• 検索結果がありません。

市町村合併の組み合わせが職員数の効率化に与えた影響について

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "市町村合併の組み合わせが職員数の効率化に与えた影響について"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

1

市町村合併の組み合わせが職員数の効率化に与えた影響について

政策研究大学院大学 まちづくりプログラム

MJU12611

平良 和也

1.. はじめに..はじめにはじめにはじめに

平成における市町村合併は,1999年の合併特例法 の改正によって,合併特例債の創設といった合併を 促進する政策が実施され,全国的に推進されてきた.

合併により新たな時代に対応できる自治体に生ま れ変わるためには,行政能力を質的に高めるだけで なく,予算,人員などの限られた資源を効率的に配 分し,適切な行財政運営に取り組む必要があり,合 併することで効率的な行財政運営が進むと言われて いる.しかしながら,同じ地方自治体とはいえ,昨 今では提供しているサービスは多種多様であり,新 自治体での統一したサービス提供のためには,調整 の時間と手間がかかることが想像される.また,新 たな事務処理に職員が慣れるまでのコスト,組織が 巨大化することによる組織間の調整コストなども発 生することが考えられる.

本稿では,合併効果として考えられる職員数の削 減について,実際にその効果が発揮されているかど うかを検討するため,合併を構成する関係市町村数 及び市町村の人口規模の組み合わせにより調整コス トが変化するとの仮説をたて,発生する調整コスト が,自治体組織における管理部門であり,総合的な 調整業務を行っている総務部門の職員数の削減に与 える影響について分析した.

2.. 分析..分析分析分析 のののの 対象対象対象対象

本稿では合併の効率性を捉える指標として,総務 部門の職員数を利用する.総務部門は,管理部門と して自治体業務の全般を総合的に調整する,人事,

財政,法制,出納などの部署を含み,一般的にどの

自治体も同じ水準,同じ内容で実施する業務を行っ ていると考えられる.従って,福祉部門など直接住 民にサービスを提供する部門と異なり,自治体の規 模や合併前後で行政サービス水準の変化がほとんど ないと仮定することが容易であり,職員数の減少を 効率性の向上と捉えることができる.

合併後の職員数に影響すると思われる調整コスト は,職員の人員配置や組織間の調整,全庁的な事務 処理に係る相談対応,資料のとりまとめなど,総務 部門の業務量に最も顕著に反映されると思われる.

3.... 検証検証検証検証 するするするする 仮説仮説仮説 仮説

調整コストを左右する要因としては,合併する関 係市町村数及び人口規模のばらつきが考えられる.

第 1 の仮説は,関係市町村が少ないほど職員数の 効率化が高まるというものである.市町村数が多い 場合,サービス水準が異なる可能性が高く,調整の 機会が増えることが予想されるほか,新自治体での 事業実施時も旧市町村の地域バランスを考慮する必 要がある場合,市町村数の多さは,コストの増加に 結びつく.また,旧役場庁舎が支所等として残され ることが想定され,市町村数が多い場合は出先機関 の増につながり,組織数の増加による調整コストの 発生も見込まれる.

第 2 の仮説は,市町村の人口規模のばらつきが大 きい場合は,職員数の効率化が高まるというもので ある.住民サービスの水準が異なる 2 つの自治体が 合併するケースでサービスを統一する場合,人口規 模が同程度の2 自治体の合併と大きな差がある2自 治体の合併を比較すると,人口規模が同程度の合併

(2)

2

では調整コストが大きくなるものと予想される.な ぜなら,人口規模に差がある合併では,合併前に相 対的に多くの住民が受けているサービス水準を維持 するために,合併時点で規模の大きな自治体のサー ビス水準に統一される可能性が高く,合併後に調整 される余地が小さいと思われることや,仮に調整を 要する場合でもサービス対象者である住民が少なく て済むことから大きな事業変化が伴わず,コストが 小さくなることが見込まれるためである.また,同 規模同士の合併では,変更後の事業,新たな事務処 理手法に対する職員の習熟度合いについても,新自 治体を構成する職員のほぼ半数が新たな手続き等に 慣れる必要がでてくることから,調整コストが高ま る可能性が高いと考えられる.

4.. 実証分析..実証分析実証分析 実証分析 4....1 分析分析分析分析 のののの 方法方法方法方法

分析にあたっては,2001年度から2010年度におけ る,未合併市と合併市の合併前後のパネルデータを 作成し,固定効果モデルによるDID分析を行う.

対象とする合併自治体は,合併数がピークを迎え た2003年度から2005年度の3か年において合併し た事例のうち,合併後が市であり,かつ,2001年度 から2010年度で1回のみ合併を経験しているケース としている.つまり,合併後が政令指定都市,町,

村であるものと複数回の合併を行っているものを除 いている.これは比較する場合の条件を可能な限り 一定とするとともに,合併後の経過を分析するため のサンプルサイズを確保するためである.DID にお けるコントロールグループとしての未合併自治体は,

平成の合併の始まった1999年度から2010年度まで に合併を経験していない市としている.

なお,合併市における合併前のデータは,関係市 町村の職員数,人口などのデータを単純に合計する ことで仮想合併市のデータを作成した.

4....2 推定推定推定推定 式式式式

推定モデルについては,まず,合併の平均的な影

響を式1で,合併後経年での影響を式2で分析する.

次に,市町村数と人口規模のばらつきが与える影 響を式3,人口集中度が与える影響を式4で分析する.

式1 ln _soumu GD X ε

式2 ln _soumu AGD X ε

式3 ln _soumu GD ln _city ∗ GD

! ln_pop_cv ∗ GD $X ε

式4 ln _soumu %GD

& ln_pop_hhi ∗ GD X ε

※αは定数項,βはパラメータ,εは誤差項,iは市,

tは年である.

(1)被説明変数

ln_soumuは,総務部門の職員数の対数値とした.

(2)説明変数

①合併の与えた影響を見るために着目する変数 GD は合併前後ダミーであり,合併前の年度は 0, 合併後の年度は1となるダミー変数である.

AGD(after GD)は合併後の経過年数ダミーであり,

合併市における合併後の時間を通じた効果をみる,

合併市の合併後年ごとに1,それ以外は0をとる.

ln_city は関係市町村数の対数であり,関係市町村

数が合併による職員数の変化に与える影響の観察に 用いる.

ln_pop_cvは,関係市町村の人口規模のばらつき程

度が職員数に与える影響の観察に用いるもので,関 係市町村の合併直前の年度における人口の多寡によ るばらつきの標準偏差を平均値で除して変動係数を 算出し対数化したものである.

ln_pop_hhiは人口集中度を表し,関係市町村の人口

規模の集中度が職員数の変化に与える影響を観察す るために用いる.市場における集中度を示すハーフ ィンダール指数と同様の算出方法で計算した値の対 数であり,ハーフィンダール指数と同様の算出方法 による指標を作ることで,市町村数の影響も加味し て散らばり度合いを捉えることができると思われる.

独占状態が高いと,相対的に偏りが大きく,規模の 異なる市町村の合併と考えることができる.

②その他のコントロール変数

(3)

3

X はその他のコントロール変数であり,人口の対 数,財政力の対数,退職者数の対数,2001年から2010 年の年度ダミーである.

4....3 合併全体合併全体合併全体合併全体としてのとしての 影響としてのとしての影響影響 の影響のの 推定結果の推定結果推定結果 推定結果

合併が総務部門職員数に与えた平均的な影響につ いては,合併前後ダミーの符号は負となったものの,

統計的に有意な結果にはならず,全体として職員の 実数が減少している状況において,未合併市の職員 数の減少のトレンドと比較した場合,ほとんど差が ないことが示された.

次に,合併後の経過年数ダミーを用いて分析した ところ,合併1年目及び合併2 年目ダミーの係数は 正の符号となるものの,3年目以降はすべて負の符号 となるとともに,係数のマイナス値が大きくなる傾 向がみられた.合併 2 年目のデータは統計的に有意 とは言えないものの,それは係数が 0 である可能性 が高いことを示しており,合併後,時間が経過する ほど職員数の削減効果が大きく出ることが示された.

4....4 合併全体合併全体合併全体合併全体としてのとしてのとしての 影響としての影響 の影響影響ののの 推定結果推定結果推定結果推定結果 のののの考察考察考察考察

総務部門の職員数については,業務のアウトカム に大きな変動がない状況で,経年での変化が顕著に 表れており,調整に関するコストの減少を表してい ると考えてよいのではないかと思われる.合併後直 後は,決算業務などの合併業務の後始末があるほか,

関係市町村間におけるサービス水準の差の調整や組 織が大きくなったことによる組織間の調整コストが 発生しているが,サービス水準の統一や各部門の新 市における業務への習熟が進むことで,合併後数年 たってから効果が出るとともに,経年で効果が増す ことを示していると思われる.

4....5 関係関係関係関係 市町村数市町村数市町村数市町村数 ,,,,人口規模 の人口規模人口規模人口規模ののの ばらつきばらつきばらつきばらつき のの影響のの影響影響影響 のののの推推推推

定結果 定結果定結果 定結果

関係市町村数と人口規模のばらつきそれぞれの合 併前後ダミーとの交差項による影響の分析について は,市町村数の係数の符号は正,人口規模のばらつ き度合いの係数の符号は負になるとともに,いずれ も統計的に有意な結果となり,仮説を支持するもの となった.

また,人口集中度を示す指数と合併前後ダミーの 交差項による影響の分析については,係数の符号が 負となるとともに,統計的にも有意な結果となり,

仮説を支持するものとなった.

被説明変数: 総務部門職員数( 対数)

説明変数 係数 標準誤差

合併前後ダミー -0 .0 00 8 0.0 0 44

人口( 対数) 0 .5 9 27 * ** 0.0 4 93

財政力( 対数) 0 .1 2 81 * ** 0.0 2 21

退職者数(対数) -0 .0 03 2 0.0 0 38

2 00 1 から20 1 0年度ダミー 省略

定数項 -2 .3 75 0 0.5 5 30

観測数 6 9 18

決定係数 0 .6 3 18

※ ***,**,*は、それぞ れ,1%,5%,10%で統計的に有意であるこ とを示す . 表1 式1 の推定結果

被説明変数: 総務部門職員数( 対数)

説明変数 係数 標準誤差

合併1 年目ダミー 0 .0 3 52 * ** 0.0 0 60

合併2 年目ダミー 0 .0 0 42 0.0 0 64

合併3 年目ダミー -0 .0 11 1 * 0.0 0 65

合併4 年目ダミー -0 .0 19 7 * ** 0.0 0 66

合併5 年目ダミー -0 .0 24 6 * ** 0.0 0 66

合併6 年目ダミー -0 .0 29 4 * ** 0.0 0 67

合併7 年目ダミー -0 .0 31 8 * ** 0.0 0 92

合併8 年目ダミー -0 .0 61 4 * ** 0.0 2 11

人口( 対数) 0 .5 0 20 * ** 0.0 4 99

財政力( 対数) 0 .1 5 77 * ** 0.0 2 24

退職者数(対数) -0 .0 02 9 0.0 0 38

2 00 1 から20 1 0年度ダミー 省略

定数項 -1 .3 29 0 0.5 6 05

観測数 6 9 18

決定係数 0 .6 0 38

※ ***,**,*は、それぞ れ,1%,5%,10%で統計的に有意であるこ とを示す . 表2 式2 の推定結果

被説明変数: 総務部門職員数( 対数)

説明変数 係数 標準誤差

関係市町村数(対数)( 交差項) 0 .05 3 3* ** 0.0 0 73

人口規模変動係数( 対数)( 交差項) - 0 .03 3 7* ** 0.0 0 50

合併前後ダミー - 0 .07 6 7* ** 0.0 1 04

人口( 対数) 0 .63 3 0* ** 0.0 4 94

財政力( 対数) 0 .09 0 8* ** 0.0 2 24

退職者数(対数) - 0 .00 4 4 0.0 0 38

2 00 1 から20 1 0年度ダミー 省略

定数項 - 2 .84 5 1 0.5 5 42

観測数 6 9 18

決定係数 0 .6 5 65

※ ***,**,*は、それぞ れ,1%,5%,10%で統計的に有意であるこ とを示す . 表3 式3 の推定結果

(4)

4

4....6 関係市町村関係市町村関係市町村 数関係市町村数数数 ,,,,人口規模人口規模 の人口規模人口規模のの ばらつきのばらつきばらつき のばらつきの影響のの影響影響影響 のののの推推推推

定結果 定結果 定結果

定結果 ののの考察の考察考察 考察

合併後は,旧自治体それぞれの区域に支所等を配 置するため,関係市町村の増加は,組織数の増加に 結びつく可能性が高い.また,関係市町村の増加は,

多種多様な地域的特性を持つ自治体が合併する可能 性を高め,都市部と農村部の自治体が合併する場合 など新たな行政需要に対応するための組織が必要と なり,組織数が多くなることが想像される.また,

市町村数が多いほど,合併前のサービス水準,事務 処理の方式などに差が出やすいことから,合併に伴 う調整の手間と時間が大きくなり,職員数が減りに くくなるのではないかと思われる.

人口規模のばらつきの影響については,変動係数 を利用していることや関係市町村数による影響をコ ントロールしていることから,同じ規模の新市を構 成する場合において,同規模の自治体同士の合併で は調整の手間が大きく,規模の違いが大きいほど調 整コストがかからないことを示しているものと判断 してよいと思われる.おそらく規模の大きな自治体 と小さな自治体が合併する場合は,合併前の協議で 大きな自治体の行政処理の方式,サービス水準に統 一される可能性が高く,合併後の事業内容の調整が 少なくなるほか,合併後に事業内容を段階的に調整 する場合も,小規模自治体の住民は相対的に少ない ことから,事業変更のコストも低くなる.また,小 規模自治体の職員は相対的に少数であることから新 たな業務に習熟するための調整コストも小さいので はないかと思われる.

人口集中度の与えた影響については,市町村数と

人口規模のばらつき度合いを,異なる指数を用いて 同時に分析したものと解釈できる.この指数は,合 併に関係する市町村数が少なく,かつ,自治体間の 規模が異なる場合に大きく算出されるものである.

従って,人口の集中度が高くなるほど負の影響が出 るということは,市町村数が少なく,規模の差が大 きいほど職員数の削減効果が大きくなることを示し ており,前述の市町村数に係る係数の符号が正であ り,変動係数に係る符号が負であることとも整合的 である.

5.... おわりにおわりにおわりにおわりに

市町村合併は,行財政運営の効率性の向上をはじ めとする自治体の体力強化を図ったものであるが,

総務部門職員数に関しては,大きな自治体を作るた めに数多くの自治体が合併することが必ずしも効率 的になるとは言えない面を明らかにした.

総務部門職員数の削減に対する効果については,

その効率性を追求すると,これから新たに合併を検 討する場合と既に合併相手方との協議が進んでいる 場合について,異なる対応が考えられる.

まず,合併相手が決まっていない場合は,地理的 条件,住民の生活圏,住民感情などを踏まえる必要 はあるが,国,県などが,地域における核となる相 対的に規模の大きな自治体に周辺自治体との合併を 働きかけるなどして,効率的な合併をあっせんする ことが望ましい.

次 に , 合 併 相 手 が 決 ま っ て い る 場 合 に お い て ,3 つ以上の市町村が合併するケースでは,人口規模の 差が最も大きくなる組み合わせの 2 自治体が,まず 先行して合併し,一定期間後に,合併済みの拡大し た自治体に,残りの1自治体が合併することが望ま しい可能性がある.この場合,合併のインターバル についての分析が必要であるほか,合併時に発生す る取引費用についても,同時合併と順次合併を比較 するなどデメリットの更なる分析が必要である.

被説明変数: 総務部門職員数( 対数)

説明変数 係数 標準誤差

人口集中度( 対数) (交差項) - 0 .05 9 7* ** 0.0 0 71

合併前後ダミー 0 .50 9 7* ** 0.0 6 12

人口( 対数) 0 .65 7 9* ** 0.0 4 96

財政力( 対数) 0 .08 7 7* ** 0.0 2 25

退職者数(対数) - 0 .00 4 6 0.0 0 38

2 00 1 から20 1 0年度ダミー 省略

定数項 - 3 .12 4 5 0.5 5 72

観測数 6 9 18

決定係数 0 .6 6 02

※ ***,**,*は、それぞ れ,1%,5%,10%で統計的に有意であるこ とを示す . 表4 式4 の推定結果

参照

関連したドキュメント

標準団体の常備消防の算定内訳は、消防・救急の実働部隊である「消防署」を統括する「消 防本部」には 29 名が配属され、現場へ出動する隊員が所属する消防署には

合併後9~5カ年度(平成 17・18 年度に合併した場合は 9 ヵ年度、平成 19・20 年度は 7 ヵ年度、平成 21 年度は

の公化」 )が市町村合併をもたらしたのではないか。 (仮

(7)合併移行経費に対する財政措置(特別交付税) 合併関係市町村が速やかな一体性の確立を図るため、合併前に要する経費について特 別交付税措置を講じる。 ■算定方法 A×0.5

市町村合併は行政改革の機能をもつ。ここでいう行政改革とは、行政組

する必要があるのではないかと考えられる点をこの事例は示しているのかもしれない。

同時に、地方分権の推進という時代潮流にあって、その分権化を効率的に推進するためには現在の市町村の規模では

 この 10 年ほどで合併が進んだ結果、わが国 の市町村数は 1719 まで減少している(2012 年 12