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潜在性甲状腺機能低下症 スクリーニングとマネージメント

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(1)

潜在性甲状腺機能異常症

スクリーニングとマネージメント

第84回 神戸甲状腺同好会 H17, 9

大阪福祉事業財団 すみれ病院

院長 浜田 昇

(2)

はじめに

潜在性甲状腺機能異常症という言葉がどうして出てき たかは、TSH測定法の進歩と関係がある。

• 1970年代にTSHの測定(基準値<5μU/ml)が始まり、

• 1980年代にsensitive immunometric TSH assay(基準 値0.4 - 4.0 μU/ml)が導入された。

その結果、健康と思われる人の多くで、血中の甲状腺 ホルモン濃度は正常であるにもかかわらず、TSH高 値の人、低値の人が見つかるようになり、その対応 が問題になってきた。

(3)

例えば、このような症例

59歳女性

• スクリーニングでTSH 7μU/mlの上昇が見つかった • 症状は、10年来ある軽い倦怠感とやせるのが難し い、以外ない • 小さくて硬く、表面が不正な甲状腺腫がある • コレステロール230mg/dl 甲状腺ホルモンによる治療を始めるべきか?

(4)

このような症例が問題になり

非常に多くの論文が発表された

1970年以降に発表された論文数(Medline) • 潜在性甲状腺機能低下症 1106編 • 潜在性甲状腺機能亢進症 608編 しかし、一般の臨床家に示す指針として、以下のことが 明らかでない。 • 放置するとどうなるのか? • 治療をすることのリスクとベネフィットは? • 甲状腺機能異常症のスクリーニングは必要か? そこで米国ではこれまでのエビデンスをまとめる作業が 始まった(日本はまだ委員会が発足したところ)。

(5)

本日の内容

第一部

エビデンス・レポート

• 潜在性甲状腺機能異常症についてのエビデ

ンスを徹底的に調べてみるとどこまでのこと

が言えるのか

第二部

スクリーニング

• これまでのエビデンスから必要と考えるか?

必要ではないか?

第三部

マネージメント

• 実地医家はどのように対応すれば良いか

(6)

第一部

エビデンス・レポート

2002年、米国の内分泌系の3学会のメンバーが中心

になって Evidence Report: Subclinical Thyroid Disease. がまとめられ 2004年、 Evidence Reportに

基づく指針が出された。

Evidence report(84ページにわたるもの)を中心に、こ

(7)

The Endocrine Society;

Evidence Report:

Subclinical Thyroid Disease

Sponsor 米国内分泌学会、米国甲状腺学会、米国臨床内分泌学会 Member 甲状腺の専門家、8名、循環器、疫学、生物統計学、EBM、保健、 一般内科学、臨床栄養学の専門家、5名

Data Sources

1995から2002年の間に発表された潜在性甲状腺疾患に関するす べての文献を調べた(1995年以前のもの専門家によって選ば れた) Method 心筋梗塞のリスクになるかなど、各項目について米国予防専門委 員会に承認された基準に基いてエビデンスの強さを決定した。

(8)

Evidence Report: Subclinical Thyroid Disease

エビデンスの強さ

Good • 代表的な集団を対象にし、よく計画され、実行された研究で、 一貫した結果が得られている Fair • 医療効果を評価するに十分なエビデンスはある。 • しかし、研究の対象、対象とした人数、結果の一貫性などから みてエビデンスの強さが限定されている。 Insufficient • 研究数が少ない、研究デザインに欠陥がある、エビンデンス と結論にギャップがある、などがあり医療効果を評価するに は不十分。

(9)

潜在性甲状腺機能低下症、各項目について、 TSHの高さに分けてエビデンス強さを決めている 関連性の強さ 治療による効果 血清TSH(μU/ml) 4.5-10 >10 4.5-10 >10 顕性機能低下症へ の伸展

Adverse Cardiac end point

T&LDL chol 高値 心機能異常

全身症状

(10)

潜在性甲状腺機能亢進症についても同様に TSHの低さで分けてエビデンスの強さを決定している 関連性の強さ 治療による効果 血清TSH(μU/ml) 0.1-0.45 <0.1 0.1-0.45 <0.1 顕性機能亢進症 への伸展 Adverse Cardiac end point 心房細動 心機能異常 全身症状、神経 精神症状 骨量減少 骨折

(11)

潜在性甲状腺機能異常症

これまでのエビデンスからどこまで言えるか

• 定義 • 頻度 • 症状 • 脂質代謝 • 心機能、心血管イベント • 骨代謝 • 妊娠 この順序で話をします

(12)
(13)

定義

血中 TSH 血中 甲状腺ホルモン

顕性

甲状腺機能異常

異常 異常

潜在性

甲状腺機能異常症

異常 基準値内 症状、所見のあるなしは、定義に入れない。 あくまで生化学的な定義である。 除外項目がある (甲状腺は正常であるがこのような検査値を呈する状態がある)

(14)
(15)

頻度に影響を与える因子

• 性 • 年齢 • ヨード摂取量 • 抗甲状腺抗体の陽性率 • TSH値に影響を与える疾患の有無 • 対象とした集団 (地域住民、入院患者、老人ホームの入所者など) • 人種 特に重要なのは • TSHの正常範囲の決め方 → 頻度が異なる • さらに正常域には矛盾がある

(16)

正常域の矛盾とEuthyroid outliner

正常値とは

“多数の健常人によって示される値

の範囲”で、異常を有する人を識別する尺度

実際には“健常人の測定値の95%信頼域

正常域の矛盾

• 健常人を明確に定義できない

• 集団と個人の正常値は一致しない

• 健常人の5%は異常値をとる(

Euthyroid outliner

)

• 健常人群は疾患群と重なる

(17)

健常者と機能低下症患者のTSH値の重なり

(18)

潜在性甲状腺機能低下症

の頻度

(19)

住民検診における

甲状腺機能低下症の頻度

性別、年齢の関係

Wickham survey 1977

対象2779人、顕性機能低下症も含まれている

(20)

潜在性甲状腺機能低下症の頻度

(21)
(22)

潜在性甲状腺機能低下症

頻度

• 潜在性甲状腺機能低下症の頻度は、全体で1.2

から9.0%である

(幅が広い、条件で異なる)

• 女性は、どの研究においても男性よりも頻度が

高い(女性;2.7-11.6% 、男性;1.9-3.4%) 。

• 高齢になるほど頻度が高くなる(女性7-17.5%、

男性2.2-15.4%)。

• 頻度は、人種によって異なる

(白人4.8%、黒人1.6%)

• 甲状腺ホルモンを服用中の患者における潜在

性甲状腺機能低下症の頻度は約20%である。

(23)

潜在性から顕性甲状腺機能低下症へ

の進展

20年間の経過観察

ランダムに選ばれた2779名の英国人を対象に20年間経過観察さ れた(912名の女性が経過観察された)。 Whickham survey 顕性機能低下症へ進む リスク %/年 オッヅ比 20年後に機能 低下症になっ たもの、% TSHのみ上昇 2.6 8 (3-20) 33.0 抗甲状腺抗体 陽性のみ 2.1 8 (5-15) 27.0 TSH上昇+抗 体陽性 4.3 38 (22-65) 55.0

(24)

潜在性甲状腺機能低下症、影響、治療の効果 関連性の強さ 治療による効果 血清TSH(μU/ml) 4.5-10 >10 4.5-10 >10 顕性機能低下 症への伸展 Good Good ? ?

Cardiac end point T&LDL chol

心機能 全身症状

(25)

潜在性甲状腺機能低下症、影響、治療の効果 関連性の強さ 治療による効果 血清TSH(μU/ml) 4.5-10 >10 4.5-10 >10 顕性機能低下 症への伸展 Good Good ? ? どのような症例が将来 顕性の機能低下症に陥るかJ CEM 2004 • 機能低下症状のあるひと • FT4値が低い人 • 甲状腺腫のあるひと • TPOAb陽性の人 • TSH値の高い人

Cox regression analysis

でも有意に出たのはTSHだけ 縦軸は潜在性の割合

(26)
(27)

潜在性甲状腺機能亢進症の頻度

潜在性甲状腺機能低下症に比較すると頻

度は低い(

0.5 -

6.3%

TSHが0.1μU/ml以下のものに限定すれ

ば、頻度は

0.7%

である。

高齢者に多く、女性に多い

甲状腺ホルモンの投与を受けている人で

は、

14-21%で潜在性甲状腺機能亢進症に

なっている。

(28)

顕性甲状腺機能亢進症への進展

潜在性甲状腺機能亢進症の予後を観察してい

る研究は少ない。

多くの症例でTSHは正常に戻る。機能低下症が

顕性になっていくほど、顕性になる頻度は高くな

い。

TSHが、0.1-0.45μU/mlの人では顕性に進む率

は低いが、

0.1μU/ml以下のひとでは、年に1-2% (

Parle et al. 1991)、6.6%(

Pirich et al.

2000)の割合で顕性に進む。

TSH低値で甲状腺腫の大きいものが、ヨードを

過剰に摂取すれば顕性甲状腺機能亢進症に進

むリスクが高い。

(29)

潜在性甲状腺機能亢進症による影響治療した場合の効果 関連性の強さ 治療による効果 血清TSH(μU/ml) 0.1-0.45 <0.1 0.1-0.45 <0.1 顕性機能亢進症 への伸展 不十分 Good なし なし Cardiac end point、

afと関連なし 心房細動 心機能異常 全身症状、神経 精神症状 骨量減少 骨折

(30)
(31)

大規模研究での症状の発現率

Colorado

statewide health fairの参加者、

25,862人

Cross-sectional study, Arch Intern Med 2000

甲状腺機能低下症のすべての症状のうち何%持っているか

12.1% 13.7%

(32)

持っている症状の数別に見た、正常者、潜在性機

能低下症、顕性機能低下症の分布

(コロラド研究)

3つ以上もっている人の中には 潜在性機能低下症患者が多い

(33)

症状

Cross sectional study

• 潜在性甲状腺機能低下症で少し症状が多いが、個々 の症状でみると潜在性甲状腺機能低下症に感度の 高いものはない。ただ潜在性甲状腺機能低下症患者 はもっている症状の数が多い(25862人のCross sectional study、コロラド研究) 。 • しかし、この研究は、population baseになっていない、 そして未治療の潜在性甲状腺機能低下症と顕性甲状 腺機能低下症の治療中のものを区別できていない。 • 他のCross sectional studyではこの結果をconfirmでき

(34)

治療による症状の変化

• 5つのplacebo-controlled blinded studiesがある

• 2つ(Cooper, Meier)は、有意に治療によって改善して いる。TSHの平均値は、11μU/mlを越えている。

• TSH10以上のもののうち4人に一人は効果あり、TSH5-10 μU/mlのものは治療効 果なし。この研究は、機能低下を改善させるというよりもL-T4そのものの効果も考慮 しなければいけない。

(35)

潜在性甲状腺機能低下症、影響、治療した場合の効果 関連性の強さ 治療による効果 血清TSH(μU/ml) 4.5-10 >10 4.5-10 >10 顕性機能低下症 への伸展

Cardiac end point T&LDL chol

心機能

全身症状 なし 不十分 不十分 不十分 神経精神症状 なし 不十分 不十分 不十分

(36)

潜在性甲状腺機能亢進症による影響治療した場合の効果 関連性の強さ 治療による効果 血清TSH(μU/ml) 0.1-0.45 <0.1 0.1-0.45 <0.1 顕性機能亢進症への 伸展

Cardiac end point、af と関連なし 心房細動 心機能異常 全身症状、神 経精神症状 不十分 不十分 なし 不十分 骨量減少 骨折

(37)
(38)

大規模研究におけるコレステロール値

Colorado

statewide health fairの参加者、

25862人

(39)

↓ ↑ ↑ ↑ 血清脂質値に関する 14論文のまとめ

(40)

潜在性甲状腺機能低下症

TC, HDL, LDL, TG 、まとめ

• 12のmatched case control study

• 2つのcross sectional studies がある

ほとんどの研究では、T-cholとTGの軽度の上昇を見て いる。しかし有意差が見られたのは、14論文のうち • 総コレステロールの上昇は、3論文(21%) • LDLの上昇は、5論文(35%) • HDLの低下は、3論文(21%) • TGの上昇は1論文(7%) 有意差があるものは少ないが? 治療で改善するか?→

(41)

TC, HDL, LDL, TG 治療による変化を見た論文

RCTが7編

Uncontrolled Clinical

(42)
(43)
(44)

潜在性甲状腺機能低下症

TC, HDL, LDL, TG

T4治療で改善するか?

• TC, LDLの改善が見られるのは、TSHが10以上の 高値の症例である。 • 治療期間との関係では、2ヶ月で効果は見られるが、 その後6ヶ月まで見てもそれほどの変化はない • HDLは低下する傾向にある。それによりTC/HDLは 上昇する。TC/HDLは虚血性心疾患の強力な予測 指標であることが分かっているので、L-T4で治療を することが虚血性心疾患の頻度を下げることにつ ながるのかは疑問である。

(45)

潜在性甲状腺機能低下症、影響、治療した場合の効果 関連性の強さ 治療による効果 血清TSH(μU/ml) 4.5-10 >10 4.5-10 >10 顕性機能低下症 への伸展

Cardiac end point T&LDL chol 上昇 不十分 Fair 不十分 不十分? 心機能 全身症状 神経精神症状

(46)

心機能

心血管イベント

(47)

潜在性甲状腺機能低下症

心機能

• ごく軽度の心筋収縮力の低下が報告されている • しかし、対象の選び方、研究のデザインなどから十分 明らかとは言えない

心血管イベント

• 虚血性心疾患を起こした患者における潜在性甲状腺 機能低下症の頻度は高いという報告はある。 • 潜在性甲状腺機能低下症と心筋梗塞の有病率の関 係は?Cross sectional study

• 潜在性甲状腺機能低下症を経過観察するとCVA,

(48)

心筋梗塞の発症率

Cross sectional study

ロッテルダム研究 Hak AE, Ann Intern Med 2000

方法

• オランダのロッテルダムで

• 閉経を過ぎた女性を対象に調べた • population based cross sectional study

対象

• ランダムに選ばれた1149人 • 平均年齢 69.5 ± 7.5歳

(49)

年齢を調整して検討した結果、大動脈の動脈硬化、心筋梗塞の発生率が潜 在性甲状腺機能低下症では有意に高かった。

BMI, HDL-chol, 血圧、喫煙で調整しても結果は同じであった。

高齢の女性では、潜在性甲状腺機能低下症は動脈硬化のリスクファクターで ある。 ロッテルダム研究 Hak AE, Ann Intern Med 2000

動脈硬化症

心筋梗塞

(50)

潜在性甲状腺機能低下症では

狭心症、心筋梗塞、心血管死が増加するのか?

• Cross sectional epidemiologic study(ロッテルダム研 究)では、糖尿病、高コレステロール血症、喫煙などと 同様、動脈硬化や心筋梗塞のリスクファクターである としている。 • しかし、同研究における経過観察のデータでは、この ことを確認できていない(4.6年の経過観察で相対危 険率2.5; CI, 0.7 – 9.1)。 • さらに10年間のコホート研究でもそのような結果は出 ていない( Parle JV Lancet 2001、後に示す) • RCTはなく、多くの小さな介入研究では、心機能の改 善は報告されているが、臨床的な意義は分からない。

(51)

潜在性甲状腺機能低下症、影響、治療した場合の効果 関連性の強さ 治療による効果 血清TSH(μU/ml) 4.5-10 >10 4.5-10 >10 顕性機能低下症への伸 展 Adverse Cardiac end point 不十分 不十分 エビデン スなし エビデン スなし T&LDL chol 心機能 不十分 不十分 不十分 不十分 全身症状 神経精神症状

(52)

潜在性甲状腺機能低下症と虚血性心疾患

発症率、生存率に関する論文(日本から)

Imaizumi M. JCEM 2004

対象

長崎の原爆生存者で、1984 - 1987年の甲状腺疾患の調 査に参加した2856人(平均年齢58.5歳) • 潜在性甲状腺機能低下症 257名 (TSH>5.0μU/ml, FT4; 基準値内) • コントロール(TSH0.6 - 5.0μU/ml) 2293名 • 甲状腺に関する治療の既往のあるものは除外した

方法

• 虚血性心疾患が多いか? Cross sectional analysis

(53)

潜在性甲状腺機能低下症における

虚血性心疾患、脳血管疾患のオッズ比

Cross sectional analysis

年齢、血圧、BMI, コレステロール、喫煙、赤沈値、糖尿病の有無 と関係なく、男性では、虚血性心疾患の発症率が高い

(54)

Kaplan-Meier survival curves

10年間の生存率の経過観察

男性では、生存率は潜在性甲状腺機能低下症で有意に

低い。心血管死だけを取り上げると有意ではなかった。

(55)

心機能

心血管イベント

(56)

潜在性甲状腺機能亢進症

心機能

心拍数増加、左室肥大、心収縮力増加する

結果 • delayed relaxationという拡張期機能異常 • 心房性不整脈の増加、とくに心房細動のリスクが高く なる(心室性不整脈は増加しない)

心血管イベント

• 心血管死が増加する

(報告は一つ)

(57)

潜在性甲状腺機能亢進症における

心房細動の頻度

Subclinical hyperthyroidism as a risk factor for atrial fibrillation Auer J. Am Heart J 2001

対象

• 1986年から1995年の間に受診したTSH低値症例 1338名(consecutive) • TSH低値の原因; 85%は機能性腺腫 15%バセドウ病 • 対照は、1989年から1994年に受診した45歳以上 の甲状腺機能正常例22,300名。 方法 • FT4が基準値内のものと高値のものに分けて • 心房細動の頻度を調べた

(58)

潜在性甲状腺機能亢進症における心房細動の頻度 Subclinical hyperthyroidism as a risk factor for atrial fibrillation

Auer J. Am Heart J 2001

結論 TSH低値は、心房細動のリスクを5倍あげる。

TSH低値でFT4正常の群とFT4高値の群の間に差 はなかった

(59)

潜在性甲状腺機能亢進症と心房細動(AF)

• TSH値が0.1μU/ml以下の場合は、心房細動のリス クが上がる(2.8倍、3倍、5倍という報告;年齢をマッ チさせた研究においても) • 顕性の甲状腺機能亢進症と潜在性の甲状腺機能亢 進症の間に、AFのリスクに有意差がなかったという 報告があるが、エビデンスは不十分である • 潜在性甲状腺機能亢進症とAFの間には明らかな関 係があるが、塞栓症のリスクについてはまだ分かっ ていない。 • さらに抗甲状腺薬治療が潜在性甲状腺機能亢進症 におけるAFを予防できるかについても研究がない。

(60)

潜在性甲状腺機能亢進症では

心血管死が増えるか?

Prediction of all-cause and cardiovascular mortality in elderly people from serum thyrotropin results: a 10-year cohort study Parle JV Lancet 2001

目的

• 潜在性甲状腺機能亢進症と死亡率の関係を10年間 の経過観察で明らかにする(コホート研究)

対象

• UKの一つのPrimary care practiceに登録されている

60歳以上の1191人

• ATD、T4投与を受けているものは除いた

方法

• 全例でTSH値を測定し、その後10年間経過観察した

(61)

潜在性甲状腺機能亢進症では心血管死が増えるか?

Prediction of all-cause and cardiovascular mortality in elderly people from serum thyrotropin results: a 10-year cohort study Parle JV Lancet 2001

結果-1

TSH低値例は71例(6%) • 一例は、顕性機能亢進症であった、ATD治療を開 始した • 心房細動は1例のみ • 経過観察中3例が顕性機能亢進になったが、これら の例は死亡していない TSH高値例は 94例(8%) • 18例は、顕性機能低下症でありT4投与を開始した。 • 経過観察中に30例が顕性機能低下症になり、T4投 与が開始された

(62)

結果-2 一回のTSH測定値とその後10年間の死亡率の関係 Parle JV Lancet 2001 全死亡 心血管死 60歳以上の人では、TSH低値であれば、死亡率は高くなる とくに、心血管死の率が高い

(63)

潜在性甲状腺機能亢進症による影響治療した場合の効果 関連性の強さ 治療による効果 血清TSH(μU/ml) 0.1-0.45 <0.1 0.1-0.45 <0.1 顕性機能亢進症への伸展 Adverse Cardiac end point、afと関連なし Fair Fair なし なし? 心房細動 不十分 Good なし なし? 心機能異常 不十分 Fair 不十分 不十分 全身症状、神経精神症状 骨量減少 骨折

(64)
(65)

潜在性甲状腺機能亢進症と骨代謝

甲状腺機能亢進症は骨代謝を亢進することはよく知ら れている。潜在性甲状腺機能亢進症ではどうか? • 抑制療法中、補充療法中 • 閉経前、閉経後 に分けて検討されている。 • メタアナリシス 2論文 • 経過観察研究 3論文 • 横断分析 7論文 が報告されているが、RCTはない

(66)

Effects on Bone Mass of Long Term Treatment with Thyroid Hormones: A Meta-Analysis

Uzzan B. et al. JCEM 1996

• 甲状腺ホルモンによる 抑制療法を受けている 閉経後婦人の腰椎の 骨塩量を見た20論文 (controlled cross sectional analysis)のメ タアナリシス • 結果を一定の数値: effect sizeに表現してい る(横軸) 骨量 増加 骨量 減少 そうごう 総合結果 このライン 変化なし

(67)

甲状腺ホルモンによる補充療法、抑制

療法が骨量、骨代謝に与える影響

閉経前

閉経後

補 充 療 法 骨量減少としている論文もあ るが、コントロールが十分でな い、減少の程度も軽度 NS 骨代謝マーカー の上昇を引きお こす NS 抑 制 療 法 longitudinal studyで減少したと いう報告はあるが、二つのメタ アナリシスでは、骨量減少は 否定的 NS 骨量の減少は明 らか

(68)

潜在性甲状腺機能亢進症による影響治療した場合の効果 関連性の強さ 治療による効果

血清TSH(μU/ml)

0.1-0.45 <0.1 0.1-0.45 <0.1

顕性機能亢進症への伸展 Adverse Cardiac end point、afと 関連なし 心房細動 心機能異常 全身症状、神経精神症状 骨量減少 なし Fair* なし Fair 骨折 なし 不十分 なし なし *とくに、閉経後、あるいは顕性甲状腺機能亢進症の既往のある婦人

(69)
(70)

潜在性甲状腺機能低下症が

生殖機能と児の認知能に与える影響

顕性甲状腺機能低下症では、児の知的障害、子癇 前症、早産、胎盤早期剥離、低体重児、胎児死亡 のリスクが高くなることが知られている。 潜在性甲状腺機能低下症ではどうか? • 潜在性甲状腺機能低下症と妊娠に関して7つの報 告がある • 妊娠中の潜在性甲状腺機能低下症と子の認知能 との関係を調べたコホート研究が4つ • そのほか、不妊症患者(409人)では潜在性甲状腺 機能低下症の頻度が高い(11.5%)という研究があ る(Lavalle et al. 1999).

(71)

潜在性甲状腺機能低下症と妊娠結果に関する論文

(72)

Relation of severity of maternal hypothyroidism to

cognitive development of offspring

Klein R.Z. J Med Screen 2001

目的

母親の甲状腺機能低下は児のIQと関係があるか

方法

8歳時のIQを妊娠17週時のTSH値により以下の3群に わけて比較した。(基準値は満期産、母親25,277人から計算) • Group 1; TSH < 98 percentile

• Group 2; TSH 98 – 99.85 percentile (5-9μU/ml) • Group 3; TSH ≧ 99.85 percentile

コントロールの母親は、年齢、教育レベル、子供の性、 採血日、妊娠週数をマッチさせている

(73)

妊娠12週の母親のTSH値と

8歳時のIQとの関係

TSH percentile 症例数 IQ 平均(SD) コントロールの平均か ら1SD低い者の% < 98 124

107

(13)

15

98 – 99.85 (5 -9 uU/ml) 28

102

(15)

21

≧ 99.85 20

97

(14)

50

Klein R.Z. J Med Screen 2001 *顕性は有意であるが、潜在性は有意ではない

(74)

妊娠12週の母親のTSH値と

8歳時のIQとの相関

(75)

潜在性甲状腺機能低下症と妊娠

まとめ

• 潜在性甲状腺機能低下症では

胎児の神経

精神的障害

が生じる可能性がある。

• 児には影響はなかったという報告も(Redetti

et al.)あるが、認知能よりも精神運動機能、

聴覚を調べているということと、観察期間も短

く、症例数も少ない。

• 潜在性甲状腺機能低下症では,

早産、胎盤

早期剥離のリスクが高い

(Casey BM, Am College of Obst & Gyne, 2005)

(76)

これまでのエビデンスから

どこまで言えるか

(77)

潜在性甲状腺機能低下症、影響、治療した場合の効果 関連性の強さ 治療による効果 血清TSH(μU/ml) 4.5-10 >10 4.5-10 >10 顕性機能低下 症への伸展 Good Good Adverse Cardiac end point 不十分 不十分 エビデン スなし エビデン スなし T&LDL chol 不十分 Fair 不十分 不十分

心機能 不十分 不十分 不十分 不十分 全身症状 なし 不十分 不十分 不十分 神経精神症状 なし 不十分 不十分 不十分 胎児への影響 Fair Fair 不明 不明

(78)

潜在性甲状腺機能亢進症による影響治療した場合の効果 関連性の強さ 治療による効果 血清TSH(μU/ml) 0.1-0.45 <0.1 0.1-0.45 <0.1 顕性機能亢進症 への伸展 不十分 Good なし なし Adverse Cardiac end point Fair Fair なし なし 心房細動 不十分 Good なし なし 心機能異常 不十分 Fair 不十分 不十分 全身症状、神経 精神症状 不十分 不十分 なし 不十分 骨量減少 なし Fair なし Fair 骨折 なし 不十分 なし なし

(79)

第二部

スクリーニング

スクリーニングすべきかどうか?

各学会の意見は?

(80)

スクリーニングをすべきかどうか

スクリーニングが正当化されるかどうかは、潜在性甲状 腺機能異常症の頻度が高いことと、それを発見し治療

することの健康に与えるリスクとベネフィット によって決定される。

The rationale for population screening hinges on the high prevalence of subclinical thyroid dysfunction in the adult population, and on the potential health

benefits and risks of detecting and treating these disease.

(81)

スクリーニングに関しての委員会の意見

1.無症状の人すべてにスクリーニングすることは反対

• その理由は、「無症状の人をスクリーニングで発見し、 その状態を治療した場合、スクリーニングを受けずに、 症状があって始めて見つかる人と比較して、

measurable and important health outcomesにおいて改 善されるというエビデンスがない」 • しかし、積極的に症例を見つけることが大事である (症状、所見、などを参考に)。 2.妊婦、妊娠を計画している女性全員にスクリーニン グすることには賛成しない • 賛成、反対の双方のエビデンスが不十分 • 甲状腺疾患の既往歴、家族歴、症状、所見、甲状腺 腫、自己免疫疾患、1型糖尿病を持つものには行う

(82)

臨床甲状腺家の反論

Gharib H. et al.

Subclinical Thyroid Dysfunction

A Joint Statement on Management from the American Association of Clinical Endocrinologists, the American Thyroid Association, and The Endocrine Society,

JCEM 2005

委員会スポンサーである3つの学会のメンバーの意見

1.routine screening for subclinical thyroid disease in the general population(全員にスクリーニングすべきである)

2. routine screening for subclinical thyroid disease in women who are pregnant or planning pregnancy(妊婦、妊娠を計画 している人はすべてスクリーニングすべきである)

3. routine treatment of patients with subclinical hypothyroidism with serum TSH levels of 4.5–10 mU/liter.(軽度であっても 潜在性甲状腺機能低下症は治療すべきである)

(83)

臨床甲状腺家の反論

ルーチンスクリーニング

を行うべきである

• 委員会は、aggressive case findingをするという考えで は一致しており、practicing clinician に勧告している。 したがって、臨床家がスクリーニングをしようとする気 持ちをそぐようなことをしてはいけない。 • 甲状腺機能低下症は連続的なものである。重症例は 粘液水腫になるが、潜在性甲状腺機能低下症はそれ と連続したものであり、何らかの悪影響があるはずで ある。 • したがって、明らかなエビデンスがない条件では、早 期に発見して、早期に治療をすべきであるという考え。

(84)

委員会(Surks)の反論

ルーチンスクリーニングに対して

• TSHの上昇が見つかるのは、60歳以上のものに多 く、そのほとんどが、ごく軽度のTSHの上昇である。 • そのような人は、他にも投薬を受けていることが多 く、臨床甲状腺家が言うように、スクリーニングして 見つかったごく経度の潜在性甲状腺機能低下症を 治療することになれば、すでに飲んでいる薬剤に加 えて甲状腺ホルモンが投与されることになる。 • Polypharmacy (過剰投与、多剤投与、薬物乱用)は, 薬を間違われたり、過剰に投与されたりすることに つながる。

(85)

委員会(Surks)の反論

ルーチントリートメントに対して

• 甲状腺ホルモン補充療法を受けている患者

の20%が潜在性機能亢進症になっている。

• Gharibらは、教育すればそのことは問題にならない ので、そのことを理由に治療を反対することにはなら ない、としているが、一般の医師がT3摂取率をいつ までも使用していたり、それを間違って理解している ことがあるように教育はそれほど簡単ではない。 • 効果が明らかではないのに、20%ものひとが潜在性 甲状腺機能亢進症になるのはいけない

(86)

臨床甲状腺家の反論

妊婦、妊娠を計画している女性は

全員スクリーングすべきである

• 潜在性甲状腺機能低下症は胎児や妊娠の経過に 悪影響がある(fairなエビデンス)としている • 妊娠可能年齢の女性においても潜在性甲状腺機 能低下症の頻度は高い(約5%) • そのような場合、胎児のsurvivalやoptimal brain developmentを危険にさらす • したがって、妊娠がわかったらすぐにTSHの測定を 行うべきである。

(87)

委員会(Surks)の反論

妊婦スクリーニングに対して

• 妊娠中は、甲状腺機能が正常であっても、

TSH, FT4, FT3は正常範囲を外れることが多

い。

(88)

健常妊婦の血清FT4値

(89)

健常妊婦の血清TSH値

(90)

委員会(Surks)の反論

妊婦スクリーニングに対して

• 妊娠中は、甲状腺機能が正常であっても、TSH, FT4, FT3は正常範囲を外れることが多い。 • 内分泌が専門でない医師によってスクリーニングさ れた場合、このことが大きな問題になる。 • 基準値から外れた値が出ると、内分泌の専門医で ない医師は、異常値ととらえることが多い。その結 果、不必要な紹介が増えるし、患者にも心配を与え てしまう。 • 米国内分泌学会も米国甲状腺学会も、妊娠、妊娠 を希望している女性すべてにスクリーニングを行う ことは支持していない。

(91)

Editorial:

Subclinical Thyroid Dysfunction

Can there be a consensus about the consensus?

Mathew D Ringel, JCEM 2005

委員会(Society Sponsored Panel)と臨床甲状腺家(3学会 のメンバー)の考え方には異なるところがある。

果たしてコンセンサスが得られるのか? コンセンサスの定義

1a. Harmony(調和), cooperation (協調)

1b. Group solidarity(連帯責任) in sentiment and belief 2a. General agreement, unanimity(合意), accord

2b. Collective(全体の) opinion. The judgment arrived at by most of those concerned

(92)

ポイント1;

構成しているメンバーの違い

委員会の構成メンバーの特徴と考え方

• 甲状腺の専門家ではない人が多く含まれている。した がってこの問題に対して過去のポジションによるバイ アスはかかっていない。 • 無症状の患者をスクリーニングすることが正当化され るかどうかをspecificallyに聞かれている • 甲状腺機能異常をもつほとんどの患者は、甲状腺の 専門家ではない医師に診療を受けるということを前提 としている

臨床甲状腺家

• これまで甲状腺の患者を診てきている先生方の集まり

(93)

ポイント2;

エビンデンスの捉え方の違い

委員会の考え方がおかしい(臨床甲状腺家の意見)

• a lack of evidence for benefit rather than evidence for a lack of benefit. This is not a new argument against

evidence-based medicine.

• 治療のベネフィットを示す明らかなエビデンスはない かも分からないが、それは治療のベネフィットがないと いうエビデンスを示しているわけではない

臨床甲状腺家として、以下のように考えたい

• there is fair evidence to favor therapy for patients with subclinical hypothyroidism and poor evidence of risk of therapy

• 治療することによって改善されるFairなエビデンスは ある、治療することのリスクはPoorである。

(94)

意見が合わないのは、

コンセンサスの定義2bに関係している

定義2b.

• Collective(全体の) opinion.

• The judgment arrived at by most of those concerned

• 委員会はいろんな分野の人が集まっている、した がって委員会の意見は、amalgamation( 意見の融 合)である • スポンサー(臨床甲状腺家)のほうは、実際に患者を 診ている甲状腺の専門家の集まりである、したがって、 anathema (呪い)である

(95)

Conclusion; This dilemma is a

clarion

for

further clinical research that fulfills the

epidemiologists’ high standards:

prospective long-term randomized studies

aimed at evaluating the efficacy of

treatment of subclinical thyroid dysfunction.

Until this occurs, we will continue to

vigorously debate this issue.

(96)

スクリーニングに対する各学会の意見

方針をだしている学会 スクリーニングの方法 米国甲状腺学会 35才以上の男女、5年ごと 米国臨床内分泌学会 高齢者、特に女性 米国病理学会 何らかの訴えがあって受診した50才以上の女性、 高齢の入院患者全員、少なくとも5年毎 米国家庭医学会 60才以上の患者 米国産婦人科学会 自己免疫疾患をもっている、甲状腺疾患の家族 歴があるひと、スクリーニングは19才から始める 内科学会 甲状腺疾患を疑うようなincidental finding をもっている50才以上の女性 予防医学協会 方針を出すに必要なエビデンスがない

Royal College of Physician 健康成人までスクリーニングするのは不当であ

(97)

スクリーニングが

必要とされているもの

• 35歳以上の女性、5年に一度 • 65歳以上の男性 • 妊婦 (ただし十分な知識のある医師によって) さらに • 妊娠希望の女性 • 自己免疫疾患をもつもの • 甲状腺疾患の家族歴があるもの

(98)

第三部

マネージメント

実地医家はどのように対応すればいいか

エビデンス・レポートをうけてだされた

Subclinical Thyroid Disease Clinical Applications Col NF, Surks MI, Daniels GH. JAMA 291:239, 2004

を中心に

潜在性甲状腺機能低下症 潜在性甲状腺機能亢進症

(99)
(100)

血清TSH >4.5mlu/L 潜在性 甲状腺 機能低下症 スクリーニングでTSH上昇が発見されたとき 本当に甲状腺の異常か? 甲状腺以外の原因でTSHが上昇しているのではないか? 原因は? 治療が必要な状態はないか? などを同時に考えて、診断、治療を進めるが、ステップバイス テップ方式で考えると、 TSHが著しく高値であれば、 すぐにFT4を測定し、治療 を開始する。そうでない場合は、

(101)

血清TSH >4.5mlu/L 2-12週後にTSH再検する、 FT4も同時に測定 潜在性 甲状腺 機能低下症 TSHが著しく高値であれば、 すぐにFT4を測定し、治療 を開始する

(102)

血清TSH >4.5mlu/L 血清TSH基準値内 (0.45~4.5mlu/L)? 2-12週後にTSH再検する、 FT4も同時に測定 6-12ヵ月後毎に 経過観察、数年間 血清TSH 4.5~10mlu/L Yes No 血清TSH >10mlu/L 潜在性 甲状腺 機能低下症 TSHが著しく高値であれば、 すぐにFT4を測定し、治療

(103)

血清TSH >4.5mlu/L 血清TSH基準値内 (0.45~4.5mlu/L)? 2-12週後にTSH再検する、 FT4も同時に測定 6-12ヵ月後毎に 経過観察、数年間 血清TSH 4.5~10mlu/L FT4低値 (0.8ng/dl)? (<0.8ng/dl)?FT4低値 L-T4で治療 L-T4で治療 Yes Yes Yes No No No 血清TSH >10mlu/L 潜在性 甲状腺 機能低下症 FT4低値であれば、 原因を調べて治療する

(104)

血清TSH >4.5mlu/L 血清TSH基準値内 (0.45~4.5mlu/L)? 2-12週後にTSH再検する、 FT4も同時に測定 6-12ヵ月後毎に 経過観察、数年間 血清TSH 4.5~10mlu/L FT4低値 (0.8ng/dl)? (<0.8ng/dl)?FT4低値 L-T4で治療 L-T4で治療 Yes Yes Yes No No No 血清TSH >10mlu/L 潜在性 甲状腺 機能低下症 FT4が正常範囲のとき 潜在性甲状腺機能低下症ということになる • 本当に潜在性甲状腺機能低下症か? • 潜在性甲状腺機能低下症の原因は?

(105)

本当に

潜在性甲状腺機能低下症か?

以下のTSH値上昇とは区別する

• NTIからの回復期の一時的なTSHの上昇 • 薬剤性(メトクロプラミド、ドンペリドン服用中)プリンペラン、ナウゼリン • 破壊性甲状腺炎からの回復期 • TSH測定に関する干渉物質の存在(HAMAなど) • 中枢性甲状腺機能低下症(FT4は通常低値) • リコンビナントヒューマンTSHの注射をうけているもの • TSH産生腫瘍、甲状腺ホルモン不応症 • うつ状態

(106)

潜在性甲状腺機能低下症の

原因は?

• 橋本病 • バセドウ病治療後 (アイソトープ治療,手術治療、抗甲状腺薬治療) • 甲状腺機能低下症にたいする不十分な補充療法 • ヨード過剰(海藻類摂取過剰、ヨードを含む薬剤、造影剤) • 炭酸リチウム治療 • 頚部外照射後 • 原因不明?

(107)

血清TSH >4.5mlu/L 血清TSH基準値内 (0.45~4.5mlu/L)? 2-12週後にTSH再検する、 FT4も同時に測定 6-12ヵ月後毎に 経過観察、数年間 血清TSH 4.5~10mlu/L FT4低値 (0.8ng/dl)? (<0.8ng/dl)?FT4低値 L-T4で治療 L-T4で治療 Yes Yes Yes No No No 血清TSH >10mlu/L 潜在性 甲状腺 機能低下症 潜在性甲状腺機能低下症であることが明らかになった ヨード過剰の場合は、ヨード制限 この条件で、治療が必要なものは?

(108)

血清TSH >4.5mlu/L 血清TSH基準値内 (0.45~4.5mlu/L)? 2-12週後にTSH再検する、 FT4も同時に測定 6-12ヵ月後毎に 経過観察、数年間 血清TSH 4.5~10mlu/L FT4低値 (0.8ng/dl)? (<0.8ng/dl)?FT4低値 妊娠あるいは 妊娠を検討 L-T4で治療 L-T4で治療 妊娠あるいは 妊娠を検討 他の臨床所見 を参考に治療 を考える 治療する? Yes Yes Yes Yes No No No No No Yes 血清TSH >10mlu/L 潜在性 甲状腺 機能低下症 どのようなときに治療するのか?

(109)

TSH10μU/ml以下であるが

治療を試みても良いと考えられているもの

甲状腺機能低下症と一致する症状のあ

るもの

に加えて

排卵異常を伴う不妊患者

高コレステロール血症

甲状腺腫が大きいもの

抗甲状腺抗体が陽性例

(110)

血清TSH >4.5mlu/L 血清TSH基準値内 (0.45~4.5mlu/L)? 2-12週後にTSH再検する、 FT4も同時に測定 6-12ヵ月後毎に 経過観察、数年間 血清TSH 4.5~10mlu/L FT4低値 (0.8ng/dl)? (<0.8ng/dl)?FT4低値 妊娠あるいは 妊娠を検討 L-T4で治療 L-T4で治療 妊娠あるいは 妊娠を検討 定期的に観察しながら L-T4治療を考慮 甲状腺機能低下症に 一致する症状、所見 6-12ヶ月毎に 血清TSHを測定 他の臨床所見 を参考に治療 を考える Yes Yes Yes Yes Yes No No No No No No Yes 血清TSH >10mlu/L 潜在性 甲状腺 機能低下症 いつまで治療を続けるのか?

(111)

TSH4.5-10μU/mlで治療を始めたとき

いつまで治療を続けるのか?

• 数ヶ月間治療する • 治療を継続するかどうかは、症状が明らかに改善 したときである • 症状の改善が軽度の場合、薬を続けるかどうかは、 不便さ、費用、治療することによるリスクとのバラ ンスである。 • 気をつけないといけないのは、治療を継続するこ とにベネフィットがあるというエビデンスがないので、 薬の治療効果なのか、プラセボ効果なのかを見分 ける必要がある。

(112)
(113)

血清TSH <0.45mlu/L 潜在性 甲状腺 機能亢進症 最初にチェックするポイントは? スクリーニングでTSH低値が発見されたとき 本当に甲状腺の異常によるものか? 原因は? 治療が必要な状態か? を同時に考えて、診断、治療を進めるが、

(114)

血清TSH <0.45mlu/L 心疾患の症状、所見 (うっ血性心不全、心房細動、不整脈 Yes No 潜在性 甲状腺 機能亢進症

(115)

血清TSH <0.45mlu/L 心疾患の症状、所見 (うっ血性心不全、心房細動、不整脈 2週間以内にTSH再検する FT4、T3(FT3)も同時に Yes No 3-12週間以内にTSH再検する FT4、T3(FT3)も同時に 潜在性 甲状腺 機能亢進症

(116)

血清TSH <0.45mlu/L 心疾患の症状、所見 (うっ血性心不全、心房細動、不整脈 2週間以内にTSH再検する FT4、T3(FT3)も同時に FT4あるいはT3高値 治療する Yes Yes No No 3-12週間以内にTSH再検する FT4、T3(FT3)も同時に 潜在性 甲状腺 機能亢進症

(117)

血清TSH <0.45mlu/L 心疾患の症状、所見 (うっ血性心不全、心房細動、不整脈 2週間以内にTSH再検する FT4、T3(FT3)も同時に FT4あるいはT3高値 血清TSH基準値内 (0.45~4.5mlu/L)? 12ヶ月毎、症状発現 時にTSHを測定する 治療する Yes Yes Yes No No No 3-12週間以内にTSH再検する FT4、T3(FT3)も同時に 潜在性 甲状腺 機能亢進症

(118)

血清TSH <0.45mlu/L 心疾患の症状、所見 (うっ血性心不全、心房細動、不整脈 2週間以内にTSH再検する FT4、T3(FT3)も同時に FT4あるいはT3高値 血清TSH基準値内 (0.45~4.5mlu/L)? 12ヶ月毎、症状発現 時にTSHを測定する 治療する Yes Yes Yes No No No 3-12週間以内にTSH再検する FT4、T3(FT3)も同時に 血清TSH 0.1~0.45 mlu/L 血清TSH <0.1 mlu/L 潜在性 甲状腺 機能亢進症 甲状腺ホルモン基準値内、TSH低値で 潜在性甲状腺機能亢進症ということになるが 本当に潜在性甲状腺機能低下症?

(119)

本当に

潜在性甲状腺機能亢進症?

他の原因によるTSH低値ではないかを考える

• Nonthyroidal Illness; NTI

• 妊娠中

• 中枢性甲状腺機能低下症

(120)

血清TSH <0.45mlu/L 心疾患の症状、所見 (うっ血性心不全、心房細動、不整脈 2週間以内にTSH再検する FT4、T3(FT3)も同時に FT4あるいはT3高値 血清TSH基準値内 (0.45~4.5mlu/L)? 12ヶ月毎、症状発現 時にTSHを測定する 治療する Yes Yes Yes No No No 3-12週間以内にTSH再検する FT4、T3(FT3)も同時に 血清TSH 0.1~0.45 mlu/L 血清TSH <0.1 mlu/L 潜在性 甲状腺 機能亢進症 潜在性甲状腺機能亢進症である 原因は? 一過性のものではないか?

(121)

潜在性甲状腺機能亢進症の原因?

外因性

甲状腺ホルモン補充療法中(投与過剰) 甲状腺ホルモン抑制療法中

内因性

機能性結節性甲状腺腫 プランマー病 腺腫様甲状腺腫 バセドウ病 アイソトープ治療後 手術治療後 ユーサイロイドグレーブス病

(122)

一過性のTSH低値をおこすもの

破壊性甲状腺中毒症

(無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎)

• 甲状腺中毒症治療中、治療後

(123)

血清TSH <0.45mlu/L 心疾患の症状、所見 (うっ血性心不全、心房細動、不整脈 2週間以内にTSH再検する FT4、T3(FT3)も同時に FT4あるいはT3高値 血清TSH基準値内 (0.45~4.5mlu/L)? 12ヶ月毎、症状発現 時にTSHを測定する 治療する Yes Yes Yes No No No 3-12週間以内にTSH再検する FT4、T3(FT3)も同時に 血清TSH 0.1~0.45 mlu/L 血清TSH <0.1 mlu/L 潜在性 甲状腺 機能亢進症 ?

(124)

血清TSH <0.45mlu/L 心疾患の症状、所見 (うっ血性心不全、心房細動、不整脈 2週間以内にTSH再検する FT4、T3(FT3)も同時に FT4あるいはT3高値 血清TSH基準値内 (0.45~4.5mlu/L)? 12ヶ月毎、症状発現 時にTSHを測定する 治療する 経過観察 治療は任意 バセドウ病 あるいはAFTN 治療を考える Yes Yes Yes Yes Yes No No No No No 3-12週間以内にTSH再検する FT4、T3(FT3)も同時に 原因を調べる (放射性ヨード摂取率、シンチグラム) 心疾患、骨粗鬆症 60歳以上、女性ホルモン欠乏 血清TSH 0.1~0.45 mlu/L 経過観察 治療は任意 血清TSH <0.1 mlu/L 潜在性 甲状腺 機能亢進症 ?

(125)

血清TSH <0.45mlu/L 心疾患の症状、所見 (うっ血性心不全、心房細動、不整脈 2週間以内にTSH再検する FT4、T3(FT3)も同時に FT4あるいはT3高値 血清TSH基準値内 (0.45~4.5mlu/L)? 12ヶ月毎、症状発現 時にTSHを測定する 治療する 心疾患、骨粗鬆症 機能亢進症の症状 経過観察 治療は任意 バセドウ病 あるいはAFTN 治療を考える 原因を調べる 治療を考える Yes Yes Yes Yes Yes No No No No No No Yes 3-12週間以内にTSH再検する FT4、T3(FT3)も同時に 原因を調べる (放射性ヨード摂取率、シンチグラム) 3-12ヵ月後、症状 発現時に経過観察 心疾患、骨粗鬆症 60歳以上、女性ホルモン欠乏 血清TSH 0.1~0.45 mlu/L 経過観察 治療は任意 血清TSH <0.1 mlu/L 潜在性 甲状腺 機能亢進症

(126)

ご清聴有難うございました

This dilemma is a clarion for further clinical research that fulfills the epidemiologists’ high standards: prospective

long-term randomized studies aimed at evaluating

the efficacy of treatment of subclinical thyroid dysfunction. Until this occurs, we will continue to vigorously debate this

issue.

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