• 検索結果がありません。

社会科における教:育実習の現状と問題点

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "社会科における教:育実習の現状と問題点"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

35

社会科における教:育実習の現状と問題点

社会科教育研究室  中  川  浩  一

 現在,3年次生を対象にして実施されている社会科の教育実習は,他の教科からも指摘があるだろう と思われる数多くの問題点を,内に蔵し,ている。しかし,それらの多くは,社会科なるがゆえに生ずる ものであるよりは,現行の教育実習体制とのかかわりで生じるものである場合が多いといわざるを得な い。教科別に,教育実習の問題点を抽出することに,どれだけの意義があるのだろうか。いいかえるな らば,教育実習体制に抜本的な改革が加えられるなら,おのずから解消することがらが,社会科の問題 点といわれるものの大半であると思われる。それゆえ,以下の記述にあたっては,他の教科からも同じ ような指摘がなされるであろうとの前提をたてておこうQ

 なお,以下の記述は,昭和54年11月22日に,会場を付属小学校と定め,大学における教科教育 担当者としては,筆者(中川),付属小学校からは,平山文夫,小室昭,片野稜威雄,介川文雄の四教 官,付属中学校からは,鈴木康司,二二茂樹,圷拓男の三教宮が参加して行なった意見交換会において 話し合われたことがらを,筆者の責任において,統括したものである。

         1.教職専門科目と教育実習との相互関連の稀薄性

 教育学部在籍の学生は,教職専門科目の履修を卒業の条件として課せられている。その点が,非教員 養成学部在籍学生との大きな相違点となっている。けれども,教職専門科目は,卒業までにその全てを 履修すればよく,教育実習とは直接的なかかわりを有しない。そのため,教職専門科目を充分に履修す ることなしに,教育実習を行なってしまうという不合理が,ときには生じる結果になってしまう。この ことにかかわる具体的な実例を,次にあげてみよう。

 筆者の担当授業科目のひとつに,「社会教材研究」がある。この講義は,前期,後期に同一内容でく り返して行なわれてきた。ところが,その後期の講義にすら,小学校教員養成課程の3年次生,4年次 生が少なからず受講学生として参加している。4年次学生の場合には,特殊な場合を除けば,基本実習

はもち論,副専実習すら終ったはずである。3年次学生であっても,基本実習はそれを終了したか,あ るいは開講とほぼ同時に後半基本実習のために,公立小学校での実習におもむいてしまう。

 このような状態であるのだから,これら3・4年次生は,小学校教員の1級免許状取得に要する必修 単位を習得することなしに,1級免許状の取得を前提とした教育実習を行なったことになる。まこと,

矛盾の極致というべきだろう。もっともより厳密にいうならば,これらの学生の全てが,教育実習にあ

たって,社会科の学習指導を行なったわけではない。けれども,実態調査を行なってみると,「社会教

材研究」を履修することなしに,教育実習では,社会科の学習指導を行なった学生がいく人も存在する

(2)

36 茨城大学教育学二二育研究所紀要,第12号,特集

のが,実情なのである。

 このように考えてくると,教育実習がよりよき効果をあげるためには,基本教育実習が4回目と指定 された場合を除けば小学校教員養成課程の学生については2年次修了時までに,「教材研究」の単位を 習得させるべきであろう。もっとも,そのことへの前提としては,「教材研究」の内容が,教育実習に

当たって有効に作用しなければならない。

 ところで,現在の単位履修システムでは,2年次修了までに「教材研究」を,全ての教科について履 修させることは不可能である。対策には,2っの方法が考えられる。第1は,「教材研究」を1年次生 でも履修できるように努めることである。そうすれば,2年次修了までに,小学校教員養成課程の学生 が,8っの「教材研究」を履修しうるだろう。もっとも,そのことの実現には,教養部との交渉を必要

とするから,実現はかなりむずかしいかもしれない。

 第2には,教育実習に当たって,「教材研究」未履修の教科についての実習は行なわせないという方 法が考えられる。この場合のほうが,第1の方法よりは実現しやすいだろう。しかし実際場面において は,特定学級に配当された教育実習生の既習得「教材研究」がアンバランスであることから,だれもが 実習不可となる教科がでる事例も生じかねない。

 3年次になって履修する「教材研究」が,前期で終了する場含には,当該実習生が前半基本実習を,

第4回忌行なうことを条件にして習得させうるがf現在,前期で「教材研究」を終りうるのは,国語,

社会,音楽の三教科に限られるという事実に,留意する必要があるだろう。

 臨急実習として小学校での教育実習を希望する中学校教員養成課程の学生に対しても,「教材研究」

は,3年次修了までに履修するようにしむけることが望まれる。中学校教員養成課程はもち論,小学校 教員養成課程の学生であっても,4年次でなお「教材研究」を履修しうるような現行システムは,改め る必要があると思われる。

 社会科の場合には,小学校教員養成課程の学生に対しては,「社:会教材研究」は必ず2年次において 履修するように,ガイダンスを加えてきたが,昭和55年度からは,2年次の後期にクラス指定を行な ってその履修を義務づけ,未履修者については,3年次前期に履修しなければ,3年次での教育実習を 行なわせない惜置をとるよう研究を進めている。

 同様な対応は,申学校教員養成課程の学生についても必要である。申学校教員養成課程の場合には,

「教科教育法」は,3年次での履修となる。ところが,基本教育実習も3年次で行なわれている。その ため,実習期間が前期となる学生の場合には,年間30〜34時間程度の「社会科教育法」を,僅か6 時間程度受講しただけで,教育実習にでてしまう。これでは,「社会科教育法」が教育実習に際してほ

とんど実効を持ちえぬことになる。

 「社会科教育法」の履修不充分への対策としては,二つの方法が考えられる。第1は,基本教育実習 を,3年次後期か4年忌前期に行なわせるものである。この場合には,卒業研究にあてる時間との競合 を考えなくてはならない。さらに加えて,副專実習を希望する場合には,4年次に6週間を教育実習に 割いてしまう学生が,中学校教員養成課程4年次生の半ばをしめることになる。そのことの良し悪しに 対しては,多くの議論がでることだろう。

 第2の方法としては,「社会科教育法」の履修を中学校教員養成課程の学生については,2年次と指

定し,未履修の場合には,基本実習を4年次にくり下げる方法が考えられる。こちらの場合には,時間

(3)

中川:社会科における教育実習の現状と問題点

37

割の手直しのみで実現しうるから,現実性が強いはずである。

 現在では,中学校教員養成課程の学生に対しては,2年次で「社会教材研究」を履修したものを,前 期基本実習の有資格者とし,未履修者に対しては,3年次前期において「社会教材研究」も履修するよ うに勧告してきた。しかしこの方法については,「社会教材研究」が中学校教員養成課程の学生にとっ ては必修単位でないところに,問題点を有している。55年度においては,2年次生に「社会科教育法」

を課する方向で,対策を研究しっっあると記しておこう。

       2. 実習実施期間選定にかかわる問題

 先に記した合同研究会において,付属中学校からの質問として,前期,後期の教育実習に配当する学 生を,どのようにして定めているのかという問いかけがあった。このことに関しては,筆者の側から,

そのことは原則として学生間での話し合いにまかせて,大学教官の側からは,それぞれの期への配当人 数,男女比のほかは,なんら規制していないと返答した。

 そのことに対して,付属中学校の側からは,学生の希望を重視すべきであり,機械的な配当は行なわ ないようにしてほしいとの強い要望がよせられた。このことを,昭和54年度の実習生についてみてい くならば,前期,あるいは後期への配当は,学生番号を指標として,機械的になされていたのが実情で

あった。

 要望に関連して,付属中学校からなされた説明によると,前期に配当された学生の中で,実習成績が 優秀なものは,前期での実習を特に希望したものである場合が多い由である。すでに記したように,3 年次生を対象とする中学校での前期基本実習に参加する学生は,「社会科教育法」をほとんど学習する

ことなしに実習授業を担当することになる。こうした場合,前期に実習することを自ら希望した学生は

「社会科教育法」とはかかわりなく,創意工夫をこらし,ことに超そうとする傾向があるのに対して,

学生番号による機械的な振りわけ,くじ引,その他の他律的な組みわけによって,機械的なふりわけと なった学生の場合には,「社会科教育法」の学習不足とも関連してか,不充分な学習指導で終ってしま

うように思われるとの説明が,付属中学校教宮からなされもした。

 この問題については,大学連句の側では,従前なにも考えてはいなかった。そうして,付属中学校教 官による指摘に対しては,  一一一理あるものと考えざるを得ない。けれども,学生の希望をいれて,前期,

後期にふりわけただけでは,問題を解決しえない場合がある事実に,留意すべきだろう。

 前期を希望する学生が1人もでない場合には,どうするかという問題が,後に残るからであるeそれ ゆえ,抜本的な対策としては,前項に指摘した中学校教員養成課程学生に対応する二つの方法について,

そのいずれかを実行に移す措置が望まれる。

 このことに関連づけて,実習生の教科専門科目に対する力不足についてなんらかの措置が必要になっ てくる事実を,あえて指摘しておこう。

 筆者には,現在,県立高等学校に在籍する長男がある。公立小学校から付属申学校に進み,ついで県 立高等学校に入学した。付属中学校3年に在籍中のことである。教育実習期間中のある日,夕食の話題

として,突然, 茨大の学生は優秀なのか と質問した。問いかけのことばに,いささか毒があるよう

に感じられて,筆者にとっては,カンにさわるところがあったので, 県立高校にいったら,先生に質

問してみろ。成績上位でなければ入学試験に合格しないといわれるぞ と答えるだけにした。このこと

(4)

38 茨城大学教育学部教育研究所紀要,第12号,特集

に対する折り返しが, 教生をみていると信じられない1}との捨てぜりふであった。

 だが,これには筆者にも,思いあたる点がいくつもある。教育実習に際しての研究授業を参観してみ ると,教材研究不充分としか批評しえない学生が目にっきすぎる。そのことは,教科専門科鼠の履修不 充分なまま,教育実習に当たる学生が多い事実と強くかかわりもするであろう。

 「社会教材研究」を担当してみると,中学校教員養成課程の2年次生で,これを履修する他教科在籍 者がいく人も存在する事実に気づかされる。ひとり「社会教材研究」に,それは限らないはずである。

 そうして非専攻科目の「教材研究」の単位習得がマイナス要因となり,教科専門の力不足がおこると も考えられる。とはいっても,自学自習によって,教科専門にかかわる素養をはぐくむことは,理論的 には可能であるのだが,現在のように,副専はおろか,副副専の免許状取得に熱申して,小間切的な単 位取得におちこむ結果が,教科専門科目での力不足を招き,ひいては付属中学校生徒にすらなめられる

という不始末を生みだすものと思われる。

 中学校教員養成課程の学生に対しては,2年次における非専門分野での「教材研究」と「教科専門科 目」の単位取得は禁止すべきだろう。自らの専攻教科をより大事にする学生を育てる中から,教育実習 の実効もあがるのだと考えたい。

       3. 副専実習にかかわる問題点

 3年次での基本教育実習に対して,4年次生に対する三下教育実習も,現状では多くの問題をt内に 蔵している。このことに関連して,小学校教員養成課程の副専教育実習では,実習に参加する条件とし ての取得単位の基準を大巾にひきあげる必要があると考えられる。教育職員免許法によれば,中学校教 員の一級免許状(社会)にかかわる教科専門科目は,5教科目20単位で最低条件をみたしうる。ほか に20単位の任意取得単位があればよいことになる。

 ところで,小学校教員養成課程の学生では,小学校教員一級免許状取得に際して,8つの教材研究と 8っの教科専門科目についての単位取得が必要となり,そのことのためにかなりの精力をとられるのに 加えて,中学校での免許状を二教科もとろうとする者もでる結果,三三実習に当たっての授業担当科目

に対する学力がますます不充分になってしまう。

 こうした状況の中で,副專実習生が担当する社会科の学習内容は,地理的分野と歴史的分野の2つと なる。第3学年に配当される公民的分野については,実習校での方針が3年生への実習生配当はできる だけさけようとするがために,現実には実習の対象とはなりにくい。

 それゆえ,副専実習に当たっては,3年次までに,少なくとも,地理的分野と歴史的分野の指導にか かわる教科専門科目は,法で定めた最低基準をこえる範囲で履修済であることが望まれよう。実際には より大巾な単位取得を,実習の基礎条件とすべきである。

 茨城県では,中学校社会科は,原則としてπ型の学習構造をとっている。そのため,同一学年で,地 理的分野と歴史的分野の双方について,学習指導を行なわなければならない。こうした状況の中では,

社会科にかかわる教科専門科目の中で,とくに地理学と歴史学についての巾広い理解が必要とされるわ けであり,それは最低基準としての14単位(歴史学8単位,地理学6単位)の枠を,大きくこえるも のであることが望まれる。

 現在では,副専実習の希望者が多い反面,実習生を受入れる教育実習校の不足が問題となっている。

(5)

中川 社会科における教育実習の現状と問題点 39

とくに社会科の場合には,社会選修の学生に加えて,教育学専修,教育心理専修などの学生が,教育実 習生となる場合が多い。さらに加えて,教育実習校が帰省実習として受け入れる自校卒業生が存在する がために,年々その依頼に苦しんでぎた。

 この場合,名実ともに備つた力量のある学生ならば,大学の側でも万難を排して実習校の開拓にあた らなければならないのだが,実情は果たして,いかがなものであるだろうか。

 副専実習校を訪問し,研究授業を参観したとき,実習生の專門学力不足に当惑させられた経験を,筆 者は残念ながら持ち合せている。力量不足の教師を乱造することは,教員養成を使命とする専門学部と しては,これをさけるべきであろう。副専実習に際しての教科専門科目の最低限度を大巾に引きあげて 実習生をセレクトする措置が,必要とされていると考えたい。

〔付  記〕

①付属中学校からは,年間配当教育実習生が12名前後で,付属中学校のクラス数が1学年4クラス  で全校12クラスならば,1クラス1名の教生配置で,1回の実習ですむはずであり,従って前期,

 後期にわける必要はないという意見が大学側にある由だが,それは実情にてらして考えると,良案と  はいいがたいとの意見が述べられた。

  現在では,2回にわけているがゆえに,1人の教生が,同一内容の授業を2クラスで実習すること  ができ,最初のクラスで意のごとく進められなかった部分を修正し,よりよい授業つくりをなしえて  いる事実を強く認識してほしいとの説明があった。

②付属小学校からは,年間4回の基本教育実習は,決して望しいものではなく,学校運営にあたって  多くの無理を生じてはいるけれど,3回にすることは学級数,さらには指導教官1人あたりの受持学  生数からみて,不可能というほかないとの説明があった。

③教科教育担当である筆者をまじえて,教育学部にあって,学生が教師という職業のもつ社会的な役  わり,教職の重要性を自覚する機会は,まさに教育実習をおいて,ほかにはありえないという共通の  確認があった。

  最近,ともすると,教育学部であるにもかかわらず,師範学校ではないという大義名分をかかげ,

 教育実習の意義を過小評価する意見が,大学側に認められるが,そのことは教育学部の存在意義をな  いがしろにするように思われる。教育学部は,文学部や理学部の代用品であってはならず,また代用  品回して入学した学生であっても,教育実習を経験する中から,社会的使命にめざめるものが輩出し  ている実情にかんがみ,教育実習には,より一層の努力と創意を傾注し,加えて大学側と付属学校と  が,より緊密な連絡をとって,ことに対処していく必要が話し合われた。

  なお,これを機会に,教科教育担当教官,付属小学校の社会科関係教官,付属中学校の社会科担当

 教官による合同研究会を,定期的に關催することが申し合わされている事実を記しておこう。

参照

関連したドキュメント

B001-2

専攻の枠を越えて自由な教育と研究を行える よう,教官は自然科学研究科棟に居住して学

現実感のもてる問題場面からスタートし,問題 場面を自らの考えや表現を用いて表し,教師の

工学部の川西琢也助教授が「米 国におけるファカルティディベ ロップメントと遠隔地 学習の実 態」について,また医学系研究科

 学部生の頃、教育実習で当時東京で唯一手話を幼児期から用いていたろう学校に配

 学部生の頃、教育実習で当時東京で唯一手話を幼児期から用いていたろう学校に配

具体的な取組の 状況とその効果 に対する評価.

 履修できる科目は、所属学部で開講する、教育職員免許状取得のために必要な『教科及び