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2009年8月3日大学評価・学位授与機構の主催で標題のようなフォーラムが開催された。前半の講演 ではアカデミック・ポートフォリオについて、アメリカのピーター・セルディン「アカデミック・ポー トフォリオとは~教員の諸活動を効果的に文章化するための新たな手法~」、そしてジェフ・キング「大 学におけるアカデミック・ポートフォリオ導入事例」の講演が行われた。後半は、パネルディスカッショ ン「アカデミック・リソースの把握・分析と内部質保証システムの充実」が行われた。本稿では、後半 部分の概略を紹介する。
「アカデミック・リソースの把握・分析と内部質保証システムの充実」
柳澤康信(愛媛大学長)「ティーチング・ポートフォリオ導入に向けた取り組み」
1)愛媛大学でも導入を決定しただけで本格的な導入はこれからである。日本の文化的事情などを考慮 すると、ティーチング・ポートフォリオ(TP)の本格的な導入は容易なことではない。条件整備も なされないままでトップダウン的に導入することは逆効果になる。TPを導入するための条件とし て、以下の2つをあげている。①(あるレベル以上で)FDが機能していること、②(あるレベル 以上で)教員の教育業績評価が機能していることである。「あるレベル以上」とは漠然としているが、
「内発的」に行われていることが鍵となる。そのうえで課題を克服していくことが望ましい。
2)TPの第1の機能は、FD(教育改善)にある。日本では、未だに、TPの導入が困難な状況にある。
その理由は教育改善・能力開発支援の環境が未整備であるということである。すなわち、①教育改 善の取り組みが無視されたり、批判されたりする組織文化になっていない。②学部・学科の教育改 革・教育改善の責任者が明確になっていない。③ FDを担う大学教育センターや FD委員会が未整 備である。④教員のニーズに対応した FDプログラムやサービスが用意されていない。
3)愛媛大学は、2)で指摘したことを踏まえて FD活動を行っているので、比較的 TPを導入しやす い状況にある。たとえば、①各学部・学科で教育改革・教育改善を中心的に担う教育責任者が明確 になっている。②教員の改善意欲が高まった際にいつでも相談に行ける専門家がいる。愛媛大学で は、この専門家をファカルティ・ディベロッパーと呼んでいる。③多様な FDプログラムが用意さ れている。
4)教育コーディネーターとは、学部・学会などの教育責任者として、教育方針の立案、カリキュラム の編成、教育内容の改善などの活動において中核的な役割を担う教育重点型教員のことである。詳 細は、配布資料を参照。これは、従来の教務委員会等に代わる、学部・学科レベルの教育改革の担 い手となっている。
5)TPの第2の機能は、教員の教育業績評価である。愛媛大学では、早くから教育業績評価の検討を はじめている。教員の教育業績評価は容易ではない。平成16年度以降、愛媛大学における教員の業 績評価を開始し、エビデンスとなる教員の活動実績をデータベース化している。そこでは、教育・
研究・サービスといった教員の総合的業績表を行っている。詳細は、配布資料を参照。
6)部局個人評価に基づく教員の適正な処遇及びインセンティブの付与を平成20年度から実施してい
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大学評価フォーラム・パネルディスカッション(大学評価・学位授与機構)
内部質保証システムの充実をめざした アカデミック・リソースの活用
~個性ある大学づくりのために~
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る。具体的には、評価結果が優れている教員に対するインセンティブとして、国内派遣研究員制度、
サバティカル制度等に導入されている。
7)愛媛大学では、従来の教育業績評価に限界があるとしている。平成17年度自己点検評価室「教員の 選考基準に関する提言」があるが、その基準は不明確である。選考基準においてそれぞれの職位に 相応しい教育研究上の業績、資格ができる限り具体的に示されることが望ましい。より厳密で公正 な教育業績評価方法の導入が必要である。
8)愛媛大学における TP導入の経緯についてであるが、小松前学長は、平成20年8月の教育コーディ ネーター研修会での挨拶の中で、以下のことを述べている。①教員の教育に対する努力や貢献を正 当に評価することが必要である。②教員が TPを作成し、教育評価を実効あるものにする方策の検 討が必要である。③ TPは全員が強制的に作成するものではなく、まず教員の2割程度が作成し、
その効果を広めていくことが重要である。
9)平成21年度計画においては、ティーチング・ポートフォリオの導入に向けて、学内でメンターの育 成を行う。
10)第2期中期目標・計画(平成22~27年度)では、ティーチング・ポートフォリオ(教育業績記録)
を活用して、教員の教育業績を適正に評価する仕組みを作る。
生和秀敏(大学基準協会)「内部質保証システムの充実」
1)今、大きな問題になっているのは、内部質保証はどのようになっているのか。それは自己点検・評 価とどのように違うのかということである。あるいは認証評価や国立大学の法人評価とどう違うの かということである。これは大学を取り巻く様々の評価とどういう関係にあるのかということであ る。パワーポイント配付資料には5つの項目があげられているが、時間の制約もあり、「3.内部質 保証の輪郭」を中心に説明する。
2)大学を取り囲む質保証のシステムには、外的質保証と内部質保証の2つがある。配布資料にあるよ うに、設置基準、設置審査、そして認証評価(国立大学の場合は、さらに法人評価)を外的質保証 と呼ばれ、自己点検から自己評価、そしてこの自己評価から自己改善に繋げるのが内部質保証とい うことになる。両者のバランスが重要になってくる。これからの評価は、外的質保証から内部質保 証に移っていくことになる。これは諸外国においてはそのような動きにあることは、セルディンや キング氏の講演からもわかる。
3)さらに、これからは機関別質保証から研究活動分野別の質保証に移っていくことになる。そうなる とこれまでのように外的質保証の認証評価だけではなく自立した内部質保証へと移行していくこと になる。日本の場合は、法令等によって評価が義務づけられる。自己評価であっても法令で義務づ けられる。認証評価や法人評価もそうである。すなわち、評価というものが法令で義務づけられ、
違反者を罰するというシステムになっている。そうではなく、インセンティブによる動機づけを重 視し、奨励していくことが不可欠である。大学基準協会ではそのような流れで検討している。
4)内部質保証システムの輪郭図については配布資料を参照。大学基準協会は、評価の項目を設定し て、それを「点検」するのであるが、何を基準にして点検するかが不明瞭である。自分たちが掲げ た目標に照らし合わせて点検する。目標が明確でなければ点検のしようがない。さらに、重要なこ とは、点検したことを評価していないということである。すなわち、自己評価がなされていない。
評価するには根拠や基準が必要になってくる。今までは、認証評価等、他者の基準を用いてやって きた。これからは自己評価することになり、そのために自らの根拠資料を用意しなければならな い。これからの認証評価は、各自の自己評価が根拠資料にもとづいた妥当なものであるかどうかだ けをチェックすることになる。外の者ができることはその程度のことである。各大学から提供され た教育研究活動を限定された資料だけで第三者が的確に評価することは難しい。これは、大学基準
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協会が認証評価機構としての経験でもあるが、本来、大学を変える主体は大学自身にある。認証評 価は自己評価の適切さをサポートする役割というように位置づけ直すというのが、平成23年度以降 の認証評価の方向転換であると理解してもらいたい。
5)自己評価で終わるのでなくて、次は、計画を立てなければならない。計画で大事なことが資源であ る。計画は資源の見積もりなしにはあり得ない。希望や夢を語るのは計画でも何でもない。計画が 実施可能であるかどうかは、人的物的資源のリソースが必要になってくる。本日のフォーラムの
「アカデミック・リソース」の重要性もここにあると思われる。どのような潜在力があるかも見積 もったうえで計画を立てなければならない。計画を立てたら、それを実行する。日本で実行ができ ないのは、愛媛大学柳澤氏の説明にもあったように、日本の文化的バリアーが存在することも事実 である。一つ大事なことはインセンティブが弱いということである。最近は、国は大学が何回 FD をやれば予算をつけるといっているが、国だけでなく、大学でも何らかのインセンティブが必要で ある。さらに、実行した結果を検証して、問題があれば改善策を工夫し、新たな評価項目を設定す る。すなわち、このループを絶えず回し、整備することが大切である。
6)これまでの自己点検評価の問題点は、それが定期的であったことである。報告書に至っては、認証 評価の時だけとりまとめればよいという考えであった。これからは、これを日常化するということ が大切である。これまでの評価は大学当局が行ってきた。評価責任者がやるべきだという考えが強 すぎた。自己点検評価には、組織的に行うものと、個人的に行うものがあることを理解する必要が ある。そのためには、大学が共通した目標を考えると同時に、教員個人が個別目標を立てなければ ならない。これは大学の活動をデータとして集めるというテータベース化が中心であったが、これ からは、個人個人の教員がポートフォリオを作成するという主体に移るであろうと考えられる。
7)これからの改革・改善で大切なことは、①何が問題なのか、②どこが問題なのか、③なぜ問題なの か、④どうすればいいのか、である。
大塚雄作(京都大学)「個を『繋ぐ』リソースの活用─新たなる学問学習共同体の形成に向けて─」
1)セルディンのポートフォリオの著書を10年前に紹介したが、今日、このようにニーズが高まること は想像できなかった。それほど、評価文化が根づいていることなる。
2)根拠資料を蓄積するという考えも以前はなかった。根拠資料は「繋ぐ」ための素材であるという考 えが重要である。最近は、高等教育版 PISAで学習成果(Learning Outcome)の数値化が突きつけ られているが、評価には数値化できないものもある。評価に量的なものは重要であるが、質的評価 も重要であるという考えを共有する必要がある。すなわち、ポートフォリオで重視するストリー的 な評価も合わせて使う必要がある。評価は客観的でなければいけないといわれるが、これはうさん 臭い。ストリーにすると客観性に欠けるという考えがあるが、価値づけするというのはかなり主観 的である。数値は客観的であるといわれるが、その数値を選んだところに主観が入ることになる。
3)ポートフォリオの評価には、データの蓄積とリフレクションという重要な役割があるが、ここでは メンターの役割がより重要になってくる。ポートフォリオが個を繋ぐリソースと考えると、アメリ カではそのような文化がある。すなわち、昇進などで学部長がポートフォリオにもとづきながら、
評価するという文化が背後にある。
4)FDでも SoTLという考えがアメリカにはある。
日比谷潤子(国際基督教大学)「昇進のための自己評価報告書」
1)ICUはリベラルアーツの大学であるので3つの領域、たとえば、①教育活動の効果、②研究、学問、
創造的活動の実績、③大学、コミュニティ、職業上の貢献でも、①教育活動の効果が置かれている。
昇進の主要な基準は、①学生の意欲を引き出す能力を含めた、教育活動の卓越性を立証する証拠で
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ある。②講義要綱(シラバス)やその他の教材の例を記載する。③新しい知識を教育に取り入れる 意欲、およびコースやカリキュラム開発への貢献の例を記載する。④リベラルアーツ教育の基礎と なる問題点を明確にする能力、批判的に考えることを学生に要求する能力の具体的な例を記載す る。⑤一般教育や自分の専門分野以外の(学際的)授業を行う際の意欲と効果の例を記載する。⑥ 卒業論文(必修)など、学問的助言(アドバイザー)の効果の例を記載する。
2)研究、学問、創造的活動の実績においては、①出版物の記載、これは単にリストに羅列するのでは なく、セルディンのポートフォリオのように研究記録を文書で説明する。その他については、配付 資料を参照。
3)大学、コミュニティ、職業上の貢献であるが、詳細は配付資料を参照。
4)候補者の自己評価報告書が学部長に提出され、適当であると判断されれば、学務副学長と協議のう え、教授会および評議会にかけられる。
5)この自己評価報告書は上から指示されて行うものであるが、作成のプロセスで自らを振り返ること ができる点で意義があると思われる。これは自分で文書にするもので、選択して省察するポート フォリオの形にはなっていない。振り返るということで意義があると考えている。
6)最後に、3つでどれが重要かということであるが、これは大学によって異なることであるが、①教 育活動の効果においては、講義要綱(シラバス)が参考になることがわかった。これまでは人の書 いたシラバスはそれほど関心を示さなかったが、昇任のプロセスをするようになって気づいたこと は、シラバスの内容が誰にでも、他分野の人にもわかるということが重要であることがわかった。
すなわち、シラバスの出来で教育活動の質がわかると思われる。すなわち、1番がシラバスである。
②研究、学問、創造的活動の実績においては、研究活動は重要であるので、出版物のリストを出し てもらって、どれを見たいか、あるいはどれがレフリー付きの論文であるかがわかっていれば、後 で独自に調査をすることができる。それが2番である。③大学、コミュニティ、職業上の貢献では、
大学ごとの個性があると思うが、ICUでは Advisingが重要であると考えている。
(文責 土持ゲーリー法一)
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