東南アジア︐ の独占禁止法
1とくにオーストラリア法の研究1.
志 津
田
氏
治
序
経済関係法令のなかで︑第二次大戦後の.著しい特徴といえば︑反独占に関する国際的な協調体制の樹立と︑各国内
における独占禁止立法の整備強化の問題が︑脚光を帯びてきたことであろうω︒いま︑これを概略的に捉えるとき︑
つぎの三つの基本的な態度があることを指摘しなければならない︒まず第一に︑独占および他の取引制限の慣行に対
して﹁何もしない﹂︵qO 口Oけげ一昌σq︶という態度が考えられる︒これは︑およそ資本主義経済が︑私有財産制度と契約
自由の原則を基盤に成立する限り︑企業の集中は︑私企業である個別資本拡大化の必然的傾向にともなって︑あらわ
れた一つの現象形態であるから︑公序良俗に反するような私法上の行為︑または詐欺脅迫などの刑法違反の行為のほ
かは︑自由に放置させて置くべきであるという考え方である︒成る程︑この立場は︑資本主義的な視野に立つ限り︑
最も純粋かつ無理のない考え方であろうが︑国民経済における独占体の比率が大きくなるにつれて︑つぎの第二︑第
三の態度へ接近する傾向をもつものである︒少くとも初期のイギリス法は︑これに属するものといえよう︒つぎに第
二の態度は︑アメリカ︑カナダにおいて展開されているもので︑独占それ自体を悪として︑広範囲に亘り︑かつ原則
東南アジアの独占禁止法 一五九
研 ︷究 年 報 ︑ 一⊥ハ○
的に禁止するものである︒この両国においては︑強力な独占禁止法を制定し︑またその実施の有効性を確保するため
の監督機構が確立されているが︑なかでもアメリカ法では︑刑事法的なものから民事法的なものへの発展化︑あるい
は一般的抽象的規定から個別的具体的規定への分化という内容的推移もみられる︒なお︑これらの態度は︑第二次大
戦後アメリカの占領下にあったわが国︑西ドイツにも立法的に具現されている︒最後に第三の態度は︑独占力の濫用
を防止しようとするもので︑理論的にあるいは実践的にも広範囲に承認されている︒現在のイギリス︑スウェーデン
ノールウェー︑フランス︑南アフリカの最近の立法に︑この思想が顕著にあらわれている︒この濫用禁止の思想的根
拠は︑カルテルなり独占を本来的に害悪とみないで︑その疑いのあるものは調査をおこない︑必要があれば禁圧する
のである︒畢寛この態度は︑資本主義の複雑な経済事象を︑純粋理論的な視角のみによらないで︑経験実践的に解決
していこうとするものに外ならない︒一九四八年のイギリスの﹁独占および制限的慣行︵調査.規制︶法﹂がその曲ハ型
的な例であるが︑尤もここで注意を要するのは︑この法律でもつって︑独占問題を一挙に解決するというよりも︑基
本的な独占問題の調査に重点が置かれているのであり︑その結果必要があれば︑一定の措置を考えようという︑いわ じば準備的なものである︒その意味において︑一九四九年のデンマークのトラスト委員会設置法と軌を﹂にするものと
いえよう︒
ところで︑東南アジアにおいては︑どのような独占禁止法を有しているだろうか︒まずオーストラリア︑ニュー︒
ジーランドでは︑一八九〇年のアメリカのシャーマン法による反独占政策の影饗で︑独占禁止法が制定されている︒
すなわち︑オーストラリアでは﹁産業保全法﹂︵︾昌︾9h自筆Φ勺おω2<鋤什ざ昼︒h︾冨三巴一碧一且仁︒・け二︒ω〜且ho嘱
芽①寄罵︒・・営9U・・§9一話竃88︒翫碧爵・ぎ雪・・証・ぎ象弩諺準Φ・⁝慧8>9︶が二︐ユー②ジーラ
ンドでは﹁商業トラスト法﹂︵﹀目>oけho目荘①幻①胃Φω巴︒昌oh﹈≦o口oOo=①ωぎ6茸山oohOo目ヨ⑦Ho①⁝Oo日日︒容貯一8.
≡馨︾︒↓︶がこれである︒前者の法律は︑オーストラリア産業の保全と破壊的独占の抑制に関する法律として知られ︑
一九〇六年に制定されて以来︑現在まで数回の改正をうけて存続している︒後者の法律は︑一九〇八年法にかわり︑
一九一〇年に制定され︑一九一一年の一月一日から施行されている︒しかし︑オーストラリアなりニュー︒ジーラン
ドにおいて刮目されるととは︑これら両国が︑いずれも人口僅かな島国であり︑経済の根幹を農業生産と外国貿易に
置くところがら︑国内産業の奨励に主力を注ぎ︑企業間の競争の促進を重大関曲事としていないことであろう︒従っ
て︑これら独占禁止法の目標は︑消費者なり︑生産者を外国のトラストから保護するとともに工業原料である農産物
の生産者を︑外国資本の牧野から守ろうとする意味をもつものであっに︒この点︑わが国の独占禁止法のように︑公
正かつ自由な競争の促進による国民経済の民主的で︑健全な発達を中核とするものとは︑可成り性格的に相異するよ
うに思われる︒
つぎに︑東南アジアの一角であるブイリッピンにおいても︑一九二五年に﹁独占および取引制限的結合禁止法﹂が
制定され︑最近では一九四六年九月法律三二号︑で﹁法律四〇三五号・輸入にかかる物品︑製品若くは商品のダンピン
グの防止︑輸入取引における不公正な慣行あるいは方法の阻止およびこれに対する特別関税並びにその他の目的を有
する法律の改正法﹂︵>98︾ヨ︒自製︾9Zo.恥OQ︒αoh筈①℃臣=b風口Φピ︒σq巨鋤εお①昌菖二①傷︑.下口>98b目①<Φ艮
自qヨ℃ぎひqo頃一巳Ooユ①傷自︒簿一〇一①P ≦母①9自 ヨ①︻oゴ曽昌αδ①8象ωoo鮎苗σQ①=昌hp︒一同霞8江︒①ω自8①爵︒匹ωぎけず①
東南アジアの独占禁止法 一六一
研究年報
一六二一日眉︒箕︒創#&P8ぎboω①魯①99自ω8日ω含江①ω鋤鼠8円︒爵2℃ロ弓︒屋①︶が定められている︒さらに一九五
四年の六月には﹁価格統制法﹂︵︾目︾98胃︒<置Φ8H爵Φ津×貯ぴqり自ロα28答巴昌oo昌島江︒口ω・o︷誓Φヨ年占8=日
ωo二ぎσq胃帥8日目囲8ヨ信︒島叶δωぎωげ︒二霊b冨ざ自Φρ江づσq島Φ嘆陣808欝血O囲津oρきO︷oHo跨①H薯弓︒ωΦ︶ ②を制定して︑重要商品の供給︑拡布︑移動に影響を及ぼす欠乏︑独占︑退蔵︑投機︑暴利行為を取締っている︒また
ダンピングの防止については︑東南亜圏を構成するオーストラリア連邦︑ビルマ共和国︑中華民国︑インド︑セイロ
ン等の諸国も加えて﹁関税および貿易に関する一般協定﹂︵O①昌①同量 ︾σqh①①﹈B①旨叶O口日国ユ跨ω国⇔匹円﹃四αΦ⁝ O誤日目︶ ㈹に参加して︑ダンピングの防圧に努力していることも特筆さるべきであろう︒
さらに︑ここでめをひくのは第二次大戦後︑国際的な繋がりで反独占政策の気運が高まっており︑基本的人権の保障︑
民主的な政治体制の原則と併行して︑トラスト︑カルテルを一国の基本法である憲法で︑禁止する旨の規定を設ける
国が増加していることであろう︒勿論戦前も︑憲法でカルテル行為を禁じている国があった︒たとえば一九三三年の
ペルー憲法がそうであり︑その二七条なり四〇条で営業の自由が保障されているにもかかわらず︑その一六条で﹁独
占並びに取引および産業を制限する結合は禁止する︒法律において︑違反する者に課する罰則を定めなければならな
い︒法律によってのみ国に独占または排他的な国民的利益の特権を賦与できる﹂ことを明示する︒しかし戦後は︑チ
ェッコスロバキヤ︑ユーゴースラヴィア等の人民民主義の諸国を含めて︑二八ケ国がこのような規定を︑憲法典のな ㈲かに挿入している︒その規定の仕方には︑多少の相異はあるが︑東南アジアのビルマ︑インドネシア︑タイ黙契で
は︑憲法による制限規定を有している︒すなわちビルマ連邦憲法二九四七.九.二四︶では﹁価格の支配若くは市場
の独占を目的として結成され︑または国民経済の利益を害するとみられるカルテル︑シンジケートおよびトラストの
ような私的独占組織は禁止する﹂ ︵二三条︶ことを宣言し︑ インドネシア共和国臨時憲法︵一九五〇︶にしても﹁政府
は法律の定めるところに従い性質上独占的であり︑かつ国民経済に有害な機構の存在をはばまなければならない﹂こ
とを述べている︒さらにタイ王国の憲法二九四九︒三.二三︶においても︑その六八条では﹁私的経済活動は自由であ
る︒但しそれが一般的効用の機能に適合せず︑または人権︑社会的安全若くは個人の自由を犯す場合には︑この限り
でない︒ ︵以下中略︶独占および一般的効用を有する私的企業は法律の定める権限にもとずいてのみ設立される﹂と
している︒このように憲法中に反独占政策の採用を定めていることは︑単に産業政策なり経済政策の一環として︑反
独占を推進するというだけに止まらないで︑反独占そのものを一国の基本的な経済体制︑産業組織として位置づけよ
うとするものであり︑その意味において単行法としての独占禁止法と︑別個独自の役割をもっていることを注意しな
ければならない︒ ︑
︵註1︶尤も第二次大戦前においても︑広範囲に反独占体制が整えられていた︒たとえば︑ アメリカのシャーマン法︵ωげ興ヨ碧
>oゴ一G︒OO︶︑クレイトン法︵O冨旨︒ロ>o什レΦ置︶︑連邦取引委員会法︵周①畠臼二重筍畠ΦOoヨヨδ巴8>o計お置︶カナダの
刑法および企業結合調査法 ︵︾口︾98嘆︒︿乙Φ︷o円叶冨窪く①ω江σqp含︒昌oh8口ぴ冒Φω日︒ぎbo口09茸器用ω碧山ヨ角σq①誘
おト︒ω︶︑ベルギーの﹁生産および販売に対する経済的規制を認める勅令﹂ ︵田畠9α︒臼ΦΦ8き荘自一N① 昏①Φ8口︒巳︒
冨σq巳①江︒巨︒囲智︒巳︒菖︒口琴像象二巴げロ笛oPおω㎝︶メキシコの﹁独占につき規定する憲法二八条の運用法﹂β9σq9巳︒一β︒≦
頃臼け鉱三αq8理江9①NG︒oh筈①8器江ε江8お冨江pσq8ヨ§oや︒嵩①9一Φω艀︶のほかに︑フランスの刑法︑イタリーの民
東南アジアの独占禁止法 一六三
研 究年報 − 一六四
法などがある︒第二次大戦後は︑アメリカ法の影響のもとにわが国を始め︑西ドイツの﹁競争制限禁止法.﹂︵OΦω①欝σq①αq魯
≦Φ茸び①≦興びωび①ω魯鼠鼻自αq①pく8Nメお密︶︑イギリスの﹁独占および制限的慣行︵調査・規制︶法﹂︵日冨880一一①ω9︒巳
お馨鵠9オ①質碧江8ω︿冒ρ岳蔓四書8算目9V>︒岳淫G︒︶ ﹁制限的取引慣行法﹂︵菊Φωけ旨︒菖︿①↓富山①勺旨︒江︒①ω﹀♀レ⑩㎝①︶
がある︒ そのほかにも.アルゼンチンの ﹁独占処罰法﹂ ︵>98實︒<崔①げ8ぐ出品5巴江①ω貼︒円>9ω諾巳貯σq汁︒導㊦
①o︒蜜σ嵩ωげヨ①算ohヨ︒口oOo一δω鞄O癖①︶デンマークの﹁トラスト委員会設置法﹂ ︵︾900口︒①ヨ貯αq芸①Φ珍餌げ鵠ωげ旨①鼻oh曽
二目けω8ヨ邑ω忽︒戸一廻⑩︶ ノールウエーの﹁価格︑配当および競争の管理︑規制に関する法律﹂ ︵︾988昌霞︒一碧α
おゆq三韓Φ崔一︒ρ象く乙︒旨自ωき島8ヨb醇一江︒Pお㎝ω︶スエーデンの﹁商取引における特定の競争制限行為の規制に関する公
法﹂ ︵℃ロ亘8冨≦800目零︒猫︒け鴇︒︒け匡︒江︒コ8ヨb9搾一〇ロぎび蛍ωぎ$ω貯8暮量目言ω富昌8ω鞄Φ器︶および﹁価格︑競争
の状態に関する情報の提供義務に関する公法﹂ ︵勺二目一︒冨≦︒§8旨言ぴqけ冨︒び二σq讐δ口8︒・二び日客一昌ま門日9江︒口器8
︒o昌島江︒ロωoh娼二︒①碧自8ヨb①寓江︒ジド⑩㎝ω︶を附記することができよう︒
︵註2︶ブイリッピンの価格統制発着一条に記載される商品または物品のなかには︑輸入並びに地方的に製造または生産される米
とうもろこし︑麦粉︑魚罐詰︑コーヒー︑ミルク罐詰︑肉罐詰︑生肉および冷凍肉︑教科書︑紙︑および紙製晶並びに新聞
紙︑雑誌および教科書用の資材︑抗生物資その他の主要薬品類︑主要な外科用資材︑主要な歯科用資材︑繊維晶など甚だ広
範に亘っている︒なお同法によれば︑ブイリッピン大統領は右商品の合理的な最高価格の設定を命ずることができ︵四条︶
またその目的達成のための規則制定権を認めている︵四条︶︒そのほかに右の物晶には物品表なり定価札を貼付する義務
を明示し︵七条︶︑また最高販売価格をこえた価格で物晶を販売する者などの規則違反者には︑禁鋼︵ニケ月以上五年以
下︶︑罰金︵二百ペソ以上五千ペソ以下︶の併科刑あるいは追放などの特異な処罰規定も考慮されている︵九条︶︒
︵註δ︶ガットによれば︑締約国はダンピングを相殺し︑または防止するためにダンピングされた商品に対し︑その商品に関する
ダンピングの限度をこえない金額の︑ダンピング防止税を課しうる旨を明示する︵六条︶︒なおダンピングの概念づけは
ガット六条および附属書E参照︒
︵註4︶憲法で反独占を宣言しているものに︑アルバニア人民共和国憲法︵一九五二︶二四九条︑ブルガリア人民共和国憲法︵一
九四七︶一〇条︑チェッコスロバキア共和国憲法︵一九四八︶一四一条︑コpンビア共和国憲法︵一九四五︶三一条︑三
二条︑キューバ共和国憲法︵一九五二︶−二四九条︑ドイツ民主主義共和国憲法︑二〇条︑二四条︑ドミニカ共和国憲法︵
一九四七︶六条︑エクアドル共和国憲法︵一九四六︶一九四条︑エル・ナルヴアドル共和国憲法︵一九五〇︶一四二条︑
フランス共和匡憲法︵一九四⊥ハ︶前文グアテマラ共和国憲法︵一九四五︶九八条︑九九条︑ハイティ共和国憲法︵一九五
〇︶五二八条︑ホンデュラス憲法︵九三六︶六二条︑六三条︑イタリー共和国憲法︵一四九七︶四三条︑コスタリカ共和
国憲法︵一九四九︶四六条︑ニクアラグア憲法一九五〇︶八五条︑八七条︑パナマ共和国憲法︵一九四六︵二三六﹁条︑東
ウルグアイ共和国憲法︵一九五二︶五〇条︑ユーゴースラヴイァ連邦人民共和国憲法︵一九四六︶一八条︑ヴエネズエラ
合衆国運邦憲法︵一九四七︶七三条がある︒
e
取引の制限に関する規定として︑オーストラリア法では第四条をあげることができる︒その第一項では﹁外国貿易
または高間の商業に関し︑本店または代理店として︑次の契約をなし︑または結合の構成員となり若くはこれをおこ
なう者は︑罪を犯した者とする︒㈲取引制限または取引制限の意図向生産業者︑労働者および消費者の利益に十分留意
して︑共和国にとり利益であるオーストラリア産業の保全を︑不公正な競争方法によって破壊または侵害し︑若くは
東南アジアの独占禁止法 一六五
研究年報
・ 一六六破壊または侵害する意図﹂を禁じている︒わが国でも︑独占禁止法の三条に﹁事業者は私的独占または不当な取引制
限をしてはならない﹂と定め︑さらに二条では−﹁この法律において不当な取引制限とは︑事業者が契約︑協定︑その
他何らの名義を以てするかを間わず︑他の事業者と共同して相互にその事業活動を拘束し︑又は暴行することにより
公共の利益に反して︑一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう﹂と規定する︒したがって︑わが
国では競争の実質的制限は︑それ自体が違法なのではなく︑それが公共の利益に反しておこなわれる場合に限って︑
始めて違法とされるものと解する︵デンマークの独占および取引制限行為規制法一条︑二条参照︶︒この点︑オーストラリア法
でも︑第三項において﹁本条に違反したとされる当事者が︑次の各号の一つを立証するときは︑同条一項㈲号によ
る違反の訴訟手続に対する抗弁とし︑かつ契約が貿易または商業を制限し若くは制限する意図をもってなされたとの
主張に対する答弁とする︒㈲貿易または商業を制U興し若くは制限する意図をもって︑おこなわれたとする事項は公
共の利益に反しないこと︑㈲おこなわれ︑または意図された取引制限は不当でないこと﹂を明示しているが︑ほ団わ
が国と同様の結論になろう︒尤も不当な取引制限により︑公正な市場取引を維持しようとする努力は︑古くイギリス ωのコモン・ローにみられる︒すなわち一六世紀以降のコモン・ロー裁判所の幾多の判例によれば︑私契約における
過当な取引制限︵幻︒ω寓蝕暮︒置目轟α①︶はいわゆ渇唇乞言b2長鳴に反するものとして︑無効であるという原理が確
認されている︒しかし︑その後このコモン・ローの法理も︑近代的経済事象への適用が困難になるにつれて︑アメリ
カでは各洲の独占禁止法とは別に︑連邦法としてのシャーマン法を制定したのである︒その第一条には﹁数三間また
は外国との取引若くは商業を制限するすべての契約︑トラストまたはその他の形態による結合若くは共謀はこれを違
法とする﹂︵国く①蔓oo昌跨βΩo計oo重げぎ9︒江︒コヨ夢①ま﹃ヨ○︷菖二六︒円︒暮︒目≦δΦ︾自oo昌ωb貯oざぼ円①ω等量三〇暁
霞巴①o﹃8ヨ白28鋤B自σqけ冨ω⑦<①︻巴ω富冨90円芝一挙ho幽鬼σq5き江自9冨ゴ⑦8び鴇9巳母①q8ぴ①崔①σe巴●︶
旨の取引制限禁止を明示し︑さらに第三条では︑この第一条の趣旨を属領内︑属領間︑属領と本国︑各州間の商業取
引にも適用することにしている︒ところがアメリカでは︑その意味が︑あまりに抽象的であり︑不明瞭であるために
可成り複雑な解釈の変遷もみられた︒たとえば初期の判例︵q巳言山鶉象︒ω<・目雷口ω・竃凶ωωo霞凶淳鉱σq算器ω戸H同O・q●
ω●卜︒⑩ρ旨ω唇・9・課OiドG︒⑩刈︶で︑大審院は﹁シャーマン法はすべての契約を禁止しているのであり︑それが取引
を正当に制限するものなるか︑不当に制限するものなるかを問わない﹂として︑鉄道会社に対する最初のシャーマン
法違反の判決を下したのである︒またこの態度は︑一九〇四年の北部証券会社の判例にもうかがうことができる︒そ
こでも﹁シャーマン法は︑貨物の単なる生産者には言及していないが︑直接的に若くは必然的に州際商業の制限を︑
もたらすべき契約︑協定はその形質の如何を問わず違法である︒同法は不当な磯際商業の制限のみならず︑あらゆる
直接的な制限を包含する﹂としている︒ところがその後︑一九=年のズタンダード石油会社の判例では︑理性の法則
︵甲屋︐一① Oh目①9ωO旨︶をシャーマン法の解釈に導入するという新局面を拓いたのである︒すなわち︑シャーマン法は州
際商業を不当に制限することのない契約を締結する権利を︑束縛する意図を有しないために︑特定の場合︑特定の行
為が違法であるか否かを判定するには︑コモン・ローにおいて用いられた理性の尺度を必要とすべきであるとされた
のである︒ ︵ω曾曽づ傷9Ω円山O出Oo二〇h2Φ奢一⑦円ωΦ緒く●口旨淳Φqω冨8ω噂b◎NドO・ω・囲●QQHω=b●O什・αON︶これは一九一
一年のアメリカン煙草会社の判例にも承継せられ︵口雲影亀ω$3ω<.︾目〇二︒弩目09800こb︒b︒ド¢.ω●ドO少ω昌ω唇・
東南アジアの独占禁止法 一六七
研 究 年 鞘報 ︑ 幽 一六入
O酔・①Q︒卜︒︶理性の法則を採用して﹁取引制限とは︑ コモン・ローの原則に鑑みるも︑競争の不当なる制限によって︑
公共の利益を害すべき行為または契約を指す﹂としている︒一九二〇年のU︒S鉄鋼会社の判例︵¢巳8σω富8ω<・
¢巳8山匂D欝冨ωω冨Φ一〇自公︒垂線oP卜︒竃O・ω●念S繕Oω忘・9・N㊤G︒刈︶にも確認されている︒このようにアメリカ
勿でも︑その関係市場における当該行為が︑不当に競争を制限する場合に違法であると解されている︒ その意味にお
いては︑条文の形式でその点を明確にしているオーストラリア法なり︑わが国の独占禁止法はすぐれているものとい
えよう︵アイルランドの﹁商晶の供給および配給に関する取引制限行為に関する法律﹂一九五三年附則参照︶︒
つぎにオーストラリア法では︑取引制限に関する罰則を定めていることである︒すなわち︑罰則として五百ポンド
の罰金または違反継続の場合にはその継続期間中一日当り五百ポンドの罰金Lを規定する︵四条︶︒ これを比較法的
に鳥轍すると︑シャーマン法では軽罪を犯したものとし︑裁判所の裁量により五五ドル以下の罰金または一年以下の
禁鋼若くはこれを併科するものとする︵一条︒三条︶︒わが国の独占禁止法でも︑八九条に不当な取引制限をした者は
これを三年以下の懲役または五万円以下の罰金に処することを命じ︑なおこの場合には︑情状により懲役および罰金
を併科することを認めている︵九二条︶︒ また︑わが国の独占禁止法では︑不当な取引制限に関する未遂罪を処罰の
対象としているが︵八九条後段︶︑この点︑オーストラリア法はつぎのような注目に値する規定をもつ︒その九条によ
れば︑取引制限に関する違反行為を教唆︑蓄助︑助言かつ斡旋しまたは直接鼻翼を問わず︑作為若くは不作為によっ
て知りながら︑これに如何なる方法においても関係し︑または関与する者は五百ポンドの罰金としている︒ニュー︒
ジーランド法の九条も︑これと類似の規定を置き︑従犯︑教唆犯を正犯と同一視している︒また一〇条に規定する罰
則によれば︑違反者に対し一律に五百ポンドの罰金を課し︑自由刑を規定していない点にわが国と異り︑オーストラ
リア法に近接する︒しかし︑ここで異色があるのは︑二名以上の違反者の責任が︑各自独立し︑別々に五百ポンドの
罰金刑に処せられていることであろう︒
さらに︑オーストラリア法の四条二項においては﹁本条に違反するすべての契約は違法かつ無効とする﹂ことを宣
言している︒不当な取引制限の違法性については︑ シャーマン法︵一条︶でも明示されているが︑その私法上の効力
の無効性については︑何等の規定を有しない︒たゴ判例にて確認されているのみである︒わが国の独占禁止法も︑こ
の点には触れず︑法解釈の上で︑その無効が肯定されているに過ぎない︒蓋し︑不当な取引制限に関する行為は︑そ
の私法上の効力を否認し︑これを無効とするのでなければコ切の事業活動に対する不当な拘束を排除する﹂という
本法の目的を達成することができないからである︒
つぎに︑オーストラリア法では︑貿易または商業の制限となるものについて︑検事総長あるいは検事総長が権限を ㈹賦与した者に︑緊急差止命令の申請を認めている ︵一〇条︶︒不当な取引制限を抑制するための︑高等裁判所の訴訟
手続は︑検事総長によって開始されるが︑しかし高等裁判所自体も︑この規定とは別に緊急差止命令を執行する権
限があるとされている︵一〇条A二︶︒また緊急差止命令に従わない行為をした者には︑違反継続期間中一日当り五
百ポンドの罰金に処せられる︵一〇条A一︶︒わが国の独占禁止法では︑これに類似する規定として︑七条がある︒そ
れによれば﹁第三条又は前条第一項若しくは第二項の規定に違反する行為があるときは︑公正取引委員会は︑第八章
第二節に規定する手続に従い︑事業者に対し︑届出を命じ︑又は当該行為の差止︑営業の一部の譲渡その他これらの
東南アジアの独占禁止法 一六九
研究年報 一七〇
規定に違反する行為を排除するために必要な措置を命ずることができる﹂としている︒シャーマン法でも︑合衆国地
方裁判所に不当な取引制限の違反を防止し︑かつ抑制する裁判権があたえられていることは注目に値いしよう︵四条︶︒
さらにオーストラリア法で特筆されることは︑他のイギリス連邦諸国にはみられない︑私訴による三倍賠償の規定
があることであろう︵二条︶︒すなわち﹁この法律のこの章に違反して他の者がした行為または同法同章の規定によ
る緊急差止命令に違反してなされた行為によって個人または財産に損害を受けた者は当該損害に対し三倍賠償の訴訟
を高等裁判所に提起できる﹂ものとしている︒わが国の独占禁止法にはこれと同様の規定はみあたらない︒たゴ︑僅
かにその二五条において︑不当な取引制限をおこなった事業者は︑被害者に対して︑これにより生じた損害を賠償す
る義務があることを明示し︑しかも︑この場合には故意または過失がなかったことを理由として︑損害賠償義務を免
れえないものとして︑事業者の無過失責任を肯定する︒ところでオーストラリア法と同じ態度をとるものとして︑シ
ャーマン法の七条をあげることができよう︒それによれば﹁この法律により禁止され︑若しくは違法とされることに
より︑他の者または株式会社によって︑事業または財産に損害を受けた者は︑訴訟額の如何にかかわらず被告の居住
地あるいは現在地の合衆国地方裁判所に訴を提起し︑受けた損失の三倍および適当な弁護料を含む訴訟費用の賠償を
受けることができる﹂旨を規定する︒ ︵勢︒昌矯bΦ霧8≦げ︒ω冨=び①一ど霞①山ぎ匿ωぴ塞ぎΦωωo円罠︒二折なげ団9︒昌団
︒爵Φ円℃臼ωoコ︒円8巷oBけδ昌び団﹃8の050h9︒コ旨匪昌αqhoH三&oロ自島①o一霞巴け︒ぴ︒鱈巳9︒≦h巳び団け霞ω2︒989︒団
ωヨ①芸2①8同ぎ9︒昌気︒ぱ︒巳↓oo霞けoh芸Φ¢巳冨◎oDδ酔①ωぎ芸①巳ωけユ9ぎ≦ぼ︒ゴまΦユ①剛①5ユ昏夢おω乙①ωo同ゆω
hoロ巳三雲︒旨8ωbΦ98些︒国日︒葺けぎ8昌霞︒くΦ﹃ωざ9︒巳ω冨=冨8<①h律呂①Φh︒冠芸①9ヨ9︒αq︒ωび鴇眠ヨ
の二ω鍵ぎΦ鼻 きα匪①ooω霰︒唾ω巳♂貯9鼠ぎαq円8ωo弓勢︒匿①鋤雰︒箋Φ団.ω冷ρ︶ このように︑オーストラリア法なり
シャーマン法に規定する三倍賠償の法理︵その賠償額が損害の三倍であるとする︶は︑一般私法上の損害賠償事件と異り︑
多分に罰則的性格を帯有しているものといえよう︒
︵註一︶イギリスの取引制限禁止のコンモン・ローの法理は︑反トラスト法制定以前のアメリカにおける主要な法的規整をなすも
のであった︒しかし︑アメリカの各州裁判所による違法の宣告は︑単に無効を確認するのみで︑法律上その契約を当事者
に強制しえず︑かつ処罰しうべきことを意味したのではない︒無効確認の判例としてO害樗巴Oぼ︒ω9けO︒・<・Ω葺寓δ ノ ︵ω鋲℃●o野ohO甑P一︒︒G︒ρω朗O匡︒ω貫①①9羅︒おく・切d⑦弓簿計O庫O一目.$℃N①Z・国.c︒G︒c︒レG︒露⁝またコンモン・pIにおけ
る取引制限の法理は︑第一次的に当事者の利害が考慮されているのであり︑︐勺口三身貯零器ω什の問題は︑より附随的な対
象とされたに過ぎなかった︒
︵註二︶不当な取引制限の具体的内容であるが︑これは個々の判例を吟味しなければならない︒最も重要な点は︑何が不当である
かの判断基準が︑公共の利益︵℃二げ一一〇℃O一一〇矯︶に求められていることである︒従って︑公共の利益侵害は︑一切の反トラ
スト違反の要件を構成する︒これに関する判例として︑q潮汁巴の審零ω<︒UΦ念書門①い臼蓋毒曽葦葺卿ミ①ω冨養寄一一ミ帥団
OOこNG︒ωd・ω・凹ρ㎝置︵一Φ易︶⁝≦出伍2ζ齢・Oo︒ぐOo目●旨趣日︒含9ωOoこ器①¢●ω.一①9一置︵お一α︶⁝ω冨旨幽9三9一く.da
苗像ω富器ω卜︒い︒一d・ω●嵩G︒︵一の置︶⁝d三8島ωβ器ω<●d旨一〇置鯉9津︒幻鉱一幻︒輿畠Ooこ認①d●ω●①ど︒︒8︒︒G︒︵おドN︶.なお
アメリカでは︑制限が不当であるか否かについて︑次のような注且すべき判例がある︒
㈲ 制限のおこなわれる企業の性質を吟味することである︒たとえば独占的傾向を有する半公共的な企業形態向の協定に
おいては︑原料の供給が無限で︑かつ僅かの資本のみを要する企業に比較して︑ 一層軽微な理由で不当な制限と考えられ
東南アジアの独占禁止法 一七一
研究年報 − 一七二
る場合がある︵d巳件巴qD雷需︒・︿9≦窪汁冒σ⇔Nに漏壷侭①ρミρおに︶︒
㈲ 当事者間の意図が善良であることは公共的利益侵害の牟護にはならない ︵円︒ヨω8<●国鉱ωΦジ隠ωd・ω・o︒評︒︒①
︵お旨︶噌口昆け巴ω富け①ωぐ●OB霧ピ鋤民①↓?≦冒αqOoこNOc︒町鳶●刈ωω気暉︵殴り一ω︶3
㈲ 制限は必ずしも長期間に亘る必要はなく︑また自発的であるか否かを向わない ︵d昆80ω訂8ω<・勺9ヰ㊦旨旨①・
dω︒9㎝︶︒
㈲ 競争を抑圧することになる場合は︑単に個人のみならず公共の利益を害するもので︑不当な制限となる ︵︾身ω︒口
勺甘①<・d島沖巴ω寅零9一刈㎝q・ω﹄=b瞳︵HGO8︶︒
︵註三︶ベルギー法一一条︑デンマーク法=一条︑アイルランド法一一条などに明記されているが︑ことにニュー・ジーランド法
の一三条には最高裁判所は違反行為の継続または反復に対し差止命令をあたえることができる︒但しこの差止命令は訴訟
の終局判決前に︑中間手続としてあたえなくてはならないしとしている︒またクレイトン法によれば︑暫定的差止命令は
相手方との関係で︑次のような制約がある︒ω相手方当事者に通知することなく︑これを発してはならない︵一七条︶︒㈲
裁判所または裁判官が︑適当と思料する金額の保証金を申請者が供託する場合を除き︑これを発してはならない︵一入
条︶︒のその発給理由を附し︑期間を特定し︑かつ制限せらるべき行為を訴状または他の書類を引用することなく︑相当
詳細に記さなければならない︵一九条︶︒
⇔ ω 取引制限についで問題となるのは︑独占であるが︑オーストラリア法の七条では﹁外国貿易または州際間の商業の
いかなる部分をも独占し︑または独占を企図し︑若しくは独占するため︑他の者と結合あるいは共謀する者は刑事上
の罪を犯したものとする﹂︒ニュー︒ジーランド法でしも﹁何人も他の者と共謀して︑ニュー︒ジーランド若しくはそ
の一部において︑商品の需要︑供給を全部若しくは部分的に独占し︑またはニュー・ジーランド若しくはその一部に
おいて︑商品の需要︑供給︑価格を全部的若しくは部分的に支配する場合において︑かかる独占または支配が︑公共
の利益に反する性質のものであるときは軽罪を犯したものとする﹂という類似の規定を置くが︵五条︶︑わが国の独
占禁止法でも三条の禁止規定がある︒ことに二条においては﹁私的独占とは事業者が単独にまたは他の事業者と結合
し︑若しくは通謀し︑その他如何なる方法を以てするかを問わず他の事業者の事業活動を排除し︑又は支配すること
により︑公共の利益に反して一定の取引分野における競争を実質的に制限することを︑いう﹂と定義を試みている︒わが
国の独占禁止法が︑オーストラリア法と相異する点は︑独占に対し明文で︑ある一定の場合に適用除外を認めているこ
とであろう︵一=条︶︒すなわち︑独占禁止法の対象とする私的独占行為のなかには︑電気事業︑瓦斯事業︑︑鉄道事業
などの公益事業で︑事業の性質上独占となるような自然的独占あるいは︑国家の意思により法律によって︑独占権が
設定せられる専売事業などの法的独占は含まれないのである︒またオーストラリア法と︑まったく形式的にも同一で
あると思われるものに︑シャーマン法の二条をあげることができよう︒それによれば﹁本州閲または外国との取引若し
くは商業のいかなる部分を独占し︑または独占を企図し︑若しくはその目的をもって︑一人あるいは数人と結合︑共
謀する者は軽罪を犯したものとして︑裁判所の裁量により︑五千ドル以下の罰金または一年以下の禁野若しくは︑こ
れを併科する﹂︵国ぐ①曙b①諺︒昌≦ゴ︒ωゴ巴一嵩︒口obo=N①自Ω︒簿①日冥8目︒昌obo=N①自oo日び5Φ驚ooロ︒︐bぱ①窯津げ
勉曙︒爵臼b①目ω自oHb①H︒・o蕊8ヨ︒ぎ℃o=N①愚僧短﹃叶︒暁暮¢霞巴①o円8含ヨ28国目80q暮︒ωΦ<Φ凶夢ω3冨ω博
東南アジアの独占禁止法 一七三
研究年報 一七四
〇︻≦ぱげ8おお昌爵二〇蕊讐ω二目ぴ①創①①ヨ巴ぴq9=鴇︒鴨訪日δ血ΦB8きごき鼻 o昌oo強陣〇二〇日量忠8於 終巴一ぴΦ
蜜ユ︒・9αξ粘貯Φ昌9①蓉①巴ぎαq注くΦ窪窪ω騨巳α9一漢90同σ団一BOユω88①暮昌9①×8巴ぎσqo呑気$さoHぴ矯
び︒爵ω巴山℃霞巳魯日①三ω一ロ爵①象ω興①誌︒ロ︒津げ①ooロ容︶としている︒従ってシャーマン法についての︑この点の解
釈はオーストラリア法にも妥当しよう︒そこで︑まず本条の違反が成立するためには︑単に独占力の存在だけでは不
充分でありこれと併せて︑この力を行使する目的または意思の存在を必要とする︒本条により独占の未遂も違反とさ
れる︒企図者は単独の行為であり︑共謀は複数の意思の連絡による継続的行為によって︑独占力の獲得を終局目的と
する活動にほかならない︒この.ように︑独占の企図または共謀を可罰対象とする理由は︑過度的な状態における不当
な独占を未然に防止しようとするものである︒以上の場合には︑目的に向けられた主観的な意思の立証が︑可成り重
要な問題となる︒単独企図のさいは︑書面なり産業界の背景その他の諸条件をもって︑認定することができるが︑共
謀のさいは︑共謀自体の立証も試みなければならない︒さらに吟味を要することは︑私的独占と不当な取引制限との
間に︑行為上の差別があることである︒尤も︑後者の場合にも合意にもとづいて事業活動をおこなう点では︑通謀に
よる私的独占と異るものではないが︑たゴ後者の場合には︑独占のように合意者間に支配と従属の関係がない点に相
異がある︒
さらにオーストラリア法で特記すべきことは︑わが国の独占禁止法と異り︑違法性の基準が崇めされていないこと
であろう︒すなわち︑わが国の場合には一定の取引分野における競争を実質的に制限すること︑および公共の利益に
反していることを︑一応違法性の判断基準としているが︑これがために現実に他の事業者を合併︑営業譲渡︑株式取
得︑役員兼任など種々の方法で排除支配して︑上述の違法性を具備していれば︑独占禁止法の対象となる︒この点ア
メリカのシャーマン法においても︑不当な取引制限の場合と同様に︑理性の法則を採用し︑ ﹁よいトラスト﹂と﹁悪
いトラスト﹂を区別する︒シャーマン法自体には︑違法性の基準について明確な表現をしていないが︑過去の判例で
は︑これを可成り明確にしている︒すなわちスタンダードは一九〇七年訴訟提起当時︑石油精製業の九一パーセントを
直接関接に支配しており︑アメリカン煙草は葉巻を除く各種タバコ製品の五〇パーセント乃至九〇パーセントを生産
していたが︑これだけでは独占を構成しない︒この両者が︑ともに始めから反公共的意図をもって︑種々不信義な競
争方法により︑産業界を圧倒的に支配するに至ったが故に違法であるとされたのである︒わが国の独占禁止法とは対
岸的に︑その用語が簡単で︑概括的なウヤーマン法なり︑オーストラリア法においては︑理性の法則を必要としよう︒
つぎにオーストラリア法では︑独占の違反に対する罰則として﹁当該違反継続期間中一日当り五百ポンドの罰金ま
たは一年の禁鋼若しくはこれを併科し︑会社の場合には当該違反継続期間中一日当り.一千ポンドの罰金﹂をかして
いる︵七条一項︑なお独占に対する教唆︑幕助には五百ポンドの罰金H九条参照︶︒このように︑個人と会社によって罰金に
差別をつけていることは︑一つの特色であるといえよう︒なお︑オーストラリア法では︑本条に違反するすべての契
約を︑絶対的に違法かつ無効としているが︵七条二項︶︑この点は既に不当な取引制限の項で説明したので省略するこ
とにしたい︒
またオーストラリア法の七条三項によれば︑ ﹁検事総長は︑本条の違反について公訴の提起に替えて︑違反に対す
る罰金取立の民事訴訟を高等裁判所に提起することができる︒この場合において︑その裁判は陪審官なしで当該裁判
東南アジアの独占禁止法 一七五
研究年報 ︑ 一七六
所の裁判官が行うものとする﹂と定めている︒ここでめを惹くのは︑産業保全法による訴訟手続が︑検事総長によっ
て開始されることになっており︑それ以外の者は原則としてなしえないことであろう︵一四条︶︒
︵註一︶独占自体の観念については︑オーストラリア法はもとより︑シャーマン法にも明確な定義づけがない︒独占の本来的意味
は︑国家主権の認許つまり委任状その他によって購買︑販売︑製造︑作業に関し自然人または法人に排他的な権利の創設
若しくは承認を意味するが︑しかし独占禁止法の観点からする独占は︑公衆の損失において商業的自由を濫用するものと
して提えられている︒その意味において﹁独占﹂と﹁取引制限﹂の両概念は︑必ずしも明瞭ではない︒アメリカでは︑わ
が国とおなじく立法︑判例で法律的独占と自然的独占には︑独占禁止法の適用除外を認めているが︑さらにこの除外例を
憲法で明言するものがある︵コロンビイア憲法三一条・エル・サルヴアドル憲法一四二条・エクアドル憲法一九四条・ハ
イチイ憲法五三条・ホンデュラス憲法六二条・ニクアラグア憲法八七条・ペルー憲法一六条・ヴエネズエラ憲法七三条︶︒
またアメリカでは︑ある程度の持続性を有しない独占は除外されているが︑しかし部分的独占︵勺9試巴旨︒⇔o℃oζ︶は︑
ここにいう独占たることを失わない︒
日
オーストラリア法で特筆ずべきことは︑不公正な取引方法について︑可成り詳細な規定を置いていることであろ
う︒七条A一項では﹁ω外国貿易若しくは州間の商業に関して︑本店若しくは代理店として︑商品または役務の取引
につき他の者が︑つぎの各号の一の取引をおこなう明示または黙示の条件により︑その者に割戻︑払戻︑割引︑給付
若しくは報酬をあたえまたは約束する者は罪を犯したものとする︒㈲特定商品または役務あるいは商品全般に関し︑
いかなる者と排他的に取引しまたは取引をしょうとすること向特定商品または役務あるいは商品全般に関し︑商業ト
ラストの加盟員と排他的に取引をし︑または取引をしょうとすること㈲特定商品または役務若しくは商品全般に関し
ある者と取引をせず︑または取引をしょうとしないこと⑥商業トラストの加盟員となること﹂を明示する︒レかも︑
本条違反の契約は︑すべて違法かつ無効とされているが︵七条二項︶︑但し本条違反の事項が︑公共の利益に反せず︑
かつ諸事情のもとに不公正な競争を構成せず︑またオーストラリア産業の破壊若しくは侵害とならないことを︑違反
したとみられる当事者が︑立証したるときは︑それを答弁事由とすることができる ︵七条三項︶︒さらに七条のBに
おいては︑匂その者が相手方を選ばず︑あらゆる者と取引をし︑または取引しようとしていること㈲その者が商業ト
ラストの加盟員でないものと取引し︑または取引しようとしていることゆその者が商業トラストの加盟員でないこと
を理由に︑その者に対して商品の販売または役務の供給を全面的に拒否し︑若しくは不利益な条件を付して︑拒否す
る者は不公正な取引方法を構成するものとされている︵ニュージーランド法四条︶︒これに相当するものとして︑わが国
独占禁止法では︑.二条の七項があり︑一九条においてはこれを禁止し︑二〇条では公正取引委員会の差止命令を定め
ている︒なかでも二条七項によれば︑不当な差別取扱︵一号︶︑不当対価︵二号︶︑不当な顧客勧誘︵三号︶︑不当な
拘東条件付取引︵四号︶︑取引上の地位濫用.︵五号︶競争事業者に対する取引妨害又は競争会社に対する内部干渉︵
六号︶をその定型としてあげており︑そのなかで公正取引委員会が指定する旨を定めている︒なお七条のABに違反
する者には罰則として五百ポンドの罰金に処せられる︒ つぎにオーストラリア法で考慮されることは︑六条におい
て︑わが国の独占禁止法二条七項目おなじように不公正競争︵qほ9︒蹄B①島︒αohO︒当逃Φけ三8︶の内容を掲げてい
ることであろう︒
東南アジアの猿占禁止法 ・ 一七七
研 究 年報 一七八
㈲ 被告が商業トラストである場合︵同法三条には商業トラストとは二人以上の者法人と否とに関係がないHによる結合で
あるとする︒ニュー・ジーランド法でも︑商業トラストとは設立された組合または任意の数の人の結合で法人たると否とを問わないと
されている︒︶とされ︑しかも︑それが商品の供給または需要若くは価格を支配し︑決定し︑影響をあたえるか︑あるい
は商品の需要供給につき︑完全若しくは部分的独占の創成︑維持を目的として活動するものであることを要件として
いる︒元来トラストは︑特異な発展を遂げた企業集中の一形態であり︑その形態は必ずしも一様ではないが︑大体そ
れには次の三つの類型が考えられている︒一つは固有のトラスト︵肩霊馨嘆oo葭︶で︑英米法の信託制度を利用して
少数者が多数の.企業を統一的に支配して︑市場の独占をはかることを目的とするものである︒別言すれば︑相互に競
争関係にある各会社の多数株主から︑その支配的多数を制する株式の信託をうけ︑受託株式の議決権を統一的に行使
して︑関係会社の経営を自由に支配しようとするものに外ならない︒別名﹁受託者トラスト﹂とも称される︒つぎに
持株会社︵国○一象昌σqooヨ眉9︒身︶ の組織によるトラストがある︒ これは︑固有のトラストが株式の信託によって成立
するのに対し︑株式の単純にして完全な譲渡により成立する点において︑法的にはその構造を異にするものであるが
株式参与による独占組織である点に両者は全く共通する︒このように持株会社組織のトラストでは︑支配会社が関係
会社の株式の支配的多数を保有し︑これにより関係会社を経済的に支配し︑固有のトラストと同一の日的を達するも
のである︒つぎに第三の形態としては︑併合︵岡ロ巴︒旨︶によるトラストがある︒このトラストは︑加盟会社が合併し
または加盟会社の一つが︑他を工芸することにより︑独占的な企業を創設することによって成立する︒このトラスト
形態では︑まえの固有のトラスト︑持株会社組織のトラストと異り︑加盟企業は経済的には勿論︑法律的にもその独
立性を失って︑完全な単一体を形成している点に両者には差異がある︒なお︑そのほかにも株主共通︑役員の兼任︑ 隣 ﹂各種の協定等の方法で企業者間に強固な経済的結合関係を作りあげ︑これにより︑いわゆる不可視トラスト︵ぎ忌再三①
貫旭蟹︶が結成されることも多い︒しかしオーストラリア法では︑条文の表現が︑わが独占禁止法ほどには明瞭でな
い︒すなわち︑わが国の場合持株会社組織によるトラストには︑九条で持株会社の設立を禁止しているし︑また企業
併合によるトラストについては︑会社の合併︑営業の譲受等に関し︑すべ・て公正取引委員会の認可を要するものとし
ている︵一五条・一六条︶︒そのほかに株式社債の保有︑会社役員の兼任︑会社間の損益共通契約の締結等についても
重大な制限を加え︵一〇条一一四条︶︑かつ名義の如何を問わず︑ これらの脱法行為をなすことも禁止しているから
(一
オ条︶上述の不可視トラストの結成も不可能となろう︒従って独占禁止法における両国の態度には可成り異るも
のがある︒
㈲ 競争がオーストラリア産業において︑不当な労働条件となる惧れがあり︑または事実上かかる事態となる場合
を不公正競争方法の一つにしている︒この﹁不当な労働条件﹂には︑三条で定義を掲げ︑それは労働者に対する不当
に低い賃銀または過度の就業時間若しくは︑不当に不利益な労働あるいは雇傭条件を含むものとしている︒これは︑
わが国の独占禁止法にはみられない特色である ︐
㈹ つぎにオーストラリア産業において︑実質的混乱をきたし︑または失業者を出す直れがあり︑若くは事実上か
かる事態となる場合を不公正競争とみなすとしている︒
④ 競争に関係のある商品または役務に関し︑被告が類似商品若しくは役務を取扱う他の者を排除して︑自己と取
東南アジアの独占禁止法 一七九
研 究年報 一八○
引することを条件とし︑または自己との取扱量を勘案して︑割戻︑払戻︑割引または報酬を︑かかる者にあたえ︑提
供し若くは約束する場合も不公正競争となる︒その具体的なものは七条のA・Bに詳細に明示する︵アイルランド法附
則二参照︑そのほかニュージランド法三条・四条・クレイトン法二条・三条︶︒
しかも︑同条の二項では︑競争が不公正であるか否かを確める判断基準として︑当該競争によって影響を受けるオ
ーストラリア産業に用いられている経営︑工場および機械が合理的に能率的効果的かつ最新的であることも︑考慮に
入れなければならないとしていることは注目に値する︒
︵註一︶﹁不公正な取引方法﹂という語は︑主に商標商号の模倣に関して︑イギリスの判例で屡々指摘された﹁不正競争﹂ ︵︵q昌h・
⇔冒8ヨb9①江8︶の観念から出発したものであるといわれている︒現今︑不公正な取引方法の語を使用して︑単に不正
競争といわないのは従来コンモン・戸−で禁止されていた詐欺悪意の要素を含む不正競争と区別するためである︒従って
も セ も も も 厳密には︑不公正の概念と不正競争防止にいう不正の概念とは︑多少の意義を異にするものであり︑後者が反倫理的色彩
が濃厚であるのに比較して︑前者は反倫理性に加えて︑公共の利益侵害という違法性を帯有するものといえよう︒これに
ついて︑アメリカの判例を検討してみると男巴99目おαΦOoヨ巨ω忽︒昌ぐ9切蓋巳︒巳bdBω●O冨甚Oo・︵一ΦN昏︶b︒①ωq・ω
㎝①α奉蒔ω虹b︒において︑最高裁判所は﹁不公正な競争方法なる語は虚偽︵亀ΦOΦb嵩O⇔︶︑不信︵ぴ倉︒畠h蝕芸︶︑詐欺︵津倉︒賃畠︶
または強迫︵OO噂厭①ωヨO昌︶の性質を有するため︑あるいぼ競争を阻害し︑独占を形成するため︑公共の利益に反するもの
として従来不徳とされた諸行為である﹂という︒これと同一の見解は周①山臼9弓窮ユ①Oo日記δ忽8<・ω言︒憲冨男①h一旨冒αq
O︒●︵お器︶N曾d・ω●臨ωおω.亀さらに︑これを裏返していえば︑小企業が大企業の経済的信用を傷つけることを取締
るために︑不正の概念が使用されるのに対して︑大企業が他の競争者を圧迫することを取締るために︑不公正の概念が使
隙される︒従って㌔不公正取引の問題は恒常に反トラスト政策の一部として取扱われているの費ある︒なお︑アメリカ容
は不公正競争方法の内容が︑不断に変化することに対応して︑具体的列挙を避け︑抽象的な定め方をなし︑連邦取引委員
会の具体的な判断にゆだねている︵連邦取引委員会法五条︑但しクレイトン法二条・三条は例外︶︒
⑭
つぎにオーストラリアにおいては︑海運協定に対して如何なる態度を示めしているだらうか軌およそ海運協定は︑
航海企業相互の競争の抑制または排除によって︑協定参加者の経済的地位を改善しようとするもので︑航海企業自体
の独立性を剥奪することなく︑もっぱら経営の自衛権発動の一形式として︑市場独占の一時的な協定であるといえよ
う︒この意味において︑海運協定はカルテルの一種として捉えることができる︒ところでこの海運協定は航海企業経
営の安定化︑弱小航海企業の消滅予防︑運送の正確性を保障することが可能である点において諸種の利便を見出し
うるものであるが︑しかし協定が︑独占的性質のものであるところがら︑屡々濫用され弊害をともなうことがある︒
たとえば新規の航海企業の設立と経営を不可能にし︑さらに運賃の維持引上が専断的となり︑大小荷主を差別するこ ωとなどがこれであろう︒そこで諸国は︑海運協定から生ずる弊害を阻止するために詳細な監督規整を試みている︒
オーストラリア法でも︑かって︑これを排撃する態度をとっていたが︑現在でも以下の点を明示している︒すなわ
ち七条のC項において︑荷主を一方とし︑かつ船主またはその代表者を他方として︑両者間で締結された外国向貨物
運送に関する協定であって︑船主が定期配船をおこない︑荷主の貨物を協定運賃で運送することについて︑当該荷主
が排他的に︑かかる船主による貨物運送に同意する場合において︑オーストラリア外航船協会︵本条においてオースト
東南アジアの独占禁止法 一八一
研究年報
一八ニラリア外航船協会とは︑ 一九二九年六月二十六日にシドニーにおいて︑当該名称のもとに結成された協会をいい︑ かつ当該協会の協
議会を含むものとする︶の認可を受けたものは︑かかる規定により︑ この法律のこの章に違反されたものとみないとし
当該協定の締結または実施若くは下汐盟主に対する協定の利益供与拒否では︑この法律の違反とはみなさないものと
している︒
︵野竹︶海上運送法では︑アメリカのω圧暑宣αq︾9︵おδ︶の線にそい︑海運協定に対して独占禁止法の適用除外を認めている
︵二八条︶︒
結
言
以上実体規定のうえで︑オーストラリア法を中心に検討してきたが︑さらに手続面においても若干の特異性をもっ
ている︒すなわち︑訴訟手続は検事総長が開始することとなっており︑アメリカ︑カナダ︑わが国のような公正取引 ω委員会の準司法的行政機関が設置されていないことであろう︒従って検事総長は︑本法め違反について公訴を提起
することができ︑また違反に対する罰金取立の民事訴訟を高等裁判所に提起することもできる︵一三条・一四条︶︒ま
た既述のように︑検事総長または検事総長が権限を付与したものは︑その締結された契約が取引の制限となるもの︑
あるいは産業に対する不公正な競争方法による破壊的︑侵害的なものであれば︑緊急差止命令を申立ることができ
る︵一〇条︶︒またオーストラリア法では︑検事総長に対して︑権限の行使により知得した資料を心してはならない
という秘密保持の義務を明示していることも注意さるべきであろう二五条︒ノールゥエー法一七条・オランダ法一六条︶︒
なお︑そのほかにも手続面において︑若干吟味すべきであるが︑資料の都合上後日の機会に譲ることにしたい︒
︵註一︶委員会構成をとる国としては︑カナダの制限的商慣行委員会︵総督が任命する三名以下の委員︶︑アイルランドの公正取
引委員会︵議長および二名以上四名以下の委員︶︑デンマークのトラスト委員会︵委員長および一四名以下の委員︶︑ス
ェーデンの自由商業委員会︵委員長および八名の委員︶︑ノールウエーの価格委員会︵国王によって任命される五名の委
員および代理委員︶︑ベルギーの制限的慣行委員会︵委員長︑副委員長︑および六名以上の委員︶︑アメリカの連邦取引
委員会︵大統領の任命する官名の委員︶のほかに︑おが国の公正取引委員会︵珍名以上の委員︶がある︒
東南アジアの独占禁止怯一入三