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博士学位論文審査の要旨

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Academic year: 2021

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博士学位論文審査の要旨

【学位論文審査の要旨】

本論文は、乳幼児を育てながら週4日、1日4時間以上の就労に従事しており、また自ら の考えや行動を語ることができる母親12名を研究参加者として、母親たちが子どもの体調 不良の際に、何に直面しどのように対応してきたのか、その経験についてインタビューを 行い、Leiningerの民族看護学の方法を参考に分析し、記述した質的記述的研究である。

近年、女性の高学歴化、少子高齢化に伴う労働力人口の減少、不況による所得の減少等 から女性の社会進出は進み、女性の雇用は拡大している。特に既婚女性の就業率は大きく 上昇し、共働き世帯も年々増加傾向にある。また、そうした社会情勢の変化に伴い、育児 休業や保育サービスの充実等、仕事と育児の両立を支える制度や環境も徐々に整えられて きている。しかしながら、働く母親が実際に仕事と育児を両立させていくためには、家族 や地域の協力、職場の理解やサポート等が欠かせない。特に、働く母親が困難を感じるの は、日常的に起こる子どもの風邪や発熱等の体調不良時の対応であり、両立を阻害する大 きな要因として影響していると言われている。本研究では、こうした子どもの体調不良時 における思いや判断、対応等を通して母親が経験したことを母親自身の語りを通して詳細 に記述したところに実践的、学術的意義がある。

結果として、子どもの体調不良をめぐる働く母親の経験として、1.子どもの体調不良 という窮地を、綱渡りで乗り切る、2.仕事にも子どもに負い目を感じ、苦悩している、

3.何とか回している生活が、子どもが体調不良になっても立ち行かなくならないように 備えておく、4.育児も仕事も中途半端と思いながら、「子どもを育てながら働くこと」の 折り合いをつけようとしている、という4つのテーマが示された。

働く母親は、子どもの健康に左右されながら、制約された時間の中で、家事や育児、仕 事にかかわる多くのことをこなし、日々の生活を必死に「回していた」。子どもの体調不良 という窮地に陥ると、母親たちは「綱渡り」で何とか乗り切ろうとし、ときにはそれは行 き過ぎたコントロールにつながり、子どもの健康は危機にさらされていることが記述され た。また、仕事に対する責任や評価という重圧、子どもに対する母親としての至らなさや 世間の評価が「負い目」となり、さらに母親を苦しめていたが、そのような過酷な状況の 中で自己の生き方を模索し、仕事は自分の一部であり切り離すことはできないと考え、子 育てと「折り合い」をつけ、働き続けようとしている母親の姿が示された。本研究の成果 は、子育てをしながら働く母親が直面する仕事と育児の両立の苦闘と負担を描き出しただ けでなく、日本の社会における女性の働き方および子育ての価値観、さらには働き続ける ことの意味を問い、母親と子どもの健康と発達を守っていくことのできる社会の仕組みづ くりについて提言するものである。

審査における主な質疑は、研究方法と成果のオリジナリティ、Leiningerの民族看護学を 参考にした研究方法と文化、英語表記の確認、分析の手続き、実践や現代社会に向けた示 唆や提言等についてであった。これらの指摘や質問に対し、申請者から具体的な例を示し た適切で妥当な回答や発言がなされた。また、働く母親たちの子育て支援に長年地域で取

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博士学位論文審査の要旨

り組んできた申請者のこの領域における専門的知識の深さ、子どもや家族に対する思い、

研究に取り組む真摯な姿勢が示された。さらに、本研究での課題をもとに、新たな研究に 取り組んでいくという研究意欲が示された。

以上のことから、本研究が博士学位論文としてふさわしい水準にあると認め、申請者が 博士(看護学)の学位に相当するものと判断した。

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