児童文学 におけ る老人 と孫世代 の相互交流
The Interaction of the Old and the Grandchild Generation
in Juvenile Literature
吉 原 崇 恵 ・ 小 川 裕 子 ・ Takae YosHIHARA, HiFOk0 0GAWA and圭 ki
a 野 s h i 菅
恥
昭KANNO
(平成元年10月 11日受理)
研 究 の 目的
老人をかかえる家庭では,子どもたちは老人をどのように見ているだろうか。また,老人を 理解するために,子どもにどのような教育が必要であり,可能であろうか。老人の理解の│ため の「教材」として,どのようなものが考えられるであろうか。
今回は
,そ
のための基礎研究としていくつかの児童文学における「老人と子どもの交流」の ありようを分析することにした。次に引用するのは,小学校6年生の作文である。「僕は,ずっとお じいちゃんが好きだったのに,この頃は, もういやでいやできらいになって しまった。……お じいさんは,年をとってぼけてきたで しかたがないと思おうとして も
,な
ん でかしらんけど,みるとむかむかして くるし,いやになって しまう。・・「…このあいだ,…
…お かあさんが,『こらえてやさしけうしていかな,家じゅう,た
るうなるでなあ』と,ち
ょっと 涙ごえでいった。そういうときは,ほ
んとうにそうだと思うけど……いやな気持ちの方が,今はたくさんある。」
1)
ここには,悩みなが らも,おじいさんを誠実に支えていこうとしている家族の様子がうかが える。
「教師に求められるのは,子どもが
,そ
うした老人を人間としてみる目を新たに開かれるよ うな学習の機会を学校の中に用意することJといわれている2)。 これに対 して,教科書のとり 上げ方は,高齢者の増加と,そ
れを支える社会の負担や若い世代の負担が増えるこルをデータ で示すという形になっている。子どもの内面にまで配慮した指導のあり方についてはまだまだ,これからの研究と実践が必要とされるであろう。
現代の生活における核家族化と家族員の減少および出産と死の外部化の中で,子どもは人間 の根本的な問題,つまり
,い
のちの尊さ(誕生・成長・老い 。病気・死など)に
ついて学ぶ機 会が少なくなっているのが一般的である。冒頭の子どもの悩みに対 して,家庭科はどのように 対応で きるのだろうか。子 どもが他者を理解 し人間への信頼を獲得するとともに,老人問題を 考えてい く場を学校教育の中に創造 していきたい。そのためには,「
老いと老人についての教 材Jの
開発が急務ではないかと考える。「老いと老人についての教材」の開発を進める時,一方では老いや老人問題についての研究 成果をふまえなければな らない。他方,子どもが 「老い」や「老人」についてどのように理解
160‐
吉 原 崇 恵 ・ 小 川 裕 子 0菅 野 圭 昭 す るのか,そ
の過程を知 る必要がある。宮地敏子 は「現実の生活の中で希薄化 している老幼の絆を考え直 し,高齢化社会へ向け,互
いの人間性を尊重 した『優 しい』老幼の共生を模索 していこうとす る子 どもの本が増えて き た。」と指摘 し,絵本や創作童話の最近の流れを分析,紹介′
した3)。 また,高橋美恵子は
,宮
地の研究分析 に啓発 されて 「老い」や 「死」をめ ぐる最近の作品の特徴や意義を概観 した。そ して
,「
老いゆ くものと子 どもの関係が,あ
る出来事や事件をきっかけにして,子どもの『成 長』と,老人の『老い』が交又す る瞬間があることは見逃せず,そ
れは子 どもの『精神的な成 長』 と老人の『老いの受容』の瞬間というように言いかえ ることが出来 るのか も知れない。」と考察 した4)。 これ らの研究は
,文
学 によって時代の危機が とらえ られ,「
老い」や 「死」を リアルに表現 した絵本や児童文学がその数を増 しつつあること,作品の中で 「老い」や老人を 子 どもが理解す る過程が描かれているということを明確に して くれていた。 さらに,子どもが 老人を理解す る過程に様々な形があることを暗示 していた。そこで,本論では,宮地や高橋が 取 り上げた作品を含め,対象作品をで きる限 り網羅 して,「
老人 と子 どもの交流の様相」を分 析す ることに した。 ここでい う交流 とは理解 し合 うという意味である。そ して相手 に対す る見 方が変わる,深まる, 自分 自身 も変わるという意味で用いている。本論では老人 と対時す る世 代の呼称 として,宮地の 「幼」,高橋の 「子 ども」に相当す る用語を 「孫世代」 とした。対象 とす る作品は老人像,老人 と孫世代の交流,孫世代が老人を理解す る過程,老人にとっ ての孫世代 との交流の意義などについての情報を与えるものと思われる。本論では老人像 は, 孫世代が理解す る対象 として位置づけ老人像その ものを分析す ることは しない。
本論ではまず作品の内容を構成す る要素を分析す る。 この時, もう一人の孫世代 としての読 者がいる。読者が どのように読んでい くかを分析す るのは今回の目的ではないが作品の内容を 分析するにあたり作者 は読者年齢を想定 しているものと仮定 して読者年齢層別に分析 して作品 内容に違いがあるかどうかを分析する。
本論で明 らかに したいことは作品中の孫世代が老人を 「理解す る様々な型」と 「老人にとっ ての孫世代 との交流の意義
Jで
ある。また,老人 と孫世代の交流の場の条件を抽出す る。今回 の研究 は「老いと老人」について孫世代の理解の しかたを調べ る研究の一つである。それは「老人問題・ 高齢社会」を家庭科の教材 として開発す るための基礎的な作業 として行 うもので ある。
研 究 の 方 法
書店や出版 目録か ら老人が登場すると思われる絵本・ 児童文学を収集 して精読 した。作品の 読者年齢層については,明示 してあるものに準 じて分類 した。訳書の発行年代 はわが国におけ
る発行年月 日を もって した。
対象に した資料は65冊である。その二覧を表 1に 示 した。
児童文学における老人 と孫世代の相互交流 161
表
1
老人 と孫世代の交流を描いた児童文学No 名
口田
作 作 者 国 発 表
1 2 3 4 5 6 7 8 9
︲O H
︲2
︲3
︲4
︲5
︲6
︲7
︲8
一 キ 一 ラ フ
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1987 1987 1987 19871987 1987 1986 1985 1985 1984 19831981 1979 1979 19721970 1969 1942
小学校 高︒中学年向き
ア の し い紙 い う よ だ 手 ん ぱ ほ ンド ト か う の や つま タ ン こ ぎ テな い よつ ち す いと 一レ ね んか ポ と庭 ゆん だ ンち みあ いが ん偵 フョ な さ の卜 け な し やん き い テリ ひば いん さ探 ジ ルぎ あ 法 一ば きく ち さ う コけ 一つ のお か さ あ名 犬 一し ば 魔 イ お てあ あ あ こ 一ど 力 お とへ あ さあ は のガ ふぎ の スは す とば ば ひ ピ のな ん ん んと ば ば ん ん の のか ん のん のん おぎ の のん り やさ やん お お さ やん ん のさ ん やん やた か ん ら さ べち ちあ き な ンあ ち ささ のあ さ ち さ ち しな さ ひ い やい ば いあ ぎ 夕 ばあ いあ も あば あ あ いね ぎ あ のじ し じぎ ばじ し ラ ばぎ じ ば せぎ ば ば ば じ ん しば てお お お か おお ふ グ か おお お にか お お お おね ふお
子介 子 郎介 ク子 子 子 介夫 子子 介介 夫 子 行 夫 介し る 悦鶏 直 志悠
つ幸 直 悠紀 も 信 悠 悠継 栄 信 継 と悠 と 直 りお 美 と 村 さ さ 川本 房 本 島 H︒塚 葉 房 島藤 浦 島島 田野 田 田 こ島 藤 岸 西安 吉 手 E・鬼 柏 安 手 安松 岡 手 手奥 角 三奥 か手 佐
デンマータ 1989 19871987 1987 1987 19861986 1986 1985 1985 19851984 1984 1983 1983 19831983 1982 1982 1980 19791973
小学校 申・低学年向き
やん あち
oっ ば ん 力 ぶ 鳥 び お さ だ ん 二 う のん う の 力い ん やと モ や ぶ し や よ ん下 じ 二 と 庭 し んち び 一し の ろ ちじ み ん や
︒お モ がな た やあ と ハん たん ん ぼ い ん の 一 ち ん 一 機 さ わ ちば ひ のて やぶ さ ま じ た ゆぷ ん い やよ ハ 行 小 と あ お のん じち こ いと お の のす さ ちじ う のん 飛 のん ん ん ぱ きて さ のい と ん じ ん
︐ん ん のあ おあ こん やに んさ や やお つえ あ ん じ ん やお さ ね や やん ば とば 歩 き ち空 さ スち ち とだ れ ば さ お さち と 一い ちち さ お う お いあ のい ナあ いブ てが お あ のあ あ ヨリ 広 ああ あ の ろ のあ じ ば 田 じピ ば じ 一 つそ ず ば く ばば 一ミ は ばば ば り た上 さお′ お 羽 お ルお お バ だた す お ぼ お お ハエ 海 お おお も
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カ カ カ ツ カ カ ス ス メ メ メ ィ メ メ ギ ギ ア ア ア ド ア ア イ イ
イギ リス アメ リカ イギ リス
1988 1988 19881987 1987 1987 1987 19871986 1985 1985 1985 1983 19831983 1982 1982 19811981 1979 1979 1975 1973 19691954
絵
本
作品の内容の構成を把握するために分類を行った。分類の視点は,一つには「老人」の側か ら「老人の生き方が表れた活動期」と「老いが進行 した病弱期」である。他の一つには孫世代 の「老人に対する関わり方や,心情」に視点をあてた。
項目 1〜項目4は「老人が生き生きと元気に日常生活をお くっている状態 (活動が描かれて いる部分)」 である。さらに,項目5〜項目8は,「老いが進行 して,病弱になり老醜さえも 日だつようになる状態」である。二つの状態においてそれぞれ
,
162
・老人の個性 と生 き方
・ 孫世代が老人か ら助けて もらう 0老 人を拒否 したり,疎ん じたりす る
。孫世代が老人を助け る という分類である。
吉 原 崇 恵 ・ 小 川 裕 子 ・ 菅 野 圭 昭
(項目1と 5)
(項目2と 6)
(項目3と 7)
(項目4と 8)
結 果 と考 察 1)全体の傾向
内容分類の8項 目について現出の作品数を表2に示した。
表
2
作品内1容分類と作品数―者人と孫世代の交流一老人の経歴 孫は被庇護 老人を拒否
は 護 人 庇 老 被
老
の
進
行 活 動 期
項 目
1
項目2 項目3 項 目4全 体
高・ 中学年向
中 0低学年向
絵 本
病 弱 期
項 目5 項目6 項 目7 項 目8
全 体
高・ 中学年向
中・ は 向
1 1
絵 本 7
全体の傾向をみると, 老人の個性や行き方に ついて元気な時を項目 1で記述 している作品 数は65作品中63作品と いう高頻度である。例 外の2冊は「ねんね じ たおばあちゃん」 (作 品血38)と 「おばあち
ゃん」(作品血58)であ る。前者は孫の世話を する姿がその
1ま
ま老人 の生き方になっている ので項目2の 内容と判 断 した。後者は,まっ たく寝たきりの状態の 老人が描かれているも のである。項目 1は老人の人生,すなわち老人の経歴やしてきたこと,人生観や価値観,日常生活の申 で自然と表れる生きる知恵などについて語っている。
これらは,後の「老い」の進行状態においても,老人の存在を輝いたものにすることがある。
次いで多い内容は,項目2の 孫世代が世話をしてもらい庇護される場面である。48冊に記述 があり主な作品は阻13,19,44,51で ,これらは親の代わりに育ててもらう,遊んでもらう
,
物語をしてもらうなどである。
逆の場合
,つ
まり孫世代が老人を心配 し助けるという関係は項目4で,描いた作品は,34冊 と約半数におよんでいる。作品ml, 2, 7,14,41,43な
どがある。児童文学における老人と孫世代の相互交流
孫世代が老人を助ける内容とはいつもは独りで暮らしている老人に,手紙を書 くとか田舎に 会いに行 くとか,一緒に畑の手伝いをするシなどである。そ して,「老い
Jが
進行 (病気やぼ け)し
てからの孫世代からの援助 (看病など)に
ついての記述 も少なくない。病気を心配する 気持ち,ぼけて行方不明になった老人をさがす,寝たきりでいやなにおいに閉日しなが らも看 護を手伝うなどである。NQ l, 4, 6, 9,10,19,37,41,43,44,の作品がある。項目5で「老い」が進行する状態を描 く場面は多い。 しか し項目7の 老いを拒否 したり,疎
ん じたりするという記述はさほど多くはない。 「老い」の進行と,孫世代のとまどい,悩み,
やむにやまれぬ拒否の思いなどを描いた5冊の作品は,1980年代になって登場 したもので作品 阻9,10,29,45,58である。
また,以上の分類によれば読者年齢層および絵本による作品群の内容の展開は同じであるよ うにみうけられる。
老人と孫世代の住み方では同居,別居のいずれの形 も登場する。
表 3は 老人と孫世代との住居状態をみたものである。おばあさんの登場はおじいさんに比べ て2倍の多さである。また,別居の方が同居よりも多 く,別居から同居へと変化する場合もあ る。別居で老人と孫世代の交流があるのは肉親に限らず,近隣関係の場合もある。一時的に孫 世代が老人を訪ねるとか老人が孫世代を訪ねることによってふれあう機会がつ くられる。
*祖父母
***二
人の老人 と複数の同居,別居の孫世代**通常時 一人の孫世代 と複数の同居,別居の老人
孫世代が老人を理解するきっかけは大きく二つのタイプに分けることができる。一つは,事
件や出来事を通 して老人に対する見方が瞬時的に変わるタイプである。この場合は短い期間を 描いていて,時間の経過とともに事件が進行する順行型で描かれているとい│えよう。もう一つ は,数力月や数年間の時間をともに過ごし人間としての共感と理解を深めるタイプである。長 い期間の扱い方については,過去と現在の両方の時間の中で,老人と子どもの交流が展開する。
それは,①
順行型表現
②
現在から出発 して回想的に過去にさかのぼる回想型表現 表3 孫世代 との居住形態
N=65 同
居 別
居 ぷt 4【
別 居 か ら目 居
おじいさん
作 品 L
1, 10, 12, 18,・
37, 41, 43, 56, 59, 61
3, 11, 14, 20ぅ 22, 30, 46, 47, 50
「
IIII9, 44,
お ば あ さ ん
作 口Ш L
7 5 3 2 4 6 6 8 8 1 6 2 6 9 8 4 1 2 4 6
*53,
25 33 42 57 35
. 23 32 40 55 65
︐ 4 8 3︲
39 54 62 料
*** 6.17
吉 原 崇 恵 ・ 小 川 裕 子 ・ 菅 野 圭 昭
③
現在と過去が交互に往復 しながら表現される往復型表現 などがある。
2)孫
世代の者人理解0様相作品のあらす じを例示 して論ずるにあたり,作中人物を次のように記号で表記する。
X=お
じいちゃん,おばあちゃん,老人の世代Y=孫
世代Z=親
世代(1)見方が変わる場合についてまず見方が変わる前の段階がある。それらは以下の 3つ の場 合である。
̀
①
誤解をしていた
② 知 らなかった
③
疎ん じていた
以下にそれぞれの例をあげる。
①
誤解を していた例│
「おばあちゃんの大ジョータン」 (作品
No29)=老
犬ジョータン=Xが
そそうをするの は「ぼけたからだ」と家族は決めつけていた (誤解)。 ある日,Xは泥棒を追い払 う活躍 をする。Xの
いらいらが家族にも理解されるようになる。②
知 らなかった例
「バ∵ブとおばあちゃん」 (作品
Na51)=入
院 したZに代わってXが
やってきて世話を して くれるが,Yは気にいらない。 しか し,Xの
知恵に教え られ,また子守歌のエピソー ドなどで,YはXを理解 していく。③
疎ん じていた例
「おばあさんのケーキ」 (作品
m2)=近
隣関係にあるXとYが
アパー トの裏側にある 草原をめぐって反目し合っている。Xが
通る時,Yはおどか した。Xは倒れて立ち上がれ ない。そして助けてあげた。Xは
得意のケーキをYに食べさせれば喜ぶだろうと思 う。以上の老人に対する見方が変わるきっかけの例を整理すると
①
老人のもっている日常生活の上での知恵に触れること
②
世話をしてもらうこと
③
人間としての優 しさや善意が引き出されること などがあるといえよう。
いずれも直接に関わる機会があったから見方を変えることが出来たのであろう。
唸)こ どもの老いと老人を理解するしかた
,すなわち子どもが老人と交流し
,理解し
,信頼
しあう過程を見ると
,い
くつかの状況・ 様相に分かれる。それは,
①
世話をしてもらうことによる親しみ
②
優しさや善意を引き出される
③
老人の日常生活の知恵や個性に触れる。
⑤
老人の経歴を知る
⑥
人間や人生そのものを学ぶ
④
老人の人生観や人間としての誇りに触れる
(共
感) (親愛)(善意)
(尊敬)
(納得) (人生)
などである。各作品が6つの理解の型のいずれに該当す るかを表4に示 した。
理解の型
作品数と作品
NQ
① 緩 ② 議 ③ 轍 ④ 類 ⑤ 鶴 ⑥ 足高 3 7 2 2
中 学 年 向
作品臨
8. 1駐 la
13 3 ︐
︐
L 4 ︐ 1 7
︐
5, 14 9, lZ
7 ︐
■
中 N=22
7 4 0
40
低 学 年 向
作品臨
28 礼 記 a 記 銚
a 驚
‰ 払 為 3 ︲
︐ 3 7
︐
19,21,∞,
4 2Q 22 2Q畿
N=25
1 4
転 木
作品臨仏 馳 43
m 6 ︲
6 5 乳 臨 軋 2 乳 眩
49,(n 46 51, 亀 42,4篤 53,
58,
児童文学における老人と孫世代の相互交流
表
4
「 老 い と老人 」に関す る理解 の型各作品の中で孫世代 が老人を理解す る型 は 一つではない。理解の 型が複数である場合 に は主な型の方で分類 し た。6つの理解の型を 読者年齢層別の作品お よび絵本において比べ ると異なる傾向はみ ら れない。全体 として① 親愛や②善意 という情 意的,感性的な理解が 多 くなっている。 また, 人生その ものの理解を 促 している4作品がい ずれ も絵本である点が 注 目される。
次にこれらについて主な作品例を挙げて述べたい。
①
親愛型
「おじいちゃん」 (作品阻
50)=Yは
遊んで もらっていた過去との対比で「そとであそべ ない」Xの状態や,座っていたイスががらんとして しまったことを知る。「あそびあいてはおばあちゃん」 (作品NQ15)=亡 くなった後
,物
語をしていた時のXの
声を思い出すことが出来る。このように世話をしてもらったことが理解を導 く基盤になっている。
「たろうとお じいちゃん」 (作品臨41),「さあ歩 こうよお じいちゃん」 (作品NQ43)い ずれ も
Yが
世話をされる側か ら逆にXに手をさしのべようとす る姿が描かれている。病気 に なって散歩に行けな くなったXを誘 う。元気 に働いたことを話 して もらう。す るとXに生気 がよみがえ って くる。病気の後遺症で動けないXに対 して,Yは,以
前に遊んで もらった通りの ことをする。歩 く練習には肩を貸す。
「お じいさんのハーモニカ」 (作品NQ44)=いなかか ら都会へ越 して きて同居が始まった が
Xは
気力を失 っている。Yは
Xを励 まそうと,以前教えて もらったハーモニカをあ、く。② 善意型
「高層アパー ト」 (作品NQ l)では都会の家族のところに
Xが
引 っ越す。XとYは
遊び場 をさが して,エ
レベ ターや屋上での遊びを工夫 した。 しか し管理人に怒 られて しまう。3、た りは,Xが昔住んでいたところを訪ねた。 りん ごを もいで くるはずだ らた。Xが植えた りんごの木のあとには大きな穴が口をあいている 3Xの 体が縮まったみたいに小さくなって顔色
も悪 い。Xはどうなるんだろう。Yも悲 しい。そ して悲 しいちて ことでXの病気 も始まった。
「窓のむこうの顔」 (作品
NQ 4)=老
人ホームの見える近所に住むYは,向
いの老人ホームのベランダに小鳥の巣箱をかけて
,い
つ も小鳥を待っている年 とった女の人に心を奪われ吉 原 崇 恵 e小川 裕 子 ・ 菅 野 圭 昭
た。むこうもこちらに気がついたようである。 クリスマスが近づいて クロヮッサ ンや クッキ ーを もつてホームの前 まで行 くが中に入れず うまく行かない。ある日,窓のむ こうの人の姿 が見えな くな り,ニケ月たって もあれ っきりみえない。
これ らの作品申の孫世代は世話を して もらうたリー緒に時を過 ごしたりする中で孫世代の 優 しさや善意が引き出され,誰かに強制 されな くて も,人間としての素朴な喜びや悲 しみを 分け合 っている。
③ 尊敬型
「おばあちゃん とわた し」 (作品阻49)の遮、た りは近隣関係である。Xは,花や, りん ご あめやクッキーやケーキをつ くるのが得意でYにくれる。Xにもわた しくらいの時があった んだろう,やっば りその時のXの近 くにも老人が住んでいたのかと考える。
「てのひ らの ピーコJ(作品M19)の
Xは
海の近 くに一人で住んでいて 3月 1日になると 倉か らお雛様を出 して都会のYの
ところまで持 ってきて くれる。 「ちいさい時に,はな,ほん もののあったかい ものを与えとかん とな」と考えている。いん この ピーコが弱 った時 「ピー コはどんなにあったかなおふ とんの中よりもあいみの手に抱かれている時の方が安心なんよ」と教えて くれ る。そんな
Xが
頭の血管が切れて集中治療室に運ばれ酸素テ ン トに入 っている。Yは
思わずテ ン トの中に入 ってXの手をにぎりしめた。「じいと山のコボたち」 (作品No14)=Xはつれあいをな くしてか らわけがわか らな くな った。
Yは
宿題の昔話を聞 きに来たが様子がおか しいと思 う。雨上が りの 日,Xは魚が腹を すか していると谷川に向か った。本流は黒濁 りじゃというとXは
あの谷な ら大丈夫 というと ころを教えて くれる。 「谷のまわ りの山の本をみてみよ」木は本の葉を降 らせて土を柔 らか くし,生きた細い根をめ ぐらせて土を柔 らか くす る。雨はそこへ吸い取 られて,す
ぐに谷へ 入 るようなことがないと教えて くれる。魚はYにもよ くつれた。これ らの作品にみる孫世代は老人の個性に魅かれ生 きる知恵や技術に刺激を受けている。
老人が持 っている知恵や技術が現代生活では役にたたないと考えるまえに, 日常生活を共に することが信頼や尊敬をともなってそれを受け継 ぐ状況を準備 したと思われる。
④ 共感型
「ヨーンじいちゃん」 (作品阻9)=Xは75才で F一緒に暮 らそ う」という申 し出を受け て10才のYのいる一家へ引越 しを して きた。Zが準備 した部屋 はお気に入 りのペ ンキで塗 り 直す し,気むずか しく自尊心 にあ』、れている:洗濯物に色の しみがついているのを見つけて
「やっつけ仕事でけしか らん」と得意なインディコ染めで染め直す。 ヨーンじいちゃんは恋 を した。
Yが
「まだ女の人が好 きになれるの?」 とつぶやいたのがまずか った。 「わ しのよ うなおいばれはもう惚れることもでけん と思 うのか」と怒 らせて しまった。Xは
老人 とはい え人生を精一杯生 きている。昔, ヒッ トラーが権力を握 っていた時,Xはユダヤ人, ロシア人
,ポ
ーラン ド人に「ちっと」ばか り手を貸 したことがある。Xは
「ちっと」というのが口 癖で,ずっと後になって (Xの死後), Zは, ヨーンじいちゃんの<ちっと>の説明は彼のクリスマス物語だという気がす る。 .
「お じいちゃんが冬へ旅たつとき」 (作品NQ12)=Xはアメ リカインディア ンである。白 人の 「物,金」の価値観が入 り込んで くるのがXは腹立た しいと思 っている。 白人は大金の 賞金をつけて荒馬乗 りを煽 っている。
Xは
,命をかけてただ一人乗 りこな し,馬をYに残す。Fルピナスさん」 (作品
M48)=ル
ピナスさんは少女の時,Xと
二つの約束を した。遠い児童文学における老人と孫世代の相互交流 167
国々にい く,海の近 くに住む,世の中を もっと美 しくするために何かをす る,というもので ある。年をとった時,残した約束を果たすためにル ピナスの花を野や山に咲かせた。ル ピナ スの曾孫 も同 じ約束を した。約束が世代を越えて引き継がれてい く。
これ らの作品で孫世代 は老人の人生観や人間としての誇 りに触れることによって人間が ど の様 に生 きたのか,生きてい くのかを考えている。 ここでは老人を理解す るというよりも, 人間同士の理解に至 っているといえよう。 ヨー ンじいちゃんの場合はZが Yの理解を助ける 存在になっている。
このように,老人 と孫世代をつな ぐ世代の役割 も描かれている。
⑤ 納得型
「おばあちゃんの ヒマワリ」 (作品血7)=Xはつれあいがな くな ってか ら元気がない。
好 きだ った花畑の手入れ もしな くな ったという。さみ しが って手紙をよこすXを
Yは
弱虫だ と思 っている。いなかでXの音の話を聞いた。疎開児童が じゃがい もを盗んでお百姓 さんに 腕をね じ上げられていた とき,「
一つや二つ くれてや りなさい」とお百姓 さんを突 きとば し たという。弱虫ではできないことだ。「お じいちゃんのダイヤモ ン ド」 (作品
NQ10)=脳
軟化症 にな ったXが
行方不明になった 時,Yは心配でさが しまわる。Xはきれいな夕 日を見たといってふ らりと帰 つてきた。Zが 物置の整理を したときほこりをかぶ った茶一色の油絵が出て きた。Zがこの絵 は捨てないと い う。Xが
家族を養 うために絵描 きをやめた時,残っていた絵の具で描いた ものだった。Xは本当に夕 日の赤色が好 きなのだ。
「お じいさんのとけいだい」 (作品m20)=Yの小学校にある時計が止 まった。心配そ う にみている
Xが
いる。つばめが巣をつ くっていることがわか ったとき「こわれたん じゃない」とびっくりするような声でいった。
Xか
ら,時計屋です生懸命奉公 して時計台をたて る夢を 持 っていた若い頃の話を聞いた。これ らの作品の中で孫世代 は老人の長い人生における喜怒哀楽や経歴を知 る。前出の④ と 同 じく共感を覚えている。老人の過去 とは彼 らの若い頃の ことである。若い頃の経歴 は,老
人 自身が語 る時 と,親世代が介在す る場合がある。孫世代 は近い将来青年になるのであ りそ の予感を持 って納得できると思われる。
⑥ 人生型
‐「たそがれえきのひとびと」 (作品血53)=古い駅舎を借 りて住んでいる貧乏な8人のX
の生活を描いている。
Yは
駅舎の周 りを遊び場に している。貧乏故に料理が好 きなのにごち そ うを作れなか ったり,旅に行 きたいのに窓か ら眺めるだけだった り,ほらふ きだ った りし ている。中に, 自転草組立の王様がいる。8人が10ペンスずつ出 し合 って くじを買 った。大 金が入 った。お金が入 ってY達
の遊び場をつ くった り, ごちそ うをつ くったり,友達をつ くった りする人がいる。お金の勘定ばか りす る人 もいる。 自転車の王様 は変わ らない。
「おばあちゃん」 (作品11
5)=同
名の作品NQ58と共 に,老化 と死を描いている。昔,働き者だった
Xは,あ
る回転んだ ことがきっかけで様子がおか しくなる。 「あなたはどなたさ まで」となり,赤ちゃんのように小 さくなって亡 くなった。Zから「それがにんげんのさだ め」だと教え られる。同名の 「おばあちゃん」 (作品m53)=Xはおむつを している。 ごはんはまだかいという。
Zのことをどろぼ うという。