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(1)

−国労組合員採用拒否・不当労働行為事件を通して−

柳澤旭

〈目次〉

一不当労働行為救済申立事件の背景 二国鉄改革と清算事業団職員

三国鉄改革法による国鉄職員の「振り分け」と法的問題点 四採用拒否と救済方法としての現状回復

五各地労委の救済命令にみる救済方法

はじめに

1987(昭和62)年4月1日に国鉄が分割・民営化されてから早くも二年近 く経過した。国鉄改革,分割・民営化のもたらしたものは何であったのか。

このことについて,政治・経済・社会的にも,また労使関係,労働運動の側 面,さらに公共交通の安全性・サービスなど,様々な側面から今後とも問わ

(1)

れ続けなければならない。

現在,全国各地の労働委員会を舞台にして,労働委員会制度,はじまって 以来の多数の国労申立に係る不当労働行為救済申立事件が係属している。今 日までに各地労委において,重要な救済命令が次々と出され,今後とも同様 の救済命令が続いて出されるであろう。このことは,国鉄改革の狙いの一つ が国労の分裂・弱体化にあったこと,その事実を公的機関を通して明らかに されつつある過程であるといってよい。

本稿の目的は,国鉄の分割・民営化にともなう,国労所属組合員の新会社

(2)

への「採用拒否」について,労働法上の問題点を検討することにある。

(2)

不当労働行為救済申立事件の背景

国鉄「分割・民営化

J

の目的は,財政的見地からする鉄道事業の再建を図 ることにあるとされたが,一方で,戦後労働運動の中で大きな役割を果して きた国鉄労働組合 (国労)を「つぶす

J

(分裂・弱体化をはかること)をも 狙ったものであることも否定し難い事実である。それゆえ,分割・民営化に 向けての準備過程やその移行時期,さらに移行後においても,国労とその所 属組合員に対する攻撃は止むことなく継続し,分割・民営化後もより徹底し たものとなっている。

この間の事情は,分割・民営化の準備段階においては,いわゆる「人活セ ンター」に典型的にあらわれているように,国労組合員を集中的に隔離・収 容し,無意味な「作業」をやらせ,新会社の移行に際しては,国労組合員に 対する露骨な「採用差別」が行われ,不採用者を新人活センターともいうべ き「清算事業団」に送り込み,さらに移行後の

]R

各社において,鉄道輸送 に係る基幹業務から国労組合員を徹底的に排除する「配属差別」などに典型 的にあらわれている。

これらの国鉄,新会社による国労攻撃に対し,国労は国家法(憲法,労働 法)に依拠し,その違法,不当であること,そして労働者の人権を確保する ため,まず全国各地の地労委に国労差別事件の救済申立を行った。

地労委に申立てられ係争中の事件は,

1988(

昭和6

3)

10

月現在で延べ2

03

件 となっており,申立事件の内容は,採用,配属,配転,出向における「差別

=不利益扱

L

、」事件が大半を占め,その他に,組合脱退強要,組合パッヂ,

組合事務所・掲示板などに係る事件など多様となっている。このような申立 件数と事件内容の多様性それ自体,国鉄「分割‑民営化」に際して,いかに 多様な手段で不当労働行為が行なわれているのかを示すものといえよう。

そして,これらの申立てに対し

1988

(昭和6

3)

年1

2

月現在で,既に

8

件 の救済命令が出されており,既に結審している地労委の審理に照らすとき,

今後,次々と救済命令が出されるものと思われる。

これらの既に出された救済命令の内容については,本稿のおわりで若干の

(3)

検討を行うが,ここで

8

件の救済命令の事件内容のみを掲げておく。

①東京地労委命令(昭6

3. 2.  16)

脱退強要,担務差別,②秋田地労委 命令(昭6

3. 5.  24)

掲示板徹去,③千葉地労委命令(昭6

3. 7. 29) 

配転・出向,①神奈川地労委命令(昭6

3. 10.  20)

配属差別,⑤神奈川地 労委命令(昭63.1 1 .

4)

配属差別,⑤大阪地労委命令(昭6

3. 1

1 .  

28) 

=採用差別,⑦神奈川地労委命令(昭6

3. 12.  16)

採用差別,③中労委命 令(昭6

3. 12.  28)

①事件の再審査,についての命令であり,いずれも不 当労働行為(労組法

7

1

号および

3

号)を認め救済命令を出している点に おいて共通する。

これらの地労委救済命令の中で,①は2

00

件に及ぶ国労の申立事件に対す る初めての救済命令であり,①は配属差別,⑥は採用差別についての初めて の救済命令であり,③は JR 東日本の再審査申立を棄却した初めての中労委 命令であり,それぞれ重要な意義を有するものである。

国鉄改革と清算事業団職員

国鉄がぼう大な債務を抱え,事業経営が破綻したとの認識をもとに,従来 の公社形態による全国一元的経営体制では破綻した国鉄の再建は困難である から,新たな「効率的な経営体制を確立」することを目的として国鉄改革,

すなわち「分割・民営化」が実施された(改革法 1条 ) 。

国鉄はこの改革により

11

の承継法人に「分割」され,経営形態が変更(民 営化=株式会社として発足)されるとともに,国鉄はその法人格を「清算事 業団」に移行した。

国鉄の分割‑民営化にともない国鉄職員の大半は,当然、のことながら承継 法人(新会社)に承継されることとなったが,新会社に承継されず清算事業 団に移行した者も少くない。)この改革法にもとづく国鉄職員の「振り分け」

によって生じる両者の身分・労働条件についてみると格段の,というより質 的な相異があることにまず留意する必要がある。承継法人の職員は,労働条 件や組合間差別について多くの問題があるにせよ,従来の鉄道関連業務に就

き一定の身分と労働条件を保障されている。

(4)

これに比べ清算事業団の職員は従来の業務から外され,三年の間に再就職 先が見つからない場合は,清算事業団からも排除され解雇されるかも知れな いという不安定な地位に置かれている。いわゆる「再就職促進法」によれば,

国の策定する清算事業団職員の「再就職促進基本計画」は,

1

移行日から三 年内に…,すべての職員の再就職が達成される内容のものを定めなければな らない j

(1

4 条 3項)とされているものの,具体的保障に欠ける努力規定に しか過ぎない。三年内に再就職をという意味は「この法律は,昭和

65

4

1日限り,その効力を失う」とされる時限立法のためである(附則2

条 ) 。

さらに賃金については,基本給の保障はあるものの定期昇給はなく,従来 の鉄道業務に従事していたならば得られる乗務手当などの諸手当は一切支給 されず,かなりの収入減となり家族の生活水準を切り下げることを余儀なく されている。

いったい清算事業団職員の仕事,業務とはいかなるものか。清算事業団法 によれば,事業団の業務は承継法人に承継された後の,国鉄の残余の債務や 資産の清算業務と職員の再就職促進業務を行うものとされる(1条,なお改 革法1

5

条以下参照)。

職員の中でも,清算事業団本来の清算業務に従事しない者

(1

臨時に,そ の職員のうち再就職を必要とする者」清算事業団法

1

条 ,

1

再就職を必要と する者として指定した職員」再就職促進特別措置法

14

1

項)は,従来の鉄 道業務から外され,自己の再就職を促進し三年内に清算事業団から退職でき る条件をつくるのが業務とされている。誠に世にも稀な業務とされる所以で ある。

仕事の内容は「朝,タの点呼以外は自学自習 j ,配られたプリントをみる か,教育ビデオを見せられるだけで実質的な再就職のための教育はなされて いないのが実情である。国鉄労働者としての技術・能力を日々,無為にさせ るのが目的の事業団という他ない。これではとうてい「三年内にすべての清 算事業団の職員の再就職が達成されるような内容 j (再就職促進特別措置法

14

3

項)の再就職促進業務といえるものではない。

以上のように,承継法人の職員となった者と比べて清算事業団職員は労働

(5)

条件等の「経済的」側面のみならず「精神的」側面においても,重大な不利 益を被っているのである。

三 国鉄改革法による国鉄職員の「振り分け J と法的問題点

( ー )

改革法による採用手続

国鉄の承継法人たる新会社への職員の採用は,通常の労働者の採用とは形 式的にも実態的にも異なるものがある。

改革法による新会社への職員採用は以下のような複雑な方法・手続をふむ ことになっている。

まず採用手続の前段階である「募集」については,①運輸大臣が「基本計 画」を作成し,その中で国鉄職員のうち「承継法人の職員となるものの総数 及び承継法人ごとの数」を定め(1

9

2

3

号)②各承継法人ごとに運輸大 臣が任命する設立委員が,国鉄を「通じその職員に対し,それぞれの承継法 人の職員の労働条件及び採用の基準を提示して」募集を行う (231)

次に募集に応じた職員の「選定と採用」の手順につき,①国鉄は承継法人 ごとに,その職員となることに関する「意思を確認しJ,①その職員となる 意思を表示した者の中から「採用の基準」に従って「職員となるべき者を選 定し,その名簿を作成して設立委員等に提出するJ(232項),①その名簿 に記載された国鉄職員のうち,設立委員から「採用する旨の通知を受けた者」

が「承継法人の職員として採用されるJ(233)

⑤以上の職員の採用について, [""設立委員がした行為及び…設立委員に対 してなされた行為は,それぞれ当該承継法人に対してなされた行為とする」

(235)

改革法に定められている,以上のような新会社への国鉄職員の採用手続は,

形式上,国鉄を退職し承継法人に採用されるという方式がとられている。し かしその実態は国鉄職員が承継法人に承継・移行してし、く手続,すなわち,

新会社による採用と清算事業団への振り分けを規定したものである。

国鉄職員の承継法人への移行に際し,所属組合等による差別・選別的振り 分けが危倶されたため,当然のこととはいえ, [""差別等が行われることのな

(6)

いよう,特段の留意をすること」と国会において,わざわざ注意を換起した ものである。

ところが,採用内定者が公表され,その結果不採用となり清算事業団職員 とされた者は「分割・民営化」に反対の方針を貫いた国労所属の組合員に集 中していることが明白となった。

承継法人による国鉄職員の採用拒否はなんら肯定できる合理的理由は存せ ず,不当労働行為に該当するとして,国労所属組合員を中心に全国各地の地 労委で,その救済命令を求めて申立がなされた。ところが全国各地の地労委 での審問が開始されるや,被申立人である各承継法人は,申立を却下すべき との主張のみを行い,その後の審問への出席を一切拒否するという異例の態 度をとるに至った。長崎地労委においても

JR

九州は同様の態度をとり続け 結審に至った。

被申立人である

JR

各社が却下を求める理由は,以下の三点にある。そこ でこの三点の理由が労働基本権の保障を具体化する不当労働行為制度とその 法理に照らし,全く根拠のない主張であること,そして被申立人である

JR

各社の新会社に採用差別についての責任が帰せられること,すなわち新会社 は不当労働行為主体たりうる使用者であること,新会社が救済命令の名宛人 であることについて,以下検討する。

被申立人である新会社が主張する却下の理由は,次の三点にある。

第一に,国鉄,承継法人の設立委員および承継法人たる新会社は,法律上 まったく異なる法人格であり,各法人の性格や雇用関係,事業内容も異なっ ている。新会社への採用は改革法

232

項にいう国鉄の名簿に登載された者 の中から選定したものであり,その名簿の作成は国鉄の責任と判断でなされ たもので,新会社はこれに関与していない。したがって,採用に係る国鉄の 行為の責任を,承継法人たる新会社が関われるいわれはない。

第二に,新会社の職員採用は改革法の手続により,まず国鉄の名簿に登載

され,つづいて設立委員から採用通知を受け取ることが不可欠の要件となっ

ている。改革法所定の要件を充たさない者について,労働委員会が新会社へ

の採用命令を出すことは法律に抵触し,その載量の範囲を超えるものであり,

(7)

許されない。

第三に,企業には採用の自由が保障されており,かりに不当労働行為とさ れる採用拒否があったとしても,現行法制度上,雇用関係を設定する救済命 令を出すことは許されない。

以上の三点にみる被申立人たる新会社の主張は,労働基本権を保障する憲 法2 8条とそれを具体的に保障する不当労働行為制度の趣旨を理解しないもの であり,改革法

19

条 ,

23

条についての形式論的な法解釈といわざるを得ない。

以下においてその理由を被申立人の主張に即して述べることとする。

( ニ ) 国鉄と承継法人との関係

承継法人である新会社への職員の採用は,既にみたように複雑な手順,方 法を経ることになっている。ところで改革法

23

5

項は,新会社の設立委員 がした行為および設立委員に対してなされた行為は,それぞれの承継法人に 対してなされたものと規定する。この規定は一般の株式会社設立の場合,設 立中の会社の発起人がした行為は,当然に設立会社に帰属するとの法理を,

国鉄改革にも適用するために明文化したものとみることができる。その行為 には違法な行為も含まれ,設立後の新会社は違法行為の責任を負うこととな る。したがって国鉄改革の一連の過程において,新会社の設立委員のした行 為は,当該承継法人たる新会社の行為とされその行為の責任は新会社に帰属 することになる。これが改革法

23

5

項の趣旨である。

そうすると,新会社の採用に関して国鉄のした行為を設立委員の行為と見 看すことができるであろうか。換言すれば,国鉄のした違法行為(不当労働 行為)が設立委員(=承継法人)の行為として把握できるのかが問題となる。

この点について,国鉄の行為と設立委員の行為とを同一視することができる ならば,承継法人たる新会社は,国鉄のした違法行為の責任を自らの責任と

して問われざるを得ないこととなる。

国鉄改革関連諸法の成立後,承継法人(新会社)の発足するまでの間,国 鉄は従来の業務を遂行することと併行して,新会社の設立準備を進め,その 一環として新会社の職員採用のために国鉄職員の選定作業を行った。

この国鉄職員の選抜は,設立委員の設定した「採用の基準

J

を国鉄職員に

(8)

提示し,それに応じた者の中から,国鉄が「採用の基準」に従い選択したも のを名簿に登載し,この名簿を設立委員に提出したものである。

そしてこの名簿は1987(昭和63)

28日に提出され,同212日に設 立委員会が聞かれ即日,名簿登載者全員の採用が決定された。そして採用内 定者に対し2月16日までに国鉄を通してその決定が通知された。また国会の 審議過程で明らかになったことは,国鉄の名簿作成は,法的には設立委員が 行う採用業務の「準委任」ないし「代行」であるとされ,国鉄の名簿登載す なわち採用であると説明された。

このように実際には設立委員は,採用基準を作成し形式的に採用通知を発 したものの,採用業務の核心部分たる募集・選抜については,すべて国鉄に 委ねたものであった。国鉄の行った職員の募集・選抜は事実上の採用決定で あり,設立委員は国鉄の行為の結果を自らの名において, i採用通知」を通 して追認したものに過ぎない。したがって,国鉄の行った職員の選抜行為の 効果はすべて設立委員に帰属し,設立委員の行為と同一視し得るものであ

以上のことから,改革法にもとづく国鉄による名簿の登載(=採用),未 登載(=不採用・採用拒否)に係る行為は,国鉄が独自の判断と責任で行っ たものであり,設立委員ひいてはその承継法人(新会社)がその行為の責任 を問われるいわれはない, との新会社の主張は法的にも認める余地はない。

もし改革法の趣旨が,国鉄,設立委員,承継法人(新会社)の三者に,採 用に係る権限を配分することにより,国鉄の不当労働行為責任を免れさせる ことを意図したものとすれば,改革法の諸規定は憲法28条に違反し,不当労 働行為を法律をもって容認するもので「国家的不当労働行為」といわざるを 得ない。既にみたように,改革法

2 3

条の趣旨はそのようなものではないこと は明らかである。改革法の諸規定は労働基本権保障の趣旨に即して解釈・運 用されなければならないのである。

(司設立委員の不当労働行為責任

憲法の労働基本権保障の趣旨と改革法所定の採用手続に照らし,設立委員 は国鉄の採用差別の不当労働行為責任を自ら負う立場にあるだけにとどまら

(9)

ず,設立委員自身の不当労働行為責任も生じる。

国鉄は,分割・民営化に反対し労使共同宣言を締結しない組合を露骨に嫌 悪する姿勢を示していた。この間の事情は,いわゆる「人活センター」への 国労組合員の集中的収容や配置換えなどにあらわれている。また改革法の審 議の席上,当時の国鉄総裁は,口では所属組合によって差別しないと言いつ つも,労使共同宣言を結べないもの,あるいはそれに反対である組合に対し て「私ども信頼を持てません」と公言さえしているのである。

このような国鉄の国労組合員に対する露骨な嫌悪の姿勢からみて,職員の 選抜・名簿作成に際し組合間差別が行われることが危倶されたのである。そ れゆえ参議院付帯決議において組合間差別のないよう「特段の留意」をする よう要請したのである。この国会決議は形式上は政府,運輸大臣に宛てられ たものであるが,実質的には運輸大臣の任命し採用業務にあたった設立委員 に対するものであった。したがって設立委員は,組合間差別のないように特 段の留意を行うとともに,自らの代行として直接に職員の募集,選抜を行う 国鉄を監督すべき公的責任を負っていたものである。

にもかかわらず,このことに関し設立委員の行ったことは, I 日常の勤務 に関する実績等を,日本国有鉄道における既存の資料に基づき,総合的かっ 公正に判断する」というだけであった。設立委員の設定した採用基準第三項

「在職中の勤務状況からみて,当社の業務にふさわしい者」の判断資料とし た国鉄の「既存の資料」についてそれが客観的かつ公正であるか慎重に検討

した形跡はない。

国鉄在職中の勤務状況からみて, I 当社の業務にふさわしい者」として参 照された「既存の資料」とは,国鉄の「職員管理調書」である。しかしそれ は決して「客観的かつ公正なもの」といえるものではない。

資料とした職員管理調書は組合活動に起因する「労働処分」をも特記事項

としている。このことは,組合活動としての正当性について見解の相違によ

り判断に対立のある問題について,使用者(=国鉄)側のみの一方的判断に

帰する危険性がある。しかもこの特記事項の記入は,ブラック・リストを禁

止した労基法2 2

3項に抵触するものである。

(10)

また,この管理調書は,その記録を過去三年間に限定していることの問題 である。これは「動労」が分割・民営化に賛成する方針を転換した以降の時 期にあたり, したがって労働処分は国労,全動労の組合員のみに集中してい ることは必定である。過去三年間の記録を名簿作成・採用基準の資料とした ことは,客観的公正を欠き,国労組合員等に対する差別意思の徴表とみるこ

とができる。

さらに国鉄は

1987

(昭和

62)

2

12

日の第三回合同設立委員会における 選定結果の説明文書の中で,選定にあたっての考えを示している。

そこで示された採用基準について,新会社にふさわしくない者として,昭 和

58

4

1

日以降,停職六ヶ月以上の処分を受けた者は「名簿記載数が基 本計画に示された数を下回る場合においても名簿に記載しなかったとされて いる。このように採用基準について「健康状態の判断にあたっては,…でき るかぎり弾力的に解釈した」ことと比べて非常に厳格な態度がとられたので ある。

採用基準とその適用の仕方について他にも多くの問題が存するが,いずれ にせよ設立委員は名簿不登載の者が L 、ること,そしてその理由を知り得る立 場にいたことは否定し難い事実である。

設立委員は,国鉄の行った採用基準の具体的適用(採用者の選抜,名簿作 成)について,組合間差別の危険性が公知の事実であった当時の状況下にお いても,組合間差別となるような諸問題につき何ら具体的措置を講じること なく,国鉄による採用差別を追認することとなった。このように設立委員は,

不当労働行為を防止する立場にありながら,何らその責任を果すことはなか った。

設立委員自身に,国鉄の提出した名簿登載者のみを採用することによって,

新会社から国労組合員をできるかぎる排除しようとする積極的な不当分労働 行為意思があったかどうかは別としても,不当労働行為の防止を怠ったこと において設立委員は不当労働行為責任を免れない。この点について,採用差 別事件についての初めての救済命令を出した大阪地労委命令においても, r

継法人に応募しながら名簿に登載されなかった者の名簿不当載の理由につい

(11)

て設立委員会が独自のチェックしたとの疎明はなし、」と明確に指摘されてい るところである。

新会社に定員割れが生じた場合,設立委員は選別作業をすることなく可能 なかぎり職員を採用すべき義務(雇用保障義務)があるにもかかわらず,そ のような措置をとらずに放置した。このことによっても国鉄の行った採用差 別を追認する結果となり,その点においても責を免れない。

()

国鉄と承継法人の実質的同一性と採用拒否の性格

国鉄改革により従来の国鉄事業が

11

の承継法人に分割され民営化された。

が,各承継法人の事業内容はそれぞれ対応する国鉄の事業内容と同じであり,

国鉄と

11

の承継法人は同一性を維持している。各承継法人と国鉄との同一性 は,以下にみるように経済的社会的事実においても,また法的諸側面からも 否定し難い。

国鉄と承継法人とくに各鉄道会社の企業体としての実態をみると,①国鉄 と鉄道会社の事業は共に鉄道事業が主であり,承継法人はその事業に必要な 資産・施設および機構等の全てを国鉄から引き継ぎ事業は瞬時も休むことな く継続されたこと。新会社になってからの時刻表,料金,使用する車両,鉄 道,駅舎,通信施設等も承継前後で変更はなく,ただ「国鉄」が r

RJ

に 変わっただけである。②承継法人は,国鉄から,その資産の約

85

パーせント,

長期債務の約3 4パーセントを帳簿価格により承継し,残りの国鉄の資産,債 務は清算事業団が引き継いだこと。①承継法人の役員については,代表取締 役等の一部に国鉄出身者以外の者が就任しているが,常勤役員のほとんどを 国鉄出身者が占めていること。①新会社の職員は改革法

231

項の規定に基 づき全て国鉄職員から募集することとされ,そのとおり実施されたこと。ま た,再就職基本計画において,承継法人がその設立後に職員を採用する場合 は,清算事業団の職員を優先的に雇用しなければならないとされていること,

等である。

さらに以下の諸事実に照らしても国鉄と各承継法人が実質的に同一である ことが一層,明白となる。

①新会社の職員の募集対象は国鉄職員に限定されている(改革法

192

(12)

3

号,同

23

l

項)。これは,すでに国鉄職員としての能力は検証済みであ ることから,選抜試験の必要はないことを前提としている。②採用すべき人 数は運輸大臣の策定する基本計画において定め,職員の選抜作業は国鉄に一 括して代行させたこと。新会社の経営を直接担当する者ではない運輸大臣が 採用人員を決定し,事実上の決定者は国鉄であり, しかも発足当初から過剰 負担をして二割増の人員を採用することなど,一般の新会社設立による新会 社設立の新規採用ではあり得ないことである。

①新会社への採用申込は,国鉄の作成した意思確認書の提出によるが,そ こには「私は,次の承継法人の職員となる意思を表明します」とあらかじめ 印刷され,また「承継法人に対する就職申込書を兼ね」る旨の注記が付され るとともに,希望順位に従って五つまで承継法人名を書く欄が設けられてい た。これらのことは,新会社への採用は新規採用でなく承継であることを示 すものであり,また,一つの採用申込書が順に五つもの会社の申込みを兼ね るなどということは通常あり得ないことといわなければならない。

①改革法等施行法

29

l

項は,改革以前に国鉄が行った懲戒処分の効果は,

国鉄を退職して承継法人に採用された後も継続し,さらに未処理の国鉄時代 の服務規律違反行為に対しても,清算事業団から「委任」をうけて承継法人 が懲戒処分を行うとされている。また,承継法人の職員となる者には退職手 当を支給せず,将来,承継法人を退職する際に通算して支給;するとされてい る(改革法

23

6

項 ,

7

項,清算事業団法施行法

36

条)。このように,本来,

個々の企業に固有の問題である懲戒処分が承継されることなどあり得ず,ま た退職金についても,社会保障制度上,資格の通算されることはありえても,

個々の企業の特有な退職金の在職年数の通算は,同一企業グループでの移動 の場合を除いて,一般にはあり得ないことである。

以上の諸事実は,国鉄と各承継法人とは「実質的同一性」を有し,承継法 人による採用は国鉄職員を新会社と清算事業団に振り分けることを意味す る。新会社へ採用されず清算事業団職員とされた者は,新会社職員と比べて 身分上も労働条件等についても重大な不利益を被っているのである。

国鉄の分割・民営化によって発足する承継法人の全てを併せても,当時の

(13)

国鉄職員数より少い人数で発足するため,承継する者とそうでない者とを選 別することが不可欠となり,新会社への移行には労働者本人の同意(意思確 認)が必要であった。そのための法技術として,国鉄からの退職,そして承 継法人による採用という方法がとられたのである。

このように,新規採用の形式がとられたものの,改革法

19

条 ,

23

条の基本 的趣旨は,国鉄職員が承継法人に承継されるための手続を定めたものである。

したがって,改革法に基づく承継法人への「採用」は,文字通りの新規採用 を意味するものではなく, r 承継」を意味するものである。このことからも,

承継法人への採用は通常の新規採用とは異なり, r 採用の自由」が問題とな る場合とは,もともと異なっているのである。

これを,仮に企業の採用の自由という問題領域でとらえるとしても,今日 における採用の自由は絶対的なものではない。労働基本権を保障することは 必然的に企業活動の自由を制約することを内包し,労働法

7

1

号や労基法

22

3

号の規定は,企業の採用の自由を制約するものである。

以上,検討した如く,被申立人である新会社が不当労働行為の申立を却下 すべきとする理由のいずれも根拠はない。改革法の諸規定とくに

23

条の立法 趣旨や職員の振り分けの実態に照らすとき,新会社の却下すべきとの主張を 肯定するならば,改革法自体が不当労働行為を容認する立法として,違憲立 法とならざる を得ないという重大な帰結となる。改革法がそのようなもので はないことは既にみたとおりである。

採用拒否と救済方法としての現状回復

)

問題の所在

一般に不当労働行為事件においては,不当労働行為の成否と不当労働行為

の主体ないし救済命令の名宛人は表裏の関係にある。そして不当労働行為と

して争われる採用拒否事件にあっては,申立人と被申立人との間には労働契

約関係は成立していないのが通常のケースである。もし不当労働行為が労働

契約関係当事者のみに成立するとすれば,採用拒否を不当労働行為として争

い,救済する途が全くなくなることにもなる。

(14)

労組法は,労働契約成立前の行為も不当労働行為として禁止し(

7

1

号 黄犬契約),労基法もブラック・リストの作成を罰則付で禁止する ( 2 2条 3 号)。これらの規定に照らしても,不当労働行為は,労働契約締結後の当事 者のみに成立するものではない。

とりわけ,既往の組合活動を理由に採用拒否がなされるならば,その実害 は黄犬契約の比ではない。黄犬契約の場合には,組合に加入しないもしくは 組合から脱退することによって採用が可能となり, したがって抑圧される組 合活動は将来のものにかぎられ,これに比べ組合活動を理由とする採用拒否 は既往の組合活動を問題とし,その実害は甚だしい。

組合活動を理由とする採用拒否は,労働基本権を侵害するものであり,現 行法上, とうてい容認できるものでなく,採用拒否が「不利益な取扱」とな る 。

( ニ ) 不当労働行為の主体としての使用者

不当労働行為制度は,労働契約上の責任を追及するものでなく,集団的労 働関係の場における団結活動に対する妨害,抑圧行為を禁止し,その行為を 行政令命によって除去することにより,当該行為がなかったと同様の状態を 回復せしめ(いわゆる現状回復),もって組合活動の自由を具体的・実質的 に保障する制度である。

このような不当労働行為制度の趣旨からして,使用者概念は労組法

7

条の 各号ごとに,その範囲を確定しなければならない。今日においては,株式所 有,投員派遣や融資等を背景に,労働者の人事や労働条件など労働関係上の 諸利益に対し,支配力ないし直接的な影響力を現実かっ具体的に及ぼし得る 立場にある者も,使用者としてとらえられる。労働委員会や裁判所も,この

ような観点から使用者概念を拡大してきた。

たとえば,労働契約が存在しなくても労働関係の実態に即して労組法

7

の適用される使用者とするもの,企業合併にかかわる事案で「やがて雇用関

係の成立をする可能性が現実かつ具体的に存するものもまた使用者と解すべ

き」とするもの,不当労働行為が「なかったならば客観的にみてその使用者

との雇用関係が成立すべきであると判断される者」も使用者であり,救済命

(15)

令の名宛人となるとの行政解などにみられる。)その他に,営業譲渡,合併も しぐは偽装倒産などの事案において,新規採用の形式をとり,法人格を異に しても,新旧両会社に「実質的同一性」が認められるならば新会社を使用者 とする事例も少なくない。

採用拒否も不当労働行為に該当し,不当労働行為の主体たる使用者は労働 契約関係の当事者に限定されるものではないことは,今日,確立した法理と いえるのである。しかしながら,国鉄改革にともなう所属組合を理由とする 採用拒否は,以上の事案と基本的に類似するものがあるが,純然たる採用拒 否の事案とは異なることに留意すべきである。いずれにせよ,国鉄の承継法 人たる新会社が申立人らとの関係で不当労働行為の主体たる使用者であるこ

とにかわりはない。

同不当労働行為としての採用拒否と現状回復

労働委員会は,不当労働行為制度の目的に即して,不当な採用差別があっ たと判断される場合に,原状回復のために必要かつ適切であると認められる ならば,採用を命じることができる。それが労働委員会の裁量の範囲内であ ることに異論はみられない。

たとえば,二つの企業に実質的同一性が認められる場合は勿論,両者の同 一性を直ちに認め難く,新規採用と同視されるような事案においても,採用 拒否が従前の会社における組合活動を理由とすると判断される場合に,採用

を命じる救済命令を出 したケースもある。

国鉄改革の過程で行われた不当労働行為としての採用拒否についても,以 上と同様の法理が妥当する。現時点では,もはや名簿に追加記載すべき立場

にある国鉄も,それを受けて採用通知を発すべき設立委員も存在しない。

今問題とされているのは,採用差別という不当労働行為が存在した場合,

、かに現状回復すべきか,救済命令の適切な内容はいかにあるべきか,とい

う点にある。それは現時点において申立人らを,

1987 

(昭和

62)

4

1

に遡って,採用ないし従業員として取扱うことを命じる他はない。このよう

な救済命令は法令上も何ら問題はなく,労働委員会の載量の範囲内にある実

効性を有するものということができる。

(16)

五 各地労委の救済命令にみる救済方法一むすびにかえて一

既にみたように,各地の地労委において,国労の申立てに係る不当労働行 為事件について,申立人の主張を認める救済命令が次々と発せられている。

最後に,これまでの地労委命令にみる救済方法について,若干の検討を加え ておく。本稿と直接かかわる救済命令は,採用差別に関する⑥大阪地労委命 令,⑦神奈川地労委命令であるが,国労とその所属組合員に対する不当労働 行為の全体像に迫るうえで,①東京地労委命令,①神奈川地労委命令につい ても関連させてみておくことにしたい。

JR東日本新宿車掌区事件・東京地労委命令(昭63. 2.  16)は,被申 立人会社の職制(助役)が,内勤車掌である国労組合員に対して「内勤は国 労では困る。区長から再三いわれている」との言動をくり返し,国労脱退を 強要し,これを拒否するや電車乗務車掌へ指定替え(降格)されたケースで ある。東京地労委は,助役の「言動」は, [""新宿車掌区において申立人分会 の組織率が高いのは望ましくなく,かつ国労所属の組合員は内勤車掌の業務 に従事すべきでないとの前記区長の考え方を体して,申立人分会の組合員に 対 し , 国 労 に と ど ま り 続 け る 限 り は 担 当 業 務 を 田 中 に 対 す る と 同 様 に 不 利益に指定変更していくことがありうる旨の威嚇を行ったもの」と認定し,

かかる「威嚇行為」は,本件状況下では「被申立人会社 (JR東日本)その ものの行為」と判断した。国労所属組合員の降格を伴う指定替えは,労組法 71号および3号に該当し,他の組合員に対する威嚇は同73号に該当 すると結論づける。さらに使用者であるJR東日本に対する今後の不当労働 行為防止措置として, [""将来における組合所属を理由とする担当業務指定変 更の禁止」を命じた。

以上のような内容の命令は,分割・民営化後においても,国労を脱退させ ることが全社的な労務政策であることを示すものであり,また,複数組合併 存状況における使用者の労働基本権侵害(団結体平等原則,中立保持義務違 反)に対する一般法理を,国鉄改革についても適用したものである。

JR東日本神奈川運転士配属差別事件・神奈川地労委命令(昭63. 10. 

(17)

20)

は,改革法

23

条による新会社への採用の後の配属で本来業務である運転 士の業務から排除されたことが,不当労働行為に該当するとして救済申立て がなされたケースである。本来の運転士の業務から排除された者の業務内容 は,売庖での販売, うどん,ラーメンなどの製造・販売,清掃作業,その他 の雑作業などであり,これまでの資格や労働能力を活かす業務と全く無縁の

ものであった。

神奈川地労委は,改革法

23

1

項の国鉄を「通じ」という趣旨について,

これを「配属を含む労働条件,採用に関し国鉄は設立委員会の行為を代行し た」と解し,国鉄が新会社の運営のためにした「人事移動」は, r 国鉄が設

立委員の行為を代行したことになり, (改革法

23

条)

5

項にいう『当該承継 法人がした行為』に該当する」。したがって,国鉄が新会社のためにした人 事移動(配属決定)そのものに不当労働行為が存在した場合には,

r

当該承 継法人がした行為

J

として新会社が労働組合法上の使用者としての責任を負 うとする。そして本件国労所属の運転士に対する異職種への配属について,

これは「ストライキ権回復後の新会社の労使関係を考慮して,鉄道会社にと って基幹部門である運転部門から国労組合員を排除するため,勤労組合員な ど他組合員と差別して取り扱ったもの」と認め,労組法

7

1

号及び

3

号に 該当する不当労働行為と判断した。また本件における

196

名の組合員が,本 来の運転士業務以外に配属させられた結果,乗務手当を得られないなどの「経 済的不利益」を蒙るだけでなく, r 永年運転手として勤務してきた誇りを傷 つけられる点において精神的不利益を蒙ったことも否定しえない」として,

運転士個人に対する不利益取扱も認めた。

命令は,救済の方法について, r 申立人組合に所属する別表三記載の組合

員に対する異職種への配属命令を動労など他組合との差別を解消する限度で

取り消し,原職に復帰させなければならなし、」とする。そして「他組合との

差別を解消する限度」とは,

r

動労など他組合運転士の異職種への配属率と

同様にすること,原職場における定員等も考慮して配属期間による適正な

ローテーションの工夫をすること,などが考えられるが,具体的方法は実情

に詳しい労使の協議により調整させることとした」との協議命令を発し,さ

(18)

らに,会社対し,将来の労使関係をも配慮し,国労所属組合員の配属に関し,

差別と組合運営に支配介入してはならないと命じるとともに,社長名義の「不 当労働行為責任を認め,深く反省するとともに,今後同様のことを繰り返さ ない」旨の会社の積極的な謝罪内容の掲示(ポスト・ノーティス)を命じ た 。

神奈川地労委命令は,国鉄の分割・民営化に先立つて国鉄が行なった本件 配属について,改革法の趣旨と国鉄を

JR

との実質的同一性からも,国鉄の 不当労働行為について,

J R

が労組法上の使用者責任すなわち,原状回復責 任を負うとした。承継法人たる新会社のためにした国鉄の行為を新会社の行 為とした点において,本件命令は配属差別の事案であるが,採用差別にも妥 当する法理を展開したものといってよい。もっとも,救済命令の方法につい ては,採用差別の救済とは異なることはありうるが,本件配属差別の救済と しては,救済対象者会員を運転士としての原職に復帰させることが原則とな ろう。動労など他組合所属の運転士で異職種へ配属されたものはほとんどい ないことから, r 他組合との差別を解消する限度」とは,救済対象者

196

名全 員を元の職種へ復帰させることしかないからである。

JR

西日本採用差別事件・大阪地労委命令(昭

63. 1

1 .  

28)

は ,

R

新 会社へ採用されず,清算事業団職員となっている国労組合員に対する初めて の救済命令である。事案は,分割・民営化に先立つて,業務上の必要性がな いにもかかわらず,国鉄は職種転換教育を一方的に強行し,これに反対する 国労組合員を

1ヶ月から6

ヶ月の停職処分とし,職場から切り離した上で,

清算事業団職員としたものである。

地労委命令は,被申立人

(JR

西日本)は,元運転士である申立人

(2

名) を「昭和

62

4

1

日付で

JR

西日本の職員として採用したものとして取り 扱うとともに,同日以降同人らが受けるはずであった賃金相当額を支払」う とともに,将来において不当労働行為を繰り返さないとの誓約書を申立人ら に手交すべきとする。命令は,国鉄,設立委員及び承継法人の関係について,

事業内容,資産等の承継,職員の身分,採用手続などについて詳細に検討し

たうえで,国鉄と承継法人の連続性(実質的同一性)を認め,改革法2 3条の

(19)

趣旨に照らして,国鉄の採用候補者名簿作成行為は,設立委員ひいては承継 法人の行為と解する。そして国鉄の名簿作成過程において不当労働行為が存 在した場合には, r 会社の設立委員自らの行為とみなされ,この設立委員の 行為の責任は,会社が負わなければならない」とした。さらに,改革法

23

による採用行為は,国鉄職員の振り分け手段の一環であり, r 国鉄の事業等 を引き継いだ承継法人は,職員募集に応じた国鉄職員について,特段の事由 のない限りその職員として採用すべき義務がある」と判断し, r 会社主張の

如き無制約な採用の自由はなく

J

,申立人らの「不採用決定過程で不当労働 行為があったとすれば,同人らは改革法に基づいて会社に採用されるべき者 であり,当委員会が会社に同人らの採用を命じたとしても改革法に反するも のでないと判断するのが相当であって,会社の主張は失当である」と明確に 論じた。

本件命令は,その判断の法的枠組において④神奈川地労委命令と同様であ るが,採用差別について,それが不当労働行為に該当すること,昭和

62

4

月 1日に遡って採用を命じることは労働委員会の裁量の範囲内で何ら違法と はいえないとした点において,今後の採用拒否事件に及ぼす影響は大きいも のがある。もっとも,本件ケースの救済方法について,新会社発足当初から の職員として扱うことを命じるものの,処分当時の原職場での就労(電車運 転士)を認めたわけではない。この点命令は会社の責任で適正に行うべきも のとするが,救済命令の実効性という観点から,その評価が分かれるものと 思われる。しかし,命令の趣旨は,会社の責任による原職復帰を求めている ものとみることができ,その聞の準備期間等も含めて適正な原状回復を命じ たものと解することができょう。

③中労委命令(昭

63. 12.  28)

は,①東京地労委の救済命令についての再

審査事件で,国労申立の

200

件にのぼる不当労働行為事件の初めての中労委

命令である点において重要である。中労委は,、 JR 東日本の再審査申立てを

棄却したが,他の事件に対する地労委の救済命令について,

J R

各社は再審

査申立てを行うか,命令取消しの行政訴訟を提起するものと思われるが,各

地労委の救済命令が中労委で取消されることはまずあり得ないとみてよいで

(20)

あろう。各地労委の救済命令は事実に即した救済命令を発しており,それぞ れの命令は,今日において確立された不当労働行為の法理に基づいているか

らである。

( 1 )   国鉄「分割・民営化」についての文献は賛否両論を含めて多数にのぼる。批判的観点 から書かれた最近の文献として,諌早忠義編著『巨大企業

JRJI 

(大月書庖),六本木敏,

鎌倉孝夫ほか『敵よりも一日長く

IJ

(社会評論社),

r

破防法研究

j62

号(特集・

JR

を舌 発する),鎌田慧『国鉄処分

IJ

(柘植書房),同「国鉄処分一年後の風景 L 時間」世界

1988

5

月号,

6

月号,嶋田俊男・伊藤俊男編

IrJR

ーその光と陰

IJ

(学習の友社),原田勝正

『国鉄解体

IJ

(ちくまライブラリー),丸山昇Ir J  R 残酷物語

IJ

(エール出版社),六本木 敏『人として生きる

IJ

(教育史料出版会),なお文献一覧については,法政大学「大原社 会問題研究所雑誌

j341

号 ,

342

号参照。

(2) 

国労長崎県支部が長崎地労委に申立てた採用拒否事件(長崎地労委昭

62

年不第

5

号) について,筆者は

1988

7

29

日,長崎地労委において証人として陳述し,陳述書を提 出した。その陳述書の概要について,長崎県地方自治センター『ながさき自治研N o .

19

J 1 に「国鉄『分割・民営化』と市民・労働者の人権」として掲載した。本稿は,労働法上 の問題点について,その後の各地の地労委命令をふまえて,より具体的に展開したもの である。

(3) 

国労の労働運動について,国鉄労働組合編『国鉄労働組合

40

年史

IJ

(労働旬報社)参照。

(4) 

人活センターは,

1986 

( 昭

6

1)年

7

1

日から全国一斉に1,

010

ヶ所の現業機関に設置 され,その収容人員は同年

10

月現在で

1

7

720

人であった。余剰人員として人活センター に収容された者は国労組合員に集中しており,新会社への差別的振り分けの先取りとし ての意味をもっ。国労門司地本北九支部では,

1986

7

月から

11

月まで「人活センター」

に配置されたし

125

人のうち,その

96%

にあたる

1

027

人が国労組合員であり,博多支部 においては,

372

人のうち,

98%

にあたる

367

人が国労組合員であった。長崎県支部では,

313

人の配置者のうち

94%

にあたる

295

名が国労組合員であった。

人活センターについて,反失業全国キャラパン行動実行委員会

r

.国鉄清算事業 団の労働者虐待を告発する

j

,丸山・前掲Ir

R 残酷物語』参照。

(5) 

国労の地労委闘争と法的論点について,鈴木勉「国労闘争の現段階と展望

j

,岡田和樹

「国労の労働委員会闘争について」労旬

1194

号,中山和久ほか

rR

採用差別・不当労

(21)

働行為事件を徹底分析する」労旬

1202

4

頁以下,本多淳亮ほか「国鉄改革にともなう 承継法人の採用拒否と不当労働行為」労旬

1192

8

頁以下,佐藤昭夫「国鉄分割・民営 化のさいの採用差別と承継会社の不当労働行為責任に関する意見書

J

,渡寛基「国労申立 て事件に関わる法的諸問題」季労

148

56

頁以下参照。

(6) 

長崎地労委においても,

1988 

( 昭

63)

11

10

日の最終陳述をもって結審し,早けれ ば

1989

3

月ごろには救済命令が出されるものと思われる。長崎地労委昭和

62

年肘第

5

号九州旅客鉄道側不当労働行為事件について,国労門司地本長崎県支部『最終陳述書(昭 和

63

11

10

)JJ

参照。

(7) 

日本国有鉄道改革法案をはじめとする国鉄改革関連八法案は,

1986 

( 昭

6

1)年

9

11

日国会に提出され,同年

10

28

日衆議院を,

11

28

日参議院を通過,成立し,同年

12

4

日公布された。国鉄改革関連法は次のものである。日本国有鉄道改革法(以下「改革 法」と

L

づ。)旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律

(r

鉄道会社法J ) ,  日本国有鉄道清算事業団法 ( r 清算事業団法J ) ,日本国有鉄道退職希望職員及び日本国有 鉄道清算事業団職員の再就職の促進に関する特別措置法

cr

再就職促進法J ) ,鉄道事業法,

日本国有鉄道改革法等施行法

cr

施行法J ) ,地方税法及び固有資産等所在市町村交付金及 び納付金に関する法律の一部を改正する法律。これに,いわゆる緊急特別措置法である,

日本国有鉄道の経営する事業運営の改善のために昭和

61

年度において緊急に講ずべき特 別措置に関する法律,がある。

(8) 

各旅客鉄道会社は,基本計画で予定された

21

5

000

人より l 万

4

352

人少ない総数

20

648

人の人員で発足した。全国で

6

793

人の国鉄職員がその希望に反して各社に採用拒 否されたが,そのうち国労組合員は

4

810

人で不採用者の

70.8%

を占めた。分割・民営化 に賛成で労使一体路線を取った鉄道労連(鉄労・動労・全施労)組合員はほぼ

100%

の採 用率であり,また国労を分裂結成された鉄産労は約

80%

の採用率であったのに対し,国 労組合員は,九州で

43.1%

,北海道で

44. 4%

の採用率となった。

そして,一時期を除き組織率

70%

程度の多数を組織していた国労は,

1986 

( 昭

6

1)年

11

月 に組織率

47.7%

となり過半数を割った。

j R

九州会社は,

1

5

000

人の要員で発足した が ,

1987 

( 昭

62)

11

月現在で,同会社における国労組合員は

1

006

人に過きず,要員に 占める国労の組織率は

6.7%

となった。国労長崎県支部では,希望調書提出者

385

人のう ち

j R

九州に採用された者は

194

人,不採用者は

191

人で,新会社の採用率は

50.3%

であ ったのに対し,勤労等の組合員の採用率は

100%

であった。詳細については,国労門司地 本長崎県支部『最終陳述苫

JJ162

頁以下参照。

(9) 

賃金格差の具体例をみると, j 

R 九州に採用された者との格差は年間平均 60~70 万

参照

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