長野工業高等専門学校紀要第32号(1998) 1
二重円筒間を旋回する流体の表面波動の画像解析
戸谷順信 小林和弘
Image processing and analysis on the wave motion of a free surface of the rotating fluid between cylinders
Yorinobu TOYA Kazuhiro KOBAYASHI
Awavemotiononafreesurfaceoftherotatingfluidbetweencylinderswhichtheinnercylinderis rotatingandtheoutercylinderisstationarywasinvestigatedbyimageprocessingandanalysis.Images takenbyavideocamerawereinputtedonacomputerandweregivenaseriesofimageprocessing・The processedimageshavethevaluesofthegraylevelfrom zeroto255.Thefrequencyofthevalueofgray leveloftheimagewasmeasuredforReynoldsnumber.Standarddeviationoneachfrequencyofthevalue ofthegraylevelwascalculatedandwascomparedforReynoldsnumberwhichwaschangedfrom zero to4086.Consequentlythewavemotionsofthefreesurfacewereclassifiedthefourtypes.
キーワー ド:旋回流れ,表面波動,画像処理
1.緒 言
本研究は,内側円筒が回転 し,外側円管が静止 し ている同軸回転二重円筒間における旋回流体 の自由 表面の流れに関 して扱 っている. この二重円筒間の 流れは,テイラー渦流れ として良 く知 られてお り, その渦構造,波動化,非一意性等については詳細 に 調べ られている1).その中で,円筒 の端面が 自由表 面を持つテイラー渦流れの状態については明 らかに されているものの, 自由表面そのものの流れの特徴 については検討 されていない. 自由表面の流れの問 題 に関 しては,海面の流れ,水路の表面流れ, タン ク内の流体のスロッシング等で重要であるが,閉 じ られた水路における, しかも旋回す る流体 について は,二重円筒間の表面流れが従来からテイラー渦流 れに関連 して興味ある問題であったにも関わ らず扱 われていない.
旋回す る流体 の自由表面の流れは内側円筒の回転 速度の増加により, クニ ット流れから半径方向の速 '平成10年3月20日, 日本機械学会北 陸信越支 部学生員
卒業研究発表講演会にて講浜
本研究 は平成9年度長野高専教育研究特 別経 費の助成 を受 け行われた
= 機械工学科助教授
= 宇都宮大学学生 (平成9年度本校機械工学科卒業) 原稿受付 1998年9月29日
度成分を持つ流れの発展 とスロッシングを伴 う波動 現象が発生す ることが予想 される. さらに レイノル ズ数の増加によ り,表面 に発生 した波 と外壁 の反射 波 との干渉によ り複雑な態様を示す ことが予想 され る.
この表面流れの可視化の様子 と液面の変動の状態 については,著者の一人が表面流れを可視化 して明 らかにし,また,表面の軸方向の変動 については超 音波 センサを使用 して求め,FFT解析結果 か ら発 展の様子を明 らかにした2).
特 に可視化観察から自由表面の状態はレイノルズ 数の増加 により,表面全体が波打ち振動す るス ロッ シングが発生す る. これはレイノルズ数が小 さい時 は極小 さい振幅であるが レイノルズ数が増加す ると 振幅 は次第に大 きくなる.また, さらにレイノルズ 数が増加すると外円筒内壁に沿 って リング状 の盛 り 上が りが発生 し,それがさらにレイノルズ数の増加 で波形になる. しかし, これ らの特性を調べ るため には現在の装置の大 きさか ら,超音波センサ等 の測 定器では困難であ り,可視化観察では定量化す るこ
とができない.
本研究 は,流れを可視化 し, ビデオカメラによ り 撮影 し,その画像データか ら画像処理 を行 い表面波 動現象の発展の様子を画像解析か ら特徴づ けること を目的 としている.特に,流れの表面 に現れ る波動
(彰ビデ オ カ メ ラ (参回転 内円筒 (参静止外円管 ④ シ リコンオ イル 6)ビデ オデ ッキ ⑥ パ ソ コン (カモ ニ タ
図1 実験モデルと画像解析システム
の凹凸が明暗 となって現れ る画像の特徴を解析す る ことによ り,状態の特徴を数値化 して表現す ること を試みた.
2.実験モデル及び画像解析システム 2‑ 1 実験モデル
二重 円筒間を旋 回す る流れの実験 モデル と画像解 析 システムを図1に示す.内側 の回転円筒 は直径が
80mmでサーボモータか らタイ ミングベル トで連結 され,DC電圧 に比例 した回転数で駆動 され る.外 側 の円管 は直径 が120mmで静止 してい る.二重 円 筒間の隙間は20mmである.隙間に満たす流体 はシ リコンオイルであ り,流れを可視化す る為 にアル ミ 粉 を混入 させ る.今 回使用 した シ リコンオイルの物 性 は以下の通 りである.動粘度 は9.54mm/S2(25oC), 表面張力 はメーカー (信越化学工業 (秩)) の測定値
により,20.1‑21.3dpl/cm (25oC),比重は0.93‑札94
(25oC)である.
流れの特性 を決定す るパ ラメータは レイノルズ数 Reとアスペ ク ト比 Ilであ る.それぞれ以下 の式 で 表 され る.
Re‑αR/〟
Il‑ L/D
ここで,aJは内側 回転 円筒角速度,Rは内側回転 円 筒半径, γは流体 の動粘度,Lは流体 の回転軸方向 高 さ,Dは内外円筒の隙間である.
アスペ ク ト比 Tは今 回は5.7に固定 した.Il‑5.7 ではテイラー渦流れは5つの渦構造 を持つ ことが判 ってお り,最 も上 に位置す る渦の表面の流れ は内円 筒 か ら外 円管へ向か う流れ となる.
2‑ 2 画像入 出力装置
R!n!n!R!ロ
図2 画像解析手順
画像解析 に関す る機器 のシステム図について,撮 影装置 は ビデオカメラを使用 し,回転円筒の真上 に 設置す る. ビデオカメラは30フレーム/秒で撮影す る.各Re毎 に撮影 を行 い,その中の フレーム画像 を コンピュータに入力す る.画像 は680×480ドッ ト の24ビッ トをWindowsBitMap画像 として コンピ ュータに取 り込む.入力画像 は ビデオプ リソタに出 力 し,処理画像 はプ リンタに出力す る.
2‑3 画像解析
画像処理及 び解析手順 を図2に示す.処理範囲選 択 は流れの領域 のみを切 り取 る処理 であ り,以後, その範囲において解析 を行 う.処理範囲の切 り取 り は保存 してお くメモ リ容量が少 な くてすむ こと,処 理上 において人間にも認識 しやすい利点がある.処 理方法は,画像上で内円筒の2接線 を指定 し,内円 筒 と外円管 を除 き流れの領域 のみを自動的に抽出す る方法を採用 した.図3に ビデオカメラか らコンピ ュータに入力 した表面波動の画像 と処理範囲を指定 して切 り取 った画像を示す.濃度値 は 0 (暗 い) か ら255(明 るい) の値 を持 ち,R(レッド),G(グ リーン), B(ブルー)で表 せ られ る.今 回 の濃度 値読み取 りはR,G, Bの3つの値 の平均を採用 し た. よって,デ ータ値 の 0は黒 で255は白 と表示 さ れ,濃度値頻度読み取 りは画像 デ ータの0‑255ま での256個 のデータであるので各数値 を カウン トさ れ る.その後,濃度値 の頻度分布 を求め,その分散 を計算 し, グラフ化 した.画像処理3)及 び解析 にお けるプログラムはVisualC十十 4)を使用 し, データ 解析 は市販 の ソフ トを使用 した.
二重円筒間を旋回する流体の表面波動の画像解析
図3 画像処理範囲の切取 り
Re‑2831
図4 画像処理結果
3.結果及び考察
3‑ 1 レイノルズ数に対する表面波動現象 Reに対す る表面波動現象の代表的画像 を図4に 示す.Re‑89では, クニ ッ ト流 れであ り,表面 に おいて特に振動 している状態は確認で きない.画像 としては,左右に白 くなっている部分があるが,照
処 理画像
Re=4086
明が強い場所であ り,流れの領域 としては明暗が一 様 であ り特徴 が見 られ ない.Re=1009で は,内円 筒から半径方向外向 きの流れが見 られ,その結果, 外円筒に近い領域で跳ね水のような盛 り上が り部分 (以後,外周波 と呼ぶ)が観察 される.画像 か らも それがち ェうど外側1/3の領域 に同心円の線 として 観察で きる.Reが さらに増加す るとこの外周波 は
半径方向に振幅 を持つ進行波 とな り,Reの増加 と ともに一周 における波の数が増加 し,次第 に一定 に 落 ち着 く. さらにReが増加す ると外周波の形 は不 規則 な合成 波 の よ うに複雑 な形 状 に発 展 す る.
Re‑2831はその間の波形が不規則 にな って きてい る状態を示す.画像 としては,外周波の形が明暗で 表 されてお り,外周波か ら外円管に向かって複雑 な 波が現れていることが確認 され る.Re‑4086では, 既に表面の流れは外円管から内円筒へ向か う半径方 向内向 きの流れ となっている. これはReが小 さい 時の流れ方向 とは逆向 きである. これは3次元的な テイラー渦流れ として考 えると,それまで5セルの 構造を持 っていた流れは自由表面の流れは外向 きで あったが,Re‑3936付近 で4セルの構造 に分岐 し たため,自由表面の流れが内向 きになった ことを意 味 している. これは断面の流れを観察す ることによ
って確認 されている. また,表面の状態は内円筒近 傍では液面が低 くなってお り,外円管から内向 きに 波動現象が見 られ る.画像 としては,内円筒付近が 暗 くなってお り,波動現象は明暗の コン トラス トで 表 されている.
以上 のよ うに,表面波動の状態は画像 として見た 場合,明暗の コン トラス トで表現 されてお り, この ことか ら1つの画像の濃度値か ら流れの状態を特徴 づけることがで きると期待 され る.
3‑2 濃度値の頻度
4つのReにおける画像の濃度値頻度分布 の結果 か ら代表的 なものを図5に示す.横軸 は 0か ら255
の画素の濃度値を示 し,縦軸は各濃度値の頻度であ る.Re‑89では,濃度値 は比較的小 さい値 に集 中 してお り, また,ば らつ きの中心 はほぼ100付近で あ り,他の条件 と比較 して小さいと言 えることか ら 画像 は全体 に暗 い ことがわか る.Re‑1009で は,
50か ら250まで全体的 に濃度値 が分布 してお り,ば らつ きは大 きい.Re‑2831では,濃度値 の中心値 は150付近 に集中 してお り,Re‑89とは異 な り,比 較的明 るい画像 であ ることがわか る.また,200か ら250の濃度値 も頻度 としては小 さいが,平均 して 分布 している.Re‑4089では,70か ら180で比較的
‑様 な分布 であ り,頻度 は大 きい. また,200か ら
250の濃度値 も見 られ るのはRe‑2831の場合 と同様 である.画像か らも判断できるよ うに,波立 ってい る部分 は白 く表現 されてお り,表面が乱れている場 合 は, 白色部分が多 くを占めることになるので,演 度値は高い値 になる.
以上 の よ うに,各Reによって頻度分布 の形状が 異な り,画像の濃度分布 に特徴があることがわかる.
1200 800
他党 400
0
1200
軸 800 驚
400
0
1200 800
他‡
懸 400 0
1200
800
也
懸 400
0
0 50 100 150 200 250
濃度値
0 50 100 150 200 250
濃度値
0 50 100 150 200 250
濃度値
0 50 100 150 200 250
濃度住 図5 濃度値の頻度分布
3‑3 濃度値の標準偏差
Re‑0(流れの状態が静止)か らRe‑4089まで の代表的な39個の画像データを画像処理 ・解析 し, 濃度分布の標準偏差 を求めた. また,各Reの再現 性 を確認す る為 に各Reにおいて3フレームの画像 を処理 し,再現性があることを確認す るとともに標 準偏差 は 3個の平均を取 った.その結果を図 6に示 す.横軸はReで縦軸は標準偏差である.
Re‑0か らRe‑178まで は標準偏差 は30前後 で あ り,非常に小 さい. これは表面の状態がほぼ静止 状態 と変わ らず波動現象は現れていないと考 えられ る.Re‑178か らRe‑1705の範囲は50前後 と比較的 ばらつ きの大 きい領域であ り,明るい画素 と暗 い画
二重円筒間を旋回する流体の表面波動の画像解析
V)OV)05一▲'332
棚5'掛野
0 1000 2000
R●
図6 濃度値の標準偏差
3000 4000
素が混在 していることを示 している. これ は自由表 面全体が振動 しているため表面が斜めにな り,それ によ り照明が広い範囲に渡 って照射 されているため と思われ る.Re‑1817か らRe‑3956の範 囲 におい て,35か ら40とば らつ きが中程度 であ る. しか し, 明 らかに前 のRe‑178か らRe‑1705の領域 とは異 なってお り,表面波動状態が異なっていることがわ かる. これは液面全体 の振動か ら波打 ち現象が発生 し,波の高 い部分が明 るく光 り,低 い部分 は暗 くな ることか ら現れ る と考 え られ る.Re‑4000を超 え る範囲では再度 ばらつ きが大 きくなってお り,波動 状態が異 なっている.可視化法による観察 によると, Re‑3936で洞構造 が変化 してお り, この現 象 はテ イラー渦流れが5セル流れか ら4セル流れへ分岐 し ていることがわかっている.4セルの場合 の自由面 は外 円管か ら内円筒に向かって傾斜 してお り,照明 のあた り方が他 の場合 と異 なると思われ る.また, 波打ち現象 は残 るため波の高低で白黒の コン トラス
トが表 され ることか らばらつ きが大 きい と思われ る.
しか し,画像データが少ないため詳細 なことは不明 である.
3‑ 4 可視化 による結果 との比較
旋 回流体 の表面流れの発展す る様子を可視化 に よ り分類 した結果2)と比較 した.可視化 に よる分類 と 画像解析 に よる分類 を図7に示す.可視化 による分 類 は大 き く5つ に分類 され,Re‑1060までの タイ プ Ⅰは自由表面全体が僅かであるが,上下振動 して いる状態で,いわゆるス ロッシング現象を起 してい る範囲 であ る.Re‑1600までの タイプⅠⅠは外 円筒 内壁 において外周波が発生 してお り, リング状 の盛 り上 が りを示 してい る範 囲 であ る.Re‑2710まで のタイプⅠⅠⅠは外周波が波の形状 をしてお り,次第 に その数 を増 加 させ てい る範 囲で あ る.Re‑3936ま でのタイプⅣは,外周波の波が複雑 に合成 し,かな り乱 れが生 じて い る.Re‑3936以上 の タイプⅤは 渦構造が異 なっている表面の流れが内向 きの状態で
Re 可視化による分類 Re 画像解析による分類
1060 1600 2710
3936 タイプⅠ 3178802957‑1‑1‑378198576 タイプ Ⅰ タイプⅠⅠ タイプⅠⅠ
タイプⅠll タイプⅠ11 タイプⅣ
図7 可視化法 と画像解析法による流れの分類 あ る. これ に対 して画 像 解析 結 果 に よ る とRe‑
89‑178の間 までで タイプ Ⅰ,Re‑1705‑1817の間 までで タイプ ⅠⅠ,Re‑3827‑3956の間 まで で タイ プⅠⅠⅠ,それ以上の範囲で タイプⅣと4つ に分類 され る.最後 のテイラー渦流れが5セルか ら 4セルに分 岐す る領域は2つの解析方法で一致 してい るといえ る.その他の領域 については, いわゆる外周波 が リ ング状 の形状で発生 している領域 はスロッシソグの 発生 している流れ領域 との区別 を判断で きない. 普 た,外周波の波が発生す る領域 と複雑 に合成 され る 領域 とは区別す ることがで きない.類似 してい ると 思われ る個所 もあるが,完全 に一致 していない. こ の原因は撮影時 に照明の強度のばらつ き,必ず しも 画像明度が統一 されていなかったため と思われ る.
撮影時に照明強度 を統一す るか,画像処理 で補正す る方法を採 る必要があると思われ る. また,原画像 における画像処理 も他 の処理 を施す ことに よ り明暗 の境界を精確 に判別す る必要があると思われ る.
4.結 言
同軸二重円筒間を旋 回す る流体 の表面波動現象 を 流れの可視化 と画像解析 によ り解明 した.旋 回流れ における表面の流れは レイノルズ数 の増加 によ りク ニッ ト流れか ら半径方向速度成分を持 ち, ス ロッシ ソグを伴 う振動現象を発生す る. この波動現象 は進 行波 とな り,外壁 に衝突 し,反射波 と互 いに干渉 し あいなが ら複雑 な流れ に発展す る.表面波動現象を 画像 として捉 えコンピュータによる画像処理 し解析 す ることで この波動現象を特徴づけることを試みた.
主 な結論 は以下 の通 りである.
(1) 処理 した画像か ら,濃度分布 を求めその標準 偏差 から流れの状態をある程度分類で きること がわかった.
(2)旋 回流 れ の表面 波動現象 は クニ ッ ト流 れ か ら 乱流 に至 るまでに4つ状態 に分類 できる.
参 考 文 献
1) Toya Yorinobu,Nakamura lkuo,Yamashita ShintaroandUekiYoshinori,Anexperimentona Taylorvortexflow inagapwithasmallaspect ratio:Bifurcationofflowsinanasymmetricsystem,
ActaMechanica,102(1994),pp137‑148.
2)戸谷順信 ,中村育雄 ,旋回流れの表面波動現象 (流 れの可視化 と液位 のFFT解析),日本機械学会第76 期 流体工学部門講演会講演論文集,(1998),pp153‑ 154.
3)長谷川純一他3名 ,画像処理の基本技法 (技術評論 社)
4)桜田幸嗣 ,田口景介,VisualC++4.0プ ログ ラ ミ ング入門 (アスキー出版)