九州工獄学研究縮(工学)N・・27コ973細月 105
繰返し応力による鋳鉄の残留応力の
減衰について
(昭和48年5月1日 原稿受理)
金属加工学科 大和田野 利 郎
金属加工学科江原隆一郎
Decrease of Residual Stress of Cast Steel by Repeated Stress
by Toshiro OWADANO Ryuichiro EBARA
In・rd・r t・redu・・the residu・1・tress h・・st i・・n, high・nd 1・w・y、1。 f。tigu,
tests were carried out using a plate bending fatigue testhlg machine and Shimazu Autograph.
As the results, it was clari五ed that the decrease of residual stress becomes
larger as repeated stress i皿creases. Decrease of residual stress is prominent at the
initial period of fatigue test. Decrease after that period is皿ot Iloticeable. The number of cycles, in which the prominent decrease of residual stress is detected,is lower than 300 cycles for high cycle test and l cycle for low cycle test.
t緒 言 く・繰返し応力猷きいほど大きいようである
また,これらの実験は材料の表面に生じさせた月i 鋳物は全体の一様な冷却が不可能なために,内 縮の残留応力の減衰についての場合がほとんと 部に残留応力を有する・残留応力が降伏点や破壊 で,引張の残留応力について調べた例は少ない。
応力に近いほどに大きい場合・または機械仕上後 そこで,著者らは表面に引張の残留応力を有す に変形が生じてはならない場合などには残留応力 る場合の多い鋳鉄に機械的に残留応力を与え,高 の減少をはかる必要がある㌔ サイクルおよび低サイクルの疲れ試験を行ない,
残留応力の減少法としては枯らし法㌣ 応力除 残留応力の減衰について調査した。
去焼鈍法3,および機械振動法4,がよく知られてい
る。この5ち,機械振動法は焼鈍の不可能な大型 2・ 実 験 方 法 鋳物に適用でき,表面酸化や鋳鉄鋳物における成 2.1. 実 験 装 置
長を心配する必要がない利点を有する1㌔ 実験に用いた試験機としては,高サイクル試験 さて,繰返し応力と残留応力との閤係について には島津製曲げねじり疲れ試験機(10k9−m,
はこれまでにも多数の報告がある。この場合,残 2000叩m)を,低サイクル試験には島津製オー 留応力はとくに大きな場合を除けば最初の残留応 トグラフ(5t皿)を用いた。
カで考え,平均応力とみなしてさしつかえない㌔ 2.Z 供試材および試験片
しかしながら,繰返し応力によって残留応力が 表1に実験に用いた鋳鉄の化学組成と最大引張 変化することは多数確認されている。この場合・ 強さを示す。このうちAを高サイクル試験にB その機構については未だ明確にされていないが・ を低サイグル試験に用いた。図1a)・b)に高サイ 残留応力の減衰は初期の繰返し数において大き クルおよび低サイクル試験片の形状および寸法を
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図1試験片形状
表1供試鋳鉄の化崇組成と引張強さ を止め,平均応力を測定した。
鋳鉄
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B
化学組成(%)
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3.60 3.95
2.40 1.76
0.35 0.23
0、082 0.015
0.094 0.082
低サイグル試験の場合には,定歪試験を試験速
最劉鷲さ劇5mmノ輌で酷った.歪は撒片セ諏付
けた伸び計の発生起電圧をオートグラフ・レコー
ll:1.ダーに言己録させて預胤に誌こ塒の応力
はオートグラフのロード・セルに静歪計を直結 示す。試験片の製作にあたっては,切削および研 し.発生起電圧をX−Yレコーダーに記録するこ 削加工中に加工歪が生じたり,加熱されることが とによって求めた荷重から計算して設定した。
ないよう特に注意した。また,試験片の表面は工
川_紙で酬後パフ仕上げした。 工実験結果
2.3.平均応力(残留応力)の設定および測定 51. 高サイクル試験結果
高サイクル試験の場合には,試験前に所定の平 図2は最初の残留応力が3・75kg/ml且2の試験 均応力を与え,所定の繰返し応力による疲れ試験 片に一定繰返し応力3.73kg/mm2をかけた時の を行なった。その後,任意の繰返し数毎に試験機 残留応力の減衰の様子を示す。同図から明らかな
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繰 五 L 起 図3 繰返し応力による残留応力の減衰
ように・残留応力は繰返し数3x10±回で1.94 結果を示す。この場合も,繰返し数3×102回で kg/mm窒に減少し・その後ゆるやかに減衰して, 残留応力は2.76 kg/mm2に減衰し,その後は前 繰返し数107回で1・13k9/mm3まで減衰して 述の繰返し応力3.73 kg/mm2の場合に比べかな いる。この場合試験片は破断していない。 り著しく減衰し,繰返し数3.46x105回で試験片 図3は最初の残留応力が6・54kg/mm2の試験 が破断している。この場合、破断直前の残留応力 片に一定繰返し応力490kg/mm2をかけた時の は0.35 kg/m皿:と急激に低下している。
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図4 高サイクル疲れ試験のS−N曲線
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図5 繰返し数と残留応力の減衰率との閥係
108
同様の実験を種々の残留応力を与えた試験片に と残留応力の減衰率との関係を求めた図6および 繰返し応力1.01〜7.71k9/mm2の範囲で行なっ 図7からも明らかである。
た。 また,両図から破断試験片の残留応力の減衰率 図4にS−N曲線を示すがかなりのバラツキを は繰返し数3×102回でもほとんどの場合50%以 示している。 上の値を示し,破断直前の減衰率も又著しく大 図5に繰返し数と残留応力の減衰率との関係の きくなっていることがわかる・
一例を示す。何れの場合にも,繰返し数3×1ぴ 試験片の破断におよぼす残留応力と繰返し応力 回と1ぴ回での残留応力の減衰率に大差のないこ との関係は図8のようになる。繰返し応力が約4 とがわかる。また,繰返し応力の低いほど,各繰 kg/mm2以下では残留応力の大きさにかかわら 返し数での残」留応力の減衰率が小さいことがわか ず試験片は破断せず約4kg/mm2以上では破断
る。このことは軟鋼についての別の実験7⊃でも確 することがわかる。ただし、4kg/mnユ2程度の繰 められている。このことは,さらに,繰返し応力 返し応力では残留応力の高いものは破断し,低い ものは破断していない。
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舞暮L右見 鞠/m㎡) 片 塔品身 鞠ノ・朋ヲ 図6 繰返し応力と残留応力の減衰串との関係 図8 試験片の破断におよぼす残留応力と (繰返し数3×102回) 繰返し応力との関係
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100 工2・ 低サイクル試験結果
( gO 図9は最初の残留応力が約10.5kg/mm2の試 芒80 験片に種々の繰返し応力をかけた時の残留応力の 事 70 変化を示したものである。同図から繰返し応力が
㌔ 60 高いほど第一回目の残留応力の滅衰丑が大なるこ 古 50 とがわかる。
噺 40 図10には,繰返し応力と第一回の繰返し数に 咽 30 おける残留応力の減衰率を示す。最初の残留応力
㌔ 20 避にかかわらず繰返し応力が低いほど第1回目の 貢 10 減衰率が小さいことがわかる。また,残留応力の 0 減衰率は繰返し数が増しても,繰返し数第ユ回の
゜1234567891° 場合と大差ない.このこと略繰返し数における
藷亙L主力 (k訂朋つ 繰返し応力と残留応力の減衰率との関係を示した 図7繰返し応力と残留応力の減衰皐との関係 図11で明らかに認められる。
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図9 繰返し応力による残留応力の減衰
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図10種々の残留応力を有する試験片の繰返し 図11各操返し数における繰返し応力と 応力と繰返し数1回目における残留応力 残留応力の減衰率との閑係 の減衰率との関係
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』 く・繰返し応力が大きいほど大であるから,最大
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3a),b)で述べた高サイクルおよび低サイクル えれば効果的に残留応力を減衰させることができ 試験の結果は,残留応力の減衰が繰返し数の初期 る。
において大きく,その後の繰返し数ではそれほど 繰返し応力が高ければ,ある繰返し数の後には、
大きくならないことを示している。また,残留応 疲れき裂が発生し,その後の繰返しで進展し最終 力の減衰は繰返し応力が大きいほど大であること 的には破断に至る。しかし、本実験に使用したよ もわかった。これらの結果は従来の実験結果6)と うな平滑試験片では疲れき裂の発生は遅く,数回 も良く一致している。 の繰返し数では疲れき裂は発生しないものと思わ
残留応力の減衰は初期の繰返し数でとくに大き れる。しかしながら・実際の構造物には応力築中
110
をもたらす切欠部が存在するので,残留応力減衰 期の繰返し数とは本実験の場合高サイクル のための繰返し数は繰返し応力が高い場合にはi疲 試験では300回以下、低サイクル試験では1 れき裂の発生しない繰返し数を選ばねばならな 回である。
い。 最後に,本実験を行なうにあたり,終始熱心に 繰返し応力が疲れ限度よりも低い場合にも極端 御協力いただいた卒論学生山本高司君と修論学生 に低く(本実験の場合には2kgゾ皿m2以下)な 吉村忠明君に感謝の意を表したい。
ければある程度の残留応力の滅衰は期待できる。
参 考 文 献
5. 結 諭 ユ)大和田野:鋳造技術の基礎,p.247日刊工業新聞
社(1967)鋳鉄に機械的に租々の残留応力を与え高サイク 2)W.Gr員nzdor∬er:Giesseri 52(1965),101 ルおよび低サイクル疲れ試験を行ない,残留応力 3)E・R°minski and H・Tay1°「l T「ans・Ame「
の鞠こついて調べ端果次の結論を得た・ 4)晋認蒜:量1震灘f、Gi e,i 5、
1)残留応力の減衰は繰返し応力が大きいほど (1964),194 。
大である。 5)日本金属学会強度委員会纒:金属材料の強度と破
2)残留応力醐期の繰乱数で著しく減衰 6)壊當爵㌶8。959)6。,
し,その後の減衰はそれほど大きくない。初 7)大和田野:未発表