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共同子会社 と独 占禁止法

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(1)

‑ 3 条 後段 と 1 0 条 の 関係 に関す る覚 書‑

和 田 健 夫

は じ め に

本稿 は,いわゆる業務捷携 や事業 の共 同化 に ともなって設立 ・運営 され る共 同子会社 ( ジ ョイ ン ト ベ ンチ ャー) 1) に関す る独 占禁止法上 の問題 の一側面 を取 り扱 う 。 企業が共 同子会社 ( 株式会社) を設立す ることによって事業 を展 開す る場合 には,企業 間で事業 を遂行す る 目的や方法 を取 り決める協定 ・合意 があ り,共同子会社 はそれ を実施す るための手段 である。 この ような事業形態 は,多 くの場合 ,生産効率の向上,事業 の合理化 あるいは新規参入等の経済的 効果 を もた らす ことがあるが,時 として市場 の競争 を制 限 して独 占禁止法上の 問題 を引 き起 こす。

1 )本来この種の問題を考察する場合は,実態の認識が不可欠であるが,残念ながら現 在の筆者にはそれが欠けているため,共同子会社や業務提携に関する以下の実態調 査等を参考にした。

東京経済法研究会 「 共同子会社の法構造 1‑1 2 ( 完) 」 ジュリス ト 6 79 号1 5 頁 ,69 7 号43 頁 ,69 8 号1 11 頁 ,6 99 号1 2 6 頁 ,7 01 号1 1 8 頁 ,7 02 号1 09 頁 ,7 03 号9 0 頁 ,70 4 号1 06 頁 ,705 号1 2 8 頁 ,70 6 号1 45 頁 ,707 号235 頁 ,7 08 号95 頁,同 「 業務提携 と法( 9‑( 参」

ジュリス ト 7 85 号4 4 頁 ,7 86 号7 3 頁 ,7 88 号6 2 頁 ,7 8 8 号65 頁 ,7 89 号7 5 頁 ,7 9 0 号49 頁, 慶応大学産業研究所 「 労働法 ・経済法 」 No.3 ( 1 9 82 ) 0

〔 45 〕

(2)

46 商 学 討 究 第 47 巻 第 4 号

本稿 の 目的は,共同子会社 に関す る独 占禁止法上の違法性 2) ではな く,それ が競争 を制限す る場合 に通用 されるべ き条文 について検討することにある。業 務提携 を背景 にした共同子会社が独 占禁止法上問題 になる場合 は,

ィ.当該淀携事業その ものが競争制限的なために親制対象 になる場合 と, ロ,当該捷携事業が上述 の意味での経済的効果 をもつ可能性 を生か しつつ,

競争制限的な部分 に独 占禁止法 を適用す る場合 ,

とがある。いずれの場合 で も,当該事業が競争制限的な効果 をもた らす原因の 分析 ・検討が必要である 。 その結果 に従 って適用条文が決定 されることになる が, ここでの考察の対象 は, 3 条後段 ( 不 当な取引制限) と企業結合規制 ( 市 場集 中規制) のなかの 1 0 条の適用可能性及 び両親定 の関係 である 3) 。比較法的 にみた場合, カルテル規制 と企業結合規制 とでは違法要件や手続が異 なる法制 があ り ( た とえば以下で検討す る EU法), この場合 には, どち らの条文が適 用 されるかによって結果 にちがいが生 じうる。他方,わが国の場合 は, 3 条後 段 と 1 0 条 1 項の違法要件 はともに 「 一定の取引分野 における競争 を実質的に制 限す ること ( こととなる ) 」 であ り,手続 も同 じであるか ら,適用条文 による 規制の差 はない ようにみ える しか し法が 3 条後段 と 1 0 条以下の市場集 中規制 を分けて規制 しているのは,競争の実質的制限をもた らすメカニズムが異 なる か らである。 3 粂後段 の場合 は,複数の事業者が競争 を回避す ることによって 市場の働 きを阻害す る行為 を規制 している 。 したが って,違法性判断において 行為者 にとっての経済的なメ リッ トを考慮す る可能性 は極 めて限 られた もの と

なる。他方,市場集中規制の場合 は,企業組織 の変化 による競争制限効果が間

2) この間題に関しては,泉水文雄 「 共同出資会社 と株式保有規制 ( ‑) ( 二 ) 」産大法 学 ( 京都産業大学) 21 巻 1 ・2 号 ,2 2 巻 1 号,瀬領真情 「 反 トラス ト法におけるジョ イント・ベンチャー規制 ( ‑) ( 二) ・完」立命館法学 1 82 号 41 5 頁 ,1 87 号 3 83 頁。

3) この間題に関しては役員兼任,営業譲受を規制する条文 ( 独禁法 1 3 条 ,1 6 条)も関

係してくるが,ここでは代表として 1 0 条を取 り上げる。なお,以上の課題から明ら

かなように,ここで想定するのは競争関係 ( 潜在的競争関係)にある事業者間の業

務提携である。また,本稿において 「 共同子会社」という場合,それは, 2 以上の

会社が共同出資して新会社を設立する場合を想定している。

(3)

題 となるか ら,市場構造や市場行動への影響等多様な事項 を考慮 に入れる必要 がある 。

市場構造規制の性格 をもつ独 占禁止法第 4 章の諸規定は,私的独 占 (3 条前 段)や不当な取引制限 ( 同後段)の禁止 を予防 ・補完するものだ とされて きた。

行為類型 に関する両者の関係 はどのようなものであろうか。第 4 章の行為類型 は具体的な行為であるに対 し,私的独 占や不当な取引制限のそれは包括的な内 容 になっている 。 かつて, 1 0 条 と私的独 占の関係 は議論 された。不 当な取引制 限 との関係の検討素材 を与 えて くれるのが共同子会社の問題である。

以下では,公取委の運用 をも取 り上げなが ら問題の整理 をし,参考 となると 考 えられる EU競争法の制度 を紹介 した後, 日本法の場合 について検討する。

問題の整理 と若干の検討

1. 「ゆるい結合」 と 「かたい結合」

伝統的には, 3 条後段の場合 には事業者間の 「ゆるい結合」 ( 共同行為),す なわち,各企業が独立性 を維持 しなが ら協定 ・合意 ( 暗黙の合意 も含む)によっ て特定の分野 において協調す る行為が問題 となるのに対 し,第 4 章の市場集中 規制は,企業組織上の手段 によって参加企業が統一的意思の もとに管理 される いわゆる 「 かたい結合」 ( 企業結合) を対象 としていると考 え られて きた。 し か し,同 じ 「 かたい結合」で も,その手段 ( 株式保有,役員兼任,合併及び営 業譲受)のちがいが結合の程度に差 をもた らしている。

「 企業結合」 は法律上の概念やはない。独禁法第 4 章の諸裁定が規制 してい るのは, 株式保有 , 役員兼任 , 合併及び営業譲受である。 しか し, これ らの行為が 独禁法で規制 されるのは, それを通 じて企業間に, かたい結合 ‑企業結合が成立 ー す ることによって市場構造が変化 し, 当該結合企業が市場支配力 をもっ ことと

なる場合であるとされて きた。 したがって, 法文には明記 されていないが , 理論

上 は,違法性の判断においては企業結合 の存在 を前提 とするのが通説的見解で

ある。 逆に, この点が, 最初から「 集中 ( c o nc e nt r a t i o n) 」 や「 結合 ( Z us a mme nf a s s ung) 」

(4)

4 8 商 学 討 究 第47 巻 第 4 号

を規制対象 として,条文で これ らの概念 の定義 をし ( E U法),その際に合併 ・ 株式取得 な ど種 々の手段 による結合 を認めている E Uや ドイツの競争法 と異 な

るところである

日本 の場合,「 企業結合 」 概念それ 自体 についてはあ ま り議論 されることは ない。合併 と営業譲受は企業組織 の一体化 をもた らす ことが明白であるが,秩 式保有 に関 しては,外形的には企業の独立性 が維持 されているため,いかなる 場合 に企業結合が認め られるかについて具体的な判断が必要 となる。

2. 共同子会社の性格

共同子会社 による業務提携の場合 は,共同事業 を遂行す るための契約,それ を実施す るための共 同子会社設立,共同子会社 を運営す るための取 り決め等, 契約 と会社 の所有 を通 じた複合的な企業間結合がみ られる。いいかえる と 「ゆ るい結合」 と 「 かたい結合」の中間的な中間的な形態である 4) 。 もちろん,共 同事業 の具体 的な内容 によって 「ゆるい結合」に近い ものか ら,「 かたい結合」

に近い もの まで,その間には様 々なヴ ァリエ ーシ ョンがあ りうる。 この点 を, 大雑把 ではあるが以下で さらに検討 してみる。

( 1 ) 親企業 のために経済活動の一部 を担当す る場合

一般 に,共 同子会社 は親会社 の影響下 にあ り,また 自己の経営戦略に もとづ いて利潤 を追及す る とい う企業 としての独 自の活動 をする部分が少 な くなる傾 向がある。親会社 の経済活動の援助 とい う性格が強い。事業の内容 は,生産, 購入, 販売 といった主要 な経済活動の一部分 を遂行す る場合 と, 宣伝 , 在庫管理, 研究開発のような親会社 のために補助的,専 門的な部分 を担 当す る場合 な どが

ある。 この ような形態の場合,参加企業 間の結合関係 は,協定 による 「ゆるい

4) 共同子会社のこのような理解については,正田彬 ・全訂独占禁止法 Ⅱ( 1 9 81 )6 3 頁,

龍田節 「 資本参加 と独占禁止法」ジュリス ト 51 1 号 6 4 頁,前述注 1 掲載の東京経済法

研究会 「 業務提携と法」の( 彰宮坂富之助 「 業務提携の特殊性」ジュリス ト 78 6 号 73 頁,

( 9舟田正之‑稗貫俊文 「 業務提携と競争秩序」ジュリス ト 78 9 号 75 頁参照。

(5)

結合」 に近い ということができる

生産に関 しては,共同子会社 による追加需要の調達や親会社のための前製品 又 は中間製品の生産 を考えることがで きよう 共同購入お よび共同販売 は最 も 一般的にみ られる形態である 生産の場合の参加企業の数は限定 されることが 多いが,共同購入 ・販売では多 くの事業者 ( とくに中小企業など)が参加する ことがあ りうる この場合 には,市場開拓,合理化,集約化,交渉力の強化等 の 目的の もとに行 なわれることが多い。共同の研究開発 は,研究開発 にともな うコス トや危険を分散 した り,親模の経済性の達成 によって基礎的な技術 の開 発 を行 うのに適 した方法 として,多 くの国で最近注 目を浴びているところであ

る 。

( 2) 企業 として完全な機能を有 している場合

ここでは,親会社 らが生産設備,技術,営業資産等 を共同子会社 に譲渡 し, 子会社 は独立 した企業 として,技術 開発,生産,投資,販売等の活動 を行 なう とい うケ ースを想定する この ような形態における親会社 問の結びつ きは合併 に類似 した もの となる

た とえば,親会社が,生産設備,技術 ,営業資産等 を共同子会社 に譲渡 し,

自らは独 自の経済活動 を一切 しない とい うケースがある 。 親会社 には株主の地

位だけが残 り,持ち株会社 として存続す ることになる。わが国では,独禁法 9

条 との関係で,この種の形態は実現困難であったが,外国では見 られるケース

である。よ り一般的なのが, 事業分野の一部分 を委ねるケースである。た とえば,

多 くの事業部門をかかえる事業者 どうLが,事業の分離 をはかるために,その

一部を共同子会社 に譲渡す る場合である 。 逆に,共同子会社 は事業の拡大のた

めにも行 なわれる。事業者 らが, リスク回避のために,新規事業分野‑の進出

を共同子会社設立 によって行 なうことは ( 事業拡大型業務提携),わが国で も

み られる現象である 。 また,未開拓の地域市場 ( あるいは外 国市場)‑の参入

に際 して,複数の事業者が共同子会社 を設立す るの も ( 地域拡大型業務提携)

同様である

(6)

50 商 学 言 寸 究 第 47 巻 第 4 号

3. 公正取引委員会 の実務

( 1) 旧事業者 団体 法 の時代

19 48 年 に制定 され 1953 年 に廃止 された旧事業者 団体法 の もとでは, ここで検 討 の対象 となってい る共 同子会社 は事業者 団体 に該 当す る可能性が あった。す なわち,事業者 団体 の概念 を定義 した 同法 2 条 に よれば,事業者 団体 は, 「 事 業者 としての共通 の利益 を増進す ることを 目的 に含 む二以上 の事業者 の結合体 又 はその連合体 をいい」,そのなか には 「 二以上 の事業者が株 主‑である会社」

が含 まれ る こ とになっていた ( 同条 1号)。大 阪綜合 食 品株 式会社 事件 5) の審 決取消 訴訟 において,東京 高裁 は, 「 株 式会社 にあって は,会社 それ 自体 の 目 的 は本来商行為 をなす ことにあるの を原則 とす るか ら,株主 たる事業者 に対す

る共通 の利益 の増進 を会社 自体 の 目的 とす る とい うこ とは殆 どあ り得 ない とこ ろであ るが,二以上 の事業者 が株 式会社 制度 を用 いて結合 し,その運営 に よっ て共通 の利益 の増進 をはか ることもで きるのであるか ら,株 式会社 であって事 業者 団体法 にい う事業者 団体 に当たる場合 のあ ることはなん ら異 とす るに足 り

ない。」 と述べ,設立 の経緯 や事業 内容等 か ら,事業者 に よって共 同で設立 さ れた株式会社 を事業者 団体 と認定 しうる ことを認めている 6) 。

そ して,旧事業者 団体法 は,団体 の行為 を,競争政策上 中立的な性格 の行為 も含 めて幅広 く禁止 していた。 同法 は,事業者 の結合体 であ る株式会社 を事業 者 団体 に含 め なが ら,他方 で事業者 団体 が,た とえば,

5 )東京高裁昭和 2 6 年1 1月 3 0 日判決,高裁民集 4 巻 1 4 号 5 2 9 頁。

6 )たとえば,神奈川県靴商事株式会社に対すろ件,公取委昭和 2 4 年 8 月 5 日勧告審決,

審決集 1 巻 5 8 頁,中央酒販株式会社ほか 1 3 名に対する件,公取委昭和 2 4 年 9 月 7 日

同意審決,審決集 2 巻 9 7 頁,東京書籍株式会社ほか 2 名に対する件,公取委昭和 27

年 5 月 2 4 日同意審決,審決集 4 巻 1 5 頁 ( 合資会社のケース)など。また,垂直的統

合に 1 0 条 1 項が適用 された事件 として有名な日本石油運送会社事件 ( 公取委昭和 2 6

年 6 月 2 5 日審決,審決集 3 巻 7 3 頁)では,当初は日本石油ほか 2 名の石油精製会社

が日本石油運送の株主であった。公取委はそのため, 日本石油運送を,株主の共通

の利益 を増進することを目的に含む事業者団体 とみなし,同社が原油および製品タ

ンク車による輸送を主たる業務をしていることは,旧事業者団体法 5 条 1 項 9,1 3

号に違反す るとしている。

(7)

ィ.営業用の施設の所有 ・経営又 は株式 を保有すること ( 5 条 1 項 9 号) , ロ.購買,販売,生産,製造,加工,保管,輸送,配分その他の営業 に従事

すること ( 同 1 3 号),

ハ.構成事業者 その他 の者 のために取引の代理人 とな り,取引上の契約す る こと ( 同 1 4 号),

な どを禁止 していた。 したが って,事業の共同化 のために子会社 を設立するこ と自体 ほ とん ど不可能であった。

しか し,事業者 団体法の厳格 な内容 には当初か ら批判が強 く,早 くも 1 9 5 2 年 に改正 された。 この改正の 目的の一つは,事業者団体の範囲を,原則 として純 粋 の意味 における産業 団体 に限定す ることにあった 7) 。その結果,「 資本又 は 構成事業者 の出資を有 し, 営利 を目的 として事業 を営むことを主たる目的 とし, 現 にその事業 を営 んでいるもの」が事業者 団体の定義規定か ら除外 されること

になった。そ してこの定義規定は現行独禁法の事業者団体 の定義規定 にも受 け 継がれている ( 独禁法 2 条 2 項但書 き)

( 2) 3 条後段 の適用例

①共同販売

独禁法違反 として多いのは共同販売である。共同販売の場合 は需要者 に対す る販売 とい う部分的な共同である。違反 となったケ ースでは,参加事業者間で, 販売先の制限,出荷量 の割 り当て ( 制限)あるいは売渡価格の決定な ど,事業 活動 の制 限が行 われ,製品の価格維持 の 日的 ・効果が明瞭であった ことが 3 条 後段適用 の理由だ と思われる そ して共同販売会社 の設立はこのようなカルテ

ルの実施手段 とされている

た とえば,製氷業者 5 名 による共 同販売会社 の事件 8) では,函館市 の製氷冷 蔵業者が,陸用水 をすべて共 同子会社である函館製氷販売株式会社 か ら販売 し,

7) 公正取引委員会事務局編 ・独 占禁止政策三十年史 ( 1 9 7 7 )8 7 頁。

8) 日本冷蔵株式会社 ほか 4 名 に対す る件,公取委昭和3 2 年 7 月1 8 日勧告審決,審決集

9 巻 7 頁。

(8)

5 2 商 学 討 究 第47 巻 第 4 号

工場渡価格 を申合せ ,同時 に函館 製氷販売株式会社 を して,各工場 の出荷量 を それぞれの生産能力 に応 じて調 整 させ た こ とが3 条後段違反 に問 われた。 この 事件 で は,問題 の販売会社 は本件共 同販売が行 われ る以前 に設立 されてお り, 5 社以外 に も株主 ( 氷 の小売業者)が存在 していた ようであるが,共 同販売 の 開始後 ,その体制 を強化す るため これ らの者 の株式 を買 い取 ったため, 同社 の 株式 の ほ とん どすべ てが 5 社 に よって所有 され るこ とになった とい う事情があ

る 。

公取委 は, 「 法 の適用」 の なかで, 「 五社 が販売会社 の株 式 を所有 して これ を 支配 し,同社 を通 じてのみ陸用氷 を販売 す る こととし,その価格 を決定 し,か つ販売会社 を して,各 月の出荷量 を調整 させ る等 の方法 に よ り,函館市 内にお ける陸用水 の取引分野 にお ける競争 を実質的 に制 限 してい る」 と述べ ている 函館製氷販売 を所有す る ことになった経緯や, 同社 が行 った出荷量 の調整行為 が株 主 である 5 社 の指揮監督 の もとに行 われた とされてい る点か ら明 らかな よ

うに, この事件 で は,共 同販売会社 が競争制 限的な共 同販売 の手段 であ った こ とが明確 に示 されてい る 9) 。そ して排 除措置で は, 5 社 の販売会社 に対 す る株 式 の処分が命 じられてい る 。

生 コンク リー トの製造業者 6 名 による生 コンク リー ト共販会社事件 10) では, 事実認定 に よれば,主要 なメ ーカ ー4 社 が,群 馬県桐生地 区の生 コンの販売価 格 の引上 げを図るため出資 し,それぞれの役員 ・従業員 を兼務 させ て共 同販売 会社 ( 桐生販社)を設立 して生 コンを同社 にのみ販売す るこ とを決定 し,さ らに,

9 )共同販売機関 ( シンジケー ト)がカルテルの究極の形態であ り 「 高級カルテル」 と 呼ばれるゆえんである。なお,本件 と同じく氷の共同販売が 3 条後段違反とされた 2 つの事件 ( 広島糧工株式会社ほか 1 4 名に対する件,公取委昭和 3 0 年 8 月1 5 日勧告 審決,審決集 7 巻 5 0 頁,明治冷蔵株式会社ほか 1 4 名に対する件,公取委昭和 32 年11 月 7 日勧告審決,審決集 9 巻31 頁。ただしこれらは会社以外の共同販売組織の事件 である)でも,そのー ような組織の設立 ・運用を含めた共同販売行為それ自体が違反 行為 とされている。

1 0 ) 群馬アサノコンクリー ト ( 秩)ほか生コンクリー ト製造業者 5 名に対する件,公取

委昭和 5 3 年 6 月 5 日勧告審決,審決集 25 巻 8 頁。

(9)

桐生販社 の設立後,同社 に対す る生 コンの販売価格 を決定 した。その後, この 4 社 と他 の 2 社 ( 非 出資会社) との間で同様 の協定が結 ばれた。 この頃の公取 委 は,「 法 の適用」欄 では,違法行為 を不 当な取引制限の定義規定 ( 独禁法 2

粂 6 項)が挙 げる類型 に従 って示す一般的傾向があ り, この事件で も,以上の 事実か ら, 6 社 は 「 共同 して,生 コンの販売の相手方の制限及び販売価格 を決 定 し」 これを実施す ることによ り,桐生地区における生 コンの販売分野におけ る競争 を実質的に制 限 していた と判断 している 11 )。 しか し桐生販社 の設立 に 関する公取委の考 え方 は明 らかではない。販社 を設立 した経緯か らす ると,「 販 売の相手方の制限」行為の中に含 まれているようにもみえる。 しか し,本件 の 共同販売 には,非出資会社 も参加 していることや,排 除措置では販社 に対す る 株式の処分等 は命 じられていない点 をみると,販社 に対 してのみ販売すること や,その際の販売価格 を定めたことが違法行為 に該当 して,販社 の設立 自体 は 違法行為 とされていない とも考 え られる。

( 参共同生産

一般 に共同生産の場合 は,共同販売 と較べれば共同イヒの程度が強 くなる傾向 がある。前述の ように,共 同子会社 に生産お よび販売の決定権 を委ね, 自らは 生産 を中止す るような場合 は合併 に近い結合関係 となる

共 同生産 に 3 条後段が適用 された興 味深 い例 として ダイナマイ ト生産会社 ( 四国ア ンホ)事件 12) が ある。 これ は,わが国における稔販売量 のほ とん ど すべ てを占める産業用爆薬 の製造業社 6 社 による四国地方向けの硝安油剤爆薬 の共同生産販売会社 ( 四国ア ンホ株式会社)の設立が問題 となった事件である それまで 6 社 は,各 々が四国地方 における需要の大部分 を供給 していた。公取 ll ) 同様の解釈は子会社以外の組織 ( 組合)を通じた共同販売の事件にもみられる。た

とえば,北海道ちり紙工業組合事件,公取委昭和 44 年 7 月 2 4 日勧告審決,審決集 1 6 巻39 頁,京都生コンクリー ト工業組合事件,公取委昭和 48 年 4 月 26 日勧告審決,審 決集 20 巻 1 9 頁,( 財) 化学血清療法研究所ほか動物用生物学的製剤製造業者 7 名に対 する件,公取委昭和 5 0 年 10 月 27 日勧告審決,審決集 22 巻 79 頁。

1 2) 日本油脂株式会社ほか産業用爆薬製造業者 5 名に対する件,公取委昭和 50 年 1 2 月 11

日勧告審決,審決集 2 2 巻101 頁。

(10)

54 商 学 討 究 第47 巻 第 4 号

妻は最初,四国アンホの設立が独禁法 1 0 条 1 項に違反する疑いがあるとして同 社の株式構成について適切 な措置を講ずるように要請 した。公取委が このよう に考 えた理由は不明であるが,おそ らく, 6 社が出資 した子会社 に四国地方 に おける生産 を委ねることが共同子会社 を通 じた ( 部分的)結合 を生ぜ しめ,四 国地方における当該商品の競争 を実質的に制限する疑いがあると考 えられた も の と認め られる

公取委の要請を受けて 6 社 は四国アンホの株主を 3 社 ( 出資 3 社) に改め, 他の 3 社 ( 非出資 3 社)の問で,以下のような内容の 「 四国アンホ株式会社運 営に関する協定」 を結んだ。

ィ.出資 3 社 は,原則 として,四国アンホの株式 を他 に譲渡で きない もの と すること。万一譲渡の必要 を生 じた場合 には,それぞれ他のすべての協定 当事者の書面 による事前の承認 を得 ること

ロ.四国アンホは,非出資 3 社 に対 し,毎月,経理内容等重要事項 を公開 し, 説明すること 。

ハ.四国アンホは, 6 社 を代表 して,出資会社 2 社が, N社 と締結 した覚書 に基づ き,硝安油剤爆薬 を四国地方における同社の鉱業所 に対 して供給す ること。

こ.四国アンホは,硝安油剤爆薬 を前記ハ に掲げる者以外の四国地方の需要 者 に販売する場合 は,原則 として, 6 社 を通 じて行 うもの とし, 6 社 はこ

れを引 き受けるもの とすること 。

ホ.四国アンホは,原則 として,四国地方の需要者以外 には販売 しないこと 。

へ.四国アンホは,すべての販売取引条件 について, 6 社 と協議の上,決定 す ること 。

ト 四国アンホの 6 社 に対する硝安油剤爆薬の販売価格 は, 6 社 の販売価格 を下回るもの とし,その差額 は一箱 につ き ,1 5 0 円を下 らない ことを原則 とすること。ただ し, 予測で きない事態が発生 した場合 は,6 社 と協議の上, その差額 は, 5 0 円を下 らない もの とすることがで きること

この協定は共同子会社 の運用のための基本方針 を定めた ものであるが,公取

(11)

妻 は,それ に対 して 3 条後段 を適用 した。 しか も,法 の適用 では, 「6 社 は, 共同 して,四国ア ンホの運営 に関す る協 定 を締結 し, これ を実施す ることによ り」 四国地方 における硝安油剤爆薬の販売分野 にお ける競争 を実質的に制限 し てい ると述べ るのみで,協定の どの条項が相互拘束 に該当す るのか を示 してい ない。 当時の法の適用 の仕方か ら見 る とめず らしい事例 である。 この協定 は, 大部分が四国ア ンホの事業活動 に関す る共 同管理 を定めている ( 垂直的制 限)。

不 当な取引制 限が競争の実質的制限を もた らすメカニズムは事業者 間の競争回 避 にある とされる 。 本件協 定の どの部分が競争 回避 をもた らすのであろ うか。

四国ア ンホの硝安油剤爆薬 の生産 は四国地方 における需要 に限定 され, さらに 製品 を独 自で販売す る自由が な く,販売条件 の決定 の 自由 も制限 されている。

四国ア ンホはこの ように,企業 としての独立性がな く 6 社 の共同管理の もとに ある。結局 この事件 で問題 となったのは,協定の中には表れてい ないが, 6 社 が四国地方 における硝安油剤爆薬の独 自の生産 ・販売 を放棄 して四国ア ンホに 一本化 し, しか しその販売 は 6 社 の管理の もとに行 い, しか もその際の販売条 件 ( 価格 も含 む)を制限す ることによ り,同地方 にお ける価格 の安定化 をはかっ

た とい うことであろう 13) 。

( 3) 企業結合規定

これ までの ところ審決例 はないが,前述 した四国アンホ事件 における経緯 も 示す とお り,わが国において も共 同子会社 の設立 は企業結合規制 の問題 とな り

1 3 ) 小原喜雄 「 共同出資会社による生産 ・供給の制限」ジュリス ト臨時増刊昭和 5 1 年度

重要判例解説 ・経済法 1 事件。この事件は通常, 共同販売の一例として挙げられるが,

本文で示 したようにそれは正確ではない。正確には爆薬の共同生産と共同子会社に

対する制限が結合 した事件であり,だからこそ,公取委は共同販売機関のケースの

ように違法行為を参加事業者間の 「 取引先の制限」あるいは 「 価格の決定」などの

行為類型にまとめることができなかったのである。なお,本件は ,1 0 条 1 項の脱

法行為として 1 7 条を適用すべきであったとする見解 ( 丹宗昭信 「 昭和五〇年度審決

総評 ( ‑) 」 公正取引 3 1 9 号 8 頁,岡田外司博,別冊ジュリス ト独禁法審決 ・判例百

選 ( 第五版) 5 0 頁)がある。

(12)

56 商 学 第47 4 うる。

公取委 による毎年の年次報告 ( 独 占自書) において,その年度 に事前相談 を 受けた事例 ( 業務提携 に関連 して子会社 を設立するケ ース)や届 出があった事 例 ( 子会社 の設立 と同時に営業 を譲渡す る場合) について判断 した結果が,独 禁法第 4 章関係 の項 目のなかで紹介 されている

特定の商品に関す る共同の生産子会社 を設立 し,親会社 は生産設備等 を当該 子会社 に譲渡 して市場か ら撤退す るような場合 ,子会社の営業譲 り受け ( 独禁 法 1 6 条) を中心 に独禁法上の問題が判断 されることになろう。公取委の年次報 告書 にはその ような事例 を兄いだす ことがで きる 1 4)0

親会社 による子会社 の株式所有 についてはどうであろうか。競争 の実質的制 限をもた らす株式所有が禁止 される場合 ,前述 した ように,1 0 条 1 項の条文 に は書かれていないが,理論的には株式所有 によって企業結合 関係が成立す るこ とが前提 とされている 。 そ して,結合関係 とい うと通常,株式所有会社 と株式 発行会社 の間で問題 となるが, この レベルに限定する理由はない し,法 もその ことについて何 も規定 していない。 さらに,結合関係 を判断す る際 に,株式所 有以外 の事項 を考慮 に入れることがで きるか否か も重要 なポイン トである。

共同子会社 の場合 ,結合 関係 を,親会社 ( 株式所有会社) と子会社 ( 被所有 会社) の間だけでな く,子会社 の所有 を通 じた親会社 の間に も認めることがで きるか 。1 9 81 年 に公表 された 「 会社 の株式所有 の審査 に関す る事務処理基準」

( 1 9 9 4 年改正。以下単 に 「 事務処理基準」 とい う。) は,株式所有 によって 「 結 合 関係」が生ず ることを前碇 とし,それが認め られる場合 として,株式所有会 社 が当該株式の所有 を通 じて,

1 4) たとえば,工業用高級アルコールの共同生産会社 ( 昭和 62 年度年次報告書 87 頁),

自動車用酸素センサーの共同生産会社 ( 平成 1 年度年次報告書 1 1 3 頁),亜鉛の共同

生産会社 ( 平成 4 年度年次報告書 1 5 1 頁),三菱製鋼と新日本製織の合弁事業計画 ( 平

成 5 年度年次報告書1 9 0 頁) ,住友化学,日本ゼオン,サン ・アローによる塩化ビニ

ル樹脂事業の統合 ( 平成 6 年度年次報告書 1 6 7 頁) ,生コンクリー ト製造業者による

共同生産会社の設立 ( 同 1 8 3 頁),昭和電工と日本石油化学によるポリオレフィン樹

脂事業の統合 ( 平成 7 年度年次報告書 1 9 9 頁)など。

(13)

ィ.株式発行会社 の事業活動 を支配す ることがで きる場合 ,のほか, ロ.その事業活動 に相当の影響 を与 えることがで きる場合

を挙 げて,結合が認め られる範囲 を広 げている そ して事務処理基準 は, これ らの基準 に従 って結合 関係 を具体的に判断す る際の選別案件 の一つ として,「 共 同出資会社」 に係 わる株式所有であって,株式所有会社 と他 の出資会社が競争 関係 にある場合 を挙 げていることが注 目される。ここでい う共同出資会社 とは,

「 二以上の会社が,共同の利益のために,必要 な事業 を遂行 させ ることを目的 として契約等 によ り共同で設立 し,又 は取得 した会社」 とされてお り,本稿で 検討対象 となっている共同子会社 と同 じである 。 共同出資会社が選別案件 とさ れた理 由について,公取委 の事務局の説明によれば,「 共 同出資会社 は出資者 間の共同の利益 のために,その事業遂行 の実行手段 として設立 されるものであ り,通常設立当初か ら出資者の支配下 にあるもの と考 え られるので,出資比率 ( 株式所有比率)の多寡 に関係 な く選別することとしている」とされている 15) 0 そ して,事務処理基準 は,結合関係 を判断す る際の考慮事項 として,株式所有 比率の他 に,当事会社 の役員関係 ,取引関係,当事会社 間の業務提携,技術援 助 その他 の契約 ・協定等の関係,融資等の関係 も考慮す る とされている。 この ように,共同出資会社 の場合 の企業結合 は,共 同事業の遂行 ・業務提携 に関わ る親会社 間の契約あるいは共通の 目的による結 びつ きが基礎 にあ り,子会社の 株式所有 を通 じて,親会社 どうし,及び親会社 と子会社 間に結合 関係が成立 し

うることを公取委 も認めていると考 えられる。

4. 協同型 と集 中型の区別‑ EU法

EU競争法 において も,子会社 に よる共 同事業 ( ジ ョイ ン ト ・ベ ンチ ャー)を めぐって同様の問題がある。EU法では,事業者の競争制限的な協定 ( a gr e e me nt )

1 5 ) 舟橋和幸編 ・独占禁止法による合併 ・株式保有規制の解説 ( 別冊商事法務 No. 1 6 9 )

9 2 頁。そして出資者が競争関係にある場合に限定しているのは,共同出資会社のす

べてが独占禁止法上問題となるおそれがあるものとは考えられないので,競争秩序

に与える影響が比較的大きいと考えられるものを選別するためである ( 同 9 3 頁) 。

(14)

58 4 7 巻 第 4 号

又 は協 調 的行 動 ( c o nc e r t e dpr a c t i c e ) を規 制 す る ロ ーマ条 約 85 条 16) と市 場 支 配 的 な集 中 ( c o nc e nt r a t i o n) を規 制 す る理 事 会 規 則 40 6 4/89 号 ( 以 下 「 合 併 規 則 」 とい う。)とで は,違 法 要 件 も事 件 の処 理 手続 も異 な るた め,企 業 に とって ジ ョ イ ン ト ・ベ ンチ ャーが いず れ の適用 領 域 に属 す るのかが 重 要 な 関心 事 に な る 。

そ こで E U法 で はそ の境 界 の線 引 をす る規 定 が 設 け られ て い る 。 そ れ が , ジ ョ イ ン ト ・ベ ンチ ャー を協 同 塑 ( c o l 0 Pe r a t i ve ) と集 中型 ( c o nc e nt r a t i ve ) に区別 す る議 論 で あ る 。 本 稿 の テー マ を考 察 す る上 で参 考 に な る と思 わ れ るの で以 下 で 紹 介 す る 。

( 1) 合併 規則

合 併 規 則 の対 象 とな るの は共 同体 規 模 17) を もつ 「 集 中 ( c o nc e nt r a t i o n) 」 で 1 6 )8 5 条 1 項 は, 「 加盟国間の通商 に影響 を与 えるおそれがあ り, かつ共同市場 における 競争 を妨害 , 制限, もしくは歪曲す る 目的を有 し又 はその効果 をもた らす」協定等 を禁止 している。些細 なケースを除いて, 1 項 は一般に厳格かつ形式的に解釈 され る ( 違反が成立 しやすい)。他方で,8 5 条 3 項 は, 1 項 に該 当する協定等で も,潤 費者の便益 を高める経済効率の達成等の諸要件 を満た した場合 には, 1項の適用が 免除 ( e xe mpt i o n) されることを認めている。 この適用免 除は, 事業者か らの申請 に 基づ く個別審査 によって EC 委員会が決定する場合 と,一定の類型の協定に対 して 自動的に免除 される場合 ( 一括適用免除) とがある。 EC 委員会 は,ジ ョイン ト・

ベ ンチ ャーを 85 条の もとで判断する際に,ジ ョイン ト ・ベ ンチャーの競争制限的側 面 を 8 5 条 1 項で,便益 ( 競争促進的な要素)の評価 を同 3 項で行 うとい うアプローチ

をとって きた。詳細 は村上政博 ・EC競争法 [ EU競争法] ( 1 9 9 5 )2 9 8 頁以下。

1 7 ) 共同体規模 とは次の基準で判断される。

一当該事業者の全世界 における年間売上げ高の合計が5 0 億 ECU超であ り,かつ

‑当該事業者の少 な くとも 2 名の共同体 内における年間売上高の合計が,それぞれ 2 億 5 0 0 0 万 ECU超であって,

一当該事業者 のそれぞれが,共同体内の売上 げ高の合計 の 2 / 3 超 を同一の加盟国内 で得ていない こと( 合併規則 1 条 2 項)。

共 同体規模 を もつ集 中には原則 として本規則 が排他的 に適用 され る ( 同 1条 1 項)。

集 中の違法性の要件 は,「 共同体市場又 はその実質的な部分 における有効 な競争

が相当に ( s i g n i 血: a n t l y) 阻害 される結果 をもた らす支配的地位 ( d o mi na ntpo s i t i o n)

の形成又 は強 化 」 ( 合併規則 2粂 3 項)である。条約8 5 条 1 項の違法要件 と較べ ると

企業結合規制の場合 は競争制限の程度が高 く,それだけ違法 となる可能性が低い と

いえる。 この要件 を満たす場合 には,当該集中は共同体市場 と相容れないと宣言 さ

(15)

ある。集中 とは以下の二つ のいずれか をい う ( 規則 3 条 1 項)0 ( a ) それ まで独立 していた複数の事業者 による合併 ( me r ge r ) 。

( b) 少 な くとも一 つ の事 業 者 をす で に支配 してい る単独 も し くは複 数 の者 ( pe r s o n) 又 は単独 もし くは複 数の事業者 ( unde r t a ki ngs ) が,証券又 は資 産 の購入,契約 その他 いかなる方法 を問わず,単独 もしくは複数の事業者 の全部又 は一部 に対 す る直接 的又 は間接 的 な支配 ( c o nt r o l )を獲得す るこ

と。

したが ってジ ョイ ン ト ・ベ ンチ ャーが集 中に該 当す るとすれば ,( b) の形態 の う ち複数 の者又 は事業者が契約その他 の方法 に よって事業者 の支配 を獲得す る場 合 とい うことになる 。

合併規則 3 条 はさ らに 2 項 において次の ように定めてい る。

ィ. ジ ョイ ン ト ・ベ ンチ ャーの設立 を含 む事業 ( o pe r a t i o n) であって,その 日的又 は効果 が,独 立 した事業者 の競 争行 動 の調整 ( C o o r d i na t i o no ft he c o I T I Pe t i t i vebe ha vi o ur ) にあ る ものは,上記 ( b) の意味での集 中 に該 当 しな

い 。

ロ. 自立的 な経済単位 のすべ ての機能 を,持続 的 に ( o nal a s dngba s i s ) 果す ジ ョイ ン ト ・ベ ンチ ャーの設立であって,当事者 の間で又 は当事者 とジ ョ イ ン ト ・ベ ンチ ャーの問で競争行動 の調整 を もた らさない ものは上記 ( b) の意味での集中に該 当す る 。

前者が協 同的ジ ョイ ン ト ・ベ ンチ ャーであ り,後者が集中的ジ ョイ ン ト ・ベ ンチ ャーである 。 この ような区別 をす る基本的な考 え方は次の ような ものであ る 。 集 中的なジ ョイ ン ト ・ベ ンチ ャーの場合 は企業組織 の変化 とみ なされ るベ れる。ただし,共同体市場 と両立しない集中を特別な利益を根拠に容認することは 認められていない。

共同体規模の集中は事前に委員会に届け出なければならない( 合併規則 4 条) 。委 員会は届け出受理後,当該集中が問題あ りとして正式の手続にかけるかどうかにつ いて( 同 6 条 1 項 C 号)1カ月以内に決定 しなければならない( 同 1 0 条 1 項) 。正式手 続が開始された場合には,その判断を4 カ月以内に下さなければならない( 同 1 0 条 3 項) 。このように,合併規制の場合は,迅速な審査が制度的に保証されている。

詳細は,村上前掲書 ( 注 1 6 )2 8 7 頁以下。

(16)

60 47 巻 第 4 号

きで あ る そ れ は当該 産業 にお け る市場 再 編 の ダイ ナ ミ ックな プ ロセス を反 映 した もの で あ る。た だ,この よ うな事 業展 開が支 配 的 な地位 の形 成 や 強化 に よっ て市場 の競 争 的構 造 を阻害 す る場 合 に は,競 争 当局 は この再 編 プ ロセス に介 入 す れ ば そ れ で よい。他 方 で , 独 立性 を残 した競 争 企 業 を巻 き込 ん だ協 同的 な ジ ョ イ ン トベ ンチ ャー は,一般 に,競 争 を制 限又 は歪 曲す る とみ な され るべ きで あ

り,条 約 の 85 条 お よび 86 条 の も とで評価 され るべ きで あ る 1 8) 0

( 2) イ ンター フェイス告 示

EC 委 員会 は,合 併 規 則 3粂 2 項 の解 釈 に関す る ガイ ドライ ン,す な わ ち 「 集 中 的 事 業 と協 同 的 事 業 の 区 別 に 関 す る委 員 会 告 示 ( Commi s s i o nNo t i cer e‑

1 8 ) Be l l a my & Chi l d, Co mmo nMa r ke tLa w o fCo mpe t i t i o n, 4e d.1 9 9 3a t31 7( pa r a . 6 ‑ 0 2 6 ) . なお,同書 はローマ条約 8 5 条による協同的ジ ョイン ト ベ ンチ ャーに対する香 員会の最近のアプローチを次の ようにまとめている ( a t2 2 1 ) 0

①8 5 条 1 項の解釈 において, ジ ョイン ト・ベ ンチャーの競争 に与 える影響 を, より詳 細 にかつ現実 に即 して柔軟 に解釈す る方向 に変 り始めた。協 同型 ジ ョイ ン ト・ベ ン チャーについて 8 5 条 1 項 に違反 しない ことを認めた最近の El o pa c k/ Me t a lBo x‑ Od i n 事件 ( 官報 1 9 9 0 年 L2 0 9 号 1 5 頁)は,委員会のジ ョイン ト・ベ ンチ ャーに関す る新 しい 分析枠組みを最 も明確 に示 している ( 本件 については武田邦宣 「 協調型 ジ ョイン ト ・ ベ ンチ ャーをローマ条約 8 5 条 1 項 の場 において認めた事例」公正取引 5 4 8 号 7 0 頁)。 こ のようなアプローチの変化 は,合併規則の制定によってさらに促進 された。

( 参ある種 の 「 構造的」 ジ ョイ ン ト・ベ ンチャー,つ ま り,合併親則の要件 を満たさな いため集中的 とは性格付 けられない ものの,独立 した事業者間の経済活動の一時的か つ限定 された調整 というよりは,市場 において新 しい,永久的な,あるいは半永久的 な力 を生み出す ようなジ ョイン ト・ベ ンチ ャーについては簡易 な処理で審査する新 し い自主手続 を導入 した。

( 参ジ ョイン ト・ベ ンチャーにも適用 される専 門化 と共同研究開発 に関する一括適用免 除規則 を,販売 にも対象 を拡大する方向で改正 した。 また,特許 ・ノウハ ウライセ ン ス規則 を改正 して,ジ ョイン ト・ベ ンチ ャーの関連でなされるライセ ンス もカバーで

きるようにした ( 委員会規則 1 5 1 / 9 3 号)0

④ それ までの委員会の運用 をまとめたガイ ドライ ン 「 8 5 条 における協 同的 ジ ョイン ト・ベ ンチ ャー の評価 に関す る委 員 会 告示 ( Co mmi s s i o nNo t i c ec o nc e r ni ngt he a s s e s s me nto fc 0 ‑ O pe r a t i vej o i ntve nt ur e i st oAr t . 8 5 ,官報 1 9 9 3 年 C4 3 号 2 頁)を公 表 し,事業者 に対 してジ ョイ ン トベ ンチ ャーの設立 に関する競争法上の不 明確性の除 去 につ とめている。

この ように, ジ ョイ ン ト・ベ ンチ ャーに関 しては条約 8 5 条 と合併規則 の二つの条

文 ・手続の差による事業者 にとっての不確実性 を取 り除 く努力がなされている。

(17)

gar di ngt hec o ncent r at i vea ndc 0‑ O pe r a t i veope r at i ons ; 官報 1989 年 C203 号 1 0 頁 ;通称 「イ ンター フェイス告示 」)」 を公表 し,協 同型 と集 中型 の 区別 に関す

る考 え方 を示 してい る 以下 で,集 中型 の判 断 を中心 にその内容 を紹介す る なお,告示 は基本 的 にジ ョイ ン ト ・ベ ンチ ャー を考慮 に入 れた ものであ るが, 同時 に共 同管理 を もた らす他 の形 態 の企 業 間組織 に も適用 され る 19) 。

( ∋共 同支 配 ( j o i ntc ont r o l )

前述 の ように,合併 規則 に規定 され る 「 集 中」であ るため には,ジ ョイ ン ト ・ ベ ンチ ャーが親会社 の共 同支配 に服 してい る こ とが必要 であ る。ここでい う「 支 醍 ( あ るい は 「 管理」 とい う訳 語 が適切 か も しれ ない )」 とは,所 有権 , 契約 等 の方法 に よって事 業者 の活動 に決定 的 な影響力 を行使 で きる可能性 ( 合併規 則 3 条 3 項) をい う。

多 くのケースで は,共 同支 配 は,親会社 問の契約 に基 づ い てい る 20) 。 また, 多 数派株 主又 は有力株 主が ,他 の小 数派株 主 ( 単数又 は複 数) との 間で,共 同 支 配権 を与 え る契約 ,つ ま り小 数 派株主 に営業 政策 お よび競 争戦略 に関す る拒 否権 を与 える契約 を結ぶ場合 もあ る。 さ らに,会社 の営業政 策 を企 画 ・実施す る こ とを可能 にす るため に,小 数 派株 主 の グルー プが相互 に契約 を結 ぶ場合 が あ る。

1 9 ) た とえ ば,少 数 派 株 主 ( mi no r i t ys ha r e ho l d e r s ) ,株 式 の相 互 持 合 い ( c r o s s ‑ s ha r e ho l d i ng) ,取締役の兼任 ( c o mmo ndi r e c t o r s hi p) ,一定の営業譲渡お よび資 産交換,及び共同取得 Go i nta c qui s i t i o n) を考慮 している。

2 0 ) たとえば, Pi l ki ngt o n‑ Te c hi nt / SI V 事件,官報 1 9 9 4 年 L1 5 8 号 2 4 頁では,親会社 2 社の持ち株比率は5 0 /5 0 であった。 EC 委員会は,ジョイン ト・ベ ンチャー ( SI V) の取締役会の構成 , 代表取締役の決定方法,さらに定款 によれば予算や財務等の重 要なことが らにかかわる決定は最低 5 名の取締役の賛成 を必要 としていることな どか ら, SI V が両社 により共 同支配 を受けているとみな した。 また, Ma nne s

ma nn/Va ll o ur e c / I I va 事件,官報 1 9 9 4 年 L1 0 2 号 1 5 頁では,親会社 3 社はジ ョイン

ト・ベ ンチャー ( DMV) の株式をそれぞれ 3 3. 3 3 % ずつ所有 していた。 DMV 設

立協定によると ,6 名で構成 される監査役会が全員一致で基本的なことが らを決定

する。また 3 名 による取締役会が 日常的な経営活動について決定 し監査役会の監

督を受ける。したがって ,DMV は親会社により共同支配されていると判断された。

(18)

6 2 商 学 討 究 第 47 巻 第 4 号

共 同支配 は,議決権 に関す る取 り決めが ない場合 で も認め られる。た とえば, 2 名の株主が会社 の意思決定 においては行 き詰 りに陥 る 5 0 % ‑5 0 % の株式 を保 有 している場合 には,親会社 は会社 の営業 に関す る決定 においては協力 をせ ざ

るをえないか ら,た とえその種 の協定が な くとも共 同支配が認め られる。株主 が 3 名以上の場合 で も,団結すれば資本 の過半数又 は株主稔会 もしくは取締役 会 において拒否権 を有す るに至 る場合 には,営業政策お よび競争戦略 に関す る 明白な拒否権が存在 しな くとも共 同支配 は発生す るであろ う ただ しこのケー スでは,法的又 は事実上の状況 (とくに経済利益 の合致) に照 して,株主が会 社 との関係 で意図的 に共通 の政策 をとるであろ うと考 え られる場合 にのみ共 同

支配が推定 される 21) 0

② 自立性 ( a ut onomy) 一積極 的要件

合併規則 3粂 2 項 によれば,共 同支配 を受 ける事業者が集 中的 とされ るため には,それが 自立 した ( 自治能力 をもつ)経済組織 としてのすべ ての機能 を継 続 的に果 していることが必要である( 完全機能のジ ョイ ン ト ・ベ ンチ ャー)。親 会社 の関連市場 にお ける利益構造が長期 的に変化 し,それが市場で独立 したプ レーヤーの機 能 を果す能力 のあ る事業者 を誕生 させ る もので なければな らな い。 したがって, この条件が満た されるためには,第一 に, ジ ョイ ン ト ・ベ ン チ ャーは市場 で独立 した売 り手又 は買い手でなければな らない。親会社 の責任 の一部引 き受 けてい るにす ぎない ジ ョイ ン ト ・ベ ンチ ャーが,経済活動の単 な る補助 的な存在 にす ぎない場合 には集中 とはみ なされない。た とえば, ジ ョイ ン ト ・ベ ンチ ャーがその製 品 ・サ ービス をもっぱ ら親会社 に供給 し,親会社 の

21 ) El f / BC/CEPSA事件,〔 1 9 9 1 〕4CMLR 5 80 では, Ba nc oCe nt r a l が CEPSA の

株式の約3 4 % を保有 している状況下で,他の有力株主であるEl fが,株式の追加取

得によって CEPSA に対する持ち株比率を 2 0. 5 % から 3 4% に増加 させたことが問題

となった。 2 社の間には契約上の取 り決めはなかったが,各社は ,7 5 % の株主の承

認が必要なCEPSA の営業戦略上の決定 ( 営業 5 カ年計画,投資,産業政策,営業

戦略など)に対する拒否権 もつことになる。委員会は, CEPSAの主要な活動に関

する決定を相互に阻止するという結果を回避するために, El fとBa nc oCe nt r a l は

永続的に協力せざるをず,したがってそこには共同支配の状況が生 じると結論した。

(19)

需要 だけを満 た してい る場合 がそ うである ジ ョイ ン ト ・ベ ンチ ャーの取引 の 大部分が第三者 との間でなされていて も,事業 の維持や展 開について親会社 に 実質的 に依存 してい るのであれば 自立性 を認 め るには十分 でない ことがあ る 。

契約 で定 めた ジ ョイ ン ト ・ベ ンチ ャーの存続期 間 よ りも,その存在 と独立性 を保証す るだけの人的 ・物 的資源 を有 しているこ とが重要 であ る。す なわち, ジ ョイ ン ト ・ベ ンチ ャーが,立 ち上が り期 間が経過 した後 は 自力 で事業 を維持 で きるだけの実質的な財源,営業設備 ,経営お よび技術 的 ノウハ ウを与 え られ てい るこ とが必要 であ る 22) 。

自立性 を判断す る際 の重要 なポイ ン トは, ジ ョイ ン ト ・ベ ンチ ャーが 自身の 営業政策 を執行 で きる地位 にあるか否 か とい うこ とであ る 。 独 立 した ジ ョイ ン ト ・ベ ンチ ャー は親会社 の企業活動 の付属 的な機 能 を果す以上 の ことを行 うこ とが必要 である したが って, ジ ョイ ン ト ・ベ ンチ ャーが共 同の販売 や購入 の 道具 にす ぎないのであれば,十分 な 自立性 を欠 くことになる 。 同様 にジ ョイ ン ト ・ベ ンチ ャーは,原材料又 は製 品の販売 について,過度 に親会社 に依存 すべ きで はない。もっ とも,親会社 か らの供給又 は親会社‑ の供給 が,ジ ョイ ン ト ・ ベ ンチ ャーの売上 げのわずか一部 しか 占め ていない場合 には,完全機 能の ジ ョ イ ン ト ・ベ ンチ ャーであ る との結論 を妨 げ ることはないであろ う 親会社 が,

2 2 ) 前掲 Pi l ki ngt o n 事件 ( 注2 0 ) では, SI V はイタリアおよび外国で各種のガラス製品

を製造販売 しているから,自立的な経済単位であること,親会社は同じ市場で活動

していないから行動の調整の危険性は存在せず,親会社の Pi l ki ngt o nとSI Vは競

争関係にあるが,同社 はすでにヨーロッパのガラス市場で活動 していることか ら

SI Vの経営管理に責任 をもたなければならず,両社間で行動の調整は起こりにくい

と考えられるとされた。同 Ma nne s ma nn 事件では,ジョイント・ベ ンチャー設立

契約によれば,ジョイント・ベンチャーには,その活動に必要な資産,設備,技術

等が譲渡され,親会社はジョイント・ベンチャーに必要な人員を提供 し,譲渡 した

設備に関連する製品,原材料,サービスを継続 して供給するが,ジョイント・ベ ン

チャーは自身で購入政策を決定する,すなわち他のルー トからこれらの資源を購入

することができることになっていた。以上の点からみて,ジョイン トベンチャーは

自立的な経済単位のすべての機能を持続的に果すために必要な手段を与えられてい

ると判断された。

(20)

64 4 7 巻 第 4 号

重 要 な売 り手 ,顧 客 又 は下 請 けで あ る場 合 で も,そ れ が ジ ョイ ン ト ・ベ ンチ ャー に とっ て 取 引 上 の 関係 にす ぎな い こ とが 示 さ れ れ ば, 当 該 ジ ョイ ン ト ・ベ ン チ ャー は市 場 で の 自立 的 な経 済 主体 とみ な され うる。

自立 性 と共 同支 配 の 関係 につ い て い え ば,親 会 社 が 定 款 の変 更 ,資 本 の増 減 , 利 益 の評価 等 の ジ ョイ ン ト ・ベ ンチ ャー の事 業 展 開 にか か わ る基 本 的 な事 項 に つ い て決 定 権 限 を留 保 して い る にす ぎない場 合 に は,事 業 者 の経 済 的 な独 立 性 は影 響 を受 け ない 。しか し,ジ ョイ ン ト ・ベ ンチ ャー の営 業 政 策 が 親 会 社 に よ っ て決 定 され る場 合 に は, ジ ョイ ン ト ・ベ ンチ ャ ーが 親 会 社 の市 場 利 益 の手段 で あ る可 能性 を示 して い る 。

③ 市 場 行 動 の調 整 を欠 い て い る こ と 一消 極 的要 件

共 同支 配 を受 け た事 業 者 が 「 集 中 的 」 で あ るた め に は , さ らに ジ ョイ ン ト ・ ベ ンチ ャー が ,相 互 に独 立 した事 業 者 の競 争 行 動 を調 整 す る 目的 や効 果 を有 し て い な い こ とが 必 要 で あ る。 そ の よ うな競 争 行 動 の調 整 は, 親 会 社 相 互 間 にお い て , あ る い は親 会 社 の全 部 も し くは一 部 とジ ョイ ン ト ・ベ ンチ ャー との 間 で 生 じ うる 23) 。 競 争 行 動 の調 整 の 可 能 性 は, ジ ョイ ン ト ベ ンチ ャー の 設 立 お よび活 動 が もた らす , 直 接 的 も し くは 間接 的 な,又 は現 実 の も し くは潜 在 的 な 効 果 を中心 に判 断 され る

告 示 は こ こで ,競 争 行 動 の調 整 の可 能 性 をい くつ か の場 合 に分 け て考 察 す る。

す な わ ち,

ィ. ジ ョイ ン ト ・ベ ンチ ャーが 親 会 社 の現 在 の事 業 を引 き受 け る場 合

2 3 ) アメリカの Co r ni ng 社が, イギ リス, フランスお よび ドイツで,それぞれ異 なった 会社 と光 ファイバー生産のためのジ ョイ ン ト・ベ ンチ ャー を設立 した事案 で ,EC 委員会 は ,Co r ni ng 社 と他 の出資 3 社 との問には直接 ・間接 に競争関係 にないが,

3 つの ジ ョイ ン ト ベ ンチ ャー どうLは競争 関係 にあ り ,Co r ni ng 社 は各 ジ ョイ ン ト・ベ ンチ ャーに利害関係 をもち,当然 にジ ョイ ン トベ ンチ ャーの行動 に影響 を与 え,かつ調整す ることので きる立場 にあると判断 した ( Opt i c a lFi be r s 事件 , 官報 1 9 8 6

年 L2 3 6 号 3 0 頁)。その他,親会社の 1 名 とジ ョイ ン ト ・ベ ンチ ャーの間の調整の可能 性 を認 め た例 ( Mi t c he l lCo t t s / So 丘l t r a 事件,官報 1 9 8 7 年),親会社 問で認 めた例

( Fo r d / Vo l ks wa ge n 事件,官報 1 9 9 3 年 L2 0 号 1 4 頁 ,Sc r e e ns po r t / EBU 事件,官報 1 9 9 1

年 L6 3 号 3 2 頁) な どがある。

(21)

ロ.ジ ョイン ト・ベ ンチ ャーが親会社 のために新規の事業 を起 こす場合 ハ.ジ ョイン ト・ベ ンチ ャーが親会社 の市場 に参入す る場合

こ.ジ ョイン ト ・ベ ンチャーが川上,川下又 は隣接の市場 に参入す る場合 イの場合 について。親会社が特定の事業 をそっ くりジ ョイン ト・ベ ンチ ャー に譲渡 して,それ以後はジ ョイン ト・ベ ンチ ャーの市場か ら完全 に撤退 して し まう場合 には,競争行動の調整の危険は通常存 しない。親会社がすべての事業 をジ ョイン ト・ベ ンチ ャーに譲渡 し,その後 は持株会社 としてのみ活動す る場 令,経済的 には完全 な合併 ( me r 貞e r ) に相 当す る . しか し, ジ ョイ ン ト・ベ ンチ ャーが親会社 の事業の一部分 を引 き受けたにす ぎず,親会社が依然 として 活動す る場合 で も, ジ ョイ ン ト・ベ ンチ ャーの設立 と運用が相互 に独立 した事 業者の競争行動の調整 に至 らなければ,集中は認め られる

ロのケースについて。親会社 が これ まで当該事業 を遂行 したことがな く,か つ予測可能な将来において も参入 しないであろうと考 えられる場合 には, 通常, 競争行動の調整の可能性 は存在 しない。親会社が ジ ョイン ト・ベ ンチ ャーのた めに競争 しない協定 を結んでいる場合 には,競争行動の調整の現実的な可能性 はます ます小 さ くなるであろう。もっとも,このような評価が可能なのは,ジ ョ イン ト ・ベ ンチ ャーが親会社 の川上,川下又 は隣接 のいずれの市場で も活動 し ていない場合 である。

ハのケース について。 この場合 には競争行動の調整が推定 される 。 この推定 が覆 されない限 り, EC 委員会 はそのジ ョイン ト・ベ ンチ ャーが協 同型である

との立場 をとるとされている

このケース について。 ジ ョイ ン ト ・ベ ンチ ャーが親会社 の川上又 は川下の市 場で活動 している場合,親会社が競争関係 にあれば,一般的には,親会社 間で の購入 あるいは販売行動の調整がお こ りうる. ジ ョイン ト ・ベ ンチ ャーが親会 社 の隣接市場で活動す る場合 には,調整の可能性 についての一般的な原則 を立 てることはで きない。調整の成否 は様 々な事情 ( 製品の技術 的 ・経済的な関連 性,製品間の相互補完性,現実の参入可能性等) に依存する 。

告示 は,親会社又 は親会社のなかの 1 名が, ジ ョイ ン ト ・ベ ンチ ャーの市場

(22)

66 商 学 討 究 第47巻 第 4 号

で活動 してい る場合又 はジ ョイ ン ト ・ベ ンチ ャーの潜在 的 な競争者 である場合 には,親会社 間又 は親会社 とジ ョイ ン ト ・ベ ンチ ャー間での競争活動 の調整が 推定 され る と述べ てい る。 この説 明 は,親会社 の なかの 1 名 で もジ ョイ ン ト ・ ベ ンチ ャーの市場 で経済活動 を続 ける場合 には,他 の親会社 が 当該市場 で活動

していな くて も, ジ ョイ ン ト ・ベ ンチ ャー は協 同的 と推 定 され る ( 集 中的で は ない) こ とを示唆 してい る。問題 は親会社 が潜在 的な競争者 の場合 であ るが, この点 につ いて ,EC 委員会 は,柔軟 なアプローチ を とって きた 。EC 委員会 は, あ らゆる客観的 な状況 に照 して,参入 が現実 的 な選択 であ り,営業上合 理的 な 行動 である と認 め られない限 り,親会社 が ジ ョイ ン ト ・ベ ンチ ャーの市場 に参 入す る,あ るいは参入可能性 が ある との結論 は とらない とされ る 。

5. 若干 の検討 ( 1 ) 基本 的な考 え方

EU法 においては,共 同体規模 の集 中に対 しては結合規則が排他 的 に適用 さ れ,ロ ーマ条約85 条 とは手続 や違法要件 も異 なるため に,ジ ョイ ン ト ・ベ ンチ ャ ーが集 中に該 当す るか どうかが重要 なポイ ン トとなる。協 同型 と集 中型 を区別 す る ことは,適用 条文 を決 めるために必要 な作業である。前述 の ように, 日本 法 の場合 は制度的 な条件 が異 なるため に, EU法の考 え方 をその まま 日本法 に 応用 す るこ とはで きないであろ う 。 ただ,種 々の形態 を もつ共 同子会社 が競争 制限的な効果 を もつ ときに,具体 的 に どの条文 を適用す るのか を決定す る必要 があ る

EU法での議論 は,業務捷携等 を背景 に した共同子会社 の設立が どの ようなメカニズム によって市場 での競争 に影響 を及 ぼすのか を考察す る上で参 考 になる と思 われ る 。

協 同型,集 中型 を区別す る発想 その ものは ドイツ法 の学説 に由来す る 。 ドイ

ツ法 では,企業結合 に関す る親定 の排他性 は明文 で定め られてい ないが, カル

テル規制 と企業結合規制 とで は違法要件 が異 なっている ( 「 競争 の制 限」と 「 市

場支配的な地位 の発生又 は強化 」 ) 。 ドイツで も1 9 73 年 に企業結合規制が導入 さ

れ て以 来,共 同企 業 ( Ge me i n s c ha f t s unt e r ne hme n) が カル テ ル親 制 ( 1 条)と

(23)

企 業結合 規制 ( 23,24 粂)の いず れ の適用 範 囲 に属 す るのか とい うこ とが議 論 と な り, そ こか ら共 同企業 を協 同型 と集 中型 に分 けて,適用 条 文 を決 定す る考 え 方 が生 まれ た 24) 。 連邦 カル テ ル庁 も一 定 の集 中 的 な共 同企 業 に は 2 4 条 1 項 が 優 先 的 に は通 用 され る とい う方針 を示 した こ とが あ る 25) 。 しか し,裁 判 所 は この 間題 に慎 重 で あ り, 1 9 85 年 の BGH 判 決 26) は,共 同企 業 に どの よ うな規 定が適用 され るのか を判 断す る場 合 には, その形 態 だ けで な く,企 業結合 規 制 とカル テル規 制 のいず れ の違法 要件 が満 た され てい るか とい う観 点 を重 要視 す るべ きだ と してい る。企 業 結合 規 制 の場 合 は, 当該市 場 の状 況 や共 同企業 の市 場 力 , す な わ ち共 同企 業 が市 場 支 配 的地位 を獲 得 ・強化 す るか どうか とい うこ とが ,カル テ ル規 制 の場 合 に は,諸 契約 を通 じて もた らされ る競 争 制 限が市場 関係 に影響 を及 ぼす か どうかが 問題 とな る。それ ゆ え , 共 同企 業 の設 立 が結合 要

2 4 ) Wi e de ma nn, Ge me i ns c ha 允s unt e r ne hme ni m de ut s c he nKa r t e l l r e c ht ,1 9 81 S. 1 0 9 f E .わが国の研究 として,服部育生 「 西 ドイ競争制限禁止法におけるジ ョイン ト・

ベ ンチャー規制」名古屋学院大学論集 :社会科学編 2 3 巻 3 号 1 5 5 頁。なお, ドイツ 競争制限禁止法は,複数の事業者が,一定の方法で他 の事業者の持分 を取得 した 場合 には ( 共同企業),共同企業が活動す る市場 に関 しては,参加事業者相互間に も結合 ( Zus a mme n f a s s ung) を認める規定 を有 している( 同 2 3 条 2 項 2 号 3 文) 0 詳細 は前掲東京経済法研究会報告 9 ,ジュリス ト 7 0 5 号 1 2 8 頁以下 ( 正田彬),岩本 諭 「ドイツ競争制限禁止法における共同子会社 と企業集中一企業集中概念の限界」

上智法学論集 3 9 巻 3 号 3 9 頁。

2 5 ) Ta t i gke i t s be r i c htde sBund e s ka r t e l l a mt s1 9 7 8 , S. 2 3 f . それは,共同企業が, 一実質的な企業機能を果す能力のある事業者であって,

一市場関連的な給付 を提供 し,川上又 は川下の市場でその活動の全部あるいは大 部分 を親会社のために行なっておらず,

一親会社 自身は共同企業の製品市場では活動せず,将来的にも活動 しない, 場合 には,共同企業を 「 純粋 に集中的」であるとみなす。そ して,この要件 を満た す共同企業の場合 には企業結合規定を優先的に適用するとい うというものである。

詳細 は岩本前掲論文 ( 注 2 4 ) 5 0 頁以下。

2 6 ) WuW/ EBGH21 6 9Mi s c hwe r ke . 詳細は岩本前掲論文 ( 注 2 4 )5 7 頁以下。なお,逮 邦 カルテル庁は,この判決によって 1 9 7 8 年の行政原則 を維持で きな くなったと受け 止め ,1 9 8 5 / 8 6 年年次報告書において公式に破棄 した ( Ta t i gke i t s be r ic htde sBun‑

de s ka r t e ua mt s1 9 8 5 / 8 6 , S. 2 4) 0

(24)

6 8 商 学 討 究 第 47 巻 第 4 号

件のみを満たすか,または市場関係‑影響のゆえにカルテル禁止の適用 をも受 けることになるかは, 個々の事例の事情 を稔合的に判断 して決せ られるべ きで ある 。BGH はこの ように述べて , 共同企業が2 4 条 と 1 条の要件 を同時に満たす 場合 には,両親定が適用 される可能性があることを認めた。そ して,外的な形 態だけでな く対市場効果の有無が重要であるか ら, 協同型 と集中型の区別は, 一 つの基準 としては役立つが , それだけでは決定的な役割 を果 し得 ない とする 。

( 2) 日本法の場合

共同子会社 に対する独禁法の適用条文 を検討する際に,行為の性格だけでな く,違法性 の判断基準や排除措置の有効性 について も考慮することが必要であ るか もしれない。 しか し,前述 したように, 3 条後段 ・2粂 6 項 と 1 0 粂 1 項の 場合 は,判断基準 に相違があるのではな く,原因 となる行為の性格 によって考 慮事項が異 なるにす ぎない。同様 に,排除措置の内容 も,競争の実質的制限が どの ようなメカニズムによって もた らされるか によって決定 され ることにな る したがって,やは り中心 となるのは行為の性格 である

( ∋企業結合規制

日本法 において も株式所有 ・営業譲渡等により,共同子会社の設立 を通 じて 企業結合 ( かたい結合)が生 じている場合 には,その点を中心 に競争の実質的 制限効果の有無 を判断すべ きであろう 。 したがって,主 として 1 0 条 1 項 ( ある いは 1 6 条)の適用領域の問題 となる そこで問題は,いかなる場合 に企業結合 が認め られるか ということになる 。 すでに述べたように,公正取引委貞会は, 株式所有 に閑にかかわる結合 関係 の判断 において親事業者 間の契約 ・提携 関 係,融資関係等 も考慮す る方針 を示 している。

企 業結合 が認 め られ るため には, EU法 でい う集 中型 ジョイ ン ト・ベ ン チャーの場合のように,親会社の事業活動が共同子会社 に集約 され,共同子会 社が企業 としての機能 を自立的に果た していなければならないであろう。た と

えば, EUの告示で指摘 されているような親会社が事業活動に必要な営業資産

を子会社 に譲渡 し,将来的にも当該事業 を展開する意図がない場合や,新規事

参照

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