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換地処分後の共有登記の解消と登録免許税法上の「共有物の分割」:前橋地判平成30年5月18日判例集未登載

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換地処分後の共有登記の解消と

登録免許税法上の「共有物の分割」

―前橋地判平成30年5月18日判例集未登載

岡 田 順 太

1、事実の概要 法務省は、1961(昭和36)年、土地区画整理事業の完了した土地の売 買においても、不動産登記法による分筆・移転登記を申請する際、基とな る土地(土地区画整理事業における従前地)の実測図を添付すべきこと を求め、「測量によって分割後の土地の地積を定めることができないとき は、土地の分筆はすることができない」との通知(1)(以下、「昭和36年通知」 という。)を発した。しかしながら、土地区画整理事業においては事業着 手後、換地処分の登記を完了するまで多年月を要し、従前地の実測図の添 付が難しいため、当該地区内の土地所有者等関係者からは、登記所保管の 旧土地台帳法施行細則(昭和25年法務府令88号)2条の地図(公図)(2) 基づいた図上分割を認めてほしい旨の強い要望があり、また、区画整理事 (1) 昭和36年5月12日民事三発第295号民事局第3課長心得回答(昭和36年3月17日甲 府市長照会)。 (2) 土地台帳法(昭和22年法律30号)に基づく土地台帳附属地図(公図)は、明治初年 の地租改正図に起源を有し、本来徴税目的で作製されたものであるが、不動産取引 に用いられていたことから、不動産登記法の一部を改正する等の法律(昭和35年法 律第14号)により土地台帳法が廃止された現在でも広く利用されている。本来は、 不動産登記法14条1項に基づき登記所に備え付けられるべき「地図及び建物所在図」 (14条地図)が存在しなければならないが、「同項の規定により地図が備え付けられ るまでの間」、「地図に準ずる図面」として公図が備え付けられているのである(同 条4項)。

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業施行者が当該分筆を承認する場合には、図上分割の弊害がないと思われ るとして、公図に基づいて作製した地積測量図又は事業施行者が保管する 事業施行前の土地の実測図に基づき作製した地積測量図のいずれかに、事 業施行者の承諾書を添付して申請のあった分筆登記が可能であるかとの照 会が1966(昭和41)年になされたが、これについてもそうした取扱いは できないとの通知(3)(以下、「昭和41年通知」という。)を発している。 原告Xは、1990年4月、A市の土地区画整理事業地区内の仮換地の一 部である隣地境界が明確にされた土地(以下、「本件土地」という。)及び 本件土地上の建物について、建売分譲住宅としてB社と売買契約を締結し た。その際、B社からは、本件土地がA市の土地区画整理事業施行区域内 にあるため法務局の公図と現況が異なること、また、前述の各通知に基づ く法務局の方針により分筆登記ができないので、隣地所有者との共有登記 になること、さらに、換地処分後、分筆登記や単独所有にするための共有 物分割登記等が必要になることの説明を受けた。Xは本件土地についてB 社の持分の一部移転登記及び本件土地上の建物についての所有権保存登記 の申請をして受理され、その後、自宅として居住している。 2010(平成22)年7月14日、本件土地を含む土地区画整理事業地区内 の土地について換地処分がされ、2015年11月30日、Xは隣地所有者との 共有状態を解消し、本件土地を単独所有とするため「平成22年7月14日 共有物分割」を原因とする登記申請を行い、登録免許税法の「共有物の分 割」(別表第一第1号(二)ロ)の登記として、土地の価額の持分割合に 応じて算定した金額に1000分の4の割合を乗じて計算した金額に相当す る金額の印紙を貼付して登録免許税を納付した。これに対して、Y地方法 務局A支局登記官は、本件土地を含む換地が、いわゆる「一括分割」であっ て登録免許税法上の「共有物の分割」に含まれず、「その他の原因による (3) 昭和41年9月21日民事三発第419号民事局第3課長依命回答(昭和41年4月7日山 口地方法務局長照会)。

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移転の登記」(同号(二)ハ)の1000分の20の税率が適用されるとして、 2015年12月24日、登録免許税が納付されていないとの理由から(不動産 登記法25条12号)、Xの登記申請を却下する処分を行った。 これに対して、Xは、本件土地を含む土地の共有者らとともに、当該却 下処分の取消しを求めて訴えを提起した(4) 2、判旨(前橋地判平成30年5月18日) 裁判所は、以下の通り、原告の請求には理由がないとして訴えを棄却し た(5) (1)本件登記申請に係る共有物分割の法的性質 原告による登記申請は、複数筆の土地を「それぞれ一括して分割の対象 とし、分割後の各土地を原告らの単独所有・・・とする方法によるもので ある」。 「民法上、複数の不動産について一括して共有物の分割の対象とし、分 割後のそれぞれの部分を各共有者の単独所有とする方法(以下「一括分割」 という。)は、現物分割の方法として許容されており」(6)、本件の共有物の 分割も「それぞれ一括分割として民法上許容されるものである」。 (2)現行法令と平成12年改正租税特別措置法 そこで、登録免許税法別表第一第1号(二)ロの適用範囲について検討 するに、同規定が「その他の原因による移転の登記」の税率(1000分の (4) 本件では、Xと同様にB社から建売分譲住宅を購入した者によって提起された5つ の登記申請却下処分取消等請求事件(平成28年(行ウ)第6号、同第8号、同第9号、 同第10号、同第11号)が併合審理された。 (5) 原告は、本件に係る登記申請の受理及び登記の義務付けの訴えも提起しているが、 不適法として却下されている。 (6) 最二小判昭和45年11月6日民集24巻12号1803頁、最大判昭和62年4月22日民集41 巻3号408頁参照。

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20)よりも「低率の税率を定めた趣旨は、共有物の分割による持分の移 転の登記をしようとする者は、その共有物につき当該持分を取得して持分 の移転の登記をした際に、既に1000分の20の登録免許税が課せられてい るため、再度同率の登録免許税を課することは重複課税となるから、これ を避ける点にあるものと解される」。そして、「上記のような重複課税と評 価し得るのは、共有物の分割による移転の登記に係る持分の価額のうち、 その共有物について有していた持分の価額に対する課税部分に限られ」る。 2000(平成12)年に新設された租税特別措置法84条の4は、「共有物の 分割による移転の登記に係る低率の税率の適用範囲を民法上の共有物分割 全般から上記のような重複課税と評価し得る部分に限定したものと解され る」。そして、2003(平成15)年の改正で同条は削除されたが、登録免許 税法17条1項に同趣旨の表が新設されるなど、現行法令に至っているこ とからすれば、別表第一第1号(二)ロの「分割」も「削除された租税 特別措置法84条の4と同様に、共有物の分割のよる移転の登記について 1000分の4の税率を適用すべき範囲を限定するものである」。 (3)一括分割と登録免許税法上の「分割」 これを踏まえて「一括分割の場合について検討すると、一括分割は、民 法上の共有物分割の方法の一つではあるものの、一括分割の対象となる各 不動産の各共有者間において、当該各不動産についての共有持分を交換す ることにより単独所有を実現するという性質を持ち、この点において、1 個の不動産の現物分割の場合とは異なり、交換的な性質の権利変動を含む ものであるというべきである」。交換による所有権の移転の登記について は、「その他の原因による移転の登記」の税率が適用されることから、「交 換的な権利変動を含む一括分割による移転の登記について1000分の20の 税率を適用することをもって重複課税と評価すべき理由はなく、一括分割 については、1000分の4の税率を適用すべき実質的根拠に欠ける」。

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さらに登録免許税法20条による委任を受けて制定される同法施行令9 条1項が、「1000分の4の税率が適用されるための要件として、当該登記 の直前に分筆登記がされていること及び当該分筆登記に係る他の土地の全 部又は一部の所有権の持分の移転登記と同時に申請されることを定めるこ とからみても」、一括分割は登録免許法上の「分割」に含まれないと解さ れる(7) そして、この点は、「共有物の分割による移転の登記が共有物分割を 装って登録免許税を免れようとする脱法的な登記であるかどうかによって 左右されない」とする(8) (4)分割型換地と分筆登記 法務省は、2000(平成12)年に、分割型換地(従前の1個の土地に対 して数個の換地を定める換地類型)について分筆登記とみなして差し支え ない旨の通達(以下、「平成12年通達」という。)を発出している(9)。これ については、「①分割型換地後の土地に係る共有物の分割は、その場面だ けに着目すれば、一括分割に該当するものであるが、分割型換地が、もと もと換地処分後に1個の土地を単有とすることを予定する点において、全 体としては1個の土地についての現物分割に準ずる性質を有すること、② 分割型換地により分割されたかどうかは、分筆登記の場合と同様に、登記 官において登記記録上判断することが可能であり、当該換地処分が分筆登 (7) なお、原告は同法施行令9条1項が法律の委任を受けずに課税の範囲を定めるもの であり、課税要件法定主義に違反する旨の主張をするが、本件判決は、同項は税率 の適用範囲という細目を定める規定にすぎないとして、失当であるという。 (8)  原告は、地方税法73条の7第2号の3の「共有物の分割」に一括分割が含まれる ことを指摘するが、本件判決は、不動産取得税と登録免許税とは目的を異にするな どとして、登録免許税法の解釈に影響を及ぼさない旨の判示をする。 (9) 平成12年3月31日民三第828号民事局長通達。これによれば、分割型換地の場合の 換地処分は、1個の土地の現物分割の場合の分筆と同様にみることができ、また、 分割型換地により分割されたかどうかは、分筆の場合と同様に登記記録上明らかで あることから、当該換地処分を分筆登記とみなして差し支えないとする。

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記と類似の性質を有することに鑑み、例外的に当該換地処分を租税特別措 置法84条の4第2項の分割登記とみなして差し支えないとしたものと解 される」。 そして、この趣旨は、同条項と同様に、当該登記の直前に分筆登記がさ れていること及び当該分筆登記に係る他の土地の全部又は一部の所有権の 持分の移転登記と同時に申請されていることを要件とする登録免許税法施 行令9条1項の「分筆登記」についても妥当する。本件登記申請において 1000分の4の税率を適用すべきとの原告の主張は、一括分割が登録免許 税法の「分割」に含まれることを前提とするものであって、採用し得な い(10) また、「平成16年通知以前は、従前の土地について分筆登記をすること は事実上困難であったという事情が認められるが、これらの事情が、登録 免許税の税率に影響を及ぼすと解すべき理由はない」。 以上の通り、本件登記申請については、分割型換地に係る部分にのみ 1000分の4の税率の適用の余地はあるものの、原告は全ての移転登記に ついて当該税率を適用して計算した金額でしか登録免許税の納付をしてい ないから、不動産登記法25条12号による却下事由がある。 (5)憲法14条1項違反について 原告は、分割型換地とそれ以外の類型の換地を合理的な理由なく差別す るものであり、本件登記申請に対する却下処分は平等原則(憲法14条1 項)に違反すると主張するが、「そもそも一筆型換地については、換地処 分後の1個の土地のみを考えれば、当該1個の土地の現物分割の方法によ る共有物分割は換地処分を前提としない1個の土地の現物分割の方法によ (10) この他、原告は登記の前後において実質的な権利変動はないなどと主張するが、 本件判決は、「買主らは、法的には従前の土地の持分を買い受けたのであり、本件換 地処分により従前の土地に照応する土地の持分を取得したのであるから、登記の前 後において実質的な権利変動はないということはでき」ないとした。

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る共有物分割と変わるところがないから、平成12年通達その他の手当を 要しないと解される」。 また、平成12年通達の趣旨は前述の通りであり、「分割型換地が1個の 土地の現物分割に準ずる性質等を有することに鑑み、分割型換地に係る換 地を租税特別措置法84条の4第2項の分筆登記とみなして差し支えない としてことは合理的な理由があると認められ、他方で、合併型換地による 換地処分後の1個の土地の共有物分割及び一又は複数の換地類型による換 地処分後の複数の土地の一括分割の場合には、1個の土地を分割するもの ではないし、換地処分について分筆と同様の機能を有するものと解するこ ともできない」。 よって、平成12年通達が分割型換地のみを取り上げたことをもって差 別とはいえないし、これを前提にした本件却下処分が憲法14条1項に違 反するとはいえない。 (6)憲法29条1項違反について 原告は、登記をする権利が不動産に対する権利と密接不可分なものとし て、憲法29条1項の財産権として保障されているところ、本件却下処分 は、原告が自由に登記する権利を合理的な理由なく侵害するものであり、 憲法29条1項に違反すると主張するが、「我が国の法制上、不動産登記に 係る権利は、不動産登記法その他の関係法令により創設されたものとい うべきであり、憲法29条1項がこれを保障していると解すべき理由はな い」。 そして、本件の共有物の分割は一括分割であり、本件却下処分には理由 があるところ、「登記について登録免許税を課すること、登録免許税を納 付しないことを登記の申請の却下事由と定めることが財産権の侵害に当た らないことからすれば」、本件却下処分をもって原告の財産権を侵害した とはいえず、憲法29条1項に反するとの主張も採用し得ない。

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3、評 釈(11) (1)本件事案の特殊性と背景的事情 本件判決は、本件事案を通常の私法上の取引の次元でのみ考察してお り、公法的視点に欠けている。すなわち、公益性と権力性が存在する土地 区画整理事業の本質を理解しておらず、また、本件特有の共有及びその分 割における法律関係についても任意性が求められる私法関係によって生じ たものであるかのように扱い、そのため登録免許税法の解釈について求め られるべき他の諸法令との整合的な解釈を怠っていると言わざるを得な い。 ① 共有関係の強制と財産権(憲法29条)侵害 本件においては、共有関係の形成とその解消に伴う法律関係の理解が争 点となっているが、近代法の所有形態としては単独所有が原則である点を 改めて認識した上で、法的考察をすべきである。すなわち、森林法違憲判 決(12)によれば、「共有とは、複数の者が目的物を共同して所有することを いい、共有者は各自、それ自体所有権の性質をもつ持分権を有しているに とどまり、共有関係にあるというだけでは、それ以上に相互に特定の目的 の下に結合されているとはいえないものである」とした上で、「共有の場 合にあつては、持分権が共有の性質上互いに制約し合う関係に立つため、 単独所有の場合に比し、物の利用又は改善等において十分配慮されない状 態におかれることがあり、また、共有者間に共有物の管理、変更等をめぐ つて、意見の対立、紛争が生じやすく、いつたんかかる意見の対立、紛争 が生じたときは、共有物の管理、変更等に障害を来し、物の経済的価値が 十分に実現されなくなるという事態となる」ため、共有物分割請求権(民 法256条)が保障されていると判示する。すなわち、この共有物分割請求 権は、「各共有者に近代市民社会における原則的所有形態である単独所有 (11) 本評釈は、本件判決を不服とする控訴審において、筆者が東京高等裁判所に提出 した鑑定意見書に加筆・修正を行ったものである。 (12) 最大判昭和62年4月22日民集41巻3号408頁。

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への移行を可能ならしめ、右のような公益的目的をも果たすものとして発 展した権利であり、共有の本質的属性として、持分権の処分の自由ととも に、民法において認められるに至つたもの」であり、これを「共有者に否 定することは、憲法上、財産権の制限に該当し、かかる制限を設ける立法 は、憲法29条2項にいう公共の福祉に適合することを要する」とされて いる。 この点、「昭和36年通知」及び「昭和41年通知」は、土地区画整理事業 において、従前の土地の実測図の添付が不可能な場合で、測量によって分 割後の土地の地積を定めることができないときは、土地の分筆をすること ができないとし、また、公図に基づいて作成した地積測量図又は事業施行 者がその保管する事業施行前の土地の実測図に基づき作成した地積測量図 に事業施行者の承諾書を添付して申請のあった場合も、分筆登記ができな いものとしている。このような行政実務により分割請求権行使が事実上妨 げられたために本件のような事案が生じた訳であるが、これを正当化する だけの事由が見出せなければ、当該行政実務が違憲性を帯びることはいう までもない。また、財産権の内容形成(憲法29条2項)には、広い立法 裁量が認められるのであるが、それは完全な自由裁量ではなく、可能な限 り財産権保障の趣旨を実現する責務が国家に課せられていると解される。 本件についていえば、通知の発出当時は技術的な問題から制約的な取扱 いが許容されたとしても、測量技術等の飛躍的向上が見られる今日にあっ ては、通知の正当性を支える「立法事実」が存在しなくなっているとい える(13)。この点、そもそも公図は古い時代に作成されており、正確性に問 題があることが指摘されている(14)。とはいえ、公図を正確な地図へ置き換 (13) 立法事実の喪失に関する判断については、最大判平成17年9月14日民集59巻7号 2087頁(在外国民選挙権訴訟)参照。 (14) 国土交通省によれば、2015年段階で、公図と現況のずれが30cm以上1m未満の地 域が27.7%、ずれが1m以上10m未満の地域が49.8%などとなっている。    http://gaikuchosa.mlit.go.jp/gaiku/html/info4.html(2018年8月31日閲覧。以下、 本稿におけるweb情報について同じ。)

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える作業として地籍調査が進められているところ、2017年度の進捗率は 52%にとどまっており、特に人口密集地区(DID)が25%という状況にあっ ては(15)、公図が依然として土地の状況を把握するために必要な資料となっ ていることは確かであって、裁判例でも、「各筆の土地の位置、形状、境 界線、面積等の概略を明らかにするための公的な資料として、現実の不動 産取引においても、又、分筆等の登記手続においても」、14条地図に代わ る重要な機能を有しているとされている(16)。しかしながら、公図と登記簿 を絶対視して、地積測量図を分筆の資料としないとするのは本末転倒であ り、情報技術の発達による第4次産業革命の成果を活用した地籍調査の提 案さえなされている今日においてはもはや時代錯誤といえよう(17) そして、それは単なる政策的な問題のみならず、不当に財産権を侵害す るという憲法問題をも招来する。本件における規制を正当化する立法事実 が存在しなくなった時期を明確にするためには諸々の検討を要するもの の、少なくとも2004(平成16)年頃には存在しなくなっていたのは明ら かである。というのも、同年2月20日の構造改革特別区域推進本部第5 回会合において規制改革要望に対する政府方針が示されており、そこに 「土地区画整理事業により仮換地指定を受けている従前地の分筆登記につ いて、当該事業施行者が工事着手前に測量を実施し、現地を復元すること ができる図面(実測図)を作成し、保管している場合であって、これに基 (15) http://www.chiseki.go.jp/situation/status/index.html (16) 東京地判昭和48年5月30日判時704号36頁。同判決では、公図の改ざんについて 登記官が公図の閲覧状況の監視、記載の点検確認等の義務を怠つたとして国家賠償 請求が認容された。また、公簿面積と実測面積とが一致しないとしても、土地の境 界について公図と現況とを対照し、両者が一致する場合には、その線は土地の境界 として合理性があると言えるとする東京地判昭和49年6月24日判時762号48頁、境 界確定事件において公図を事実認定の証拠として採用したが、境界線の形状につい てこれと異なる認定をするためには、特段の理由を付すべきとする東京高判昭和53 年12月26日判時928号66頁参照。 (17) 小野伸秋「不動産表示登記と防災―循環型社会に対応した地籍情報制度改革の必 要性」法律時報89巻9号(2017年)74-79頁。

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づいて作成された地積測量図を添付したときは、当該分筆登記申請を受理 するものとする」(18)ことが挙げられている。これを受けて、同月23日、法 務省から通知が出され(19)(以下、「平成16年通知」という。)、土地区画整 理事業施行区域内の土地の分筆登記において図上分割が可能となった。従 前の対応では、共有持分登記ということから金融機関による土地評価の低 下や融資の手控え、物納の制限、融資先の倒産等による不良債権化、土地 取引の停滞等を引き起こすといった問題点が指摘されていたところである が、規制改革の一環という政策的理由からようやく対応がなされたのであ る(20)。これを法的視点から見ると、このような取扱いの変更が行われた段 階において図上分割を制限する正当性がないことは明らかであるといえよ う。したがって、この平成16年通知以降、改めて図上分割に制約を課す ことは憲法違反となると解される。 ちなみに、名古屋法務局では、すでに1982年の時点において管内登記 官に向け、平成16年通知と同旨の通知が発出されている(21)。こうした実務 上の取扱い実態に鑑みれば、かなり早い時期から立法事実が喪失されてい た可能性が高い。そうなると、本件土地の売買契約当時においても、図上 分割による単独登記が制限されたことによる不当な財産権侵害がなされて いたと見ることも可能となろう。 ② 消極的結社の自由(憲法21条)上の問題 憲法論に関連して付言すれば、憲法21条は結社の自由を保障している が、個人主義(憲法13条前段)を基調とする近代法において、結社の自 由としては、団体を結成したり、加入したりする自由よりもむしろ「消極 的結社の自由(結社しない自由/結社から離脱する自由)」が重要である (18) 「構造改革特区の第4次提案に対する政府の対応方針」(平成16年2月20日)7頁。  https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kouzou2/dai5/5siryou2.pdf (19) 平成16年2月23日民二第492号民事局民事第二課長通知。 (20) 「土地区画整理事業施行区域内の土地の分筆登記の取扱いについて」登記研究676 号(2004年)97-100頁。 (21) 昭和57年10月6日不登649号名古屋法務局民事行政部不動産登記課長通知。

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点は、憲法学でも広く認識されている(22)。すなわち、本件のように、法務 局の行政実務の方針から意に沿わない共有関係を構築せざるを得なかった 者が、その離脱の段階において法律上も事実上も不利益な扱いを受けるこ とは極力避けなければならない。 実際上、共有名義の不動産に対する固定資産税については、地方税法 10条の2第1項により、持分に関係なく共有者全員が連帯して全額を納 付する義務(連帯納税義務)が生じる。単に持分に応じた納税義務が課さ れるのではなく、他の共有者の納税義務をも負うという、法的結合関係が 強制されるのである。 このように、便宜的に共有関係を採用することで、単に財産権に対する 物的な制限が生じるのみならず、他の共有者の滞納の危険負担という人的 な義務が生じるのであり、そうした共有関係の解消は法的保護に値する利 益といえる。そうした観点からも、登録免許税法の解釈にあたっては、よ り憲法上の権利保障に適合的な解釈(23)が求められる。 ③ 土地区画整理事業の法的性質 ところで、土地区画整理事業は、「都市計画区域内の土地について、公 共施設の整備改善及び宅地の利用の増進を図るため」、土地区画整理法で 「定めるところに従つて行われる土地の区画形質の変更及び公共施設の新 設又は変更に関する事業をいう」(同法2条1項)。この制度が、戦後の市 街地整備に大きな役割を果たしてきたことはいうまでもない。 市街地開発事業には、収用の手法を用いるものと公用権利変換の手法を 用いるものがあり、土地区画整理事業は、公用権利変換の手法の一つであ る「公用換地」を用いて行う事業である。この換地処分に処分性があるこ とは言うまでもないが、それ以前の段階である事業計画決定に対する抗 (22) 樋口陽一「『人権総論』への一つの試み」法学教室123号(1990年)18頁、岡田順太『関 係性の憲法理論―現代市民社会と結社の自由』(丸善プラネット、2015年)5頁。 (23) 最二小判平成24年12月7日刑集66巻12号1337頁(堀越事件)における千葉勝美裁 判官補足意見参照。

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告訴訟が認められる点に特徴がある(24)。そして、換地計画において換地を 定める場合は、「換地及び従前の宅地の位置、地積、土質、水利、利用状 況、環境等が照応するように定めなければならない」(同法89条)とする 照応原則がある。土地改良法にも同趣旨の規定が置かれているが(同法 53条)、照応原則違反を理由とする換地処分の無効確認訴訟は適法である とされている(25)。なお、土地区画整理法上、施行地区内の宅地について換 地処分を行うため、換地計画を定めなければならないが、これには都道府 県知事の認可を要するのが原則である(同法86条)。 また、土地区画整理事業の特徴的制度として「減歩」があり、各宅地面 積を少しずつ減らして、道路や公園などの公共施設整備用地に充てたり (公共減歩)、売却用にひねり出した土地を事業費に充てたり(保留地減歩) といったことを行う(同法96条)。この点、学説には減歩が強制的に土地 面積を削ることから、憲法29条3項による損失補償がなければ違憲とな りうるとの指摘もある(26)。しかし、「減歩によつて直ちにその減歩分の土 地の価額に相当する損失が生ずるわけではなく、また、換地の結果補償さ れるべき損失が生じたと認められる場合については土地区画整理法上その 補償措置が講じられている」として、減歩そのものを違憲とはしないのが 判例である(27)。これは、実際の土地面積が減少しても、道路や公園の整備 などにより利便性が向上するなど経済的価値が上昇するから、その分で減 少分を補うというのが土地区画整理法の考え方だからである。 ちなみに、施行後の公共用地率が大きい地区等においては、宅地の利用 価値が高くなり平均単価は上がるものの、宅地の面積の減少が大きく、地 区全体の宅地総価額が減少する。このような地区を「減価補償地区」とい (24) 最大判平成20年9月10日民集62巻8号2029頁(浜松市土地区画整理事業計画事 件)。 (25) 最二小判昭和62年4月17日民集41巻3号286頁。 (26) 藤田宙靖「土地区画整理制度と財産権保障―いわゆる『無償減歩』をめぐって」 菅野喜八郎・藤田宙靖編『憲法と行政法』(良書普及会、1987年)725-727頁。 (27) 最一小判昭和56年3月19日訟月27巻6号1105頁。

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い、宅地総価額の減少分が「減価補償金」として地権者に交付される(同 法109条1項)。ただ、「実際の事業では、減価補償金相当額をもって宅地 を先行買収し、公共用地に充てることにより、従前の宅地総価額を小さく し、減価補償金を交付しなくてすむようにしている」(28) このように、土地区画整理事業は、宅地と道路の面的整備や安上がり な道路拡幅を可能とし、公益目的の実現に資するもので、「土地区画整理 は都市計画の母」ともいわれてきた(29)。そのような事業における換地処分 は、それ以前に策定された一連の計画と不可分の関係にあり、私的自治の 原則を基礎にした土地取引とは明確に区別される。 ④ 小 括 以上の通り、登記実務上の理由から分筆登記を制限することは、単独 所有を原則形態とする財産権保障(憲法29条)の理念に反するものであ り、昭和36年通知及び昭和41年通知当時の技術的事情が存在しない状況 にあってそのような制限を継続することは、判例からしても明らかに違憲 となる。また、共有物分割請求権は、他者との関係性の切断という消極的 結社の自由(憲法21条)の反映でもあり、共有状態を公権力が強制する にはやむを得ない事情がなければならない。原告は、被告国側(もっぱら 登記実務当局)の都合によって、本件のような煩雑な法律関係を構築せざ るを得なくなったのであり、それ自体に憲法上の瑕疵が疑われるにもかか わらず、そうした事情を切り離して登録免許税法の解釈を行うのは妥当で ない。そして、土地区画整理法上の「換地処分」は公益性を有する権力作 用であって、私法上の土地の「交換」とは法的性質を異にすることは言う までもない。 本件判決には、これらの視点が完全に欠落している。 (28) 国土交通省都市局市街地整備課HPより。    http://www.mlit.go.jp/crd/city/sigaiti/shuhou/kukakuseiri/kukakuseiri01.htm (29) 安本典夫『都市法概説(第2版)』(法律文化社、2013年)198-199頁。

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(2)登録免許税法別表第一の「共有物の分割」の解釈について 国側は、登録免許税法が、「1000分の4」の税率を適用すべき「共有物 の分割」の範囲を「1筆からの分筆」に限定して解釈しているが、この点 については法解釈に誤りがある。 ① 会計検査院による指摘 そもそも、本件に係る登録免許税法及び同法施行令の諸規定は、租税特 別措置法等の一部を改正する法律(平成12年法律13号)により設けられ た租税特別措置法84条の4に由来する。これは、従前の共有持分に応ず る部分以外の部分に対する登録免許税の税率を1000分の6(当時)から、 売買等を原因とする登記と同様に1000分の50とする適正化措置であった。 このような措置が税制改正に盛り込まれたのは、会計検査院の平成10 年度決算検査報告による指摘(30)に対処するためである。すなわち、会計 検査院は「本院のこれまでの検査の過程において、不動産の所有権の移転 の登記の中に、低い税率の共有物の分割を利用することによって、登録免 許税の納付額が少なくなっている事例が一部の登記所において見受けられ た」と指摘する。具体的には、「不動産の所有権を甲から乙に移転する場 合に、当初に当該不動産のわずかな持分(例えば100分の1)を売買で移 転して甲乙の共有状態とした後、残りの持分を補償分割として移転する と、当初の売買には税率1000分の50が適用されるが、これに引き続く補 償分割には税率1000分の6が適用されることになる。したがって、全体 の持分について売買を登記原因として所有権を移転する通常の場合に比べ て登録免許税が少額で済むことになる。このようなことは、売買と同じ税 率の代物弁済等や税率1000分の25が適用される贈与等を登記原因とする 場合にも生じる(以下、売買にこれらの登記原因を含めて「売買等」とい う。)」ことから、該当する登記について会計検査院が全国的な検査を行っ た結果、2131件の登記申請に係る土地建物の登記事項証明書又は登記簿 (30) 会計検査院「平成10年度決算検査報告」(平成11年11月29日)437-439頁。

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謄本で所有権の移転の状況を確認したところ、「売買等によって移転する 持分の割合が少なく(全体の10分の1以下)、これに引き続いて短期間(30 日以内)で共有物の分割による残りの持分の移転が行われていて、通常の 所有権の移転の登記とは認め難い方法をとっている事例が、東京法務局ほ か24登記所において655件(土地延べ1033個、建物延べ613個)見受けら れた」とする。そして、「これらの655件のうち、当初に移転した持分の 大きさが100分の1以下であるものは626件(全体の95%)、当初の持分の 移転の登記申請とこれに引き続く残りの持分の登記申請が同日に行われて いるものは612件(全体の93%)となっていた」。 その上で、「このような事例は、共有物の分割を登記原因とする場合の 税率が売買等に比べて低くされていることを利用し、登録免許税の軽減を 目的として登記申請を行っているとみなさざるを得ないものである。そし て、このような方法による所有権の移転の登記にまで共有物の分割の低い 税率を適用することは、二重課税を防止するという趣旨に合わず、ひいて は、税負担の公平を欠く結果を招いていると認められる」と指摘し、改善 を求めていた。 ② 対応措置の過剰と恒久化 国及び本件判決がしばしば用いる「脱法的登記」は、ここで指摘された 事例を念頭においているものと考えられる(31)。そして、その際の対応は、 緊急的な措置であったとの認識がある(32) だが、その後の国税不服審判所の裁決例をみると、必ずしも「緊急的な 措置」にとどまっておらず、「分割」の範囲が不当に縮小されているよう に思われる。例えば、数人が共同で競落し、共有登記をしている7筆の土 地について、共有物分割を原因とする持分移転登記申請をしたことにつ き、同申請に係る登録免許税の額の計算上、租税特別措置法84条の4第 (31) 三木義一「税制改正と会計検査院」会計検査研究23号(2001年)61-63頁。 (32) 白戸正俊「租税特別措置法(登録免許税)の改正について」税経通信55巻8号(2000 年)190頁。

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2項の規定による特例の適用があるか否かを争点とする事案について、 「(イ)共有物分割による持分の移転の登記の申請に係る土地すべてが、も ともと共有の1筆の土地であって、同一の分筆登記によって生じたもので あること。(ロ)共有物分割による持分移転の登記が、上記(イ)の分筆 で生じた他の土地の共有物分割による持分移転の登記と同時に申請されて いること」の二つの要件を備える場合に限って、本件特例が適用されると 述べて、同条項の適用を否定した(33)。また、共有物の分割による建物の所 有権の持分の移転の登記について準用する租税特別措置法84条の4第4 項の事例であるが、共同相続により取得した建物について裁判所の判決を 得て共同相続人の一人が単独所有とした登記は、共有物の現物分割ではな いとして、同条項の適用はないとした事例(以下、「平成15年裁決」とい う。)もある(34)。これらは、裁判所の判決や競売といった公的行為を起因 とした分割であり、会計検査院の指摘事項で挙げられた脱法的登記の事例 とは本来的に異なるものである。 もちろん、その立法趣旨である脱法的登記の防止という観点は理解でき るものの、それを「1筆からの分筆」に限定し、もっぱら登記簿謄本の記 載を基準として杓子定規に解釈・運用するのは、会計検査院の指摘に対す る過剰反応以外の何ものでもない。 その後、租税特別措置法84条の4は、所得税法等の一部を改正する法 律(平成15年法律8号)により廃止されるが、その規定内容は、登録免 許税法17条、20条及び別表第一の各規定に盛り込まれ、租税特別措置法 84条の4第2項の主要部分は、登録免許税法施行令5条の3(現行9条) に規定されるに至る。本来的に「緊急的な措置」であったものが恒久化さ れたのであるが、その際、本来の脱法的登記以外の登記についても「分 割」から除外される行政解釈までもが実務的に恒久化されてしまったので ある。 (33) 国税不服審判所裁決平成13年5月31日裁決事例集61集721頁。 (34) 国税不服審判所裁決平成15年1月27日裁決事例集65集982頁。

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③ 旧登録税法上の先例 もちろん、ここで問題となるのは登録免許税法上の「分割」の扱いに過 ぎず、「1筆からの分筆」以外の「分割」そのものを民法上規制している 訳ではないとの抗弁も想定しうる。しかし、旧登録税法(明治29年3月 28日法律第27号)の事例であるが、甲乙両名が協議の上で、共有にかか る数筆の土地のうち1筆を甲に、その他を乙に分割したことによる所有権 取得登記について、当該分割が持分の割合に相応しないといえども、同法 2条1項5号の「共有物ノ分割ノ登記」に該当するとの大審院決定が存在 する(35)。それによれば、「之レ独リ明文ノ存スルアリテ文理解釈上疑ヲ容 ルヘキ余地存セサル」として、限定解釈によらず文字通りの「分割」の意 味に捉えるべきとし、また、「国家経済上共有関係ノ廃止ヲ容易ナラシム ル為メ持分又ハ所有権ノ移転等ニ比シ税率ヲ低下セシメタル立法上ノ理由 ヨリ考察スルモ爾ク解スルノ正当ナルヲ信セラル」として、そのように理 解することが立法趣旨に合致する旨を述べる。仮に、同条項を「単純な分 割」に限定して、持分の移転を伴う場合を除くとすれば、「共有物分割ニ 権利移転主義ヲ採レル我法制ノ下ニ於テハ持分ノ移転ヲ伴ハサル共有物分 割殊ニ現物分割ハ想像スルコト能ハサル」として、そのような限定解釈は 「結局登録税法第二条第一項第五号ノ規定ハ空文徒法ト評セサルヘカラサ ルニ至ラント云フニ在リ」とする。この判断は、当事者の任意に共有物の 分割を行わせることを許容するものであって、前述の森林法違憲判決にお ける最大判の趣旨とも合致する見解である。これについて、現行の登録免 許税法の諸規定が、旧登録税法の立法趣旨と異なるものであるとの事実は 見出せない。そこで、平成12年の改正租税特別措置法は、任意の共有物 の分割を前提としつつも、「脱法的登記」を防ぐために「分割」要件に関 する「例外」を定めたものであると解される。 にもかかわらず、例外的要件があたかも「原則」であるかのように逆転 (35) 大決昭和10年9月14日民集14巻1617頁。

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した解釈・運用されている点に問題があると言わざるを得ない。すなわ ち、国側の法解釈は、大審院の先例を意図的に捨象して「空文徒法」に貶 め、そもそも法が定める立法趣旨を阻害しているのである。よって、まず はこの大審院決定を登録免許税法の解釈の出発点として置くことが不可欠 である。 ④ 小 括 以上により、「共有物の分割」の範囲を「1筆からの分筆」に限定する 解釈は適当ではない。また、「分割」に関して、税法上の扱いと民法上の 扱いとを次元が違うものとして解釈することは、先例を踏まえない違法が ある。 (3)登録免許税法施行令9条1項の解釈について 以上のような法律レベルでの原則―例外関係を踏まえれば、登録免許税 法施行令9条1項の解釈も自ずと法律に沿ったものにしなければならな い。同法施行令9条1項は、同法20条の委任に基づいて制定されている ものであるから、これを逸脱するのであれば、委任の範囲を超える命令と して(憲法41条)、又は課税要件法定主義(憲法84条)に反して、違法・ 無効となる。 前掲の平成15年裁決のように「1筆からの分筆」に限定することは、 法の趣旨を害するものである。もちろん、「登録免許税を不当に免れよう としているものではなく」とも、「本件特例は、登録免許税の軽減という 租税負担の特別の規定であることから、その解釈、適用に当たっては、厳 格性と明確性が要請されるのであって、その要件をたやすく拡張すること はできないというべきである」との裁決理由には、脱法的登記が横行した 事実を踏まえれば、一定の合理性を認めざるを得ない。そこで登記簿謄本 上の記載を基準として厳格に要件を認定し、登記官の日常業務において個 別の事情を考慮して判断することは、いかに裁判所が関係する権利関係の

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異動であっても困難であり、政策上の非難はあり得ても、行政裁量の限界 事例ではあるが明らかな違法性を見出すには至らないとの考えも示し得る ところであろう。 ただ、同裁決が言うように、租税特別措置法84条の4に定める「特例 が適用とならない原因は、競売手続上やむを得なかったとはいえ、本件各 土地の取得経緯にあるのであって、その責任を原処分庁に求めるのは的を 得ていないというべきである」とするように、原処分庁すなわち法務局の 外の事情である競売や裁判上の和解についての「責任」を求めるべきでな いとしているのであって、本件のように、昭和36年通知や昭和41年通知 という法務局内の事情によって登記申請行為が阻害され、共有関係を余儀 なくされていた事案についてまでも、法務局が「特例が適用とならない原 因」と主張するのは困難であろう。しかも、本件のような土地区画整理事 業に起因する共有地分割については、事業施行者による換地処分登記(土 地区画整理法107条)を参照することが可能であるから、個別の事情につ いて登記官による判断の困難性を言うのは実務的にも失当と言わざるを得 ない。もちろん、理論的には、換地処分が終了した段階で、不動産販売会 社が分割登記をした上で、個人に販売するという方法も考えられるが、長 期にわたり継続的に行われる土地区画整理事業の特質を理解しないもので あって、その間、土地の有効活用が妨げられるなど、土地区画整理法の趣 旨を阻害する考え方といえる。また、仮換地の段階で契約締結及び移転登 記をしなければ、住宅ローンの貸付を受けることも不可能であるから、本 件のような事案において、現実の不動産取引に沿うように法律関係を構築 すれば本件のような共有関係を取らざるをえない。登録免許税法といえど も、そうした土地区画整理事業の特質を踏まえ、土地区画整理法とも整合 する解釈が求められるのであって、そこに昭和36年通知や昭和41年通知 がどのように機能するかということを法務局自身が考慮せず、形式的法解 釈に拘泥することは、納税者間の平等・公平が厳格に要請される租税関係

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にあっても、法の趣旨・理念を明らかに阻害し、かえって正義に反するも のとなる。 本件は、平成15年裁決に照らしても、法の特例の「要件をたやすく拡 張」しうる事例であって、登録免許税法施行令9条1項の解釈も、これに 整合的に行うことが適当である。 以上の通り、同令9条1項については、憲法及び法律の趣旨に沿うよう に解釈されるべきであって、「1筆からの分筆」と厳格に解釈すべきでは ない。その趣旨が、登記官が登記簿謄本上から知りえない事情を考慮しな いというものであるとすれば、本件はこれに該当しない。むしろ、法務局 内の事情により形成を余儀なくされた共有関係の解消という意義があり、 また、土地区画整理事業に起因する権利関係の異動は登記簿謄本上からも 把握可能である。こうした点を踏まえて法が同令9条1項の要件を定める 趣旨を明らかにする必要がある。逆に、同規定からそのような解釈が不可 能であるならば、委任の範囲を超えた命令として違法無効とせざるを得な い。 (4)共有物の「分割」と「換地」の形態について 本件判決は、「共有物の分割」について、国側の主張するように、「1筆 からの分筆」に限定しつつ、登録免許税法施行令9条1項の要件を狭く解 している。そして、それを前提にして、法務省の平成12年通達の内容を 疑いなく裏書きして、本件の判断を行っている。しかしながら、上述の通 り、平成12年通達の前提となる法解釈に誤りがあり、また、同通達の内 容通りに法解釈を行うことは、二重の意味で誤りを犯すこととなる。 本件判決及び平成12年通達によれば、分割型換地の場合の換地処分 は、1個の土地の現物分割の場合の分筆と同様にみることができ、また、 分割型換地により分割されたかどうかは、分筆の場合と同様に登記記録上 明らかであることから、当該換地処分を分筆登記とみなして差し支えない

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とする。他方で、一筆型換地(従前の1個の土地に照応して1個の土地を 換地として定める表示変更型換地類型)や合併型換地(従前の数個の土地 に照応して1個の換地が定められる換地類型)については、土地を「分割」 するものではないから、現物分割を前提とした登録免許税法施行令9条1 項の適用対象にならないという。 しかし、これは換地処分の法的性質を考えずに、登記簿管理事務におけ る書類上の変化を土地の取引に見立てた解釈であって、採用し得ない主張 である。確かに、分割型換地にあっては、分筆登記と同様に、新たに登記 識別情報(権利証)を発行せずに登記簿への記載を行うことで処理を行う ことから、これを分筆と「見立てて」登録免許税法施行令9条1項にい う「分筆登記」に該当するとしてもよいようにも思える。しかし、本件判 決の論理では、このような法務局の書面上の事務作業方法を基準として、 実際の土地取引の法的性質や法解釈を定めることになり、法治主義の根幹 を脅かすものである。いわば財産権を「プロクルステスの寝台」に載せる ような本末転倒な解釈である。具体的な換地処分の内容は、他の都市計画 と整合するように策定される事業計画及び換地計画の全体的な構想のうち に定められるものであって、宅地所有者個人が任意に選択した土地を交換 し、分筆し、又は合筆したりするものではなく、都市計画事業としての道 路や公園などの整備とともに、土地区画の整理が一体的な公権的作用とし て実施されるのである。 すなわち、平成12年通達が念頭に置く換地処分の各類型は、土地所有 分の観念上の交換分合についての説明概念であって、その意義を私法上の 土地取引と対照すること自体が適切でない。本件判決のように、従前地か ら仮換地、さらに換地へという流れの中で生じる観念上の所有地の変化を 個別的にとらえて換地類型を区別すると、本件のような分譲物件につい て、ある土地は分割型換地、その隣接地は合併型換地というような差異が 生じることは避け難く、しかも購入者は外観上そのことを認識するのが困

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難であって、それが登録免許税法上の取扱いに違いが生じるというので は、くじ引きで地雷敷設地をあてがわれるようなものであって、不動産取 引の阻害要因となる。そして、それが分譲地購入者間における合理的な理 由のない不利益扱いとして、憲法14条1項に反することは明らかである。 そもそも土地区画整理法は、市町村が都市計画事業として土地区画整理 事業を施行しようとする場合においては、事業計画において定める設計の 概要について都道府県知事の認可を受けて、事業計画を定めなければなら ないと規定し(同法52条1項)、この認可をもって都市計画法59条に規定 する都市計画事業の認可とみなすとしている(2項)。そして、市町村長 は事業計画の決定を公告することで、都市計画事業として事業計画に定め る内容の土地区画整理事業を施行する権限を取得して、これを第三者に対 抗することができることになる(同法55条9項・11項)。以後、建築行為 等の制限、仮換地の指定、建築物等の移転・除却及び工事等を経て、最終 的に換地処分に至る強制処分により、土地区画整理事業を実施することに なる。 このことは、事業計画の決定の公告とともに、施行地区内の宅地所有者 等が、特段の事情のない限り、自己の所有地等につき換地処分を受けるべ き地位に立たされることになるという法的効果を生じる。そこで、従来、 「青写真」(36)とされてきた土地区画整理法上の事業計画は、前掲平成20年 最大判により処分性を有するものとされたのである。 これを敷衍して考えれば、当該事業計画内の宅地所有者は、事業計画の 決定の公告の段階において、その具体的内容を換地計画に留保しつつ、従 前地の所有権を換地処分後の換地の所有権へと転換すべき法的地位に置か れる「処分」がなされたと解することができよう。したがって、本件のよ うな土地区画整理事業地区内の土地の売買契約の対象は、換地処分後の換 地(の一部)であって、前述の事情から仮換地段階では不可避であったそ (36) 最大判昭和41年2月23日民集20巻2号271頁。

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の共有状態を解消するための本件登記申請(一括分割)は、登録免許税法 別表第一第1号(二)ロにいう「共有物の分割」及び同法施行令9条1項 の「分筆登記」として何ら差し支えないと解される。このように理解する 方が、本件のような宅地造成済の分譲地売買の実情に適している。 本件判決及び平成12年通達に依拠する国側の見解は、事業計画の法的 性質に関する平成20年最大判の判旨を踏まえないものであって、徒に「青 写真」時代を懐古するものである。 (5)総 括 これまで述べてきたところをまとめると、下記のようになる。 ① もともと登録免許税法においては、重複課税を避ける観点から「共有 物の分割」について低率の税率を定めていた。ところが、これを悪用する 「脱法的登記」の事例が多数存在することが会計検査院の指摘事項となっ たことから、平成12年の改正租税特別措置法において「緊急的な措置」が とられることとなった。 その際、課税当局としては、租税特別措置法上の「分筆登記」を登記簿 謄本上の「1筆からの分筆」に限定し、たとえ競売や裁判所による判決で あっても、法務局の外の事情であるとして考慮しない方針を採用した。そ して、その解釈は、平成15年に改正された登録免許税法上の「共有物の 分割」及び同法施行令の「分筆登記」においても引き継がれることとなった。 ② しかしながら、本件のような土地区画整理法上の土地の権利関係の異 動は公法上の法律関係であって、民法上の契約関係及び登記簿上の土地取 引に見立てて関係法令の適用ないし行政事務上の取扱いをすべきではな い。それは、(ⅰ)土地区画整理事業は、特定の施行地区について、都道 府県知事の認可に基づく事業計画の決定の公告によって、公権的に権利関 係の変動を及ぼすものであり、具体的な権利関係の変動は、道路や公園な どの公共施設の設置を考慮しつつ、宅地所有者の所有土地面積の減歩をし

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た上で、土地の効率化の観点から区画の整理を実現するために行われるの であって、私人が任意に土地の交換分合を行い得るものではない。しか も、(ⅱ)施行地区における権利変動は、実際上、事業計画決定の公告の 段階において生じているのであって、その後の土地の異動をもって民法上 の契約関係に見立てるのは適切ではない。また、(ⅲ)土地区画整理事業 については、事業施行者による換地処分登記がなされるのであり、登記官 は書面上での確認が可能である。 したがって、本件のような土地区画整理法上の観念的な土地の交換分合 についても登記簿上の土地取引に見立てて、「1筆からの分筆」に限る登 記事務の運用をそのまま適用すべきではなく、一括・合筆・分筆型といっ た「換地」の区分にかかわらず、公告段階を基準としつつ、個別具体的事 情を総合的に考慮して「共有地の分割による移転の登記」の申請にあたる かどうかを検討すべきである。 ③ 本件において、共有関係が生じた要因は、昭和36年通知及び昭和41 年通知によって、やむなく生じたものである。しかしながら、そうした共 有関係を強いることは、財産権及び消極的結社の自由の重大な制約とな る。平成16年通知以降はこうした状態は解消されたものの、1982(昭和 57)年ごろから、一部の地方法務局においてすでに同通知と同旨の取扱 いがなされていたことからすれば、昭和36年通知及び昭和41年通知を正 当化する事由は存在しなかった可能性が高く、少なくとも本件における売 買契約締結時においては違憲・違法であると評価しうる。 そのように強いられた共有関係の解消は、法的保護に値する利益であっ て、登録免許税法上も単純に「共有地の分割」として扱うべきである。法 務省の通知を機縁として創出された権利関係について、登記簿謄本の書式 という法務局の都合を抗弁として、当事者に不利益な税率の適用を行うこ とは、権限の逸脱・濫用に該当する。

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4、おわりに そもそも登記官は独任官庁として、不動産登記法上、職権主義での登記 権限(同法28条)、質問・調査権限(同法29条)が認められている。個別 具体的な事情を勘案して、適切な登記を行うことは登記官の責務である。 もちろん、大量の登記申請にあたり、可能な限り、形式的な審査で済ま せるように省力化をすることは必要であって、法務局外の諸事情を捨象し て一律の判断をすることもありえよう。しかし、それを理由として、法 的性質の異なる法律関係を同じように扱うことは、平等原則(憲法14条) の観点からも許されるものではない。そのような画一的判断を認めること は、登記官の思考停止と職務放棄を正当化し、登記制度の本質的目的を歪 めることにつながる。本件のような限界事例においてまで画一的判断を徹 底するのでは、もはや登記官自らがその権限を放棄するに等しい。 もちろん法務局の見解に従って1000分の20の登録免許税を納めれば登 記は可能になる。税率としては5倍であるが、「この『差額』自体は10万 円前後でしょうから、裁判官としては、差額を払って登記したほうがよい のではないか、という心情もどこかにある」(37)のかもしれない。この心情 は、当事者にも共通するものがあって、本件原告と同様の取扱いを受けな がら「差額」を支払って登記した購入者が多数存在する。従前より土地区 画整理事業が活用されているにもかかわらず、本件のような事例がこれま で問題視されてこなかったのは、登記行政の適正性の表れではなく、むし ろ正当な権利主張が不当に侵害されたまま顕在化しなかった結果に他なら ないのかもしれない。被害額の多寡にかかわらず、潜在化した違法状態を 正すのが司法の役割である。 ところが、本件判決は法務当局の事情を忖度し、行政庁側の思考過程を 裏書きしているだけであって、考慮すべき論点を捨象して結論を導いてし (37) 共有物分割登録免許税訴訟支援団事務局「共有物分割登録免許税訴訟の現段階― 不当な行政処分を正す活動から司法書士のモラール(士気)を考える」執務現場か ら(群馬司法書士会報)50号(2018年)67頁。

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まっている。本来的に考慮すべき「公益性」が、土地区画整理法の求める それではなく、法務局の都合に置き換えられており、これでは、「法律に よる行政の原理」ではなく、「行政による法律の原理」である。 本件を判断するにあたっては、憲法及び行政法の基礎理論、土地区画整 理事業の特性、法令全体の整合的解釈、本件特有の事情などを踏まえつ つ、公法関係と私法関係とを区別した理論構築が求められる。これを怠る 本件判決は法原理機関としての裁判所の責務を自ら放棄している。 (本学法学部教授)

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