岩医大歯誌 4:147−154,1979
総 説
歯槽堤粘膜の炎症性変化
一一 橋義歯ポンティックの材料および形態との関連一
石 橋 寛 二
岩手医科大学歯学部歯科補綴学第二講座*(主任:田中久敏教授)
〔受付:1979年10月4日〕
1 は じ め に
補綴物の目的は,口腔内の失われた形態およ び機能を回復し,さらに口腔の健康を維持増 進することにある1)。 しかし,そのためには,
口腔内に装着された補綴物が生体の組織に適応 し組織を傷害しないものでなくてはならない。
とくに,固定性の橋義歯では,可撤性の義歯と 異なり装着後の調整,管理が困難となるため,
周囲組織との調和を求めて厳しい条件が要求さ
れる。
そのため,橋義歯と周囲組織,とくに歯槽堤 粘膜におよぼすポンティックの影響について 古くから多大の関心が寄せられ,ポンティック の材質的,形態的,力学的の問題,および歯槽 堤の有する条件など,多くの問題点が検討され
てきた2 24)。
これらの基礎的,臨床的研究成果より,とく に,広い接触面積を有するレジン鞍状型ポンテ
ィックの組織為害性が確認され,代って接触面 積が小さく,自浄性,装着感ともにすぐれてい
るとされる艶焼きした陶材のリッジ・ラップ型 ポンティック,あるいは粘膜と点状に接触する 楕円型ポソティックなどが推奨され,臨床に広
く応用されるようになった。
しかし,現在でも,日常の臨床でポンティッ クの為害作用による炎症性変化に遭遇すること が多く(図1,2),組織と調和した固定性橋 義歯を確立するためには,まだ多くの問題を含 んでいると言わざるを得ない。橋義歯による口 腔機能の回復に際して,生物学的配慮がもっと 重視されるべきであろうと考える。
今回,歯槽堤粘膜に現われる炎症性変化にっ いて,橋義歯ポンティックとの関連で,その為 害作用をおよぼす因子,発生過程,および炎症 性変化の態度について追求し,問題点と共に考 察した。
皿 歯槽堤粘膜に為害作用をおよぼす因子 固定性橋義歯が口腔内に装着され,機能を回 復し,健康を維持するためには,周囲組織との 関連を重視する必要がある。この観点から,石 原1)は次の3点をとくに考慮しなけれぽならな いと指摘している。すなわち,第1はポンティ ックからの負担過重による為害作用,第2は歯 牙固定の影響,第3はポンティックに起因する 歯肉への刺激および不潔性の問題である。
とくに,現在までの臨床的研究 7)であきら InflammatoIy changes on alveolar mucosa−Effects of pontics material and form−
Kanji I田lBASHI
(Department of Prosthodontics O, Iwate Medical University School of Dentistry, Morioka O20)
*岩手県盛岡市中央通1丁目3−27(〒020) Dεη .J.1ωαzεMε4. Uη初.4:147−154,1979
蹴図1 レジン1鞍状型ポンティックによる歯槽堤 粘膜の著明な炎症
揮
くs
∨
蒸鯵∨︑ ﹀
岩医大歯誌 4:147−154,1979
図2 ポンティック基底面にみられるプラークの
付着
かなように,ポンティックにより惹き起される 歯槽堤粘膜の炎症は重大で,単にボンティック 下粘膜の傷害にとどまらず,時には支台歯の歯 周疾患をも惹起し橋義歯の予後を不良とする。
一般に,補綴物が周囲組織に対して為害作用 をおよぼす因子として,補綴物の鋭い辺縁や粗 縫面などの接触,あるいは圧迫による機械的刺 激,材料成分による化学的刺激,補綴物に付着
した歯垢,歯石,食物残溢などの不潔沈着物に よる細菌的刺激など3点が考えられている6)。
たとえば,歯槽堤粘膜への為害作用が最も大 きいレジン按状型ポンティックは,形態不備に よる機械的刺激,食溢,歯垢などの沈着にもと つく2次的刺激などが認められる。
著者25)の成犬を用いた実験的研究によって も,これらの3因子の重要性が確認されてい る。すなわち,不良な橋義歯ポソティックによ り惹き起される粘膜の炎症と同様の状態を発生 させるため,臨床的に観察される要因を取り入 れて,材料としてレジンを用い,機械的刺激と
して粗槌な接触面を与え,食渣,歯垢の沈着に よる細菌的刺激を誘発する条件を設定したとこ ろ,実験的炎症を効果的に惹き起こすことが可 能であった。
皿 橋義歯ポンティック下粘膜における 炎症性変化の要因
1 ポンティック側の要因 1)材質的影響
ポンティックに用いられる材料としては,陶 材,レジン,金属があげられ,その中でも陶材 は,化学的に安定で,組織為害性がなく,最も 望ましい材料とされている4 6 川 15)。
材料の表面性状について,Eichner4)は艶焼 きを行った陶材が,十分に研磨したレジンや金 属よりも滑沢であったと報告し,Claytonら1 ) は,艶焼きした陶材が,十分に研磨したレジン や金属よりも粗で,レジンと金属の差はなかっ たと述べている。このように見解の異なる報告 が示されているが,陶材の艶焼きの条件を考慮 することによって,その表面凹凸を少くするこ とも可能2θで,走査型電子顕微鏡による観察結 果22)から考えても,表面性状について臨床的に 問題となる材料間の差はとくに認められないと 考えられる。
材料成分による化学的刺激に関して,陶材に ついては埋入試験9)や抜歯窩内挿入ポンティッ クの観察2D,さらには粘膜と接触させた場合の 臨床的観察4 6 5 22)などの結果より,陶材は組
織に対して無刺激であることが確認されてい る。金属に関しては,銅,亜鉛などの賎金属を 主とした合金をポンティック材料として用いた 場合,ポソティック基底面に激しい腐蝕が起こ り,溶解による形態変化や腐蝕生産物の堆積が 認められる。その結果,粘膜への為害作用が著 明になり,熈欄あるいは潰瘍形成がみられたと 報告している口 2η。一方,金合金や金銀パラジ ウム合金などは耐蝕性にすぐれており組織に対
岩医大歯誌 4:147−154,1979
する為害作用は認められない。レジンの生体反 応に関しては,刺激性はモノマーにあり,加熱 重合レジソのように重合が完全に完了すれぽ,
組織埋入試験の結果から無刺激であるとされて いる28)。しかし,即時重合レジンでは残留モノ マーの為害作用が著明で,組織に対する刺激性 が強く,細菌感染の誘因となりやすい29)。ポン ティック基底面材料と粘膜の炎症程度との関係 を臨床的に観察した報告13)によると,賎金属と レジンを比較した場合,基底面材料としては黄 色合金が最も悪く,次いで白色金属,レジソの 順であったと述べている。
ポンティック材料に対するプラークの付着傾 向もきわめて重要な因子で,臨床的研究6 22)で は,艶焼きされた陶材に比較して,金属,レジ
ンはプラークの付着が多くみられたと報告して いる。Claytonら16)は陶材,レジン,金合金 のすべてにプラークの付着をみているが,臨床 的観察においても明きらかなように,その付着 能力には差がみられ °),陶材における沈着物に は石灰化傾向が認められないが,レジンの場合 には石灰化傾向が認められている8)。また,金 属とレジンを比較した場合,プラークの脱離傾 向からみて,金属が最も付着傾向が強く現われ
るようである22 3°)。
このように,橋義歯ポンティック基底面に用 いられる材料を,粘膜への為害作用という観点 から検討してみると,口腔内に装着後の安定性,
プラークの付着傾向などより艶焼きされた陶材 が最も望ましく,貴金属あるいは重合後十分に 研磨されたレジンであっても粘膜との接触は避 けるべきであろうと考える。
2)形態的影響
ポンティックが歯槽堤粘膜に与える影響は,
ポンティックの機械的,材質的刺激によるもの のほかに,基底面形態によるものが大きい。プ ラークの付着による歯槽堤粘膜への為害作用を 防止するためには,自浄性のすぐれた,さらに は積極的清掃効果の発揮できる形態を設定する 必要がある。
ポンティックを粘膜から離開させた離底型ポ
ンティックは,歯槽堤粘膜をポンティックに付 着するプラークから守る形態とされている19)。
しかし,この形態は審美性,発音の点で部位的 に限定され,装着感の不良という問題も避けが
たい。
そのため,基底面を歯槽堤粘膜と接触させる ポンティック(図3)の応用が考えられ,その 場合には接触の強さ,接触する面積,接触する 面の形態などがプラークの付着傾向ならびにそ の清掃性に影響する。
接触する強さの程度に関しては過度の圧迫は 組織為害性が大きく,歯槽堤粘膜に循環障害,
潰瘍形成などを惹き起こす12)。また軽度の圧迫 を与えるため模型を削ってポンティック基底面 を合わせる方法についても組織の変化を生じさ せるとの意見もある 4)。
一方,Hofmann2)のように粘膜との間にわ ずかの間隙を与え唾液の流通による自浄作用を 期待する考え方もあるが,実際には,食渣の停 滞,プラークの付着などの障害は避けられない であろう。上野ら °)はポンティック基底面部に 自浄作用を期待することは困難なため,ポンテ ィヅクと粘膜を接触させず,各種清掃用具によ る清掃を奨めている。
Johnston17),石原ら7)は,わずかに粘膜を 圧迫するリッジ・ラップ形態を推奨し,丸山12)
も動物実験により,軽度の圧迫を加えた場合 は,プラークや食物残渣の停滞がみられず,粘 膜は良好に保持されたと述べている。臨床的観
A
B C図3 粘膜接触型ポンティックの諸形態 A:鞍状型
Blリッジ・ラップ型 C:楕円型
(Tyllnan原図24)改変)
察23 1)においても,同様の結果が確認されてお り,軽度に圧迫させたポンティックは予後良好 な経過を示している。
接触面積が歯槽堤粘膜に与える影響も大き く,広い接触面積を有する鞍状型ポンティック では材料に関係なく不潔になりやすい。したが って,離底型ポンティックの欠点である装着 感,発音,審美性などを解決できる範囲で接触 面積を小さくする配慮が必要である。そういう 視点のもとに,前述したリッジ・ラップ型ポン ティックが推奨される。この形態は比較的接触 面積が小さく,審美性,自浄性,装着感の点で すぐれている。また,Stein1°), Cavazos15),
Hirshberg18)らは,基底面が粘膜と点状に接触 する楕円型ポンティックを推奨し,この形態は 接触面積が小さく,プラークの付着がより少な いと述べている。
接触型ポンティックの問題点として以下の事 項が指摘されている。まず接触部と非接触部の 境界領域ではプラークの付着は避けられず,歯 槽堤粘膜および支台歯側における歯周組織への 影響が考えられる32)。またポンティック基底面
と歯槽堤粘膜を意図した程度に接触させること はかなり困難で,シリコーンによる接触試験で 検討した報告33)によると,模型上でリッジ・ラッ プ形態の接触様式を与えても,実際の口腔内で は模型上と異なった接触状態を示したという。
この2点は,ポソティック基底面形態に関す る重要な課題として,十分考慮しなけれぽなら ない事項であろう。
以上のように,自浄性を十分考慮したポンテ ィックを設定したとしても,粘膜の接触部と非 接触部の境界領域などにみられるプラークの付 着を,自浄作用だけで完全に抑制することは不 可能である。したがって,歯槽堤粘膜を健全に 保つためには積極的な清掃作用を容易にする十 ク〉な歯間空隙を与えることが必要で,この点で
もポンティックの形態は重要な影響をおよぼ す。欠損部位によりポンティックに要求される 条件は異なるが,前歯部においては,審美性,
発音などを考慮し,臼歯部では装着感,連結部
岩医大歯誌 4:147−154,1979 の強度などをとくに考慮しっっ,許される範囲 で広い歯間空隙を設定すべきであろう。
2 歯槽堤粘膜側の要因
ポンティックの基底面形態は歯槽堤粘膜の形 態に左右され,歯槽堤粘膜に凹凸不整が認めら れる場合には,ポンティック基底面形態も複雑 になり,粘膜との間に凹状の間隙が生じやす い。この間隙には,食片の嵌入,歯垢の沈着,
脱落上皮の停滞などが予想され,細菌感染にょ る刺激が著明になる。
このような現象を防ぐためには,ポンティッ ク下の清掃性を高め,プラークや食渣の停滞の 生じにくい環境を設定する必要がある。
著者ら34)は,歯槽堤粘膜の凹凸不整や歯間乳 頭部の不良歯肉がみられる場合には,適正な歯 間空隙を設定するため,電気メスなどを用いて 歯槽堤粘膜の形態修正を行うことを奨めてい る。Stein °)は,ポンティック基底面に接する 粘膜が不整な場合には,粘膜表面を平滑に修正 した後で橋義歯を装着すべきだと主張し,予後 良好な長期経過観察例を示している。また,
Schluger35)も歯槽堤粘膜の形態修整の重要性 を述べ,上野ら2°)も,ダイヤモソド・パーや電 気メスによる形成が効果的であるとしている。
W 歯槽堤粘膜にみられる炎症性変化の 種々相
前述したように,橋義歯ポンティックが歯槽 堤粘膜に与える影響は大きく,しかも,そのポ ンティックと歯槽堤粘膜の組み合わせによって 生ずる環境の違いにより,歯槽堤粘膜に現われ
る変化も一様ではない。
ここでは,歯槽堤粘膜における炎症性変化の 種々相について,文献的ならびに著者の実験的 研究を基に考えてみたい。
橋義歯ポンティックとの関連で歯槽堤粘膜に 現われる特徴的変化として,まず発赤と圧痕が あげられる。多くの場合,ポンティック基底面 の形に一致し,健康部分と病的部分の限界が明 瞭に認められる。病変がさらに進行すると,廉 欄,潰瘍に至り,支台歯の歯周組織まで波及し
岩医大歯誌 4:147−154,1979
た場合は歯周疾患を惹起することになる。
ポンティック下粘膜面に形成された圧痕の程 度と病理組織所見を比較検討した報告13)による と,レジンの場合,圧痕がない症例群に比して,
圧痕の深さが0.8〜1.2mmの症例群では傷害が 最も大きく,ほとんどに潰瘍がみられたとい う。また,陶材ポンティックを用いて,歯槽堤 粘膜の圧迫の程度による差異を追求した報告1η では,0.5mm程度の軽度の圧迫の場合にのみ,
粘膜は比較的正常な状態に保持されたと述べて いる。このことより,広い接触面積で過度の圧 迫が加えられた場合に粘膜組織への影響が最も 大きく潰瘍形成にまで至ることが多いと考えら れる。石原ら?)は,ポンティック下粘膜の臨床 的観察を行い,レジン鞍状型ポンティック下の 粘膜に,出血,排膿,疹痛などの症状を有する エプーリス様増殖を認め,病理組織学的に上皮 表層の破壊,強い炎症性細胞浸潤,および血管 の拡張を呈した症例を報告している。
このように,粘膜の炎症性変化に関して,肉
眼的観察と共に病理組織学的観察2 郁 8 1° 12 1ω
を行った報告が多く,それによると,粘膜上皮 の菲薄化,上皮突起の形成,さらには上皮細胞 の変性などをあげている。上皮下結合組織にお いては,炎症性細胞浸潤や1血管の拡張がみら れ,粘膜上皮の潰瘍性破壊が進むに従い,深部 の結合組織にまで影響し,時には,歯槽骨表面 にまで波及し,窩状吸収がみられるようにな
る。
一方,田端5)は,剥離細胞学的検索により,
橋義歯ポンティック装着前後の粘膜の状態を観 察しているが,それによると,橋義歯装着が粘 膜の角化を促進すること,また,ポンティック 下の炎症部位では,健康部位に対して上皮細胞 の出現率,上皮細胞の退行性変化,白血球数な どに差が認められ,とくにレジン鞍状型ポンテ ィックの組織為害性が強いことを報告してい
る。
次に,著者の行った実験的研究25)について触 れてみたい。
補綴物と周囲組織との関連を明きらかにする
ためには,補綴物装着前後の歯槽堤粘膜の変化 を追求することが重要である。そのため,臨床 所見変化を判定する有効な手段を得ることを目 的として,実験的に炎症を惹起させ,口腔生体 顕微鏡(倍率100倍および200倍)により,歯 槽堤粘膜の炎症性変化を追求した。さらに,肉 眼的観察所見および病理組織学的所見との比較 検討も試みた。
軽度に発赤がみられる状態では,口腔生体顕 微鏡による炎症性の初期変化として,上皮下血 管の拡張を伴い,観察される細胞は全て表層有 核型で,健康群にみられた核の消失した細胞は 存在せず,しかも細胞間境界の不明瞭化,視野 内における細胞数の増加がみられるようにな る(図4,5)。この現象は,強度の刺激が上 皮に加わるため,上皮の角化による防禦が不十 分になり,その結果,上皮表層の剥離が進み,
核の密集度が増加したものと推測される。
さらに炎症が進んだ段階,すなわち上皮表面 の平滑化が観察され,発赤,腫脹が著明になる と,上皮下血管の拡張がいっそう進み,形態変 化も複雑な様相を呈し,波状型,吻合型などが 認められるようになる(図6)。と同時に,細胞 間境界の不明瞭化が目立ち,時には各細胞が折
り重なった状態を呈する。とくにEvans Blue とToluidine Blue染色液を用いた二重染色下 でより明確に観察され,炎症による上皮表層の 剥離に伴い,深層から出現したと思われる細胞 が認められた(図7)。また,200倍の口腔生 体顕微鏡による核の形態観察の結果では,健康 群にみられた扁平で均一な卵円形が姿を消し,
円形あるいは類円形の大きな核が認められ,ま だらな染色態度を示すようになる(図8)。
病理組織学的所見にも変化が現われ,上皮表 層における剥離,脱落と共に錯角化層の菲薄な 部分がみられた。上皮細胞の変化として,最表 層では核の消失,破壊が観察され,深部では空 胞形成,核の濃縮,細胞間の疎化が著明であっ た。上皮下結合組織線維は細く断裂した状態を 示し,血管の拡張およびリンパ球を主とする細 胞浸潤が認められた(図10,11)。
図4 健康粘膜では,細胞膜で 境された多角形の表層有 核型細胞が明瞭に認めら れる (×100)
図5 炎症の進行に伴い,細胞 数の増加,細胞間境界の 不明瞭化が著明になる (×100)
岩医大歯誌 4:147−154,1679
図6 上皮下血管の形態も,波 状型,吻合型が認められ,
複雑な形態を示す (×100)
図7 炎症性変化が強くなると 深層型細胞がみられるよ
うになる (×100)
.盤鷺黙ξ
懸灘講
図8 核の形態は,円形または 類円形が認められる (×200)
図9 塵燗を呈する上皮では,
Toluidine Blueに濃染 した好中球も認められる (×100)
熈欄形成あるいは一部潰瘍形成に至るように なると,上皮下血管は高度の拡張,蛇行を示し 上皮細胞はまばらに存在するようになる。また Toluidine blueに濃染している炎症性浸出細 胞すなわち好中球の出現が明瞭に認められた
(図9)。
病理組織学的所見によるとこの段階では上皮 の破壊が著明で,上皮突起は乱れ,樹枝状に深 部へ伸展,増殖し,上皮細胞の減少,および上 皮内への炎症性細胞浸潤が著明に認められるよ うになる。また,深部にいくに従いリンパ球,組 織球が目立ち,血管の拡張が著明で,結合組織線
轍轟櫛灘購撫i羅繍鰻、:
図10健康粘膜は6〜8層の錯角化層からなる重 層扁平上皮で被覆されている
(HE染色, x50)
岩医大歯誌 4:147−154,1979
図11上皮表層では核の消失,破壊が観察され,
上皮下結合組織では,血管の拡張およびリ ンパ球を主とする細胞浸潤が認められる (HE染色,×50)
灘鵜
図12上皮の破壊が著明で,表層では上皮細胞の 減少とともに好中球の出現が認められる。
上皮下結合組織では,血管の拡張,線維の 膨化が観察される (HE染色,×100)
維の膨化が観察されるようになった(図12)。
以上のように,従来の肉眼的観察あるいは病 理組織学的観察ではとらえることのできなかっ た上皮表層部に現われる微細な炎症性変化を,
口腔生体顕微鏡所見として分析することが可能 となった。すなわち,健康および刺激を加えた 場合の歯槽堤粘膜の臨床所見変化について生体 観察により経時的,客観的に把握することがで き,炎症性変化に伴う粘膜上皮および上皮下血 管の推移が明きらかになった。
V お わ り に
橋義歯ポンティックの影響で生ずる歯槽堤粘 膜の炎症性変化について,その因子および態度 を中心に生物学的観点より追求した。
歯槽堤粘膜を健康に保持するためには,ポン ティックの材料,形態,および粘膜の状態など に関し,個々の状況に応じた配慮が必要であ り,同時に,清掃作用が効果的に行われる環境 を設定することが重要である。
今後,口腔生体顕微鏡を応用し,橋義歯ポン ティックとの関連で生じる歯槽堤粘膜の微細な 臨床所見変化を,経時的,客観的に生体観察 し,炎症性変化の要因および態度をあきらかに することによって,周囲組織と調和したポソテ
ィックの確立を目ざしたいと考える。
文 献
1)石原寿郎:今日の補綴,医歯薬出版,東京,
365−429, 1960.
2)Hofmann, M.:Erfahrungen mit Kunststo・
ffverkleideten Kronen−und BIUckenkonstruk−
tioner, Z).Z. Z. 13:502−514,1958.
3)Herrmann, H. W.:Die Gewebereaktion un−
ter Brロckenk6rpern, D. Z. Z.14:581−590,
1959.
4)Eichner, K.:Porzellanoberflache−ihre Ges−
talt und ihre Auswirkung auf die Gingiva,
D.Z.Z.15:579−592,1960.
5)田端恒雄:橋義歯ダミーが歯肉に及ぼす影響,
第1報 剥離細胞学的観察,口病誌,2q:148−163,
1962.
6)田端恒雄:橋義歯ダミーが歯肉に及ぼす影響,
第2報 臨床的観察,口病誌,29:375−397,1962.
7)石原寿郎,吉田恵夫,田端恒雄:ダミー(その 3)ダミーの自浄性について,歯界展望,211
1075−1084, 1963.
8)権田悦通:固定性架工歯の基底面に関する研 究,第2編 その形態と材料の差異による基底面
下組織の変化について,歯科医学,28:208−237,
1965.
9)Podshadley, A.G..Rat connective tissue re spons to pontic matevials,」. Pro∫z加τ. Dεη彦.
16:110−118, 1966.
10)Stein, R.S.:Pontic−residual ridge relation ship:Aresearch report,」. Pro5肪ε . Z)επτ.
16:251−285, 1966.
11)Henry, P. J. Johnston, J. F. and Mitchell,
D.F.:Tissue changes beneath fixed partial
dentures, JP. Pアos λετ. 1)ε刀z. 16:937−947,
1966.
12)丸山剛郎:架工義歯ダミー下粘膜に対するダミ ーの接触状態による影響に関する実験的研究,補 綴誌, 12:37−52, 1968.
13)中村文彬;面接触橋体が粘膜に及ぼす障害につ
いて,補綴誌,21:126−145,1968.
14)Podshadley, A. G.:Gingival response to
PonUcs, 」.」Pro5τ九εz.1)θπ . 19:51−57, 1968.15)Cavazos, E.:Tissue response to fixed par・
tial denture pontics,」. Pro5zみθz. Z)θπ .20:
143−153, 1968.
16)Clayton, J. A.&Green, E.:Roughness of
pontic materials and dental plaque,」. Prosか みθ .D¢励.23:407−411,1970.17)Jbhnston, J. F.,Phillips, R.W. and Dyke・
ma, R. W.:Modern practice in crown and bridge prosthodontics,3rd ed.,Philadelphia,
W.B. Saunders Co., pp 333−335,1971.
18)Hirshberg, S. M.;The relationship of oral hygiene to embrasure and pontic design−A preliminary study,」. Pグ05 ゐεz.1)θη .27:
26−38, 1972.
19)Perel, M. L:Amodified sanitary pontic,
」. Proぷzんθ彦. 1)επτ. 28:589−592, 1972.
20)上野浩,山下敦,井上宏:ポンティック の新しい考え方とそのデザイン,歯界展望,461 197−212, 1975.
21)川島好仁,新谷 修,黒田拓治,丸山剛郎:Por・
celain root ponticの予後に関するX線的観察,
補綴誌,18:213−220,1975.
22)嶋倉道郎;橋義歯ポンティック基底面に付着す るプラークの観察一プラークの性状と粘膜にお よぼす影響一,補綴誌,20:465−481,1976.
23)草刈 玄,嶋倉道郎,吉田 薫:橋義歯ポンテ ィック基底面が顎堤粘膜におよぼす影響一臨床 編その1−,歯科評論,418:25−32,1977.
24)Tylman, S. D. and Malone, W. F. P.:Tyl・
man s theory and practice of fixed prostho−
dontics,7th ed., Mosby Co., St Louis, pp
岩医大歯誌 4:147−154,1979
77−81, pp 274−288, 1978.
25)石橋寛二:歯肉および歯槽堤粘膜の炎症性変化 に関する研究一口腔生体顕微鏡による観察一…,
補綴誌,22:407−431,1978.
26)Barghi, N., Alexander, L. and Draughn,
R.A.:Wヒen to glaze−An electron microscope
study,」. Prosτみετ.1)θη .35:648−653, 1976.27)石原寿郎,井上昌幸,草刈 玄:歯科用合金の 耐食性に関する臨床的観察,第1報 各種冠用合 金の撤去観察所見,補綴誌,9:104−114,1965.
28)岡田周造:温成および即時重合レジンの生体組 織反応,口科誌,13:428−436,1964.
29)六人部慶夫:合成樹脂継続歯冠の歯肉組織反 応,阪大歯誌,4:969−996,1959.
30)Wise, M. O.&Dykema, R. W.:The plaque−
retaining capac輌ty of four dental materials,
」.Pro∫z/2θf. Z)επz. 33:178−190, 1975.
31)石橋寛二,村山正史,小村正司,塩屋雅晴,草 刈玄,時田正人:両顎前突症例における補綴学 的検討,第2報 治療経過と予後,新潟歯学会誌,
5 :119−128, 1975.
32)井上昌幸:ブリッジの診断から装着まで一5一 補綴臨床,9:251−268,1977.
33)戸代原孝義,青木保之,牛込博義,鵜山秀夫,
花村典之:ダミーの歯槽面との接し方について,
第1報,補綴誌,21:176−177,1977.
34)草刈 玄,石橋寛二,嶋倉道郎,平 秀幸:歯 間空隙,補綴臨床:別冊,補綴の診療計画とその 診査,医歯薬出版,東京,256−261ページ,1979.
35)Schluger, S., Yuodelis, R. A. and Page,
R.C:Periodontal disease, Lea&Febiger,
Philadelphia, pp 603−610, 1978.