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千葉大学園芸学部の組織・運営改革の取り組み.PDF

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千葉大学園芸学部における組織・運営改革の取り組み例 千葉大学園芸学部 古在豊樹 1.はじめに 現在、わが国の大学は、高校卒業生の減少と経済の停滞に直面し、大きな岐路に立って いる。さらに国立大学にあっては平成16 年度の大学法人化をひかえている。このような時 代背景にあって、大学の農学系学部の重要性が社会により理解され、農学系学部が質的発 展を遂げるには、まず、農学系学部の教員が「農学」の本質と現代的役割を明確に認識し て、農学教育研究を充実していくことが重要である。 「農学の本質と役割、および農学系学部における教育研究のあり方」という重要課題に 関しては、各農学部の個別的努力(例えば、東北大学農学部、1997)を基礎として、全国 農学系学部長会議や各学協会が協力して取り組んできた。そして、現在、取り組んだ成果 が 形 に 現 れ つ つ あ る ( 例 え ば 、 ウ ェ ッ ブ サ イ ト :http://www.h.chiba-u.ac.jp/kanko/ buchokaigi/を参照)。 さて、一般に、組織というものは、理念・目標が立派でも、その実現を目指して日常的 に行動するための体制と人材が伴わなければ看板倒れに終わる。今後、農学および各農学 系学部の理念・目標、役割などの明確化とともに、農学系学部の教育研究体制と人材養成 システムの改善が益々必要となろう。 筆者が平成11 年 4 月に千葉大学園芸学部長になって以来、学部の理念・目標の構築とと もに、理念・目標に現実を近づけるための運営体制の構築とその運営体制にもとづく日常 的実践行動の具現化に努力してきた。平成14 年になった現在、試行錯誤の末に、少しずつ 成果があらわれつつある。 上述の努力の間に気が付いた事は、従来、各学部における教育研究体制や人材養成に関 わる個別的、日常的努力の実態に関しては、理念や目標ほどには、農学系学部間での情報 交換や意見交換が組織的、継続的に行われてこなかったことである。 本稿では、主に平成11 年度から 13 年度における千葉大学園芸学部の運営状況の具体例 を、やや羅列的に、率直に述べてみたい。そして他の学部あるいは他の社会からの批判、 意見を受けてみたい。本稿が、学部の教育研究運営体制などに関する情報・意見交換の促 進に少しでも役立てば幸いである。園芸学部は、それらの批判、意見などを糧として、他 の農学系学部と共にさらに成長したいと願っている。千葉大学園芸学部の理念・目標さら には理念・目標と本稿で述べる日常的活動の関係については別稿で述べる予定である。 2. 学部運営 教員自身が「学部運営の方法を自らの手で改革していかない限り、社会的外力で受動的 に変えさせられることになる」という自覚を有し、理念・目標に照らして前向きに変革に 取り組む姿勢をもつように努めた。 1)シンポジウム「園芸学部の21 世紀ビジョン」 平成 11 年 6 月にシンポジウム「園芸

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学部の21 世紀ビジョン」が、同シンポジウム実行委員会の企画で園芸学部教職員を対象に 開催された。このシンポジウムには殆どの教員と多くの事務職員が参加して、園芸学部が 今後歩むべき道を教員が個人の立場から自由に述べ、また参加者間で活発な議論が行なわ れた。この中で、旧来の農学の範疇では捉え切れない、園芸学部の教育研究の姿が浮き彫 りになり、将来の課題が確認された。このシンポジウムの報告集(107 ページ)には、講演 要旨に加えて、総合討論の内容も含まれている。 2)外部評価 平成11 年 12 月に外部評価を受けた。外部評価委員は日本人 11人、外国人 3人(米国、カナダ、中国)である。日本人委員は、大学関係者に加えて、ジャーナリス ト、松戸市助役、千葉県農林部長、農林水産省元場長などに依頼した。外部評価を受ける ために、学部の理念・目的、将来展望、研究教育業績などを 365 ページからなる資料集に まとめた。さらに外部評価の結果を 101 ページの報告書にまとめた。外部評価を受けたこ とによって、園芸学部が今後解決すべき問題点が明らかになり、また教員の資質向上と努 力目標の設定に役立った。 3)電子メイル利用 平成11 年度から、教授会開催通知、教授会議事録、各種委員会報告、 教職員からの各種資料一斉送付などは、全教員メイリングリストをもちいた電子メイル送 信で行うこととした。これにより、事務処理が軽減し、同時に、教員は事務文書管理が容 易になった。メイリングリストは、学部学生、大学院生、留学生、研究室メンバーなどの グループに対しても利用されている。結果的に、メイルサーバーを管理する教員の負担が 増した。なお外部からの不正アクセスおよびウイルスの蔓延などでネットワークが停止す ることが年に数回あった。平成14 年度中にはネットワーク環境が更新され、伝送速度、ウ イルス対策を含めて事態は改善される予定である。 4)男女共同社会参画委員会 平成 12 年度に園芸学部男女共同参画委員会を発足させた。 教育研究・運営の全般に係わる男女共同参画を推進する目的で、情報・意見の収集、解析、 整理、問題提起、提案、企画、実行などを行うことを役割とした。委員構成は、女性委員 5人以下、男性委員は教授、助教授・講師、助手を各1名とした。委員長は互選とし、女 性が選出された。委員会はアンケート調査等を実施し、その結果を教授会で報告し、また 「男女共同参画のための提言」をまとめた。学部の教員公募文書に女性の応募をうながす 文言を入れるように要望が出された。園芸学部で開催された公開研究発表会や学会などに 子供連れで参加できるように、一時保育所を随時開設するための手続きを完了した。なお、 平成14 年 4 月現在、86 人(自然科学研究科所属教員 13 人を含む)の教員に対して女性教 員は6 名(教授1人、講師1人、助手4人)である。 5)活動計画・活動報告表の作成 平成 13 年度から、学部長、各学科、各委員会などが、 年度当初には年間の活動計画表を、また年度末には年間の活動報告表を提出することを義 務付け、それら資料を教授会において全教員に配布した。この計画表・報告表により、学 科・委員会は年間活動の目標が明確になり、また学科間・委員会間の情報交換が容易にな り、さらには事務部が教員の年間活動計画・実績を年度当初に把握し、教員活動を効率的

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に支援することが可能になった。 6)教授会・委員会 園芸学部の教授会には、具体的人事案件を除いて、助手、講師、助 教授も参加する。教授会では情報公開と資料開示を可能な限り行い、また広く意見を求め ることに努めた。その結果、学部運営の透明性が高まり、また教員の参加意識が高まった 反面、教授会に費やす時間が長くなり、助手・助教授層の負担が増えた。「委員会委員長は 教授」と限定した委員会と、委員の互選で決める委員会がある。後者では、ここ数年、合 わせて 5 つ程度の委員会で助手、講師あるいは助教授が委員長となっている。委員会など の活動を教育研究に活かせる教員とそうでない教員がいるように感じられた。委員会での 活動が目覚しい教員に特別昇給を重点的に行った。 7)教員選考 数年前より、教員選考は公募を原則としていたが、原則どおりに行なわれ ないことが時々あった。平成12 年度からは、公募ルールを明確化して、講師から助教授へ の昇任などの特殊な場合を除き、すべて公募することが教授会で承認された。公募の標準 様式がほぼ定まり、園芸学部ホームページへの掲載、国立情報研究所関連機関が管理する 公募人事データーベースへの登録などが行なわれている。

8)Faculty Development Program (教員資質向上活動:FD プログラム) 米国の大学教授 を迎えて、平成 11 年度には共同研究推進の講演会を、また平成 14 年度には園芸研究資金 獲得の講演会を開催した。平成13 年度には科学研究費補助金の獲得方法、共同研究推進方 法、知的所有財産管理方法などの講演会を開催した。これら講演会の効果は必ずしも明確 でない。大学本部および外部で開催される教員資質向上のための講演会、研修会を教員に 奨励したが、参加にはそれほど積極的ではなかった。FD プログラムの質的変換が必要とさ れる。平成13 年度には、図書分館に教員の最新研究業績を展示するコーナーを設置した。 9)学長裁量経費 国立大学では、学長裁量経費が過去数年の間に大幅に増額され、各部 局に配分される予算が競争的になる傾向が強まった。この競争的資金の獲得額の増大は学 部長の重要な仕事となる。平成13 年度は、園芸学部では、この申請を教員または教員グル ープの応募制として、学部長が優先順位をつけて本部に申請した。平成14 年度以降の競争 的資金に対する園芸学部の対応方法は、今後の課題である、21 世紀 COE の申請に関して は、千葉大学は大学院大学でないので、園芸学部、理学部、工学部教員が属する、自然科 学研究科が対応している。 10)園芸学部附属柏農場土地返還 過去二十数年にわたり、園芸学部の最大の関心事は 松戸市にある園芸学部の本部キャンパス(千葉市)への移転であった。しかし、諸般の事 情から、平成13 年 11 月に、本部キャンパスへの園芸学部移転をやむなく断念し、同時に 柏市にある附属柏農場(敷地25 ヘクタール)の 1/3 を文部科学省に返還するという決断を した。この返還を契機に、附属柏農場の大幅な質的向上を図るためである。この決断にい たるまでに、平成11-13 年度に約 10 回の臨時教授会を開催した。 11)都市環境園芸農場への転換 上述の土地返還に関連して、平成14 年度に、現在の附 属柏農場の機能を都市環境園芸に特化する転換を主とした文部科学省への概算要求を行な

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った。都市環境園芸農場(仮称)では、21 世紀型健康都市社会に求められる安心な園芸食 物、健康機能植物、豊かな環境植物および快適緑地環境を省資源的・環境保全的に創出し、 住民の生きがいを育むなど環境園芸植物のもつ多面的機能を活用する都市環境園芸に関す る実践的教育研究を行なうことを目的とした。 12)大学法人化対策 平成16 年度に予想される国立大学の大学法人化に対応して、各国 立大学は、平成14 年度中に、平成 16-22 年度の中期目標を定め、大学の各部局は中期計画 を定める必要がある。園芸学部では平成14 年 4 月に暫定的な中期計画を定め、同年 5 月以 降に委員会組織で本格的な中期計画を定める予定である。 13)園芸学部同窓会 園芸学部は、その前身を含めると95 年の歴史があり、12,000 人を 超える卒業生がいる。同窓会組織(戸定会、とじょうかい)があり、またその関連組織と して、戸定学術振興会がある。この2つの組織は、学部教員と密接な連携の下に運営され、 園芸学部の教育研究促進に大きな貢献をしている。戸定会は 1 億円を超える資産を有し、 年間予算のうち数百万円を、園芸学部の留学生、学生活動、講演会、海外渡航、国際交流、 庭園維持などの支援のために支出している。園芸学部の多様な活動にはなくてはならない 存在であるので、学部との更なる連携強化が望まれる。 3.学部教育 学生が何を望み、何を感じ、どのような状況にあるのかを教員が良く理解し、その理解 にもとづいて、教育プログラムの改善に努めた。 1)学生アンケート 平成11 年秋に発足した、園芸学部マーケティング調査委員会は、入 学した学生はいかなる情報にもとづき園芸学部を受験して、入学後に何を感じ、現在何を 希望しているのかなどを調査した。委員長は助教授が努め、委員も助教授が中心で、事務 職員2 名も委員に加わった。学生へのアンケートに先立って、各グループ学生 4−10 名か らなる、12 グループのインタビューを行った。その結果にもとづき、アンケート調査表を 作成し、学生全員にアンケート用紙を配布し、43%の回収率を得た。インタビューとアン ケートの結果は数ヶ月をかけて解析されて、104 ページの報告書にまとめられ、全学生・教 職員に配布された。この調査報告書において園芸学部で改善すべき教育上の種々の問題が 明らかにされた。この調査において学生から指摘された問題点の多くは現在は解決されて いる。 2)日本技術者教育認定機構(JABEE) 生物生産科学科、緑地・環境学科および園芸経 済学科の 3 学科が参加して、農業環境工学プログラム「生物環境調節カリキュラム」の試 行審査を平成13 年 12 月に受けた。平成 14 年度には同プログラムの本審査を受け、また環 境・緑地学科が中心となって、「森林および森林関連分野」の試行審査を受ける予定である。 なお、園芸学部では、都市域、生活環境などに関する教育研究にも蓄積があることから、 農学を中心としてさら広領域の審査分野の要望がある。この試行審査および本審査は、準 備に多大な時間を要するが、教育カリキュラムおよび教員の教育意識の改善に大きな効果

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があると感じられた。園芸学部は、農学系学部の中では常に先進的にJABEE に取り組む学 部でありたいと考えている。 3)後援会(保護者会) 入学時に後援会費の納入をお願いしている。毎年 1 回総会を開 催していたが、参加者が役員を含め60 名弱と少なかった。 平成 16 年度からの大学の法 人化等を考慮して、平成13 年度から後援会総会の案内状の様式を改善したところ、約 100 名を超える参加者を得て、懇親会も盛況であった。保護者には出欠回答ハガキに質問や要 望事項の記入を依頼した。後日、すべての質問、要望を38 項目に分類して、34 ページの回 答・資料集として、全保護者に郵送した。保護者が、子息の教育、就職、生活などに多大 のまた広範な関心を有していること、および学生と保護者の情報連絡が十分でないことが わかった。後援会費は学生の就職支援、課外活動等の助成に対する貴重な資金となってい る。 4)学生による授業評価 学生による授業評価は平成 11 年度から段階的に拡大され、平成 13 年度には、数人の教員を除いて、ほぼ全員が実施した。現在はこの評価結果の利用法は 教員個人に任されている。この評価結果を教育改善と教員評価にどのように活かしていく かは今後の課題である。 5)導入セミナー(少人数セミナー)各教員が少人数(5-6 人)の 1 年生を担当して、大学で 学ぶ目標、将来設計などを、半年間15 回の課題討論形式で、マンツーマンに近い状況で教 育する。当初は、試行錯誤的に行ってきたが、現在、方法がおよそ固まりつつあり、総体 的には、かなりの効果をあげていると考えられる。 6)シラバス(講義細目) シラバスの内容は、上述のJABEE に対応する必要性もあって、 平成14 年度版から大幅に改善された。内容は充実したが持ち歩くには不便なほどに冊子の 重量が増大し、また製作コストが上昇した。平成15 年度からは、シラバスは、学生の利便 性を増して、同時に低コスト化するために、CD-ROM の形で学生に配布することを原則と する予定である。 7)インターンシップ(就業体験) インターンシップの充実に年々力を入れ、そのため の講義が用意されている。緑地・環境学科では、約30 名の学生が、平成 12 年度には 12 社、 13 年度には 16 社でインタ―ンシップ研修を受けた。秋には、インターシップ学生の受け入 れ企業と参加学生が報告・討論会を学科教員が開催し、意見交換をした。 8)緑の応用実学セミナー 緑地・環境学科が主催して、卒業生の社会における活動実態 や今後の緑地・環境学科における教育研究に対する社会の期待などを語り合うセミナーを 卒業生・学外者を招いて、平成13 年度には 11 回開催し、平成 14 年度には 12 回開催する 予定である。 9)環境デザインコンクール 平成12 年度から高校生を対象に環境デザインコンクールを 環境・緑地学科が実施した。優秀作品には賞状および記念品を贈呈し、優秀作品は11 月の 大学祭に展示公開した。 10)就職相談・情報提供 学科毎に各種の相談および情報提供を行っている。有志教員

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による公務員試験対策検討会を開催している。卒業生と大学院生による 4 年生と 3 年生を 対象とした就職ガイダンスおよび教員を交えての懇親会を開催している。また、全学生へ の就職情報提供を精一杯行っている。 11)留年学生対策 毎年、留年学生が数%いる。現在は、個人面談の回数を増やすこと で対応し、一定の効果を得ているが、さらに改善の余地がある。 12)e-learning 委員会 学部の教育全般(シラバス提供、受講登録、講義、宿題提示、宿 題提出、成績評価、講義参考資料提供、休講通知、成績通知、質問受付、質問回答、遠隔 授業など)の一元化に学外も含めた情報ネットワークを利用するシステムを構築する e-learning 委員会を平成 13 年に立ち上げた。平成 15 年度入学生全員に同一機種ノートパ ソコンを必携させて試行する計画で、教材開発を含めて、準備を進めている。 13)冷房施設完備 前期授業が7月末まであり、従来、7月後半は、学生と教員の双方 にとって暑さがこたえる講義であった。数年前から、教室の冷房設備を順次整え、平成1 3年度には講義室の冷房設備の設置がほぼ完了し、平成14年度には主要な学生実験室の 冷房設備設置が完了する予定である。夏期の冷房時の電気料金がかさむ短所があるが、や むを得ないと判断している。 14)視聴覚・コンピュータ設備 平成13 年度までに教室におけるコンピュータ用ビデオ プロジェクタ利用などの設備を最小限であるが、整えた。今後さらに充実する必要がある。 学生用のコンピュータ・ネットワークおよび情報コンセントは、平成13 年度までに図書分 館、学生ホール、情報処理教育用2教室に設備されたが、未だ不十分ではある。 15)図書分館 平成13 年度に学生と教員を対象に文献検索ガイダンスを 5 回、電子ジャ ーナル利用説明会を 1 回開催した。また留学生用図書を充実した。地域住民への図書館開 放を以前から実施している。利用者が多い時期には、閉館時間を20 時から 21 時に延長し た。 16)バリアフリ―スロープ 平成14 年度中に、園芸学部キャンパスの建物の一部にバリ アフリースロープが設備される。附属農場では平成13 年度に設備された。しかし、身体障 害者への対策は、きわめて不十分であり、今後の大きな課題である。 4.留学生支援 園芸学部キャンパスには約 100 人の留学生が勉学している。留学生の支援には学部とし て最大限の努力をすることが重要であると考えている。 1)留学生援助会 留学生が病気や事故などで緊急に金銭を必要とするときなどの貸し出 し、および留学生の勉学・生活援助のために、留学生支援基金制度を平成13 年に発足させ て、教職員などからの個人的寄付を募り、1 年目に約 160 万円の寄付があった。平成14年 度からは、教職員に加えて、学外の個人・団体からも寄付を受けている。 2)留学生宿舎借上げ 留学生が民間アパートを借りる際の保証人、敷金・礼金の用意な どの煩雑な手続きを軽減するために、平成13 年に、園芸学部が民間アパートなど約 15 部

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屋を、協議・協定を経て、一括借り上げした。留学生は学部の厚生係で申し込み、国際交 流委員会で諮り、入舎選考された後、入居出来るようにした。それに伴い発生する一時空 室等の費用は、留学生支援基金などでまかなうことにした。 3)国際交流 国際交流の促進を図るために部局間交流協定、学生間交流協定の締結を進 めている。平成14 年現在、大学間協定を結んでいる 23 校とは別に、園芸学部は7つの大 学および 7 つの学部と協定を結んでいる。相手国は、カナダ、中国、米国、韓国、タイ、 バングラデッシュ、インドネシアである。また日本人学生の留学支援を、説明会などを開 催して行っている。学部卒業直後あるいは数年後に外国の大学院に進学するケースが増加 しつつある。 4)留学生担当講師 園芸学部には留学生担当教員1名がいる。本来は学部学生だけが対 象であるが、実際には大学院生、外国人研究者を含めて約100名の留学生を支援してい る。日常の支援はもとより、夏と冬の留学生パーティー、地元の国際交流団体との連絡、 日本語講師・学部教員との連絡調整、国際交流一般など、多くの業務を抱えている。 5)帰国留学生同窓会 留学生の多くは卒業・修了後には帰国して母国で活躍している。 それら卒業生は、園芸学部を懐かしみ、また相互協力したいと願っている。平成14 年度か ら中国などを手始めとして、外国での同窓会支部設立のための支援を、園芸学部同窓会(戸 定会)が計画している。今後、この種の支援を順次拡大したいと願っている。 5.広報 園芸学部の社会における存在感を増すために努力し、その努力の過程を通じて、園芸学 部が社会から期待されていること、感じられていることを教員自身が認識することに努め た。 1)園芸学部ホームページ(ウェブサイト) ホームページ(URL: http//www.h.chiba-u. ac.jp)の充実にはかなりの力を入れた。ホームページ管理のために人件費として年間 60 万 円を予算化した。毎日200-250 件、年間 8 万件以上のアクセスがあり、農学系の約 60 学部 のホームページではかなり充実したものとなっている。学部案内、教育、研究、教員活動、 入試、行事、就職、学生生活、公開講座、リンク集など、内容豊富である。現在、英語が 堪能な外国人教員を責任者として、ホームページの英文版を拡充中である。 2)来訪者用展示ホールの新設 園芸学部講義棟の2階にある大教室の前の空間を利用し て、展示ホールを平成13 年に設けた。園芸学部キャンパスの実物模型に加えて、ホールの 壁に、園芸学部の教育研究理念、歴史、入試情報、国際交流、学科、農場、大学院なの概 要を示した写真と図表のパネルを配置した。園芸学部への来訪者が、園芸学部の概要を短 時間で視覚的に理解できるように努力した。来訪者だけでなく、学部学生にも好評を得た。 3)公開研究発表会・学部長賞 平成12年度から、市民への情報提供および学生の教育を 兼ねて、卒業式直前の春分の日の午後に、「千葉大学園芸学部学生による公開研究発表会」 を開催している。学部内での卒業論文・修士論文・園芸別科研究発表会における約 350 課

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題の発表の中から、公開の価値ありと認められた約20 課題を、口頭発表およびポスター発 表している。高校生から年配の方まで幅広い年齢層を含む100∼200 名の参加者を得ている。 発表者には園芸学部長賞を授与している。 4)学部案内ビデオテープ 高校生向けの大学説明会、新入生へのガイダンス、訪問者へ の学部紹介用などにおける利用を目的として、学生の研究活動を主としたキャンパスライ フに焦点を当てて、平成14 年に学部案内ビデオテープの全面改定版を作成した。複製テー プの高等学校への提供を行っている。撮影、音声吹込みなどは専門会社に外注した。 5)第10 回国際園芸技術展への参加 平成 14 年 4 月に千葉県幕張メッセで開催された第 10 回国際園芸技術展に特別協賛団体として参加し、約 20 m2のブースを用いて展示広報を 行ない、教育研究資料配布、入試相談、園芸技術相談などを行なった。この技術展には 4 日間に約 4 万人の来場者があり、園芸学部ブースにも自営農家、団体職員、会社員、大学 院生、高校生、卒業生、外国人など多数が訪れた。名刺などを置いていかれた約 100 名の 来場者には後日来場のお礼状を郵送した。今後も出展を継続する予定である。 6)国道 6 号線トンネル上の看板設置 園芸学部の敷地の下を国道 6 号線のトンネル(ず い道)が横切っている。このトンネルの両側の上部に「千葉大学園芸学部」の大看板を平 成12 年に設置した。運転者にはイヤでも目に入る大きさであるので、上下線を合わせると、 毎日約5.6 万人の運転者が千葉大学園芸学部の看板を見ることになる。助手席などの同乗者 の人数を合わせれば毎日10 万人弱になる。園芸学部の位置と存在を認知してもらうには効 果があると思われる。 7)周辺における誘導案内標識設置 平成12 年以降、最寄り駅の JR 松戸駅から園芸学部 まで1 km 弱の道筋約 10 箇所の電柱、消火栓ポールなどに園芸学部への誘導案内標識を設 置した。また、自動車やバスで園芸学部に来訪する人々に対して、園芸学部周辺約20 箇所 に誘導案内標識を設置した。平成13 年には JR 松戸駅の電光掲示板に園芸学部のスポット 案内を実施した。更に、附属柏農場にも案内板を設置した。 8)入試広報 受験生増大のために多岐にわたる努力をしている。平成13 年度の活動を以 下に示す。7 月下旬の 300 名を超える参加者を得て大学説明会を行った。参加者全員に学 部・学科名入りの「うちわ」を資料と共に配布した。11 月の大学祭には入試相談コ―ナ― を設け約40 人の相談を受けた。約 20 の高校を訪問して、学部紹介あるいは出張講義を行 なった。高校生(個人およびグループ)の園芸学部訪問・相談は、予約無しでも随時受け 付けて、約 50 件の応対をした。予備校などが主催する合同大学説明会には 7 回参加した。 上述の活動のために学科紹介パンフレットなどを作成した。留学生獲得用の英文パンフレ ットも作成した。平成14 年度には近隣の高校との連携活動を強化する予定である。 6.社会貢献 園芸学部のような応用科学を主体とする学部では、社会貢献は特に重要である。社会貢 献には、地元に密着した地域サービス的な社会貢献、研究成果の産業・行政応用を目指す

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社会還元・国際貢献などが含まれる。ここでは、それらの一部を述べる。 1)公開講座 松戸市の園芸学部では、平成 11 年から「ガーデニング」に関する公開講座 を、造園、野菜、果物などとテーマを毎年変えながら土曜日に実施している。また、松戸 市と共催して、松戸市民講座「まつどのみどり」、「緑のまちづくりに向けて」、「戸定が丘 の自然を訪ねて」などを開講している。平成 13 年 11 月の大学祭では地域住民などを対象 として環境緑化セミナーを開催した。柏市の附属柏農場では、親子がペアで参加する子供 開放プラン公開講座などを毎年実施している。一回の講座は土曜日 5−10 回で完結し、受 講者には最後に修了証書を授与する。附属農場では、平成13 年度に果物のジャム作り教室 (2 日間を 3 回)も開講した。農場生産物の販売所に常設園芸相談コーナーを設け、随時相 談を受けているが、今後、さらに充実させる予定である。附属柏農場では近隣の小学校、 幼稚園、養護学校に対して、随時、園芸教室を開講している。 2)高等学校産業教育実習助手講習会 この講習会は農業高校の農場実習助手が教員免許 を取得できるようにするための講習会で、7 月末の 8 日間に 90 分授業を 1 日 4 回、計 32 コマ行った。この講習会は、文部科学省の要請の下に、いくつかの大学の農学系学部が回 り持ちで担当している。園芸学部は、平成12,13 年度に各約 20 人の教員が協力して全力で 取り組んだ。 3)自治体各種委員会委員 ほぼ全教員が、地方自治体、農林水産省、国土交通省、環境 省、学協会、NGO などの委員をして社会貢献をしているが、ここでは、述べない。 4)全国農学系学部長会議等 学部長は学部の顔として、学部の活動を対外的にアピール し、同時に外部の情報を収集して学部に伝える役目を有する。国立大学農学系学部長会議 は、従来、当番校が回り持ちで年2 回開催されていた。平成 11 年に、林良博 東京大学農 学部長が発案し、平成12 年 4 月から、同会議の役員を選挙で選び、恒常的事務局を置き、 従来の年 2 回の会議に加えて、年数回の役員会およびシンポジウムを開催するなど、同会 議の活動を活発化することになり、初代会長に林良博氏が選出された。この活性化のため に年会費を集めることになった。林会長の主導の下に、平成13 年度に会則の変更が行われ、 公立大学、私立大学の農学系学部長が対等の立場で参加するようになり、全国農学系学部 長会議と改称された。筆者は、平成12 年 4 月から林会長の下で代表幹事となり、会長の意 向を実現する助力をした。また、同会議の代表幹事としての色彩を有して、日本農学アカ デミー理事、(財)農学会評議員、(財)大学基準協会 農学系教育基準改定委員会委員を つとめている。これらの活動は、同会議における情報・意見交換の活発化だけでなく、園 芸学部の改革と園芸学部の広報にも役立っている。 7.園芸学部キャンパス・建物整備 園芸学部であるからキャンパス内や建物内を出来る限り美しくしようと努力しているが、 樹木の多いキャンパスの景観維持と物品にあふれた建物内の整理整頓は容易でない。環境 整備には、教員の意識の改革と多くの投資が必要である。

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1)キャンパス環境整備 年に 3 回程度、全学生・院生、全教職員が松戸キャンパス内の 草刈りを実施するのは、園芸学部の永年の年中行事である。この行事に反対する声はほと んど聞かれない。他に、園芸学部の同窓会である「戸定会」の有志のサークルがボランテ ィア活動としてシーズン中の毎土曜日に庭園の手入れをし、これに学生・院生が時々参加 している。環境整備に伴う草木残渣の資源化はある程度進んでいるが、一般ゴミの分別回 収と再資源化に関しては未だに不十分である。 2)木に名札を付ける会、松戸キャンパスを良くする会 平成13 年度、松戸キャンパス内 の主だった樹木に名札を付ける学生サークルにわずかな資金提供をした。この学生サーク ルは樹木マップを作成し、また季節ごとに「かわら版」を発行している。また、学生組織 である「松戸キャンパスを良くする会」と教員がキャンパスプランを討議する機会を年に 数回設けている。この学生サークルは自発的に構内環境整備を行っている。樹木の名札付 け、植生マップ、農場案内図の作成、ボランティアグループへの園芸指導などは附属柏農 場でも行なわれている。 3)廊下等の美化 多くの国立大学がそうであるように、園芸学部の研究棟の廊下は、実 験器具、雑誌棚、衣服ロッカーなどであふれ、美観が損なわれるだけでなく、防災上も由々 しき問題である。廊下の物品を整理整頓して、美化するように学部長から再々依頼し、平 成11 年度以降、ややきれいになったが、未だ不十分である。廊下は、本来、公道的性格を もち、来訪者などが通り、住人の整理整頓能力を判断する場所であるはずであるが、多く の教員は、廊下は台所裏、倉庫程度と認識している。強力な権限で働きかけない限り、廊 下の美化は達成されないのだろうか。なお、トイレなどの改修、学生ホールの整備などは 重点的に行った。 4)構内安全対策 松戸キャンパス内の車両の動線と徒歩通行者の動線をできる限り分け て、通行者と車両運転者の安全と快適性を増すように、道路、駐車場、車止めなどを整備 した。教室と福利厚生施設等を含む空間への車両の出入りを禁止し、車両フリーゾ―ンを 拡大した。 5)園芸・緑地の資産整備 園芸学部キャンパスには 100 年近い歴史があり、園芸・緑地 に関する各種の資産があるが、その整理と管理は不十分である。平成13 年度に「園芸・緑 地資産整備委員会」を発足させ、室内収蔵型資産(標本、図面、画像、歴史資料など)お よびフィールド管理型資産(庭園、遺構、景観、樹木など)の記録、整備、管理を行うこ とになった。 6)防犯 キャンパス内の盗難、器物破壊などが年々増加する傾向にある。携帯用防犯ベ ルの女子学生への貸与、防犯灯・屋外照明灯等の増設、タバコ自動販売機の撤去、監視カ メラの設置などを試みているが、残されている課題は多い。平成13年度には15 件の盗難、 3 件の損傷行為、その他 6 件があった。東京都心から通勤 1 時間圏内の人口 47 万人都市に おける大学キャンパスであるのに、常駐警備員を置かずに、終日、休日も含めて出入りで きるので、防犯上の問題を残している。

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8.大学運営への貢献 1)環境健康科学センター 大学共同教育研究施設として、環境健康科学センター(仮称) の柏キャンパスへの新設を、園芸学部が基幹学部となり、文部科学省に平成15 年度概算要 求した。このセンターは、都市環境園芸農場(仮称)および自然科学研究科前期(修士) 課程の環境園芸学関連の専攻と密接な連携のもとに運営される予定である。このセンター では、環境と人間の関係を見直し、共生というライフスタイルを取り入れ、植物が人間に およぼす総合効果を、医療、教育、社会活動に大幅に取り入れた環境健康科学を創生する ことを目的として、研究部と実践部を設け、地元の地方自治体との連携の下に運営する予 定である。 2)千葉大学創立50 周年 平成 11 年 11 月に千葉大学創立 50 周年記念式典が幕張プリン スホテルで催され、1000 名を超える参会者を得た。園芸学部附属農場で栽培された鉢物シ クラメンが参会者全員に提供され、好評を得た。 3)千葉大学校友会創立総会 平成13 年 3 月に千葉大学校友会の設立総会が約 500 人の参 会者を得て幕張プリンスホテルで開催された。園芸学部附属農場はプリムラ鉢物を参会者 全員に提供し、喜ばれた。 4)本部キャンパスでの環境整備 平成13 年度には、園芸学部の園芸別科生を教員が引率 して、樹木の枝打ち、整枝、剪定を行った。また植生マップを作成し、主要樹木に名札を 設置した。樹木写真を主としたキャンパス案内パンフレットの作成に協力した。平成14 年 度には園芸ボランティアによるキャンパス環境整備を主体的に支援する。園芸学部のこの ような協力は、千葉大学における園芸学部の存在感を高めるのに有効である。 5)大学行事への参加 大学が主催して各部局が協力する、公開講座、ビジネスセミナー、 先端的科学技術研究発表会、オープンリサーチ(公開研究紹介)などに積極的に参画する ように努めている。 9.おわりに 千葉大学園芸学部における平成 11-13 年度における運営および組織改革の日常的取り 組みの主なものを紹介した。言うまでもなく、これらの取り組みは全教職員の日常的努力 の結果である。 他の農学系学部でも多様な取り組みがなされていることと思う。各学部における学部運 営の改善に関する日常的取り組みについては、従来、学部間の情報交換、意見交換が比較 的少なかったように思う。本稿が、学部間の情報・意見交換を促進するきっかけの一助に なれば幸いである。 引用文献 1)東北大学農学部「農学ビジョン懇談会」編、1997、人間と環境のコミュニケーション

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農学―杜の都からの発信―、農林統計協会、115 ページ。 参考資料 園芸学部JABEE 委員会(松岡延浩)、J ABEE 農業環境工学関連分野農業環境工学プログ ラム自己点検書(試行)、2001、千葉大学園芸学部、285pp. 千葉大学園芸学部シンポジウム実行委員会(油井正昭)、1999、園芸学部の 21 世紀ビジョ ン(千葉大学園芸学部シンポジウム報告書)、107pp. 千葉大学園芸学部(飯本光雄)、1999、21 世紀への発展に向けて−現状と将来展望−、365pp. 千葉大学園芸学部外部評価委員会(別府輝彦)、2002、外部評価報告書、101pp. 千葉大学園芸学部(飯本光雄・山内正平・石井麻代)、2001、平成 13 年度後援会「学部に 対するご質問・ご回答事項についての回答書」、32pp. 千葉大学園芸学部、2001、平成 13 年度 高等学校産業教育実習助手講習会テキスト、123pp. 千葉大学園芸学部附属農場(野間豊)、2001、君にも作れる 果物、野菜、花(平成 13 年 度千葉大学子供開放プラン)、31pp. 千葉大学園芸学部(野間豊)、2000、ガーデニング―野菜の話―(千葉大学公開講座テキス ト)、63pp.

参照

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