア ユ の 場 合 は 同水 温 の 脱 塩 素 処 理 した水 道 水 を. 用 い た 。 頭 蓋 の 一 部 を 切 除 して 嗅 球 を露 出 した 後,銀 一塩 化 銀 電 極 を 嗅 球 表 面 に 軽 く置 き,嗅 球 脳 波 の 導 出 を行 った 。 ア イ ゴ に お い て は,嗅 球 脳 波 の 導 出 は 嗅 球表 面 に2本 の 電 極 を 設 置 し た双 極 誘 導 を用 い,一 方,嗅 球 の 小 さい ア ユ に お い て は,関 電 極 を 嗅球 表 而 に,不 関電 極 を頭 蓋 に設 置 した 単 極 誘 導 を 用 い た。 導 出 され た 電 位 は,メ モ リ ・オ シ ロ ス コー プ(日本 光 電,VC一. 11.

(17) 10)に よ って モ ニ タ ーす る と 共 に,増 幅 した 電位 を電 気 的積 分 器(日 本 光 電,EI601G)に て 時 定 数o.oi秒 RJG4022)に. の 平 均 的 電 位 活 動(以 後,積 記 録 し た 。 ま た,導. よっ. 分 応 答 と記 す)と し てペ ン レ コ ー ダ(日 本 光 電,. 出 さ れ た 嗅 球 脳 波 は 磁 気 テ ー プ レ コ ー ダ(SONY. ,DFR. 3515》 に保 存 した 。 試 験 液 の 嗅 上 皮 刺 激 方 法 は,ア イ ゴの 実 験 で は 図1-6のaに 示 した 刺 激 装 置 を 用 い て,試 験 液0.1mlを. 嗅 上 皮 に 流 した 。 この 方 法 は鼻 孔 の 中へ 挿 入 した細 管 を通 して,呼. に調 整 した 濾 過 海 水(millipore,0.45μm)を. 一定 流 速(0.2ml/s㏄)で. 吸 水 と 同一 温 度. 嗅 上 皮 へ 常 時 流 して お. き,刺 激 時 に 流 路 の 途 中 に あ る試 験 液 注 入 口か らス ポ イ トに入 っ た試 験 液 を注 入 す る こ と に よ っ て,嗅 上 皮 を 試 験 液 で 刺 激 す る もの で あ る 。注 入 され た 試験 液 は 濾 過 海 水 に よ って 希 釈 され る が ・ 染 色液 を 注 入 し た と きの 吸 光 度 測 定 か ら求 め た そ の希 釈 率 は 約%oで. あ った 。 ア ユ の 実 験. で は 図1-6のbに 示 した電 磁 弁 を使 用 して流 路 を瞬 時 に切 り換 え る方 式 を採 用 した 。 こ れ は 一 方 の 流 路 か ら人 工 河 川 水(0.lmMCaC12溶. 液,pH6.78)を. 時流 し てお き,刺 激 時 に 電 磁 弁 に よって,あ. 一 定 流 速(0.2ml/sec)で. 嗅上皮へ 常. らか じめ用 意 して お い た 試 験 液(lml)の. 流路 に瞬. 時 に 切 り換 え,嗅 刺 激 を 行 う もので あ る。 刺 激 後 は再び 人 工 河川 水 の 流 路 に戻 し た 。 魚 類 の 嗅 上 皮 は 水 流 の変 化 等 の機 械 的 刺 激 に対 して鋭 敏 に 応 答 す る が,上 記 の 電 磁 弁 に よる 切 り換 え方 式 の 採 用 に よ って 水 流 の 変化 を極 力 低 減 さ せ る こ と が で き た 。 ま た,試 験 液 は 嗅 上 皮 灌 流 液 に よ っ て 希 釈 され る こ とな く嗅 上 皮 に到 達 した 。 試 験 液 の 調 整 は,実 験 直前 に行 い,ア イ ゴの実 験 で はア ミノ酸(和 光 純薬)を 上 記 の 濾 過 海 水 に,ア ユ の 実 験 で は 蒸 留 水 に溶 か し,所 定 の濃度 の ア ミノ酸 溶 液 を作 成 した 。 酸 性 ア ミ ノ酸 及 び 塩 基 性 ア ミノ酸 はNaOH及. びHCIを 用 い て,海 水で はpH8.2に,淡. 試 験 液 の 嗅 上 皮 刺 激 は104ML-alanine溶. 水 で はpH7.0に. 調整 した。. 液を 標準 刺 激 と し,随 時 こ の標 準 溶 液 に よ る刺 激. を行 い,嗅 応 答 の 再 現 性 を 確 認 しなが ら実 験 を行 った 。 刺激 の 順 序 は,ア ミ ノ酸1種 に 対 して 低 濃 度 の 試 験 液 か ら始 め,順 次 高濃 度 へ と進 めた 。嗅 覚 は 同 一 種 類 の 刺 激 を 連 続 して 行 う と順 応 が 生 じ る た め,刺 激 の 間 隔 は,3分. 以 上 あ けて 行い,と. くに 高 濃 度 の 試 験 液 に対 して は十 分. に刺 激 間 隔 を あ け,順 応 に よ る 影 響 が 生 じない よ うに注 意 した 。 応 答 閾 値 の 評 価 に は,ア. ミノ. 酸 を 含 まな い 対 照 水 に対 す る応 答 値 よ り高 い値 を示 した 最 低 濃 度 を採 用 した 。 実 験 は 空 調 設 備 の あ る実 験 室 で行 い,実 験 中の 試験 液 や 嗅 上皮 灌 流 液の 温度 及 び 実 験魚 の 体 温 を 常 に 一 定 に保 っ た。 実 験 終 了 後 に ア イ ゴ の 胃 内 容物 を調 べ,摂 食 して い た 海藻 の 種 類 の 同 定 を 行 っ た 。. 結果. 1)ア イ ゴ の ア ミ ノ 酸 に 対 す る 嗅 応 答 図1-7は. ア イ ゴ に お け る10-4ML-Glutainineに. 録 は 嗅 球 脳 波 を 示 し,下. 対す る 嗅 応 答 の 記 録 例 で あ る。 図 の 上 方 の 記. 方 の 記 録 は 同 脳 波 の 積 分 応 答 で あ る 。 嗅 上 皮 の ア ミ ノ 酸 刺轍 に よ っ て,. 12.

(18) 嗅 球 脳 波 は 振 幅 の 増 大 を 示 し,そ. の 後 自発 放 電 レベ ル に徐 々 に 減 少 す る波 形 を 示 した 。 こ れ に. 対 応 し て 積 分 応 答 も 基 線 か ら の 上 昇 を 示 す 。 本 節 の 研 究 に お い て は,そ 分 応 答 曲 線 と 基 線 に 囲 ま れ た 部 分(図1-7の 各 ア ミ ノ 酸 に 対 す る 嗅 応 答 は,標. の 応 答 後10秒. 間の積. 斜 線 部)の 面 積 を 嗅 応 答 の 大 き さ と し て 定 量 化 し た 。. 準 刺 激104ML-alanineに. 対 す る応 答 の百 分 率 で 表 した 相 対. 的応答 値 によって比較 された。 図1-8は. 種 々 の 濃 度 のL-alanineに. この 個 体 で は,10-9Mの 図1-9に. 対 す る積 分 応 答 の代 表 例 を示 した 。 図 にみ ら れ る よ うに. 低 濃 度 のL-alanineに. 応 答 し,刺. 激 濃 度 の 増加 と共 に応 答 は増 大 した 。. 各 種 ア ミ ノ酸 に 対 す る濃 度 一応 答 の 関 係 を示 した 。 図 に示 さ れ た 応 答 の 大 き さ は 平 均. 値(ア ミ ノ 酸 種 に よ っ てn=11∼3)で tryptophanに. お い て は,デ. あ る 。 な お,L-threonine,L-phenylalanine,L-. ー タ 数 が 少 な か っ た10-5M以. 下 は表 示 しな か っ た 。 ア イ ゴ の 嗅 覚. 器 は 多 くの ア ミ ノ 酸 に 対 し て 高 い 感 受 性 を示 し た が,Lalanineに そ の 値 は10璽gMで. あ っ た 。 一 方,閾. add,taurineで. あ り,そ. 対 す る 閾 値 が も っ と も 低 く,. 値 の 高 か っ た ア ミ ノ 酸 はL-glutamicacid,L-aspartic. の 閾 値 は10匿5Mで. あ った 。概 して 閾 値 の 低 か っ た ア ミ ノ酸 は 高 濃 度. に お い て 高 い応 答 値 を 示 す 傾 向 に あ った 。 各 種 ア ミ ノ酸 に対 す る応 答 値 が 各 濃 度 に お い て 高 か った もの か らア ミ ノ酸 を順 に並 べ た 序 列 (以 後 ア ミ ノ 酸 ス ペ ク トル と 記 す)を 図1-10に ル で は,レmethionineに. 示 し た 。1σ4Mの. 対 す る 応 答 値 が も っ と も 高 く,次. serine,L-arginineの. 濃 度 にお け る ア ミ ノ酸 スペ ク ト. い でL-glutamine,レalanine,レ. 順 に 高 い 応 答 値 を 示 し た 。 一 方,L-A叩. に 対 す る 応 答 値 が も っ と も 低 く,. 次 い でtaurine,L-proline,L-glutamicacid,L-phenylalanineの. 順 に低 い 応 答 値 を 示 した 。. 各 濃 度 に お け る ア ミ ノ 酸 ス ペ ク トル は 類 似 し た 序 列 を 示 し}そ 3Mに 対 し て =o.80,濃 r=0.77で. 度1σ5Mと1σ4Mに. あ っ た 。 し か し,各. 対 し てr=0.89,濃. の 相 関 係 数 は 濃 度104Mと10度1σ5Mと10-3Mに. 対 して. ア ミ ノ酸 に対 す る相 対 的応 答 値 の大 き さ を各 濃 度 で 比 較 した と こ. ろ,L-methionineとL-glutamicacidに. お い て は濃度 の差 異 に よって 相 対 的 応 答 値 が 異 な っ て. お り,104ML-methionineと1σ3ML-methionine,104ML-methionineと105MLmethionine,10.4Mレglutamicacidと1〔}5ML-91utamicacidに t-test,P<0.05)が. お い て 有 意 差(paired. 認 め られ た 。. ア イ ゴ の 胃 内 容 物 か ら 出 現 し た 海 藻 の 優 占 種 は ア オ ノ リの1種Enteromorpha.sp.と リGracilariaverrucosaで. オ ゴノ. あった。. 2)ア ユ の ア ミ ノ 酸 に 対 す る 嗅 応 答 ア ユ の 嗅 覚 器 はL-alanineに. 対 す る 閾 値 が も っ と も 低 く,そ. 閾 値 の 高 か っ た ア ミ ノ 酸 はL-Tryptophan,L-Asparticacid,Taurineで 10-4Mで. あ っ た 。10-4Mに. の ア ミ ノ 酸 ス ペ ク. の 値 は1σ7Mで. あ っ た 。 一 方, あ り,そ. お け る 各 種 ア ミ ノ 酸 に 対 す る ス ペ ク ト ル を 図1-11に. ト ル で は.L-alanineに. 示 した 。 ア ユ. 対 す る 応 答 値 が も っ と も 高 く,次. glutamine,L-lysine,L-arginine,L-glutamicacidの. の 閾 値 は. い で,L-. 順 に 高 い 応 答 値 を 示 し た 。 一 方,. 13.

(19) taurineに. 対 す る 応 答 値 が も っ と も 低 く,次. proline,L-phenylalanineの. い で,L-asparticacid,L-tryptophan,L-. 順 に 低 い 応 答 値 を 示 した 。. 考 察 ア イ ゴ と ア ユ の 嗅 覚 器 は ア ミ ノ 酸 に 対 し て 高 い 感 受 性 を 示 し た 。 と く に,ア alanineに. 対 す る 閾 値 は10-9Mで. あ り,こ. こ と が 知 ら れ て い る ナ マ ズ の1種 1982),大. イ ゴ はL-. の 値 は ア ミ ノ酸 に対 して 鋭 敏 な 感 度 の 嗅 覚 器 を も つ. で あ るchannelcatfish(Caprio,1978),ウ. 西 洋 サ ケ(SutterlinandSutterlin,1971),マ. ナ ギ(Silver,. ア ナ ゴ(Gohαai.,1979),キ. ン. ギ ョ(Sorensenetal.,1987)に. 匹 敵 す る も の で あ る 。Nikonovetal.(1990)は. お い て 数種 の ア ミ ノ酸 に対 して. 一S4Mと い う極 め て 低 い 閾 値 を も つ こ と を 報 告 し て い る が,こ. れ は 実 験 手 法 の 違 い に よ る も の と 思 わ れ る 。 す な わ ち,彼. エ イ の1種. に. ら は 嗅 索 の 単 一 の 神 経 繊 維 か ら記 録. して い るた め 嗅 細 胞 の 微 弱 な 電 気 活 動 を 記録 で き る。 これ に対 して本 実験 で 用 い た 嗅 球 脳 波 に よ る 解 析 は 様 々 な 電 気 信 号 が 混 在 す る 嗅 球 の 総 合 電 位 を 記 録 し て い る た め,微 他 の 信 号 の 干 渉 を 受 け 検 出 で き な い 。 そ の た め,低. 弱 な電気活 動 は. 濃 度 の ア ミ ノ酸 に 対す る嗅 細 胞 か ら中 枢 へ. 送 ら れ る電 気 信 号 を 評 価 で き ず 閾 値 が 高 く な っ て い る 可 能 性 が 考 え ら れ る 。 こ の エ イ の 報 告 を 除 い て は,ア. イ ゴ は 最 も 感 度 の よ い 嗅 覚 器 を も つ 魚 種 の1種. で あった。. 各 種 ア ミ ノ 酸 に 対 す る 嗅 応 答 の 濃 度 一 応 答 曲 線 は 何 れ の ア ミ ノ 酸 に お い て も,濃 と も に 応 答 値 の 増 大 を 示 し た 。 し か し,応. 答 値 の 増 大 の 比 率 は ア ミ ノ 酸 種 に よ っ て 異 な り,ア. イ ゴ に お い て はL-alanine,L-methionine,レserineな prolineやtaurineは た だ し,濃. ど に 対 して 高 い 増 加 率 を 示 し た が,L-. そ の 増 加 率 は 低 か っ た 。 ア ユ の 嗅 応 答 にお い て も 同様 な 傾 向 が み られ た 。. 度 一 応 答 曲 線 は ア イ ゴ のL-methionine,L-glutamine,L-threonineな. ア ミ ノ 酸 で み ら れ た よ う に104Mよ. どの 一 部 の. り高 い 濃 度 で 応 答 の 飽 和 現 象,す. ず か な 下 降 が 観 察 さ れ た 。 お そ ら くア イ ゴ の 嗅 覚 器 は,こ 1σ3Mの. なわち増加 率 の停 滞やわ. れ ら の ア ミ ノ 酸 に 対 し て10.4Mと. 濃 度 の 差 を 識 別 で き な い も の と 思 わ れ る 。 一 方,L-alanineに. ら 応 答 が 現 れ,10-3Mに. 度の 増加 と. 至 る610gunitsに. 対 し て は10心M付. わ た っ て 応 答 の 増 加 が み られ た 。 こ の よ う な 広 範. 囲 に わ た る 応 答 値 の 増 加 の 持 続 す る こ と は,ア. イ ゴ はL-alanineに. 対 し非 常 に 広 い 濃 度 領 域 で. 濃 度 差 を 識 別 で き る こ と を 示 唆 し て い る 。 ア ユ に お い て もL-aLanineの さ れ た こ と か ら,L-alanineは. 近か. 同 様 な応 答 特 性 が 観 察. 索 餌 な ど化 学 感 覚 に よ っ て規 定 され た 行 動 に お い て 重 要 な 化 学. 信 号 と して 働 い て い るか も しれ な い 。 こ の よ う なt応. 答 曲線 の ア ミノ酸 種 に よる 差 異 は嗅 細 胞 に お け る ア ミ ノ酸 に対 す る受 容. 機 構 が1種 類 だ け で な く,数. 種 類 の 異 な る受 容 機構 が 存 在 す る こ とを 示 唆 して い る。 こ の こ と. は 交 差 順 応 法(crossadaptation)を. 用 い て 嗅 覚 受容 機 序 を 調 べ た研 究 に よ っ て 支 持 さ れ る. (SveinssonandHara,1990;Ohnoetat.,1984)。 魚 類 の 食 性 と ア ミ ノ 酸 に 対 す る 嗅 応 答 の 関 係 を 明 らか に す る た め,ア. 14. イ ゴ 及 び ア ユ の ア ミノ.

(20) 酸 ス ペ ク トル と 今 ま で に 報 告 さ れ て い る 種 々 の 魚 種 の ス ペ ク ト ル を 比 較 し,そ 数 を 表1-2に. ま と め た 。 図nOに. 示 さ れ た よ う に ア ミ ノ 酸 ス ペ ク トル は 濃 度 に よ っ て 一 部 の ア. ミ ノ 酸 に お い て 異 な っ て い た 。 そ こ で,魚 で 行 っ た 。Gohetai.(1979)は. 種 問 に お け る 比 較 は 同 一 濃 度 の ア ミ ノ 酸 ス ペ ク トル. 数 種 の 魚 種 間 で ア ミ ノ 酸 ス ペ ク トル を 比 較 し た 結 果,調. 魚 種 の 如 何 な る 組 み 合 わ せ に お い て も 高 い 相 関(r=0.78∼0.98)を 応 答 に 高 い 類 似 性 が み ら る こ と を 報 告 し た 。 し か し,彼 で 調 べ た 本 研 究 で は,ア り,ア. れぞれ の相 関係. 示 し,ア. べた. ミ ノ酸 に 対 す る 嗅. らの 比 較 し た 魚 種 数 よ り 多 く の 魚 種 間. イ ゴ と 比 較 し た 各 魚 種 の 相 関 係 数 はxo.97か. ら0.50の. 広 い範 囲 に亘. ミ ノ 酸 ス ペ ク トル に お け る類 似 性 は す べ て の 魚 種 に 適 用 さ れ る よ う な 普 遍 性 が 認 め られ. な い こ と が 明 ら か に さ れ た 。 ま た,各 パ ウ ナ ギAng戚. 魚 種 間 に お け る ア ミ ノ 酸 ス ペ ク トル の 比 較 は,ヨ. 故rostra.ta(Silver,1982),マ. KobayashiandGoh,1985)及 etαL,1984)に. ーロッ. ダ イPagrusmajor(GohetαL,1979;. び コ イCgρrfπuscαrp加(GohandTamura,1978a;Ohno. お い て,同. 一 魚種 に もか か わ らず その相 関係 数 が異 な る値 を 示 す こ と も明 ら. か に さ れ た 。 こ れ は 嗅 応 答 の 記 録 方 法 の 差 異 が ア ミ ノ 酸 ス ペ ク トル に お け る ア ミ ノ 酸 の 序 列 を 変 え て い る こ と に 帰 因 す る も の と 思 わ れ る 。 す な わ ち,嗅 電 位 は 嗅 受 容 器 の 電 気 的 活 動 を 記 録 し た も の で あ り,嗅. 電 図(EOG)や. あ る 嗅 球 の 脳 波(EEG),嗅. 嗅上 皮 に お け る細 胞 外. 神 経 の イ ンパ ル ス 放 電,第1次. 中枢で. 球 か ら 高 次 中 枢 へ 嗅 情 報 を伝 達 す る 嗅 索 の イ ンパ ル ス 放 電 な ど,そ. れ ぞ れ 嗅 情 報 の 処 理 過 程 の 異 な る 部 位 か ら 記 録 さ れ て い る こ と に よ る もの と 思 わ れ る 。 こ の よ う に 魚 種 及 び 嗅 情 報 処 理 過 程 の 差 異 に よ っ て ア ミ ノ 酸 ス ペ ク トル が 異 な る こ と が 明 らか に さ れ た。 魚 類 の 食 性 と ア ミ ノ 酸 応 答 と の 相 関 関 係 に つ い て 検 討 し た 結 果,魚 者 の 間 に 高 い 相 関 関 係 を 得 る こ と が で き な か っ た 。 た と え ば,ア あ る ア ユ と 比 較 し た と き の 相 関 係 数 はr=0.74で. あ り,こ. か っ た 順 に 示 し た 序 列 の 中 位 に 位 置 し て い た(表1-2)。 性 を も つ 魚 種 と の 比 較 で は,草 1988)が. 類 の 嗅 覚 に お い て は,両. イ ゴ と同 じ植 物 食 性 の 魚 種 で. こで 比 較 し た 魚 種 の 中 で は 相 関 の 高 今までに報告 された魚種 の 中で 植物食. 食 性 の ソ ウ ギ ョαeπophαrgngodonidelε. 比 較 的 高 い 相 関 係 数 で あ るr=0.82を. α(Jonsenetai.,. 示 し た 。 し か し,肉. 食 性 の ブ リ. Ser-ro(aquinqueradata(KobayashiandFujiwara,1987)に. 対 し て も 高 い 相 関 係 数(r=0.82). を 示 し た 。 ま た,ア. ∬c`αZurusp既ndα 幡(Byrdand. イ ゴ の ア ミ ノ 酸 ス ペ ク トル は ナ マ ズ の1種. Caprio,1982)に. 対 し て き わ め て 高 い 相 関 係 数(r=0。97)を. が(土 屋,1982),他. の 雑 食 性 魚 種 で あ る コ イ(Ohnoetα1.,1984)と. 的 低 い 値(r=0.68)を. 示 した。 こ の 魚 種 は 雑 食 性 で あ る ア イ ゴの 相 関 係 数 は 比 較. 示 し た 。 こ の よ う に 魚 類 の ア ミ ノ 酸 に 対 す る 嗅 応 答 は 味 応 答(第3節)で. ら れ る 食 性 の 差 異 に よ る 特 異 性 が な い こ と が 示 さ れ た 。'. 15. み.

(21) 第3節. ア ミノ酸 ・核酸 関連物質 ・有機酸な どに対す る味覚の電気 生理学 的 応答. 本 節 で は、 魚 類 の 味 覚 に お け る応 答 特 性 と食 性 の差 異 との 関 係 を 明 らか にす る こ と を 目的 と して,食 性 の 異 な る 種 々 の 海 産 魚6種 の 味 覚 器 の ア ミ ノ酸,核 酸 関 連 物 質,ベ タ イ ンに対 す る 電 気 生 理 学 的 応 答 を 調 べ た 。 さ らに,ア ミノ酸 に対 して 高い 感 受 性 を示 した シマ イサ キ の 味 覚 器 に お け る 他 の 餌 料 エ キ ス 成 分 物 質 で あ るペ プ チ ド,有 機 酸,糖,グ. アニ ジ ン化 合 物 等 の 物 質. に 対 して も詳 細 に調 べ た 。. 材料と方法. 供 試 魚 に は表1-3に 示 し た12種 を 用 い た 。 これ らは 三 重 県 英 虞 湾 及 び 五 ヶ所 湾 内 に設 置 され た小 型 定 置 網 及 び 同 県 志 摩 郡 志 摩 町,同 郡 浜島 町 沖 合 い にお け る釣 りや 志 摩 町 座 賀 島 の 三 重 大 学 附 属 水 産 実 験 所 前 に設 置 し た カ ゴ に よ って採 捕 され た もの で あ る。 採 補 さ れ た 魚 は た だ ち に 同 水 産 実 験 所 前 に 設 置 した 活 箕 へ 収 容 して,数 口間の う ち に 実 験 に供 した 。 実 験 は 三 重 大 学 附 属水産 実験所 で行 った。 供 試 魚 は筋 弛 緩 剤(gallaminatrietiodide)の. 筋 肉注 射(8.0∼24.Omg/kg・. 動 化 さ れ た 。 た だ し,マ サ バ と カ ンパ チ はMS222溶. 液(0.2mg/1)で. 体 重)よ って 不. 軽 く麻 酔 し た 後 に,上. 述. の筋 弛 緩 剤 を 用 い た 。 図1-12に 示 す よ うに,不 動 化 さ れ た 魚 を 実 験 台 の 上 に 背 位 に 置 き,実 験 の期 間 中,チ. ュ ー ブ に よ っ て 導 か れ た 天 然 海水 を鯉 へ 強 制 灌 流 した。 魚 の 頭 部 を 尾 部 に対 して. 少 し高 く保 ち,こ の 呼 吸 水(鯉 灌 流 水)が 口蓋 部味 覚 器 に 触 れ な い よ うに流 した 。 味 覚 神 経 の 電 気 的 変 化 の 導 出法 は,ま ず 眼 球 を摘 除 して,口. 蓋部を 支配 してい る 顔面神経. (第III脳神 経)口 蓋 枝 を 露 出 させ た後 に,こ の 神経 枝 を中 枢 よ りで 切 断 し,末 梢 側 を 双 極 の 白 金 電 極 に乗 せ,そ. の 電 気 的 活 動 を 導 出 した。 この と き神 経 の乾 燥 を 防 ぐた め,眼 窩 の 中 に 流 動 パ. ラ フ ィ ン を 満 た した 。 味 刺 激 に と もな う味 覚 神経 の 電 気 的変 化 は多 数 の 神 経 線 維 の イ ン パ ル ス 放 電 の 総 合 さ れ た も の で あ る が,こ 40225S,時 一方. 定 数0.02秒)を. れ を増 幅 し た後 に,電. 気 的 積 分 器(日 本 光 電,RJG-. 通 して 平 均 的 電 位 活 動(以 後,積 分 応 答 と記 す)と し て 記録 し た 。. ,オ シ ロ ス コ ー プ 及 び ス ピ ー カ ー に よ って イ ンパ ル ス放 電 を 監 視 した 。. 味覚 器 の 化 学 刺 激 の 方 法 は,図1-12に. 示 した よ うな電 磁 弁 を 応 用 した流 路 切 り替 え 方 式 を. 採 用 し,Y字 型 流 路の 一 方 か ら口蓋 部 へ 人 工 海 水(表1-4)を 常 時 流 して お き,刺 激 時 に は電 磁 弁 に よっ て 他 方 の 流 路 に切 り換 え,三 角 ロ ー トにあ らか じあ入 れ て お い た刺 激 液 を流 した 。 口蓋 部 は水 流 の 変 化 等 の 機 械 的 刺 激 に対 して 鋭 敏 に応 答す る が,上 述 の 電 磁 弁 に よ る流 路 切 り替 え 方 式 の 採 用 に よ って 水 流 の 変 化 を極 力 低 減 させ る こと が で きた 。 ま た,図1-12に. 示 した よ う. に 人 工 海 水 の 流 路 にお け る水 位 を 三 角 ロ ー ト内の 刺 激 時 の水 位 と 同 一 レベ ル に保 ち,切 時 の 水 圧 の 差 を で き る だ け小 さ く した 。. 16. り換 え.

(22) 試 薬 の うち,ア. ミノ 酸類,有 機 酸 類,ベ タ イ ン 類,糖 類,グ ア ニ ジ ン化 合 物,有 機 塩 基 類 は. 半 井 化 学 薬 品 製(特 級)の もの を用 い,核 酸 関連 物 質 は興 人 製 の もの を 用 い た 。 た だ し,デ オ キ シ リボ ヌ ク レオ チ ドとア ンセ リ ン は シグマ 製 の もの を用 い た 。 試薬 は 実験 直 前 に 人 工 海 水 に溶 解 して 用 い た 。 刺 激 液 のpHの 調 整 はHC1(半 薬 品 製,ア. 井 化 学 薬 品 製,精 密 分 析 用)及 びNaOH(半. 井化 学. ミ ノ酸 自 動 分 析 用)で 行 っ た。1回 の 試 験 にお け る刺 激 液 の量 は5mlで,約5秒. 味 覚 器 を刺 激 し た。 刺 激 間 隔 は3分 以 上 お いて 行 っ た。 また,104Mglycineを. 間. 標 準刺 激液 と. して,随 時 この 標 準 液 で 口蓋 部 を刺 激 し,応 答 の 再 現 性 を確 認 しな が ら実 験 を行 った 。 実 験 は 空 調 設 備 の あ る 実験 室 で 行 い,実 験 期 間 中 は 室温 を一 定 に保 ち,年 間 を通 じて20∼25℃. で実. 験 を行 っ た 。 閾値 の決 定 は,調 べ た 個 体 の うち1'.以. 上 の 個 体 が 応 答 を 示 した 最低 濃 度 を 閾 値 濃 度 と し. て 評 価 した 。 ア ミノ酸,核 酸 関連 物 質,glycinebetaineに. 対 す る味 応 答 の 魚 種 間 の 比 較 に お い. て ク ラ ス タ ー 分 析 を用 い た 。 ク ラ ス タ ー分 析 は,Macintoshコ ラムSYSTAT,SYSTATInc.)上. ン ピ ュー タ ・シ ス テ ム(プ ロ グ. で 階層 ク ラ ス タ ー法 の 平 均 連 関(averagelinkage)手. 法 を用 い. て 行 っ た。. 結果 1)種 々 の 魚 種 に お け る ア ミ ノ 酸,ヌ. ク レ オ チ ド,ベ. 各 魚 種 の 味 応 答 の 特 性 を 比 較 す るた め,表1-3に. タイ ン に対 す る 応 答. 示 した12種 の 海産 魚 の ア ミ ノ 酸,ヌ. ク レチ. ド及 びglycinebetaineに 対 す る味 応 答 を調べ た。 餌 生 物 組 織中 に含 まれ る ア ミノ 酸,ペ プ チ ド, 核 酸 関 連 物 質,有 機 酸,ベ. タ イ ン,糖 類 等 に対 す る味 覚 応 答 性 を 調 べ る た め,各 物 質 の104M. の 溶 液 を用 い て,そ の 刺 激 効 果 を調 べ た。 図1-13は. シマ イ サ キ に お け る種 々の 濃 度 のglycine. に対 す る積 分 応 答 の 記 録 例 で あ る。 刺 激 開始 に と も な うペ ンの 上 方 へ の 振 れ は刺 激 に対 す る 応 答 を 示 す 。 本 研 究 にお い て はそ の 最 大 値 を示 した と きの 高 さを 各 刺 激 に 対 す る応 答 の 大 き さ と して 評 価 した 。 図 にみ られ る よ う に,こ の 個 体 で は91ycineに対 して10-10Mで 各 魚 種 にお け る1σ4Mで. の 相 対 的 刺 激 効 果 を 図1-14に,各. 応 答 が み られ た。. 物 質 に 対す る閾 値 を 図1-15に. 示し. た 。 た だ し,コ ノ シ ロ,メ バ ル,カ サ ゴ,マ ア ジ,ヒ ラス ズ キ,マ サ バ,及 び カ ンパ チ にお い て は,1σ4Mで. 応 答 が み られ た 物 質 が 少 なか った た め,1σ2Mで. の相 対 的刺 激 効 果 も示 し た 。. 本 項 で は,相 対 的 刺 激 効 果 の 値 は各 魚 種 にお い て 最 も高 い 応 答 を 示 した物 質 を基 準 と した 百 分 率 で示 した 。 応 答 の 閾 値 の 評 価 は,調 べ た 個 体 例 の うち 半 数 以 上 の個 体 に 応 答 が み られ た と こ ろ の 最 低 濃 度 を 閾 値 と して 用 い た 。 ア ミ ノ酸:調 べ た す べ て の 魚 種 の 味 覚 器 は ア ミ ノ酸 に応 答 が 認 め られ た(図1-14)。. しか し,味. 覚 器 の ア ミ ノ酸 に対 す る感 受 性 は 魚 種 に よ って 異 な って い た 。 ア イ ゴ,イ シダ イ,ク ロ ダ イ, シ マ イ サ キ 及 び イ サ キ は ア ミノ酸 に 対 して 比 較 的 高 い 感 受性 を示 し,10-4Mで 酸 に 応 答 が み られ た 。 一 方,コ. も多 くの ア ミ ノ. ノ シロ,メ バ ル,カ サ ゴ,マ ア ジ,ヒ ラ ス ズ キ,マ サ バ 及 び カ. 17.

参照

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