インフルエンザ A! H1N1! pdm09 と季節性インフルエンザ A 型間 における顆粒球及びリンパ球の動態比較
1)日本臨床内科医会インフルエンザ研究班,2)塩野義製薬株式会社,3)九州大学先端医療イノベーションセンター,
4)独立行政法人国立病院機構九州医療センター名誉院長
廣津 伸夫
1)長谷川貴大
2)税所 優
2)村手 純子
2)池松 秀之
3)岩城 紀男
1)河合 直樹
1)柏木征三郎
4)(平成 24 年 11 月 2 日受付)
(平成 25 年 8 月 19 日受理)
Key words : influenza(H1N1)2009, seasonal influenza A, granulocyte, lymphocyte
要 旨
発熱疾患の鑑別には末梢血検査が行われ,細菌感染においてその診断および治療効果の判定に有用な手段 となっているが,ウイルス感染においてはその検討は少なく,明確な見解はない.このたび,2004!05 年度 から 2009!10 年度に至る発熱疾患に対するルーチンの末梢血検査(白血球数とその分画および CRP)の蓄 積を後ろ向きに検討した結果,季節性インフルエンザ A 型(H3N2 及び H1N1 を含む,以下季節性 A 型)614 例と 2009!10 年のパンデミックインフルエンザ(H1N1)2009(以下,A!H1N1!pdm09)548 例の述べ 1,162 例からインフルエンザの特徴的な所見が示され両者の違いも明らかとなった.
検討に当たっては,白血球とその分画は年齢により異なるため,全症例を一般化加法モデル(GAM,gen- eralized additive model)を用いて年齢調整を行い,解析を実施した.インフルエンザの感染初期には顆粒 球の増加,リンパ球の減少が確認され,その後顆粒球は減少,リンパ球は増加に転じることが観察された.
顆粒球数では,季節性 A 型に対して A!H1N1!pdm09 は,治療開始前は 0.93 倍,治療後は 0.82 倍とそれぞ れで統計的に有意に低く推移していた.リンパ球数の比率は,治療開始前,治療後のいずれも,1.12〜1.30 倍であり,統計的に有意に高い推移であった.CRP は発症後 24 時間から 36 時間にピークを迎え,その平 均値は A!H1N1!pdm09 で 0.88mg!dL,季節性 A 型で 1.53mg!dL であった.
末梢血は疾病の時間的経過,合併症の併発,治療による修飾,治療薬の副次作用等によって変動する.こ のようなインフルエンザ本来の末梢血の白血球分画の変化・動態を知ることは,診断時(特に迅速診断の要 否の判断),経過中の合併症や副作用の出現を把握するために重要と考え報告する.
〔感染症誌 88:117〜125,2014〕
序 文
インフルエンザの迅速診断法は臨床の場でインフル エンザの確定診断を容易にしただけでなく,従来のイ ンフルエンザの診断基準に適応しない症例の確定診断 に効力を発揮している.しかし,このような診断技術 の発達は,高熱を呈さないインフルエンザの存在をも 知らしめることとなり,疑いをかけるべきインフルエ ンザ様疾患の範疇は広がり,インフルエンザの診断は むしろ複雑になったともいえる.また,迅速診断法は
発症早期には偽陰性となることも多く,真の陰性か,
偽陰性かの判断には,相補的な診断手法が求められる.
一方,従来より発熱疾患の鑑別には末梢血検査が行 われ,細菌感染症において,その診断および治療効果 の判定に有用な手段となっているが,ウイルス感染症 においてはその検討は少なく,明確な見解はない.イ ンフルエンザにおいても,これまで罹患時には他のウ イルス感染症と同様に顆粒球は減少することはあって も増加することはなく,顆粒球が明らかに増加した場 合は細菌感染の合併が強く疑われるとされている1).し かし筆者は,明らかな細菌感染が認められないインフ ルエンザ患者の初診時に,顆粒球が増加している例が 原 著
別刷請求先:(〒213―0011)神奈川県川崎市高津区久本 3―
6―1―212
廣津医院 廣津 伸夫
多く,発症から 12 時間後以降,顆粒球は経時的に減 少することを報告2)した.これら末梢血検査の所見は,
インフルエンザの迅速診断に至るまでの過程,及び迅 速診断キットとの相補的鑑別診断において有用と思わ れ,さらに典型的ではない末梢血の所見が認められた 場合には,インフルエンザ肺炎への移行,細菌感染の 合併,抗インフルエンザ薬の副作用等の把握に効力を 発揮すると思われる.
また,A!H1N1!pdm09 と季節性 A 型の差異につい ては,A!H1N1!pdm09 では明らかな好中球の減少が A!H1N1!pdm09 の補助診断になりうるとの報告3)も あるとおり,本研究でも季節性 A 型より A!H1N1!
pdm09 のほうが顆粒球減少の程度は大きく,両者間 に臨床検査値の違いがあると推測された.したがって,
これらの亜型間の末梢血の違いを比較することによ り,顆粒球数及びリンパ球数の臨床に果たす役割が更 に明らかになると考えられた.
対象と方法
2004!05 年度から 2009!10 年度までに当 院 を 受 診 し,インフルエンザ迅速診断キットで陽性であった患 者において,抗インフルエンザ治療薬(オセルタミビ ル,ザナミビルのいずれか)を投与し,かつ,少なく とも 1 回以上採血した延べ 2,009 症例のうち,季節性 インフルエンザ A 型(H3N2 および H1N1)および A! H1N1!pdm09 の罹患例を比較するために後ろ向きに 検討した.同一患者で複数年度あるいは同一年度内に おいて,複数回インフルエンザウイルスに感染した場 合には,異なる患者として取り扱った.なお,血液採 取に際し,患者に対して診療目的であることに加え,
診療の質を向上させるためのインフルエンザ関連研究
(インフルエンザ感染時の末梢血の白血球の動態等)に も使用されることを説明し,口頭で同意を得た.検討 に用いた患者データは個人情報をマスクして取り扱 い,プライバシーの保護に留意した.
検討項目は,白血球数,白血球分画(リンパ球数及 び顆粒球数)及び CRP の推移とした.なお,単球に ついては白血球の 3% 程度であることから,検討項目 から除いた.同一患者で複数回の検査データがある場 合は,すべての検査データを解析対象とした.上記項 目の測定にはホリバの簡易検査器を使用した.なお,
核左方移動の確認(顕微鏡下)のために用いた症例(A!
H1N1!pdm09 及 び 季 節 性 A 型)は 2009!10 年 及 び 2010!11 年の 2 シーズンの患者の治療開始前検体を対 象にした.
白血球数及び白血球分画(リンパ球数及び顆粒球数)
について,発熱開始時点を基点として,インフルエン ザウイルス亜型別に,各臨床検査値データの推移をプ ロットした.また,臨床検査値の観測時点が患者によっ
て異なっていることから,平滑化することで臨床検査 値の推移を捉えるため,スプライン曲線を当てはめた.
なお,小児と成人では白血球数及び分画は異なるため,
年齢の影響を調整した上で滑らかな推移曲線を当ては める必要があり,その方法として今回は一般化加法モ デル(GAM,generalized additive model)4)を用いて 解析対象集団における平均年齢である 17 歳にすべて のデータを年齢調整して推移曲線を示した.また,
GAM によって当てはめられたスプライン曲線につい て亜型間で比較を行った.解析対象の各臨床検査値に は,影響を与えると考えられた治療前後のデータが含 まれていた.このため,全ての臨床検査値データを対 象にしてスプライン曲線を当てはめることに加え,治 療の影響を受けていない治療開始前(投薬開始から半 日以内も含む),及び治療後(投薬開始から半日以降)
それぞれも対象にしてスプライン曲線を当てはめ,そ の間の変化量について比較した.
白血球数,リンパ球数及び顆粒球数の減少の度合い を,DAIDS AE grading table(Division of AIDS table for grading the severity of adult and pediatric ad- verse events)5)に従って,発熱開始後の最低値を基に Grade 分類した.顆粒球数の Grade 分類については,
好中球数の基準を代用した.
なお,検定の有意水準は 0.05 とした.
成 績 1.対象患者の背景因子の分布
対象とした A!H1N1!pdm09 および季節性インフル エンザ A 型罹患例の延べ 1,460 例のうち,抗菌薬を A!H1N1!pdm09 で は 10.0%(61!609 例),季 節 性 A 型では 27.8%(237!851 例)に使用していたためこれ らの症例は除外した.なお,抗菌薬使用例が季節性 A 型で多い理由は,以前,マクロライドのインフル エンザの臨床症状に対する影響を観察した際,顆粒球 増多例を対象に,抗菌薬を使用したことによるもの2)
で,季節性 A 型に細菌感染が合併しやすいことを意 味するものではないことを付記しておく.
インフルエンザウイルス型別の背景因子の分布は Table 1に示すとおり,解析対象の患者計 1,162 症例 の う ち,A!H1N1!pdm09 は 548 例(男 性 270 例,女 性 278 例),季節性 A 型は 614 例(男性 288 例,女性 326 例)であった.
年齢では,A!H1N1!pdm09 と季節性 A 型の間で分 布が異なり,A!H1N1!pdm09 では平均値 14.9 歳,中 央値 10 歳,標準偏差 12.7 歳であり,季節性 A 型では 平均値 19.7 歳,中央値 11 歳,標準偏差 17.6 歳と,季 節性 A 型より A!H1N1!pdm09 の方が年齢は低く分 布していた.
性別の分布に差異はなかった.
Table 1 Patient Demographics
Influenza A virus A/H1N1/pdm09 Test
N Proportion N Proportion P value
Number of patients 614 100.0% 548 100.0%
Age (years) 0 - <2 25 4.1% 5 0.9% 0.0494
2 - <7 159 25.9% 128 23.4%
7 - <13 145 23.6% 199 36.3%
13 - <19 43 7.0% 95 17.3%
19 - 242 39.4% 121 22.1%
Mean 19.7 14.9
Median 11 10
SD 17.6 12.7
Sex Male 288 46.9% 270 49.3% 0.4206
Female 326 53.1% 278 50.7%
Period from onset of fever to first treatment (days)
<0 5 0.8% 8 1.5% 0.0928
0 - <1 441 71.8% 403 73.5%
1 - <2 134 21.8% 109 19.9%
2 - <3 22 3.6% 13 2.4%
3 - <4 8 1.3% 5 0.9%
4 - <5 4 0.7% 1 0.2%
Analysis population: Patients who were diagnosed as having influenza and treated with Oselta- mivir or Zanamivir but without the use of antibiotics.
Test: Wilcoxon rank sum test (age and period from onset of fever to first treatment) , Chi- square test (sex) .
発熱から治療開始までの日数については,A!H1N1!
pdm09 と季節性 A 型間で分布は異なる傾向にあっ た.A!H1N1!pdm09 においては症状が疑われた時点 で速やかに受診する傾向があったことが違いの原因と 推察される.ほとんどの患者で発熱から 48 時間未満 のうちに治療が開始されていた.
2.白血球数,白血球分画(リンパ球数及び顆粒球 数)及び CRP の推移
治療の前後を含めた全ての採血時における白血球 数,顆粒球数およびリンパ球数と,さらに治療開始前,
治療後の採血に場合分けした際のプロットとそのスプ ライン曲線を Fig. 1に示す.スプライン曲線は独立に 3 つの範囲のデータに対して当てはめられ,また各患 者で発熱開始時点を基点とする治療開始時点が異なる ことから,必ずしも治療開始前後それぞれで当てはめ られたスプライン曲線を合わせたものが,全体に対し て当てはめられたスプライン曲線と一致しない点には 留意する必要がある.
白血球数のスプライン曲線は,治療開始前ではいず れのインフルエンザ型でも数値は同程度で,正常値1)
にほぼ近かった.治療後の推移は後述する顆粒球と同 様の傾向であった.
顆粒球数のプロットをみると,発症当初は 3,000!μL 前後から 7,000!μL 前後に集中し,8,000!μL 近くの測 定値も散見され高めに幅広く分布しているが,発症数 日後には 2,000!μL 前後に収斂している.
治療開始前のスプライン曲線をみると,発熱開始時 点 で A!H1N1!pdm09 は 約 4,500!μL,季 節 性 A 型 は 約 5,000!μL であり,顆粒球数正常値1)よりも若干高く なっているが,その後徐々に低下してきている.治療 後のスプライン曲線は,季節性 A 型は治療開始前と 異なり緩やかな低下曲線となった.しかし A!H1N1!
pdm09 では発熱開始 2 日後から 3 日後での下降曲線 の傾斜が季節性 A 型に比べて著しく,発熱 3 日後に 季節性 A 型よりも低い最低値まで達してその後も同 様の値を維持していた.
リンパ球数のスプライン曲線をみると,いずれの亜 型も発症初期は約 1,000!μL であり,リンパ球数正常 値1)よりも低くなっていたが,その後徐々に回復した.
次に Fig. 1のスプライン曲線について,季節性 A 型 に対する A!H1N1!pdm09 の推移の位置を検定した
(Table 2).
白血球数について,A!H1N1!pdm09 は季節性 A 型 とほぼ同等で,治療開始前,治療後,全体いずれも統 計的に有意な差はなかった.顆粒球数については,季 節性 A 型に対して A!H1N1!pdm09 は,治療開始前 は 0.93 倍,治療後は 0.82 倍,全体では 0.91 倍であり,
それぞれで統計的に有意に低く推移していた.リンパ 球数については,A!H1N1!pdm09 は治療開始前,治 療後,全体のいずれも,季節性 A 型に対して 1.12〜1.30 倍であり,統計的に有意に高い推移であった.
つまり白血球数は A!H1N1!pdm09 と季節性 A 型
Fig. 1 Plots and spline curves of laboratory test values after onset of fever in patients infected with influenza A or A/H1N1/pdm09
間では変わらないが,分画をみると,A!H1N1!pdm09 において顆粒球数は季節性 A 型よりも約 15% 少な
く,相当分をリンパ球が補っていると考えられる.
また CRP の推移は,発症後 6 時間までの平均値は
Fig. 2 Distributions of the granulocyte values which correspond to a CRP of zero within one day after the onset of fever and before the first treat- ment
Table 2 The spline curve position of A/H1N1/
pdm09 compared to influenza A virus.
Before treatment
After
treatment Overall Leukocytes 1.02 (0.3916) 0.95 (0.3254) 1.01 (0.5450) Granulocytes 0.93 (0.0019) 0.82 (0.0076) 0.91 (0.0001) Lymphocytes 1.30 (<0.0001) 1.12 (0.0282) 1.29 (<0.0001)
(p values)
A!H1N1!pdm09 で は 0.40mg!dL,季 節 性 A 型 で は 0.44mg!dL と 低 い が,発 症 後 24 時 間 か ら 36 時 間 にピークを迎え,その後減少していった.A!H1N1!
pdm09 と季節性 A 型それぞれで,この範囲に観測さ れた CRP の例数,及び平均値(標準偏差)は A!H1N1!
pdm09 で 57 例,0.88(0.76)mg!dL,季 節 性 A 型 で 75 例,1.53(1.78)mg!dL であった.
3.A!H1N1!pdm09 と季節性 A 型における顆粒球 数増加の比較
顆粒球はインフルエンザの発症初期に増加している ことを述べたが,同時に CRP も軽度上昇している症 例もみられた.これらの症例は抗菌剤を使用すること 無く,他の症例と同様の臨床経過をたどって治癒して いる.しかし,細菌感染を全く否定することは不可能 なため,できるだけ細菌感染による白血球への影響を 排除することを目的とし,治療開始前の CRP が 0.0 mg!dL で,かつ発熱からその採血までの時間が 1 日 以内の検体に制限し顆粒球数の分布を観察した(Fig.
2)ところ,この対象群でも顆粒球の増加が認められ た.Wilcoxon 順位和検定を用いて分布の違いを検討 した結果,A!H1N1!pdm09 と季節性 A 型の間で有意 な 違 い は な か っ た(p=0.0711)も の の,A!H1N1!
pdm09 の顆粒球数の分布はやや低値の方に位置して いた.なお,治療開始前の検体を,顕微鏡下において,
好中球のうち桿状球の占める割合を目視で確認した結 果,A!H1N1!pdm09 59 例の平均は 1.9%,季節性 A 型 40 例の平均は 0.7% であり,顆粒球増多にもかか わらず左方移動がみられなかった.
4.A!H1N1!pdm09 と 季 節 性 A 型 に お け る 白 血 球・顆粒球・リンパ球減少の比較
白血球数,顆粒球数及びリンパ球数について推移中 の最低値を基に Grade 分類したものを Table 3に示 す.Grade の分布はインフルエンザ亜型間で異なって いた(p=0.0162,p=<0.0001 及び p=<0.0001).
すなわち顆粒球数について,A!H1N1!pdm09 では 季節性 A 型よりも減少の程度が大きかっ た.特 に Grade 4 の症例は季節性 A 型 614 例では認められな かったのに対し,A!H1N1!pdm09 では 548 例中 6 例
(1.1%)であった.白血球数においても,A!H1N1!
pdm09 では季節性 A 型よりも Grade 値が高く分布し ていた.逆に,リンパ球数では,季節性 A 型の方が A!H1N1!pdm09 よ り も 大 き く 減 少 し て い た.A! H1N1!pdm09 では Grade 分類に相当するリンパ球数 減少は 6.4% にとどまっていた.
同一被験者において,複数回の顆粒球数測定が実施 されている症例について,亜型別に推移(変化量)を 確認した.未治療時の採血ポイントのうち発熱開始か ら 1 日後までに採血が行われたものの測定値を治療開 始前,また治療されたもののうち発熱開始 4 日後から 6 日後までの間に採血が行われた測定値を治療開始後 として集計したものを Table 4に示した.亜型間で測 定 時 点 に 偏 り は な く,顆 粒 球 数 の 減 少 数 は A!
H1N1pdm09 では 2602.4!μL,季節性 A 型では 2509.1!
Table 3 Severity grade
Grade Influenza A virus A/H1N1/pdm09 Test
N Ratio N Ratio P value
Number of patients 614 100.0% 548 100.0%
White blood corpuscles Normal 605 98.5% 528 96.4% 0.0162
Grade 1 (2,000 - 2,500) 8 1.3% 9 1.6%
Grade 2 (1,500 - <2,000) 0 0.0% 4 0.7%
Grade 3 (1,000 - <1,500) 1 0.2% 7 1.3%
Grade 4 (<1,000) 0 0.0% 0 0.0%
Granulocytes Normal 596 97.1% 499 91.1% < .0001
Grade 1 (1,000 - 1,300) 11 1.8% 22 4.0%
Grade 2 (750 - <1,000) 4 0.7% 14 2.6%
Grade 3 (500 - <750) 3 0.5% 7 1.3%
Grade 4 (<500) 0 0.0% 6 1.1%
Lymphocytes Normal 464 75.6% 513 93.6% < .0001
Grade 1 (600 - 650) 35 5.7% 12 2.2%
Grade 2 (500 - <600) 48 7.8% 13 2.4%
Grade 3 (350 - <500) 57 9.3% 7 1.3%
Grade 4 (<350) 10 1.6% 3 0.5%
The grade critera of granulocytes was used for that of neutrophils.
They were judged with the DAIDS AE grading table (Division of the AIDS table for grading the severity of adult and pediatric adverse events) , the grades were judged from the worst values during the study period.
Test: Wilcoxon rank sum test
Table 4 The comparison of granulocyte numbers before and after the treatment for those patients who had 2 or more analysis times.
Before treatment After treatment Change Influenza A
Granulocyte
mean (SD) 4,930.6 (1,781.6) 2,421.5 (1,301.5) −2,509.1 (1,871.9)
p=0.0264 Days to the analysis after the onset of fever
mean (SD) 0.5 (0.3) 4.7 (0.5)
n 33 33
A/H1N1/pdm09 Granulocyte
mean (SD) 4,437.4 (1,598.7) 1,835.0 (988.3) −2,602.4 (1,556.3)
Days to the analysis after the onset of fever
mean (SD) 0.4 (0.3) 4.8 (0.5)
n 84 84
Before tratment: Within 1 day after the onset of fever.
After tratment: Between 4 days and 6 days after the onset of fever.
μL であった.顆粒球数の変化量について前値を共変 量とする共分散分析を行い,A!H1N1!pdm09 を季節 性 A 型と比較した結果,統計的に有意に差異があっ た(共分散分析による p 値:0.0264).このことから 季節性 A 型と比較して A!H1N1!pdm09 のほうが顆 粒球数は大きく減少していることが確認できた.一方 で治療効果については治療開始から回復(解熱)まで の 時 間 は,A!H1N1!pdm09 で は 1.1 0.8 日,季 節 性 A 型では 1.3 1.0 日であり,インフルエンザ型間で統 計的に有意な違いはなかった(Wilcoxon 順位和検定,
p=0.2384).
5.顆粒球数 Grade 4 の症例の背景
A!H1N1!pdm09 の 548 例 の う ち,顆 粒 球 数 が Grade 4 の 500!μL 未満まで低下した 6 例について詳 細を Table 5に示す.当該症例は 10 代が多く,治療 薬はザナミビルのみであった.その背景としてオセル タミビルは 10 代の治療に推奨されていないためと考 えられる.治療前検査は,発熱開始 1 日後まで,治療 後検査は発熱開始 3.83 日後から 6.04 日後の間で実施 されていた.
Table 5 The laboratory data observed in 6 A/H1N1/pdm09 infected patients who showed grade 4 of granulocytopenia
Sex Age Drug Treatment White blood
corpuscles Granulocytes Lymphocytes Monocytes CRP
Male 13 Zanamivir Before 3,700 2,361 1,024.9 314.5 0.1
After 2,700 437 1,887.3 375.3 0.1
Female 10 Zanamivir Before 4,000 2,900 792 308 2.4
After 1,100 370 651.2 79.2 0.2
Female 12 Zanamivir Before 3,900 3,221 546 132.6 0
After 1,200 424 691.2 85.2 0
Female 12 Zanamivir Before 6,400 4,621 1,420.8 358.4 0.7
After 1,200 371 691.2 138 0.1
Female 8 Zanamivir Before 3,000 2,208 615 177 0
After 1,700 400 1,169.6 130.9 0
Female 14 Zanamivir Before 4,900 3,959 700.7 240.1 0.2
After 1,400 211 1,065.4 123.2 0
The assays before and after treatments were performed within 0.08 - 1 day and 3.83 - 6.04 days after the onset of fever, re- spectively.
これらの症例では,一時的には顆粒球低下に伴い易 感染状態であったと推察されるが,CRP はすべての 症例で 0.2mg!dL 以下であったことから抗菌薬を必要 とするような 2 次的な細菌感染症の併発の可能性は低 いと判断した.治療効果についても発熱から回復(解 熱)までの時間は,1.63〜2.21 日の範囲にあり,明ら かに延長している症例は見受けられなかった.
また治療開始前の顆粒球数は正常値と比べると若干 低めの例が多かったものの,すべて Table 3の正常 Grade であり,元々顆粒球数が特に低い患者ではない と考えられた.治療後の白血球数においては,正常 1 例,Grade 2 が 1 例,Grade 3 が 4 例であった.リン パ球数は治療開始前では Grade 1 あるいは 2 が各 1 例あったが,治療後はすべて正常であった.
考 察
近年,測定機材の発達により末梢血の検査は患者の 来院時に測定できるようになり,結果を即座に知るこ とが可能になった.初診時の末消血の所見より,多く の発熱疾患の中から,感染症を疑い,さらに細菌感染 かまたはウイルス感染かの鑑別を行い,その末,イン フルエンザ迅速診断キット使用の是非の判断あるいは 当該キットによる結果と相補的な鑑別診断をすること が可能となる.今回,インフルエンザ罹患時の末梢血 の所見を検討したところ,顆粒球は発症初期には増加 し,その後経時的に減少すること,CRP は初期には 上昇は見られず,24 時間から 36 時間でピークを形成 することが判明した.
インフルエンザにおける顆粒球数増加は,気道粘膜 へのウイルス感染直後にサイトカインが速やかに上 昇6),最初の免疫応答として顆粒球の遊走を促進し,血 管 壁 周 囲 に と ど ま っ て い る 辺 縁 プ ー ル(marginal pool)の顆粒球が循環プール(circulating pool)へ移
動した結果と推察される7).
この後顆粒球が減少に転じるのは,循環プールへ遊 走した顆粒球の寿命が極端に短いことに加え,顆粒球 が病巣へ集積したのち消費されたためと考えられる7). 細菌感染の場合は,病巣への遊走に続き骨髄刺激因子 の働きにより,病巣に病原体が留まる限り顆粒球は産 生されるが,ウイルス感染の場合は刺激因子の分泌が 少なく,減少の経過をたどったと思われる1)8).インフ ルエンザの発症早期に顆粒球が増加しているにもかか わらず左方移動がみられなかった結果に基づいても先 の顆粒球減少の理由が支持されうる.
本研究で,インフルエンザの発症早期に,一時的に 顆粒球が増加し,その後減少することが観察されたこ と は,イ ン フ ル エ ン ザ A2!Bethesda 10!63(H2N2)
を成人ボランティアに感染させたところ,感染後 2 日 から 4 日後に発症する間,1 日から 2 日かけて好中球 が増加した後減少したとの報告9)と一致するが,これ らの推移は,顆粒球数と発症から診断時までの経過時 間の関係を考慮する基本となり,診断時期が様々なイ ンフルエンザの診断に有用な所見と思われた.
次にリンパ球の動態であるが,本研究では感染直後 には既に低下しており,早期に増加に転じたことが観 察された.Fig. 1において,顆粒球が増加から減少に 移行した時期に相応して,リンパ球が減少から増加に 変化している.前述のボランティアを対象とした報告 でも,感染後 1 日目で発症前にリンパ球増加を認めた 症例の存在を指摘しつつ,平均的にはリンパ球は減少 から徐々に増加していると結論している9).リンパ球 の減少に関しては発症直後であることから,ウイルス 増殖に伴う感染性炎症反応によるアポトーシスや,自 然免疫賦活によるリンパ球のリンパ組織外への遊走の 結果が考えられている10).
A!H1N1!pdm09 とそれ以前の季節性 A 型の比較で は,in vitroでヒトの細胞に感染させたときの宿主応 答をみたところ,A!H1N1!pdm09 と季節性ウイルス に対する宿主応答は概ね差がなくウイルス増殖速度も 同様であったという報告11)がある一方,今回の筆者ら の調査では亜型間で顆粒球や CRP の推移に違いが認 められている.即ち,発症初期の顆粒球数の上昇は季 節性 A 型の方が著しく,CRP も高かった.これらの 所見は,一般的に臨床症状は,A!H1N1!pdm09 の方 が季節性 A 型より軽微であったと言われていること と一致する12)13).また,A!H1N1!pdm09 であ っ て も 重篤な呼吸障害を生じた小児においては,発症 24 時 間までの顆粒球数の平均値±標準偏差は 7,846!μL 1,780(n=6)と著しく増加し,CRP も 3.0mg!dL 2.8
(n=6)と高値を示していた14)ことから,インフルエ ンザ感染初期の血中の顆粒球の増加量はウイルス感染 による炎症の強さに相関している可能性が示唆され る.よって,インフルエンザにおいて初診時に顆粒球 の異常高値を認めた場合には,細菌感染の合併を考慮 するとともに,重症化することを念頭に診療にあたる 必要性があると思われた.また A!H1N1!pdm09 の方 が季節性 A 型より治療期間を通して顆粒球数が低値 で推移したのは,A!H1N1!pdm09 はより下気道側に も親和性が高い15)ことから,季節性 A 型より深く,広 い感染部位に顆粒球が遊走した結果と考えられた.こ れは全身性のウイルス感染または下気道の感染時に顆 粒球遊走に関わるケモカイン(IL-8 等)のレベルが,
より増加することと同様の現象と推察できる6). 顆粒球の絶対数が 500!μL 未満に低下すると重症細 菌・真菌感染症の発生するリスクが高くなることが知 られているが,季節性 A 型 614 例では顆粒球 500!μL 未満を示した顆粒球低下例が 1 例も認められていな かっ た の に 対 し,Table 5に 示 す よ う に,A!H1N1!
pdm09 感染 548 例では 6 症例(1.1%)で認められた.
これらの症例全てにおいて,細菌の二次感染の併発,
顆粒球数の減少に伴う臨床的に明確な変化は確認され なかった.通常 500!μL 未満の顆粒球減少を認めた場 合には,投与薬剤による副作用も疑われ,効果が認め られているにも関わらず,投与中止を迫られる場合も あろう.この度,インフルエンザウイルス感染症にお いて認められる好中球減少症の頻度・グレードはイン フルエンザウイルスの亜型によって異なる可能性があ ることが示唆された.今後,新しいタイプのウイルス が出現した際には,さらなる重篤な顆粒球減少が生じ る可能性も念頭に入れ,薬剤による副作用との鑑別を 行いつつ,診療にあたることが肝要と思われた.
以上,インフルエンザウイルス感染時に顆粒球数,
リンパ球数,および CRP 値が変動することを述べて
きた.ただし,当該成績は集団における動態を評価し ており,必ずしも個人の推移の変化を捉えていること ではない点に留意する必要がある.また,A!H1N1!
pdm09 と季節性 A 型の比較において,末梢血におけ る顆粒球・リンパ球の動態の差が,病態にどのように 影響しているかを見出すには至らなかった.しかしな がらこのようなインフルエンザの末梢血の白血球分画 の変化・動態を知ることは,診断キットの進歩が大き く寄与している現在でも,症状推移と併せてインフル エンザ本来の末梢血の白血球分画等を総合的に把握す ることで精度の高い診断を可能にすることができ,さ らに,その経過中の合併症,薬剤の副作用を把握する 上で重要と考え,ここに報告した.
利益相反自己申告:申告すべきものなし 文 献
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Comparison of the Kinetics of Granulocytes and Lymphocytes between Influenza A!H1N1!pdm09 and Seasonal Influenza A
Nobuo HIROTSU1), Takahiro HASEGAWA2), Yutaka SAISHO2), Junko MURATE2), Hideyuki IKEMATSU3), Norio IWAKI1), Naoki KAWAI1)& Seisaburo KASHIWAGI4)
1)Japan Physicians Association,2)Shionogi & CO., LTD.,3)Center for Advanced innovation, Kyushu University,
4)National Kyushu Medical Center
Peripheral blood tests are performed for the differentiation of febrile diseases, and are useful for diag- nosing and determining the effectiveness of treatment in bacterial infections. However, their use for viral in- fections has not been well-investigated, nor do any clear views exist regarding their use with viral infec- tions. We retrospectively investigated the results of routine peripheral blood tests for febrile diseases (differ- ential leukocyte count and C-reactive protein (CRP)) performed in 1162 patients between the 2004!05 and 2009!10 influenza seasons, and identified the characteristic findings of influenza, along with the differences between cases of seasonal influenza A (including H3N2 and H1N1 ; hereafter, seasonal A ; n=614) and pan- demic influenza (H1N1) 2009 seen during the 2009!10 influenza season (hereafter, A!H1N1!pdm09 ; n=548).
The differential leukocyte count varies with age ; therefore, analysis was performed by adjusting for the age of all patients using a generalized additive model (GAM). Increased granulocytes and decreased lympho- cytes were confirmed during the initial stage of influenza infection, followed by inversion to decreased granulocytes and increased lymphocytes. The granulocyte count was significantly lower in A!H1N1!pdm09 compared to seasonal A, with levels 0.93- and 0.82-fold relative to seasonal A before and after treatment, re- spectively. The lymphocyte count was 1.12- to 1.30-fold greater in A!H1N1!pdm09 compared to seasonal A both before and after treatment, indicating significantly higher levels in A!H1N1!pdm09. CRP levels peaked 24-36 h after onset, with peaks of 0.88mg!dL for A!H1N1!pdm09 and 1.53mg!dL for seasonal A.
Peripheral blood counts change due to factors such as the time course of the disease, onset of complica- tions, modification resulting from treatment, and side effects of pharmacotherapies. We report the present findings because we consider an understanding of the changes and kinetics of differential leukocyte counts in peripheral blood inherent to influenza to be important for diagnosis (particularly for the decision of doing rapid diagnosis test) and to promote recognition of the onset of complications and side effects during the course.