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機能的デザイン学習の展開とその今日的課題

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Academic year: 2021

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機能的デザイン学習の展開とその今日的課題

戦後のわが国のデザイン学習を中心として 中 島 三 雄*・米 田 明 生*

(昭和58年10月31日受理)

The Development of Functional Elements in Design Leaming and Its Present Problems

Mitsuo NAKAZIMA and Akio YONEDA

(Recieved October31,1983)

1 はじめに

 デザインという言葉は,現在われわれの日常語としてすでに定着し,最早なくてはなら ない用語となっている。戦後いちはやく服飾,ファッション界においてデザインなる用語 が使用されてから,しだいに市民権を得て今日にいたったものである。なかでもデザイン の普及は1950年代後半の高度経済成長期の,社会の工業化と大量生産の高まる中で急速に 広まったものである。また,この時期はデザインヘの社会的要請がますますその重要i生を 高め,いわゆる社会のあらゆる面でデザインブームをむかえた。その結果,デザインとい

う言葉はこの時期を契機として,人々の間に広く流布した。1950年代前半をわが国におけ るデザインの黍明期とすれば,1950年代後半から1960年代はじめのこの時期をデザインの 定着期といえよう。

 しかし,デザインの一般社会への普及は,はじめファッションや商品と強く結びついた かたちで,また重要な商業戦略としてのものであったことから,デザインが人々に本来的 な意義で把握され,これが正当に理解されていったとは言い難い。つまり,デザインはそ の概念や定義を持たないまま人々の間にとび出して市民権をえたと言えるものである。そ れ故,社会の情報化が急激にすすむ近年,いよいよデザインの意味やその使われ方は多岐 多様となり,そのためこの言葉が多方面で増殖し,今や,デザインという言葉は混乱期と もいえる様相を呈していると言っても過言ではない。例えば「デザインはよいが色が…」,

「あなたの人生をデザインしてみませんか」,「これ,非常にデザイン的だね」,「使い勝手 はよいがデザインが…」などの表現は,このことをよく表している。

 一方,デザインが小・中学校の公教育の場に初めて登場したのは昭和33年(1958)の学

*長崎大学教育学部美術科教室

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習指導要領の改訂以降であり,この時期は折りしも,上記したデザインブームの前頭にあ たっている。それ以来今日まですでに%世紀を過ぎ,またその問二度の学習指導要領の改 訂を経て,デザイン学習はそのたびごとにかなりの軌道修正を加えられてきている。およ そ,10年のサイクルをもって改訂される学習指導要領は,教育の流動的な要素をその社会 に相応させる意図を含むものであるが,上述したようにデザインの言葉としての多様なつ かわれ方をはじめ,デザイン学習をとりまく人と物の関係やその社会的環境は近年著しく 変貌しつづけていることである。そのためこれまで生活に深く根ざしてきたデザインは急 速にその個々人とのかかわりあいをうすれさせ,はやいテンポでその人々の生への問いか けを失いつつあるといえる。このような中で,いわゆる学校教育としてのデザイン学習は 今後どのように展開され,いかなる内容を指向すべきものであろうか。

 元来,人は生活の態様にしたがって,その快適さと心よさを求めんがために,生活に必 要な用具をデザインし,これらを役立ててきた。それらの用具は人の身体の,また生活の 一部ともなって人と自然環境との媒介としての諸機能を発揮してきた。そこで,ひとたび 用具が人々の生活に定着しはじめると,その用具のもつ特性が人々の生活行為に生存権を え,それとともにその用具の使用のスタイルがしだいに形成されることとなり,これが作 法として広くうけ継がれることとなった。この用具使用の作法は,その材質や安全性,使 い易さや美的なふるまいなどから発生したものとされている。作法の文化といわれる日本 の文化は,このような人と物の一体となった関係から成り立ってきたものであるため,そ こにある用具は様々のこまやかな情感がこめられたデザインの具現化されたものであり,

それゆえに,デザインは人々の生活の中に永く生き続けてきたものであるといえよう。

 しかし,社会の工業化による大量生産の波はこのようなこれまでの人々の生活の系を一 変させるものとなっている。そしてデザインは単にその目新しさと新たな機能をもり込ん だ製品によってのみ価値づけられ,つぎつぎに変化し,かつ消費されるものとしてしか存 在しなくなったかに見える。つまりデザインが人々の生活の論理に基づくものではなく,

商業と産業システムの枠組みによって変えられいるだけのものとなり,さらにわれわれの 日常生活もこのような枠組みに深く組み込まれたものとなってきている。それ故,つぎっ ぎに大量に生産される新製品の山にかこまれた環境の中に生活を余儀されているといえる。

その結果,われわれは生活のための用具を何一つ作らなくてもよいばかりでなく,それに ともなう本来あるべきデザインについて考える必要も失われてきている。常に変化する製 品への選択とその消費のサイクルは急テンポにすすみ,ここに人と物の関係が著しく希薄 なものに変化している。

 その意味でこのように急速に変貌する社会の工業化,都市化,情報化,商品化の流れに あって,人間と物との活性化した関係を目指し,これをとり戻すことは造形教育にとって もっとも重要なことであり,かつまたさしせまった問題であると考えられる。そこで本論 文ではこのような観点から,デザイン学習の普遍的な要素と生活や社会へ相応させるべき 流動的な要素とを見極め,これによって現行の中学デザイン学習の抱える学習上の種々の 問題点を,その目指す将来的展望のうえにたって考察することとした。

2 デザイン学習の変遷

デザイン学習の将来への展開を考えるにあたって,中学デザイン学習の変遷を戦後の学

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習指導要領を中心に,これを概観し,特にその機能的要素を含む学習内容についてその軌 跡をふり返ってみたい。

 戦後の美術教育の出発は,昭和22年(1947)に出された学習指導要領(一次試案)「図画 工作編」によってはじまる。それまでの工作科と図画科を統合して1教科としたものであっ

た。その中のデザイン(工芸)に相当する内容として「色」,「形」,「図案」,「木工」,「金 工」などの項目がみられる。「色」,「形」は現在の基礎練習であり,また「図案」は器具の 構成とその計画として明示されている。次いで昭和26年(1951)の二次試案には表現教材,

鑑賞教材,理解教材,技能熟練の4教材の柱があり,その具体的な題材名があげられてい る。この中の表現教材のデザイン的内容として「図案」,「配置配合」がみられ,デザイン の内容としては具体的でバランスのとれたものとなっている。またこれら両試案の特色と してともに日常生活への図画工作の応用とそれに必要な技術の指導に重点がおかれていた 点があげられる。

 また,図画科と工作科が加算的に統合した経緯が,内部的には再び分離する運動が昭和 30年代初めにいたるまで活発であった。その理由は戦後の工作教育の不振から,これを 脱するためのものであった。このような中で法的拘束力をもった学習指導要領として改訂 されて昭和33年(1958)に告示された。この時から図画工作科は美術科とかわり,折しも 社会のデザインブームを反映して,これまでの図案が新しくデザインの名で初めて学校教 育に登場した。しかし,その内容は「美術的デザイン」として示され,工作の内容は美術 科からはずされ,さらに美術の週当たり時間数も2・1・1と,教科の体をなさなくなっ ていた。またこれには,それまでの生活中心のカリキュラムから系統主義的な性格のカリ キュラムヘの移行がみられるが,戦後の復興も終え,高度経済成長期をむかえ社会的にも デザインがますます重視されてきたこの時期,このような美術的に遍したデザイン学習は,

わが国の美術教育に大きな禍根を残すものであった。

 このような,いわば 片肺飛行 のデザイン学習は次の改訂の,昭和44年(1969)公示 の学習指導要領によって修正され,ここにその本来的な態様を保ち,充実した内容を呈す るものとなった。その内容とは,基礎練習をはじめ,使用,伝達,環境のためのデザイン を含み,またはずされていた工芸も同時に盛り込まれて,絵画,彫塑,鑑賞と合わせた五 領域で編成され,週当たり時間数も2・2・1となった。しかし,機能的要素を含むデザ イン学習の実施に関しては,これを可能にしその実をあげるための美術科の施設設備や授 業時数,教材の開発,学習形態の研究,教師の資質等への隔たりなどは極めて大きく,し たがってその内容が十分行われてきていたとは言い難い。それ故,中学校におけるデザイ ン学習は,伝達のためのデザインを主に行わざるを得なかったし,そのため,使用,環境 のためデザインはいわば お題目 とされてきたことは否定できないものであった。ここ に課せられたデザイン学習への試練と課題は,関連する教員養成大学での教育の問題や,

また中学校における美術が入試の 周辺教科 として比較的等閑視されていることと無関 係ではなかったように思われる。。

 このようにアニメーションから環境構成のデザインまで広く,多岐にわたるデザイン内

容と直面し,これに整合しない美術科の学習上のギャップは,次の昭和52年(1977)改訂

の学習指導要領(現行)によって軽減されたものとなった。即ち, ゆとりある教育 のも

と,デザインの内容は精選,集約が加えられ,その結果,(1)基礎練習と伝達のためのデザ

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インが統合されてその関連を図り,(2)使用のためのデザインは工芸に吸収されてその内容 を統合し,(3)環境のためのデザインが削除されたことなどによるものである。これによっ てデザインは著しく身がるとなり,その用途や機能性,材料と製作技術に関する内容は工 芸に位置づけられ,実質的には機能的デザインが後退した感は否めないものとなった。

 以上のように,人と物との関わりの観点から,これをデザイン学習の機能的要素を含む 内容を中心としてその推移を慨観した。その結果は機能的要素を含むデザインの内容の増 減よりも,これを可能にし,その実をあげるための美術科の施設設備とその教材化を含め た教師の資質などに大きな問題を含むものと言えるものである。そしてこの問題はこれか ら人と物の活性化した関係を指向しようとするデザイン学習の将来への展望の重要なポイ ントとなるものであり,またこれは機能的要素を含むデザイン学習への観点に立てば極め て今日的な課題と言えよう。

3 デザイン学習の本質とその目的

 デザイン(工芸)領域の学習が,適応(機能的)表現の学習であるといわれる所以は,

デザイン活動が人と物の相関の科学に立脚したものであり,物がその目的にふさわしい諸 機能を発揮できるよう計画,製作されなければならないことによるものである。このこと は,いわばその物の計画やデザイン表現にあたって,各種の条件や制約がともなうことを 示唆するものでもある。つまり目的とする諸機能が発揮されるためのこれらの条件や制約 は実はデザイン表現に際して製作品の持つ最大の特徴と本質を具現させる要素ともなるも のである。製作品の特徴は,その形態,材質,寸法などによく現われているものであるが,

その他このような条件や制約をどのような視点で設定し,これをいかに調整し組み立てて,

その調和を図るかもデザイン表現の重要な鍵となるものである。一般にはこの視点の設定 に相当するものをデザインポリシーと言われているものであるが,一般社会でのデザイン 活動と,学校におけるデザイン学習(活動)との相違は,その設定の視点と次元の相違と 言えるものである。つまり,前者におけるデザインは,商品としての経済価値をもち,ま たその使用によってデザイナー(企業)は人の生活と環境に多大の影響をもたらすことで,

重要な社会的役割と責務を有している。これに対して後者は学習の場として子どもの発達 に相応した視点とその創造的表現のよろこび等を含めて,教育的に配慮されなければなら ないものである。

 しかしながら,この両者においてデザインのプロセスとデザイン活動の操作の内容は基 本的には異なるものではない。いづれにおいてもそれは動機・計画設計・表示・製作・完 成(使用)と一連の流れをもつものなのである。この際,デザインの一般的条件とされて いるものは機能,材料,構造,製作技術,経済性などであり,さらに創造性,審美性もま た計画に大きな比重をしめることは言うまでもない。そして実際のデザインにあたっては これらの諸条件は相矛盾し,ともに整合しない事もしばしばである。それ故,デザイン学 習ではまずこれらデザインの諸条件について,生徒への適切な段階の理解と確認を得させ,

さらにデザインヘの必要な調査と分析などの学習が子どもの発達に相応して考慮されなけ

ればならないであろう。この学習の過程はよいデザインを得るための,いわばデザインの

心として生徒たちに把握させる必要不可欠のものである。つまり,これらデザインの諸条

件を自らの目で確かめ,その可能性を科学的に考察する分析的学習の態度の修得が,これ

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によって期待できると思われる。

 次いで,これらの分析の結果を学習の目標に合わせて,具体的に組み立てる総合の過程 とさらにそれを進める展開の過程がある。この過程はデザイン活動の中核として最も重要 な意義をもつものである。即ち,この活動によって相互に類似や矛盾する資料を整理し,

それらの総合的な調整と調和を図ることがデザイン学習の目標となるものである。した がって,この過程における学習は,デザイン学習の核心の目的である感性と知性との融合,

調和の教育に他ならず,このことはまた,近代教育に欠くことのできない高い教育的意義 を有するものであると考えられる。

 感性と知性の融合の調和的教育は人間と自然や社会の認識や表現と認識の統一,問題解 決の創造的実践の態度などの諸点を含むものであるが,従来の我が国のデザイン学習では これが明確なかたちで取り入れられてきたとは言い難い。そのため人間が本来有する美的 欲求と科学,技術との総合と調和の学習の視点の認識に立脚した真の意味のデザイン学習 がなされていたとはいいがたい。したがってデザイン学習が本来の目的とその教育的使命 をより強力に発揮させるためにはこれらの諸点へのとりくみが重要な課題となるものと考 えられる。

4 デザイン学習の現状と課題

 4−1 教科書教材の現状とその教材観  本節ではデザイン学習の現状を

       表1 各教科書の教材(題材)配列 みるため,現在発行されている4

種の中学美術教科書(いずれも検 定済)に示されたデザイン及び工 芸の各教材についてその教材の属 する分野を調べ,さらにその教材 観について検討した。

 調査の分野を構成(色や形の基 礎練習),伝達,機能,材料・技能 の4項目として,その結果を表1 に示した。この表の○印は教材(題 材)の数を示す。また機能的教材 と材料・技能的教材との分類の基 準は,前者はペンスタンドのよう

に機能性と使用範囲が制約された ものとし,後者を置き物のように 機能性よりも美的装飾的要素の高 いものとした。

 表1によれば,機能的教材については空欄や配列のばらつきが目立ち,その位置づけや 解釈に相違の大きいことがわかった。上述したように,現行の学習指導要領では,機能性

を含む教材は工芸に吸収され,これに包括されていることから,工芸とデザインとの区分 を明確にできないうらみがある。またこれに関する中学校教材を一般的なカテゴリにした

教科書

A B C D

学 年

1i2i3 1i2i3 1i2i3 1i2i3

構成 OiOiO 鵬

OioiO oiOio

Oloi

︾的教材 oiOiI        I

i

Oioi l

  :

oiOiI        I :1  鵬 oioi:  lO:O:  :

1 1        1 1        1

伝達的 oioiO l

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教材 oi

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材料

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●技

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1        『 1

1

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がって区分する必要はないが,この機能性を含む教材についての現状は新しい展開を期待 すべきであるように思われる。

 また,機能的教材の内容についてみると,C社はこれに該当するものがなく,残る3社 のうちA,Bの両社は共にペンスタンド,ラック,状差しなどの木工品の製作に含めB社 ではハウトー形式でその製作順を追っている。これに対してD社は箸や椀など日本人の生 活の器物に視点をあてておりこの両者のちがいは対照的である。

 そのちがいは,機能的デザイン学習に重要な目標と教材観に深く関わっているとみられ る。つまりこのD社の場合は,教材と教育目標がそれぞれ別々に構成され,教材を通した デザイン学習の目標が認められるのに対して,A,B,Cの他の3社は,そのまま教育目 標や内容として教材が設定されていることによるものである。つまりこの3社の教材はこ れを描いたり,作ったりすることが即ち学習の目標となっているためである。このような 教材観の立場は,戦前からわが国の美術教育に伝統的に踏襲されてきた,いわば目標論に

よる教材観と見ることができる。

 教材の目標について中内は「そこでは,「指導」する内容と称して,じつは,教材に相当 するものがあげられ,逆に「目標」を細分化したものが教材であるという論法がとられた りしている』(1)と指適している。このような観点に立てば,先のD社の表現教材「割り箸を 作ろう」(1年,30頁)の授業は逆に成り立たず,したがって木や竹から一組の箸を作るこ

とがこの教材の最終目標とは言えないことになる。つまり,これが授業として成り立つた めにはこれを作ることで木と日本人の生活を考え,柾目という木材の長所とその材質の特 性を見直し,これによって人と物とデザインを見直すことをねらいとすべきもので,この ことはまた文章によっても示唆されている。なお,この教科書は今学習指導要領の施行年 の昭和56年からはじめて出版されたものである。(全国の中学校での採択率2.7%一昭和57 年調べ一)。

 美術教育において,ものをつくるよろこびとその経験は,子どもの成長発達のうえから その教育的意義はきわめて大きく,かつ強調されるべきものである。しかし,デザイン学 習の本質とも言える機能表現の教材に対しては,これが単なるものつくりのデザイン学習 にすり変ることなく,その本来的目標を明確にさせるためにもその教材の構造や教材の解 釈は極めて重要な意義をもつものであるといえる。

 4−2 デザイン学習の今日的課題

 現代の急速に変動しつつある生活の態様や社会環境の中で,人間と人間,人間と物との 豊かな関係が失われ,そのつながりはますます稀薄になりつつあるかにみえる。このよう な中で,中学デザイン学習が今後指向しなければならない方向は,これらの現象について の新たな認識と,それに基づいてその生活や社会に相応した人間と物との相互の関係を問 い直し,これをデザイン学習に積極的に取り入れることである。この方向はデザインが本 来的に関わる人間の豊かな生活や社会への新たな設計,計画を担う,いわばデザインの必 然性によるものであると言える。

 しかし,また中学デザイン学習はこの方向とは離れて,このような変動する生活や社会 の環境に左右されない普遍的な学習の方法であることもまた重要な当為性である。

 これらはいずれも中学デザイン学習の直面する重要な二つの側面として,いわば両輪の

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機能を有し,またその将来への展望からも極めて今日的意義をもつものであると思われる。

このような観点から,上記の二つの面の各々について,そのもっとも重要な課題であると 考えられる点にふれてみたい。

 その第一はデザイン学習の立場から人間と物の生きた関係を指向するために,機能的デ ザイン学習の積極的な導入とその授業実践の研究の推進があげられる。しかし,上記した ように,現状はその実践にともなう施設設備をはじめ,そのためのいくつかの困難な問題 が指摘される。そしてこれらの問題がなお機能的デザイン学習の実践を阻んでいるとみら れるものでもある。そこで当面するデザイン学習の極めて重要な課題として,その機能的 教材の実践に焦点をおき,これを可能にするための方法について考察しなければならない。

 即ち,これまで機能的デザイン学習の授業のプロセスは,これを一般的なデザインのプ ロセスにしたがって計画,実施されてきたものであった。したがって生徒は計画から完成

(使用)まで,その一連の活動を通した学習を行ってきている。たしかにこの展開は最も 自然で,また生徒の学習上もっとも望ましいものには相違ないが施設設備の実態などから,

その実状に即した授業の展開を図るためには,この授業のプロセスがよりフリーに計画・

実施されなければならないと考える。なぜなら,デザインのプロセスの一部を切り取り,

これを深く追求することが逆に機能的デザイン学習の真髄に迫ることができると考えられ るからである。したがってその真髄とも言えるデザインの「計画」と「表示」を中心とし て,これに集中した学習を行う必要があろう。この場合「表示」は,一般的にはデザイン の内容を第三者に伝える手段にすぎないが,これをここでは生徒のデザイン活動の最終段 階に位置づけ,またその方法も平面に限らず,種々の素材での立体模型等も含むものとし てあつかう。つまりこれによって,いわばレンダリングやモデル(模型)の作成・製作を 通して,機能的デザイン学習の実質的な学習の効果を上げることができると考えられるか らである。これによって中学美術の配当時数,材料への抵抗感,製作技術,施設設備等へ の中学現場のギャップは著しく軽減され,その結果この授業の前段のプロセスである「計 画」がその重要な位置づけを可能にし,人と物との関りあう学習の場の構成が容易にでき るものと考えられる。それ故,このような授業実践を通して機能的デザイン学習のもつ教 育的意義は豊かに醸成されることが期待される。

 その第二として造形の基本的原理や,美的調和の原理とされている変化と統一の学習の 実践の推進であろう。いわゆる,造形美の究極的な構成は,変化および変化する要素と,

融和し統一する二つの作用の関わり合いに他ならず,調和の美とはこの二つの要素の相関 の上に成り立つものである。それ故,変化と統一など,造形の美的秩序を含む内容は戦後 わが国の学習指導要領にも一貫してとりあげられているが,未だその有効かつ適切な教材 とこの学習の実践例の研究報告は皆無であるといっていい。(2)このことは,また変化と統 一の原理が造形の重要な命題であるにも拘わらず,この命題がこれまで学習展開の上から 造形表現の技術上の一手段としてしか位置づけられていなかったことによるものである。

そのため,学習に際してもこれが上位目標として授業の主題に位置づけられてこなかった

ことである。しかし一方,変化と統一の原理を学習の上位目標におけばそれだけ,生徒に

とってその授業は無味乾燥なものとなり,生徒の興味・関心や創造的活動がともなわなく

なる欠点の生まれることは否定できない。そこで筆者はこのような観点から,これまでデ

ザイン学習の実践にあたって,その初発的題材として「模様」の学習を提案した。また素

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材体験や物体の表面感の学習との関連づけから,フロタージュ,コラージュ等での実践例 を試みてきた。(3)このような変化と統一の学習において,造形要素の構成のどれが変化の 要素であり,何が統一的に作用する要素であるかという認識とその感覚的把握を,中学デ ザイン学習の中に早急にとり入れられなければならない課題である。これはまたデザイン 学習の普遍的な命題でもあり,この意味において変化と統一の学習はすこぶる今日的課題

と言えるものである。

5 おわりに

 豊かな生活をめざした器物の使用を通して,人間の生活の中にながく生き続けてきたデ ザインは,作法をはじめわれわれの伝統的な精神文化をも醸成しつづけてきた。しかし,

現代のわれわれの生活とそれをとりまく社会が急速に変動する中では,今や人と物の脈々 と続いてきた生きた関係は失われつつあり,大量な生産と消費の加速的なサイクルの機構 の中に生活のすべてが埋没しつくされるように思われる。

 このようなデザイン学習をとりまく環境の著しい変貌は,人と物の関わり合いと,その 理念を追究するデザイン学習が大きな試練をむかえていると言えるであろう。そこで,戦 後の中学デザイン学習をこのような観点に立って展望するとき,デザイン学習が今後指向 さなければならない方向の一つとして,人と物の新しい体系を見い出し,その関係を活性 あるものとして取り戻すことが,当面重要な課題であると考えた。そこで本文ではこれに ついて,その具体的な方法について検討した。このことはまた,デザイン学習のみならず 造形教育に広く求められる根本の,その基盤となる課題と言えるものでもある。

 さらに,またデザイン学習の普遍的な命題とされる,変化と統一など,造形の諸原理に 関する学習の実践とその推進についても,今日的課題としてこれを取り上げてみた。

 そして,これらの課題は機能的デザイン学習の将来への発展的課題として今後ますます 重要視されるものと思われる。

引用及び参考文献

(1)中内敏夫 教材と教具の理論 1978 有斐閣 P16〜17

(2)日本教育大学協会研究促進委員会 教科教育学に関する研究総目録 第3・4・5集

(3)米田明生 美術科・デザインにおける変化と統一の学習の実践 1981長崎大学教育学部教科教育  学研究報告第4号 P lO3〜123

 文部省 学習指導要領(図画工作編) 昭22年,昭26年,昭33年,昭44年,昭52年改訂版  山形 寛 日本美術教育史 1967黍明書房

 川添 登 デザイン論 1979 東海大学出版会

 川添 登 道具の文化史 1981 読売新聞社「日本の道具」

 米田明生 中学美術におけるデザイン学習の問題点 1980 長崎大学教育学部教科教育学研究報告

 第3号

参照

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