経営 と経済 第
8 5
巻 第3・4
号2 0 0 6
年2 月
《判例研究≫
商標製品の並行輸入における ライセンス契約違反 と適法性
‑ フレッドペ リー事件最高裁判決 ‑
岡 本 芳 太 郎
商標製品の並行輸入におけるライセンス契約違反と適法性
‑ フレッドペリー事件最高裁判決‑ 5 61
Abst ract
Supr e meCo ur tha sf o l l o we dl o we rc o ur t s ' de c i s i o nso npa r a l l e li mpo r ‑ t a t i o no ft r a de ma r kgo o dsbyr ul i nga sf o l l o ws :
" I f( 1 ) t het r a de ma r ksa r el e ga l l yputo nt hego o dsbyt hea ut he nt i c t r a de ma r ko wne ri nt ha tc o unt r yo rbyi t sl i c e ns e e,( 2 )s a i dt r a de ma r k o wne ra ndt heo wne ro ft hes a met r a de ma r ki nJ a pa ni st hes a meo ri s de e me dt obet hes a meduet ot hel e ga lo re c o no mi cr e l a t i o nso ft he m , a nd( 3 )t heq ua l i t yo ft het r a de ma r kgo o dst obei mpo r t e di sde e me dt o bes ubs t a nt i a l l yt hes a mewi t ht ho s eo ft het r a de ma r kgoo dss o l dbyt he t r a de ma r ko wne ri nJ a pa no wi ngt oi t sc a pa bi l i t yt odi r e c t l yo ri ndi r e c t l y c o nt r o l仇eq ua l i t yo ft hego o ds , pa r a l l e li mpo r t a t i o no fs uc hgo o dsi sno t s ubs t a nt i a l l yi l l ega la si twi l lno tha r m 仙ef unc t i o nso ft r a de ma r k , na me l yr e pr e s e nt i ngt het r a de mar ko wne ra ndgua r a nt e e i ngt heq ua l i t y o fgo o ds ,a ndwi l lno ti mpa i rt her e put a t i o no ft het r a de ma r ko wne r a nd / o rt hei nt e r e s t so fc o ns ume r s . "
Supr e meCo ur tha sa l s oml e dt ha tput t i ngt r a de ma r ko nt hego o ds ma nuf a c t ur e di nvi o l a t i o no ft her e s t r i c t i o no ft het e r r i t o r ya ndt hepr o
‑hi bi t i o no fs ubc o nt r a c t i ngo ft heLi c e ns eAgr e e me nti sno tal e ga lus eo f t r a de ma r ka ndj e o pa r di z e st hequa l i t ygua r a nt e ef unc t i o no ft r a de ma r k a si tde pr l Ve SO ft hec a pa bi l i t yt oc o nt r o lt heq ua l i t yo ft het r a de ma r k go o dsf r o m t het r a de ma r ko wne r .
Us eoft r ade mar ks hal lnotbel e ga lwi t hr e s pec tt ot hegoods ma nuf a c t ur e di nvi o l a t i o no fr e s t r i c t i o no nt het e r r i t o r yo fma nuf a c t ur e.
Vi o l a t i o no fr e s t r i c t i o no ns ubc o nt r a c t i ngwi l lno tma ket heus eo ft r a de ‑ ma r ki l l e ga l .Ther e s t r i c t i o no fs ubc o nt r a c t i ngl Sno te l i gi bl ef o rr e g l S ‑ t r a t i oni nc a s eo ft hes o l ea nde xc l us i vel i c e ns e,wi t ho utwhi c hus eo f t r a de ma r ki nvi o l a t i o no fs uc hr e s t r i c t i o ni sc o ns i de r e dno tt obet hei n‑
f r i nge me nto ft r ade ma r kr i ght s .Thes a mes ha l la ppl yt oa l ll i c e ns e s .
Ha r m t ot heq ua l i t ygua r a nt e ef unc t i o no ft r a de ma r ks ha l lbeme a s ‑
ur e dbymo r eo b j e c t i ves t a nda r ds ,s uc ha st hequa l i t i e so rc ha r a c t e r i s ‑
t i c so ft hegoo dsi ns t r e a m,t ha ni nt e r na lr e l a t i o nso ft r a de ma r ko wne r s ,
s uc ha st hevi o l a t i o no ft het e r mso ft hel i c e ns ea gr e e me nt s .
5 6 2 経 営 と 経 済
最高裁判所第一小法廷平成 1 5 年 2月2 7 日判決
平成 1 4 年 ( 受)第 1 1 0 0 号 損害賠償 ,商標権侵害差止等請求事件
【 事 実】
英国法人 FPS 社 は,世界的に著名なブラン ドである 「フレッ ドペ リー」
の商標 について 日本 において商標権 ( 以下 「本件商標」 とい う。) を有 し, かつ,世界 11 0 カ国において,本件商標 と実質的に同一の商標等 について商 標権 を有 していた。被上告人 Ⅹ は,本件商標 について FPS 社か ら専用使用 権の許諾 を受けていたが,平成 8 年 1 月 2 5 日に譲渡 を受け,同年 5 月 2 7 日そ の登録 を了 して商標権老 となった 。FPS 社は,本件商標以外のすべての商 標権 について も,平成 7 年 1 1 月 2 9 日に Ⅹ の 1 00% 子会社である FPH 社に譲 渡 した。
上告人 Y は,平成 8 年 3 月 ころか ら 7 月 ころまで,シンガポール法人 VPL 社 か ら本件商標 と同一の標章 が付 された中国製ポロシ ャツ ( 以下 「本 件商品」 とい う。) を輸 入 し,同年 6 月以降 日本国内で販売 した。本件商品 は,シンガポール法人オシア社が,中華人民共和国にある工場に発注 して下 請製造 させ, VPL 社に販売 した ものである。
オシア社は, FPS 社 か ら,平成 6 年 4 月 1 日か ら 3 年間,本件商標 と同
一の商標 の使用 につ き許諾 を受けていたが,本件商品の製造 は, FPS 社 と
オシア社間の使用許諾契約 ( 以下 「本件契約」 とい う。)に定め る許諾契約
地域,シンガポール共和国,マ レイシア,ブルネ イ ・ ダ ルサラーム国及びイ
ン ドネシア共和国以外の中華人民共和国で製造 された ものであ り,許諾条項
に達反す る。 また,本件契約 には , 「オシア社は ,FPS 社の書面 による事前
同意な く,契約品の製造,仕上げ又は梱包の下請 につき,いかなる取決めも
行わない ことを約す る。」 旨の条項があ ったが,オシア社は,本件商品の下
請製造 につ き, FPS 社の同意 を得ていない。 なお,本件契約上 の許諾者の
商標製品の並行輸入におけるライセンス契約違反と適法性
‑ フレッドペリー事件最高裁判決 ‑5 6 3
地使は,平成 7 年 1 1 月2 9 日 ,FPH 社 に移転 した。
Y が Ⅹ に対 して, Y が輸入販売する本件商品等が偽造であるな どという
Ⅹ が行 った新聞広告 ,関税定率法所定の輸入禁制品の認定手続 の申立て等 が営業 を妨害 し又は信用 を害する ものである と主張 して,民法 7 0 9 条 に基づ き損害賠償等を請求 したのに対 し,Ⅹ が Y に対 し,Y の本件商品の輸入及 び販売 が本件商標 の侵害 に当た る と主張 して,損害賠償等 を請求 した。Y は,本件商品の輸入がいわゆる真正商品の並行輸入 として違法性を欠 くな ど
と主張 した。
【 判 旨】
商標権老以外の者が,我が国における商標権の指定商品 と同一 の商品につ き,その登録商標 と同一の商標 を付 した ものを輸入する行為は,許諾を受け ない限 り,商標権 を侵害す る ( 商標法 2粂 3項,25 条)。 しか し,その よう な商品の輸入であって も,
( 1 ) 当該商標が外国における商標権老又は当該商標権者か ら使用許諾を受け た者 によ り適法に付 された ものであ り,
( 2 ) 当該外国における商標権者 と我が国の商標権者 とが同一人であるか又は 法律的若 し くは経済 的 に同一人 と同視 し得 るような関係があ ることによ り,当該商標が我が国の登録商標 と同一の出所 を表示するものであって, ( 3 ) 我 が国の商標権者が直接的に又は間接的に当該商品の品質管理 を行い得 る立場 にあることか ら,当該商品 と我が国の商標権者が登録商標 を付 した 商品 とが当該登録商標の保証する品質 において実質的に差異がない と評価
され る場合
には,いわゆる真正商品の並行輸入 として,商標権侵害 としての実質的違法 性 を欠 くもの と解するりが相当である.けだ し,商標法は , 「商標 を保護す
ることによ り,商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図 り, もって産
5 6 4 経 営 と 経 済
業の発達 に寄与 し,あわせて需要者の利益を保護することを 目的 とする」 も のである ところ ( 同法 1条),上記各要件を満たすいわゆる真正商品の並行 輸入は,商標の梯能である出所表示機能及び品質保証機能を害することがな く,商標の使用をする者の業務上の信用及び需要者の利益を損なわず,実質 的に違法性がない とい うことができるか らである。
これを本件について見 るに,前記事実によれば,本件商品は,シンガポー ル共和国外 3か国において本件登録商標 と同一の商標の使用許諾を受けたオ シア社が,商標権者の同意な く,契約地域外である中華人民共和国にある工 場に下請製造 させた ものであ り,本件契約の本件許諾条項に定め られた許諾 の範囲を逸脱 して製造 され本件標章が付 された ものであって,商標の出所表 示機能を害するものである。
また,本件許諾条項中の製造国の制限及び下請の制限は,商標権者が商品 に対する品質を管理 して品質保証機能を十全な らしめる上で極めて重要であ る。 これ らの制限に達反 して製造 され本件標章が付 された本件商品は,商標 権者 による品質管理が及ばず,本件商品 と被上告人 Y が本件登録商標を付 して流通 に置いた商品 とが,本件登録商標が保証する品質において実質的に 差異を生ずる可能性があ り,商標の品質保証機能が害されるおそれがある。
したがって,この ような商品の輸入を認めると,本件登録商標を使用する FPS 社及び被上告人 Y が築 き上げた , 「フレッドペ リー」のブラン ドに対す る業務上の信用が損なわれかねない。また,需要者は,いわゆる並行輸入品 に対 し,商標権者が登録商標を付 して流通に置いた商品 と出所及び品質にお いて同一の商品を購入することがで きる旨信頼 しているところ,上記各制限 に達反 した本件商品の輸入を認める と,需要者の信頼に反する結果 となるお それがある。
以上によれば,本件商品の輸入は,いわゆる真正商品の並行輸入 と認め ら
れないか ら,実質的違法性を欠 くということはで きない。
商標製品の並行輸入におけるライセンス契約違反と適法性
‑ フレッドベリー事件最高裁判決 ‑5 6 5
【 研 究】
1.並行輸入が認め られるための要件
本判例は,最高裁 として始めて,商標を付 した製品 ( 以下 「 商標製品」 と い う。)の並行輸入について,下級審裁判例 に したがい,商標機能論 に基づ いて判断す ることを示 した もの としてよ く知 られている。
すなわち,商標権者は指定商品又は指定役務 について登録商標の使用 をす る権利 を専有する ( 商標法 2 5 条) ところ , 「 使用」 には,商品に標章 を付 し た ものを輸入する行為 が含 まれている ( 同法 2条 3項 2号)ので,た とえ, 商標権者 自身が外国で販売 した ものであって も,登録商標 と同一の標章を付
した商品を輸入する行為は,商標権 を侵害することになる。
しか し,商標製品の並行輸入については,パーカー万年筆事件 ( 昭和 45 年 2 月 2 7 日大阪地裁判決)において,真正商品の並行輸入が商標権の出所表示 機能及び品質表示機能 を害 しない場合には,実質的違法性を欠 き,商標権侵 害を構成 しない と判断 されて以来,多 くの同趣 旨の下級審裁判例 が存在 し, 学説の多数 もこれに賛 同 している。
本件判決は, この下級審判決及び学説の立場を確認 1し,
( 1 ) 当該商標が外国における商標権者又は当該商標権者 か ら使用許諾を受け た老 によ り適法 に付 された もの 2 ( 以下 「 適法性」 とい う。)であ り, ( 2 ) 当該外国における商標権者 と我が国の商標権者 とが同一人であるか又は
1 高都塵規子 「 時の判例」ジュリス ト No. 1 2 5 11 6 6 頁は,本件判決は従来の下級審裁判例 よりも 「品質に関する権利者のコン トロール ( 品質管理) という観点を強調 している」
としている。
2 無権利者が製造,販売する場合は もちろん違法であるが,権利者の下請業者が権利者
の許可な く商標 を付 した商品を横流 しす る場合 も,商標が適法 に付 された もの とはいえ
ない ( 「 商標法概説 第二版」小野昌延 有斐閣 1 9 9 9 2 7 5 頁) 。
566 経 営 と 経 済
法律的若 しくは経済的に同一人 と同視 し得 るような関係があること
3によ り,当該商標が我が国の登録商標 と同一の出所を表示するもの ( 出所の同 一性)であって,
( 3 ) 我が国の商標権者が直接的に又は間接的に当該商品の品質管理を行い得 る立場 にあることか ら,当該商品 と我が国の商標権者が登録商標を付 した 商品 とが当該登録商標の保証する品質において実質的に差異がない と評価
される場合 4 ( 品質の同一性)
には,真正商品の並行輸入は , 「 商標の機能である出所表示機能及び品質保 証機能を害することがな く,商標の使用をする者の業務上の信用及び需要者 の利益を損なわず,実質的に違法性がない とい うことができる」 と判断して いる。
2 .ライセ ンス契約の違反と真正商品の並行輸入
本件では FPS 社が所有 していた 日本国内及び外国の商標権が Ⅹ と FPH 社に譲渡 されるが ,FPH 社は Ⅹ の 1 0 0 % 子会社であるか ら出所の同一性は 認め られ る。
しかし,本件商品は,オシア社が FPS 社 とのライセンス契約 に定める許 諾契約地域以外の中華人民共和国で製造 した ものであ り,また ,FPS 社の 書面による事前同意な しに下請製造 した ものであるか ら,その適法性が問題
となる。
3 外国事業者 と日本の商標権者の間に資本的 ・人的支配関係がある場合や使用許諾契約, 販売代理店契約があ る場合等に,認め られている。外国事業者への使用許諾者 と商標権 者が親子関係にある場合 ( ラコステ事件 昭和 5 9
年1 2
月7 日 東京地裁判決),商標権者 が外国事業者の西 日本代理店q) 場合 ( BBS 商標事件 昭和 63
年3
月25日 名古屋地裁判 決)等。
4 品質の同一性については,実際に輸入 された商品 と日本国内で販売 されている商品の
品質 に相違があって も,商標権者の品質管理が及んでいれば実質的同一性 があるとされ
る。 ラコステ事件 ( 昭和 5 9
年1 2
月7 日 東京地裁判決)では,裁判所は,輸入商品は米
国での販売を許諾された商品で 日本国内で販売 されているスポーツシャツ等 とは表示,
原産地表示,形態等が異なっているが,権利者が許容 している範囲内での相違であ り,
権利者の信用を害 しない と判断 した。
商標製品の並行輸入におけるライセンス契約違反と適法性 ‑ フレッドペリー事件最高裁判決 ‑
5 67
ライセンス契約に違反 して商品に商標が付 された場合の適法性 についての 下級審裁判例には,
( 1 ) 契約違反はあ くまで契約当事者の内部関係で適法性の判断に影響 しない とするもの 5,
( 2 ) ライセンス契約の許諾範囲を逸脱 して使用 された場合は無権限者 による 使用であ り,適法な使用 とはいえない とするもの 6・7 ,
( 3 ) ライセンス契約違反 が商標権者 の品質管理機 能 を排除す る ものであれ ば,商標の適法な使用 とはいえない とするもの 8,
5
東京地裁平成1 1
年1 月2 8
日判決 (東京地裁平成8
年 (ワ)第8 6 25
号事件及 び同年 (ワ)第1 5 0
11号事件)及びその控訴審である東京高裁平成1 2
年4 月1 9
日判決 (東京高裁平成1 1
年 (ネ)第1 4 6 4
号事件)「被許諾者 において許諾契約の製造地域制限条項 に達反 する行為 があ った として もそれは商標権者 と被許諾者 との問の内部関係 とい うべ きであ り,許諾契約 が解除 されない限 り,商標権者 か ら許諾 を受けた者が製造販売 した商品であ る とい う点 に変わ りはないか ら,商標の出所表示機能が害 されることはない」
「本件商品については, オシア社 による販売前 に許諾契約が解除 されていた とは認 め られないか ら,本件商品の 輸入は,真正商品の並行輸入 として商標権侵害の実質的違法性を欠 く」6
本件事件の第一審であ る大阪地裁平成1 2
年1 2 月21
日判決 (平成9
年 (ワ)第8 4 8 0
号事件 及び平成9
年 (ワ)第1 0 56 4
号事件),
「商標 の出所表示主体以外の第三者は,本来,当該商 標 を商品に付することにつ き,何 ら権限 を有 しないのであ り,その出所表示主体の許諾 を得 ることによって,初 めて, (略)当該許諾の商標 を付する際の約定 に定め られた範囲 においてのみ,商標を付する権限が与え られるにすぎない」7
同判決はまた,出所表示主体は,
「製造地及び製造者 に関する条項をライセンス契約 に 設ける場合 には,商品製造技術,品質管理の水準及び商品の原材料の調達 の難易その他 諸般の事情 を勘案 して, どの ような条件 で製造 された商品であれば,第三者が製造 した 商品であって も, 自己の 出所 を示す商標 を付 して流通 に置 いて もよいかを検討,決定の 上,第三者 に対 して,当該条項 をその内容に含む許諾 をしているのである。 したがって,出所表示主体は,許諾 を与 え られた者 (略)が,それ らの約定 に定め られた範囲を超 え て商標 を付 した場合 においては,その ような商品が 自己の 出所 を示す商標 が付 されて流 通 に置 かれ ることを許諾 していないのであって,それに もかかわ らず,そq)商標 が表示 する出所 が出所表示主体 にあることを容認 しなければな らない とい うことはで きない。」
と述べている。
8
本件の原審である大阪高裁平成1 4
年3 月2 9
日判決 (大阪高裁 平成1 3
(ネ)第4 2 5
号事件)「商標 が,その本来の機能 を発揮す る上 では,当該商品に付 された商標 に よ り出所 とし て明示 された者 の品質管理機能がその商品に及んでいるこ とが不可欠 とい うべ きである か ら,当該商品の由来 を示す限 りにおいて出所表示 (自他識別)機能 が維持 されている ようにみえる場合で も,出所表示主体の品質管理機能が実質的 には当該商品か ら排除 さ れている と認 め られ る ときは,その ような商品に商標 を付 す る行為 は,た とえ,それが ライセンシーによってな された ものであ る として も,適法 に商標 が付 された もq)とい う ことはできない。」 と述べている。
5 6 8 経 営 と 経 済
( 4 ) ライセンス契約違反により品質保証機能が働かない場合には,実質的違 法性がない とはいえない とするもの
9があった。
最高裁判決は,
( 1 ) ライセンス契約に定め られた使用許諾の範囲を逸脱 して製造 された商品 に, 日本の登録商標 と同一の商標 を付す行為は,商標の出所表示機能を害 する。
( 2 ) 商標権者が商品に対する品質を管理 して品質保証機能を十全ならしめる 上で極めて重要なライセンス契約における制限に達反 して製造 された商品 に 日本の登録商標 と同一の商標を付す行為は,商標の品質保証機能が害 さ れるおそれがある。
と判示す る。
本件においては,ライセンス契約の違反 により,商標の出所表示磯能及び 品質保証機能が害されるおそれがある以上,ライセンス契約の違反を単なる 契約当事者間の内部関係の問題 として,ライセンス契約条件に遵反 して商標 が使用 された商標製品の並行輸入を実質的違法性がない として許容すること はできないのであ り,最高裁判決は この限 りにおいては正当である。
ところで,本件においては,ライセンス契約における製造地域制限条項及 び下請制限条項の違反が,使用許諾の範囲を逸脱するとともに,品質保証機
9
東京高裁平成1 4
年1 2 月2 4
日判決 (東京 高裁 平成1 3
年 (ネ)第5931
号事件)。真正商品の 並行輸入を認 める理 由は,
「我が国の商標権者 が親子会社関係ない しライセンス契約関係 な どを通 じ,直接的あ るいは間接的 にその商品の品質 を管理す ることがで きることか ら, 当該商標権の出所表示機能 を害 さないだけでな く品質保証機能 も害 さない, と考 え られ るこ とに求め られ るべ きであ る。 」
「商 品の製造地域 は,商品の原材料又 は部品の調達及 び商品の製造技術等 の商 品の品質管理 に密接 に関連 す る事項 であ るため,商品の品質 を 維持 し管理 す るための基盤 とな る ものであ る。 」
「ライセンス契約 におけ る製造地域制限 条項違反 は,一般 に,商標の品質保証機能 を害す る結果 を導 く」商標製品の並行輸入におけるライセンス契約違反と適法性
‑ フレッドペリー事件最高裁判決‑ 569
能 を十全な らしめる上で重要な条項 の違反の両方 に該 当することによ り,商 標の出所表示機能及び品質保証機能が害 されるおそれがあ り,並行輸入が実 質的違法性 を欠 くとす ることはで きない と判断 されている。
しか し,真正商品q) 並行輸入は,商標の機能である出所表示機能及び品質 保証機能が害 されることがな く,商標の使用をす る者の業務上の信用及び需 要者の利益 を損なわず,実質的に違法性がない場合 に認め られるのであるか ら,ライセンス契約 における使用許諾の範囲の逸脱又は品質保証機能を十全 な らしめる上で重要な条項の違反のいずれかが存在すれば,実質的違法性を 欠 くことにはな らない と考 え られる。
この意味で,本件判決後の下級審裁判例で , 「ライセンス契約 における販 売地域の制限に係 る取決めは,通常,商標権者の販売政策上の理 由でされた にすぎず,商品に対する品質を管理 して品質を保持する 目的 と何 らかの関係 がある とは解 されない。」 として,販売地域制限等違反 の商品の並行輸入を 認める旨述べている下級審判決 1 0 があ るが,疑問である。
また,ライセンス契約条項違反 については,使用許諾の範囲の逸脱 を問題 にすることな く,商標機能論 を前提 にいかなる条項 がそれを害す ることにな るかを個別 に検討 し,商標の機能を害 しない場合 には適法性要件 を満た し実
1 0
東京地裁平成1 5 年 6
月3 0
日判決 (平成1 5 年 ( ワ) 第3 3 9 6
号差止請求権不存在確認事件) (事実)原告 Ⅹ はマ レーシアのチーフ リソースイズ社( CR
社)か ら本件商品を輸入 し たが,CR
社は,当該商品を,マ レーシアのビージーマーケテ ィング( BGM)
か ら仕入 れている。BGM
は,ボデ ィー ・グラブ ・インターナシ ョナル社( BG
I) との間でライセ ンス契約を締結 し,本件商標 と同一商標 を使用 した商品をマ レーシア国内で製造販売す ることの許諾を得ている.被告Y
は, 日本の商標権者であ るBGI
か ら,専用使用権の設 定を受け登録 を受けた。(判断)
BGM
とBGI
とのライセンス契約において,BGM
の商品の販売地域がマ レー シアに制限 されていた と認めることはで きない とした上で,
「仮 に,BGM
とBGI
との前 記 ライセンス契約 において,BGM
の商品の販売地域 がマ レーシアに制限される旨の合意 があった としてみて も,ライセンス契約 における販売地域 の制限に係 る取決めは,通常, 商標権者の販売政策上の理 由でされたにす ぎず,商品に対 す る品質 を管理 して品質 を保 持する 目的 と何 らかの関係がある とは解 されないO上記取決めに違反 して商品が販売 さ れた として も,市場 に拡布 された商品の品質 に何 らかの差異 が生 じることはないか ら, 本件商品の輸入によって,BGI
の出所に係 る商品の品質ない し信用の維持 を害する結果 が生 じた とい うことはで きない。」 と判示する。5 7 0 経 営 と 経 済
質的違法性を欠 く, とする学説1 1 も,それが,使用許諾の範囲の逸脱のみで は適法性が失われることはな く品質保証機能を十全な らしめる上で重要な条 項の違反でもある場合に,初めて実質的違法性を欠 くことにはな らない, と
いう趣 旨であれば賛成 しがたい。
3 .使用許諾の範囲の逸脱
本件判決は,使用許諾の範囲を逸脱 して商標が付 された場合には出所表示 機能を害すると述べるのみで,ライセンス契約の許諾条項か ら使用許諾の範 囲をどの ように判断するのかについての基準は説明されていない。
使用許諾の範囲は,ライセンサーが使用権者に製造,販売 して よい と合意 した商品であるかどうかを基準 として判断すべきとする説 1 2 もあるが, 日本 国内で行われた場合には工業所有権の侵害 となる契約違反の場合には,商標 は適法に付 された ものでない とする説 1 3 もある。
ところで, 日本国内で商標権 に基づ くライセンス契約が締結 された場合に おいては,使用権者が適法に商標製品を販売 した場合には,商標権は消尽 し, 以後当該商品については商標権を行使できな くなるが,違法に登録商標 と同 一又は類似の商標を使用 して販売された製品については, 商標権は消尽せず, 商標権者は,当該商品を販売 しようとする第三者に対 して,その販売の差止 を請求することができる。
l l 「ライセンス契約 における販売地域制限条項違反の並行輸入 も商標権侵害の違法性を 欠 くとされた事例」板倉集‑ 知財管理 Vo l . 5 4No. 91 3 5 7 頁,他に 「 並行輸入 と商標権 侵害」 田中豊 NBL6 7 8
号5 2 頁 , 「ライセンス契約上の義務違反 と並行輸入の拒否」愛知 靖之 商事法務 No. 1 6 314 5 頁。製造地域制限違反はいずれ も並行輸入を認めないが,販 売地域制限違反 については,板倉,田中は認める。板倉は数量制限違反 については並行 輸入を認めない。
1 2 「 製造 ライセンス契約 に違反 して作 られた商品の並行輸入可否の基準」中村秀雄 知財 管理 Vo l . 5 5No. 72 0 0 59 0 9 頁。実施料の不払い等一部を除 き,ほ とん どの契約条項違反 について,並行輸入を認めない。
1 3 「 商標権の地域的譲受 と真正商品の並行輸入」小野昌延 判例時報 1 6 8 5
号2 3 0 頁。但 し,
例示 されているのは,数量制限違反 と製造場所制限の違反のみである。
商標製品の並行輸入におけるライセンス契約違反と適法性
‑ フレッドペリー事件最高裁判決 ‑571
‑万,商標権者が外 国で 日本国内の登録商標 と同一の商標の使用を第三者 に許諾 した場合には,当該第三者が販売 した商標製品については,当該国の 商標権 が消尽 すると否 とを問わず, 日本の商標権は消尽 しないので,商標権 者は,原則 として,当該第三者が販売 した商標製品の 日本への輸入を禁止で きる。 しか し,適法性,出所の同一性,品質の同一性 とい う真正商品の並行 輸入の要件 を満たす場合には輸入を禁止で きない。
そ うする と, 日本国内で違法 に販売 された商標製 品について制限されるこ とのない差止請求権等の商標権侵害 に対する救済を請求する商標権者の権利 を,外国で 日本国内であれば違法 となる行為 によ り販売 された商標製品の輸 入の場合にのみ制限す ることは,そ こまで商標製品の違法な流通 を促進する 理 由に乏 し く,商標権者の権利を著 しく害することになる と考 え られる。 日 本では多数説 とはなっていないが,真正商品の並行輸入を認める学説の一つ
として国際消尽説がある。 これは,商標権者が 日本国の内外 を問わず商標 を 使用 して商品を市場 においた場合には,以後 日本の商標権は消尽 し権利 を行 使で きな くなるとする考 え方である。 この説 によれば, 日本国内での行為で あれば商標権 が消尽 しない場合 にまで並行輸入 を認 め るこ とは考 え られな い。商標機能説 による場合 にも,同様 に解するべ きであろう。
逆 に,外国の使用権者の商標の使用が, 日本国内であれば違法 と評価 され ない場合であれば,それが商標権の機能を害するため実質的違法性 を欠 くと いえない場合 には,輸入差止を認めて も, もともと商標権者が有 している輸 入権の行使であ り,特 に商標権者を利することにはな らない。
したがって,「ライセンス契約の違反 が使用許諾 の範囲を逸脱 す る」場合 は , 「日本国内でのライセンス契約の違反 であれば,商標権の侵害 となる」
場合を基準 とすべ きである。 しかし, 日本 におけるライセシス契約の違反が 商標権の侵害 となるか どうかの基準 も必ず しも明確ではない。
商標権の専用使用権設定の範囲については,製造 ・販売 ・提供 な どの使用
5 72 経 営 と 経 済
態様,指定商品又は役務中の許諾商品又は役務,使用許諾期間,使用許諾地 域な どを設定契約で定め,通常使用権 については,範囲 ・期間 ・条件などは,
自由に契約で定めることができる 1 4 。
商標の専用使用権者が設定 された専用使用権の範囲外で商標を使用 した場 合には,商標権の侵害 となる 1 5 が,契約条件のすべてが専用使用権設定の範 囲 となるのか,契約で定めても専用使用権設定の範囲 とはな らない条項があ るのか,通常使用権について も同様なのか等については,ほ とん ど説明され ていない。
ところで,特許権について も, .商標権の専用使用権 と同様に,専用実施権 者が登録 された専用実施権の範囲を逸脱 して特許権 を実施 した場合には特許 権の侵害 となる。 しかし,専用実施権は登録 しない と効力を生 じないので, 特許権者が専用実施権設定契約で専用実施権者が実施できる範囲を制限 して いて も,その制限が登録されていない場合には,専用実施権者がその制限を 超 えて実施 しても契約違反 となるだけであ り,特許権の侵害 とはな らない と 考えられている 1 6 。商標権についても,同様に理解 してよいであろう。
専用実施権の登録が認め られる実施の範囲の制限 としては,時間的制限, 場所的制限,内容的制限がある。
場所的制限では,その範囲が明確であれば,特定の工場での製造,特定航 路の航空機内での販売 といった制限 も認め られる。内容的制限は,生産,倭 用,譲渡等 といった実施態様の一つ又は複数,複数の商品や技術分野に利用 可能な特許権の場合の商品分野叉は技術分野の制限をいう 1 7 。
説 説 法 法 概 概 許 許 法 法 特 特 標 標 解 解 商 商 注 注 ド ド ド ド
4 5 6 7 1 1 1 1
第二版」小野昌延 有斐閣 1 9 9 9 2 3 9 頁。
第二版」小野昌延 有斐閣 1 9 9 9 2 41 頁。
第三版 ( 上巻) 」中山信弘 青林書院 平成1 2
年81 5
頁第三版 ( 上巻
)」中山信弘 青林書院 平成1 2 年 81 5 頁
商標製品の並行輸入におけるライセンス契約違反と適法性
‑ フレッドペリー事件最高裁判決‑ 573
問題は,製造 ・販売数量 ( 特許権の場合には使用数量を含む)の制限であ ろう。
商標権者が,商標を使用する商品の製造 ・販売数量には制限がない。登録 商標の使用を無条件で許諾 された第三者は,商標 を使用 した商品を無制限に 製造 ・販売することができるか ら, これを制限することはやは り実施の範囲 の制限になるとも考 え られる。 しか し,製造数量の制限は,同一の専用実施 権を複数の人に設定で きるので専用実施権ではな くなる。 したがって,専用 実施権 としては登録で きない 1 8 。製造 ・使用 ・販売数量の制限の違反 も,使 用許諾の範囲を逸脱するとする意見 1 9 には賛成できない 2 0 。
原材料の購入先,製品規格,販路,標識の指定,役員の派遣等は登録 され ず,契約上の問題である 21 .販売先,下請製造業者の指定は,それぞれ販売 地域の制限,製造地域の制限の極端な場合 と見 られる場合には,使用許諾の 範囲の制限 と考 えてよいであろう 2 2 。但 し,特定の事業者への販売や製造委
1 8
「注解特許法 第三版 (上巻)
」 中山信弘 青林書院 平成1 2
年81 5
頁。特許権者 の 事前 同意のない販売先 への販売 の禁止 ,特許権者 の事前 同意のない下請製造業者 に よる 下請製造の禁止 な ども同様 に登録 されない と考 え られ る。販売先 ,下請製造事業者 が特 定 されてい る場合は登録 され る可能性 はあ るが,他 に製造地域制 限や販売地域制限が登 録 されてい る場合 に,許諾範囲が重複す る可能性がある。1 9
注12,1 3 参照。
20
特許権の場合 には,使用 回数の制限 も問題 とな るが,特許権者叉 は実施権者 が販売 し た特許商 品 について購 入者 の特許製品の使用 回数 を制 限す るこ とは,方法 の特許 につい ては実施許諾 の範 囲の制限 と見 られな くもない。 しか し,方法特許 について も当該方法 の実施 に供 す るための装置等の販売 に よ り特許権 が消尽 し,購 入者 が当該制 限 に達反 し た場合 ,契約違反の責任 は問 えるが,特許権侵害 とはな らない と考 えるべ きであ る。なお,特許権者等 が販 売 した特許製品 がその効用 を終 えた場合 には,特許権者 は当該 特許製 品の再利用 について特許権 を行使 す るこ とがで きる と判断 した使 い捨 てカメラ事 件 (東京地裁
1 2
年8
月31日判決 平成08年 (ワ)第1 6782
号) においては,
「特許製品が効 用 を終 えるべ き時期 は,特許権者 ない し特許製 品の製造 者 ・販売者 の意 思 に よ り決せ ら れ る ものではな く,当該製 品の機能 ,構造 ,材質や,用途 ,使用形態 ,取 引の実情等 の 事情 を総合考慮 して判断 され るべ きものである。」 と判示 してお り,特許権者 の意思q)衣による効用 の終 了 (使用 回数の制限)は認めていない.
21
「注解特許法 第三版 (上巻)」 中山信弘 青林書院 平成12
年81 5
頁。22
なお,販売先 の指定 については,使用権者 の販売先 の選択の 自由が制限 され るこ とに よ り,市場 におけ る競争秩序 に悪影響 を及 ぼすおそれがあ る場合 (ライセンス契約 ガ イ ドラ イン 第4
特 許 ・ノウハ ウ ラ イセン ス契 約 に関 す る不 公正 な取 引方 法 の観 点 か ら57 4 経 営 と 経 済
託を禁止する条項や,販売先 ・下請製造業者の選定 について商標権者の事前 同意を要求する条項等は, 販売地域や製造地域の制限 とみることはできない。
通常実施権における実施許諾の範囲を逸脱 した実施が特許権侵害 となるか どうかについての特許法の明文の規定はないが,下級審裁判例は,特許権侵 害 としている2 3 。
通常実施権の範囲の制限については,専用実施権 とはば同様 に考えられる とするもの もあるが
24,通常実施権 については,専有範囲を確定する必要が ないので,専用実施権 については登録が認め られない実施数量 ,実施態様 ( 下請実施を認めるか どうか),再実施許諾の可否な ども許諾範 囲の制限 と して定め られるとするもの もある2 5 。また,通常実施権の制限違反 について,
「 発明の実施 自体の ( 存否の)決定権の侵害を特許権の侵害 と考 えたい。」
とするものもある
26。特許権者はライセンス契約に基づいて通常実施権 を許諾 し特許権を行使 し ない約束 をしているだけなので,ライセンス契約の違反の場合には,すべて 特許権侵害 となると考 えることも可能であるが,通常実施権の場合にも,登 録を受ければ通常実施権を特許権の譲受人等の第三者に対抗することができ
る。 この場合,登録 された通常実施権の範囲を超 えた実施が特許権侵害 とな
の考 え方
5
特許製 品等 の販売 に関連 す る制限 ・義務 (3
)非価格制限 イ 販売先 の制 限),下請製造業者 の指定 については,品質の保証又は ノウハ ウの秘密性 の保持のために 必要 な場 合 を除 き,使用権者 の下請製造業者 の選択 の 自由が制限 され るこ と,又 は下請 製造業者 が代替的 な取引先若 し くはそれ との取引の機会 を容易 に確保 す る こ とがで きな くな る こ とに よ り,市場 におけ る競争秩序 に悪影響 を及ぼすおそれがあ る場合 (ライセ ンス契 約 ガ イ ドライン 第4
特許 ・ノウハ ウライセンス契約 に関す る不公正 な取 引方法 q)観点 か らの考 え方4
特許製品等 の製造 に関連 す る制限 .義務 (4J)原材料 .部品等 の購入先 の制限) には,それぞれ不公正 な取 引方法 に該 当 し,違法 とな るので,当該制 限条項 に達反 した商標 の使用 を,商標権の侵害 とす ることはで きない。2 3
建築用換気 口枠事件 昭和6 0 年 6
月2 8
日 大阪地裁判決。 「実施態様 を超 えた実施」松 本司 判例 ライセンス法 発 明協会 平成1 2
年2 5 9
頁。2 4
「注解特許法 第三版 (上巻)
」中山信弘 青林書院 平成1 2 年 8 2 9
頁。2 5
「知的財産法講義Ⅰ
」渋谷達紀 有斐閣2 0 0 4
2 6
「数量制限違反 の特許法上 の評価」小泉直樹 知的財産 法 と現代社会 信 山社1 9 9 9
3 4 7
頁商標製品の並行輸入におけるライセンス契約違反と適法性
‑ フレッドペリー事件最高裁判決 ‑5 7 5
ることは専用実施権の場合 と同 じであるが,ライセンス契約の制限条項のす べてを登録することは,専用実施権の場合 とのバ ランスを欠 き,かつ煩雑 に なることか らも,予定 されていない と考 え られる。 とすれば,専用実施権 と 同様 に考 えてよいであろう。
また,特許権の効力は,地理的 (日本国内),時間的 ( 登録の有効期間中), かつ,法律で定め られ又は登録 された権利の範囲 ( 発明 とその実施)で定め
られてお り,実施の範囲の制限 も, この範囲内で考 えるべ きであ る。
公正取引委員会の 「 特許 ・ノウハ ウライセンス契約 に関する独 占禁止法上 の指針」 ( 平成 1 1 年 7 月 3 0 日。以下 「ライセンス契約ガイ ドライン」 とい う)
「 第 4 特許 ・ノウハ ウライセンス契約 に関す る不公正 な取引方法の観点か らの考 え方」では , 「 特許法等 において 『実施』 として規定 されている行為 を区分 してライセンスをする行為 については,特許法等 による権利の行使 と み られ る行為であ り,また,通常は市場 における競争秩序 に及ぼす影響 も小 さい と考 え られることか ら,通常,独 占禁止法上の問題は生 じない と考 え ら れ る 。 」 2 7 とい う考 え方 に基づ き ,「2 ライセンスの範 囲に関す る制限 」 とし て,製造 ・使用 ・販売等の区分許諾,期間の制限,地域の制限,技術分野の 制限の 4 つを,いずれ も原則 として不公正な取引方法 に該当 しない制限条項
2 8 として取 り上げている。
2 7 特許権等の権利の行使 にあたるか否かは,独 占禁止法 21 条 ( 旧 2 3 条)の解釈論 として 議論 されることが多い。「 数量制限違反の特許法上の評価」小泉直樹 知的財産法 と現代 社会 信山社 1 9 9 93 4 7 頁参照。
2 8 但 し,全 く問題がないわけではない。「 外形上叉は形式的には特許法等による権利の行 使 とみ られ るような行為であって も,当該行為が不当な取引制限や私的独 占の一環 をな す行為 として又はこれ らの手段 として利用 されるな ど権利の行使 に籍 口していると認め られる ときな ど,当該行為が発明を奨励すること等を 目的 とする技術保護制度の趣 旨を 逸脱 し,又は同制度の 目的に反すると認め られる場合には,特許法等による 『 権利の行 使 と認め られる行為』 とは評価できず,独占禁止法が適用 されるもの と考 えられる。
また,上記以外の場合において,外形上又は形式的には特許法等 による権利の行使 と
み られ るような行為であって も,行為の 目的,態様や問題 となっている行為の市場 にお
ける競争秩序 に与 える影響の大 きさも勘案 した上で,個別具体的に判断 した結果,技術
保護制度の趣 旨を逸脱 し,又は同制度の 目的に反する と認め られる場合には,当該行為
5 7 6 経 営 と 経 済
4. 品質保証機能の阻害
本件判決は,ライセンス契約における製造国の制限及び下請の制限 といっ た商標権者が商標製品の品質を管理 して品質保証機能を十全な らしめる上で 極めて重要なライセンス契約における制限に達反 して製造 された商品に日本 の登録商標 と同一の商標を付す行為は,商標の品質保証機能が害 されるおそ れがあるので,実質的違法性がない とはいえない と判示 している。
本稿では,ライセンス契約の違反が 日本国内において行われたならば商標 権等の侵害 となる場合には,真正商品の並行輸入が認め られるべ きではない とい う観点か ら適法性の要件を検討 してきたが,現在 までの ところ,我が国 においては,適法な使用許諾が行われている場合に商標権の品質保証機能が 害されることを理 由 として,国内における商標権の侵害を認める裁判例や学 説はない と思われる
29。もっとも,品質管理 に関する条項 としては,製造地域の制限,下請の制限 のほか,商標製品,原材料,部品等の品質の制限,原材料,部品等の購入先 の制限等が考えられる。 この うち,製造地域の制限は,使用許諾の範囲の制 限であ り,これを逸脱 した場合には, 日本国内であれば当然に商標権の侵害
となる。
これ以外の下請の制限,商標製品,原材料,部品等の品質の制限,原材料, 部品等の購入先の制限等は,原則 として使用許諾の範囲を画するものではな
いが,一定の場合には,∴ 使用許諾の範囲を画するもの と考 えることも可能で
は 「権利の行使 と認 め られ る行為」 とは評価で きず,独 占禁止法 が適用 されることがあ り得 る