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会 社 法 立 法 の 日米 比 較(1) 行 政 主 導 モ デ ル と司法 依 存 モ デ ル

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(1)

会 社 法 立 法 の 日米 比 較(1)

行 政 主 導 モ デ ル と司法 依 存 モ デ ル

玉 井 利 幸

1.は じめ に

H.デ ラ ウ エ ア 会 社 法 の 特 徴(以 上 本 号) 皿.日 本 の 会 社 法 の 特 徴

IV.会 社 法 立 法 の 日米 比 較 V.終 わ りに

1.は じ め に

2005年 に制 定 され た新 しい 会社 法1)の 特 徴 と 目的 の 一 つ は,規 制 緩 和 で あ る2)。

そ れ まで の 画 一 的 な禁 止 を廃 止 して,自 由 の領 域 を拡 大 し,会 社 法 の 柔 軟 性 を 高 め る こ とが 目的 と さ れ る 。 自 由 で 柔 軟 な会 社 法 制 を 実 現 す る とい う 目的 は,

ア メ リ カ会 社 法 と同 様 で あ る3)。ア メ リカ 会社 法,特 にデ ラ ウ エ ア会 社 法4)は,

1)平 成17年 法 律 第86号 。

2)相 澤 哲 ・郡 谷 大 輔 「新 会 社 法 の 解 説(1)会 社 法 制 の 現 代 化 に 伴 う 実 質 改 正 の 概 要 と基 本 的 な 考 え 方 」 商 事 法 務1737号(2005年)16‑17頁

3)そ の た め,新 会 社 法 は ア メ リ カ化 した とい わ れ る こ と もあ る。例 え ば,岩 原 紳 作 「 会 社 法 の 意 義 と問 題 点1総 論 」 商 事 法 務1775号(2006年)6‑7頁 。 しか し,以 下 で 見 る よ う に,会 社 立 法 の ポ リシ ー や,会 社 制 定 法 に期 待 され る役 割,立 法 ・司 法 ・行 政 に よ る会 社 法 の ル ー ル の作 成 と発 展 に対 す る 関 与 の 程 度 な どは 大 き く異 な っ て い る。

4)本 稿 で は,特 に 断 らな い 限 り,単 に デ ラ ウ エ ア 会 社 法 とい う場 合 は,デ ラ ウ エ ア 会 社 制 定 法(DelawareCodeAnnotatedのTitle8.CorporationsのChapter1.

GeneralCorporationLawの こ と)と 判 例 法(コ モ ン ロ ー)の 両 方 を 指 す こ と に す る 。 以 下 で は,デ ラ ウ エ ア 会 社 制 定 法 をDelawareGeneralCorporationLawと 称 し,DGCLと 略 記 す る 。DGCLの 条 文 は,DGCL§[条 文 番 号]と 引 用 す る 。

〔59〕

(2)

会 社 関係 者 の 私 的 自治 を重 視 し,自 由 で 柔 軟 な会 社 法 制 を実 現 して い る と され る5)。 日本 の 会 社 法 とデ ラ ウ エ ァ会 社 法 は,自 由 の 拡 大 と柔 軟 性 の 向 上 とい う 同 じ 目的 を有 して い るの に,立 法 ポ リシ ー は大 き く異 な り,目 的 の 実 現 手段 も 大 き く異 な っ て い る 。

両 者 の 立 法 ポ リシ ー の 違 い は,会 社 法 の 明 確 性 に対 す る選 好 に現 れ て い る。

デ ラ ウ エ ア会 社 制 定 法(DelawareGeneralCorporationLaw:DGCL)は,事

前 の 明 確 化 の 努 力 を ほ と ん ど して い な い。 明確 な規 定 を設 けず,曖 昧 で抽 象 的 な 文 言 の 規 定(「 ス タ ン ダー ド6)」)を多 く用 い て い る 。 規 定 自体 を設 け な い 場 合 さ え あ る 。 こ の よ う に,曖 昧 な 文 言 を用 い た り,規 定 自体 を 設 け な い こ と に よっ て,立 法 府 が 法 の 具 体 的 な 意 味 内容 を事 前 に提 供 す る の を回 避 して い る7)。

で き る だ け 「書 か な い 」(成 文 化 しな い)と い う立 法 ポ リ シ ー が 採 られ て い る。

法 の 具 体 的 な意 昧 内 容 の 提 供 は,事 後 的 な 裁 判 所 に よ る曖 昧 な 文 言 の 解 釈 や, 裁 判 所 の法 創 造 に よる 規 定 の ブ ラ ン ク の補 充 に よ っ て 行 わ れ る こ とが 予 定 され て い る。 この よ う に,デ ラ ウ エ ア 会 社 制 定 法 の 立 法 ポ リ シ ー の特 徴 は,消 極 的 で 自己 抑 制 的 な立 法 と司 法 へ の依 存 に あ る 。 成 文 化 に 消 極 的 で,法 の ポ リ シー や 具 体 的 な 内 容 の決 定 は裁 判 所 に 委 ね て い るの で,司 法 依 存 モ デ ル と い う こ と が で きる 。 デ ラ ウ エ ア会 社 法 は授 権 法 モ デ ル8)と い わ れ る が,司 法 依 存 モ デ ル

5)LawrenceA.Hamermesh,ThePolicNFoundationsofDelawareCorporateLaw,

106CoLuM.L.REv .1749,1782‑83(2006)[hereinafterHamermesh,PolicyFoundations].

6)「 ル ー ル 」 と 「ス タ ン ダ ー ド」 を ど の よ う に 定 義 す る か は 論 者 に よ っ て 違 い が あ る 。 本 稿 で は 事 前 に 法 に 内 容 が 与 え ら れ て い る も の が 「ル ー ル 」 で あ り,事 後 的 に 与 え ら れ る も の が 「ス タ ン ダ ー ド」で あ る と す るKaplow教 授 の 定 義 に 従 っ て お く 。 LouisKaplow,RulesVersusStαndards'AnEconomicAna!ysis,42DuKEL.J.557,

559(1992).ル ー ル は 法 準 則 と い う 意 味 で,ス タ ン ダ ー ド は 基 準 と い う 意 味 で 用 い ら れ る こ と も あ る の で,こ こ で 述 べ た 意 味 で こ れ ら の 言 葉 を 用 い る 場 合 は,括 弧 を 用 い て,「 ル ー ル 」 と 「ス タ ン ダ ー ド」 と 表 記 す る こ と に す る 。 さ ら に,「 ル ー ル 」 「ス タ ン ダ ー ド」 に つ い て は,玉 井 利 幸 「会 社 法 の 自 由 化 と 事 後 的 な 制 約 一 デ ラ ウ エ ア 会 社 法 を 中 心 に 一(2)」 一 橋 法 学3巻3号(2004年)1130‑34頁 も 参 照 。 7)詳 し く は,後 めH.A.を 参 照 。

8)WilliamT.Allen,JackB.Jacobs,&LeoE.Strine,Jr.,FunctionOverForm:A

ReassessmentofStandardsofReviewinDelawareCorPorationLaw,56BUS .LAW.

1287,1289(2001).

(3)

会社 法立 法 の 日米 比較(1) 6ヱ

とい う言 葉 の 方 が,特 徴 を端 的 に 表 して い る 。

一 方,日 本 の 新 しい 会 社 法 は,事 前 の 明確 性 を可 能 な 限 り追 求 して い る9)。

た くさ ん の 定 義 規 定 をお き,規 定 を詳 細 に す る こ とに よ っ て,曖 昧 性 を可 能 な 限 りな くそ う と して い る10)(「ル ー ル」)。起 こ り う る,理 論 的 に可 能 性 の あ る 全 て の 場 合 を成 文 化 し よ う と して い る11)。 株 主 平 等 な ど の 原 理 原 則 も成 文 化

して い る12)。 事 前 に 「全 て 書 き尽 く した い 」(成 文 化 し た い)と い う意 欲 が 見 て 取 れ る13)。 事 前 の 明確 性 を追 求 す る こ と に よ っ て,裁 判 所 の事 後 的 な解 釈 や 判 断 に委 ね る 余 地 を 可 能 な 限 りな くそ う と し て い る 。 会 社 法 本 体 で 曖 昧 性 が 残 っ た り,書 き尽 くせ な か っ た事 項 で あ っ て も,裁 判 所 の 事 後 的 な 介 入 の可 能

9)事 前 の 明 確 性 の 希 求 は,規 定 自体 の 明 確 性 だ け に と ど ま らな い 。 自 由 の 範 囲 の 限 界 も明 確 に定 め よ う と して い る 。 例 え ば,定 款 自 由(定 款 自 治)が 認 め られ る 範 囲 で あ る。 定 款 自 由 が 許 容 され る 場 合 は 条 文 に そ の 旨 を 規 定 し,そ れ 以 外 は 定 款 自 由 が 認 め られ な い とす る こ と に よ っ て,自 由 と非 自 由 の 領 域 を 明 確 に 区 別 し よ う と試 み て い る 。 相 澤 ・郡 谷 前 掲 注2・16頁 。 立 案 担 当 者 は,自 由 と非 自 由 の 二 値 的 な 区 分 け が 可 能 で あ り,立 法 は そ の 区 分 け を事 前 に行 うべ き で あ る と考 え て い る の か も し れ な い 。 しか し,こ の 試 み は 必 ず し も成 功 して い る と は い え な い 。 宍 戸 善 一 会 社 法 の 意 義 と 問 題 点H定 款 自 治 の 範 囲 の 拡 大 と明 確 化 」商 事 法 務1775号(2006 年)21,25頁

10)明 確 化 し よ う とす る 強 い 意 欲 が 見 て取 れ る と い う こ と で あ っ て,明 確 化 が 成 功 し て い る か ど うか は 別 で あ る 。 か え っ て混 乱 を 招 い て い る場 合 も あ る 。 例 え ば,親 社 と子 会 社 の 定 義 や 自 己 株 式 の 取 得 の 規 制,「 役 員 」 の 範 囲 な ど は 明 確 化 の 試 み が か え っ て 混 乱 を招 い て い る 。 正 井 正 搾 「法 務 省 令(会 社 法 施 行 規 則)の 問 題 点 と評 価 」森 淳 二 朗 ・上 村 達 男 編 『会 社 法 に お け る 主 要 論 点 の 評 価 』 中央 経 済 社(2006年)

49‑55,76‑77頁 参 照 。

11)具 体 的 な ニ ー ズ が あ る か ど うか 不 明 で も,論 理 的 に あ り う る 規 定 で あ れ ば,予 成 文 化 して お こ う と い う発 想 で あ っ た よ う で あ る 。 稲 葉 威 雄 ・郡 谷 大 輔 対 談 ・会 社 法 の 主 要 論 点 を め ぐ っ て 」 企 業 会 計58巻6号(2006年)168頁 の 郡 谷 発 言(「 … 特 定 の ニ ー ズ を 思 い 浮 か べ て 制 度 を つ くる と い う こ と を,会 社 法 は して い ませ ん の で 。 要 す る に,あ る ニ ー ズ が あ り ます と い わ れ れ ば,そ れ を カ バ ー す る た め だ け で は な

く,そ の ニ ー ズ を 含 め て 許 容 され る 範 囲 を全 て の 対 象 に す る 制 度 を 用 意 し ます と い う ふ う に し て い ます 」)。

12)但 し,株 主 平 等 原 則 を 成 文 化 して 明確 性 が 向 上 した か は 疑 問 で あ る 。 新 た な 混 乱 を生 ん で い る か も しれ な い 。 前 田 雅 弘 他 座 談 会 新 会 社 法 と企 業 社 会 」 法 律 時 報 78巻5号(2006年)22頁(野 村 修 也 発 言)。 株 主 平 等 の 原 則 を 定 め る会 社 法109条1 項 は,形 式 的 に は 平 等 で あ っ て も,実 質 的 に は不 平 等 な株 主 の 取 扱 い を正 当 化 す る 根 拠 と して 用 い ら れ るか も しれ な い 。

13)岩 原 前 掲 注3・11頁

(4)

性 を 減 ら す た め に,法 務 省 令14)で 事 前 に 可 能 な 限 り明 確 に し よ う と し て い る15)。会 社 法 の 規 定 の 曖 昧 な,疑 義 あ る部 分 は,裁 判 所 の 解 釈 や 当事 者 の 交 渉 に よ る 自主 的 な取 決 め(ア レ ン ジ メ ン ト)に よ る解 決 に委 ね る の で は な く, 行 政 の イ ニ シ ア テ ィブ に よ り,法 務 省 が 適 切 と考 え るポ リシ ー に 基 づ い て,事 前 に法 務 省 令 で 詳 細 な 解 決 を提 供 し よ う と して い る 。 会 社 法 の 曖 昧 性 や 疑 義 を

明確 にす る の は法 務 省 と法 務 省 令 で あ るべ きで あ る と考 え て い る よ う な の で, 行 政 主 導 モ デ ル と い うべ きで あ る 。 こ の よ う に,日 本 の 会 社 法 の 立 法 ポ リ シー

の特 徴 は,行 政 の主 導 と積 極 的 な 成 文 化 に あ る。

上述 の よ う に,日 本 の会 社 法 と デ ラ ウエ ア会 社 法 で は,会 社 法 の柔 軟 性 を 高 め, 私 的 自治 を 拡 大 し,当 事 者 の 自 由 を高 め よ う とす る 目的 は共 通 して い る は ず な

の に,そ れ を 実 現 し よ う とす る立 法 ポ リ シー と手 法 は 大 き く異 な る。 デ ラ ウエ ア 会 社 法 は,制 定 法 で 「で き る だ け 書 か な い」 こ とに よ って こ の 目的 を達 成 し よ う と して い る。 日本 の会 社 法 は,「 可 能 な 限 り書 き尽 くす 」 こ とに よっ て この 目的 を達 成 し よ う と して い る。 なぜ こ の よ うな 違 い が あ る の だ ろ うか 。 手 法 の 違 い は,法 の 制 作 や 発 展,法 シ ス テ ム の 管 理 ・運 用 者 や 法 の 利 用 者 で あ る会 社 関係 者 に与 え る イ ン セ ンテ ィブ な ど に どの よ う な影 響 を与 え る だ ろ うか 。 ど ち らの手 法 の方 が 望 ま しい だ ろ うか。 本 稿 で は,こ れ らの 問題 を考 え て い く16)。

14)本 稿 で は,会 社 法 施 行 規 則(平 成18年 法 務 省 令 第12号),会 社 計 算 規 則(平 成18 年 法 務 省 令 第13号),電 子 公 告 規 則(平 成18年 法 務 省 令 第14号)の 三 本 の 省 令 を総 称 して 法 務 省 令 と呼 ぶ 。

15)法 務 省 令 へ の 委 任 は 約300に も及 ぶ 。 法 務 省 令 へ の 委 任 と い う 手 法 の 問 題 点 に つ い て は,稲 葉 威 雄 会 社 法 の 基 本 を 問 う』 中 央 経 済 社(2006年)180‑185頁 。 法 務 省 令 の 問 題 点 につ い て は,例 え ば,正 井 ・前 掲 注10,岩 原 前 掲 注3・11頁 参 照 。 法 務 省 令 の 制 定 過 程 を含 む 会 社 法 の 立 法 過 程 の 問 題 点 と批 判 に つ い て は,例 え ば,上 村 達 男 「新 会 社 法 の 性 格 と 法 務 省 令 」 ジ ュ リ ス ト1315号(2006年)2‑7頁,稲 威 雄 「会 社 法 の 論 点 解 明 」 民 事 法 情 報245号(2007年)11‑20頁 を参 照 。 な お,玉 利 幸 「会 社 法 の 柔 軟 化 に お け る 法 務 省 令 の 役 割 一 な ぜ 法 務 省 令 は 変 質 し た の か 一」

商 学 討 究57巻1号(2006年)7月 号115‑133頁(法 務 省 性 善 説 的 な 観 点 か ら と法 務 省 性 悪 説 的 な 観 点 か ら法 務 省 令 の 変 質 を 説 明 し て い る)も 参 照 。

16)現 代 で は,ア メ リ カ の 大 規 模 公 開 会 社 に 関 す る 法 的 な 問 題 を 考 え る 際 は,州 会 社 法 だ け で な く,連 邦 証 券 諸 法 や 証 券 取 引 所 の 上 場 規 則 も考 慮 に 入 れ る必 要 が あ る 。 しか し,本 稿 で は こ れ ら に 十 分 な 言 及 が な され て い な い 。 そ の 理 由 は,連 邦 法 や 上 場 規 則 が デ ラ ウエ ア 会 社 立 法 との 関 係 で 重 要 で な い か ら で は な い 。 そ れ ら は 非 常 に

(5)

会社 法立 法 の 日米 比較(1) 63 llで は,デ ラ ウエ ア 会 社 法 の特 徴 を述 べ る。 デ ラ ウ エ ア会 社 制 定 法 の 立 法 ポ リ シー に影 響 を与 え て い る の は 誰 か,な ぜ デ ラ ウエ ア 会 社 法 で は 自己 抑 制 的 な 立 法 で 司 法 依 存 の 立 法 ポ リ シ ー が 採 られ て い るか,そ の 理 由 を考 え る。皿 で は,

日本 の 会 社 法 で は,な ぜ 行 政 主 導 で 積 極 的 な 立 法 ポ リ シー が 採 られ て い る か, そ の 理 由 を 考 え る。IVで は,そ れ ぞ れ の手 法 の メ リ ッ ト,デ メ リ ッ ト,そ れ ぞ れ の 手 法 が 法 の 運 用 や 私 人 の活 動 に与 え る 影 響 につ い て 考 え る 。Vで は,結 論 を 述 べ る 。

皿.デ ラ ウ エア 会社 法 の特 徴

現 在 の デ ラ ウエ ア会 社 法 に は 大 き な特 徴 が あ る。 自己 抑 制 的 な 立 法 と司 法 へ の依 存 で あ る 。 以 下 で は,ま ず,制 定 法 と判 例 法 か ら成 る デ ラ ウエ ア会 社 法 の 特 徴 を述 べ る 。 次 に,司 法 依 存 の 制 定 法 を作 り出 して い る の は 立 法 府 な の で, 立 法 府 は なぜ そ の よ う な立 法 ポ リ シ ー を採 用 して い る の か,そ の 理 由 を 考 え る

こ と に す る 。

A.デ ラ ウ エ ア 会 社 法 の 特 徴:自 己 抑 制 的 な立 法 と 司 法 へ の依 存

現 代 の デ ラ ウ エ ア会 社 法 の 大 き な 特 徴 は,消 極 的 な 立 法17)に よ る 司 法 へ の 重 要 な役 割 を果 た して い るが,連 邦 法 は州 会 社 法 と思 想 的 背 景,規 制 原 理 や 規 制 形 態,立 法 過 程,執 行 方 法,適 用 範 囲 な ど様 々 な 点 で 重 要 な違 い が あ る の で,本 稿 で 本 格 的 に 取 り扱 う に は紙 幅 が 足 り な い か らで あ る。 連 邦 法 に 十 分 な言 及 が な さ れ て い な い の で,本 稿 で の 日本 会 社 法 と デ ラ ウ エ ア 会 社 法 の 対 比 は,不 完 全 な もの と な っ て い る 。 デ ラ ウ エ ア 会 社 法 と連 邦 証 券 諸 法 と の 関 係 に つ い て は,例 え ば,Marcel Kahan&EdwardRock,SymbioticFederalismandtheStructureofCorporateLaw,58

VAND.L.REV.1573(2005)【hereinafterKahan&Rock,SymbioticFederalism](デ ラ ウ エ ア 会 社 法 と連 邦 証 券 諸 法 との 関 係 は,相 互 補 完 的 で 共 生 的 な 関 係 で あ る)を 参 照 。 17)デ ラ ウ エ ア会 社 制 定 法 は,ほ ぼ 毎 年 の よ う に 改 正 さ れ て い る の で,立 法 自体 は活

発 と い え る 。 しか し,そ の 改 正 の 内 容 は些 末 な 技 術 的 な も の が ほ と ん ど で あ り,議 論 を 呼 び 起 こ す よ う な 規 定 が 立 法 化 さ れ る こ と は ほ と ん ど な い 。Kahan&Rock, SymbioticFederalism,atl601.例 外 は,Smithv.VanGorkom,488A.2d858(Del.

1985)の 影 響 を 受 け て 制 定 さ れ た,取 締 役 の 責 任 免 除 を 認 め るDGCL§102(b×7)く らい で あ る 。 、rd.at1600.

(6)

依 存 で あ る。 私 的 自治 に介 入 す るの を で き る だ け 回 避 し,司 法 に よ る法 創 造 過 程 を重 視 す る た め に,自 己抑 制 的 な立 法 ポ リ シ ー を 採 って い る 。

デラ ウエ ア会社 法 の特 徴 】

/

私 人に対する立法

の自己抑制 裁判所への依存

自己抑制 的 な立法

・非 強 行 的 ・非 規 制 的な 規 定

・デフオル トル ー ル の 提 供

裁 判所に対する立法 の自己抑制

重 要 問題 は規 定 な し

曖 昧な 文 言 の 規 定

自由の濫 用 の監視 監督

裁判所 による

法創造

まず,デ ラ ウエ ア 会 社 制 定 法 は,私 人 に対 し て 自己 抑 制 的 で あ る。 私 人 の 自 由 を重 視 し,介 入 的 ・規 制 的 な 規 定 を設 け る こ とは で き る 限 り控 えて い る18)。

立 法 さ れ た 制 定 法 の 規 定 も,授 権 法 思 想 を体 現 して,当 事 者 に よ っ て変 更 可 能 な デ フ ォ ル トル ー ル が 多 い 。

次 に,司 法 に対 して も 自己抑 制 的 で あ る。 裁 判所 に よる法 創 造 を重 視 し,司 法 に よる法 創 造 を妨 げ な い よ う に,立 法 す る こ と 自体 を で き るだ け控 えて い る19)。

18)Hamermesh,PolicyFoundations,at1783(「 デ ラ ウ エ ア 会 社 法 の ポ リ シ ー の 決 定 に は,私 的 自治 の 余 地 を拡 大 す る とい う 強 い 傾 向 が 存 在 す る 」);ld.at1782(「 議 会 と 州 議 会 は,… 詳 細 な 規 制 的 な 規 定 を 設 け る こ と な く,会 社 法 の 法 創 造 が 行 わ

れ る こ と を圧 倒 的 に 好 ん で い る」).

19)デ ラ ウ エ ア 裁 判 所 の 判 断 を 覆 す 立 法 を行 う こ と も非 常 に 稀 で あ る 。 唯 一 の 重 要 な 例 外 は,Smithv.VanGorkom,488A.2d858(Del.1985)の 後 に制 定 さ れ た 取 締 役

の 責 任 制 限 を 定 め るDGCL§102(b)(7)で あ る。Kahan&Rock,Sy〃zbioticFederα1‑

ism,at1595‑96.

(7)

会 社法 立 法の 日米比 較(1) 65 司 法 に対 す る立 法 の 自 己抑 制 の 方 法 は 二 つ あ る 。 一 つ は,立 法 の ブ ラ ン ク(空

白化)で あ る。 重 要 な 問題 につ い て は 制 定 法 で 成 文 化 せ ず,裁 判 所 の 法 創 造 に よ っ て そ の 空 白 を埋 め る よ う に,裁 判 所 に委 ね て い る20)。 そ の た め,デ ラ ウ エ ア会 社 法 の 中核 的 な重 要 な ルー ル は 裁 判 所 に よ って 作 られ た 法 準 則 とな っ て い る21)。 例 え ば,取 締 役 が 責 任 を負 う場 合 は ど の よ う な 場 合 か,す な わ ち経 営 判 断 原 則 が 適 用 され る の は ど の よ う な 場 合 か22),ど の よ うな 取 引 が 利 益 相 反 取 引 と み な さ れ る の か23),支 配 株 主 と され る の は 誰 か24),支 配株 主 は ど の よ う な義 務 を負 う か25),ど の よ う な 基 準 で 利 益 相 反 取 引 の 有 効 性 は 判 断 さ れ るの か26),取 締 役 が 「独 立 」 して い る と考 え られ るの は どの よ う な場 合 か27), 独 立 取 締 役 ま た は 利 害 関係 の ない 株 主 が 取 引 を承 認 した場 合 は ど の よ うな 法 的 効 果 が 生 じ る か28),何 が 「会 社 の機i会」 に 該 当 す る か29),敵 対 的 買 収 に 対 す る 防 衛 策 の 有 効 性 を 判 断 す る基 準 は 何 か30),取 締 役 会 が 株 主 の 議 決 権 行 使

20)Hamermesh教 授 に よ る と,デ ラ ウ エ ア 会 社 法 は 「「漸 増 的 な 法 制 定 」 や 大 ま か な 制 定 法 の ル ー ル,あ る い は 制 定 法 の 規 定 が 存 在 し な い こ と を は っ き り と 選 好 し て い る 。 そ の こ と は,特 に 信 認 義 務 に 関 す る 問 題 に あ て は ま る 。 会 社 法 の 詳 細 は 司 法 過 程 を 経 て 決 定 さ れ る べ き で あ る と い う 同 じ よ う な 選 好 」 が 存 在 す る と す る 。 Hamermesh,PolicyFoundations,at1777.同 様 な こ と は 他 の 論 者 も 指 摘 し て い る 。 JillE.Fisch,ThePeculiarRoleoftheヱ)elawareCourtsinthecompetitionfor

CorporateCharters,68UCIN。L.REv.1061,1074(2000)(「 制 定 法 上 の 法 源 も あ る が,デ ラ ウ エ ア 州 の 重 要 な 法 的 ル ー ル の 大 部 分 は,司 法 の 判 断 の 結 果 で あ る 。」 「デ

ラ ウ エ ア 会 社 法 は 他 の 州 よ り も 司 法 に よ る 法 創 造 に 依 存 し て い る 。」).Kahan&

Rock,SymbioticFederalism,at1591(「 デ ラ ウ エ ア 州 で は,取 締 役 や 役 員,支 配 株 主 の 信 認 義 務,派 生 訴 訟 の 前 提 条 件,開 示 義 務 な ど の 基 本 的 な 問 題 を 決 す る の は 裁 判 官 に よ っ て 作 ら れ た 法 で あ り,事 実 上 制 定 法 を 排 除 し て い る 。」).

21)以 下 の 例 は,Kahan&Rock,SymbioticFederalism,at1591‑60に よ る 。 22)Gagliardiv.TriFoodsInt'1,Inc.,683A.2d1049,1052‑53(Del.Ch.1996).

23)Ormanv.Cullman,794A.2d5,23(Del.Ch.2002).

24)Kahnv。LynchCommc'nSys.,Inc.,638A.2dll10,1114‑15(DeL1994).

25)SinclairOilCorp.v.Levien,280A.2d717,720(DeLl971)。

26)Marcianov.Nakash,535A.2d400,404(Del.1987).

27)Aronsonv.Lewis,473A2d805,816(DeLl984).

28)Kahn,638A.2datll17e

29)Brozv.CellularInfo.Sys.,Inc.,673A.2d14&154‑55(Del.1996).

30)UnocalCorp.v.MesaPetroleumCo.493A.2d946,955(DeL1985).

(8)

(shareholderfranchise)を 妨 害 す る こ とが で きる 場 合 は あ るか31),株 主 が 取 締 役 会 に提 訴 請 求 を事 前 に行 わ ず に派 生 訴 訟 を提 起 す る こ とが で きる の は ど の よ うな 場 合 か32),株 主 が 有 限 責 任 を失 う場 合 は ど の よ う な場 合 か33),現 行 の 経 営 陣以 外 の 者 が 委 任 状 勧 誘 競 争 で 負 担 し た費 用 の 償 還 を受 け る こ とが で き る の は ど の よ う な 場 合 か34),な どの 重 要 な 問 題 に つ い て は,制 定 法 は ブ ラ ン ク で あ り,す べ て 判 例 法 の ル ー ル が 決 す る35)。 さ ら に,あ る 問 題 につ い て 判 例 が 集 積 し,判 例 法 の 内 容 が 十 分 に定 ま っ て い る場 合 で あ っ て も,デ ラ ウ エ ア州 の 立 法 府 は 判 例 法 の 内 容 を立 法 に よ り成 文 化 しよ う と して い な い36'37)。

も う一 つ の 司 法 に 対 す る立 法 の 自 己抑 制 の 方 法 は,規 定 の抽 象 性 で あ る 。 あ る 問 題 につ い て 制 定 法 が 規 定 を 設 け て い る場 合 で あ っ て も,一 般 的 な,包 括 的 な,曖 昧 な 文 言 が 用 い られ て い て,そ の規 定 の 具 体 的 な 意 味 内容 が 明確 で な い 場 合 が 多 い38)。 例 え ば,株 主 が 会 社 の 記 録 や 帳 簿 を検 査 で きる の は,「 適 切 な

31)BlasiusIndus.,Inc,v.AtlasCorp.,564A.2d651,661(DeLCh.1988).

32)Aronson,473A.2dat818.

33)Mabon,Nugent&Co.v.Tex.Am.EnergyCorp.,No.8578,1988De1.Ch.Lexis l1,at9(Del.Ch.June27,1988).

34)Hibbertv.HollywoodPark,Inc.,457A.2d339,344‑45(Del.1983).

35)Kahan&Rock,SymbioticFederalism,at1591‑92.

36)裁 判 所 の 判 断 が 十 分 集 積 し た 問 題 で あ れ ば,判 例 上 確 立 し た ル ー ル を 立 法 に よ り 成 文 化 す る こ と も 可 能 な は ず で あ る 。 実 際 に,立 法 化 し て い る 州 も 多 い 。 例 え ば, 取 締 役 の 注 意 義 務 の 基 準 や,経 営 判 断 原 則,会 社 の 機 会,株 主 の 派 生 訴 訟 で 提 訴 請 求 が 免 除 さ れ る 場 合 な ど を 制 定 法 で 定 め て い る 州 も あ る 。Fisch,smpranote20,at 1074‑75;Kahan&Rock,SymbioticFederalism,at1593.模 範 事 業 会 社 法(MBCA)

も 信 認 義 務 の 一 部 を 制 定 法 化 し て い る 。 し か し,デ ラ ウ エ ア 州 は,利 害 関 係 の あ る 取 締 役 の 取 引 に 関 す るDGCL§144な ど の 例 外 は あ る が,ほ と ん ど 成 文 化 し て い な い 。 37)こ の よ う な デ ラ ウ エ ア 州 の 立 法 ポ リ シ ー は,判 例 の ル ー ル を 法 典 化 し た り,株

平 等 の よ う な 一 般 原 則 ま で 条 文 化 し た 日 本 と は 著 し い 対 照 を な す 。

38)但 し,例 外 も あ る 。 そ れ は 事 業 結 合(businesscombination)を 定 め たDGCL§203 で あ る 。 こ の 規 定 は,SECの 規 制 と 類 似 し て お り,デ ラ ウ エ ア 会 社 制 定 法 の 中 で は 様 々 な 点 で 異 例 の 規 定 で あ る 。 ま ず,規 定 の 形 式 と し て,定 義 規 定 の セ ク シ ョ ン が あ り,そ の 適 用 を 規 定 す る 数 値 基 準 が 設 け ら れ て い る 点 が 異 例 で あ る 。 規 制 的 な 禁 止 を 内 容 と し て い る 点 も,異 例 で あ る 。 立 法 化 さ れ る ま で の 経 緯 も 異 例 で あ る 。 通 常 は 議 会 に 法 案 が 提 出 さ れ る ま で は 非 公 開 で 作 業 が 進 め ら れ る が,DGCL§203 は パ ブ リ ッ ク コ メ ン ト を 行 い,幅 広 く 意 見 を 求 め た 。Hamermesh,PolicyFound‑

ations,at1778.

(9)

会社 法 立法 の 日米比較(1) 67 目 的(properpurpose)」 を 有 す る 場 合 で あ る39)。 定 款 変 更 を 行 う 際 に 種 類 株 主 総 会 の 決 議 が 必 要 な の は,そ の 定 款 変 更 が 種 類 株 主 に 「不 利 益 な 影 響 (affect...adversely)」 を 与 え る 場 合 で あ る40)。 会 社 の 財 産 を 売 却 す る 際 に 株 主 総 会 の 決 議 が 必 要 と な る の は,「 全 て ま た は 実 質 的 に 全 て の(substantiallyall ofitspropertyandassets)」 会 社 財 産 を 売 却 す る 場 合 で あ る41)。 会 社 は,原 則 と し て,「 資 本 が 殿 損 し な い(impairmentofthecapital)」 場 合 に 自 己 株 式 を 取 得 す る こ と が で き る42)。 デ ラ ウ エ ア 会 社 制 定 法 に お け る こ れ ら の 規 定 は, 他 の 州 の 規 定 や 模 範 事 業 会 社 法(MBCA)の 規 定 よ り も 曖 昧 で あ る43)。 こ の

よ う に,立 法 府 は,曖 昧 で 抽 象 的 な形 態(form)の 規 定 を用 い る こ とに よ り, そ の 規 定 の解 釈 適 用 を 行 う裁 判 所 に ポ リシ ー の 選 択 や 法 の 意 味 内 容 の 確 定 を委 ね て い る44)。法 の 具 体 的 な意 味 内 容 は,裁 判 所 の 判 断 が 積 み重 な る こ とに よっ て,徐 々 に 明 らか に な っ て い く こ とが 予 定 され て い る 。

39)DGCL§220(b).

40)DGCL§242(b×2).こ の 規 定 に よれ ば,種 類 株 主 の 議 決 が 求 め られ る の は,提 案 さ れ た 定 款 変 更 が,(1)そ の 種 類 の 株 式 の 授 権 株 式 数 を 増 加 また は 減 少 させ る場 合,(2) そ の 種 類 の 株 式 の 額 面 額(parvalue)を 増 加 ま た は 減 少 させ る場 合,(3)そ の 種 類 の 株 式 の 権 能,優 先 権,ま た は 特 別 の 権 利 を そ の 種 類 に不 利 益 な 影 響 を 与 え る よ う に変 更 ま た は 変 化 さ せ る 場 合 で あ る 。 そ れ に対 し,MBCAは も っ と 明 確 な 規 定 を 用 い て い る 。MBCA§10.04は 種 類 株 主 総 会 で の 決 議 が 必 要 な 場 合 を8つ 列 挙 し て い る 。

41)DGCL§271.DGCLの 規 定 上 は,「 実 質 的 に 全 て 」 に該 当 す る の は ど の よ う な場 合 か は 明 確 に さ れ て い な い 。 そ れ に 対 し,MBCAは 数 値 基 準 を 設 け て,明 確 化 を 試 み て い る 。MBCA§12.02(a).

42)DGCL§160(a)(1).

43)MichaelP.Dooley&MichaelD.Goldman,SomeComψarisonsBetweenthe ModelBusinessCorPorationActandtheZ)elawareOeneralCorPorationLaw,56

BuS.LAw .737,764‑75(2001)(MBCAは 指 示 的 な 「明確 な(bright‑line)」 ア プ ロ ー チ を 採 っ て い る の に 対 し て,DGCLは 一 般 的 な 文 言 を 用 い た 制 定 法 上 の 「ス タ ン

ダ ー ド」 を好 ん で お り,裁 判 所 が そ の 内 容 を 補 充 す る よ う に な っ て い る).

44)Hamermesh,PolicyFoundations,at1778(「 デ ラ ウ エ ア 州 は,立 法 に よ る 大 まか な ル ー ル を好 み,そ の よ う な ル ー ル の 発 展 は 司 法 の 適 用 を通 じ て な さ れ る こ と を 選 好 し て い る 」 「審 議 会 の メ ンバ ー は,… 制 定 法 が 不 明 確 で あ る 場 合 に,そ の 制 定 法 の 解 釈 を 供 給 す る の に 最 も優 れ た位 置 い る の は デ ラ ウ エ ア 裁 判 所 で あ る と 感 じて い

る」).

(10)

こ の よ う に,デ ラ ウ エ ア州 の立 法 は,制 定 法 で規 定 自体 を 設 け な い こ と に よ っ て,あ るい は 曖 昧 な文 言 や 包 括 的 な規 定 を用 い る こ とに よっ て,事 後 的 な法 創 造 の余 地 を で きる 限 り残 して お き,裁 判 所 に よる 事 件 の判 断 の 積 み重 ね を通 じ た 法 形 成 や 法 発 展 が な され る こ と を予 定 して い る45)。 事 前 の 明 確 性 よ りも, 事 後 的 な 法 創 造 の 可 能 性 と柔 軟 性 を重 視 し て い る46)。

そ の結 果,デ ラ ウエ ア州 の 立 法 府 は,具 体 的 な ポ リ シ ー の 選 択 や 法 創 造 を司 法 に依 存 し て い る 。 例 え ば,敵 対 的買 収 に対 す る 防 衛 策 の有 効 性 を どの よ う に 判 断 す べ きか とい う よ う な,ポ リ シ ー の 対 立 が激 しい 重 要 問 題 につ い て,立 法 府 は何 の 回 答 や 指 針 も示 して い な い47)。 株 主 を重 視 して 防 衛 策 に 厳 しい ル ー ル を採 用 す るか,そ れ と も取 締 役 会 を尊 重 し て実 効 的 な 防衛 が 可 能 な ル ー ル を 採 用 す べ きか,と い う ポ リシ ー の 選 択 や,具 体 的 な ル ー ル の 策 定 を裁 判 所 に委 ね て い る 。

さ らに,立 法 は 自由 な会 社 法 制 か ら生 じ う る弊 害 の 是 正 や,経 営 者 の 濫 用 的 行 為 の 監 視 監 督 も司 法 に 依 存 し て い る48)。 自由 な 会 社 法 制 を 採 用 し,私 的 自 治 を重 視 す れ ば す る ほ ど,自 由 が 濫 用 され 弊 害 が 生 じる お そ れ も高 くな る。 し か し,デ ラ ウエ ァ 州 の 立 法 府 は そ の よ う な弊 害 が 生 じる可 能性 を低 下 させ る た め の 手 段 を ほ とん ど講 じて い な い 。 自由 か ら生 じ う る弊 害 を是 正 し矯 正 す る役 割 を裁 判 所 に委 ね て い る。 自由 の 濫 用 へ の 対 処 も裁 判 所 に依 存 して い る 。

45)Hamermesh教 授 は,審 議 会 と州 議 会 は,少 な く と も成 文 化 す る こ と が 適 切 で は な い 問 題 に つ い て は,デ ラ ウ エ ア 裁 判 所 が ま ず 最 初 に 会 社 法 の 問 題 に 答 え る こ と を 好 ん で い る と す る 。そ の 理 由 は,立 法 ス タ ッ フ の 能 力 が 欠 如 して い る か らで は な く, 注 意 深 い 選 択 の 結 果 で あ る とす る 。Hamermesh,PolicyFoundations,at1782.

46)裁 判 所 に よ る 事 後 的 な 法 創 造 に は メ リ ッ ト とデ メ リ ッ トが あ る 。 事 後 的 な 公 正 性 を確 保 す る た め に は 適 して い る か も しれ な い が,事 前 の 明 確 性 が 低 い の で,当 事 者 の 事 前 の イ ンセ ン テ ィ ブ と効 率 性 を損 な っ て し ま う か も しれ な い か らで あ る 。 玉 井 ・前 掲 注6・1129‑46頁 参 照 。

47)例 外 が あ る と す れ ば,DGCL§203で あ る 。 し か し,上 述 し た よ う に,こ の 規 定 は デ ラ ウ エ ア会 社 法 の な か で は 異 例 な 規 定 で あ る 。

48)Hamermesh,PolicyFoundαtions,at1784(「 … 立 法 が 柔 軟 性 と私 的 秩 序 を 選 好 し て い る の は,… 裁 判 所 は 会 社 を 支 配 す る 者 に よ る 過 度 に 機 会 主 義 的 な 行 動 を 取 り締 ま る だ ろ う と い う 揺 る ぎ な い 考 え に 究 極 的 に は 依 存 して い る 」).

(11)

会社 法立 法 の 日米 比較(1) 現 代 ア メ リカ 会 社 法 は授 権 法 モ デ ル と言 わ れ る こ とが あ る。 しか し,少 な く と もデ ラ ウ エ ア 会 社 法 の 場 合 は,会 社 法 の重 要 問 題 に つ い て の法 創 造 と 自 由 な 会 社 法 が も た らす 弊 害 の抑 制 とい う法 の 果 た す べ き重 要 な 役 割 の大 部 分 を司 法

に委 ね て い る の で,司 法 依 存 モ デ ル と呼 ぶ 方 が 適 切 で あ る49)。

B.デ ラ ウ エ ア 会 社 制 定 法 の 立 法 過 程

前 節 で 述 べ た よ う に,デ ラ ウ エ ア 会 社 制 定 法 の 立 法 に は,司 法 を 尊 重 して, 立 法 回 避 的 とい え る よ う な,「 で き る だ け 書 か な い」(成 文 化 しな い)と い う強 い 意 思 と意 図 が 見 て 取 れ る。 なぜ デ ラ ウエ ア 州 の 立 法 府 は この よ うな 立 法 回避 的 で 司 法 依 存 的 な立 法 ポ リ シ ー を採 っ て い る の だ ろ うか 。 デ ラ ウ エ ア 州 は,州 の 財 政 の 多 く を会 社 の 設 立 免 許税(franchisetax)に 依 存 して い る 。 デ ラ ウ エ

ア州 の 主 要 産 業 は 会 社 法 の 販 売 で あ るの で,デ ラ ウ エ ア 州 は どの よ う な立 法 ポ リ シー を採 用 す る か に大 き な 関 心 を もっ て い る は ず で あ る50)。 自己 抑 制 的 な 立 法 とい う の は,偶 然 の 産 物 で は な く,デ ラ ウエ ア州 の 立 法 府 に よっ て 注 意 深 い 考 慮 に よ り意 図 的 に採 用 され た ポ リ シ ー と考 え るべ きで あ る。

で は,な ぜ デ ラ ウ エ ア 州 は この よ う な 立 法 ポ リ シ ー を採 っ て い る の だ ろ うか 。

49)デ ラ ウ エ ア 衡 平 法 裁 判 所 のStrine副 大 法 官 は,州 議 会 と デ ラ ウ エ ア 州 の 司 法 の 関 係 に つ い て 以 下 の よ う に 述 べ て い る。

「DGCLは ,取 締 役 と株 主 に 柔 軟 な権 限 を与 え る よ う に 意 図 的 に 設 計 さ れ て お り, 私 的 秩 序 と適 合 の た め の 大 き な 裁 量 を許 容 して い る 。 そ の よ うな 広 範 な 権 限 の 付 与 は,主 に,信 認 義 務 の 原 則 と い う形 態 で,エ ク イ テ ィ と い う コモ ン ロ ー に よ っ て 監 視 さ れ て い る 。DGCLに よ っ て,誠 実 に 行 動 す る 取 締 役 と役 員 に 委 ね ら れ て い る 合 法 的 な行 為 の 領 域 に 介 入 す る こ と を 回 避 す る た め に,司 法 は そ の 衡 平 法 上 の 権 能 を 注 意 深 く用 い て い る 。 経 営 判 断 原 則 は,そ の よ う な 司 法 の 適 切 な 自制 に つ い て の コ ミ ッ トメ ン トを 具 体 化 して い る。同 時 に,制 定 法 の 柔 軟 性 が 不 公 正 な(inequitable) 目的 の た め に 濫 用 さ れ た 場 合 に は,株 主 が 会 社 の 受 任 者 に つ い て 有 し て い る 正 当 な 期 待 を 擁 護 す る とい う デ ラ ウ エ ア 州 の 公 的 な ポ リ シ ー に よ っ て,デ ラ ウ エ ア 裁 判 所

は 行 動 す る こ と が 要 請 さ れ る 」。HollingerInternational,Inc.v.Black,844A.2d 1022,1078(Del.Ch.2004),affd,872A.2d559(Del.2005).

50)デ ラ ウ エ ア 州 は,州 の 予 算 の 約20%が 会 社 の 設 立 免 許 税 で あ る 。Hamermesh, PolicyFoundations,at1754.2005年 の デ ー タ は,DelawareDepartmentofState, DivisionofCorporations,2005AnnualReport2(2006),availableathttp://www.

corp.delaware.gov/2005%20doc%20ar.pdfを 参 照 。

(12)

この 問 題 を 考 え る に は,立 法 過 程 に大 きな影 響 を及 ぼ して い る者 は 誰 か,影 響 を 与 え る者 に は ど の よ う な イ ン セ ン テ ィ ブ が あ る か を 明 ら か に す る必 要 が あ る 。 そ の た め,以 下 で は,デ ラ ウ エ ア会 社 制 定 法 の立 法 過 程 を概 観 す る こ とに す る51)Q

デ ラウ エ ア会 社 制 定 法 の立 法 過 程 の 特徴 は,排 他 性 と閉鎖 性 で あ る。 デ ラ ウエ ア州 の 法 曹 団 体 が 立 法 過 程 をほ ぼ 独 占 的 に支 配 して い る。Hamermesh教 授52) は,デ ラ ウ エ ア 会 社 制 定 法 の 立 法 過 程 を以 下 の よ う に説 明 して い る 。

デ ラ ウ エ ア 会 社 制 定 法 の 立 法 は,デ ラ ウ エ ア 州 議 会(DelawareGeneral Assembly)で 行 わ れ る。 立 法 に は,上 院(Senate)と 下 院(且ouseofRepre‑

sentatives)の3分 の2の 議 決 が 必 要 で あ る53)。 しか し,デ ラ ウエ ア 会 社 制 定 法 の 立 法 は ほ とん ど常 に 全 員 一 致 の 賛 成 に よっ て 行 わ れ る。 デ ラ ウエ ア州 議 会 の議 員 は,デ ラ ウエ ア 会社 制 定 法 の 立 法 に お い て は,重 要 な役 割 を果 た さ な い 。 州 議 会 で 会 社 制 定 法 の 法 案 が 修 正 さ れ た り法 案 の 内 容 が 議 論 さ れ る こ と は な

く,全 員 一 致 で 可 決 す る の が 通 常 で あ る54)。

デ ラ ウエ ア 会 社 制 定 法 の 法 案 作 成 を実 際 に 主 導 し,立 法 の 過 程 を実 質 的 に 支 配 して い る の は,デ ラ ウエ ア 州 法 曹 協 会(TheDelawareStateBarAssociation)

51)デ ラ ウ エ ア 州 が 準 則 主 義 に 基 づ く 一 般 事 業 会 社 制 定 法 を 定 め た の は1899年 で あ る 。 そ の 後,幾 度 と な く小 規 模 な 改 正 が な さ れ,1967年 に 全 面 的 な 改 正 が 行 わ れ た 。 1967年 後 も 毎 年 の よ う に 改 正 が 行 わ れ て い る が,デ ラ ウ エ ア 会 社 制 定 法 の 基 本 的 な 構 造 は1967年 か ら 現 在 ま で 変 わ っ て い な い 。 さ ら に,1967年 以 降 は 会 社 制 定 法 改 正

の プ ロ セ ス も 同 じ で あ る 。CurtisAlva,DelawareandtheMarketforCorporαte Charters'Histo冗yandAgency,15DELJ.CoRP.L.885,896(1990).

52)以 下 の 記 述 は,Hamermesh教 授 に よ る 。Hamermesh教 授 は,現 在 はDelaware 州Wilmingtonに あ るWidenerUniversityの ロ ー ス ク ー ル で 教 鞭 を 執 っ て い る が, 1976年 か ら1994年 ま で デ ラ ウ エ ア 州Wilmingtonの ロ ー フ ァ ー ム で 弁 護 士 と し て 実 務 を 行 い,1980年 代 の デ ラ ウ エ ア 州 の 有 名 な 事 件 に 関 わ っ た 。Hamermesh教 授 は, デ ラ ウ エ ア 州 法 曹 協 会 の 会 社 法 部 会 の メ ン バ ー で あ り,審 議 会 の メ ン バ ー と し て デ ラ ウ エ ア 会 社 制 定 法 の 改 正 作 業 に も 関 わ っ た 。 詳 し く は,Hamermesh,Policv

Foundations,at1751n.5を 参 照 。 53)DELCONsT.art.IX,§1.

54)Kahan&Rock,SymbioticFederalism,1600.会 社 法 の 法 案 が デ ラ ウ エ ア 州 法 曹 協 会 の 支 持 を 受 け て い れ ば,そ の 法 案 は 議 会 を ほ ぼ 自 動 的 に 通 過 す る 。Alva,suPra note51,at898.

(13)

会社 法立 法 の 日米 比較(1) 7ヱ

の 会 社 法 部 会(CorporateLawSection)で あ る。 特 に,会 社 法 部 会 の 審 議 会 (Council)が 中 心 的 な役 割 を担 う55)。

会 社 法 部 会 は,デ ラ ウエ ア 州 法 曹 協 会 の12あ る部 会 の 中 で最 大 の 部 会 で あ り, そ の 員 数 は300名 を超 え る 。 デ ラ ウ エ ア 州 法 曹 協 会 の メ ンバ ー で あ り,か つ 会 社 法 の 領 域 で 実 務 を行 っ て い る者 で あ れ ば,誰 で も会 社 法 部 会 の メ ンバ ー に な れ る56)。

会 社 法 部 会 の 審 議 会 の メ ンバ ー は,会 社 法 部 会 の メ ンバ ー に よ っ て 毎 年 正 式 に選 挙 に よ っ て 選 出 さ れ る。審 議 会 は現 在 は21人 の メ ンバ ー で構 成 さ れ て い る。

審 議 会 の メ ンバ ー 選 出 は,以 下 の よ う な,非 公 式 の 伝 統 的 な慣 習 に従 って 行 わ れ る 。 慣 習 と して,デ ラ ウ エ ア州 の 最 大 都 市Wilmingtonに 所 在 す る7つ の大 規 模 ロ ー フ ァー ム か ら,そ れ ぞ れ 二 人 つ つ 候 補 者 が 指 名 され る。他 の候 補 者 は, Wilmingtonの 他 の ロ ー フ ァー ム か ら指 名 され る。 訴 訟 業 務 を 中心 に行 っ て い

る弁 護 士 と,企 業 取 引 の助 言 業 務 を 中 心 に行 っ て い る弁 護 士 が ほ ぼ 同 じに な る よ う に候 補 者 が 指 名 さ れ る 。 企 業 内 弁 護 士 や デ ラ ウエ ア州 以外 の 弁 護 士,さ に デ ラ ウエ ア州 に 基 盤 を お か な い ロ ー フ ァ ー ム に所 属 す る 弁 護 士 は,唯 一 の例 外 を 除 い て57),審 議 会 メ ンバ ー に入 っ て い な い 。 そ の た め,デ ラ ウエ ア 会 社 制 定 法 の 立 法 過 程 は,事 実 上,デ ラ ウ エ ァ州 の弁 護 士 が 支 配 して い る58)。

審 議 会 の 活 動 は,州 議 会 の 会 期 に合 わ せ て行 わ れ る。 州 議 会 は毎 年1月 に召 集 さ れ,6月30日 に閉 会 す る。 こ の 日程 に合 わせ て 法 案 を 州 議 会 に提 出 で きる よ う に,審 議 会 は 前 年 の8月 か ら3〜4月 頃 ま で 立 法 の 準 備 作 業 を行 う59)。

審 議 会 の メ ンバ ー か ら立 法 の 提 案 が な され る と,そ の 提 案 は真 に検 討 に値 す

55)Hamermesh,PolicyFoundations,at1754‑55.

56)Alva,suprαnote51,at899.

57)デ ラ ウ エ ア 州 以 外 の ロ ー フ ァ ー ム に 所 属 す る 法 律 家 も 例 外 的 に 審 議 会 の メ ン バ ー に 加 わ っ て い る 。 そ の 唯 一 の 例 外 的 な ロ ー フ ァ ー ム は,SkaddenArpsSlate

Meagher&FlomLLPで あ り,二 人 の 候 補 者 が こ の ロ ー フ ァ ー ム か ら 推 薦 さ れ る 。 58)Hamermesh,PolicyFoundations,at1755‑56.そ の た め,デ ラ ウ エ ア 州 の 弁 護 士

や,企 業 内 弁 護 士,会 社 の 経 営 者 な ど に よ る ロ ビ ー 活 動 も 州 議 会 で は な く,会 社 法 部 会 に 対 し て 行 わ れ る 。Alva,smpranote51,at900‑901.

59)Hamermesh,PolicyFoundations,at1756.

(14)

る か ど うか 考 慮 さ れ る 。 検 討 に値 す る と判 断 され れ ば,そ の 提 案 は 綿 密 な審 理 を加 え法 案 を起 草 す る た め に,審 議 会 の 下 部 委 員 会(subcommittee)に 付 さ れ る 。 下 部 委 員 会 か ら回 答 が な さ れ る と,審 議 会 で 審 査 され る。 審 議 会 で 審 査 さ れ た 後,さ ら に修 正 を 施 す た め に,再 度 下 部 委 員 会 に付 され る の が 一 般 的 で あ る。 この よ うな 審 議 会 と下 部 委 員 会 の 問 の往 復 は2〜3回 行 わ れ る の が 通 常 で あ る 。 そ の よ う に して起 草 され た 法 案 は,審 議 会 全 体 の 承 認 を受 け た 後,州 議 会 に提 出 さ れ る前 に,デ ラ ウ エ ア 州 法 曹協 会 の 会 社 法 部 会 と執 行 委 員 会

(ExecutiveCommittee)の 双 方 の承 認 を受 け な け れ ば な らな い60)。

審 議 会 で の 法 案 準 備 作 業 は 非 公 開 で 行 わ れ る 。立 法 の 提 案 は,審 議 会 メ ンバ ー が 所 属 す る ロ ー フ ァー ム 以外 で 議 論 され る こ と もな い し,外 部 に配 布 され る こ と も な い 。 しか し,実 際 に どの よ うな 立 法 の 提 案 を行 うべ きか につ い て は,審 議 会 メ ンバ ー の所 属 す る ロ ー フ ァ ー ム の 顧 客 や,そ の ロ ー フ ァー ムが 提 携 して い る他 州 の ロ ー フ ァー ム な どか らの要 望 や 示 唆 が 考 慮 さ れ て い る。 しか し,そ の よ うな外 部 か らの 示 唆 は 受 け て も,審 議 会 の メ ンバ ー は立 法 の 準 備 過 程 に お い て は,自 分 の 所 属 す る ロ ー フ ァ ー ム 以 外 か らの影 響 を受 け る べ きで は ない と 考 え られ て い る61)。

こ の よ う な審 議 会 メ ンバ ー の 排 他 性 や 閉 鎖 性 は,デ ラ ウ エ ア 州 の裁 判 所 と の 関 係 に お い て も同様 で あ る 。 審 議 会 は デ ラ ウエ ア州 の 裁 判 官 を会 議 に 呼 ば な い し,裁 判 官 か ら立 法 に 関す る コ メ ン トを 求 め る こ と も な い。 審 議 会 の メ ンバ ー とデ ラ ウ エ ア州 の裁 判 官 の 間 に コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンが な い わ け で は な い が,そ れ は私 的 で イ ン フ ォー マ ル な もの で あ る62)。

こ の よ う に,デ ラ ウエ ア会 社 制 定 法 の 立 法 準 備 作 業 は,事 実 上,デ ラ ウエ ァ 州 法 曹 協 会 の 会 社 法 部 会 に設 置 さ れ た審 議 会(Council)に 参 加 して い る 弁 護 士 に よ っ て独 占的 に行 わ れ て い る。 法 曹 団体 が 立 法 過 程 を支 配 して い る の で,

デ ラ ウエ ア 州 の 抑 制 的 な立 法 ポ リ シ ー は 法 曹 団 体 の 選 択 に よ る と考 え るべ きで

60)ld.at1756.

61)ld.at1756‑57.

62)1と1.at1757.

(15)

会社 法 立法 の 日米比 較(1) 73 あ る。で は,法 曹 団体 は なぜ この よ う な 立 法 ポ リシ ー を採 っ て い るの だ ろ うか 。 い くつ か の 仮 説 が 考 え られ る 。 次 節 で は,デ ラ ウ エ ァ 州 が 自己 抑 制 的 な立 法 ポ

リ シー を採 って い る 理 由 を説 明 し う る い くつ か の仮 説(ス トー リー)を 考 え る こ と に す る 。

C.デ ラ ウ エ ア 会 社 制 定 法 の立 法 ポ リシ ー

上 述 の よ う に,デ ラ ウ エ ア 州 の 会 社 立 法 の過 程 を支 配 して い る の は 法 曹 団体, 特 に 会 社 法 部 会 の審 議 会 の メ ンバ ー で あ る 。 審 議 会 の メ ンバ ー は,ど の よ う な 意 図 や 目的 を も っ て 立 法 作 業 を行 い,立 法 ポ リシ ー を決 定 して い る の だ ろ うか 。 なぜ 自己 抑 制 的 で 司 法 依 存 の 立 法 ポ リ シ ー を採 用 して い る の だ ろ うか 。 以 下 で は,そ の 理 由 を説 明 し う る い くつ か の 仮 説 を考 え る こ とに す る63)。 まず,審 議 会 が こ の よ う な立 法 ポ リ シ ー を採 用 して い るの は,主 に公 益 を増 進 す る た め で あ る と い う審 議 会 性 善 説 的 な 観 点 か らの 説 明 を試 み る64)。 次 に,専 ら法 曹 団体 の 自 己利 益 を追 求 す る た め に,抑 制 的 な 立 法 ポ リ シー が 用 い られ て い る と い う審 議 会 性 悪 説 的 な観 点 か らの 説 明 を行 う。 最 後 に,次 に,審 議 会 が どの よ う な 意 図 を有 して い る か に関 わ らず,デ ラ ウ エ ア州 が 直 面 して い る 現 実 の 制 度 的 な 制 約 の た め に,抑 制 的 な立 法 が 行 わ れ て い る とい う制 度 的 な 観 点 か らの 説

63)以 下 で は,会 社 制 定 法 の 立 法 に携 わ る 審 議 会 の メ ンバ ー は 単 一 の 意 図 を持 っ て お り,そ の 意 図 を実 現 す る た め に 立 法 ポ リ シ ー を採 用 し て い る と仮 定 して,そ の 理 由 を考 え て い く こ と にす る。 法 曹 団 体 の 真 の 意 図 を 知 る こ と は で き な い し,も し法 曹 団 体 に あ る 一 定 の 意 図 が あ っ た と して も,必 ず し も そ の 意 図 通 りの 立 法 が な さ れ て い る と は 限 らな い が,単 純 化 の た め に こ の よ う に 仮 定 し て い る 。

64)審 議 会 メ ン バ ー と して,デ ラ ウエ ァ 会 社 制 定 法 の 立 法 作 業 に 携 わ っ た こ との あ る Hamermesh教 授 は,審 議 会 の メ ンバ ー が ど の よ う な 意 識 で 立 法 作 業 を行 っ て い る か を 説 明 し て い る。Hamermesh教 授 に よ れ ば,審 議 会 の メ ンバ ー は,特 定 の 会 社 の 利 益 を 図 る た め に 立 法 して い る とい う 批 判 や,デ ラ ウエ ァ 州 内 の リ ー ガ ル ビ ジ ネ ス を振 興 させ る た め に 立 法 を行 っ て い る な どの 批 判 を 受 け な い よ う に し,州 議 会 の 信 頼 性 を 高 め る必 要 が あ る こ と を 強 く認 識 して 立 法 作 業 を 行 っ て い る とす る 。 さ ら に,審 議 会 の メ ンバ ー は,自 分 の 顧 客 の 利 益 に左 右 さ れ る こ と な く立 法 を行 う義 務 が あ る と い う こ と を 認 識 し て,立 法 を 行 っ て い る とす る 。Hamermesh,Policy Foundations,at1758‑59.但 し,公 共 の 利 益 を増 進 す る 目的 で 立 法 を 行 っ て い る と明 言 して い る わ け で は な い 。

(16)

明 を 行 う 。

1.理 論 的 優 越 の 可 能 性:公 益 の 追 求 と審 議 会 性 善 説

審 議 会 の メ ンバ ー は,公 共 の 利 益 を増 進 させ る こ と を 目的 と して 立 法 を行 っ て い る とす る と,デ ラ ウ エ ア 会 社 制 定 法 の 自 己抑 制 的 で 司 法 依 存 的 な 立 法 ポ リ シー は,そ の 目的 を達 成 す る の に適 して い る の で,採 用 され て い る とい う こ と に な る か も しれ な い 。 立 法 で積 極 的 に 制 定 法 の規 定 を設 け る よ り も,抑 制 的 で 消 極 的 な 立 法 を行 い,裁 判 所 に法 創 造 を任 せ た 方 が 望 ま しい と い う理 論 的 な可 能 性 は あ る だ ろ うか 。 以 下 で は,こ の よ う な可 能性 を考 え て み る。

(1>新 た な 混 乱 の 回 避

立 法 す る こ と 自体,可 能 な 限 り回避 した 方 が よい か も しれ ない 。 立 法 す る こ とで 既 存 の 問 題 は解 決 で きる か も しれ な い が,立 法 に よ り予 期 し な い 問 題 が 発 生 し,新 た な混 乱 を招 くか も しれ な い か ら で あ る 。 こ の よ う な危 険 を 重 く見 る な ら,問 題 が 具 体 的 事 件 とな っ て 現 実 化 す る前 に,先 走 っ て 立 法 す べ きで は な い 。 実 際 に 具 体 的 な 問 題 が 発 生 し,そ れ が 裁 判 所 で 判 断 さ れ る ま で は 立 法 を待 つ 方 が よい 。 まず 最 初 に 問 題 に解 決 策 を示 す の は,立 法 で は な く,裁 判 所 で あ るべ きで あ る。 同種 の 事 件 が い くつ か 裁 判 所 で判 断 され,あ る程 度 裁 判 所 の 判 断 が 固 ま っ て か ら,そ れ を参 考 に立 法 す るべ きで あ る。 立 法 を行 う場 合 も,影 響 を最 小 限 に抑 え るた め に,必 要 最 低 限 の 立 法 に と ど め るべ きで あ る 。 裁 判 所 が そ の 問 題 につ い て 判 断 した と して も,裁 判 所 が 判 断 を積 み 重 ね,そ の 問 題 に 関 す る法 的 ル ー ル を リ フ ァイ ン して い く こ とが で き る よ うに,立 法 を行 わ な い 方 が よ い 場 合 もあ るか も しれ ない65)。

Hamermesh教 授 は,デ ラ ウ エ ア の 審 議 会 の メ ンバ ー を支 配 して い る の は, こ の よ う な 消 極 的 で 変 化 を嫌 う保 守 的 な 思 考 で あ る とす る66)。 実 際 に,こ

65)Hamermesh,PolicyFoundations,atl773.

66)Id.atl772

(17)

会社 法 立法 の 日米比 較(1)75

よ うな 消 極 性 ・保 守 性 を 示 す 例 も あ る。 例 え ば,附 属 定 款67)に よ っ て 取 締 役 会 の権 限68)を どの 程 度 制 限す る こ とが 可 能 か69)と い う問 題 は10年 以 上 前 か ら 認 識 さ れ て い る非 常 に重 要 な 問 題 で あ る が,立 法 に よ っ て解 決 され る こ と な く 放 置 さ れ て い る 。 立 法 に よっ て 新 た な 問 題 が 発 生 す るの を恐 れ て い る か らで あ る70)。

さ らに,必 要 最 低 限 の 立 法 的 解 決 しか 示 して い な い 例 もあ る 。 親 会 社 に よ る 子 会 社 の 資 産 の 売 却 が そ う で あ る71)。DGCL§271は,会 社 の全 て また は 実 質 的 に全 て の 資 産 を 売 却 す る 際 に は株 主 総 会 の 決 議 が 必 要 で あ る こ と を定 め て い る 。 親 会 社 の 全 て ま た は実 質 的 に全 て の 資 産 が 子 会 社 の 保 有 す る資 産 で あ る場 合 に,親 会 社 が そ の子 会 社 の 資 産 を売 却 す るた め に は,親 会 社 の 株 主 総 会 の 決 議 が 必 要 で あ る か ど う か は,長 年 の 間不 明 で あ っ た。2004年 の 且ollinger事 件72) に よ り こ の 問 題 が 表 面 化 した た め,2005年 のDGCL改 正 に よ っ て 明確 化 が 図

られ た 。 しか し,DGCLが 明 らか に した の は,完 全 に所 有 さ れ(owned)支 配 さ れ て い る(controlled)子 会 社 の 資 産 を売 却 す る こ とは,親 会 社 自 身 の 資 産 の 売 却 に 該 当 し,親 会 社 の株 主 の議 決 が 必 要 で あ る と い う こ と だ け で あ る。

100%保 有 で な い 子 会 社 の 資 産 の売 却 につ い て は 不 明 の ま まで あ る し,「 所 有 さ れ て い る(owned)」 や 「支 配 され て い る(controlled)」 とい う文 言 も定 義 さ れ て お らず,必 要 最 小 限 の立 法 的 解 決 しか 行 わ れ て い な い 。 審 議 会 は,こ れ 以 上 の 立 法 は,混 乱 を招 くだ け で 賢 明 で は な い と考 え た の で あ る73)。

この よ う に,審 議 会 の メ ンバ ー は,立 法 す る こ と 自体 を肯 定 的 に評 価 し な い の で,消 極 的 な立 法 ポ リ シ ー を採 用 して い る の か も しれ な い 。 曖 昧 な規 定 の 文

67)DGCL§109(b).

68)DGCL§141(a).

69)Hamermesh,PolicyFoundations,at1772‑73,特 に 注103を 参 照 。 70)Id.at1773.

71)ld・at1777‑78.

72)HollingerInc.v.HollingerInternational,Inc.,858A.2d342(DeLCh.2004).

73)Hamermesh,PolicyFoundations,at1778.制 定 法 の 不 明 確 さ や 曖 昧 さ を 解 釈 す る の は 裁 判 所 で あ る べ き と 審 議 会 の メ ン バ ー は 考 え て い る と す る 。 鉱

(18)

言 が 好 まれ る の も,立 法 回避 の 選 好 の現 れ と い え る。 曖 昧 な 文 言 を用 い る こ と に よ っ て,具 体 的 な 解 決 を立 法段 階 で行 わ ず,司 法 に先 送 りで き る か らで あ る。

(2)「 ス タ ン ダ ー ド」 の 優 越

条 文 化 す るの が 困 難 で あ っ た り,条 文化 して規 定 を設 け る こ とが 望 ま し くな い た め,立 法 を控 え た 方 が よ い 問 題 領 域 も あ る か も し れ な い74)。 取 締 役 の 信 認 義 務 は,こ の よ う な 立 法 回 避 が 適 切 な 問 題 領 域 で あ る か も しれ な い75)。 取 締 役 が 会 社 経 営 を行 う際 に直 面 す る状 況 は 非 常 に様 々 で あ り,そ の 状 況 にお い て どの よ うな 行 為 を行 え ば義 務 を尽 く した こ と に な るか を事 前 に 規 定 す る こ と は 困 難 で あ る か らで あ る。事 前 に規 定 を設 け る と し て も,「注 意 深 く行 動 せ よ, 自己 の 利 益 を会 社 の利 益 に優 先 させ て は な ら な い」 とい う一 般 的 ・抽 象 的 な規 定 よ りも,さ ら に具 体 的 で 詳 細 な 規 定 を 設 け る の は 困 難 で あ る か も しれ な い 。 取 締 役 の信 認 義 務 の よ う な,事 案 が 多 様 で 複 雑 な 問題 領 域 で は,事 前 に 明確 な 規 定 を設 け る よ り も,取 締 役 の行 為 が 行 わ れ た 後 に,取 締 役 の 意 思 が 形 成 され た プ ロ セ ス を 事 後 的 に 審 査 して,そ の 行 為 の 許 容 性 を事 後 的 に 裁 判 所 が 判 断 す る 方 が 望 ま し い 可 能 性 が あ る76)。 こ の よ う な可 能 性 を重 視 す る な ら,裁 判 所 が 柔 軟 に判 断 で き る よ う にす る た め に,制 定 法 で 明確 な 規 定 を 設 け る よ り も, 裁 判 所 の 裁 量 の 余 地 が 大 きい 「ス タ ン ダー ド」 を用 い るべ きか も しれ な い77)。

事 前 の 明 確 性 を高 め る た め に制 定 法 で 明確 な 規 定 を設 け る と,裁 判 所 の裁 量 の 余 地 が 減 り,事 案 に 応 じた柔 軟 な解 決 が 妨 げ られ る可 能 性 が 高 ま る か らで あ る。

74)Hamermesh教 授 は,審 議 会 は 立 法 作 業 を 行 う 際 に,実 際 に こ の よ う な 考 慮 を 行 っ て い る と す る 。Hamermesh,PolicyFoundαtions,at1777(「 デ ラ ウ エ ア 会 社 法 の 法 制 作 者 は,解 決 が 複 雑 な 事 実 に 依 存 し て い る よ う な 法 的 問 題 は 単 純 な 制 定 法 の ル ー ル へ と 成 文 化 す る こ と は で き な い し,ま た す べ き で は な い と い う 考 え を 信 奉 し て い る 」).

75)Hamermesh,1)olicyFoundations,at1777.

76)Fisch,smpranote20,atlO84;IanAyres,MakingaDzfference'TheContractual ContributionsofEasterbrookandFischel,59UCHLL.REv.1391,1404(1992).

77)SeanJ.Griffith&MyronT.Steele,OnCorporateLawFederalism'Threatening theThaumatrol》e,61BUS.LAW.1,21‑22(2005).

参照

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