茨城大学教育学部紀要(教育科学)29号(1980) 151−164 151
マイクロ・ティーチングにおけるフランダースの授業分析法の検討
* **
菅井勝雄・川崎弘子・米沢真理子
(1979年10月17日受理)
On Franders Teaching Analysis Method in Micro−teaching
* **
Katsuo SuGA1 Hiroko KAwAsAKI, Mariko YoNEzAwA
(Received October 17,1979)
〔1〕は じ めに
現在の教員養成にかかわる重要な問題の一つに,教育実習問題がある。昨今の教員志望者の増大現 象などにみられるごとく,教育実習生の量的増加にともない,教育実習校の確保など教育実習運営に 関する問題とともに,教育実習生の質的維持・向上の問題が,先の審議会報告(昭和53年9月)など にもみられる通り,緊急の問題として提起されている。
ことに,後者に関して,専門職としての教職には,これまでのような専門的知識の習得に加えて,
それを実践的に縦横に応用できる技術的能力の育成が要求されている。
つまり,専門職としての教師の能力(teacher competen(y)を,専門的知識にかかわる能力
(knowledge competency)と実践的な能力(performance competency)に分けるとき,実践的な 能力に関する訓練面での改善の必要性が,わが国の教師教育改善に関する重要な課題の一つとしてク
ローズ・アップされてきている。
そこで,今日の教員養成という,「教師教育のプログラム」の一環の中で,教育実習に先だつ「事 前プログラム」として,とくに教授スキルを中心とした技術的能力の育成をめざした何らかのカリキ
ユラムが,学部段階において準備されることも必要となってくる。
そのためには,「教授スキルの訓練プログラム」を中心とした,体系的な「教師教育のプログラム」
が研究開発されなけれぽならないことは,いうまでもない。
こうした情勢に鑑み,教員養成系大学・学部を中心に設置されている教育工学センターにおいては,
その全国的な組識である国立大学教育工学センター協議会のもとに,昭和54年度から3年計画で,
教育工学的手法を駆使して,この方面の研究開発を総力をあげて実施していくことになった。
本学教育工学センターも,東京学芸大を中心とした関東ブロックの一翼を荷い,研究を進めていく 予定である。
そこで,こうした背景のもとで,本学教育工学センターにおける教授スキル訓練プログラムに関す る本格的な研究を始める前の予備的研究として,マイクロ・ティーヶングを実験的に試み,その実際 の効果の吟味のための分析・評価法の検討を行ない問題点を探ってみることにする。
現在,よく用いられる評価法による評価は,簡単で便利であり,しかもマイクロ・ティーチングな
*茨城県協和町新治小学校
**茨城県牛久町牛久第コ」・学校
どにおいて使用されるとき,学生に授業に対する関心をもたせ,また授業の見方を育成もすると考え られるが,かなり主観的である。総合的評価という観点からは,これだけでは不十分であり,より客 観的で定量的な分析に基づく評価法の開発が今日期待されている。
本論文においては,米国における授業研究で定評があり,最もよく用いられているフランダース
(N・A・Flanders)の分析法(相互作用分析interaction analysis,1968年開発)をマイクロ・
ティーチングの分析・評価に実地に採用してみて,その可能性と限界を探ってみることを目的とする。
その方法を,わが国の授業研究の分析に適用した例はあるが,マイクロティーチングに適用した例 は,まだ見当らない。
この目的のために,マイクロ・ティーチングにおける授業時間は,少々長めの20分程度とする。
フランダースの分析には,最小限必要な時間が20分だからである。
訓練すべき特定の教授スキルを必ずしも指定できない今日,この程度の時間で実施してみるのは,む しろ適切であろう。
方法論上,マイクロ・ティーチング(小規模授業ないし模擬授業と訳される)がもつ最大の問題点 は,現実の学校の普通授業や教育実習の授業と異なり,生徒になるのが学部学生で本ものでないとい
うことであろう。
今回のマイクロ・ティーチングにおいては,学生には,教師として教授スキルの訓練だけでなく,生 徒としての訓練,つまり子ども理解を通して生徒になりきり行動するように努めることを要求した。
こうすることによって,児童心理学や発達心理学などの専門的知識の応用という意味をもたせるこ ともできるであろう。そこで,授業中,教師には生徒指名を,生徒には発言を許し,できるだけ実際 の授業に近い形にもってゆくことにした。
〔2〕 実施方法および手順
図1の流れ図のごとく,(a)と(b)という2段階にわたって実施した。
学部学生向けの「教育工学」の授業の一環として,マイクロ・ティーチングの実験を行なった。
昭和53年11月9日の講義のときに,マイクロティーチングの実施上,心要最小限のオリエンテー を作成する作業に入ってもらうことにした。そして,次週の時間(11月16日)にマイクロ・ティ
(板書,発問,内容,問合,KR)
妻誘
の 籍
蓮
す 指 誓 牽 謡 誉 喬 葦 評 フィードパノク 1年生S君の授業 一 こよる評価
ラ 禽 秀 告 法 ζ 法 缶
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T 容 作 君 蒙 晃 〜
充 よ
成 の る 生 る る
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提 提 授 評 の 評 の 評
ン 示 出 業 価 授 価 授 価 3年生Mさんの授業 評価表による評
業 業
㈲ 第1回目のマイクロティーチング (b)第2回目のマイクロティーチング
実施日 昭和53年11月16日(木)2限 実施日 昭和53年12月7日(木)2限
図1実施方法及び手順
菅井。川崎・米沢:マイクロ・ティーチソグにおけるフラソダースの授業分析法の検討 153
一チソグ実験を実施し,1年生,3年生,ベテラン教師という三人の授業にわたり,評価表による評 価をしてもらった。
これらの授業は,音声テープやVTRによって記録し,フランダースの分析法によって分析するのに 備えた。
以上が,(a)第1回目のマイクロ・ティーチング実験である。
教育実習未経験の1年生のS君,教育実習経験者の3年生のMさん,ベテランの内地留学のT先生,
各々三人の経験の差が,具体的な教授スキルにいかに反映しているかをみる試みである。
続いて,1年生のS君には,一週間にわたって(11月23日〜30日),自身のを含めた三人の 授業のVTR記録,評価表の結果を十分綿密にフィードバックした。ことに評価表による評価の結果 も,余りよくなかった板書のしかた,発問のしかた,問合のとり方,KRの与え方などに注目するよ うに指示した。他方,3年生のMさんの方には,フィード・ミックを全然与えない。
そこで,12月7日に(b)第2回目のマイクロ・ティーチング実験を行なった。1年生S君の授 業と3年生Mさんの授業を行ない,1回目と同様,各々,評価表による評価と,VTR・音声テープ による記録をとった。そして,最後にフランダースの分析法による分析を行なった。
これは,教授経験のない者が,マイクロ・ティーチソグ的訓練において,どう変るかをみるものであ り,マイクロ・ティーチングの訓練が,いかに有効であるかという問題にもつながっていくものであ
る。
教授スキル訓練システムとしてのマイクロ・ティーチソグは,一回の授業をするたびに,即時に十 分なフィードバックがなされるのが通常形態である。
以上を,次に要約してみよう。
(a) 第1回目のマイクロ・ティーチング
目 的:「教授経験の差が具体的教授スキルにいかにあらわれるかをみる。」
(評価表による評価およびフランダースの分析法において)
指導目標および内容 : 中学校理科「植物の冬こし(植物の紅葉)」の単元内容で「紅葉は何故お こるか」……植物の紅葉には,おもに気温や水分などの条件が関係するこ とに気づかせ,さらに,紅葉がおこるしくみ(葉の内部での変化)とそれ にともなう落葉について考えさせる。
指導方法および教材 : 各自の自由にまかせる。1年生S君…・・紅葉のカラー写真集とOHT
(Over Head Television)で提示,3年生Mさん……板書ともみじの実 物提示,ベテランT先生……あらかじめ字を書きこんだ紙片を黒板に貼り つつ提示。
教 師 役 :01年生S君(教育実習未経験;男)
03年生Mさん(教育実習経験;女)
○ベテラン丁先生(理科教育で内地留学:男)
生 徒 役 :「教育工学」受講学生,全て教育実習を経験した教育学科所属3,4年生。
(合計20名)
評価表の評価者: 上記学生20名および理科教育で内地留学の現職教員5名(計25名)
授業順序および所要時間:①1年生S君(20分)→②ベテラン丁先生(23分)→③3年生 Mさん(26分)
授 業 記 録 VTRおよび音声カセット・テープで収録
結 果 : 〔3〕結果と考察→参照
(b) 第2回目のマイクロ・ティーチング
目 的:「教授経験のないものが,マイクロ・ティーチング的訓練においてどう変る かをみる。」
(評価表による評価およびフランダースの分析法において)
指導目標および内容: 上記(a)の項に同じ
指導方法および教材: 上記(a)の項にS君,Mさん同じ(1年生S君…写真+OHT,
3年生Mさん……板書+もみじの実物)
教 師 役 : 1年生S君 3年生Mさん
生 徒 役 : 上記(a)のうち16名
評価表の評価者 : 学生16名および内地留学現職教員5名 計21名 授業順序および所要時間:①1年生S君(24分)→②3年生Mさん(24分)
記 録 上記(a)と同じ 結 果 : 〔3〕結果と考察→参照
〔3〕 結果と考察
(イ)評価表による評価結果と考察
評価表によるすべての授業にわたる評価結果を,図2にまとめて示した。
この評価表は,東工大の坂元氏使用のものを一部参考にして,作成した。(1〜9全体の雰囲気,
10〜20具体的教授スキル)
上段は(a)第一何目の授業の評価結果であり,左から右へ1年生S君,3年生Mさん,ベテラン T先生の授業の順に評価結果が示されている。同じように,下段は(b)第2回目の授業の評価結果 であり,1年生S君と3年生Mさんの授業に対する評価結果である。
そこで,以上のように各段を横にではなく,縦にみることによって,1年生S君の第1回目と第2 回目の評価とを比較できるし,同時に3年生Mさんの第1回目と第2回目とを比較することが可能で
ある。
評価表による評価は,本論の目的でもないので,全体を簡単にみてみることに留める。
○(a)第1回目の授業の評価者による評価結果は,「教授経」験の差が具体的な教授スキルにいかに あらわれるかをみる」ことを目的としている。評価者(学生20名,内留現職教員5名,計25名)に による結果は,一応数値上,経験がある者ほど,評価はよくなっている。ことにベテランT先生の授 業に対する評価は,前二者に対して圧倒的である。非のうちどころがないといえよう。
それに対して,実習未経験者のS君と,実習経験者のMさんの二人は,大体相似たパターンを示して いるようである。ことに授業の全体的雰囲気においてMさんの場合,「ていねい」であるという項目 の得点が高い。これは,Mさんが女性であり,S君が男性であるという性差からくるものかも知れな い。今回の「教育実験」においては,そこまでコントロールできなかった。
具体的な教授スキルにおいては,実習経験者の3年生Mさんに比較しても,未経験のS君の場合,板 書,間合いのとり方,統制(指示),発問のしかた,KR(Knowledge of Result;結果の知識の与え 方)などの項目において,評価のかなり劣る項目がある。逆に,この点からみて,教育実習の経験が
菅井・川崎・米沢:マイクロ・ティーチングにおけるフランダースの授業分析法の検討 155
かなりこれらの教授スキル習得に効果があると解釈することができよう。
1年生S君の1回目の評価結果 3年生Mさんの1回目の評価結果 ベテランT先生の1回目の評価結果
1.せわしい 落ち着いた 1.せわしい , 落ち着いた 1.せわしい 落ち着いた
@aたどたどしい スマートな 臥たどたどしい スマートな aたどたどしい スマートな( .
噛
@aつまらない 楽 し い aつまらない . 楽 し い aつまらない 楽 し い一
画 ■
覧ヘあり 4迫力なし 迫力あり 4.迫力なし 迫力あり
: 、 5」密度が薄い 密度が濃い 5,密度が薄い 密度が濃い
敦密度が薄い 密度が濃い
、
レ6難 わかりやすい α難 解 \ わかりやすい O難 解 わかりやすい
&退 屈 充実した &退 屈 . 充実した &退 屈 充実した 、 、 馬
。 、
蛾粗 い ていねい 9粗 い , ていねい a粗 い ていねい
@ ,
●
、 ⑪内容の精選
@
@
⑫流 れ ⑫流 、 ⑫流 れ 、
⑬資料挺示 ⑬資料提示 、 ⑬資料提示、
M板 書 ⑭板 書 /, ⑭板 書 、 噺
⑱発 問 ⑬発 問 1 ⑱発 問 、 ,
、
R教材の活用 ⑲教材の活用 ⑲教材の活用 ・
⑳K R ⑳K R ⑳K R
総平均(289):授業時間20分 総平均(ao5):授業時間26分 総平均(427):授業時間23分
1年生S君2回目の評価結果 3年生Mさん2回目の評価結果 1.せわしい 落ち着いた 1.せわしい , 落ち着いた
スマートな 2.たどたどしい , スマートな
aっまらない 楽 し い 3.つまらない 楽 し い二 1 4迫力なし 迫力あり 4迫力なし 迫力あり回 、
7.単 調 変化に富む 乞単 調 変化に富む
1
充実した &退 屈 充実 した 、 、 、 、 覧
9.粗 い ていねい 9粗 い ていねい
I目標提示 ⑩目標提示 ⑪内容の精選 ⑪内容の精選 、
K流 れ ⑫流 れ ≡≡
⑬資料提示 ⑬資料提示 〉
⑭板 書 M板 書 、
⑮言 語 ⑮言 語 1↑・
⑯間合 い ⑯間合 い
⑰統制(指示) ⑰統制(指示) , 憾発 問 ⑱発 問 も
⑲教材の活用 、u ⑲教材の活用 ・ ・
⑳ K R ⑳K R
総平均(3.21):24分 総平均(3.15);24分
図2 評価表による各授業の評価の結果
○(b)第2回目の実験の目的は,「教授経験のないものが,マイクロ・ティーチング的訓練におい てどう変るかをみる」ということである。下段の評価結果を参照すれぽよい。1年生S君には,綿密 なフィードバックを十分に与えて,再度授業をしてもらった。それに対して,実習経験者の3年生M さんには,何らのフィードバックも与えず,再度授業をしてもらった。その結果である。
縦にみて,第1回目と第2回目とを比較した場合,一応数値上,S君の場合もMさんの場合も,い ずれも評価がよくなっている。Mさんの場合,それ程でもないが, S君の伸びは大きい。そして,第
2回目の二人の評価,横に比較した場合,数値上わずかながら,S君がよくなっている。
教授経験が,これまでなかったS君が,マイクロ・ティーチング的訓練において,伸びていることが わかる。フィードバックを全然与えなかったMさんの場合,1回目と2回目の評価のパターンは,き
わめて似かよっている。また評価点の変化も認められない。
それに対して,S君の場合,全体として評価の良い方向に平行移動しているように見えるが,さらに 詳細に眺めると,1回目に悪い評価であったものが,2回目には良い評価に逆転している項目がある
のに気付く。例えば,このように大きく変化したのは,板書のしかたであり,かつまたKRの与え方 がある。これらは,いずれも十分フィードバヅクを与え,注意を喚起した教授スキルであり,その他
フィードバックを与えたものは,間合いのとり方や統制(指示)などの項目も伸びている。
ただし,発問の仕方だけは伸びていない。発問などは,さらに訓練や経験をつきなければ,良くなら ない教授スキルなのかも知れない。
しかしながら,以上の評価表による評価において,全体としては,フィードバックのあるマイクロ ティーチング訓練によって,教育実習と同じように,教授スキルを習得していくことが実証されたと みることができよう。
(ロ) フランダースの分析法による分析結果と考察
フランダースの授業分析法は,授業における教師と生徒の対人的相互作用を,とくに両者の言語行 動を中心にして分析してゆくものである。授業の雰囲気なども,こうした教師と生徒の対人的相互作 用からかもしだされるものと考えるので,「授業の雰囲気(classroom climate)」分析も可能だと
している。
具体的には,図3に示すように,相互作用分析のためのカテゴリーとして.教師,生徒あわせて,
10個の言語行動が選ばれている。教師の発言に関するカテゴリー7個と,生徒の発言に関するカテ ゴリー2個であり,さらに授業において,教師,生徒,どちらにも属さない,「沈黙あるいは混乱」と いうカテゴリー1個という計10個のカテゴリーから構成されている。
その内部は,教師の発言の場合であれば,さらに生徒に直接的に影響を及ぼす直接的影響群のカテ ゴリー,つまり(5)講義する,とか(6)指示する,とか(7)批判したり,正当化する,などの項 目と,生徒に関接的に影響を及ぼす関接的影響群のカテゴリー群,つまり(1)感情を受け入れる,
とか(2)ほめたり,勇気づける,とか(3)アイデアを受け入れたり,利用する,とか(4)発問す る,などの項目に二分される。生徒の発言の場合であれぽ,自発的なものと,応答的なものというわ ずか2つに分けられる。
こうした,カテゴリー表を基にして,フランダースの分析法においては,図3左下のようなマトリ ックスが構成される。これは,カテゴリー表を二つ縦・横にならべた形のマトリックスであり,ここ に各領域が構成され,これによって領域分析など,授業を視覚にうったえて,きわめて直観的に解釈 することがしやすくなる。
授業を具体的に分析する手順としては,録音した音声テープをおこし,分析の単位時間として3秒 毎に,与えられたカテゴリーに記号化(コーディング)していく。マトリックスに,これを移すとき には,記号された記号系列,例えぽ,それが5,5,6,6,10,9であれば,その前後に10を 加え,10−5,5−5,5−6,6−6,6−10,10−9,9−10,という組み合せを作り,マトリック ス上のセルに移す。実際には,このカテゴリー化を二人で,それぞれ独自に行ない,不冠致の点は,
VTRの映像記録を再生し,それを見ながら,チェックしあい,コード化していった。
図3における右図は,このやり方で作った1年生S君の授業のマトリックスを示している。
簡単にみておくことにすれば,この授業においては,教師行動は,(5)のカテゴリー,即ち講義 をすることが圧倒的に多く,また発問するという(4)のカテゴリーも多い。つまり,カテゴリー
(4)と(5)とで囲まれるセル領域に集中していることがわかる。
菅井・川崎・米沢:マイクロ・ティーチソグにおけるフラソダースの授業分析法の検討 157
1年生S君1回目の授業のマトリックス
相互作用分析のためのカテゴリー 教 師 生徒
関 U)感情を受け入れること 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 計
接 (2)ほめたり,勇気づけること
的 1 0
教 影 ㈲ アイデアを受け入れたり,利用すること 勢 響
(4)発問すること 教 2 5 5
書 藩 ㈲講義すること 3 1 5 2 8
(6)指示すること
4 18 4 6 8 36
彰 (7)批判したり,正当化すること
生発 ⑧生徒の発言一応答 5 8 164 2 19 193
饒 ⑨生徒の発言一自発性 師 6 1 2 1 4
ω沈黙あるいは混乱 7 0
生 8 5 1 1 7
マトリックス上の領域 徒 9 1 1
教 師 生徒
lo 2 9 18 1 1 56 87
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 計
計 0 5 8 36 193 4 0 7 1 87 341
1
% 0 1.5 a3 1α65〔瓦5 1.2 0 z1 α3 25 100
教 2 B
3 ・領域分析
4/ A:コンテスト・クロス領域
5 A
㊥i B:関接的影響領域
C:直接的影響領域
師 6
C D1及びD2:教師反応領域
7 E且及びE2:生徒反応領域
生 8 F:沈黙・混乱領域
徒 DI D2
9 E2
10 き
計
%
図3 フラソダースの相互作用分析
これは,領域分析において,コンテスト・クロス領域と呼ぼれ,学習内容にかかわってなされること から,学習内容領域であり,ここでは教える内容に拘束され,教師の教え込みの傾向が強いのではな いかということが,視覚的・直観的に理解される。
それに対して,ほめたり,勇気づけたりのカテゴリー(2)とか,アイデアを受け入れたり,利用 するの(3)などは,わずかにあるが,感情を受け入れるなど(1)のカテゴリーは皆無である。
この(1)(2)(3》で,共通に囲まれた部分は,関接的影響領域とよぼれる。
同様に,生徒を直接に,指示したり(6),批判したり,正当化するというカテゴリー(7)で囲ま れた部分は,直接的影響領域と呼ばれる。この授業においては,この領域もごくわずかである。
さらに,図3の左下図において,DlおよびD2の領域は,教師反応領域と呼ばれ,教師が生徒の発 言(8),(9)を受けとめた後で,続いてどのような教師の発言で応じているかを示すものである。
D1の場合は,生徒に関接的な影響を与えるような形で,またD2の場合,生徒に直接的な影響を与 えるような形で,対応していることを示す。この授業の場合,生徒の発言に対して,ほめたり,勇気
づけるという(2)のカテゴリー,つまりDlが少しみられる。
また,ElおよびE2の領域は,生徒反応領域と呼ばれ,生徒の発言がどのような先行発言を受けて なされたかを問題とする。領域Elは,教師の発言に続いてなされた生徒の反応を示す。ここの授業 では,(4)一(8)の交点に6があることからわかるように,教師の発問によって,生徒が応答的に 答えていることがあることが理解される。領域E2は,生徒の発言や沈黙に続いて,生徒の反応があ
った場合にあらわれる領域である。ここの授業では,沈黙のあとに,生徒の反応がごくわずかあった ことがわかる。
最後に,Fの領域は,沈黙・混乱領域であり,この領域は,沈黙や混乱がどのような発言によって 喚起されたかを示すものである。ここでは,講義に続いて,沈黙や混乱が多かったことがわかる。
以上,1年生S君の第1回目の授業のマトリックスを提示して,マトリックスの読み方およびそれ との関連で,領域分析により,わずかながらこのS君の授業の特徴を探ってみた。
そこで,いよいよ,フランダースの分析法による,すべての授業にわたる分析結果を,図4にまと めて示し,お互いの比較をしながら考察を進めていくことにしよう。
評価表のときと同じく,上段は(a)第1回目の授業の分析結果であり,左から右へ1年生S君,
3年生Mさん,ベテランT先生の授業の順に分析結果が示されている。同じように,下段は(b)第 2回目の授業の分析結果であり,1年生S君と3年生Mさんの授業に対する分析結果である。
そこで,以上のように各段を横にではなく,縦にみることによって,1年生S君の第1回目と第2 回目の分析とを比較できるし,同時に3年生Mさんの第1回目と第2回目とを比較できるのは,評価 表のときと同じである。
○(a)第1回目の授業の目的は,「教授経験の差が具体的教授スキルにいかにあらわれるかをみる,」
ことである。図4の上段を左から右N頂に見ていけばよい。
すると,視覚的・直観的に,まず第一に気付く点は,行動の種類に関連して,セルの数とそのちら ぽり具合であろう。教育実習未経験のS君の場合,セルは,すでにみたように(5)一(5)のセルに 集中しており,講義するという教え込みに傾むいている。セル数は25である。
これに対して,教育実習経験者の3年生のMさんの場合,セルの種類数は,S君に比較してかなり多 く,36であり,講義だけに集中していないことがわかる。
さらに,ベテランのT先生の場合,セルの種類数は,圧倒的に多く,1年生S君の約3倍,3年生M さんの約2倍で,71もある。これは授業時間が単に長いためでないことは,Mさんと比較すれぽ明ら らかである。
以上,セルの種類数は,S君の25,Mさんの36,丁先生の71というように,それぞれの教授 経験と対応していることがわかる。
このことは,何を示すのであろうか。
恐らく,S君の分析結果にみられるように,教授経験がなく授業をする場合,学習内容に拘束され 教え込むことに集中してしまうのに対して,Mさんの分析結果にみられるように,教授経験があると もう少し余裕がでて,アイデアを受け入れたり,ほめたりというような教授行動も少しとれるように なり,さらにT先生のようにベテランになると,長年の教授経験から,さらにより高度な多種多様な 教授行動が,満遍なくとれるようになるものと思われる。
少くとも,このような仮説が,この分析結果から導きだせるようである。
ちなみに,コンテスト・クロス領域の全体に示す割合は,S君の場合,69.5%であり,Mさん の場合,56.0%,T先生の場合,56.7%である。
菅井・川崎・米沢:マイクロ・ティーチングにおけるフランダースの授業分析法の検討 159
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○(b)第2回目の実験の目的は,「教授経験のないものが,マイクロ・ティーチング的訓練におい てどう変るかをみる。」ということである。図4の下段の分析結果を参照すればよい。1年生のS君 にはフィードバックを与え,3年生のMさんには全然与えず,第1回目に続いて再度授業をしてもら った。それらの分析結果である。
まず,縦にみて,第1回目と第2回目とを比較した場合,S君の場合もMさんの場合も,セルの種 類数において,いずれも増加している。S君の場合,25から35へと,またMさんの場合,36か
ら41へと増加している。Mさんに加べてS君の伸びは大きい。そして,この第2回目の二人の分析 結果を,横に比較した場合,評価表の場合と異なり,Mさんの方がわずかであるのセルの種類数は,
上まわっている。
この辺は,評価表による評価の結果と,わずかではあるが矛盾のある点である。
しかし,その他の点では,評価表の評価結果と,分析結果は先の仮説を採用すれば,全く並行する のである。つまり,S君の場合であれば,フィードバックのあるマイクロ・ティーチング訓練によっ て,内容に拘束され,講義中心の全くの教え込み学習から,生徒の反応を受け入れ間接的な影響を与 えられるようなより広い教授スキルを使え習得することができるようになったといえよう。すでにふ れたセル数の増加に加えて,コンテント・クロス領域の全体に占める割合をみれば,このことは理解 される。ちなみに,S君の場合,1回目の69.5%から2回目は57.7%と大幅に下がっている。
他方,Mさんの場合は,1回目の56.0%から2回目は54.9%とわずかながら,同じく下がっている。
なお,第2回目のS君とMさんの授業は,たまたまどちらも24分間で終了した。
しかるに・総反応数はS君471,Mさん565と異なっている。分析単位は3秒で同じにとってある が,この相違はS君の場合,教育機器(具体的にはOHT)をかなりの時間使用したためである。
つまり・フランダースの授業分析法は,あくまで教師と生徒の対人的相互作用における言語行動を カテゴライズし分析することをめざしており,教育機器との間の相互作用分析はなされないのである。
以上,フランダースの分析法における授業マトリックスから,視覚的・直観的に全体を見渡してき たのであるが,これらはさらに数量的に,より分析的な形で示される。
そこで,次にそれらを見ていくことにする。
ここでは,理解しやすいように,できるだけグラフで,しかも比較できる形にまとめてみる。
まず,図5に示すのは,カテゴリー分布である。
左側の表は,第1回目の授業における,S君, Mさん,丁先生の授業における,各カテゴリーの分 布を比較しやすいように示してある。
真中の表は,実習未経験のS君が,マイクロ・ティーチング的訓練において,カテゴリー分布の点 で,どのように変化したかを示すものである。
右側の表は,実習経験者Mさんが,1回目と2回目の授業で,カテゴリー分布の面でどうなったか を示すものである。
次に,図6に示すのは,図6に示すのは,教師の発言率や生徒の発言率などを明らかにする,比率 分析と呼ばれるものである。ここには,第1回目のS君,Mさん, T先生の三人の授業における,各 比率分析を比較しやすいように示してみた。
以上で理解されるように・フランダースの分析法の特徴は,カテゴリー化され構成された授業のマ トリックスが第一義的に重要なのであり,これが清報源となって,そこから視覚的・直観的に授業の 全体像がとらえられるし,さらに分析をすすめることによってそれを数値化・数量化できるようにな
っている。
菅井・川崎・米沢:マイクロ・ティーチソグにおけるフラソダースの授業分析法の検討 161
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1回目の三者の比率分析の比較
20
20 40 60 80
(72。1)
(1)十(2十…(7) (1)+②+…+ω
教 師 発 言 率 (63.8)
@(7ag)
(8)+(9)
i1)+②+…+⑩ 生 徒 発 言 率
(2.4)
i6.9)
i65)
⑩ 沈 黙 混 乱 率
(255)
i2a3)
(1)+②+…+⑩ (19.5)
76.5)
(1)+(2)+(3)
教師・間接発言率
(1)+(2+(3+(⑤+(7) (61.1) (8獄3)
(4) (157)
教 師 発 問 率 (26.5)
(4)十(5)
(22.5)
⑨ (1a5)
生徒自発的発言率 (51.5)
(8)十(9)
(703)
(10α0)
教師即時的間接発言率 〃 〃z (96.0)
(50)
教師即時的発問率 (10α0)
(0)
(745)
(4)十(5)
学 習 内 容 率 (642)
(1)+(2+…+⑩ (59.2)
対角線セル数値合計
i1)+(2)+…+⑩ 発 言 持 続 率
(70.7)
i6a6)
(53.3)
セル(8−8)十(9−9)数値言 (0)
生徒発言持続率 (3a4)
(8)十(9)
2駄7
〔1年生S君〕:教師発言において,学習内容に関する発言が多く ,
即時的発問がみられ,その結果か生徒に自発的な発問が少なく,
短い発言に終わっている。
〔3年生Mさん〕:教師発言において,学習内容に関する発言は中 程度であるが,よく発問し,生徒にかなり発言させているが,即 時的発問であるのがみうけられる。
〔ベテラソT先生〕:教師発言において,学習内容に関する発言が 少なく,適度にバラソスがとれており,生徒に自発的な発言など
もさせている。
図6 比率分析