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8世紀の竪穴式住居の入口について

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8世紀の竪穴式住居の入口について

著者 木田 清

雑誌名 金大考古

21

ページ 2‑3

発行年 1996‑01‑01

URL http://hdl.handle.net/2297/7584

(2)

- 2 - 金 沢 大 学 考 古 学 研 究 室 草 創 の こ ろ

大 正 大 学 教 授 上 野 佳 也

1 9 7 4 年 、 金 沢 大 学 法 文 学 部 に 考 古 学 講 座 が 設 置 さ れ 、 同 年 7 月 1 日 、 私 は 教 授 と し て 着 任 し た 。 7 月 3 日 、 佐 口 透 教 授 に 案 内 さ れ て 史 学 科 の 会 議 で 紹 介 さ れ た 。 1 0 日 、 初 め て 教 授 会 に 出 席 し た 。 こ の 日 は 大 雨 で あ っ た こ と を 記 憶 し て い る 。

1 0 月 9 日 に 、 こ の 新 設 の 考 古 学 専 攻 に 進 学 希 望 の 2 年 生 、 石 原 俊 樹 君 、 高 橋 明 子 さ ん 、 辻 佐 和 子 さ ん が 教 官 室 に 尋 ね て き た 。 そ の 後 、 私 の 教 官 室 の 隣 の 故 井 上 鋭 夫 教 授 の 部 屋 に 仮 研 究 室 と し て 横 書 き の 小 さ な 「 考 古 学 研 究 室 」 の 札 を 書 い て か か げ た 。 こ れ が 金 沢 大 学 考 古 学 研 究 室 の 開 設 の 歴 史 的 瞬 間 と 、 そ の 時 私 は 感 じ た 。 同 月 2 2 日 に 考 古 学 概 説 の 講 義 を 始 め 、 2 4 日 に 、 仮 の 考 古 学 研 究 室 の 掃 除 を し て 、 進 学 の 決 ま っ た 先 の 3 君 と 共 に 紅 茶 と お 菓 子 で 発 足 を 祝 っ た 。 こ れ で 教 官 と 専 攻 学 生 が 揃 っ た 。

そ れ か ら 重 要 な 仕 事 と し て 、 図 書 、 実 習 器 材 を 整 え ね ば な ら な か っ た 。 ま ず 基 本 的 図 書 と し て 『 考 古 学 雑 誌 』 の バ ッ ク ナ ン バ ー で あ る が 、 こ の 雑 誌 は ち ょ う ど こ の こ ろ 、 古 書 店 か ら 姿 を 消 し て し ま っ た の で 当 初 は 手 に 入 ら な か っ た 。 そ の 他 は 『 人 類 学 先 史 学 講 座 』

( 雄 山 閣 ) 、 『 旧 版 考 古 学 講 座 』 ( 雄 山 閣 ) 等 か ら 一 応 揃 え る こ と が で き た 。 後 日 『 考 古 学 雑 誌 』 を 半 分 手 に 入 れ る こ と が で き 、 さ ら に 幸 せ な こ と に 、

『 考 古 学 講 座 』 の 先 行 段 階 の 貴 重 な

『 考 古 学 会 雑 誌 』 、 『 考 古 』 、 『 考 古 界 』 一 揃 い を 、 私 の 東 大 時 代 の 恩 師 で

当 時 大 正 大 学 教 授 で あ っ た 斉 藤 忠 先 生 か ら 寄 贈 し て い た だ い た 。 こ の 3 誌 が 揃 っ た こ と は 望 外 の 喜 び で あ っ た 。 ま た 、 八 幡 一 郎 先 生 か ら い た だ い た 本 も あ る 。 そ の 他 の 報 告 書 は 取 り あ え ず 私 の も の を 置 い た 。

や が て 考 古 学 研 究 室 と 実 習 室 が で き た 。 土 器 洗 い 場 も 設 計 し て 作 っ て も ら っ た 。 ま た 考 古 学 研 究 室 に 購 入 し た 図 書 を お い た が 、 最 初 は 壁 際 だ け で あ っ た よ う な 気 が す る 。 実 習 器 材 と し て は カ メ ラ 、 測 量 器 具 な ど を 購 入 し た 。

あ れ か ら ま も な く 2 2 年 に な る 。 メ モ を た ど り な が ら 誌 し て き た が 、 間 違 い が あ れ ば 後 日 訂 正 し た い 。 そ れ か ら 毎 年 、 ぞ く ぞ く と 若 い 学 生 が 進 学 し て き て く れ た 。 そ し て 1 9 7 6 年 、 若 き 日 の 佐 々 木 達 夫 先 生 が 専 任 講 師 と し て 颯 爽 と 着 任 し た 。

今 日 の 金 沢 大 学 考 古 学 研 究 室 の 発 展 は 、 私 が 去 っ た 後 の 教 官 、 学 生 諸 君 の 尽 力 の お か げ と 敬 意 を 表 し 、 今 後 の い っ そ う の 発 展 と 活 躍 を 祈 り た い 。

8 世 紀 の 竪 穴 式 住 居 の 入 口 に つ い て

松 任 市 教 育 委 員 会 文 化 課 木 田 清

石 川 県 内 に 造 り 付 け の か ま ど が 現 れ

る の は 、 6 世 紀 後 半 の 加 賀 市 千 崎 遺 跡

7 号 住 で あ る 。 ほ ぼ 北 壁 の 中 央 に か ま

ど が つ き 、 南 側 に 入 口 が あ っ た と 一 般

的 に い わ れ て い る

( 1 )

。 採 光 を 考 え た 場

合 、 南 側 に 入 口 を 設 け る の が 合 理 的 で

あ る 。 関 東 で 検 出 例 の 多 い 壁 中 央 に か

ま ど を 持 つ 竪 穴 は 、 北 壁 に か ま ど が つ

く 場 合 が 多 い 事 か ら も 想 像 に 難 く な い 。

と こ ろ が 、 8 世 紀 の 小 型 竪 穴 の か ま ど

(3)

- 3 - は 、 そ の ほ と ん ど が 南 東 隅 に 作 ら れ る 。 前 代 の 竪 穴 と は 違 っ て 長 軸 で さ え 4 . 5 m に 満 た な い も の が 主 流 と な り 、 床 面 に は 柱 穴 も 持 た な い 。 こ の 竪 穴 の 縮 小 は 、 8 世 紀 に 突 然 起 こ る 現 象 で あ り 、 か ま ど が コ ー ナ ー に 移 り 、 柱 穴 を 持 た な い こ と で 縮 小 化 を 実 現 し て い る 。 筆 者 は こ れ ま で 、 千 崎 遺 跡 7 号 住 の よ う に か ま ど の 付 く 壁 の 反 対 が 入 口 で あ る と い う 一 般 論 を 何 の た め ら い も な く 受 け 入 れ て い た が 、 多 く の 小 竪 穴 を 掘 る う ち に 、 床 の 堅 さ の 違 い や 、 壁 際 の 大 き な 河 原 石 の 存 在 等 か ら か ま ど と 同 一 の 壁 に 入 口 が あ る の で は な い か と 考 え る よ う に な っ た 。 そ し て つ い に 金 沢 市 馬 替 遺 跡 に お い て 、 8 世 紀 の 出 入 り 口 用 階 段 を 持 つ 竪 穴 が 検 出 さ れ た 。 階 段 の あ る も の は 3 棟 あ り 、 う ち 2 棟 は 南 東 隅 に か ま ど を 持 ち 、 か ま ど の 西 に ピ ッ ト を 、 そ の 西 に 階 段 を も っ て い る 。 す な わ ち 、 か ま ど を 持 つ 南 壁 の 東 隅 に か ま ど を 、 中 央 に 出 入 口 を 持 っ て い る と い う こ と で あ る 。 従 来 い わ れ て き た 火 処 の 反 対 に 出 入 口 が あ る と い う 常 識 を 覆 す 貴 重 な 遺 構 で あ る 。 松 任 市 に お い て も 法 仏 遺 跡 7 次 調 査 2 号 住 で 、 か ま ど の 付 く 壁 の 中 央 に 階 段 と し て 利 用 し た で あ ろ う 大 き な 河 原 石 を 持 つ も の が あ り 、 宮 永 市 松 原 遺 跡 に お い て も 、 5 、 7 、 2 2 、 2 4 、 2 5 、 2 7 号 住 の 床 面 の 堅 さ の 違 い に よ り か ま ど を 持 つ 壁 の 中 央 が 出 入 口 で あ る と 推 定 で き る 。 三 浦 遺 跡 に お い て も 同 様 の こ と が 数 棟 の 竪 穴 か ら 推 定 で き た 。 松 任 遺 跡 の 小 竪 穴 の か ま ど か ら 、 そ の 出 入 口 の 方 向 を 推 定 す る と ほ と ん ど が 南 東 方 向 を 指 す 。 こ れ は 、 南 か ら の 採 光 と 強 風 ( 西 北 西 、 南

西 風 ) を 避 け る た め で あ ろ う と 考 え ら れ る 。 つ ま り 、 市 内 の 小 竪 穴 は 、 採 光 と 強 風 を 防 ぐ た め 住 居 址 中 心 か ら み て 南 東 方 向 に 出 入 り 口 を 設 け る こ と を 基 本 と し 、 出 入 り 口 の 横 ( 東 側 ) コ ー ナ ー に か ま ど を 付 け る 竪 穴 構 造 が 最 も 一 般 的 で あ っ た と い え る 。 ま た 、 関 東 地 方 と 同 様 に 、 か ま ど 、 貯 蔵 穴 、 出 入 口 は 、 三 者 が 直 結 し て 機 能 し て い た と い え る 。 ち な み に 松 任 市 に 吹 く 風 は 、 4 月 ~ 9 月 に か け て は 、 強 風 頻 度 は 全 体 の 数 % で あ り 、 ほ と ん ど 強 風 が 吹 か な い と い え 、 1 月 ~ 3 月 の 西 北 西 風 、 1 0 月 ~ 1 2 月 の 南 西 風 が 、 最 も 強 風 と し て 認 識 さ れ る 。 参 考 ま で に 本 文 中 で 紹 介 し た 遺 跡 の う ち 、 三 浦 遺 跡 を 除 い た も の の 図 を 掲 載 し て お く ( 図 1 ) 。

〔 註 〕

( 1 ) 高 橋 一 夫 氏 に よ る と 6 世 紀 後 半

の 上 の 台 遺 跡 2 P - 4 9 住 居 跡 は 、 7 号

住 と よ く 似 た か ま ど の 位 置 を 示 し て お

り 、 東 壁 中 央 に 入 口 が あ る ( 馬 蹄 形 盛

土 ) と 考 え て い る こ と か ら 、 こ の 場 合

も 南 壁 で は な く 東 壁 中 央 に 入 口 が あ る

可 能 性 も あ る 。 関 東 地 方 で は 鬼 高 期 の

古 い 段 階 で は 、 か ま ど の 対 岸 に 入 口 が

想 定 で き る が 、 6 世 紀 後 半 に な る と か

ま ど の 壁 に 対 し 直 角 の 位 置 に 設 定 さ れ

る ら し い 。 こ の 場 合 、 か ま ど は 壁 中 央

よ り や や 隅 に 寄 る と い う 。 ま た 、 か ま

ど と コ ー ナ ー の 間 に は 貯 蔵 穴 が あ り 、

か ま ど 、 貯 蔵 穴 、 入 口 を 直 結 し て 機 能

さ せ る こ と を 目 的 と し て い た ら し い 。

高 橋 一 夫 「 集 落 分 析 の 一 視 点 入 口 と

集 落 の 道 」 『 埼 玉 考 古 第 2 1 号 』

参照

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