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戦 後 日本 にお ける輸 出主導型成長仮説 の再検討*

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戦 後 日本 にお ける輸 出主導型成長仮説 の再検討*

1.序

周 知 の よ うに,経 済 成 長 の 源 泉 を め ぐって 様 々 な 議 論 が 展 開 さ れ て きて い る 。 世 界 経 済 の発 展 の 中 で 世 界 貿 易 の 拡 大 を上 回 るス ピー ドで 貿 易 の 伸 びを 経 験 し た り,国 民 所 得 の 成 長 を上 回 る輸 出 拡大 を 達 成 した国 が あ る。 そ う した 経 験 を

もつ 国 民 経 済 を 観 察 対 象 に して 経 済 成 長 過程 に お け る輸 出 の役 割 が 重 視 され る よ うに な った 。 す なわ ち,経 済 成 長 の 始 発 的 な刺 激 が 国 内 か らで は な く外 部 か ら与 え られ た成 長 パ タ ー ンが 注 目 され るよ うに な った ので あ る。 いわ ゆ る 「輸 出主 導 型 成 長 」 仮 説 の 登 場 で あ る。 そ れ は経 済成 長 の主 た る源 泉 が 輸 出 に求 あ

られ る 経 済成 長パ タ ー ンを 示 唆 す る 。 ・

「輸出主 導型 成長 」 とい う呼 称が,い つ 頃 か ら一 般 的 に 用 い られ る よ うに な っ た か は,知 るよ し もな いが,も とを 正 せ ば 経 験 的 概念 と して提 示 され た よ うで あ る。本稿 は 日本経 済 の 発展 と輸 出 と の 関係 を さ ぐる こ とを ね らい とす る以 上, 輸 出 主 導 型 成 長 に 関 す る諸 研 究 に つ いて の展 望 は ケ イ ヴ ズ[1971]に ゆ ず る。

日本 経 済 は 資源 不 足 国 で あ り,そ の ため 輸 入 原 材 料 依 存 度 が 高 く,経 済成 長 は 輸 入 の 増加 とそ れ を 賄 な う輸 出 の拡 大 な しには お こ りえ な い こ とは 誰 し も認 め るで あ ろ う。 そ して ま た,日 本 の 輸 出 の成 長 率 が 戦 前 ・戦 後 を 問 わ ず世 界 貿 易 の 拡 大 ス ピー ドを 上 回 って い た こ と も事実 で あ る。 か く して,日 本 の 経 済 成 長 に と って 輸 出 が 大 きな 貢 献 を した で あ ろ う こと は推 測 に難 くな い。 しか し,

原 稿 受 領 日1984年9月17臼

本 稿 に お け るデ ー タ は 日 経 総 合 経 済 フ ァ イ ル(い わ ゆ るNEEDS・ マ ク ロ ・デ ー タ 。フ ァ イ ル)で あ り,SPSSを 用 い て 図 表 の デ ー タ を 計 算 し た 。

〔79〕

(2)

80 第35巻 第2。3号

この ことは輸 出が主 た る成 長 源 泉 で あ った,と い うこ と と は必 ず し も関 係 な い 。 戦後 日本 経 済 の発 展 に 限定 す れ ば,国 際 収 支,と くに 経常 収 支 の黒 字 基 調 が 定 着 した の は1960年 代 後 半 に入 って か らで あ る。 そ れ ま で は,好 況期 に は 国際 収 支 が 赤 字 とな り,不 況 期 に は 黒字 とな ると い う関 係 が あ り,「 収 支 の 天 井 」 が 存在 した 。 この 頃 か ら 日本 経 済 は輸 出増 大 を 通 じて 総 需 要 を 拡 大 し,成 長率 を 高 め て い る と して,日 本 経 済 は 「輸 出主 導 型 成 長 」 パ タ ー ンを た ど って い る

と主 張 され は じめ た 。 つ ま り,輪 出主 導型 成 長 は有 効 需 要 の 創 出 を 海 外 に 求 め る以上,わ が 国 は 貿 易相 手 国へ の 「失 業 の 輸 出」 を行 って い る と して,経 済 運 営 の 仕 方 を 非 難iする声 が 諸外 国 で高 ま った。 た しか に,不 況 期 の 輸 出 拡 大 は 日 本 経 済 に と って 一 種 の 景気 自動 安 定 化 装 置 の役 割 を果 す 。 こ の失 業 の 輸 出 は 海 外 経 常 余 剰(輸 出 マ イナ ス 輸 入)に 関係 す るの で あ る。

と こ ろで1973年 来 の 第1次 石 油 危 機 以 降世 界 景 気 は低 迷 し,そ れ まで の 世 界 経 済 の 順 調 な拡 大 とは 事 情 が異 な って きて い る。近 年 の貿 易 摩 擦 は以 前 の それ と同 じ く,特 定 産 業 で お こ る,と い う点 で は ミク ロ的 な 現 象 で は あ るが,総 需 要 の 停 滞,失 業 の 増 大 とい った マ ク ロ的 な 背景 が 貿易 摩 擦 を よ り激 化 させ て い る と い え よ う。 不 況 期 の 輸 出 ドラ イ ヴが 日本 経 済 で 固有 に作 用 す る背景 と して しば しば 指 摘 され る こ と は 日本企 業 の 自己 資本 比 率 が低 く,し た が って 外 部 借 入 に対 す る利 子 負 担 が 大 き く,そ の 上 終 身 雇 用 制 を慣 行 と して い るた め,操 業 短 縮 や レイ オ フが 困 難 で あ る こ と,等 で あ る。 不 況 期 に は過 剰 労 働 力 が 生 じ, 内需 が 不 振 の と き に は その 結 果生 じる過 剰 生 産 物 の は け 口 を 輸 出 に求 め ざ るを 得 な くな る。 そ の上,景 気 安 定化 対 策 と して 財 政 政 策 は,赤 字 国債 の大 量 発 行

に よ り機 動 性 に乏 し くな って きて い る。

以 上 の よ うに,第1次 石 油 危 機 以 降 の 低 成 長 期 に お い て は,以 前 の 高度 成 長 期 に比 して 輸 出 ドラ イ ヴ の イ ンセ ン テ ィ ヴが 高 ま って い る一 方,輸 出主 導 型 成 長 に対 す る風 あ た りが 強 くな って い る,と 思 わ れ る。 輸 出主 導型 成 長 に関 して は せ い ぜ い1960年 代 の高 度 成 長 期 まで を観 察 期 間 と した 分 析 しか な い。 そ こで 本 稿 は 高度 成 長期 に お け る観 察 結 果 を踏 ま え,低 成 長 期 を含 め て 「輸 出主 導 型 成 長」 仮 説 の検 証 を行 うこ とを 主 た る 目的 とす る。 そ れ に よ り高度 成 長期 と低

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戦後 日本 における輸出主導型成長仮説の再検討

成 長 期 にお け る輸 出 と経 済 成 長 との 関係 が比 較可 能 と な る 。

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H.単 純 な 分 析

ま ずGNPの 伸 び と 輸 出 の 伸 び と の 関 係 を み て み よ う。 名 目ベ ー ス で み る と 表1に み られ る よ う に,名 目GNPに 対 す る 名 目 の 財 ・サ ー ヴ ィ ス 輸 出 の 割 合 は,1965年 か ら1974年 ま で は お よ そ10%か ら11%と か な り安 定 して い た 。 しか し,75年 以 降 は お よ そ11%か ら15%へ と 高 い 水 準 に シ フ ト して い る 。 こ れ を 実 質 べ 一 ス で 見 な お す と,異 っ た 様 相 が う か が え る 。

GNPデ フ レ ー タ ー よ り も 急 速 な 上 昇 す う 勢 を 考 慮 す れ ば,表 に 示 さ れ た 不 変 価 格 表 示 で は,GNPに 占 め る 輸 出 の 割 合 は 循 環 的 な パ タ ー ン を 示 し な が ら

表1GNPと 輸 出 入(1965‑82年)(%) GNPに 占め る 財 ・ GNP に対 する

サ ー ビス の 輸 出割 合 貿 易収支の割合

名 目 ベ ー ス 1975年 価 格 名 目 ベ ー ス 1975年 価格

1965 10.1 7.8 3.5 一1 .7

66 10.6 8.2 1.6 一1 .5

67 9.7 7.8 0.2 一3 .1

68 10.2 8.5 1.1 一2 .1

69 10.6 9.1 1.6 一1 .6

70 10.8 9.6 1.3 一1 .7

71 11.7 10.8 2.7 一1 .1

72

10.6・

10.4 2.3 一1 。6

73 10.0 10.2 0.0 一3 .5

74 10.7 12.7 一 〇.4 一1 .8

75 12.8 12.9 0.0 0.0

76 13.6 14.6 0.8 1.6

77 13.2 14.8 1.7 1.8

78 11.2 14.8 1.8 1.6

79 11.7 14.6 一 〇。9 0.4

80 13.9 16.6 一 〇.9 4.0

8r 15.1 18.3 0.8 6.0

82 14.9 17.9 0.7 5.6

も,す う勢 と して は上 昇 傾 向 に あ る。 と りわ け第1次 石 油危 機 に よ る イ ンフ レ 圧 力 が フル に効 力 を発 輝 しは じめ た74年 以 降 に は そ れ以 前 に はみ られ た循 環 的

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82 第35巻 第2・3号

パ ター ンが ほ と ん ど 消滅 して お り,一 段 と上 昇 が 加 速 され て い る。 か く して,"

す う勢 的 にGNPよ り も輸 出成 長 率 が 高 い,と い う意 味 で は 戦 後 日本 経 済 の成 長 パ タ ー ンは 、低 成 長 期 も含 め 一 貫 して 輸 出 主 導 型 で あ った とい え よ うω 。 し か もそ の 特 長 は 第1次 石油 危 機 以 降 の低 成 長 期 に至 って 顕 著 で あ る。表1に 示

され て い る輸 出 は 財 ・サ ー ヴ ィス の輸 出で あ るが,財 の 輸 出 に 限 定 す れ ば上 昇 す う勢 は よ り明 確 に な るで あ ろ う。

しか し,周 知 の よ うに,輸 入 は 所 得 の もれ で あ り,GNPの 成 長 の マ イナ ス 要 因 と して 作 用 す る以 上,総 需 要 の 拡 大 を つ う じて成 長 刺 激 と な るの は 海 外 経 済 余 剰,す なわ ち貿 易 収 支 で あ る。 か くして経 済 成長 はGNPに 対 す る貿 易 収 支 の割 合 と関 連 づ け られ る。 名 目ベ ー ス で み る限 り,純 輸 出 の増 加 と い う外 部 的 な刺 激 につ いて は っ き り した こ とは 何 もい え そ う もな い。 しか し,不 変 価 格 表 示 で は74年 を境 に して 振 動 しな が ら も,そ れ 以 前 とは局 面 が 異 な る。 少 な く

と もいい うる ことは,低 成長期 に入 って か らは 総 需 要 の 構 成 要 素 と して ポ ジテ ィ ヴな貢 献 を 純輸 出が な して い る点 で あ る。 もっ と もそ の大 き さは,さ ほ ど大 き くは な い の で余 り強調 で きな い。

とは い え,輸 出や 純輸 出 の対GNP比 率 が 上 昇 傾 向 を 示 して い るか ら とい っ て,日 本 の 戦 後 の経 済成 長が 輸 出主 導 型 で あ っ た,と 結 論 づ け る こ とは で きな い。他 の 総 需 要 構 成 要素 の ウ エ イ トを観 察 しな けれ ば,何 と もい え な い 。

]皿.総 需 要 と 輸 出

表2は67年 〜81年 に わ た って 総 需要 の構 成 動 向 を示 した もので あ る。 政 府 投 資(IG)や 民 間 設 備 投 資(lp)は 循 環 的 な パ タ ー ンを え が き,さ して 顕 著 な動 き は して い ない 。 しか し,総 需 要 の 過半 を 占 め る個 人 消 費(Cp)と 政 府 消 費(CG)の ウ エ イ トは 長 期 的 に 低下 傾 向 に あ るこ とが 知 られ,そ の す う勢 は第1次 石 油 危 機 以 降 と くに 顕 著 で あ る。 そ れ とは対 照 的 に輸 出 の総 需 要 に 占

(1)1965年 以 前 につ いて は ク ラ ウス ・関 日[1976]P.18,表8‑6参 照 。 日 本 経 済 が 戦 後 経済 復 興 期 間 をへ て 戦 前 の 工 業 生 産 水 準 を 回 復 した と い われ るの が1955年 頃 で あ るか ら,本 稿 で い う戦 後 とは55年 以 降 を さ す 。

(5)

戦後日本 における輸 出主導型成長仮説の再検討

表2総 需 要 の 構 成(1967‑81年) (%)

83

Cp Cg Ig Ip X

1967 56.0 11.3 8.0 15.2 8.3

68 57.5 10.7 8.0 16.7 8.7

69 56.6 10.3 8.6 17.6 9.2

70 55.9 9.9 9.0 18.0 9.8

71 55.8 9.6 9.3 18.4 10.1

72 56.0 9.5

9ち5

18.3 10.9

73 56.3 9.6 9.7 17.5 11.6

74 56.4 9.6 9.5 17.0 12.4

75 56.3 9.7 9..3 16.0 13.5

76 56.2 9.8 9.5 16.0 14.2

77 55.8 9.7 9.7 15.8 14.7

78 55.0 9.6 9.7 16.0 15.0

79 54.5 9.6 9.8 16.3 15.7

80 53.7 9.5 9.6 16.7 16.0・

81 53.1 9.5 9.3 17.0

(注)Cp:個 人 消費,Cg:政 府 消費,Ig:政 府 固定投 費Ip:

住宅投 資を除 く民間固定投 資,X:輸 出,1975年 価格 表示 系列の5力 年移動平均値。

め るウ エ イ トは上 昇 す う勢 を え が き,と くに そ の上 昇 は第1次 石 油 危 機 以 降 著 しい 。 換 言 す れ ば 内需 の ウ エ イ トの低 下 に か わ って 外 需 の ウ エ イ トが 増 大 し, 第1次 石 油 危機 以 降 は 内需 の 不 振 が 外 需 の 増 大 に よ りカ バ ー され て い るふ しが あ る。

こ う した 石 油 危機 以 前 と以 降 の期 間 で の 差 異 は,GNP成 長 に 対す る各 需 要 構 成 要 素 の 貢 献 度 に 目 を移 す と一 層 明 瞭 に な る。 図1は 実 質GNP成 長率 と そ の 寄 与 度 の 内 訳 を61〜81年 につ いて 示 した もの で あ る。

容 易 に 知 れ るの は,73〜74年 を は さん で 前 後 の 期 間 で は 実 質GNPの 変 化 の 説 明 要 因 の 内 容 に相 異 が み られ る こ とで あ る。 そ れ以 前 の 期 間 に つ いて は,実 質GNPの 変化 の ほ と ん ど は 内需 の変 化 を 反 映 して い るの に 対 して.そ れ 以 降 内 需 の ウ エ イ トが 大 き く減少 して い る。 な かで も内 需 の 主 要 構 成 要 素 で あ る民 間設 備 投 資 に かわ って 外 需 の寄 与 率 が急 速 に増 大 して い る。

こ れ まで 表1,図1の 観 察 事実 に 基 づ い て経 済 成 長 プ ロセ ス にお い て 輸 出成

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84 第35巻 第2・3号

'

% 15 (

凪藤

N〆 内需

部 は 外需 が 増加 皿田部 は民 間 企業 設 備

投 資 が増 加

616263646566676869707172737475767778798081(年 度)

図1.実 質GNPの 推 移(1961〜81年) (資 料)経 済 企 画 庁 「国 民 経 済 計 算 年 報 」 等

(注)た だ し,40年 度 以 前 は 旧SNAの 計 数 で あ る 。

長 が い か な る役 目を にな って い た か を 考察 して き た。GNPよ り も輸 出 や 純 輸 出が よ り急 速 に 拡 大 した こ とは成 長 の 刺激 が国 内源 泉 に よ る もの か,外 部 か ら 支 え られ た もの か の 区 別 とは 無 関係 で あ る。 しか し,総 需 要 の 構 成 内 容 に 関 す る時 系 列 デ ー タ に よ れ ば,第1次 石 油 危 機 以 降 経 済成 長 プ ロセ ス にお け る輸 出 の重 要 性 は増 して い る と いえ よ う。

実 際民 間 設備 投 資 に よ る生 産 性 の 向 上 の 結 果,国 際競 争 力 が 強化 され 輸 出 の 増 大 が 実 現 され るプ ロセ ス は レア ・ケ ー スで は ない 。 だ とす れ ば,国 内源 泉 と 外部 か らの成 長の刺 激 を 明 瞭 に 区 別で き る もので は な い。 例 え ば,金 森[1967]

は,1955〜64年 の 期 間 に焦 点 を合 わせ,設 備 投 資 成 長率 の 高 い 産 業程,輸 出成 長 率 も高 い とい う経 験 的 事実 を明 らか に して い る。 ケ イ ヴズ[1970]は,民 設 備 投 資 な どに よ る生 産性 上 昇 に よ って輸 出が 拡 大 し,そ の 結 果 乗数 効 果 をつ う じて 所 得 成 長 が お こ る よ うな 成 長 パ ター ンを輸 出加 速 成 長(export‑asslsted

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戦後 日本 におけ る輸出主導型成 長仮 説の再検討 85

grOwth)と よ び,成 長 の 始 発 的 な 刺 激 が 外 国 か ら 与 え ら れ る よ う な 成 長 を 輸 出 主 導 型 成 長(export‑1edgrowth)と 定 義 し,両 者 を 区 別 した 。 し か し,い れ に せ よ,純 輸 出 とGNPと の 成 長 関 係 は,理 論 的 に は 予 測 で き な い こ と を 成 長 モ デ ル を 用 い て 証 明 し て い る 。

IV.成 長 源 泉 の 簡 単 な 識 別 テ ス ト

経 済 成 長 の 源 泉 が 国 内 要 因 に よ る もの か,対 外 要 因 に よ る もの か を じか に識 別 す る こ と はか な りや っか い で あ る。 しか し,輸 出成 長 の 源 泉 が 国 内 要 因 に よ る もの か,そ れ と も対 外 要 因 に よ るか を 識別 す る こ と は さ して む ず か しい こ と で は な い 。

ケ イ ヴ ズ[1971]は,輸 出 成 長 の外 的撹 乱 と 内的 撹 乱 要 因 とを 区 別 しう る簡 単 な テ ス トを 示 唆 した 。 す な わ ち,も し この撹 乱 が 外 国 事 情 に基 因 す る もの で あ れば,価 格 と数 量 の 変化 関係 は 正 の 相 関 を示 す はず で あ る。 他 方,も し この 撹 乱 が 国 内供 給 の シ フ トに 由 来 す るの で あ れ ば,こ の相 関 関係 は負 とな るで あ

ろ う。

そ の検 証 結 果 に よ れば,60年 代 の 大 部 分 の 期 間,日 本 の経 済 成 長 は明 らか に 輸 出主 導 型 で は な い。 実 際,輸 出 価 格 指 数 は70年 を100と す る と,61年 に92.0 で あ り,68年 に お いて も93.9に とど ま っ た に もか か わ らず,輸 出数 量 は23.2%

の増 加 をみ た。 もっ と も68〜71年 にか けて は 輸 出 数 量,価 格 と もに上 昇 し,な お か つ経 常 収 支 の黒 字 が 増 大 した 。 この 簡 単 な テ ス トに よ れ ば,68〜71年 の 期 間 に 限 って輸 出主 導 型 成 長 と いえ る と結 論 され る。

ヶ イ ヴズ の行 った の と 同 じテ ス トを74〜83年 の 期 間 を 対 象 に して 適用 した結 果 は,有 意 水 準 に 達 しな か った。 したが って 戦 後 の 日本 の 経 済 成 長 は 輸 出主 導 型 で あ った とは いえ な い 。 この よ うに輸 出主 導 型 成 長 と い って も極 め て 短 い 期 間 に しか妥 当 しない 以 上,成 長 プ ロセ ス に お いて 生 じる もの で な く,輸 出 ドラ ィ ヴ の よ うに景 気 循 環 局 面 で 観 察 され る程 度 の もの で しか な い。

(8)

86 第35巻 第2・3号

V.景 気 循 環 と輸 出

輸 出主 導 型 成長 が戦 後 日本 経 済 の 成 長 を一 般 的 に特 長づ け る概 念 で な い こ と は も はや 明 らか で あ る。 だ か らと い って 経 済 成 長 に お け る輸 出 の役 割 を無 視 す る訳 で は な い 。 日本 の経 済 構 造 上,原 材 料 の 確 保 や 内 需 の不 振 を カバ ーす る等 マ ク ロ的 な貢 献 を 過小 評価 して は な らな い。 第 皿節 で な され た 考 察 は,投 資 と 輸 出 が 需 要 面 で 補 完 的 な役 割 を果 し う るこ と を示 唆 して い る。 そ こで本 節で は

輸 出 主 導 型 成 長 」 仮 説 と 並ん で 日本 の貿 易 と国 内経 済 活 動 との 関 係 を 指摘 す る 「輸 出 ドラ イ ヴ」 仮 説 に 検 討 を加 え る こと にす る。

もっ と も輸 出 ドラ イ ヴ と輸 出 主 導 型 成 長 は,概 念 上 明 確 に区 別 され な い で 用 い られて い るき らいが あ る。 しか し,こ こで は輸 出主 導 型 成 長 は成 長 の 源 泉 を め ぐる成 長 の本 質 にか か わ る概 念 で あ り,輸 出 ドライ ヴ は確 か に派 生 的 な 概 念 か も知 れ な いが 、 景 気 循 環 にか か わ り,成 長 との 関連 で は安 定 的 な成 長 を導 く 性 格 の もの で あ る と規 定 して お く。 輸 出 と経 済 成 長 との 関係 を生 産 関 数 に着 目 して,い か に輸 出が 経 済 成 長 の 要 因 で あ る要 素供 給量 や 労 働 生 産 性 。技 術 な ど の 変化 と結 び つ くか,興 味 深 い分 析 が ケ イ ヴ ズ[1971コに よ って展 開 さ れて い る 。

と もあ れ,輸 出 ドラ イ ヴ とは,不 況 期 に輸 出 が 拡大 す る とい った具 合 に国 内 の 景気 循 環 に 嘩応 した輸 出 の動 きを 意 味 し,輸 出 が企 業 の 戦 略 変数 的 な性 格 を お びて い る こ とを 示 唆す る。 戦 後 日本 の 経 済 成 長 の 局面 で 輸 出 ドライ ヴ現 象 が 生 じた か否 か に対 す る答 え は図2に 示 され て い る。 図2は 総 需要 の増 加 分 に対 す る投 資 と 輸 出構 成要 素 の寄 与 率 を 示 す 。

まず 既 に示 した 図1か らは,総 投 資 とGNP成 長 率 が類 似 した循 環 パ タ ー ン を え が い て い るこ と が読 み とれ よ う。 な かん つ く,民 間 設 備 投 資 の 寄与 率 がG NPの 成 長率 と ほ と ん ど完 全 に近 い連 関 を もって 動 い て い る こ とに気 が つ く。

第1次 石 油 危 機以 降 そ の連 関の 程 度 は弱 ま る にせ よ,打 ち 消 され て は い な い 。 GNPの 成 長 率 が民 間 設備 投 資 の動 き に左 右 され る以 上,こ の 期 間 の 日本 の経 済成 長 は 輸 出主 導 型 の 証拠 を示 さず,む しろ投 資 主 導 型 成 長 で あ ると もい え よ

う。

(9)

(%)

・200

150

100

50

0

一50

一100

一200

戦 後 日本 における輸 出主導型成長仮説の再検討

(%)

∠V T

87

1968697071727374757677787980

図2.総 需 要 の成 長 率 と構 成 要 素 の 増 分 寄 与 率:投 資 と輸 出(1968〜80年) (注)V:総 需 要,、1:投 資,4:対 前 年 増 分,1975年 価 格 表示 系 列 の対 前 年 増減 率 の

5力 年 移 動 平 均 値

しか し,図2に 目を転 じる と,総 需 要 成 長 に対 す る輸 出 の 寄 与 率(∠X/4 V)と 総 需 要 の成 長(JV/V)と の 関 係 は 明 瞭 で は な い 。68〜71年 の 期 間 で は 両者 の 関係 は 負 で あ り,71〜80年 の期 間 で は対 照 的 に 正 の 相 関 関 係 に あ る。

しか し,こ れ らの こ とか ら総 需 要 成長 に お け る輸 出 の 役 割 を 明 示 的 に 評価 しな い こ とは 誤 りで あ る。77年 以 降 は さて お き,輸 出の 寄 与 率 と投 資 の 寄 与 率 の 動 きは,お お む ね 負 の 相 関 関係 を示 して お り,総 需 要 成 長 に お いて,輸 出 と投 資 が 補 完 的 な 役 割 を 果 す こ とを 物 語 って い る。 そ して この補 完 関係 が 第1次 石 油 危 機 前 後 に極 め て 強 く発 輝 され て い る こ とは 注 目に値 しよ う。 こ の時 期 は総 需 要 の 著 しい減 退 を 迎 え て い るが,国 内 需 要 の 減 退が 輸 出 に よ って か な り支 え ら れ た事 実 が 浮 ぴ あが って くる。

戦 後 高 度 成 長 期 と低 成 長 期 に お け る動 向 の 差 異 を よ り明確 にす るた めに 示 し

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88 第35巻 第2・3号

た のが図3で ある。 この1907〜65年 に わた る戦 前 ・戦 後 を 通 じる長 期 時 系 列 デ ー タ に基 づ く研 究 成 果 に よ れ ば,41〃Vと4V/Vと が パ ラ レル に動 くす う勢 が全 期間 にわ た ってみ られ るが,4X〃Vと4V/Vが 連 動 す る明 瞭 な動 きは, 第1次 大 戦 当時 以 外 はほ とん どみ られ な い 。

次 に 重 要 な発 見 は,戦 後 は 戦前 に比 して 輸 出 の寄 与 率(∠X/4V)は 明 ら か に低 下 して い る点 で あ る。 わ れ わ れ の観 察 結 果(図2)に よれ ば,輸 出 寄与 率 の低 迷 は さ らに71年 頃 まで つづ くが そ の後 第1次 石 油 危 機 をつ う じて 急 速 に 上 昇 し(∠V<0に 注 意),石 油 危 機 の マ ク ロ的 影 響 が収 縮 した 後 も か つ て の 低 い水 準 に戻 って いな い 。

要 す る に,総 需 要 の 変 化 に 輸 出 が大 きな 役割 を果 した の は む しろ戦 前 で は あ るが,第1次 石 油 危 機以 降 国 内需 要 が低 迷 す る中で 近 年 低 成 長 期 に あ って も需 要 面 で の輸 出の 役 割 が 戦 前 水 準 に ぜ ま る ほ どに 急 速 に 高 ま って い るこ とが 強調 さ れ る。 そ れ は 」X〃Vと ∠1〃Vと の乗 離 幅が 戦 前,戦 後 の高 度 成 長 期 に 比 して 低 成 長 期 に お い て せ ば ま って い る こ とか ら も裏 付 け られ る(図2と 図3

を あわ せ て 参 照)。

% 60

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図3.総 需 要 の 成 長 率 と 構 成 要 素 の 増 分 寄 与 率:投 資 と 輸 出(1907〜65年)

,(注)V=総 需 要,1=投 資,X=輸 出,4=対 前 年 増 分

(資 料)大 川 ・ロ ソ フ ス キ ー[玉973],P.171

(11)

戦後 日本 にお ける輸出主導型成長仮説の再検討 89

VI.結

輸 出 主 導 型 成 長 は 様 々 な形 で定 義 ぎれて は い る。 諸 概 念 を 第1次 石 油危 機 以 降 の 低 成 長 期 も含 め て 日本 の 戦前 ・戦 後 の 成長 経 験 にて ら しあわ せ て 検 討 した 結 果 を 要 約 す れ ば次 の様 で あ る 。

第1馬に 輸 出 数 量 と輸 出価 格 に関 す る簡単 な テ ス トに よ れば,戦 後 の 高度 成 長 期 は お お む ね 輸 出 主 導 型 成 長 で は な い 。 た だ し,68〜71年 の短 期 間 に つ い て は 輸 出 主 導 型 成 長 で あ った とみ なせ る。 輸 出 と総 需 要 との ゑ か わ りは,景 気 循 環 の 局 面 で 生 じ る もの で あ る。

第2に 第1次 石 油 危機 以 降近 年 需要 面 で の輸 出 の 役 割 を重 視 しな け れば な ら な い 。 最 近 で は 輸 出 は 投 資 に 匹 敵 す る需要 要 因 と な って きて い る 。

第3に 第i次 石 油 危機 当 時 に あ って は極 め て 強 く輸 出 ドライ ブが 作 用 し,景 気 安 定 化 に 輸 出 が大 き く貢献 した 。.

引 用 文 献

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88.・

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東 洋 経 済 新 報 社,1973;169‑202.

参照

関連したドキュメント

『台灣省行政長官公署公報』2:51946.01.30.出版,P.11 より編集、引用。

このように資本主義経済における競争の作用を二つに分けたうえで, 『資本

[r]

八幡製鐵㈱ (注 1) 等の鉄鋼業、急増する電力需要を背景に成長した電力業 (注 2)

一方で、平成 24 年(2014)年 11

12‑2  ‑209  (香法 ' 9

( (再輸出貨物の用途外使用等の届出) )の規定による届出又は同令第 38 条( (再輸 出免税貨物の亡失又は滅却の場合の準用規定)

日本への輸入 作成日から 12 か月 作成日から 12 か月 英国への輸出 作成日から2年 作成日から 12 か月.