有効需要と相対的分配率
種岡輝雄
第1節 カルドアの分配論 第2節 パシネッティの分配論 第3節 ミードの所説
第4節 パシネッティ定理と双対定理 第5節 結論的覚書
第1節 カルドア(N.Kaldor)の分配論
有効需要乃至投資乗数の理論により,国民経済における生産要素の相対的 分配率を説明しようとする試みにカルドアの分配論がある。もともと有効需 要の理論は失業が存在する場合の雇傭量,国民所得決定の理論であり,その決 定のための条件は事前的投資(exanteinvestment)は事前的貯著(exante saving)に等しいという条件であり,資本の存在量は不変と考えて議論が なされ,このI=Sの条件をみたす国民所得が均衡国民所得水準と呼ばれ,
この均衡国民所得が完全雇摘国民所得にかならずLも等しくならないことが 指摘され,過小雇傭均衡の可能性が主張されたのである。
さて,カルドアの分配論も大体において投資乗数の理論に沿うものであ るが,詳細にみればケインズ雇傭理論の想定に合致しない点もみられるので(I)
ある。そのような点の議論はあとにゆずるとして,まず,いわゆる短期的乃至 静態的な要素の相対的分配率決定の理論から考察することにしよう。カルド ア分配論の想定は基本的には次の
(1)国民経済全体としての資本の存在量,労働の存在量は所与不変であ る。
(2)労働の完全雇傭。
(3)資本の完全利用。
(4)貨幣賃金率一定。(契約賃金一定)。
の4つであるo
国民経済を受け取り所得形態の差に着目して賃金を受けとる労働者とそれ 以外の資本家にわかちぷj者労働者の受けとる所得部分をW ,後者資本家の受 けとる所得部分をp,国民所得を Yにて示せば定義から
y==p +W (1)
であるO この二部門分割に対応して,労働者全体の貯蓄をSw, 限 界 貯 蓄 係 数(一定)をSw,資本家全体の貯蓄をSp,限界貯蓄係数(一定)をSp,国 民経済全体の貯蓄をSにて示せば,定義から
S ==Sw+Sp (2)
それぞれの行動原理から
Sw=SwW, Sp=spP (3) がえられる。均衡国民所得決定の条件は事前的投資が事前的貯蓄に等しいこ とであるが,ケインズの乗数理論におけると同様に,こ乙でも投資需要が主 導的役割をはたし,所与の新投資に等しい貯蓄を生む乙にとが必要で,国民 所得の前記2部門への分配はこの均衡条件をみたすことが必要である。今所 与の新投資を1~こて示せば
I三 S (4)
が成立しなければならない。(1), (2), (3), (4)の方程式体系には方程式の数 は5。他方,新投資Iは 所 与 ( パ ラ メ タ ー ) ,限界貯蓄性向sp,swが所 与不変であれば,未知数はY,p, W, S, Sw, Spの計6, 未知数の数は 方程式の数を1佃だけ超過し,このままでは均衡解は求められない。ところ で,実質産出高(国民所得)を資本の完全利用産出高と規定すれば, ~t定 (1), (3)から所与不変であるから,未知数の数はlつだけ減少し,方程式体系 から均衡解が求められる。この資本の完全利用産出高Yは同時に労働の完全 雇傭の条件をみたすものと考えられているO
さて上の(1),(2), (3), (4)式から
I三 Sw十Sp=spP+sw( Y ‑p) = (sp ‑sw) p 十 九y (5) この(5)から
十=(sp一丸)手+sw (6)
限界貯蓄係数Sp,Sw i:s.所与であれば資本家の相対的分配率予は投資・国 民所得比率すのみの関数となり
P 1 1 Sw
y Sp ‑ Sw Y Sp ‑ Sw
利潤率は
P 1 1 Sw Y (8) K SP‑Sw K SP‑Sw K
→ヲ ( W¥
であるo 労働者の相対的分配中(¥ y -~~)も同様にして元γ のみの関数とな/ V I~~'VJ"- ~ ‑ y るo)この(7)において,投資・所得比率(上)が,限界貯蓄係数¥ Y / Sp,Swか ら独立とみなされていることもあきらかである。式(7)を み れ ば わ か る よ う に, (7)は Sp九 の 場 合 に か ぎ り 意 味 が あ り , 更 に 与> 0の条件から
(7)
sw<‑+
一千<1の条件から
s w > J
でなければならず,又,カノレドアは安定条件として
(9)
(10)
SW<SF 4EEEA )
a‑
‑A
(
をあげる。
さて,カノレドアの場合, (7)か ら ( 新 ) 投 資 の 増 大 が , 投 資 ・ 所 得 比 率 (↓)の増大開くことが必要なことはいうをまたないが,この投資の増 大の結果, 1 >Sの状態が出現し,有効需要は増大するO 実質国民所得(産 出高)は先記理由により固定されているから,生産物価格水準は上昇する。
想定(4)の一定の貨幣賃金は相対的に下落し,労働者全体の実質所得は減少し (名目的には不変) ,他方資本家全体の所得は実質的に増加し(名目的にも 増加し) ,所得のトランスファーが見られるD もし, Spくらであれば,資本 家は労働者よりもより少なく貯蓄するから(より多く消費するから) ,有効 需要は更に増加し,尚一層の物価上昇に導くD ところが式(11)の条件, sP>Sw
がみたされる場合には,上記とは逆に国民経済全体の貯蓄が増加し,投資 ( 1 )に等しい貯蓄がなされて物価上昇の傾向はやむのであるO 安定条件と はこの志味のものであり,この式(11)が成立すれば,
d ( ~)\n
d (十)/ ~
が成立しなければならない。つまり投資・国民所得比率の増大は利潤・国民 ( 12)
所得比率の増加により相殺されねばならない。逆に,現実の資料から倒が保 証され含ば当然(11)が乙れにとものうこともあきらカ主である口(7)の 係 数 己 記 がいわば乙の安定度をはかる係数であって, degreeof sensitivity of inc‑ ome distribution"と称、せられている。ともかくカノレドア理論の根本的仮設は 第ーに,労働者,資本家全体の限界貯蓄係数 sp,swがパラメターで所与不 変であることo第二に,資本家の限界貯蓄係数 spが労働者の限界貯蓄係数 swより(かなり)大であるということであるO 式(7),(8)において sw=0と
おけば
P 1 y Sp Y
P 1 1 K Sp K
であり,投資・所得比率 1と限界貯蓄係数spが不変であれば,労働の相 Y
(13)
) ︐n吐
4・Eム(
対的分配率 (w/y) は不変で,実質賃金は頭当り産出高増加とともに増大 し, sw十Oの場合との利潤の差は sw/spであるD
今までの説明においては式(7)の 投 資 ・ 国 民 所 得 比 率 ( れ を 外 生 変 数 と 考えた。が,もしそう考えないで従属変数と考え,次式lこよりあらわされる
ものとしようO
; = G Z F ( 1日
こ〉にGは資本ストックの完全利用成長率, 川ま資本・!茸民所得比率 (与)であり,資本係数 (c叩 ω∞ωe
完全利用成長率率~G ,資本係数 ν が,限界貯蓄係数 sp , swとならんでパラメ ターとみなされうれば,その積 Gvも不変。従って 1ーも不変となり議論
Y
は今までと同様であるO 今までのように議論がなされるためには implicitly に,つぎの4つの制約条件がみたされることが必要であるとされるO
(1) 最低生活賃金 (subsistencewege level)をw'とすれば,労働者の平 均賃金はこれを下まわってはならない。労働者総数を LIこて示せば,
モ ミw'
乙れはまた
p ‑‑‑y‑Lw' y‑= y と書きかえられるO
(16)
日 首
(2) 投資のために必要な最小利潤率乃至も危険利潤率ク Criskpremium rate)をrとすれば,利潤率がとの危険利潤率を下まわらないことが必要,
P (18)
Vy
(3) 独占度 (degreeof monopoly) を m~乙て示せば
: 云 泊m 日
が必要である。
凶 資本係数vが資本家の相対的分配率(平)から独立であることが必要 であるoもし,独立でなければ,資本係数Pが資本家の相対的分配率(予) に影響され, G vが,従って 1がノマラメターとして処理できなくなるから
Y であるo だから vをある定数して
v = v m
が必要であるo価格と賃金との関係から,資本家の相対的分配率(平)が きまれば,資本利潤率 (¥ K ‑f‑)/ は今までの符号を使用して次式で示される。
p y P 1 P
(21) K K Y v Y
従って,資本係数vがもし,資木の相対的分配率(~-~--)から独立でなけれ
ば
v =f (そ)=f (土手) (22)
P ,,̲ I
が成立するから,一ーーはー一ーとならんで資本係数の関数となるからカルドアY .~ Y のように簡単に議論ができなくなるO
今少し,わき道にそれるが,国民経済を2部門ζl分割し,両者の限界貯蓄 性向を sp,おとして示す乙との均衡成長率に対してもつ意味を考えよう。
ハロッドに従って, Gを資本完全利用成長率, νを資本係数(不変)とすれ ば,投資・所得比率は一般に(15)であるo労働の完全雇怖を前提すれば,人口
成長率と技術進歩率の和として,自然成長率(完全雇傭成長率)Gn が求め られ,これは所与不変であるD 他方ハロッドの場合の,投資・貯蓄均衡方程 式は,国民経済全体の限界貯蓄性向(一定)をSにて示せば
I s 却
Y
であるが,今のカルドア・モデノレでは
十=(sp‑s斗;‑+sw 的)
であり, Yを完全雇傭国民所得と考えれば, (6)の右辺は完全雇傭のための必 要貯蓄率であるO この必要貯蓄率は,もし資本家利潤Pが伸縮的であれば,
( p ¥
相対的分配率\-~-)の変化を通して変化することが可能である O 今,必要 貯蓄率が投資・所得比率 (¥ y ‑‑L‑)/ 辺 、に等しい状戸を考えれば,上の結果,投資
・所得比率が変化し,もし,資本係数が不変であれば,回を通じて,資本の 完全利用成長率G (ハロッドの Gw) が変化させられて,自然成長率 (Gn )
への調整が可能となり,両者の一致が可能となろうD
カノレドアの議論はつぎの図第l図により示されるo 横軸には資本家利潤の 相対的分け前 ( E M¥ Y J " ,酬 に 投 資 ・ 所 得 比 率 ( 上 ) ,貯蓄・所得比率¥ Y / (予)がそれぞれとられ, I I'は投資曲線, SS'は 貯 蓄 曲 線 で , 前 記
= S ーの均衡状態は II' と SS' との交点 Q~こて示され,この点 Q に対 Y Y
‑‑'‑'‑‑ ( p ¥
応するものが資本の均衡相対的分け目リで(一一)¥ Y として示されているO そ J
してこの二つの SS'とII'が一点にて交わるためには, Sp十swが必要であ り,かつ,均衡点Qが安定的であるためには, sp>swが必要であることも 凶から明らかであるO
以上は資本の存在量を一定としてのいわば静態的理論であって,短期的均 衡点の変動,長期的経済変動については何もいう乙とのできない乙ともあき からであるo この短期的均衡点の変動はカノレドアの技術進歩関数 (technical
(2)
progress funcfion)の採用により説明可能であるO ある期の投資を I,資 本ストックをKにて示せば,資本の成長率は Iーであるが,この資本の成長
K
率と産出高成長率との関係を示すものが,カノレドアの技術進歩関数であり,
この技術進歩関数を利用して短期的均術点(点Q)の steadyな長期的均衡
~I y/γ
S/
S
O 手()e
第 1 図
状態への収束が説明できる口この点Qの時間的収束が第2図 に 示 さ れ て い
P一Y
るo第2函において,変数の添字1,2,……はそれぞれの時点を示し,変
})~ rH高 成 長 率
T'
T /
ov l I l
資 本 成 長 率 K2 K13311 く
第 2 同
数は1から 2,2から3というように時間的に生起するものとするD
乙の図の横軸は資本成長率,縦軸は産出高成長であり,図の TT'は技術 進歩関数であるが,説明の便宜上直線であるD この第2図では投資は産出高 の増加にとものう誘発投資 (inducedinvestment)だけだから,各期の投資 は前記の産出高成長率によりきめられるD すなわち例えば第2期の資本成長 率 之 は 前 期 の 産 出 高 成 長 率G,!C.J:り決定され聞は両者等しい)資本 の成長率(え)に対し技術進歩関数から第2期の産出高成長率G2が決定 されるが,この G2が前記の短期均衡点であるo そしてカルドアの所説から 明らかのように,この G,(i=1,2,……)が人口不変の場合のハロッド の自然成長率に相当するものであるが,第2図からわかるように, G1 は常数 ではなく変数であるo他方士(i = 1, 2, ...)がノ、ロッドの資本の完全 利用成長率であるが,これ又常数ではなく変数であるD 従って,この両者が 等しくない場合には (l),G, の 変 動 , 吋Jの変動を通して両者が一致する ことが可能であるD 乙の点Gにおける資本の,労働の相対的分け前が長期的 均衡比率であり,この長期的比率も第2図の場合安定的である口
カノレドアの短期的分配理論は投資乗数による説明であって,そこには種 々の前提がおかれているO まず第ーに,産出高が資本の完全利用産出高 (=
労働の完全雇傭産出高)として所与不変であることロだから通常のケインズ 理論におけるように国民所得(実質産出高)が投資乗数,有効需要により決 定されず,財の用役の総供給は貨幣需要の増加に対し非弾力的であるO 従っ て,投資の増加は有効需要を増大し,価格水準を高め,賃金率が一定のかぎ り利潤の幅を広げるから, sp>swであれば,実質消費を切り下げる効果を 持ち,投資が減少の場合には上とは逆に価格を下落させ,実質消費を増大さ せる効果をもち,いずれの場合にも IjY=SjYを保証するのである。由来,
投資乗数の理論は労働の超過供給(失業)が存在する場合,価格と賃金の関 係を不変と想定しての雇傭,産出高水準決定の理論であったが,これに反し て,カノレドアの場合には,価格と賃金の関係、が投資乗数の理論によって決定 されるのである。資本ストックをK,利潤(子)率を PK,とすれば定義か
り
PK=去 白羽
賃金率を PLにて示せば
PL=そ 2(日
であり,想定から PLは不変。他方 Pk についてはたとえ,労働,資本の存 1 S
在量が不変であっても y "'<T y を生む只一組の PK が存在し,外生的lこ 所与の一ーが変化すれば, y 一=一ーを成立せしめる又別個のy S PKが存在す
る乙とが必要で,要素価格(比率)が伸縮的でなければならない。つまり
Eヶf( 打 倒
であり,現在のモデノレでは
長=f(--~-)ω
でないこともあきらかであり,相対的要素価格比率を生産財の相対的稀少性 と結びつけようとする理論(限界生産力説)が放棄されていることを示すも のである。
(3)
実質国民所得が所与,不変であるかぎり,賃金部分 (W)と 非 賃 金 部 分 (P)とへの分配が決定可能であるとの議論は,価格が投資乗数,有効需要 の理論により決定され,貨幣賃金率一定の想定とあいまって,価格と賃金と の関係が投資乗数の理論により決定されるから可能となるのであるのしか し,投資が更に増大して,インフレーションが生じ,この結果,賃金不が先 記(16)の制約条件をみたさなくなれば(乃至われわれの言葉でいえば労働の限 界不効用よりも小となれば) ,有効需要拡大ともに,ケインズもいうように
Jl P W
賃金,価格水準は双方とも同一比率で上手1‑し Y ' Y も 不 変 と な る か ら,国民所得の 2部門への配分は有効需要の理論により決定できない筈であ るo こうみてくれば,その有効性の範囲も狭く,カルドアの理論が特殊理論
(special theory)と称せられる理由がこ〉にあると思われるO
(4)
つぎに賃金率が一定であるにもかかわらず,利潤率が伸縮的であるために は,価格が投資比率の関数として一義的に決定されることが必要であるD 思 うに,貨幣賃金率は想定により一定であり,パラメターであるから,価格さ え決定されれば,価格と賃金との関係から,その残差として定義された利潤
は決定可能だからである。従って,価格だけが説明されるべき変数である が , こ の 価 格 が 投 資 乗 数 の 理 論 に よ り の 関 数 と し て 決 定 さ れ る た め にY は,総供給が完全利用産出高(す)
K K
y = 一一 = ← = y 白8) v v
l乙等しく,所与不変とみなされる場合にかぎるのであるoつまり闘で一般的 なる生産関数(供給関数)に代替しようとしたものといえようO 価格をP, 貨幣賃金をw!乙て示せば,両者の関係は実質賃金率(れである。資本ス
トックは不変であるから,総供給関数を雇傭量 (L)のみの関数として示せ ば
Y=F(L)
。
9)となるから,労働の限界生産の説によれば
Jζ=F'(L)=dF 一 。0)
p dL
であり,価格と貨幣賃金との関係は生産関数から確定的であるのに, (28)の場 合にはそうでないのである。だから,想定式(28)により生産関数に代替可能と は考えられない。側, (30)が存在する場合には, P, Wがともに産出高の関数
p = p ( Y ,) W = W ( Y ) (31) となり,この結果
Y三 p(y)+W(Y) (32)
が成立するが,式(31)の欠如がカノレドア理論の特徴であり,従って,実質国民 (5)
所得が一定の場合にその分配が貨幣の側の事情と有効需要のみによって決定 され,従って,特殊の理論であるとの批判も十分成立しうると考えられる。
それはともかくとして,いずれにしても,価格と賃金との関係がマクロの分 配理論を形成するために必要な前提条件であることもあきらかであるから,
マクロの分配論といえども,ミクロの価格関係を抜きにしては求められない 筈であり,しかもこの価格と賃金との関係が一般にえられるためには側の総 供給関数,総生産関数の存在が必要であるo
第二に限界貯蓄性向Sp,Swが所得水準から独立のパラメターである乙とと,
Sp>Swの二つのことを現実の資料から検証しようとしたのか, M.Rederで ある。 M.Rederによればカルドアのモデルは(1),(2), (3), (4), (5)をみれば
(6)
わかるようにすべて恒等式 (identity)であり, (6)も本来次ぎの恒等式
十==(Sp一丸)平+Sw (6)' の形をとるものであるといわれるo今まで式(4)を均衡条件式と考えて議論し たのであるが,そうみないで事後的恒等式と見れば,均衡状態にあろうとなか ろうと成立するものであるから,現実においてカノレドア理論が拒否されるこ とはないであろうし,従って,又カルドアの理論そのものも一種の形をかえた 自明の事柄(tautology)ではないかとの批判が生ずるであろうo こ の よ う に 自明の事柄にとどまるか否かは,すなわちカノレドアの理論(モデル)が現実 を説明する何らかの理論たりうるか否かは(6)式の係数, Sp, Swが時間的l乙不 変という想定が現実において妥当視されるか否かに依存しようO もし,Sp,Sw が時間的に不変,かっ,Sp>Swであれば, (肋ら投資・所得比率(十)の増
( p ¥
加が利潤所得比率(←ー)の増加により対応されねばならないことはあき¥ y / らかであるo こういう根拠に立って,資本家,労働者の限界貯蓄性向 Sp, Swについて上記二つの仮設が現点の資料により妥当とされるが否かを吟味し たのである口
(7)
現 実 の 投 資 ( 従 っ て 当 然 貯 蓄 ) ・ 所 得 比 率 の 観 察 腕 十 あ る 方 法 で 推 定された投資・所得比率を est.̲1ーにて示せば,現実値と推定値の差 (d)
Y は次式で定義されるD
d =十‑est・ι (33)
投資・所得比率推定のための方程式は(34)であって 1 .~". p .~~. w
est ・ ー ム =Sg+0.14<7+0.04-~~-y . ~.~. y (34)
乙〉に, sp=0.14, sg=0.04は基準年の1948'"'‑'1950年の資料から計算され,
Sgは政府余剰(貯蓄)の国民所得に対する比率であるo推定のための観察年 度としては,カノレドアの想定から完全雇傭年度が採用されねばならないの で,この点から1909年'"'‑'1914年, 1921年'"'‑'29年, 1923年'"'‑'29年, 1946年'""'‑'56 年が採用された。(却を使用して各年度の賃金のシェア,利潤(非賃金)の
シェアの観察値から,推定された投資・所得比率と投資・所得比率の観察 値の差をつぎの表に示す。カルドアの理論の適合性は投資・所得比率の観察
値と推定値の差dの大きさし1かんに依存するO 基準年における sp=0.14, sw=0.04は近似的にd=Oになるように計算されたのであるが, しかし実 際の計算の結果d=0.002であるO
(34)によるd
。
5)によるd基準年
1948.‑‑.50 十.002 一.003 完全雇傭年度
1946.‑‑.56 一.0004 一.001 23.‑‑.29 十.005 十.004 21.‑‑.29 一.001 +.003 09.‑‑.14 +.020 +.021 他の年度
1915.‑‑.19 十.097 十.100 30.‑‑.39 一.084 一.085 42.‑‑.45 +.122 十.118
上の表から1909'"'‑'14年を別にして考えれば,推定誤差は小さいから,上の推 計からは Sp,Swが時間的に一定であったという仮設はしりぞけられないよ うであるo
つぎに Sp十九 (Sp>Sw)の仮設については,これと代替的に両者は等し い,すなわちSp=Swとおいて投資・所得比率の推定方程式を求め,
est.ljY =Sg+ .08(sp =Sw =0.08) (3日 によって投資・所得比率を推定し,観察値との差を求めたものが前表の右欄の 数値であるO 乙の両者のdを比較することにより, SpラムSwの仮設の現実的妥 当性を検討したのであるD 乙の dを比較してみれば,間, c却はいずれも現実 の観察値に対しほY同程度に適合し,従って,上の手つづきからは,倒を特 に選択する根拠はなく,従って,カノレドアの仮設 Sp>Swを選択する乙とは 困難となるo推定方法等にも種々問題があるので確たることはいいがたいわ けであるが,投資・所得比率を決定する要因としては利潤,賃金の相対的分
配率の変化は勿論であるが,賃金の各労働者間の分配の変化,利潤の法人企 業,非法人企業への分配の変化,家計,政府,企業の貯著関数の時間的変化
も無視されがたいというのが上述からえられる結論となろうo
第2節 パ シ ネ ッ テ ィ (L.L. Pasinetti)の分配論
カルドアのモデノレにおいては資本利潤のすべてが資本家に帰属されてい るO この乙とは労働者の貯蓄総額C5w)はすべて資本家階級に移転され,貯 蓄の成果である資本資産の所有が一切認められていない乙とを意味するo も し,労働者の貯蓄 C5w)が労働者の手中に所有されずに,そのすべてが資本 家に帰属するとなれば,労働者は決して貯蓄しようとしないであろうo 乙の 理由により労働者に資本(過去の貯蓄の集計)を所有することが認められれ ば,これに対して利子が支払われねばならないから,労働者は総利潤の一部を 受けとる乙とが認められなければならない。こういう考え方に立って基本的 にはカノレドアの有効需要の理論に従いながら,バランス成長経済を対象とし て相対的分配率決定の問題を論じたのがパシネッティであるO この成長率は
(8)
人口増加率と技術進歩率の和に等しく,完全雇傭を想定しているから,投資 は完全雇傭維持のため,人口増加率と技術進歩率から外生的に決定されて所 与。乙の均衡成長経路上においては,投資・所得比率,貯蓄・所得比率は一 定不変(投資と貯蓄の均衡)0 利潤率は経済成長率に依存し,均衡成長経路 上では一定不変。
さて,総利潤 Cp)は資本家に帰属する利潤部分CP0)と労働者に帰属す る利潤部分CPw)の二つに分けられる故,定義から
P = P 0 + P w (36) 乙の結果,労働者の所得総額は Pw+Wとなり,他方,次式が成立するo
(行動原理式)
5w=swCPw+W) 50 =soP 0
(37) 側 こ〉に, Sw,swはそれぞれ労働者の貯蓄総額,限界貯蓄係数(一定) : 50'
Soはそれぞれ資本家の貯蓄総額,限界貯蓄係数(一定)である。貯蓄・投 資の均衡条件は
1 =Sw(W + p w) +soP 0 =Sw Y十(So+sw)P 0 (39) 旧日から
P c 1 1 Sw Y SoーSw Y So ‑Sw P 0 1 1 Sw Y
K S 0 ‑ Sw K S 0 ‑Sw K
このは0),は1)は前記(7),(8)と異なり,資本家に帰属する利潤部分 (Pc) !こ関す るもので,総利潤 (p)とは関係なく,国民所得の総利潤と総賃金との分配
)
nH U
S凡
( u z
位1)
に関しては,別個につぎの2個の方程式が必要であるO
P P". P一
一 一 ‑ ‑ 十 一 一 一Y Y ' Y (42)
P P" I Pw は3)
K K ' K
乙〉で,労働者は自己の所有する資本部分(これを Kw!乙て示す)を資本家 に貸し付けて,利子を受けとると考え,利子率をr!乙て示せば
Pw= rKw
P 1 1 Sw Y I rKw
一 一 一 一 一 一
K S" ‑Sw K S 0 ‑ Sw K . K 動学的均衡状態においては
Kw Sw Sw(Y ‑P 0 ) Sw ・So Y Sw K S 1 S 0 ‑Sw 1 s" ‑Sw である故, (却に代入して
P 1 1 Sw Y K S 0 ‑ Sw K S 0 ‑ Sw K
(SwSo Y S w ¥
十r l 一二W"""'~ 一一ーで一一一) (471
¥Sc ‑Sw S" ‑Sw J 似) (45)
位
。
P 1 1 Sw Y So ‑Sw Y SoーSw
( 只 に K Sw K ¥
-w一一一一一一一一一~~ )協)
S 0 ‑ Sw 1 S 0 ‑Sw Y J 乙のは7),闘が前記(8),(9)に対応する方程式であるo つまり,式(48)は国民所得 の利潤,賃金部分への分配に関する式である(長期の)究極の均衡状態に おいては利子率は利潤率に等しく
r = f ‑ 仰)
である。乙の'49)をは7)に代入すれば, 1 ‑Sw YキOである故,次式
P 1 1
K So K
P 1 1 y So Y
がえられるo労働者の限界貯蓄係数 Swは総利潤(P)の資本家に帰属する部
6日 (51)
分 (P0)と労働者に帰属する部分(Pw)の分配には影響をあたえるのは勿論で あるが,国民所得 (y)の賃金総額 (W)と利潤総額 (p)との分配につい ては何の影響をあたえないし,又(50)の示すように手IJ1閏率(+)の決定にも 影響をあたえず,資本家の限界貯蓄係数 (So)のみが影響をもっ。これがパ ジネッティの背理 (PasinettiPardox)と称せられているものであるD
この究極の均衡状態における利潤と賃金との関連について考えるに,まず 制度的にみて賃金総額は労働者数に比例して支払われ,総利潤は所有する資 本に比例して支払われるが,このうち後者については,第ーに究極の均衡成 長経済においては,すべての経済量が指数的に一様の率で成長する故,資本 ストックの成長率と貯蓄の成長率は同一。第二に資本の報酬率は資本家,労 働者を通して同一であるから
Pw Po
Sw ‑s
が成立し,手JIi国は貯蓄に比例するo
(52)
式のみではその共通比は決定されないが,貯蓄行動方程式を(52)に代入する乙 とにより,究極の均衡状態における国民経済全体の貯蓄に対する利潤の比 率一ある意味での利潤率ーの決定が可能である O 式(52)~乙 (37) , (38)を代入して
Pw Po (53)
Sw (P w + W) s 0 P 0 乙の(53)から
sw(P+ W) =seP w ( ﹁hdAせ) 乃至 Sw W = [( 1 ‑Sw )ー(1‑so)JPw (55) (55)は賃金からの貯蓄swWが利潤からの超過消費ーすなわち, Pwがかりに資 本家に帰属したと考えた場合の資本家消費をこえる消費である乙とを示し,
倒,闘が成立する場合,究極の均衡状態においては Sw(P w + W) +soP e =So (P w+ P 0) =soP であり,国民経済全体についての利潤率は
(56)
P 1
SeP Sc (57)
で決定されることを示し, (53)の右辺の共通比はこの 1であるo この乙と Se
は,資本家の限界貯蓄性向 (Se)が 一般的利潤率"の決定に参加し,労働 者の限界貯蓄性向 (Sw)と利潤率の決定とは無縁であることを示し,利潤 と貯蓄の聞には只一つの聞の関係式が成立し,乙の比例係数 (Se)により利 潤と所得の分配が,ひいては利潤率も決定されるのであるO 乙れが(50)のもつ 意味である。もし,前述とは逆に
1 ‑swY= 0 (58)
であれば,資本家に帰属する利潤 (Pe)はゼロとなり,従って ScPe = 0。 この結果(53)の右辺三壬ーは不定となるから,労働者貯蓄p Swは尚存在するに もかかわらず利潤率が決定できないこともあきらかで, 先に1‑swYキOの 条件が設定された理由はこ〉に見られる。つまり,労働者全体にとり利潤総 額は所与のもので,労働者はこの総利潤の分配にのみ参与し,その総額には 何の影響ももたないのであるD
つぎに,カノレドアの安定とは,いいかえれば投資が何らかの理由で均衡投 資を背離すれば,価格機構により,均衡投資に回復する傾向が存在すること であったが,との安定条件を更にあきらかにパシネッティ lとより示されてい
るO 一般に,
d ( P 、1:f (1 l S ¥
一 一 一 (59)
d t ¥ Y J ‑ J .¥ y y J であるが,乙訟に安定条件は
f ( 0 ) = 0 (60)
f'>O であるo
今,均衡条件 1 S
(61) y y
を み た す 利 潤 の 相 対 的 分 配 率 ( ヱ ) を ( 工¥ Y / ¥ Y γ/ にて示し, (59)をティラ
ー展開して
ま(与一(平)来J=f( 0 )+f'( 0 )
[ d d (+) (平)¥ (十)Y J ‑主(手)d (γ) ¥ Y J J j (手)来
(62)
信3
‑〔平一(平)つ
[ d d (.~~__) (平)¥ (‑‑Y 4‑)J 一九(手)) d (γ) ¥ Y J J (平)来
= m
とおけばι〔平一(平)つ =f'm(平一(平)つ
f'>Oが安定条件であるから,もしm<oならば(聞から安定的であるoすな わち均衡点において
一/dpy(十)<三九一(予)
d(--~:.-\ ¥ Yノ ーd (~\ ¥ Y /
であれば,こ〉に投資Iは人口成長率と技術進歩率により外生的にあたえら れるものである故,聞の左辺はゼロであるから,闘は
(?p‑)(子)>0
Y
と同義であるO これは定義から
ー今¥(-~-) =ーヤ¥(s斗 +s与 +Se与Pw)
( -~~- ) ' . L ' d L,,~_ )
¥ Y J ¥二Y /
此 倒
的U
(65)
(66)
>0
と同義。短期においては Pw=r Kw,そして利子率が利潤率に適応するため には時間が必要である故,短期においては,次式が成立するであろう。
白 羽
師 d (号) ^ 団
d (_~_) v
さ て . 予 + 与 1であるから