微積Bの期末テスト,および基礎演習の期末テスト(原の担当分)の解答例と講評(2006.02.12)
急いで作ったからミスプリなどが隠れているだろう.おかしいと思ったら鵜呑みにせずに,自分で納得するまで考 える事!
期末テストについて
(期末試験,全体の講評)ちょっと問題数が多すぎた.この点は反省しています.特に,時間切れのため,本来でき るはずの人の得点が伸びなかった部分はあると思う.申し訳ない.
ただ,問2の出来が非常に悪かった のは全く,予想外でした.このため,僕の予想していたよりも十点くらい低 い得点分布になりました.得点はともかく,問2は連鎖律の基本的な問題ですから,やり方だけでもできて欲しかっ た.この点は再調査に呼ばれた人,呼ばれなかった人,共に心して復習するように.
また,中間に引き続き,もっと点が出て良いはずの人が,ショウモナイ計算ミスで足を引っ張られたケースも目 立ちました.皆さんは発達途中だから,こういう事もあり得る訳ですが,ともかく,解答を細部まできちんと書き 出してしっかり理解することを日頃から心がけて欲しいと思います.
問1:単純な極大・極小の問題ですが,(a)極値を取る点の候補はfx=fy= 0を解いて,(0,0),(2,2)の2つ.こ のそれぞれを吟味する.そのためにヘシアンを計算しておくと
H(x, y) = [
6x −6
−6 6 ]
, detH(x, y) = 36(x−1)
である.
• (0,0)ではdetH =−36<0なので,この点は鞍点(極大でも極小でもない).
• (2,2)ではdetH = 36>0なので極大か極小である.更にfxx = 12>0 なので,極小とわかる.極小値は f(2,2) =−4である.
(b)これはラグランジュの未定乗数法を使うのが常套だが,計算はちと大変.G(x, y, λ) =g(x, y)−λ(x2+y2/3−1)
をx, y, λで微分したものをそれぞれゼロとおくと,
3x2y= 2λx, x3=2
3λy, x2+y2 3 = 1 を得る.これを解くのだが,例えば,x= 0か否かで分けるのが簡単だろう.
x= 0ならλ= 0, y=±√
3となる.
x6= 0なら3xy= 2λなので,これを2つ目の式に入れてx3=xy2,つまり,x2=y2となる.あとはこれを3番 目の式に入れて,(x, y) = (±√
3/2,±√
3/2)が得られる(複合任意).
さて,これらが極値になっているかどうかの判定はなかなか難しい.まずはちょっとええ加減な考え方を述べる.
(ちょっとええ加減)それぞれの極値の候補でgの値を計算すると,(式の中では複合同順)
g(0,±√
3) = 0, g (±
√3 2 ,±
√3 2
)
= 9 16, g
(±
√3 2 ,∓
√3 2
)
=−9 16 であるので,多分,±169 が極大(最大),極小(最小)だろうとは予想できる.
実際,(x, y)の存在範囲は楕円(有界閉集合)であり,g(x, y)はx, yの連続関数なので,最大値,最小値は絶対 にあるはず.だから,±169 が極大(最大),極小(最小)であるのはほとんど明らか.
最後に,(x, y) = (0,±√
3)である.これは最大値と最小値の間にあるのだが,これが極大や極小ならば,他にも 極小または極大のところがないといけない.これがないので,極大でも極小でもない,と結論できる.
(厳密なやり方:ここまでは要求していないが,参考のために載せる)これはもう,各候補の周りでテイラー展 開するしかない.ただし,拘束条件が入っているため,x, yが勝手に動けない事には注意を要する.(0,√
3)を例に して説明する.この点の近傍でx=² の所を考えると,x2+y2/3 = 1から,y2= 3(1−x2) = 3(1−²2),
y=√ 3×√
1−²2≈√ 3
( 1−²2
2 )
ある.(平方根をとる時には,y=√
3の近傍であることを考慮して,プラスの方をとった.)これによると,
g(²,√ 3√
1−²2)≈√ 3ײ3
( 1−²2
2 ) となっていて,²の符号によってこの正負は変わる.従って,(0,√
3)は極値ではない.
他の点も同様に考察すると,うえの「ちょっとええ加減」な結論が証明できる.例えば,(√ 3/2,√
3/2)の近傍の 点は(√
3/2 +²,
√
3/4−3√
3²−3²2)と書けるから
g (√
3 2 +²,
√
3/4−3√
3²−3²2 )
= (√
3 2 +²
)3
×√
3/4−3√
3²−3²2= 9 16
( 1 + 2²
√3 )3
×( 1−4√
3²−4²2 )1/2
= 9 16
( 1 + 2√
3²+ 4²2+O(²3) )×(
1−2√
3²−2²2−6²2+O(²3) )
= 9 16
(
1−4²2+O(²3) )
(1)
となって,確かに極大であることがわかる.
(講評)全般的に計算間違いをした人が目立った.このようなミスは将来,致命的になる可能性があるから,今 から直すように努力すべきだ.
問2:出発点はϕ(y, z)の満たす方程式
f(
ϕ(y, z), y, z))
= 0 (2)
である.これをyで偏微分してみよう.ϕ自身もyに依存する事に注意して連鎖律を用いると f1
∂ϕ
∂y +f2= 0 (3)
ここで,fの第1,第2,第3引数による偏微分をf1, f2, f3と書いた.また,これらの偏微分は(ϕ(y, z), y, z)にお ける値である.従って,これを∂ϕ∂y について解いて,
∂ϕ
∂y =−f2 f1
, 同様に ∂ϕ
∂z =−f3 f1
(4)
が得られる.
次に(3)の両辺をzで偏微分してみよう.この際,f1やf2自身の引数が(
ϕ(y, z), y, z))
であることに注意して連
鎖律を使うと, (
f11∂ϕ
∂z +f13 )∂ϕ
∂y +f1 ∂2ϕ
∂z ∂y +f12∂ϕ
∂z +f23= 0 (5)
が得られるが,ここに(4)の結果を代入すると
−(
−f11
f3
f1 +f13
)f2
f1 +f1
∂2ϕ
∂z ∂y−f12
f3
f1 +f23= 0 (6)
となる.これを∂z ∂y∂2ϕ に関して解くと,
∂2ϕ
∂z ∂y =−f23 f1
+f13f2+f12f3
f12 −f11f2f3
f13 (7)
となって,解を得る.
(講評)全体の講評でも書いたが,できた人はホンの数人で,かなりのショックだった.正直,2/3 くらいの人 はできるはずだと思っていたのだが...このお陰で得点予想が十点以上狂ってしまったではないか!! 教科書の節 末問題にも載ってるし,講義中にも陰関数定理の証明に関して「この導関数の計算法は自分で納得しておく事」と 言っておいたのに...これくらいはやっておいて欲しかったなあ.でもこれで見えてきた事は,皆さん,連鎖律が 苦手だという事です.(春学期の最後だったからかな.)
問3:これもできるはずだが,(a)の方は広義積分の定義が良くわかっていない人が多かった.また,(b)の方は 時間がなかった人が多かったようだ.
(a)I1の被積分関数はx= 1が特異点だから,x= 1のところで積分を分けて考えるべきだ.つまり,
I1= lim
a→1−0
∫ a 0
1
1−x2dx+ lim
b→1+0
∫ 2 b
1
1−x2dx (8)
とすべきである.ここで重要なのは,a, bの極限は独立にとり,右辺の極限が独立に存在する時のみ,I1が存在す るということだ.
さて,
∫ a 0
1
1−x2dx=
∫ a 0
1 2
{ 1
1−x+ 1 1 +x
} dx=1
2 [
−log(1−x) + log(1 +x) ]a
0
= 1 2log
(1 +a 1−a )
(9)
であるので,a→1−0ではこれは+∞になって,極限は存在せず,I1も存在しない.
(注)1の両側からの極限は別々にとる必要があるのに,同じ²を用いて1−²,1 +²と書いたため,両者がキャ ンセルしてしまった人がかなりいた.しっかりして下さいな!
(b)I3の被積分関数はx≥0では有限だから,広義積分として,
I3= lim
L→∞
∫ L 0
1
x3+ 5x2+ 8x+ 4dx (10)
として定義されるものである.この被積分関数は部分分数分解によって(受験数学を思い出す事)
1
x3+ 5x2+ 8x+ 4 = 1
x+ 1 − 1
x+ 2 − 1
(x+ 2)2 (11)
となるので,
∫ L 0
1
x3+ 5x2+ 8x+ 4dx=
∫ L 0
{ 1
x+ 1− 1
x+ 2 − 1 (x+ 2)2
}
dx= log (L+ 1
L+ 2 )−log
(1 2 )
+ 1
L+ 2−1
2 (12) が得られる.L→ ∞の極限をとって,I3= log 2−12が答え.
(注)こっちの方はI1とは逆に,部分分数に分けた各部分で共通のLを使う必要がある.(中間テストでも同じ ような注意をしたのだが...折角プリントにしてるんだから,読んで下さいな.)
問4:fnについて.何度もやったので答えだけ.
nlim→∞fn(x) =
1 (x= 0) 0 (x >0)
(13)
となる.収束は一様収束ではないが,これを示すには(極限をf(x)として) sup
0≤x≤1|fn(x)−f(x)|を調べればよい.
gnの方は少し難しい.まず,gn(1) = 1n×p(1) = 0なので,gn(1)の極限はゼロ.
x <1を考えるために,以下の事を思い出す:p(x)は閉区間上での連続関数なので,|p(x)|は最大値を持つ,つ
まり,|p(x)| ≤M となるようなM が存在する.従って,0 ≤x < 1では |gn(x)| ≤ xnM が成り立ち,こいつは n→ ∞でゼロに行く.
上の2つをまとめて,gn(x)の極限は0≤x≤1では恒等的にゼロである.
問題はこの収束が一様かどうかであるが,答えは「一様収束する」である.ただ予告通り,この証明はかなり難 しい.特にxnp(x)の最大値を直接考えると,xnのn依存性のためにうまく行かない.ここはxnの入らない形で 考えるのが良い.証明の方針としては
• xが1に近いところはp(1) = 0とpの連続性のためにxnp(x)はゼロに近い
• xが1から離れていると,xn自身がゼロに行くので,xnp(x)はゼロに近い
という,2通りのメカニズムをうまくつなぐのが良いだろう.
(やり方その1:標準的なもの)
例によって,任意の² >0を固定する.p(1) = 0とpの連続性から,関数pによって決まる定数δ(²)>0が存在 して,
0<1−x < δ(²) ならば |p(x)|< ² (14) が成り立っているようにできる.以下,説明のためにx²= 1−δ(²)とおく.0≤x≤1ならば0≤xn≤1である ので,(14)は特に,
1−δ(²) =x²≤x≤1 ならば,すべてのnに対して |gn(x)|< ² (15) を意味する.これでx≥x²の方では|gn(x)|は²より小さい事がわかった.
次に,0≤x < x²については|p(x)|の最大値M を用いて
|gn(x)|=|xnp(x)| ≤xn×M ≤(x²)nM (16) と押さえてみる.Mとx²はnには無関係だから,M, x²に依存してnを十分に大きくとる事で,上の右辺をいく らでも小さくできる.つまり,
², δ(²), M に依存する(十分大きな)Nがとれて, n≥N =⇒ (x²)nM < ² (17) となる.つまり,², δ(²), M に依存する(十分大きな)Nがとれて,
n≥N =⇒ すべての 0≤x≤x² に対して |gn(x)|< ² (18) がなりたつ.(15)と(18)によれば,(18)にでてくるN 以上のnでは|gn(x)|< ²がすべてのx∈[0,1]で成り立つ ことになる.これは一様収束の定義そのものなので,一様収束が証明された.
(やり方その2:もうちょっとかっこいいやり方)この方法はある人の答案に書いてあったものである.正直,この ようにまとめられるとは思っていなかった.面白いやり方だと思う.
「やり方1」では²を決めてからx²を決めて行ったが,これを自動的に分けるやり方である.x²の代わりに,
xn = 1−1√
nととってやろう.それで,一様収束を示すために, sup
0≤x≤x
|gn(x)|を以下のように分解して評価する:
sup
0≤x≤x
|gn(x)| ≤max {
sup
0≤x≤xn
|gn(x)|, sup
xn≤x≤1
|gn(x)|}
. (19)
さてまず前の方は|p(x)| ≤M を用いて sup
0≤x≤xn|gn(x)|= sup
0≤x≤xn
xn|p(x)| ≤ sup
0≤x≤xn
xnM =M×(xn)n=M (
1− 1
√n )n
(20)
と押さえてみる.この右辺がn→ ∞ではゼロに行くことは,わかるよね.
一方,後ろの方はxn≤1を用いて sup
xn≤x≤1|gn(x)|= sup
xn≤x≤1
xn|p(x)| ≤ sup
xn≤x≤1|p(x)| (21)
とできる.ところが,n→ ∞でxn →1だから,上の右辺はlimx→1−0|p(x)|= 0に収束する.
従って,(19)の右辺はn→ ∞でゼロに収束することが証明できた.これはgnが0に一様収束することに他なら ない.
(講評)fnは全員にできて欲しいが,正直,gnの方は難しい.実際,一様収束まで完答できた人は非常に少な かった.かなりの人がxnp(x)の最大値を直接出そうとして,n依存性を殺せていなかったのだ.ここはややこしい けれども非常に重要なところだから,2年生以降に向けて良く納得しておくように.
問5:レポート問題や演習の問題として出題してはいたのだが...結論から言うと,α >0で収束し,α≤0では 積分は存在しない.以下,簡単に証明する.
まず,これは広義積分として lim
L→∞
∫ L 1
sinx
xα dxと考えるべきである事に注意しておこう.以下,この極限をいろ いろと考えて行く.
α≤0では被積分関数がゼロに行かないので,上の極限は存在しない.α >0での収束はコーシーの条件を示す 事で証明したい.つまり,L1< L2として,
∫ L2 1
sinx xα dx−
∫ L1 1
sinx xα dx=
∫ L2 L1
sinx
xα dx (22)
が,L1を大きくとる事によっていくらでも小さくなるかを知りたい.
これを最も簡単に行うには,部分積分が良いだろう:
∫ L2 L1
sinx xα dx=
[−cosx xα
]L2 L1
−
∫ L2 L1
−cosx
xα+1 (−α)dx= cosL1
Lα1 −cosL2
Lα2 −α
∫ L2 L1
cosx
xα+1dx (23)
であるので,
¯¯¯¯∫ L2 L1
sinx xα dx¯¯
¯¯≤ 1 Lα1 + 1
Lα2 +α
∫ L2 L1
1
xα+1dx= 2
Lα1 (24)
が得られる.これはL1を小さくすればいくらでも小さくなるので,コーシーの条件が満たされ,従って広義積分 は収束する.
(注)部分積分を行わずに,2πの倍数になっているxで積分区間を分けて議論しても良い.
なお,sinxが正負両方の値をとるのに,それを全く無視して解答している答案が多々見られた.
問6:(a)以外はかなり簡単な問題だと思うのだが,時間がなかったかな...(a)もそんなに難しいものではない と思うが,焦るとできなくなる可能性があるわね(特にanの下界を作るのが難しいかも).
(a)成り立つ.「有界な単調列」であることから証明する.以下,an=
∑n k=1
f(k)−
∫ n 0
f(x)と書く.
まず,f(x)が単調減少であるから(kは非負の整数),
k≤x≤k+ 1 ならば f(k)≥f(x)≥f(k+ 1) (25)
であり,両辺を積分して
f(k)≥
∫ k+1 k
f(x)dx≥f(k+ 1) (26)
が得られることに注意する.
(26)の右側の不等式から
an+1−an=f(n+ 1)−
∫ n+1 n
f(x)dx≤0 (27)
が得られので,{an}は 単調非増加 な数列である事がわかった.
次に(26)をk= 0からk=n−1まで足し算すると
n−1
∑
k=0
f(k)≥
∫ n 0
f(x)dx≥
∑n k=1
f(k) (28)
を得るが,この左側の不等式から
an =
∑n k=1
f(k)−
∫ n 0
f(x)dx=
n−1
∑
k=0
f(k)−
∫ n 0
f(x)dx−f(0) +f(n)≥ −f(0) +f(n)≥ −f(0) (29) が得られる(最後のところではf(x)≥0を使った).つまり,{an}は 下に有界 な数列なのだ.
下に有界な単調非増加数列は収束するから,{an}は収束する.
(b)正しい.「コーシーの判定条件」をチェックすることで,以下のように証明する.
広義積分∫∞
0 |f(x)|dxが収束するので,これはコーシーの条件を満たす.すなわち
∀² >0 ∃M(²) M(²)< L1< L2 =⇒ ¯¯
¯¯∫ L1 0
|f(x)|dx−
∫ L2 0
|f(x)|dx¯¯
¯¯=
∫ L2 L1
|f(x)|dx < ² (30) である.ところが,a < bの時には|∫b
af dx| ≤∫b
a |f(x)|dxであるので,上から直ちに
∀² >0 ∃M(²) M(²)< L1< L2 =⇒ ¯¯
¯¯∫ L1
0
f(x)dx−
∫ L2
0
f(x)dx¯¯
¯¯=¯¯
¯¯∫ L2
L1
f(x)dx¯¯
¯¯≤
∫ L2
L1
|f(x)|dx < ² (31) が結論できるが,これは∫∞
0 f(x)dxに対するコーシーの条件に他ならない.
(c)fnがf に一様収束している事から,
∀² >0 ∃N >0 ∀t∈[a, b] n≥N =⇒ |fn(t)−f(t)|< ²
b−a (32)
が成り立つ.そこで,n≥N では
|gn(x)−g(x)|=¯¯¯
∫ x a
fn(t)dt−
∫ x a
f(t)dt¯¯¯≤
∫ x a
|fn(t)−f(t)|dt≤
∫ x a
²
b−adt= t−a
b−a²≤² (33) がなりたつが,これはgn →gが一様収束であることの定義そのものである.
基礎演習の期末テスト(原の担当分)について
少し予想よりも出来が悪かったとは思います.すべて演習問題にあったものばかりですから,もうちょっと出来 ても良かったのでは...
問1:やるだけです.
(a)は fx=fy= 0を解いて,極値を取る点の候補が(0,0)と(a, a)とわかる.また,(x, y)におけるヘッセ行列 の行列式は9(4xy−a2)である.以下,(0,0)と(a, a)を別々に考察する.
ここで(0,0)の方はf(x,0) =x3 であり,これはxの正負に応じて符号を変えるので,鞍点である.
一方,(a, a)でのヘッセ行列の行列式は27a2である.従って,a6= 0ではこの値は正であるから,極大か極小に なっているはず.そこでfxx(a, a) = 6aを考慮すると,a >0では極小,a <0では極大,とわかる.(極値はどちら の場合も−a3).
最後に,a= 0では(0,0) = (a, a)であるので,最初に述べた事から,これは鞍点である.
以上をまとめると,
• a= 0では極大も極小もない.
• a >0では(a, a)にて極小で,その時の値は−a3.
• a <0では(a, a)にて極大で,その時の値は−a3.
(b)は,まずはラグランジュの未定乗数法を用いてみると,極値の候補点は
y+z= 2λx, z+x= 2λy, x+y= 2λz, x2+y2+z2= 1 (34)
の解として見つけられる.(拘束条件x2+y2+z2= 1は特異点を持たないので,上の方程式の解で尽くされる.)こ の連立方程式はx, y, zに関して対称なので,対称性を崩さないように解いて行くと,
λ= 1 または x+y+z= 0 (35)
となる.λ= 1の時は更に解けて,x=y=z=± 1
√3 となる.
さて,これらが極値を与えているのかの判定を厳密に行うのはなかなか難しく,このテストのレベルではそこま では要求していない.以下,参考までに説明する.
この問題ではx, y, zが有界な閉集合上を動き,f(x, y, z)も連続なので,最大値,最小値は必ず存在することに注 意しておく.
x+y+z= 0をまず考えてみると,
0 = (x+y+z)2= (x2+y2+z2) + 2(xy+yz+zx) = 1 + 2g(x, y, z) (36)
となって,g=−1/2であることがわかる.さらに,x+y+z6= 0では
0<(x+y+z)2= 1 + 2g (37)
であるので,g >−1/2である.つまり,g=−1/2は最小値であり,それはx+y+z= 0の時に起こる事がわか る.これは厳密な意味での極小値ではなく,広義の極小値になっている.
次にx=y =z=± 1
√3の場合はg= 1であることがわかる.これが最大かつ極大であることは容易に予想され るが,厳密に示すのは簡単ではない.極大である事を示す一つの手はこの点の周りで拘束条件を考えに入れてテイ ラー展開する事である(微積Bのテストの問1(b)の解答に示したように).ここでは少し異なったやり方を紹介 する.
一般に実数列{ai},{bi}に対して,シュワルツの不等式
¯¯¯
∑n i=1
aibi¯¯≤(∑n
i=1
a2i
)1/2(∑n
i=1
b2i )1/2
(38)
が成り立つ.これをいま,(x, y, z)と(y, z, x)という数列に適用すると,
|xy+yz+zx| ≤(
x2+y2+z2 )1/2(
y2+z2+x2 )1/2
= 1 (39)
が得られるので,g= 1は確かに最大値である.また,シュワルツの不等式の等号はaiとbiが比例する時にしか成 り立たない.今の場合,これはx=y=z=±1/√
3を意味するので,この点でのみg= 1になる.つまり,この点 は極大点である.
問2a:問題の意味,特に一様収束がわかってないような答案がかなりあった.これは問2bにも共通している.
この問題では,f(x)を積分で表現するようつとめるのが良いだろう.結局はf0(x) =g(x) = limn→∞fn(x)を示 すつもりなので,G(x) =∫x
a g(t)dtを定義して,これがf(x)に一致する事を示せば良い.(ここで,連続なfn0(x)が g(x)に一様収束するから,行き先のg(x)も連続関数であり,従って上のG(x)を定義する積分は存在する.)
さて,fn0 がgに 一様収束するので,積分と極限の順序を入れ替えて良い.つまり,(以下,a≤x≤b)
nlim→∞
∫ x a
fn0(t)dt=
∫ x a
g(t)dt=G(x) (40)
がなりたつ.しかし,この左辺は,微分積分学の基本定理から
nlim→∞
[
fn(x)−fn(a) ]
=f(x)−f(a) (41)
に等しい.つまり,
f(x) =f(a) +
∫ x a
g(t)dt (42)
が証明されてしまった.両辺をxで微分すれば,直ちにf0(x) =g(x)が結論できる.また,これを用いて上の(40) をもう少し丁寧に見ると,
fn(x)−f(x) =
∫ x a
fn0(t)dt−
∫ x a
g(t)dt+fn(a)−f(a) =
∫ x a
{fn0(t)−g(t)}dt+fn(a)−f(a) (43)