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貨幣の実証的概念と近似貨幣の貨幣性測定 (陵水六十年記念論文集)

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貨幣の実証的概念と近似貨幣の貨幣性測定

片  由  貞  雄

1 は し が き  筆者は以前本誌で貨幣の概念をめぐる戦後の理論的分析を2つの流れに分け       て検討した。そのうちの一方は貨幣の交換手段機能を重視し,他方は価値貯蔵 手段機能を重視する立場であった。従来,前者の機能を果したのは狭義の貨幣 たるM【(マネー・サプライ統計上の)であり,後者の機能を果すのは,M1以 外に銀行定期性預金や金融仲介機関預金などであり,これらを含むM2やM3 などの広義の貨幣も近年金融政策上重視されるようになった。しかし,特にア メリカを中心に最近起こってきた,いわゆる金融革命は貨幣に類似の新しい種 々の流動資産を生みだす一方,これらに交換手段機能を与える(たとえば, NOW勘定)にいたっている。この意味では,2つの流れのいずれをとるにし ても,貨幣概念は広義のものとなり,現象面より両者の対立点は不明確になっ てきたといわざるをえない。  ここに貨幣を実証的に定義する意義があるといえよう。事実,1960年代の宋 期から近似:貨幣の貨幣性測定を試みる研究が多数現れるようになった。現在ま でのところ,この問題に関する研究は種々の金融仲介機関が存在し,1900年代 の初めからマネー・サプライ統計が整備されているアメリカに集中してきたと いうことができよう。  本小稿は貨幣の実証的な概念をめぐる主要な論者の見解を検討することによ って,この聞題の本質に接近すると共に,日本における近似貨幣(定期性預 金)の貨幣性の測定を試みることが目的である。  1)  片山 〔!9〕。

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 96 彦根論叢陵辱60年記念論文集(222・223号)  まず交叉弾力性による貨幣性測定の立場を取り上げ(2節),ついでフリー ドマン(M.Friedman)とシュヴォーツ(A, J. Schwartz)の見解を検討する (3節)。続いて,以上の見解の延長線上にあるといえるウェイトをつけた貨 幣集計量に関する一連の分析を考察する(4,5節)。最後に,これらをふまえ て日本における近似貨幣の貨幣性の測定を若干行いたい(6節)。 2 交叉弾力性による貨幣性の測定  貨幣を実証的に定義するためにとられてきた第1の方法は,完全な代替財は 単一財を意味するという価格理論の立場(次節で扱うフリードマンの視点とも 共通)に立って交叉弾力性(cross elasticity)により貨幣と近似貨幣ないし流 動資産間の代替性を測定する方法である。それはたとえば当座性預金(名目 額)の変化率(パーセント表示)を定期性預金の価格(その金利)の変化率 (パーセント表示)で割った商として示される。 (たとえぽ,定;期性預金金利 の上昇率が1パーセント,当座性預金の減少が2パーセントとすれば,交叉弾 力性は一2となる。ただし,通常の財・サービスの交叉弾力性のばあいは,代 替関係があれば弾力性はプラス,補完関係があればマイナスになるのと逆であ ることに注意すべきである。) いま,この交叉弾力性の値がゼロより小であれ ば,両者間に大なり小なり代替関係が存在し,完全な代替性のあるぼあいには マイナス無限大となる。このための算式は通常のタイプの貨幣需要関数と同様 に貨幣ないし近似貨幣の需要関数を定期性預金金利や金融仲介機関預金金利お よび所得ないし富を説明変数として特定化し,最小2乗法を使って推定する。 また対数関数のばあいには説明変数の回帰係数が弾力性を示し,これが代替性 を測る尺度となる。  そのばあい,交叉弾力性がいかなる値をとれば「緊密な代替関係」といえる かについ《論者の見解は必ずしも統一されていないために,数値的にはほとん ど差がなくてもきわめて対立する結果がえられたように解釈されているぼあい      がある。しかし,通常価格理論で使用されるように,一1の値でもって代替性  2)  (]f Feige and Pearce 〔5〕, P.443.

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       貨幣の実証的概念と近似貨幣の貨幣性測定  97 の程度の大小を示す一応の臨界値と考えるのが合理的であろう。

      3) 4) 5)

 ファイジェ(E.L. Feige),リー(T. H. Lee),エドワーズ(F. Edwards) 等による測定結果が公表されているが,その結果にはバラツキが大きく,見解 の一致からほど遠いのが現状である。たとえぽ,かれらによる銀行定期性預金 (savings and time deposits)と非銀行貯蓄性預金(相互貯蓄銀行預金〈mutual savings bank deposits>および貯蓄貸付組合出資金〈savings and loan assQcia− tion shares>)の交叉弾力性は次の表のとおりである。(後者の金利に対する前 者の交叉弾力性をrp,,・r、,前老の金利に対する後者の交叉弾力性をη、Jlp、とす る。)          1表 銀行・非銀行貯蓄性預金間の交叉弾力性 ファイジェ   リ 一  エドワーズ nl, r2 ?72, ri 一〇. 55  0, oo 一2.87 −o. org 一1.20 −1, 60  このようなバラツキは回帰モデルの種類,統計資料の出所および測定期間の 長短や測定年次によって異なるし,クロス・セクションによるか時系列による (年次,4半期等)か,また観察単位を1人当りにするか,家計ないし企業部 門単位(そのばあいも全国平的か州平均か,または大都市に限るか)などミク ロ・レベルで行うか,またはマクP・レベルで行うかなどから生じていると考 えられる。 3 フリードマンとシュヴォーツの見解  次に取り上げるのはマネタリストを代表するフリードマン・シュヴォーツの 見解である。 3)Feige〔4〕, esp p 25, Tab.1 1表のファイジェの符号は他の研究と対応させる  ために変更。 4) Lee (14), esp. p 451, Tab. 2 5)Edwards〔3), esp. p.563.1表はエドワーズによるところが大きい。ただし,か  れのテクニカル・ミスプリントは訂正。

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 98  彦根論叢 陵水60年記念論文集(222・223号)  かれらによれぽ,どの範囲までの金融資産を貨幣と見なすかの問題は長い間 議論されてきたにもかかわらず,今日でもなお議論の尽きない問題であり,し かもどのような解答を与えても多かれ少かれ恣意的にならざるをえない。し かし,貨幣の本質的機能を一般的交換手段と見なす伝統的見解にせよ,貨幣の 資産機能を重視する(このばあいは貨幣を流動性と見なす)見解にせよ,貨幣 を理論的(演繹的)な見地から他の資産と区分するのは本末転倒した方法であ る。フリードマン・シュヴォーツ自身の言葉で述べると,「貨幣は『適切な』 定義が与えられて始めてr交換手段』やr流動性』や他の同様な特色によって 明確に表現できるであろう。適切な定義をもつという事実は貨幣の『本質的 な』特質が何であるかを示す証拠となる。 〔これと反対に〕貨幣の本質的な特        の 質から出発して貨幣の定義に到達することはできない,」と。このように,貨 幣の本質的機能を挙げて貨幣を定義するのは,まずあるものの概念を与えて次 にその機能や特質を述べる通常の方法から照らせば本末転倒しているのであっ て,これでは本当に貨幣を定義したことにならない,というのがかれらの含意 と思われる。  以上のように,貨幣を定義する従来の方法を批判した後,フリードマン・シ ュヴォーツは次のような見地に立ってかれらの貨幣観を展開する。すなわち, 一般に貨幣と他の資産を区別することはきわめて有用であるといわれてきた が,必ずしもそうとはいえない。というのは,資産は連続体(continuity)で あるので資産問の代替はきわめて容易に,しかも頻繁に起こり,どの資産を貨 幣と定義しても結局は非人的富全体にまで広げなければほとんど意味をもたな いことになってしまうからである,と。かれらの判断では,経済理論はこれま でのところ貨幣に適切な定義を与えていないのであり,これに対して次のよう な意味で実証的な立場から貨幣を定義すれば.ヒの欠点を回避できるのである。 つまり,貨幣とは便宜上貨幣と呼ぶのが有用な資産であるが,それはある経済 的な変数(国民所得)と規則的,安定的関係にあるためであり,また何を貨幣 6) Friedman and Schwartz (7), p. 90,

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       貨幣の実証的概念と近似貨幣の貨幣性測定  99 とするかは場所により,時間により異なるものである。結局,貨幣にいかなる 実証的概念を与えるかは「原理の問題でなく,特定の目的のための便宜の問     アり 題である。」要するに,「貨幣を定義する『最善の』方法は種々の貨幣資産 (lnonetary assets)の相互関係またはそれと他の経済変数との相互関係に関す る結論によって決まるのであるが,われわれの研究〔実証〕を続けるために貨       お 幣を定義することが必要とされる」のである。かれらの結論では,貨幣の定義 は理論によって求めるべきものでなく,経済諸関係の知識を構成する上での有 用性によって求めるべきである。そして比喩的に次のように言う。「貨幣とは 特定の操作によってある数量に割り当てられたものである,つまり,アメリカ 大陸のように存在していて発見されたものではなく,物理学における『長さ』 や『温度』, 『力』のように発明された科学的産物(scientific construct)であ  9) る,」と。  ところで,具体的にかれらが何を貨幣に選ぶかの基準はどの貨幣的集計量が 安定的貨幣需要関数をもたらすかである。そのぼあい,安定的とは所得や富の       ユのような若干の重要な変数でもって表される関数の相対相安定性であって,その ような変数は抽象的なレベルで決定でぎるものではないとし,具体的な手続 きとして,第1に国民所得と最も密接な関係をもつ貨幣集計量(1867−1968年 の!00年間,アメリカの資料について)を求め,第2に,貨幣集計量の各構成 項目(公衆保有現金や当座性預金,定期性預金など)と所得の関係も検討す る。フリードマンを始めとするシカゴ学派は緊密な代替関係をもつ財を単一財 と見なす立場をとり,貨幣についてもこれを適用し,相互に代替的な流動資産 を貨幣と見なすために,第1の検証だけでなく,第2の検証も加えたと考えら れる。  7) Friedman and Schwartz〔7〕, p 90. 8) Frtedman and Schwar亡z〔7〕, P 9!. 9) Friedman and Schwartz〔7〕, p,137 10)フリードマン・シュヴォーツは何をもって最も重要な変数とするかは複雑な問題で  あるとする。Friedman and Schwartz〔7〕, P.ユ77, fn・19.

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 100 彦根論叢 陵水60年記念論文集(222・223号)  ここで結論を先どりして述べれば,フリードマン・シュヴォーツは第1,第 2の検証の結果,M2を最良のものとして選んだ。ただし,この検証自体はブ リードマンとマイゼルマン(D.Meiselman)が投資乗数と貨幣の所得流通速 度のいずれが安定的かを比較するための共同研究〔6〕の中で試みたものであ り,貨幣の実証的概念に関する上述の結論はいわばその副産物として得られた ものである。ここでは貨幣概念に直接関係をもつ検証にかぎってその骨子を述 べておこう。  いま所得流通速度の安定性を検証するばあいに,貨幣としてM,を選ぶか, それともM,または他の貨幣集計量を選ぶかが重要な問題となる(検証のた めの式は簡単な1次式Y=a+V’Mである。Y;貨幣国民所得, V’;流通速 度,M;貨幣ストック)。このために,第2の検証を加える。たとえば, M2− M1(銀行定期性預金)がM,の完全な代替物であれば・M,から定期性預金へ のシフト(またはその逆)はYの水準に対して何ら影響を与えない。したがっ て,M,とM2−M,それぞれよりも両者の合計であるM,.の方がYに対し        11) て,より大きな相関関係をもつことになる。フリードマン・マイゼルマンは M,,M2, M2−M,, M3, M,一M2についてYとの決定係数を求め,最良の 結果を得たM2を貨幣として選んだ。参考のためにかれらの得た計数を示し ておこう(2表)。しかしこの表の計数から明らかなように,M,の決定係数の 11) フリードマン・マイゼルマンが投資乗数の安定性を検証するばあい,国民所得(Y)  を自生項目(A)と誘発項目(消費;C)に分ける(すべて名目額)。検証は本来YとA  との関係式(Y二α+K協,K’:投資乗数)によって試みるべきであるが, AはY  の構成項目であり,いわゆる見せかけの相関(spurious correlation)を生む危険が  あるので,むしろ誘発項目(C)との相関関係に注意する。Friedman and Meiselman  〔6),(]f.p.175.第2の検証についても,本来Cを従属変数に使用すべきであるが,  yを使用しているのは,かれらが検証をYからCに切り替える以前に第2の検証を行  っていたことによる。しかし,YまたはCどちらを従属変数に使用しても結論は変ら  ない,と。Friedman and Meiselman〔6〕, p.242.かれらは投資乗数,流通速度の安  定性の検証において,YとC,双方を従属変数として使用している。第1の検証につ  いては水準だけでなく増分(第1階差)の相関関係も求めているが,重点は水準にあ  り,第2の検証については増分の相関関係は求めていない。

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      貨幣の実証的概念と近似貨幣の貨幣性測定  10! 2表 3種の貨幣集計量,その構成項目と国民所得との相関関係*

Mi

M2 IM2−Mll M3 IM3−M2

年次データ,1929−39年 y’i Y2 年次データ,1940−52年 Yi Yt O.498 0.512 O.890 0.882 年次データ,1929−52年 YI Y2 O.958 0.955 4回忌データ,1946 一58年 YL Y2 O.961 0.956 O.849 0.835 O.891 0. 886 O. 592 0.548 O. 844 0. 845 O.961 [ O.882 0.958 ! O.880 O. 828 0.813 O.869 0.858 O.952 0. 947 O,967 0. 957 4半期データ,1946−50年 Yi Y2 O.66! O.654 O.758 0.779 O.888 0. 873 4半期デ・一/t,1951−58年

M

Y2 O.896 0.899 O. 749 0. 807 O.959 0.950 O. 933 0.916 O.962 0. 950 O.893 0. 904 O. 977 0.967 (一)O. 351 ←う0.361 O. 506 0.484 O.765 0. 752 O. 942 0. 928 O.925 0. 922 O. 982 0.971 注)*表の各計数は決定係数(相関係数の2乗)であり,(一)は根関係数の符号を示す。    yi;個人可処分所得(名目額)+統計上の誤差    Y2;Yi÷法人留保利潤+法人在庫評価調整+未収賃金 (出所)Friedman and Meiselman〔6〕, P.244, Tab.互一A1. 値が決定的に大きいとはいえないであろう。それゆえ,以上の証拠だけではた してフリードマンがM2を貨幣として選ぶ強固な実証的裏付けを得たといえる のであろうか。  たとえば,カウフマン(G。G. Kaufman)〔10〕はフリードマン・マイゼル マンの方法に沿って,より詳しい検討を試みた。つまり,期間は戦後の14年間 (1953−66年,全期間を2分割,1953−59年と1960−66年)でフリードマン・ マイゼルマンよりかなり短期であるが,かれらより多種の貨幣集計量(増分) (6種,その構成項目については8種)と国民所得(増分)(名目GNP)の関

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 102  彦根論叢 陵水60年記念論文集(222・223号) 係(4半期別,リード,ラグおよび同時の対数表示の1階差式)について検証 した。カウフマンの結論は,かれの検討したどの貨幣集計量もフリードマン・ マイゼルマンの2つの基準を満していないとし,いずれかといえばM2より広 義の貨幣集計量の方が成績が良いが,このことが貨幣の定義の説明力を増すも

       12) 13)

のでない,とした。たしかに,フリードマン・シュヴォーツも指摘するように, カウフマンの得た計数の差は大したものでない。結局,フリードマン・マイゼ ルマンの2つの基準の検証は統計資料の入手可能性や対象期間の長さ,その分       14) 割方法や回帰方程式の形態によって左右されることになるであろう。  ところで,フリードマン・シュヴォーツによる貨幣の実証的概念は貨幣を国 民所得との関係で捉えることであった。しかし,それはとりもなおさず貨幣を 国民所得の支出をまかなう手段一つまり一般的交換手段と見なすことを意味 し,結局かれらの接近も自らが批判した貨幣の本質的機能を前提とした展開で あるといわざるをえない。 4 ウェイトをつけた貨幣集計量の基本的視点  交叉弾力性にせよ,フリードマン・シュヴォーツの接近にせよ,狭義や広義 の貨幣,近似貨幣はすべて等しい貨幣性をもつものとして扱われて貨幣集計量 が求められている。つまり,それらはすべてウェイト1として集計されてい る。しかし,定期性預金などがM1と完全な代替財でなければ,それらはMl に等しい貨幣性をもつということができず,1より小さいウェイトを与えるべ きである,ということになる。この問題は貨幣を実証的に定義しようとする立       15) 場からは重要な視点といえるであろう。 12) Kaufman (10), pp. 86一一7. 13) Friedman and Schwartz (7), p. !87, 14)たとえば,Schadrack〔15)は分布ラグを入れた回帰方程式でアメリカの種々の貨  幣計量と国民所得の関係(1953年第1・4半期一68年第2・4半期)を検証し,M2  を最善のものとしたが,他の貨幣集計量との相違は決定的なものでないとしている。 15) フリードマン・シュヴォーツは公衆保有現金と銀行当座性預金,定期性預金を代替  財と見なすのでJそれぞれに1のウェイトを与えていると見なすこともできるであろ

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      貨幣の実証的概念と近似貨幣の貨幣生測定  1G3  この線に沿った見解を最初に明確な形式で示したのはかーレイ(J.G. Gurley) 〔8〕である。第2次大戦後のアメリカにおける金融仲介機関の発展に関連し て,その創出する負債が伝統的な商業銀行預金と同様な機能をもつことに着目 したガーレイとショウ(E.S. Shaw)の研究はあまりにも有名であるが,こ のウェイトをつけた貨幣の考えはむしろかれらの研究の副産物といえるであろ う。  このような視点に立てば,貨幣集計量はMlにウェイトをつけた銀行定期性 預金,その他金融仲介機関への預金等を合計したものから構成されることにな る。いま,Maと完全に代替的な非貨幣流動資産が存在すればそのウェイトを 1とし,代替性のまったくないもののウェイトをゼロとする。その中間にはウ ェイトがゼロより大きく1より小さい資産が位置する。このウェイトをつける ための基本的視点は,貨幣需要が貨幣代替物の供給の変化によって影響を受 け,他の条件を一定とすれば金利が変化する,という点にあり,この意味で交 叉弾力性によって貨幣性を把握する見解(第2節)と共通する。そのばあい, 貨幣需要(ここではMiに対する需要とする)はそれと代替関係にある流動資 産の供給によって影響を受けるであろう。つまり,貨幣と完全な代替関係にあ る流動資産の供給が増加したばあいには同額の貨幣供給(MDを増加させたの と等しい金利の下落が起こる(貨幣需要関数の左側へのシフF)。一方,代替 性のまったくない流動資産のばあい,それが増加しても金利は下落しない。ま た両者の中間のものは代替性の程度に応じて下落する。この関係をガーレイは 次のようなグラフ(1図)で示す。  出発点において,貨幣の需要と供給が等しいとし,そのばあいの金利をr[ としよう。いま,流動資産がM”M=abだけ増加したばあい,その流動資産 と貨幣の問に代替関係があれば貨幣需要曲線(DD)に左側ヘシフト(D”D”   う。かれらもウェイトをつけた貨幣集計量の考えを評価しているが,主な問題点は,  (!)ウェイトをいかに測定するか,②特定の方法によって測定されたウェイトが期  間や地域の差によって安定的であるかどうか  である,とする。Friedman and  Schwartz (7), p. 52.

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 !04 彦根論叢i陵水60年記念論:文集(222・223号) またはD’D’)するので貨幣需 要の減少分だけ貨幣供給を二二

させる(MM”またはMMt)

ならば,金利はriにとどまる であろう。そのばあい,次の3 つの可能性が存在する。(1)貨 幣需要はまったく影響を受けな い(1)Dはシフトしない)。 こ の流動資産の貨幣に対する代替 性はまったく存在せず,したが ってそのウェイトはゼロとな る。(2) 下で, た大きさはcb/abとなる。(3) ヘシフト)。このばあい, エイトは1である。 !図 金利 r, 貨幣需要と貨幣に代替的な流動資産の関係 げ   げ  D      S 、 b \ 、 \       、          \    \       一       ﹁ \   \        \   \        \     C一、        ーーIII曳ーーーーIIII一      ㌧   \     \一  \    、  一       \ \、、︸\\    @ 

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、、一一 、\ー ﹀ ︵ jV’ M 貨幣供給(M1) 貨幣需要はcbだけ減少する(DDはD’D’ヘシフト)。金利1’tの ウェイトをつけない流動資産の大きさはcaであるが,ウェイトをつけ        貨幣需要はabだけ減少する(DDはD”D”          流動資産は貨幣に完全に代替的であるので,そのウ  ガーレイは非貨幣流動資産と貨幣との間の代替性に関する情報がないばあい に,それを求める最善の方法は利子率に関する資料でもって代替性の程度に関        16) する種々の仮説をテストすることである,とする。かれ自身はアメリカの戦後       17) (1945−58年)について種々の非貨幣流動資産に貨幣(M[)の2分の1のウェ イトをつけて集計した額の名目GNPに対する比率を優良社債(Aaa)の利回 り(1945−59年6月)および一流コマーシャル・ペーパー利率(同期)と対比       ユ8) させた結果,スムースな右下りの利回り曲線が描けるとして非貨幣流動資産に 2分の1のウェイトを与えたが,これは一種のてさくつ的なウェイトの導出方 !6) Gurley (8), p. 8. 17) ガーレイがウェイトをつけて集計するために取り上げた非貨幣流動資産はMl以外   に,銀行定期性預金,貯蓄貸付組合出資金,相互貯蓄銀行預金,信用組合出資金,郵慶   貯金,生命保険責任準備金および米国貯蓄債券の7種である。Gurley〔8〕, p.5, Tab.1. 18)特にGurley〔8〕, PP.!0−11のCharts l and 2を見よ。

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       貨幣の実証的概念と近似貨幣の貨幣性測定  105 法であり,厳密とはいえない。しかし,ガーレイの方法は簡単なグラフでもって 流動資産の貨幣性のウェイトの考え方を示したというメリヅトをもっている。  ガーレイと独立してウェイトの問題を論じ,その理論的な枠組を示そうとし       19) たのはカンヌ(E.」. Kane)〔11〕である。かれによれば,各種の流動資産の相 対的貨幣性を決定するための基準とは資産が実際に使用される程度,つまり支 出を行い,他の資産を獲得し,債務を弁済するために現金化される程度である。  いま,第ゴ番目の経済主体によって保有される貨幣残高を次のように定義す る。

    N

  規ノ=Σ切、ブα∫ゴ・………・……一……・…e………一……・・一……(1)     宴薫ユ         i= 1,……,N         ブ=1,……,P    ただし,砺;第ブ番目の経済主体(Pコの中の1コ)が保有する第ゴ番目   の資産(N種の中の1種)の貨幣額,碗わウェイト,0≦測のく1,それは第    ゴ番目の経済主体が保有し,貨幣機能を果す第∫番目の資産の割合を示す。  その経済において集計された貨幣量MはMlをPコの経済主体について集 計することによって得られる。        P     P  2>  つまり,・M=Σmゴ=・ΣΣWiフ砺……・・……・…・…………・…・…(2)        フー・1   1−11−1  (2)式は次の(3)式に等しい。

曙(二幅画一・一……一一… 

   ん,各経済主体が保有する第t番目の資産の合計額。  したがって,ウェイトをつけた貨幣量は,     N   M=ΣWVi・ノ1,…………・・…・…………・…・…一………・…・……一(4)     z=1               Στリリα乞ブ    ただしW’i−2”Li4i− 19)Kane〔11〕の理論の簡潔な要約がBroaddus〔1〕, PP. 8−9によってなされており,

(12)

 106 彦根論叢 二水60年記念論文集(222・223号)  ここでW;・は集計されたウェイトであるが,これを貨幣性係数(coefficient of moneyness)と呼んでもよい。明らかにWiは各経済主体の勧ノ(ノ=1,… …,P)とAiの経済主体間における配分に依存する。  以上のように,カンヌはきわめて簡潔にウェイトをつけた貨幣の基本的な視 点を示したものといってよいであろうが,問題はこのようなウェイトの計測で   ある。         5 ウェイトをつけた貨幣集計量の計測問題  ところで,チェテn(V.K. Chetty)〔2〕は効用関数を応用して狭義の貨幣 (M,)と他の金融資産との代替の弾力性を求めることによって流動資産の貨 幣性を示すウェイトを導出する。  いま,M[や定期性預金(T),その他の流動資産を変数とするCES生産関 数の形態をとる効用関数を想定し,経済主体が一定の制約条件の下その極大満 足を得るような組合せでM,およびT,その他の流動資産を保有すると考え るQ  以下,M1とTの2種の流動資産のケースを説明しよう。  まず,次のような:CESタイプの効用関数を想定する。       エ   1ノ=(βiM『P十β2T一ρ)一7 ・・一・一・・・・・・・・・・・・・… 一一・■■一・・・・… 。・・・・・・・・… (5)  つぎに一定の貨幣残高(M)が狭義の貨幣(M,)と定期性預金に配分され るが,来期初めの定期性預金の金額ig T,その金利をrとすれば,        T   M==M,十       ・…………・……・……・……・……・………(6)        1十r  ⑥式を制約条件として(5)式の極大値を求める。周知のように,ラグランジュ  かれの展開によるところが大きい。Feige and Pearce〔5〕の展望論文と共にBroa・  ddus〔1〕の展望論文によって示唆を受けるところが大ぎかった。 20) カンヌ自身,アメリカの資料を使ってウェイトの長期趨勢の計測を試みているが,  資料の制約上灘を直接計測せず,それはAiと同方向に動くとし,ムの計測で代  用しているにすぎない。(]f,Kane〔1!〕t pp.229−40,

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       貨幣の実証的概念と近似貨幣の貨幣性測定  107 の乗数(Z)を使えば,   び一(β,Ml一・+β・T一・)一÷+・(Ml+、fr)・一…・………(・・  (7)式を・MlおよびTでそれぞれ偏微分すれば,   錫一β脚(β,MiD+191T一・・)÷’+…=・…・…・…………・一…   一rtU 一一p2T一一p−i(p,irL4i−p+/g2Tnp)一’}.’一’+一ritl i一. ?L=O・o・・…一一’’’’’’’”(9)  ⑧式を(9)式で割れば,   pPr; ({lffl−i )一P一‘ =1+r...................”...・・..・・・……・・・・・…““…ny・e・oo)  ⑩式を若干変形し,両辺の自然対数をとって整理すれぽ,回帰方程式は次の ようになる。

  鰐・一、転略+、瀞・、辛声………一・一(l!)

M1とT・の間の鰭の(部分)弾力腕曇πで劾・れ・・

 チェティは1945−66年のアメリカの資料(年時系列)を使って最小2乗法に より(ユユ)式を特定化する。 得られた蘇は諏¥・・・…+…69・/・嚇ア・一……・・・・…  いま,M玉の貨幣性(ウェイト)=・1とすれば,β1=1となるので,(11),(12> 式より,   B? ==e tP (一 1. 510/34. 69) == O. 957  したがって,(5)式は次ののようになる。   Ufi1M== (1rf,e・97i十〇. 957TO・g7i)i e3 .iMl 十T ・… 一・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…  (13)  このようにチェティの計測結果では定期性預金は狭義の貨幣にほぼ等しいウ ェイトをもつことになるQ  さらに,N種の流動資産を含tr一一般ケースについても同様な手段で求めてい るが,Ml,およびT以外にM5「(相互貯蓄銀行預金)とSL(貯蓄貸付組合 出資金)の4種の流動資産のウェイトを求めた結果は次式のとおりである。

(14)

 ユ08 彦根論叢 寝水60年記念論文集(222・223号)   M÷M,十T十〇.880 MSI−0.616 SL・・・・・・・・・・・・・・・・… 。・・一・・・・・・・・・… (14)  ⑭式の示すように,MSのウェイトもTほどではないにしても1に近いし, Sしのウェイトもかなり大きい結果が得られている。  以上のチェテイの分析の骨子は次のような無差別曲線を使って簡単に説明で         きるであろう。  2図の無差別曲線は,経済主体にとつ  2図 狭義の貨幣(MDと定期性預金        (T)の無差別曲線

て同等の満足を与えるM,とTの組合

      M せを示し,その勾配は両者の限界代替率 を表す。  いま,無差別曲線の形態と位置を所与 とし,点Aの組合せが選択されるとした ばあい,点Pでも同様な満足度が得られ ることになる。すなわち,点AではOM

のM,と㎝’のTが保有されている

が,一方点アではOPのM,が保有さ

れ,Tの保有はtf・Pである。  したがって, M ︶︹ /4 T         ($OM十$OTノ)の貨幣性=$OPの貨幣性…・…・⑮  この分析を完成させるためには貨幣性の尺度が必要とされる。

 いま,$1のMiが1単位の貨幣性を含むとすれば,一定のM,とTの組

合せに含まれる貨幣性の大きさはその組合せに等しいM,によって測定でき る。  したがって㈲式は次のようになる。   ($OM十$OTt)の貨幣性=$OP……・…………・・………a6)  $!のM,は1単位の貨幣性を含むから,

  $OMの貨幣性=$OM

 したがって$OM一ト$OTtの貨幣性=$OP…………・…・・………働 21)Broaddus〔!〕, pp.!0−11の説明によるところが大きい。ただし,チェティ自身  も無差別曲線を使った説明も行っている。See Chetty〔2〕, p.274.

(15)

       貨幣の実証的概念と近似貨幣の貨幣性測定  109  ⑰式は次の形式で示され,上述の⑬,⑭式と対応する。すなわち,   $OM−F m($():Z「’)=$OP, 0≦9m≦ユ・・… 一・・・… 一・… 一・・・・・・・・・… as)  チェティのように効用関数を使用した,いわばミクロ的な視点ではなく,マ クロ的な視点から近似貨幣ないし流動資産のウェイトを計測する試みがティン バレーク(R.H. Timberlake)・フォーーツオン(J. Fortson)〔16〕およびラウ マス(G.S. Laumas)〔12〕,〔13〕によって行われた。  かれらの回帰方程式は次のきわめて簡単なものである。   △Y・a十ろムハ4[十△T……・・一・…一…・………・・…・…鋤   △;増分,y;名目国民所得  ⑲式は次のように変形される。すなわち,   AY==a+b(△MI+ろ△T)…’………’………”●⑳   じ  bが貨幣性を示すウェイトである。これはチェティのβ,(β1=1)または 研こ相当すを。  かれらもすべてアメリカの資料で検証を試みているが,その結果を既述のチ ェティによる推定値と共に示しおこう。        3表 アメリカにおける近似貨幣の貨幣性(ウェイト)        チータ     近似貨幣     ウェイト ティンバレーク・ フオーツォン ラ  ウ マ  ス チ  ェ テ  ィ 年 時 系 列 1953−65年 4半;期時系列 19471f一, 第2 ● 4半期一66年 年 時 系 列 1945−661P T−! MS

T

!rL4S SL

T十MS十ps

T十MS十PS十SL

MS

SL O.152 0,579 0,496 0. 308 0. 480 0. 3. 24 0.957 0.880 0.616 T;銀行定期性預金,MS;相互貯蓄銀行預金, SL;貯蓄貸は組合出資金, PS, PQstal Savings System Deposits(郵便貯金)

(16)

 110 彦根論叢i陵水60年記念論文集(222・223号)  既述のように,チェティのウェイト算出の原理はティンバレークなどとは異 なっているので,形式が類似していても単純な比較は避けねぽならないであろ う。つまり,ティンバV一クなどの視点はマクロ・レベルで行われていると同 時にマネタリスト的であり,貨幣性を国民所得との関係で捉える,すなわち国 民所得の支出をまかなうために貨幣が使用されるという視点であり,交叉弾力 性やチェティのばあいのように流動資産の金利の関係は直接視野には入ってい ない。また,ティソバレーク・フォーツオンとラウマスは測定期間に多少の差 があり,年時系列と4半期時系列の差はあるが,まったく同じ式を使って計算 したにもかかわらず測定結果が大きく異なっている(2表参照)。ラウマスの 計測〔12〕はティソバレーク・フォーツオンに対するコメントのニュアンスを もつもの(ただし,正式のコメント形式をとっていない)であるが,かれはこ の相違の理由について言及していないし,その後ティソバレーク・フォーッォ ンによる反論も行われていない。ラウマスとチ=ティでは測定原理や方法は異 っているし,ウェイトの数値にはかなりの開きはあるが,共にT,M「Sおよび Sしのウェイトの大きさの序列は等しく,しかもM,に近い近似貨幣ほど数値 が大きくなっている事実には注目してよいであろう(2表参照)。       6 わが国における近似貨幣の測定       ヨの  最後にわが国の近似貨幣(定期性預金)の貨幣性の測定を試みたい。  既述のように,チェティ〔2〕による効用関数を応用した代替の弾力性によ る貨幣性の測定はたしかに興味ある方法である。しかし,わが国でlt. 19SO−60 年代を通して預貯金金利はきわめて硬直的であったので,代替の弾力性や交叉 弾力性を使って定期性預金の貨幣性を測定してもこの期間については良い結果 をえることは期待できないであろう。したがって,ここではティンバレーク・ 22)わが国のマネー・サプライ統計上の定期性預金(M.一M)は定期預金,定期積金,  相互銀行掛金であり,M],M!の調査対象金融機関は日本銀行,全国銀行(信託勘定  を除く),相互銀行,信用金庫,農林中金,商工中金である。

(17)

      貨幣の実証的概念と近似貨幣の貨幣性測定  1!1        23) フォーツオン〔16〕の回帰方程式を使って測定することにしたい。  ところで,日本銀行がM,とM2の公式統計(ともに月次残高)の発表を 開始したのが1955年であるので,同年より1978年ないし79年まで,年次データ        24) と4半期データを使用して計算した。1978年8月より国民所得統計が国民経済 計算体系(新SNA)に移行したが,!965年まで遡及可能である。これに応じ         ヱらう て全期問を2分割(全期間1本の計算も行う)して計算した。増分(第1階 差)のみならず水準の計算も行った。結果は3,4,5表のとおりである。な お,4半期データによる水準の計算結果は満足の行くものでなかったので省略 する。  得られた計算結果の特色と残された闇題点を列記しおこう。  1.結果は4半期データ(増分)による:方が年次データより良好である。わ が国においては概して定期性預金の貨幣性は大きいといえるであろう。それは M1の貨幣性に近いかむしろ上回わっている。計算結果はラウマスのウェイト よりむしろチェティのウェイト(2表を見よ)に近い。ただし,以上はティン 23)筆者はかつてフルブライト研究員としてThe Unievrsity of Georgiaに滞在中   (1976−77年),ティンバレーク教授と「日米の近似貨幣の貨幣性測定」について共   同研究を行い,!955−75年間の年次データを使用して測定した。同教授は他の学者が   貨幣性の測定に際してアメリカの国民所得統計の測定基準の変化を無視している点を   筆者に強調した。本節はその際筆者が担当した日本の近似貨幣の貨幣性測定作業を発   展させたものである。なお,この一部は片山〔18〕にも公表した。 24)年次データの回帰分析のコンピューター使用については岡山大学(教養部)教授・   脇本和昌氏,4半期データについては滋賀大学(経済学部)計算センター谷口伸一助   手の助力を得た。 (コンピューターは各大学のものを使用。)マネー・サプライ・デ   一礼は日銀統計調査局より得た。また,4半期マネー・サプライ・データの手作業は   滋賀大学大学院学生佐藤伸明君の助力を得た。付記して以上の方々に謝意を表した   い。なお,年次データについては自然対数の回帰方程式や成長率,ラグ付ぎの形式で   の計算も試みた。さらに4半期データについてはラグ付きの形式での計算や経済企画   庁による景気循環(第4,5,6,7各循環)で区切って定期性預金の貨幣性の計算も   試みた。しかし,残念ながらいずれも不満足な結果に終った。 25)年次データでは,水準,増分を一括してコソピーユターで計算する方法をとったの   で,2分割の前半の区切りを!966年までとした。

(18)

ユ12 彦根論叢 野水60年記念論文集(222・223号)  3表Y=a十bMt十cT(年次データ) 期 間  従属変数 !955−78年 1955−66年 1967−78年

YYy

  b  l  c Miの  Tの回帰 回帰係数 係数 1.329 (2. 948) !.188 (1.308) 1.053 (1.900) 1.185 (4. 311) 1.297 (2.42!) 1.289 (3.870) c/b O.891 1.091 1.224

R

Z)一日7 O. 999 0. 998 0.998 O.990 1.703 1.490 ()の計数はT値,R;重相関係数D−W,ダービン・ワトソン比 (資料)Ml,T(M2−Mi);日銀調べ(季調済計数)による。     Y;国民総支出(名目)(季調済計数)。経済企画庁『国罠経済計算年報』     1979,『国民所得年報』1975,日銀各『経済統計月報』による。          4表 △Y=a←b△Mt+c△T(年次データ) 期

間庵殿数

1956−78年 195666年 !967−78年

Y Y y

△ △ △

 b

△Miの

回帰係数 O.932 (1.437) 1,623 (1. 022) O.612 (O. 652)

晶多数[c/b

1.222      1.311 (3.280) i O.937      0.577 (O. 846) 1.073      1,753 (2.0ユ6),

R

O.933

D−W

o sgs 1 O.802 !.834 2.645 ! 857 (資料) 3表と同じ。         5表 △Y=a+b△Ml+c△T(4半期データ) 期

間陵脚数

  b

△Mtの

1回帰係数 1955−79年 1955−64年 1965−79年

yYy

△△△

O,818 (3,713) エ.485 (2.073) O 640 (2, 200)  び △Tの 回帰係数1 c/b

R

1.063 (7. 281) O.856 (1 462) O, 800 (3 536) /,299 0.576 1.250 O.779 0.652 0.547

P一朗

1.687 1.934 1.742  (資料) 3表の資料以外に『国民経済計算年報』1981。 バレークの回帰方程式を使用した結果であるが,日本における定期性預金の貨 幣性はアメリカのそれより大きいといっても誤りではないであろう。  2. ここでいう貨幣性はマネタリストの視点に立って国民所得の水準ないし

(19)

       貨幣の実証的概念と近似貨幣の貨幣性測定  1!3 その変化との相対的な比率を示している点に留意しなければならない。一方, 金利の変化や制度上の変化によって,M且やTぱ影響を受け,したがって交 叉弾力性や代替の弾力性で表される貨幣性は変化することになる。ティンバレ ーク流の貨幣性は他の条件(金利や制度的な変化)を一定と仮定して支出との 関係で捉えられ,一方交叉弾力性や代替の弾力性で測定される貨幣性では,支 出との関係は他の条件一定の仮定の中に閉じ込められていると見なされる。  3,年次データのばあいは,水準および増分共に(重)相関係数に大きな相 違はない。一般に水準については三共線関係(multicoliinearity)カミ存在しや すいが,周知のように増分をとることによって多かれ少かれこの問題を回避す        の ることができる。アメリカのマネー・サプライ・データ(年次)を使った結果        つ でも、増分のばあいにぱ相関係数はかなり低下している。わが国のばあい,た しかに4半期データ(5表)では低下しているが,年次データ(4表)でなぜ 低下しないのか立ち入った検討が必要と思われる。  4,ここでの方法では,緊密な相関関係が因果関係を意味するものではな い。したがって,TがYとの関係でM[と同様な緊密さをもっとしても,そ れが交換手段(貨幣性の重要な内容)として機能したとは必ずしもいえないで あろう。というのは,Yが増加した結果貯蓄の1つの手段としてTが増加し たともいえるからである。しかしまた,7「は支出をまかなうために満;期期限内 でも解約したり.それを担保としてMlを隔り入れることもできるので,その 意味では交換手段の機能を果すことは否定できない。  5.1970年代初めの世界インフレと共に,わが国の預貯金金利も引き上げら れ,その後は以前に比較して弾力的に変更されるようになった。その意味でチ 26)たとえぼ,Granger〔9〕, pp 34−36の例示を参照。 IL, 7) 1952一一 6 E3 tl’1       水 準    増分(第!階差)  lsf21 0 9,S)9 0 797  ,TL(f2 O. 990 O, 688

  T 0 992 O, 601

(出所)Timberlake and Selby〔17〕, P.565, Tab.27−6.

(20)

 114 彦根論叢 陵水60年記念論文集(222・223号) エティの回帰方程式を使って近似貨幣の貨幣性を測定したばあい有意な結果を えられるかもしれない。いずれその方法を試みて本節の結果と比較したい。  6,なお,定期性預金の貨幣性(増分;年次,4半;期データ共に)は,2分 割の前期では後期および全期間に比べて半分以下に下っているが,これは△M, の回帰係数が大きいことによる(4表,5表を見よ)。また逆に全期間および後 期では△M1の回帰係数が1より小さく(特に後期),ティソバレーク(16〕(た だし,戦後)やラウ・マス〔12〕によるアメリカの計測結果(すべて1より大)と は異っている。これらの点についても改めて検討が必要であろう。 7 む  す  び  以上,貨幣の実証的な概念に関する主要な論者の見解の検討を通して問題の 本質を明らかにしょうとし,最後に簡単な回帰方程式でわが国の近似貨幣の貨 幣性の測定を試みた。しかし,貨幣を実証的に捉えようとする論老の考え方も 計測結果も共通点よりはむしろ相違点の方が目立つのが現状である。  一方,貨幣性を示すウェイトを何が決定するかについてはかれらによって必        ずしも突込んだ議論はなされていない。所得水準,利子率,インフレ,インフ レ期待やそれらの変化などが影響を与えるであろう。さらに最近では金融の自 由化やエレクトロニック・バンキングの進展による影響も無視できないであろ う。  結局のところ,貨幣性とは何かという問題は単なる統計的操作や処理では明 らかにできず,それらは貨幣概念の理論的な考察を補強するという意味をもっ ているにすぎないといわなければならない。       引 用 文 献 (1) Broaddus, A,, ‘CAggregating the Mortetary Aggretsf’ates Concepts and lf sues,”  Ecor.oneic Rewiew, Federal Reserve Bank of Richmond, Vol. 61 No. 6 (Nov/Dec,   1975), pp, 3−12. (2) Chetty, V. K., “On Measuring the NearneE s ef Near−Moneys” A:vnencan Eco−  7Ton?.ic RevzeLv. Vol 59, No. 2 (June 1969), pp 270−RL I 28) 若干の論及はBroaddus〔1〕, P.8.に見られる。

(21)

      貨幣の実証的概念と近似貨幣の貨幣性測定  1!5 (3) Edwards, F. R,, “More on Substitutability between Money and Near−Monies,”     あz’r.o/Money, Credit and Banfling, Vo1.4, No.3(Aug.1972), pp.551−72. (4) Feige, E. L, The Demand for Ligttid Assets: A Temporal Cross−Section Ana−     lb,sis, Prentice Hall, 1964. (5) 一 and D. K, Pearce, “The Substitutabi’lity of Money and Near r onies: A     Survey of the Tirne ・Series Evidence,” Jour. of Economic Literature, Vol. 15, No・ 2     (June 1977), pp・ 439一一69. (6) Friedman, M. and D. Meiselman, C‘The Relative Stability of Monetary Velocity     and the lnvestment Multiplier in the United States, !897−/958,’“ in StabiZixation     Poltctes, prepared for the CMC, Prentlce E{all, 1963, pp 165−268, (7) 一, and A, J. Schwartz, r/fonetar.y Statisties of the United States; Estimates,     Sou,’ces, Methods, NBER, 1970. こ8〕 Gurley, J. G.,”Liquldity and Flnancia王Institutlons m the Postwar Per1od,”     Joint Economic Committee, StztdN Pmper, No. 14, !960, pp. 3−57. (9) Granger, C. W. 」, Forecasttng in Business and Econo”?ies, Academic, 1980 〔/0)Kaufman, G. G.,‘‘More on an Empirical Definitlon of MoneゾAmerican Eco・     7707nic Rewzezc,, Vol 59, No 1 (Mar, 19.69), pp. 78−87. 〔11〕Kane、 E. 」 , ‘‘Money as a Weigh亡ed Aggrega亡es,;’ Zeitsclvnift.fgti’」Mσ’ガσ7zσ嫌07εo雁6,     Vol, 24, Heft, 3 (Sept. 1964), pp, 221−43. (12) Laumas, G. S, “The Degree of Moneyness of Savings Deposits,” American    Econo”ric Rewtezc・,, Vol. 58. No, 3 (June 196g.), pp. 501−3. (/3), 一, C‘Savings Deposits in the Definition of Money,” Jour, of Pogitical Eco,?om)i,    Vol, 77, No 6 (Nov,/Dec 1969.), pp 892−96, 〔14〕Lee, T H,’‘Substltutability of Non−Bank王ntermedlary Liabilities for Money:    The Empirical Evidence,” Joorr, of !7irraf?ce, Vol. 2/. No, 3 (Sept. 1966), pp. 441    −r)7. こ15〕 Schadrack, E C.,“An Empirical ApProach to the Definition of Money,”in    2rlfoRetai”一“, Aggr egates a7zcl Monetary Policy, Federal Reserve Bank of New York,    !974, pp. 28−34. (16) Timberlake, R, H. and J. Fortsen, C‘Time Deposits in the Definit1on of Money,”    A7nerzca?t tV)cofton7ic Revtezev, Vol. 57, No, 1 (Mar 1967), pp 190−4. l17) 一, and E B Selby, lvioney ancl Banking, Wadsworth, lg72. 〔18〕片山貞雄「金融政策の理論的・実証的研究 i若干の国際比較」 「科研報告」1980年     3月。 (1g〕  }[貨幣の概念について一戦後の論争を中心に」『彦根論叢』206号,(198!年     2月)1−24ページ。

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