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「消えてふれ」百韻注釈

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Academic year: 2021

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(1)「消てふれ」百韻注釈. 二. 三. 消てふれ 見る度 ご と を初 深 雪 玄陳. 一. 吉田. 健一・松本. 麻子. 連歌師。天正一九(一五九一)年~寛文五(一. 六六五)年・一・五、七五歳。里村氏。. 玄陳. 元和七年(一六二一)十月二四日に興行された連歌百韻「消てふれ」の注釈をおこなった。発句は「消えてふれ見る度 ごとを初深雪」で、里村紹巴の孫玄陳が詠んだ。脇句は昌俊。連衆には若かりし頃の西山宗因もおり、豊一の名で五句を詠 んでいる。天理大学付属図書館蔵綿屋文庫『連歌集 玄仲等百韻外』に所収される百韻である。本文は『西山宗因全集 第 二 巻 連 歌 篇 二 』( 西 山 宗 因 全 集 編 集 委 員 会 編 、 二 〇 〇 七 年 、 八 木 書 店 ) を 使 用 し た 。 作 者 に つ い て の 記 述 は 、『 連 歌 辞 典 』 ( 廣 木 一 人 、 東 京 堂 出 版 、 二 〇 一 〇 年 )、『 国 書 人 名 辞 典 』( 市 古 貞 次 他 編 、 岩 波 書 店 、 一 九 九 三 ~ 一 九 九 九 年 )、『 俳 文 学 大 辞 典 』( 尾 形 仂 他 編 、 角 川 書 店 、 一 九 九 五 年 )、『 和 歌 大 辞 典 』( 犬 養 廉 他 編 、 明 治 書 院 、 一 九 八 六 年 ) な ど に よ っ た 。 寄 合 語 の 項 に は 、『 連 珠 合 璧 集 』(『 連 語 論 集 一 中 世 の 文 学 』、 木 藤 才 蔵 ・ 重 松 裕 巳 校 注 、 三 弥 井 書 店 、 一 九 七 二 年 )、『 拾 花 集 』『 随 葉 集 』『 竹 馬 集 』 は (『 近 世 初 期 刊 行 連 歌 寄 合 書 三 種 集 成 翻 刻 ・ 解 説 編 』 深 沢 眞 二 、 清 文 堂 、 二 〇 〇 五 年 ) を 使 用 し た 。 ま た 、 引 用 し た 和 歌 ・ 俳 諧 に つ い て は 新 編 国 歌 大 観 ・ 私 家 集 大 成 ( 古 典 ラ イ ブ ラ リ ー 日 本 文 学 W e b 図 書 館 )、 連 歌 については国際日本文化研究センターの連歌データベースを参考にした。 底本の旧漢字、異体字は現行の字体に改めた。仮名書きとなっている言葉の一部を漢字に改め、統一されていない表記は 歴史的仮名遣いにし、踊り字を平仮名に改め、濁点のないものは濁点を施した。これらを底本どおりに復元できるよう、本 文に振り仮名で示した。また、底本の難読字には括弧付きで振り仮名を付けた。同様に、歴史的仮名遣いと異なる表記につ いても、括弧付きで通常の歴史的仮名遣いによる表記を示した。各句には連番で番号を付した。明らかな誤写や脱字と思わ れる箇所はママとした。本稿の注釈は吉田が担当し、松本が最終的な加筆・修正を行った。. 一消えてしまったらまたすぐに降1 れ 。「 さ だ め な き 雲 の 絶 え 間 の 月 影. 初めての深雪が降っていたのであろう。それに合わせ. 消えては降ってほしい。見る度に初深雪 は消えて又降る雪かとぞ見る(二 条院讃岐集・四五)などの歌例が となるように。 この百韻が催されたのは十月二十四日であり、この冬 あるものの、消えたと思ったらす. て主客の玄陳は冬の句を詠んだ。 季節ー冬(初深雪). ぐ降るという意味の歌例は見いだ せない。連歌例に「消えて降る一 日 や 夏 の ふ じ の 雪 」( 大 発 句 帳 ・ 肖 柏)がある。 二歌例に「美しと見る度ごとに撫 子 の 花 の 盛 り は 懐 し な き み 」( 家 持 集・七七)がある。 三この冬最初の深雪。歌例に「初 深雪降りにけらしなあちら山こし. - 20 -.

(2) の 旅 人 そ り に 乗 る ま で 」( 永 久 百 首 ・三四八・源兼昌)がある。 一 本 文 マ マ 。日 が 寒 い の で 、の 意 。 2 例に「日を寒み氷もとけぬ池なれ や う へ は つ れ な き 深 き わ が 恋 」( 源. 二. 日 を 寒 みひら く山 窓. 一(ママ). 昌俊. 昌俊. 佐河田氏。尚俊とも称したか。号は壺斎。天正. 七(一五七九)年~寛永二〇(一六四三)年。六五歳。. 初 深 雪 の せ い で 日 中 に な っ て も 寒 い の 今回の連歌の会の主催者の句。場所は昌俊宅であろう。. 一. 二. ・. 鶯 の春 待 つ 声 は 聞 分 き て. 禅昌. 元亀二(一五七一)年~寛永八(一六三一)年。. 季ー冬(寒み). 外の景色でも眺めていただこうという趣向であろう。. で、せめて山窓を開けて外の景色を眺めて 順集・二八)がある。 前 句 の 「 初 深 雪 」 に 、「 寒 み 」 と つ け た 。 雪 が 降 り 粗 末 二 山 居 の 窓 の こ と 。「 山 窓 、 山 の あ も ら う こ と だ 。 ひ 也 。物 の 見 ゆ る 躰 也 」( 匠 材 集 )。 な山居は寒いけれど、せめて山窓を開けて客人たちに 主催者の昌俊による謙遜した言い 方。歌例に「二上の雲路はるかに 呼ぶ声をしるべに分けし山窓の月」 (雲玉集・三三二)などがある。 ま た 、「 く る 春 の 光 と や み ん 消 や ら で 山 窓 寒 く つ も る 白 雪 」( 邦 高 親 王 御詠・五一)には「山窓、歌にて は猶不幽玄候歟」とある。俳諧の 例 に 、『 消 て ふ れ 』 百 韻 に 近 い 時 期 に作られた「山窓にふる薄雪や障 子 紙 」( 犬 子 集 ・ 一 四 三 九 ・ 良 徳 ) がある。. 3. 禅昌 六一歳。父は松梅院禅永、子は禅意。里村紹巴と親し 一鶯は春を告げる鳥とも呼ばれて (山窓から聞こえてくるはずの)春を待 く、豊臣秀吉や毛利輝元の一族などに命ぜられ、古典 いる。歌例に「鶯の谷よりいづる 声なくば春来ることを誰か知らま って鳴く鶯の声は、聞き分けられて。 の書写を行った。 里 )、「 梅 が 枝 に 結 ぶ 氷 も 春 た て ば. き 分 け ら れ る の で 、「 聞 分 て 」 と 付 け た 。 頭 注 二 で 挙 げ. 前句の「ひらく山窓」に、山窓を開くと鶯の声が聞. し 」( 古 今 集 ・ 春 上 ・ 一 四 ・ 大 江 千 と く と 聞 き つ る 鶯 の 声 」( 夫 木 抄 ・. ち望み、鴬の鳴き声は窓から聞き分けることができる、 としたもの。. た『古今集』歌のように、まだ寒い冬であるが春を待. 季ー春(鶯)冬(春待つ). 六九九・大宰大弐高遠)などがあ 二聞いて判別すること。鶯の声を 聞 き 分 け る と を 詠 ん だ 歌 に 、「 春 や. る。. とき花や遅きと聞き分かむ鶯だに も 鳴 か ず も あ る か な 」( 古 今 集 ・ 春. - 21 -.

(3) 上・三七・藤原言直)があり、本 句の本歌であろう。 一. 二. かつ 咲 よ り も 深. き梅が香. ふか. 紹由. 紹由. 生没年未詳。現存作品では文禄五(一五九六). 年五月一〇日の紹之・能札との三吟『何船百韻』以降、. 前句の「聞く」を、香りを「聞く」と取りなし、梅が. にも参加。. 梅が咲くよりも早く、深い香りが漂って 元和八(一六二二)年二月二八日の百韻までの会に一 きた。 座。慶長八年(一六〇三)年三月、文閑らの千句など. 一「かつ咲く」と「梅」を結んだ4 歌例に「袖の上にかつ咲く梅の花 の 香 を 深 く ぞ し む る 庭 の 春 風 」( 草 二歌例に「木のもとに宿とはいか に狩衣立ちやすらふも深き梅が香」. 咲く前から花の香りを聞き分けることができると付け. 根集・二六八一)がある。. ( 雪 玉 集 ・ 二 〇 〇 )、「 軒 ち か み 咲. た。. 季ー春(梅). 鶯トアラバ梅(連珠合璧集・三六三). きそふ木々の下風にかざさぬ袖も. 二. 宗順. 深 き 梅 か 香 」( 邦 高 親 王 御 詠 ・ 九 二. 一. 霞こ そ 園の め ぐりの 籬 な れ. 寄合. 霞が園を取り囲む籬である、5. 六)などがある。 一 と い う 意 。霞 を 籬 に 見 立 て て い る 。. 庵策伝とも交流があったとされる。. (梅が香の漂う)この霞こそが、園のま 宗順 生没年未詳。寛永九(一六三二)年生存。古田 同じ趣向の歌に「たちどまる春の へだての霞こそ夏の籬と今日なり わりを取り囲む籬であることだ。 織部・伊達政宗・智仁親王らの連歌会に参加し、安楽 に け れ 」( 拾 玉 集 ・ 三 〇 八 一 ) が あ る。. 元和・寛永(一六一五~四. 前句の「深き梅が香」のする霞が、園の周囲を取り巻. 医者. 季ー春(霞). 道哲. 四年)頃の人。京都の人。晩年は堺に住す。法眼。. 生没年未詳. い て い る と 付 け た 。「 古 里 の 梅 の 籬 や こ れ な ら む 霞 の う. 二. ち に 鶯 の 声 」( 拾 玉 集 ・ 二 九 六 三 ) が 参 考 に な る 。. ゞ. 二 霞が園のまわりを取り巻いて い る さ ま 。「 め ぐ り 」 を 詠 む 歌 例 は. 一. 砌 につ づ く 野 辺 の 長 閑 さ 道哲. 少なく、僅かな歌例に「山賤やめ ぐりのうばら引き捨てて花の色も る 園 の 垣 内 」( 松 下 集 ・ 三 二 四 〇 ) がある。連歌例に「園のめぐりに 高き村竹/かくろへて霞に花の色 は 惜 し 」( 嵯 峨 千 句 ・ 第 六 ) な ど が ある。 一「砌」はきわ、の意。野辺の際6 まで春ののどけさが続いていると. 園をまわりを取り囲む籬の際まで続いて い う こ と 。「 砌 に つ づ く 」 と 詠 む 歌 例は確認できないが、類似した歌 いる野辺の長閑な景色であることよ。 前句の「籬」を園の境界と取り、その際まで続いてい. - 22 -.

(4) 例に「さらにまた動きや出づると ば か り に 砌 の 雪 に 続 く 山 の 端 」( 後 十輪集・九三四)がある。 二 野辺の長閑さを詠む歌例に「吹 きうつりなびく薄の末々を長閑に わ た る 野 辺 の 夕 風 」( 風 雅 集 ・ 秋 上 ・ 一 四 一 ・ 花 園 院 )、「 長 閑 な る 野 辺のひばりの声までも雲井にあが る 道 は 迷 は ず 」( 宗 良 親 王 千 首 ・ 九 一)などがある。 一「沢水」と「氷」と結んだ例に7 「里人は山沢水の薄氷とけにし日 よ り 若 菜 つ み つ つ 」( 新 後 撰 集 ・ 春. 一. 二. 三. 沢 水の 月の 氷の な が れ 出て 豊一. る野辺の長閑なさまを付けた。 季ー春(長閑). 豊一は宗因の別号。慶長一〇(一六〇五)年~天和二. (一六八二)年・三・二八、七八歳。西山氏。連歌師. 沢水 の 際 には 、 氷のよ うに 澄ん でい る 月 ・俳諧師として名を成した。. れ て く よ う だ と 詠 む 。「 お き 氷 る 夜 夜 半 の 砌 の 霜 の 上 に. 上 ・ 二 六 ・ 二 条 為 氏 )な ど が あ る 。 が 映 り 、 月 光 が ま る で 水 に 流 れ 出 て い る よ 前 句 の 「 砌 」 を 「 水 限 」 と 見 て 、 沢 水 と 応 じ た 。「 水 限 」 二「月の氷」は澄んで氷のように うで。 見える月の光。また、月光が水に には冴え冴えとした月の光が映り、月が水とともに流 映って、きらきら輝くさま。歌例. 信助. 不明. 季ー秋(月). が眼目。七句目は月の定座。春から秋に転じた。. どの歌礼があるが、月光が「流れ出て」と表現した点. う. ふ け て さ え し む 庭 の 月 影 」( 伏 見 院 御 集 ・ 一 四 一 〇 ) な. 二. に「難波潟松の嵐に雲消えて月の. 一. 鴬 もさそふ 風の浮 き 草. 氷 に 鴛 ぞ 立 つ な る 」( 夫 木 抄 ・ 六 九 七 七 ・ 慈 鎮 )、「 大 井 川 さ や か に う つる秋の夜の月の氷にかかる白波」 (新千載集・秋上・四三八・藤原 為世)などがある。 三 この言い回しの歌例に「山路 より去年の落葉の流れ出でて雪げ 知 ら る る 春 の 山 風 」( 雪 玉 集 ・ 四 一 九八)がある。水に映った月の姿 が流れ出るという言い方は、豊一 いで. (宗因)自身の句である「月影も 湯 殿 の 外 に な か れ 出 」( 宗 因 七 百. 底本「鴬」と読めるが、三句8. 韻・一)がある。 一. - 23 -.

(5) にも鴬が詠まれており、前句は秋. 信助. 沢 水 の 上 の 風 に 漂 う 浮 き 草 は 、 鶯 も 誘 月の光が映る沢水に、浮き草を付けた。頭注に挙げた の句でもあって不審。誤写か。類 似 し た 言 い 回 し の 歌 の 例 に 、「 花 の っ て い る こ と だ 。 ように「鴬」が不審であるが、風がに漂う浮き草が、. 三. 生没年未詳。天正~元和(一五七三~一六二四. 年)頃の人。中村氏。京都の人。紹巴の門人。茶道を. 慶純. 季ー春(鶯)夏(浮き草). (連珠合璧集・八六一). 誘ふトアラバ浮草. 誘っているようだと詠んだ。. 二. 香を風の便りにたぐへてぞ鶯さそ. ・. 寄合. 一. 涼 し さ や 暮 るる 田 づ らの雨 な ら (純) 慶順. ふ し る べ に は や る 」( 古 今 集 ・ 春 上 ・一三・紀友則)がある。 二 歌例に「朝露もちりかひなび く 柳 風 鶯 さ そ へ 池 の 浮 き 草 」( 草 根 集 ・ 五 〇 七 )、「 人 は み な 風 の 浮 き 草かたよりになびきてぞみる青柳. ん. 田に降る雨を「涼し」とした9. の 糸 」( 挙 白 集 ・ 一 四 八 ) が あ る 。 一 歌例に「暮れかかる外面の小田の. 不明. 季ー無季. - 24 -. 涼 しさ を 感 じる のは 、風 が吹 いて 、夕 方 小堀遠州に学ぶ。 むら雨に涼しさそへてとる早苗か な 」( 風 雅 集 ・ 洞 院 公 泰 ・ 三 四 九 ) の 田 の 表 に 雨 が 降 っ た か ら だ ろ う 。. 前句の「浮き草」の生える所を「田づら」と応じた。. 行生. 季 ー 夏 ( 涼 し さ )). 草に田づら(拾花集三三六). があり、類似した趣向である。. 二. 寄合. 一. 苫 屋に帰 る 松 がねの道. ・. 田 づ ら に 雨 が 降 っ て 涼 し く な っ た 夕 暮 れ 前 句 の 「 涼 し さ や 暮 る る 」を 「 夕 涼 み 」と 取 り な し 、「 松. 行生. 二「田づら」は、田のあたり。田 のほとり。また、田。歌例に「早 苗をば田づらの雨にとりわびて賤 が 袂 や 濡 れ ま さ る ら ん 」( 常 縁 集 ・ 七七)などがある。 三 この言い回しの歌例に「神無 月いかに時雨るる雨ならん里わく こ ろ も 知 ら ぬ 袖 か な 」( 心 敬 集 ・ 五. 苫で屋根を葺いた家。苫葺き. 七)などがある。 一. の粗末な小屋。苫屋を詠んだ歌と. 二 松の木の根。歌例に「大伴の高. 定家」がよく知られている。. か り け り 浦 の 苫 屋 の 秋 の 夕 暮 れ 」 に 、 苫 屋 に 帰 っ て 行 く 人 が い る 。 松 の 根 が が ね に 夕 涼 み す る 浦 人 の 心 も 知 ら ず 潮 ぞ 満 ち く る 」( 万 (新古今集・秋上・三六三・藤原 見える道を通って。 代集・七五七・藤原家隆)から「松がね」と付けた。. しては「見わたせば花も紅葉もな. 10.

(6) 師の浜の松が根を枕き寝れど家し 偲 は ゆ 」( 万 葉 集 ・ 巻 一 ・ 雑 ・ 六 六 ・ 置 始 東 人 )、「 松 が ね も 岩 ほ も 苔 の道たえて落葉にむせぶ山の下水」. 山賎は、猟師・きこりなど山. ( 草 根 集 ・ 九 六 〇 一 )な ど が あ る 。 一 中に生活する、身分低く情趣や条. 一. 二. ・. 山 賎の お も き 薪 は 取 捨てて. 一. 二. つかれ来 ぬれば 駒 休む らし. 玄的. 政直. 玄的. 里村北家の連歌師。文禄二(一五九三)年~慶. 安二(一六五〇)年。五八歳。伝翁。玄仍の次男。兄. 俳諧作者。生没年未詳。寛永二〇(一六四三). 年 ご ろ 没 か 。 本 名 、 中 井 次 兵 衛 。『 俳 諧 大 系 図 』 に 載 る. 政直. 季ー無季. ろ う。. た。背中の重い薪を道ばたに置いて家路を急ぐのであ. 前句の苫屋に帰る人物を山中で暮らす山がつに見立て. 松が根の道を急ぐ山がつは、重い薪を捨 は玄陳。宗因との両吟や、風庵の追善独吟百韻などを 理を解さない人。また、ひろく身 分の卑しい者をいう。歌例に「山 てて行くことだ。 行った。後に法橋に叙せられた。 賤と人は言へども時鳥まづ初声は 我 の み ぞ 聞 く 」( 拾 遺 集 ・ 夏 ・ 一 〇 三 ・ 坂 上 是 則 )な ど が あ る 。 「山賤」 が猟師やきこりの住む家の意味で 用いられることもある。その用例 と し て 、「 あ な 恋 し 今 も 見 て し が 山 賤 の 垣 ほ に 咲 け る 大 和 撫 子 」( 古 今 集・恋四・六九五・よみ人しらず」 がある。 二 重い薪を運ぶことを詠んだ歌と して「山人の歌ふ声さへたどたど し 重 き 薪 の く る る か け ぢ に 」( 後 十 輪 集 ・ 一 三 九 六 )、「 山 人 の 重 き 薪 の道遠み急ぐとするも暮るる空か. 歌例に「やましろのいはたの. な」 ( 同 前 ・ 一 三 九 八 )な ど が あ る 。. 一. 早苗とるたごのつかれに休む森の. 前句で重き薪を取り捨てたが、それは薪を運んでいた. ある。. 重 い 薪 を 運 ぶ の に 疲 れ て し ま っ た の で 、 鈴 木 氏 は 同 一 人 か 。『 犬 子 集 』『 鷹 筑 波 集 』『 毛 吹 草 』 な 下 か げ 」( 夫 木 抄 ・ 二 五 六 二 ・ 藤 原 信 実 )、「 か り わ た る 疲 れ の 鳥 に あ 馬 も 休 む よ う だ 。 どに句が多く載る貞門初期の俳士。貞徳判独吟百韻も はんとや恋する鷹の空にまつらん」 ( 同 前 ・ 七 四 〇 三 ・ 藤 原 顕 仲 )。 二「駒休む」の歌例に「駒なべて. - 25 -. 11 12.

(7) ここにしばしや休らはんみまくさ も 良 き あ す か 井 の 陰 」( 夫 木 抄 ・ 一 二 四 四 二 ・ 野 宮 左 大 臣 )、「 雨 に ま すみづの御牧の草がくれからでも 駒 の 休 む 日 は な し 」( 草 根 集 ・ 二 四 〇二)などがある。 一 「 ま だ き 」は 、早 い 時 期 、時 点 。 歌例に「誰が秋にあらぬものゆゑ. 一(まだき). 二. 三. 速 より 旅の宿 り をかり衣. 一. 二. ・. 三. 岑 の 嵐 に 越 えのこ す 袖. 住円. 順息. 馬が疲れたからであったことを明かす。. 不明. 季ー無季. 住円. 順息. 不明. 季ー無季. 宿り求るには…駒の疲るヽ…. 寄合. (随葉集三九三). 「宿りを借り」と「狩衣」を掛ける。. 馬が疲れてしまったので早い時間に旅の 前句を馬での旅の句と取りなし、馬が疲れてしまった 女郎花なぞ色にいでてまだき移ろ ふ 」〈 古 今 集 ・ 秋 上 ・ 二 三 二 ・ 紀 貫 宿 り を 借 り た 。 狩 衣 姿 で 。 の で 早 い 時 間 に 宿 に 入 っ た と し た 。 な お 、「 か り 衣 」 は 之 )、「 淡 雪 は 降 り も や ま な ん ま だ きより待たるる花の散るとまがふ に 」( 玉 葉 集 ・ 春 上 ・ 三 二 ・ 藤 原 為家)など。 二「旅の宿り」の歌例に「草枕旅 の宿りの露けくははこぶばかりの 風も吹かなん」 (御堂関白集・三五) がある。 三 旅の衣装。歌例に「かり衣た ちうき花のかげに来て行く末くら す 春 の 旅 人 」( 玉 葉 集 ・ 旅 ・ 一 一 三 二 ・ 藤 原 定 家 )、「 か り 衣 袖 の 涙 に やどる夜は月も旅寝の心地こそす れ 」( 千 載 集 ・ 羈 旅 ・ 五 〇 九 ・ 崇 徳. 歌例に「ははそ山峰の嵐の風. 院)などがある。 一. をいたみふる言の葉をかきぞ集む. 寄合. かり衣には…越残す山. (拾花集二八. 旅 の 宿 り を 出 て 、峰 を 越 え よ う と し た が 、 前 句 の 「 か り 衣 」 に 、 い づ く に か 今 夜 は 宿 を か り 衣 日 る 」( 後 撰 集 ・ 雑 四 ・ 一 二 八 九 ・ 紀 嵐 の た め に 越 え ら れ な い で 居 る 。 か り 衣 の も 夕 暮 の 峰 の 嵐 に 」( 新 古 今 集 ・ 羈 旅 ・ 九 五 二 ・ 藤 原 定 貫之)がある。 袖までも。 家)を基に「岑の嵐」と付けた。 二 峰を越え切ることができない こと。歌例に「越えのこす峰の白. 雲今日も又よそめばかりの花にく. - 26 -. 13 14.

(8) ら し つ 」( 柏 玉 集 ・ 二 二 一 七 )、「 こ え残す嶺の嵐の今宵だに夢やはた の む す ず の か り ふ し 」( 春 夢 草 ・ 一 九七一)など。 三 衣装の一部として峰を越える袖 を詠んだ歌に「嶺こゆる雲の衣を ぬぎすててくだれば薄き袖の上風」 (草根集・三〇一八)がある。. (新古今集・秋下・五四五・藤原 兼 宗 )、「 む ら 雲 の 時 雨 れ て そ む る 紅葉ばは薄く濃くこそ色にみえけ れ 」( 千 載 集 ・ 秋 下 ・ 三 五 四 ・ 覚 延 法師)などがある。 二 「 が ま し 」 は 「 … ら し い 」、「 … の き ら い が あ る 」の 意 。歌 例 に 「 深 山辺の時雨てわたるかずごとにか ご と が ま し き 玉 が し は か な 」( 千 載 集・冬・四一一・源国信)など。 三「紅葉」と「散る」が共に出て くる歌として「槙の屋に時雨の音 の変るかな紅葉や深く散り積るら む 」( 新 古 今 集 ・ 秋 下 ・ 五 八 九 ・ 藤 原 実 房 )、「 時 雨 れ つ る 雲 も 日 影 に 染められて紅葉を散らす峰の木枯」 (拾員愚草員外集・三九一)など がある。 一「寝覚めさびしき」が出てくる 歌に「来し方を思ひ出でずは暁の 寝 覚 の 床 や さ び し か ら ま し 」( 新 千. 一. 二. 三. 紅 葉 ば も 時 雨 が ま し く 散 出て. 一. ・. 二. 三. 寝 覚 め さ び し き 秋 の あ かつ き 昌俔. かり枕. 三). 付合ニハ…こえ残. す山… (竹馬集四四五). 里村南家初代。天正二(一五七四)年?~寛永. 季ー無季. 昌琢. それを「紅葉ば」に転じた。. 前句の「嵐」から寄合語の「嶺の木の葉」を想起し、 寄合. 嵐 ト ア ラ バ … 嶺 の 木 の 葉 ・・ (連珠合璧集五〇) 紅葉トアラバ…時雨…(連珠合璧集三一八) 季ー秋(紅葉ば). 昌俔 里村南家。天正一六(一五八八)年~慶安四(一. 六五一)年。六四歳。昌叱の子で、兄に昌琢、子に昌. 紅葉が時雨のようにパラパラ降ったので 通がいる。. - 27 -. 昌琢 一三(一六三六)年。昌叱の子。母は紹巴の娘。子は 一「紅葉」と「時雨」を結んだ歌 峰を覆っている紅葉の葉もまるで時雨の 昌程。紹巴をはじめ主要連歌師たちが没した慶長頃か に「行く秋の形見なるべき紅葉ば もあすは時雨と降りやまがはむ」 ようにぱらぱらと散り始めた。 ら、連歌界の第一人者となった。. 15. 16.

(9) ある。. 一. 三. きりぎりす我友な らぬ狭莚に 宣滋. 二. 載・雑下・二一一六・よみ人しら 目が覚めてしまった、寂しい秋の明け方で ず)がある。 二 秋の寝覚めの寂しさを詠んだ歌 に 、「 秋 深 み 寝 覚 め の 床 の さ び し き に あ は れ を そ ふ る 虫 の 声 々 」( 教 長 集 ・ 四 七 〇 )、「 暁 の 寝 覚 め の 空 に さ び し き は 霞 隠 れ の 有 明 の 月 」( 他 阿上人集・四一七)などがある。 三「秋のあかつき」の歌例に「山 寺に秋の暁寝覚めして虫とともに ぞ な き あ か し つ る 」( 明 恵 上 人 集 ・ 四二)などがある。 一「きりぎりす」は「こおろぎ」 の古名。歌例に「きりぎりすそこ. 前句の「時雨」に「寝覚め」と付けた。. 時雨トアラバ、…ね覺…. 寄合. (連珠合完璧集三九). 不明. 季ー秋(秋のあかつき). 宣滋. 季ー秋(きりぎりす). 葉集・秋上・六一七・京極為教がある。. 友 と は 聞 け ど き り ぎ り す 思 ふ 心 は か よ ひ し も せ じ 」( 玉. う。きりぎりすを友としたいとする歌に「なきあかす. 寂しい明け方には、きりぎりすが私の友 前句の「さびしき」に「我友ならぬ」と付けた。友と とは見えぬ庭の面のくれゆく草の か げ に な く な り 」( 新 後 撰 集 ・ 秋 下 と い う わ け で も な い の に 私 の 寝 床 で あ る 狭 一 緒 で あ れ ば 寂 し さ が 紛 れ る が 、 ま だ そ こ ま で の 仲 で い 筵 に よ く 来 て く れ る 。 は な い の で 、「 我 友 」 を 「 な ら ぬ 」 と 否 定 し た の で あ ろ ・三九九・後二条天皇)など。 二「人以外のものを友とする歌に 「いかにせん佐保の川原の霧の間 に 我 が 友 千 鳥 鳴 き て た ち ぬ る 」( 拾 玉 集 ・ 四 三 五 四 )、「 う き 身 を も 思 ひな捨てそ秋の月昔より見し友な ら ぬ か は 」( 続 後 撰 集 ・ 秋 中 ・ 三 六八・藤原隆房)などがある。 三「狭筵」は幅の狭い筵。また、 短い筵。歌例に「さむしろに衣か たしき今宵もや我をまつらん宇治 の 橋 姫 」( 古 今 集 ・ 恋 四 ・ 六 八 九 ・ よ み 人 し ら ず )、「 き り ぎ り す な く や霜夜のさむしろに衣かたしき独 り か も 寝 ん 」( 新 古 今 集 ・ 秋 下 ・ 五 一八・九条良経)などがある。. - 28 -. 17.

(10) 一 「 月 」と 「 涙 」を 結 ん だ 歌 に 「 い かにせんさらで憂き世はなぐさま. 一. 一. 三. 月 も涙 やそふる草ぶき. 一. 二. 重信. おと ろふ る 世 に忍 ぶこそ昔 な れ. 重信. 貞重. 不明. 不明. 季ー秋(月). 月. 雪…. (連珠合壁集五三二). 友トアラバ、花. き りぎ り す が鳴 いて いる のは 泣い てい る 前句の「友」に「月」を付けた。 ず 頼 み し 月 も 涙 落 ち け り 」( 千 載 集 ・ 雑 上 ・ 一 〇 〇 四 ・ 藤 原 定 家 )、 「夜 の だ ろ う 。 そ の 夜 に 自 分 も 月 を 見 て い る う 寄合. 貞重. な夜なの月も涙にくもりにき影だ ちに涙が出てきたので、それをきりぎりす に 見 せ ぬ 人 を 恋 ふ と て 」( 新 千 載 集 の 泣 き 声 に 添 え た 。 草 葺 き の 家 で 。 ・恋一・一一四八)などがある。 二 「そふる」の歌例に「あはれ知 る空も心のありければ涙に雨を添 ふ る な り け り 」( 山 家 集 ・ 八 二 九 ) がある。 三 草 葺 き の 粗 末 な 家 。歌 例 に 「 こ やの池の芦の枯葉の草ぶきや共寝 の を し の 栖 な る ら ん 」( 夫 木 抄 ・ 六 九 三 六 ・ 藤 原 俊 成 )、「 今 夜 こ そ 月 をいれけれ草葺の露も雫も深き軒 端 に 」( 今 川 氏 真 詠 草 ・ 五 〇 〇 )。 一 「おとろふる世」は自分を含め て衰えてしまった世のこと。歌例. ゝ. 二. さかんだった昔のことだけだ。. 一. つ ら ぬ る ま まの歌の哀 さ 景治. と付けた。 寄合 忍草トアラバ 珠合璧集二五九). 不明. 季ー無季 景治. ふる屋の軒端. 昔. 軒の板間…(連. ( 続 後 撰 集 ・ 雑 下 ・ 一 二 〇 四 ・ 順 徳 院 ) か ら 、「 忍 ぶ 」. 草 葺 き の 古 屋 に 住 む 自 分 だ け で な く 世 も 前 句 の「 草 ぶ き 」を 草 葺 き の 古 家 の 軒 端 と 取 り な し 、「 百 に「なに事もおとろふる世に思ふ か な さ こ そ 昔 の 秋 の 夜 の 月 」( 拾 塵 衰 え て し ま っ た 。 そ ん な 中 で し の ぶ の は 、 敷 き や 古 き 軒 ば の し の ぶ に も 猶 余 り あ る 昔 な り け り 」 集・八四三)がある。 二 歌例に「時鳥木ぶかき森の一 声は世に忍ぶらん程をしれとや」 ( 柏 玉 集 ・ 四 七 七 )、「 方 々 に は か なかるべきこの世かな有を思ふも な き を 忍 ぶ も 」( 西 行 上 人 集 ・ 三 九 四)など。 一 「 つ ら ぬ 」 は 「 つ な ぐ 」、「 連 続 させる」の意。歌例に「紫につら. 衰 え てし ま っ た世と 違 って 、連 綿と 連な 前句の「おとろふる」に「つらぬる」と付けた。 ぬる袖やうつるらん雲の上まで匂 ふ し ら 菊 」( 玉 葉 集 ・ 秋 下 ・ 七 七 四 る 歌 に は 深 い 趣 が あ る 。 「 歌 の 哀 さ 」 は 、『 古 今 集 』 仮 名 序 の 「 生 き と し 生 け る. - 29 -. 18 19. 20.

(11) 三. 昌俊. 不明. 季ー無季. ものいづれか歌を詠まざりける」の段を下敷きにして. 二. いると思われる。. 一. 花 に 十 分 満 足 し て い な い 心 持 ち の よ う で 前 句 の 「 歌 」( 和 歌 ) を め で た い 席 で の 祝 い の 歌 ( 雅 楽. 花 に あ か ぬ 心 をい は ふ 今 日の 賀 昌俊. ・西園寺実氏)など。句例に「頼 ・. ・. に. 政がおもひ入たる恋心(政信)/ 連 ぬ る 歌 の 義 理 の 深 さ よ ( 安 静 )」 (紅梅千句・六二五/六二六)が ある。 二 歌例は見いだせない。俳諧の 例に「歌のあはれは読むすべしら ず/あたら夜の月と花とをうかう か と 」( 時 勢 粧 ・ 三 二 八 九 / 三 二 九 ・. 〇 )、「 鬼 し う は な き 心 を 見 せ ん / 人知れず歌の哀れをかき口説き」 (同前・六二八〇/六二八一)な どがある。 一「花にあかぬ」を用いた歌の例 に「花にあかぬ心ならひに夏衣け ふ 白 妙 の 袖 も も の う し 」( 宝 治 百 首. 一. ・. 二. か ずかずぞ酌 む春のさかづき 玄陳. (連珠合璧集八二〇). は 『 源 氏 物 語 』「 花 宴 」 の 「 花 の に ほ ひ も け お さ れ て な. 前句の「いはふ」に「酌む」と付けた。なお、本句に. 季ー春(花). 哥トアラバ…いはひ…. あ る が 、雅 楽 を 奏 し て お 祝 い す る と し よ う 。 な ど ) と 取 り な し 、 こ れ に 「 い は ふ 」 と 付 け た 。 ・八四〇・下野)がある。 寄合 二「心」と「いはふ」を結ぶ歌例 今日のめでたい席で。 よろこび に「春日野に若菜摘みつつ万代を 歌 付合ニハ…くむ酒 賀 …(竹馬集五九九) 祝 ふ 心 は 神 ぞ 知 る ら ん 」( 古 今 集 ・ 賀・三五七・素性法師)がある。 句例に「謹んで屏風の絵なる月を 見て/今日の賀祝ひ申す口上(宗. 歌例に「末遠き春のむかへの. 因千句・六九/七〇)がある。 一. みつぎもの数々はこぶにまの里人」. 寄合 付合ニハ. 酒の席. 付合ニハ 立春… 酌. (竹馬集六二〇). 賀. ことふき. 祝 言. くむ. 酒…(竹馬集六二一). 今 日 の賀 を祝 って 何度 でも 酌む こと にし かなかことざましになむ」の面影があると思われる。 (夫木抄・一四五七一・大蔵卿数 隆 )な ど が あ る 。連 歌 の 例 と し て 、 よ う 、 春 の さ か づ き を 。 慶長九(一六〇四)年六月二八日 興行の百韻に「下が下まですなほ なる時/盃は数々にしもとりかは し 」( 四 四 / 四 五 ) が あ る 。. - 30 -. 21 22.

(12) 二 歌例に「散る花をけふのまと ゐの光にて浪間にめぐる春のさか づ き 」( 夫 木 抄 ・ 一 七 三 九 ・ 藤 原 良 経 )、「 か き な が す は の 字 の 水 は 絶 えはてて空にのみ見る春のさかづ き 」( 夫 木 抄 ・ 一 七 五 三 ・ 権 僧 正 公. 歌例に「あまを舟ひき網の綱. 朝)などがある。 一 のながき日はくるるもほどのさも ぞ ひ さ し き 」( 新 六 帖 ・ 二 二 八 )、. 一. ・. 二. 三. 永 き 日 はかはる がはるの鞠の袖 紹由. 季ー春(春). 前句の「春」に「永き日」と付けた。なお、本句は『源. 氏物語』 「 若 菜 上 」で 女 三 宮 の 子 猫 が 御 簾 を 上 げ た た め 、. 春の酒を酌み交わす永き日、庭では若者 柏木が女三宮を見る場面の少し前、若者たちが庭で蹴. 一. あるじ. (たカ). 二. が ら にや誰もとふ宿 昌俊. 日. 三日月. 在明. ). おぼろ〉…永日. 春の日〉… 連 ( 珠合璧集八八九. 月の霞む〈朧とも. べし〉 〈遲. 季ー春(永き日). 前句の「かはるがはる」に「誰もとふ」と付けた。. あるじの人柄が良いゆえであろう。代わ 季ー無季. 主. 「 青 柳 の か づ ら き 山 の 永 き 日 は 空 た ち が 代わ る 代 わるに 蹴鞠 をし て、 袖 を揺 鞠に興じている場面の面影がある。 も み ど り に あ そ ぶ い と ゆ ふ 」( 夫 木 ら し て い る 。 寄 合 春 の 心 、〈 春 と い ふ 詞 を 添 へ て は な に と も い ふ 抄・一〇〇四・藤原定家)などが ある。 二 歌例に「秋山にきばむ木の葉 のうつろはばかはるがはるや秋を 見 ま ほ し 」( 和 歌 童 蒙 抄 ・ 九 五 六 ) がある。句例に「かはるがはる薪 の 能 を 芝 の 上 」( 時 勢 粧 ・ 四 六 五 八 ・次末)がある。 三「鞠の袖」の歌例、句例、連歌 の例はいずれも見いだせない。 「 鞠 」、 袖 の の 用 例 と し て は 、「 鞠 の庭に桜柳をうつしおきて春は錦 に 立 ち や ま じ ら ん 」( 夫 木 抄 ・ 一 五 一 六 八 ・ 藤 原 為 家 )、「 袖 ふ れ し 宿 の形見の梅が枝に残る匂よ春をあ ら す な ( 藤 原 家 定 )」( 拾 遺 愚 草 ・ 一一〇七)がある。 一 「 あ る じ が ら 」( 主 柄 ) は 、 主 人 の人柄。歌例に「移し植ゑし宿の 梅とも見えぬかなあるじがらにぞ. - 31 -. 23 24.

(13) 一. 二. ・. 三. 花 も 咲 き け る 」( 風 雅 集 ・ 雑 上 ・ 一 る 代 わ る に 誰 も が 訪 ね て く る 宿 で あ る こ と 四 四 七 ・ 平 経 盛 )、「 わ が 宿 の 桜 は だ 。 かひもなかりけりあるじからこそ 人 も 見 に く れ 」( 後 拾 遺 集 ・ 春 上 ・ 一〇二・和泉式部)などがある。 二「誰もとふ宿」に関連する歌に 「秋の夜はたづぬるやどに人もな したれも月にやあくがれぬらん」 (玉葉集・秋下・ 六七〇・二条院 讃 岐 )、「 教 へ し を さ ぞ と ば か り に とふ宿のあらぬいらへに答へわび ぬ る 」( 雪 玉 集 ・ 一 八 五 〇 ) な ど が ある。句例に「誰もとふ志賀氏や 雪 の 花 見 酒 」( 時 勢 粧 ・ 一 九 六 九 ). 歌例に「雪にさへ霞に色ぞお. 雪 に さへ 道 と め て 入 る 山 の 陰 道哲. 前句の「あるじがら」に「道とめて入る」と付けた。. (連珠合璧集六三六). あるじの人柄が良いので行く道を中断して訪ねた、と. 雪が 降 って いて さえ、 あ るじ の人 柄が 良 いう心持であろう。. 付合ニハ…雪の友…. (竹馬集四八九). 宿トアラバ…たちよる… 季ー冬(雪). - 32 -. などがある。 一 ぼろなる春立つ今日の冬の夜の月」. いだせる。. 七二七三・九条良経)など多数見. た だ 古 へ の 雪 の 夜 の 月 」( 夫 木 抄 ・. 「山陰や友をたづねしあとふりて. ・ 秋 上 ・ 二 〇 四 ・ よ み 人 し ら ず )、. ふ は 山 の 陰 に ぞ あ り け る 」( 古 今 集. 三「山の陰」の歌例は「ひぐらし の鳴きつるなへに日は暮れぬと思. ・二)などがある。. 松 ひ け る た め し は 」( 十 市 遠 忠 詠 草. 二「道とめて」の歌例に「絶せし な雪はふるとも道とめて子日の小. 二八一)など。. に さ へ 尋 し 跡 の 山 の か げ 道 な き ま いので、行く道を中断して、旅程から外れ 寄合 て に 咲 け る 卯 花 」( 十 市 遠 忠 詠 草 ・ る が 、 山 の 陰 に 入 っ て ゆ く 。 宿. ( 夫 木 抄 ・ 一 六 ・ 飛 鳥 井 雅 有 )、 「雪. 25.

(14) (きじ). 一「狩場の鳥」は 雉 のこと。鷹 狩の際用いる語。歌例に「はし鷹. 一. 二. 狩 場の 鳥の遠 き 落 草. 二. ゝ. 三. 宗順. (連珠合璧集五六四). 前 句 の 「 山 の 陰 」 を 「 山 の 陰 の 家 」( 隠 家 ) と 取 り な し 、. 「鳥の…落草」と付けた。. 季ー冬(寒々て). (連珠合璧集三六七). 雉トアラバ…片野…. 寄合. 前句の「狩場」に「片野」と付けた。. 季ー冬(鳥の落草). 隠家トアラバ…鳥の落草…. 道を中断してまで山の陰に入ったのは、 の狩場の鳥の落ち草を吹きな乱り そ 野 辺 の 夕 風 」〈 新 葉 集 ・ 冬 ・ 四 九 鷹 に 捉 ま え ら れ そ う に な っ た 狩 場 の 鳥 が 逃 寄 合. 一. 暮 ぬ れ ば 交 野 の 御 野 の 寒 々て. 日も暮れてきたので、鷹狩りをしていた. 信助. 八・藤原為忠)など。句例に「は げ隠れたであろう遠くの落草を探し求めて い 鷹 は 狩 場 の 鳥 の 箒 哉 」( 犬 子 集 ・ の こ と だ っ た 。 一五〇三・氏重)などがある。 二「落草」は鷹が鳥を追い落とし た草原。また、鳥が飛びおりて隠 (た). れる草むら。歌例に「御狩する片 山かげの落草に隠れもあへず 起 つ き ぎ す か な 」〈 風 雅 集 ・ 冬 ・ 八 七 一 ・ 藤 原 公 泰 〉、「 今 日 は ま た 狩 場 の鳥の落草もはやくるすのに宿や と は ま し 」( 文 保 百 首 ・ 二 〇 六 一 ・ 頓覚)などがある。 一「暮ぬ」は日が暮れたこと。歌 例に「今ははや鳥だちも見えず暮 れぬなり交野の野守こよひ宿かせ」 「散りかかる花ゆゑ今日は暮れぬ. ( 文 保 百 首 ・ 二 二 六 五 ・ 藤 原 雅 孝 )、 交 野 の 御 狩 場 も 寒 く な っ て き た 。 れば朝たつ道もかひなかりけり」 (続拾遺集・春下・一〇七・権中 納言通俊)など。 二 「 交 野 」( 片 野 と も ) は 大 阪 府 枚 方 ・ 交 野 市 付 近 の 台 地 。平 安 以 降 、 皇 室 の 狩 猟 地 で あ っ た 。歌 例 に 「 思 ひあへず袖ぞ濡れぬるかり衣交野 の み の の 暮 方 の 空 」( 拾 玉 集 ・ 七 六 八 )、「 霰 降 る か た 野 の 御 野 の 狩 衣 ぬ れ ぬ 宿 か す 人 し な け れ ば 」( 詞 花 集 ・ 冬 ・ 一 五 二 ・ 藤 原 長 能 )な ど 。. - 33 -. 26 27.

(15) 三 さえざえて。歌例に「さむし ろの夜はの衣手さえざえて初雪白 し を か の べ の 松 」( 新 古 今 集 ・ 冬 ・ 六 六 六 二 ・ 式 子 内 親 王 )、「 冬 深 き み山の嵐さえざえて伊駒の岳に霰 降 る ら し 」( 続 後 拾 遺 集 ・ 冬 ・ 四 七. さ. 笹で作った戸のこと。歌例に. 七・源実朝)などがある。 一 「開きかくす野守が庵のささの戸 も あ ら は に お け る 萩 の 朝 露 」( 新 拾. 一. ゝ. 二. 三. ささの 戸 ざ し に 風 さ は ぐ 也 豊一. 前 句 の 「 交 野 」 に 、「 逢 ふ こ と は か た 野 の 里 の 笹 の 庵 し. の に 露 散 る 夜 半 の 床 か な 」( 新 古 今 集 ・ 恋 二 ・ 一 一 一 〇. 御狩 場 の庵 の笹 で編 んだ 戸を 閉め 切っ て ・藤原俊成)から「ささ」と付けた。. 一. 二. 三. ゝ. 前句の「風さはぐ」に、同じ気象表現の「雨そゝぎ」 を付けた。. 笹の戸に当たる風の音で夢が覚めてしま 寄合. 夢 さ ま す 枕 さびし き 雨そそぎ 行生. 遺 集 ・ 雑 上 ・ 一 六 〇 六 ・ 藤 原 家 いると、時々風が当たって騒々しい音を立 隆 )、「 そ の ま ま に 杉 の 庵 の さ さ の て る 。 季語ー無季 戸をただあけたつる風にまかせて」 ( 草 根 集 ・ 九 六 七 八 )な ど が あ る 。 二「戸ざし」は戸を閉めること。 歌例に「あしびきの山桜戸にとざ しせよ花のあたりに風もこそ入れ」 (重家集・二八四)など。 三 歌例に「我が恋は松を時雨のそ めかねて真葛が原に風騒ぐなり」 (新古今集・恋一・一〇三〇・慈 円 )、「 風 さ わ ぐ 雲 の ふ る ま ひ た だ ならでかねて待たるる夕立の空」 (夫木抄・ 七八二五・西園寺実氏) などがある。 一「夢さます」の歌例に「夢さま す声は思ひもかけ鳥の浪うつ宿の 磯の旅寝に」 ( 草 根 集 ・ 八 九 五 三 )、. た び 人 の 夢 さ ま す ら む 」( 拾 玉 集 ・ 四 六 一 〇 ) が あ る 。. った。ひとり寝をしている庵に今度は枕を 「立とまる影もはかなき草の庵 風 付合ニハ…ねられぬ枕 … (竹馬集五六 雨やいく世の夢さますらん」 再 ( 昌 いっそう寂しく感じさせる雨が降り注いで 四)なお、前句の「さゝ」と本句の「夢さます」とを きた。 関連付ける歌に「ささの上に霰たばしる冬の夜はいく 草・四五五四 な ) どがある。 二「枕さびし」の歌例に「わが背. - 34 -. 28. 29.

(16) 子がありかも知らで寝たる夜はあ か 月 が た の 枕 さ び し も 」( 拾 遺 集 ・ 恋 三 ・ 八 〇 三 ・ よ み 人 し ら ず )、 「う ちわたしひとり襖の夜な夜なは枕 さ び し き 音 を の み ぞ 鳴 く 」( 夫 木 抄 ・一六七六九・大宰大弐高遠)な どがある。 三 歌例に「この世にて物思ふ袖も くたしけり雨そそきする軒の橘」. 歌例に「涙がは身もうきぬべ. (玄玉集・六三三)などがある。 一 き寝覚めかな儚き夢の名残りばか. 二. 儚 き 衣 々の 跡. なみだ はかな. 涙. 一. 二. 三. 慶純. 季ー無季. 前句中の夢さます「雨」を衣々の別れの後に流した涙. と 取 り な し 、「 衣 々 の 跡 」 と 付 け た 。. ・八八・大友黒主. 付 合 ニ ハ … お つ る 涕 ・・ ( 証 歌 ) は る さ め の ふ 涕か桜花ちるをおしまぬ人 しなければ 古今. きぬぎぬの別れの朝に暁の鐘が鳴ったとする和歌の例. 前 句 の 「 衣 々 」( 後 朝 ) に 「 鐘 な り て 」 と 付 け た 。. 恋ーなみだ、衣々の跡. 季ー無季. (連珠合璧集五四九). 夢トアラバ…はかなき…. (連珠合璧璧集三四). 雨トアラバ…涙…. (竹馬集五六一). 集・春下. るは. 夢さ ま す 雨と 思 ったの は私 の涙 だっ た の 寄合 り に 」( 新 古 今 集 ・ 恋 五 ・ 一 三 八 六 ・ 寂 蓮 )、「 さ む る よ り や が て 涙 の だ ろ う か 。 あ な た が 帰 っ た あ と 、 涙 が は か 雨. 一. 物 お も ふ 折 し も 月 に 鐘 な りて 政直. 身にそひて儚き夢に濡るる袖かな」 なく衣に残っている。 (続千載集・哀傷・二〇六九・大 江宗秀)などがある。 二「衣々の跡」の歌例に「衣々の 跡なしごとも世にふりぬ花にかへ り し 道 芝 の 露 」( 草 根 集 ・ 八 四 七 四 )、「 鳥 の 音 に お き わ か れ つ る 衣 々 の 涙 か わ か ぬ 今 朝 の 床 か な 」( 続 千載集・恋三・一三七六・遊義門 院)などがある。 一「物おもふ」の歌例に「涙川何 みなかみを尋ねけむ物思ふ時のわ. 句作…きぬ〳〵…. (竹馬集二一一). 付合ニハ…鐘のね…. 別. わかれ. 寄合. きぬぎぬの別れのあと、月を眺めながら に「面影も別れにかはる鐘の音にならひ悲しきしのの が 身 な り け り 」( 古 今 集 ・ 恋 ・ 五 一 一 ・ よ み 人 し ら ず )、「 も の 思 ふ 雲 物 思 い に ふ け っ て い る と 、暁 の 鐘 が 鳴 っ た 。 め の 空 」( 拾 遺 愚 草 ・ 八 六 六 ) な ど が あ る 。 のはたてに鳴きそめて折しもつら き 秋 の 雁 が ね 」( 国 1 巻 ー 二 一 新 続古今集・秋下・五二四・贈従三 位為子)など。. - 35 -. 30 31.

(17) 二 歌例に「折しもあれ物おもふ 宿の月影にいかなる笛の声をそふ ら ん 」( 称 名 院 歌 集 ・ 一 四 九 五 ) が ある。 三「月」と「鐘」とを結ぶ、類似 した趣向の歌に「さならでも寝ら れぬものをいとどしく月おどろか す 鐘 の 音 か な 」( 後 拾 遺 ・ 誹 諧 ・ 一 二一一・和泉式部)がある。この ほかの例に「限りあれば明けなむ とする鐘の音に猶長き夜の月ぞ残 れ る 」( 新 勅 撰 ・ 秋 下 ・ 二 九 二 ・. 歌例に「急がずはひかりと見. 藤原家隆)などがある。 一 てぞ歎かまし半ば過ぎゆく我が身 な り と て 」( 栄 花 物 語 ・ 五 五 八 )、. 一. 二. ・. 我 身 を 秋 も半 ば 過 ぎ けり 玄的. 季ー秋(月). 前句の月に秋を付けた。これは最も常套的な付け方と. も言えるが、本句の場合はそれにとどまらず「くまも. 物思いをしながら月を眺めていたら鐘が なき空行く月を見る程に秋の半ばのこよひ過ぎぬる」. 一. 二. 三. 消 ぬこそ あ や し き 露の命 な れ 順息. 付けた。. 前句の「半ば過けり」にその先に起こる「消えぬ」を. 季ー秋(秋). 月トアラバ…秋の夜…(連珠合璧集一二). 寄合. 「名こそあれわが身の年も半にて 鳴って、自分も秋も半ばを過ぎたことに気 (久安百首・五三八・藤原隆季)の本歌取りと思われ 見 し 世 の 月 の 秋 ぞ か へ ら ぬ 」( 草 根 づ い た 。 る。 集・三九三三)などがある。 二 歌例に「虫の音もあはれぞま さる浅茅原なかば過ぎゆく秋ぞと お も へ ば 」( 物 語 二 百 番 歌 合 ・ 三 三 六・中納言のきみ)などがある。 また、過ぎてゆく秋に自身の老い を重ねた歌に「過ぎて行く秋のか なしと見えつるは老いなむ事を思 ふ な り け り 」( 夫 木 抄 ・ 五 五 五 一 ・ 大江千里)がある。 一「消ぬ」の歌例に「打ちすてて 君しいなばの露の身はきえぬばか. 自分の身も半ばを過ぎて、最後には消え 寄合 り ぞ 有 り と 頼 む な 」( 後 撰 集 ・ 羈 旅 ・ 一 三 一 〇 )、「 露 ば か り 頼 め し ほ て し ま う 頼 り に な ら な い 露 の 命 の よ う な も 露トアラバ…消…命…. - 36 -. 32 33.

(18) どの過ぎゆけば消えぬばかりの心 のだ。 地 こ そ す れ ( 菅 原 輔 昭 )」( 拾 遺 集 ・恋一・ 六八九・菅原輔昭)など がある。 二 歌 例 に 「( 拾 遺 集 ・ 六 八 九 へ の 返し)露ばかり頼むることもなき ものをあやしや何に思ひおきけん」 ( 同 前 ・ 六 九 〇 ・ よ み 人 し ら ず )、 「あだし野の萩の末葉の露よりも あ や し く も ろ き わ が 涙 か な 」( 夫 木 抄・四一五四・源雅光)など。 三 この言い回しの歌例は「なが らへば人の心も見るべきに露の命 ぞ 恋 し か り け る 」( 後 撰 集 ・ 恋 五 ・ 八 九 四 ・ よ み 人 し ら ず )、「 身 に 代 へていざさは秋を惜しみみんさら. 一. 二. 霜 の 草 ね の まつ 松 の 声 昌琢 露と同じようにはかなく消えてしまう霜. (連珠合璧集三八) 季ー秋(露). 前句の「露」を「霜」に転じ、霜の降りた草の根が松. 風の音のするのを待っているとした。. - 37 -. で も も ろ き 露 の 命 を 」( 新 古 今 集 ・ 秋下・五四九・守覚法親王)など. 類似した歌の例に「しほれぬ. 多数ある。 一 る霜の草くき踏みしたき夕日隠れ. ぬ雨降る松の声かな」 新 ( 古今集・. 「陰にとて立ち隠るれば唐衣濡れ. のことであるが、その歌例として. は風が松の木立に当たって鳴る音. 良 親 王 集 ・ 一 四 )が あ る 。 「松の声」. い か が は 独 り お と づ れ を せ ん 」( 元. 二「まつ松の声」に類似した歌例 に「問ふことをまつ松山の山彦は. ん」 ( 雪 玉 集 ・ 二 六 三 )な ど が あ る 。. 二 〇 )、「 萌 え に け り 霜 の 岡 の べ か が 降 り た 草 の 根 が 松 風 の 音 の す る の を 待 っ 季 ー 冬 ( 霜 ) き分けて草根にたれか春を告ぐら ている。. に 百 舌 渡 る 見 ゆ 」( 今 川 為 和 集 ・ 一. 34.

(19) 雑 中 ・ 一 六 八 三 ・ 紀 貫 之 )、「 山 里 は峰にたえせぬ松の声木の葉に忍 ぶ 谷 の 下 水 」( 夫 木 抄 ・ 一 三 七 一 五 ・式子内親王)などがある。 一「庭の面に秋見しよりもさやけ き は 落 葉 の 霜 に こ ほ る 月 影 」( 続 草. 一. 二. 三. 庭の面に影 冷じ き 朝附日. 一. 二. 嵐に池の浪 白 き 色. 昌俔. 前 句 の 「 霜 の 草 ね 」( 霜 が 降 り た 草 の 根 ) に 、 そ れ が 生. えている「庭の面」を付けた。. も庭にもいづくにもあ. 也。 (連珠合璧集三二九). 松トアラバ 松は山にも裏に る物. 季ー秋(すさまじ). 前 句 の 「 影 冷 じ き 」( 光 が 冷 た い ) に 「 浪 白 き 色 」( 浪. の 冷 た い 白 色 )と 付 け た 。た だ し 、前 句 の 「 庭 」に 「 池 」. …池…. (竹葉集五〇三). 付合ニハ. 一 方で は 庭 の面 に冷 たい 光の 朝日 が当 た と付けたとも言える。. 宣滋. 霜が降りた草の根の生えている庭の面 庵 集 ・ 二 八 〇 )、「 庭 の 面 に 秋 の か たみを残しつる木の葉も見えずけ に寒々しい光の朝日が差している。 寄合 さ の 朝 霜 」( 新 千 載 集 ・ 冬 ・ 六 三 三 ・久明親王)などがある。 二 朝 日 が 冷 た く さ す さ ま 。「 影 冷 じ」と詠む歌例に「すむ月の影冷 じく更くる夜にいとど秋なる荻の 上 風 」( 続 古 今 集 ・ 秋 上 ・ 三 九 七 ・ 西 園 寺 実 氏 )、「 年 を 経 て い た だ く 霜の蓬生に影冷じく更くる月かな」 (新葉集・雑上・一一二二・洞院 公泰)などがある。 三 朝附日は朝方の日のこと。歌 例に「朝附日さすや高嶺の山路よ りとほらぬ野辺にいづる鹿の音」 ( 拾 玉 集 ・ 二 五 九 三 」、「 朝 附 日 に ほひは空にほのめきて山のはかす む 春 の 明 ぼ の 」( 文 保 百 首 ・ 七 〇 一 ・藤原公顕)などがある。 一「嵐」と「池」または「浪」を 組み合わせた歌の例に「暑さをば 松の嵐にをさめ置きて秋を浮かぶ. る す み の え の 池 」( 夫 木 抄 ・ 三 六 四 り 、 も う 一 方 で は 庭 の 池 に 嵐 の せ い で 冷 た 寄 合 一 )、「 時 わ か ぬ 波 さ へ 色 に 和 泉 川 い 白 色 の 浪 が 立 っ た 。 庭 は は そ の 森 に 嵐 吹 く ら し 」( 新 古 今 集・秋下・五三二・藤原定家)な. - 38 -. 35 36.

(20) どがある。 二 「 波 白 き 」と 詠 む 歌 の 例 に 「 波 白きうらわの松の葉ごしよりかく れ あ ら は れ 見 ゆ る 釣 船 」( 延 文 百 首 ・ 一 九 三 ・ 進 子 内 親 王 )、「 波 白 き 川瀬の月は影ふけて水上遠く水鶏. 。 鳴 く な り 」( 拾 塵 集 ・ 一 九 五 ) 一 歌例に「茂かりしよもぎのかき のへだてにもさはらぬ物は冬にざ. 一. 二. 三. 茂 か り し 汀の 藻 屑 か た 寄 りて 重信. 一. 二. 三. ・. 作る田 中の流 れはるけき 貞重. 季ー無季. 前句の「池」に付合語の「水草」を「藻屑」に変えて. 付 け た 。 な お 、「 か た よ り て 」 は 次 に 挙 げ る 『 永 久 百 首 』. 草…. ・五四五・源兼昌). よる池水はなかばくも. かがみなるらん(永久百首. (竹馬集四七三). がれ」が共に出てくる歌に「なにはえやながれて早き. 前 句 の 「 汀 」 に 「 流 」 と 付 け た 。 な お 、「 み ぎ は 」 と 「 な. 季ー夏か?(茂る). れる. 〔証歌〕吹く風に水草かた. 池 付合ニハ…水の流…水. 嵐の た め にた く さん 茂っ てい た池 の汀 の 五四五の「水草かたよる」による。 り け り 」( 夫 木 抄 ・ 一 五 〇 一 八 ・ 曾 禰 好 忠 )、「 茂 か り し 萩 の 薮 こ そ 恋 藻 屑 が か た よ っ て し ま っ た 。 寄合 しけれしかばかりだに我が宿はな し 」( 赤 染 衛 門 集 ・ 五 六 三 ) な ど 。 二「汀の藻屑」を詠む歌に「玉藻 かる池の汀の菖蒲草ひくべき程に 成 り に け る か な 」( 続 詞 花 集 ・ 夏 ・ 一 三 三 ・ 堀 川 院 )、「 世 と と も に し をるる袖や衣川は汀に寄する藻屑 な る ら ん 」( 関 白 内 大 臣 歌 合 ・ 五 一 ・源雅光)などがある。 三 「散る花は浮き草ながらかた よりて池のみさびに蛙なくなり」 (風雅集・春下・二五四・前参議 為 実 )、「 風 吹 け ば 池 の 浮 き 草 か た よ り に 又 影 さ わ ぐ 春 の 藤 波 」( 草 根. 歌例に「里遠み作る山田のみ. 集 ・ 一 八 二 七 )。 一. もりすとたてるそほづに身をぞな. 藻 屑 が 偏 っ て 田 水 の 流 れ を 塞 い で し ま 夕 塩 に み ぎ は の あ し の か た な び き な る 」( 宝 路 百 首 ・ 三 し つ る 」( 夫 木 抄 ・ 一 〇 一 三 七 ・ 曾 禰 好 忠 )、「 五 月 雨 の ふ る の わ さ 田 っ た が 、 田 作 り を し て い る う ち に そ れ が 取 四 九 一 ・ 藤 原 資 季 ) が あ る 。 もつくるなり民うるほへる御代に り除かれ、田の中から遥か遠くまで水がな がれていく。 季ー夏(作る田) あ ひ つ つ 」( 洞 院 摂 政 家 百 首 ・ 四 五. - 39 -. 37 38.

(21) 四・三位範宗)などがある 二「田中」の歌例に「咲きにけり 苗代水にかげ見えて田中のゐどの 山 ぶ き の 花 」( 続 古 今 集 ・ 春 下 ・ 一 六 四 ・ 待 賢 門 院 堀 河 )、「 白 露 の お くてのおしねうちなびき田中の井 ど に 秋 風 ぞ 吹 く 」( 同 前 ・ 秋 下 ・ 四 五七・西園寺公経)など。 三「流はるけき」は流れが遥か遠 くまで続くこと。近い用例として 「遥かなる湊の潮のながれ江に芦 の 葉 寒 く こ ほ る 浦 風 」( 夫 木 抄 ・ 一 三四一一・藤原為氏)がある。ま た、文禄四(一五九五)年七月二 十一日興行の百韻に「こほるもや. 一. 二. 五 月 雨 も限 り 有て や 晴 れ ぬ ら ん 玄陳. 前句の「流はるけき」に「限り有てや」と付けた。た. だ し 、「 田 」に 「 五 月 雨 」 と 付 け た と 見 る こ と も で き る 。. 五月雨… (竹馬集五六九) 季ー夏(五月雨). - 40 -. 舟さす棹に砕くらむ/明け離れた る流れはるけし」 ( 七 / 八 )が あ る 。 一「五月雨も限り有」は「五月雨 は限りなく降り続けるわけではな. ・ 釈 教 ・ 六 二 七 ・ 源 兼 氏 )、「 七 夕. ろ げ な ら ぬ 月 の さ や け さ 」( 新 後 撰. 二「晴れぬらん」の歌例に「春の 夜のかすみや空に晴れぬらんおぼ. 九)などがある。. あ か き 五 月 雨 の 空 」( 柏 玉 集 ・ 五 一. ば雲もへだてじみな月の照る日に. 〇 一 六 八 ・ 藤 原 隆 信 )、「 限 り あ ら. つ づ く 宇 治 の 川 な み 」( 夫 木 抄 ・ 一. 雨は伏見の田ゐに水こえて庭まで. 山 」( 続 草 庵 集 ・ 一 四 五 )、「 五 月. し五月雨はけふを晴間の天のかぐ. 田の水は限りなく流れていくが、五月雨 寄合 い 、降 っ た り や ん だ り を 繰 り 返 す 」 の 意 。 歌 例 に 「 限 あ れ ば 衣 ほ す ら に は 限 り が あ る の で 、や が て 晴 れ る だ ろ う 。 田 付 合 ニ ハ. 39.

(22) の心やこよひ晴れぬらん雲こそな け れ 星 合 の 空 」( 夫 木 抄 ・ 慈 鎮 ・ 四 〇二八)などがある。 一「月」と「めづらし」を結ぶ歌. 例 に「五月雨の月かさなれり郭公. 一. 二. ・. 月にめ づらし鳴 く郭公. 一. 二. 三. 昌俊. れなき…郭公…. 前句の「五月雨」に「郭公」と付けた。. 五月雨トアラバ …月はつ. 寄合. (連珠合璧集三六) 季ー夏(郭公). 前 句 の 「 郭 公 」 に 「 山 」 を 付 け た 。 な お 、「 郭 公 」 と 「 く. らぶの山」が共に出てくる歌に「君がねにくらぶの山. 月 も 出 て い る し 、 め ず ら し く ほ と と ぎ す の 郭 公 い づ れ あ だ な る 声 ま さ る ら ん 」( 後 撰 集 ・ 恋 四 ・. 今 宵 し も く ら ぶの 山 に 旅 ね して 昌琢. 五月雨が一時やんで月を見ていたら、め め づ ら し か ら で 今 年 だ に 鳴 け 」( 万 代 集 ・ 七 〇 一 ・ 能 因 )、「 め づ ら し ず ら し い こ と に ほ と と ぎ す が 鳴 い て い る 。 や月に月こそやどりけれ雲ゐの空 よ た ち な 隠 し そ 」( 建 礼 門 院 右 京 大 夫集・一三〇)などがある。 二 歌例に「つれもなき別はしら じ郭公なに有明の月に鳴くらん」 (続拾遺集・雑春・五四五・徳大 寺 入 道 前 太 政 大 臣 女 )、「 お と づ れ てほど降る宿の時鳥鳴く一声のめ づらしきかな」 (元良親王集・九〇). まさしく今宵こそ、の意。歌. などがある。 一 の例に「今宵しも隈なく照す月影 は 残 の 菊 を 見 よ と な る べ し 」( 栄 花. 季ー無季. …山…. (連珠合璧集三六四). 集・夏・二一七・西行). ともこゝをせにせん郭公山田の原の杉の村立(新古今. ら な ん ( 古 今 集 ・ 一 四 一 ・ 夏 ・ よ み 人 し ら ず )、 聞 か ず. 〔証歌〕今朝きなきいまだ旅なる郭公花橘に宿はか. 郭公トアラバ. 物 語 ・ 三 六 八 ・ 源 師 房 )、「 さ ぞ な も 鳴 い て い る 今 宵 こ そ 、 く ら ぶ の 山 の 暗 い 八 六 七 ・ よ み 人 し ら ず ) が あ る 。 げに思ひわぶらん今宵しもかごと 中で旅の一夜を過ごすのだ。 寄合 が ま し く 月 ぞ さ や け き 」( 源 家 長 日 記・一四)など。 二 京都市左京区にある鞍馬山の 古名。単に暗い山を指すこともあ る。歌例に「わがきつる方も知ら れずくらぶ山木々の木の葉の散る と ま が ふ に 」( 古 今 集 ・ 秋 下 ・ 二 九 五 ・ 藤 原 敏 行 )、「 君 が ね に く ら ぶ の山の時鳥いづれあだなる声まさ る ら ん 」( 後 撰 集 ・ 恋 四 ・ 八 六 七 ・. - 41 -. 40 41.

(23) よみ人しらず)などがある。 三 山に旅寝をするさまを詠む歌 に「更科や姨捨山に旅寝して今宵 の 月 を 昔 見 し か な 」( 新 勅 撰 集 ・ 秋. 花 に つ ら い 目 を 見 せ る 、の 意 。. 下・二八二・能因)などがある。 一 「花」と「うき目」を結ぶ歌例に 「ありへての後をば知らず桜花ち. 一. う. 二. 花に憂 き目 を見 する谷風 昌俔. 前句の「くらぶの山」に「程もなき夢にまぎるな春の. 夜 の く ら ぶ の 山 の 花 の や ど り は 」( 雪 玉 集 ・ 五 七 三 六 ). 寒 く て暗 い くら ぶの山 で花 が咲 いて い る から「花」と付けた。. り て ぞ 人 に う き 目 見 え け る 」( 新 葉 の に 気 づ い た 。 自 分 た ち に つ ら い 思 い を さ 集 ・ 春 下 ・ 一 四 三 ・ 後 醍 醐 天 皇 )、 せ て い る だ け で な く 、 花 に ま で 憂 き 目 を 見 寄 合. 一. 二. 藤 浪の な どて は 松 に 懸 る ら ん. 季ー春(花). 前 句 の 「 花 」 を 「 藤 」 の 花 と 取 り な し 、「 う き 目 を 見 す. る」に「などては」と付けた。すなわち、松に懸かる. ど う し て 本 物 の 浪 を 松 に 懸 け さ せ な い ことは藤の花にとっては憂き目を見ることであると解. 宗順. 「散り残るこの一枝の花にさへう せようとしているのだろうか、谷から吹き 山トアラバ 嶺とも谷とも 山類のよりきたれるを き 目 な 見 せ そ 春 の 山 風 」( 楢 葉 集 ・ 上 げ る 風 は 。 付べ し。 (連珠合璧集七八) 八一・厳寛)などがある。 二 谷から山に向かって吹く風。 歌例に「谷風に春知り初めて鴬も 打 ち い づ る 波 の 花 に な く な り 」( 慶 運 法 印 集 ・ 八 )、「 谷 風 に と く る 氷 のひまごとに打ちいづる浪や春の は つ 花 」( 古 今 集 ・ 春 上 ・ 一 二 ・ 源 当純)などがある。 一「藤波のなどては」の「など」 は、なぜ、どうしての意。歌例に 「藤波の盛りは過ぎぬあし引の山. 寄合. 梅・柳・藤. …(連珠合璧璧集三〇七). 花トアラバ. 季ー春(藤浪). 有便。. 春の植物には. ・櫻など. き け る 」( 新 古 今 集 ・ 春 下 ・ 一 六 六 ・ 紀 貫 之 ) が あ る 。. 時 鳥 な ど か き 鳴 か ぬ 」( 続 千 載 集 ・ で 、 藤 の 花 に 松 に 懸 か る と い う 憂 き 目 を 見 釈 す る の で あ る 。 な お 、 松 に 懸 か る 藤 の 花 の 歌 に 「 み 雑 体 ・ 七 〇 八 ・ よ み 人 し ら ず )、 「藤 させるのだろうか。 どりなる松にかかれる藤なれどおのがころとぞ花は咲 波のかざしによりし面影のなどて 春 に も 立 ち 別 る ら ん )」( 弁 内 侍 集 ・二二一)がある。 二「藤波が松に懸る」とする歌は 「春風は吹くとも見えで高砂の松 の 梢 に か か る 藤 浪 」( 新 後 撰 集 ・ 春 下 ・ 一 四 八 ・ 平 忠 盛 )、「 き し な く. - 42 -. 42 43.

(24) てふぢののむらの藤浪は松の木ず ゑ に か か る な り け り 」( 夫 木 抄 ・ 一 四八四六・藤原道経)など多数見 出 せ る 。 ま た 、「 松 」 と 「 浪 」 と が 出てくる歌に「契りなきかたみに 袖をしぼりつつ末の松山浪越さじ と は 」( 後 拾 遺 集 ・ 恋 四 ・ 七 七 〇 ・ 清原元輔)などがある。 一 「 水 」と 「 霞 」を 結 ぶ 歌 例 に 「 春 きてはゐでこす波の音ばかり霞に. 一. かすみ. 二. 水は 霞 によどむ岸かげ. 二. ・. 行生. 玄的. 前 句 の 「 藤 浪 」 に 、「 こ れ も ま た 神 や う ゑ け ん 住 吉 の 松. に か か れ る 岸 の 藤 浪 」( 新 続 古 今 集 ・ 春 下 ・ 二 〇 六 ・ 前. 小舟」を付けた。岸」と「舟」とは次の為家や俊頼の. 前句の「岸かげ」に、そこに繋がれている「かたわれ. 季ー春(かすみ). ら 、「 岸 」 と 付 け た 。. 霞 が か か っ て 水 が よ ど ん で い る の は 、 藤 大 僧 正 禅 守 )、「 お き つ 風 ふ け ど ふ か ね ど 住 吉 の 松 に か 残 る 山 川 の 水 」( 夫 木 抄 ・ 五 五 三 ・ 西 園 寺 公 経 )、「 川 岸 や 柳 の か げ も 浪 が 松 に 懸 か っ て い る 姿 が 岸 陰 の 水 に 映 っ け こ す 岸 の 藤 浪 」( 宝 治 百 首 ・ 七 四 八 ・ 源 行 家 ) な ど か. 一. 春 雨 にか た わ れ 小 舟 猶 朽 ちて. うち霞みめぐむか水の淀の若こも」 ているからだ。 ( 草 根 集 ・ 二 七 九 〇 )な ど が あ る 。 二「よどむ」と「岸」を結ぶ歌例 に「苔ふかき岩にやしばし淀むら ん 吉 野 の 川 の 岸 の 浮 波 」( 宝 治 百 首 ・ 三 六 三 五 ・ 弁 内 侍 )、「 岸 か げ の 水の淀みのかた淵につりを垂れた る 青 柳 の 糸 」( 新 撰 和 歌 六 帖 ・ 二 三. 春雨に当たって何かが朽ちて. 四八・九条知家)などがある。 一. ゆくことを詠んだ歌の例に「草も. 岸. 寄合. …きし陰…. (竹馬集四七八). 付合ニハ…つなぐ舟…. 句作. 一〇五〇八・源俊頼). し た に は 音 信 れ て 舟 に は の り の 声 ぞ き こ ゆ る 」( 同 前 ・. 河 水 」( 夫 木 抄 ・ 三 〇 四 九 ・ 藤 原 為 家 )、「 う た の 島 岸 の. 春 雨 が 降り 止 まな いの で、 岸陰 に繋 がれ 歌にあるように、縁語。 木も色づきわたる春雨に朽ちのみ ま さ る ふ ぢ の 衣 手 」( 玉 葉 集 ・ 雑 四 て い る 片 割 れ 小 舟 が 更 に 朽 ち て し ま っ た 。 「 五 月 雨 は 岸 の 上 手 に 船 つ け て な ぎ さ を み を の よ ど の ・ 二 三 〇 一 ・ 藤 原 公 任 )、「 春 雨 に 霞の袖や朽ちぬらんはるればたえ て す め る 夜 の 月 」( 松 下 集 ・ 二 七 〇 一)などがある。 二「かたわれ舟」は朽ち腐ったり し て 割 れ て し ま っ た 舟 。歌 例 に 「 う きしづむ世をうら風の契かなかた. - 43 -. 44 45.

(25) わ れ 小 船 か な た こ な た に 」( 心 敬 集 ・ 一 八 〇 )、「 浮 き 草 は お な じ 汀 に ただよひてかたわれ舟ぞなかばし づ め る 」( 通 勝 集 ・ 九 四 七 ) な ど が ある。 一「竹の落葉」は初夏に竹から落 ちる葉のこと。歌例に「この里は 柴こる山の遠ければ竹の落葉をか. 政直. 一. 二. 竹の落 葉のそよ ぎ 淋 し き. 季ー春(春雨). 前句の「朽て」に「落葉」と付けた。 朽 [ つ」と「落葉 ] は 、「 を か の べ の な ら の 落 葉 や 朽 ち ぬ ら ん い ま は 音 せ で. か た わ れ 小 舟 が 朽 ち て ゆ く の も 淋 し い も ふ る 霰 か な 」( 続 千 載 ・ 冬 ・ 六 四 七 ・ 忠 房 親 王 )、「 い た. 二. 付 け た 。「 竹 」 と 「 庵 」 が 共 に 出 て く る 歌 に 「 庭 の 松 め. 前句の「竹の落葉」に、竹垣に囲まれている「庵」を. 季ー春(竹の落葉). 気分であろう。. いが、前句の「春雨」の続きなので、本句では晩春の. 「竹の落葉」は、初夏の季語として使われることが多. んとも物悲しい。 と「落葉」は縁語。. 冬ざれは人 気 まれな る庵の前 宣滋. 一. か ぬ 日 ぞ な き 」( 宝 治 百 首 ・ 三 三 四 の だ が 、 春 雨 が 片 割 れ 小 舟 に 当 た っ て そ の づ ら に 落 葉 朽 ち に し 山 里 は 雪 に も 跡 を ま た で ふ る か な 」 七 ・ 隆 祐 )、「 い つ の 間 に 変 は る も そ ば の 竹 の 落 ち 葉 が そ よ い で い る の は 、 な ( 洞 院 百 首 ・ 九 四 六 ・ 藤 原 行 能 )に あ る よ う に 、「 朽 つ 」 のとも見えなくに竹の落ち葉ぞ庭 に つ も れ る 」( 延 文 百 首 ・ 七 九 四 ・ 覚誉)など。 二 「そよぐ」と「さびし」を結ん だ歌例に「人は来ずさびしかれと や荻の葉のそよぐばかりの秋の山 里 」( 千 五 百 番 歌 合 ・ 一 二 四 八 ・ 藤 原 隆 信 )、「 寂 し さ は 中 々 よ そ に き きなしてそよぐも知らぬ軒の下荻」 (黄葉集・七五四・烏丸光広)な ど が あ る 。「 落 葉 又 は 竹 の 葉 が さ び し」とする歌には「寂しさは猶残 りけり跡絶ゆる落葉が上に今朝は 初 雪 」( 無 名 抄 ・ 四 三 )、「 山 の 名 の竹の葉わくる風の音もさびしさ さ ぞ な 深 草 の 里 」( 雪 玉 集 ・ 二 二 六 九)などがある。 一「冬ざれ」は風物が荒れはてて もの寂しい冬の様を言う。歌例に. ひ し 我 が 庵 に な れ て ぞ き な く 鶯 の 声 」( 草 庵 集 ・ 一 九 ). 竹 の 落 葉 の 積 み 重 な る 物 寂 し い 冬 ざ れ の ぐ れ る 竹 を か き ほ に て 風 の み た え ぬ 山 か げ の 庵 」( 新 続 「冬ざれのあさぢがうへに置く霜 の 消 ゆ る 雫 は た る ひ な り け り 」( 玄 季 節 に 、 人 気 も 稀 な 庵 の 前 で あ る こ と よ 。 古 今 集 ・ 雑 中 ・ 一 八 四 二 ・ 源 重 資 )、「 竹 を の み 友 に 思 玉 集 ・ 三 一 七 ・ 惟 宗 広 言 )、「 冬 ざ. - 44 -. 46. 47.

(26) れの枯野を寒みかる人も嵐にのこ る 萱 が し た 折 」( 永 享 百 首 ・ 貞 成 親王・五八〇)など。 二 人の気配のこと。歌例に「庭 草に秋風たつを松虫の人げありと や 啼 き と ま る ら ん 」( 草 根 集 ・ 三 五 五 八 )、「 匂 ひ こ そ 猶 も り い づ れ も 屋のみす動きだにせぬおくの人気 に 」( 同 ・ 八 一 五 六 ) な ど 、。 俳 諧 の例に「飼猫がかけのぼりたる肴 棚 / 台 所 に は 人 気 稀 な る 」( 正 章 千 句・二五七/二五八)がある。. 信助. 一. 二. ・. 三. 荒 田の原に 馴 るる 鳥の音. がある。 季ー冬(冬ざれ). 本句は蘇武に飼い馴らされた雁が都まで彼の便りを届. けたという中国の故事に基づく「すきかへす春の荒田. 一「荒田」は春耕前の、まだ耕し ていない田。歌例に「ますげおふ. で、前句の「庵」に「荒田」と付けたと見ることも可. 季ー冬(荒田). 能である。. 首 一 番 歌 な ど に あ る よ う に 、「 庵 」 と 「 田 」 は 縁 語 な の. 二五)を本歌にしていると思われる。ただし、百人一. は す む 程 の 水 さ へ な し と 雁 や 行 く ら む 」( 草 根 集 ・ 一 六. 庵の前の春耕を待つ荒田の原に飼い馴ら る荒田に水をまかすればうれしが ほ に も 鳴 く 蛙 か な 」( 西 行 法 師 家 集 さ れ た 鳥 の 音 が 聞 こ え る 。 蘇 武 に 飼 わ れ て ・ 一 二 六 )、「 た づ の な く 冬 の 荒 田 い た 雁 の よ う に 、 い ざ と い う と き は 飼 い 主 の消息を方々に知らせてくれるだろう。 のうねの野に一村すすき一夜宿か せ」 (壬二集・一五一七・藤原家隆) などがある。 二 荒田の原に住みなれた鳥、の 意 。「 馴 る 」 を 用 い た 歌 に 「 住 馴 る るとこを雲雀のあくがれて行へも し ら ぬ 雲 に 入 り ぬ る 」( 夫 木 抄 ・ 一 八 五 〇 ・ 藤 原 有 家 )、「 ま だ 馴 れ ぬ 大内山の時鳥今年初音を聞きぞそ め つ る 」( 続 後 拾 集 ・ 夏 ・ 一 七 九 ・ 尊良親王)などがある。 三 歌例に「鳥の音もみつの御法 をきかすなり山の庵の明がたの空」 ( 壬 二 集 ・ 四 九 一 ・ 藤 原 家 隆 )、 「相 坂の鳥の音遠く成りにけり朝露わ く る 粟 津 の の 原 」( 新 拾 遺 集 ・ 羈 旅. - 45 -. 48.

(27) 歌例に「山ぎはの霧はれそめ. ・七七七・頓阿)などがある。 一 て声ばかりききつる雁のつらぞ見 え 行 く 」( 玉 葉 集 ・ 秋 上 ・ 六 〇 〇 ・. 一. 二. 三. 山 際 や 夕 日 ほのかに残る ら ん 豊一. ・. 二. べ. ・. 前 句 の 「 荒 田 の 原 を 「 浅 茅 が 原 」 と 取 り な し 、「 夕 日 さ. す 浅 茅 が 原 の 旅 人 は あ は れ 幾 夜 に 宿 を か る ら ん 」( 新 古. 前句の「山際」にそこに続く「野辺」を付けた。. 「荒田の原」に通じるので、所謂観音開きの嫌いがあ. の. 荒 田の 原 に人 に馴れ た鳥 がい て、 そ のそ 今集・羈旅・九五一・源経信)から「夕日」と付けた。. 一. 霜 置 き あへ ぬ 野 辺 の 裏 枯 れ. 順息. 藤 原 実 文 )、「 雲 と ほ き 夕 日 の あ と ば の 山 際 に 夕 日 が ほ の か に 残 っ て い る で あ の山ぎはに行くとも見えぬ雁のひ ろう。 季ー無季 と つ ら 」( 風 雅 集 ・ 秋 中 ・ 五 三 九 ・ 伏見院)などがある。 二 歌例に「夕日かげほのかにみ ゆる片岡の尾花が末に秋風ぞ吹く」 (文保三年御百首・八三八・藤原 師 信 )、「 ほ の か な る 野 沢 の 夕 日 か げろふの燃ゆるは春の草葉なりけ り」 ( 柏 玉 集 ・ 二 〇 五 )な ど が あ る 。 三「残るらん」は「残るだろう」 の意。歌例に「なが月もすゑの野 原の花薄ほのかに残る秋の色かな」 「風にゆく峰のうき雲跡はれて夕. ( 続 千 載 ・ 秋 下 ・ 五 六 九 ・ 平 時 敦 )、 日 に 残 る 秋 の む ら 雨 」( 玉 葉 集 ・ 秋. 近い例に「住吉のちぎのかた. 下・七二七・平時春)など。 一. そぎゆきもあはで霜置きまよふ冬. 48. 消て色とる木ゝの白露」 くも裏枯れてきた。. 麓トアラバ…野べ…(連珠合璧集八五). 寄合. ・一四八・永福門院)などがある。. 桜 の 花 ざ か り 野 べ は 霞 に う ぐ ひ す の 声 」( 玉 葉 集 ・ 春 下. ( 千 載 集 ・ 冬 ・ 四 五 七 ・ 藤 原 実 定 )、「 を ち こ ち の 山 は. きねは雪にうづもれて野べとひとつに成りにけるかな」. 山際に夕日が残っていてまだ寒くないの る。 は き に け り 」( 新 後 拾 遺 集 ・ 冬 ・ 四 八 四 ・ 源 俊 頼 )、「 置 あ へ ぬ 朝 の 霜 で 、 霜 が 置 き 尽 く し て い な い 野 辺 の 草 が 早 「 山 際 」 の 山 と 野 辺 が と も に 出 て く る 歌 に 「 山 里 の か の薄紅葉. (下葉集・二八二)がある。 二「野べの裏枯れ」の歌例に「野 べの色は思ひしよりもうら枯れて 霜 を う ら む る き り ぎ り す か な 」( 後 鳥 羽 院 御 集 ・ 三 五 四 )、「 け さ み れ ば草葉も白く霜置きて野べのけし. - 46 -. 49 50.

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