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「市町村合併の組み合わせが職員数の効率化に与えた影響について」

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市町村合併の組み合わせが職員数の効率化に与えた影響について

〈要旨〉 平成の市町村合併は,人口減少・少子高齢化など社会経済情勢が大きく変化する中で, 地方分権の担い手となる基礎自治体にふさわしい行財政基盤の確立を目的として,1999 年 の「市町村の合併の特例に関する法律」の改正以降,全国的に推進されてきた.合併によ り新たな時代に対応できる自治体に生まれ変わるためには,行政能力を質的に高めるだけ でなく,予算,人員などの限られた資源を効率的に配分し,適切な行財政運営に取り組む 必要があり,職員数の効率化は合併の目的の1つと考えられる. 本稿では,合併効果として考えられる職員数の削減について,実際にその効果が発揮さ れているかどうかを検討するため,市町村合併において発生する調整コストは,合併に関 係する市町村数及び関係市町村の人口規模の差によって影響を受けるとの仮説をたて,自 治体組織の調整役を担っている総務部門の職員数の変化を実証的に分析した. その結果,市町村数が少なくなるほど,また,人口規模の差が大きくなるほど職員数の 効率化が進むことが明らかとなった. キーワード:市町村合併 職員数 効率化 2013年(平成25年)2月 政策研究大学院大学 まちづくりプログラム MJU12611 平良 和也

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目次 1 はじめに……….……….1 2 平成の市町村合併の概要……….……….2 2.1 市町村合併の社会的背景………..………..2 2.2 合併の状況………..……..3 2.3 合併の手続き………4 3 分析の対象……….….5 4 検証する仮説……….….6 5 実証分析………..………7 5.1 分析の方法………....7 5.2 データ………8 5.3 推定式………..…..8 5.4 合併全体としての影響の推定結果……….….10 5.5 合併全体としての影響の推定結果の考察……….….12 5.6 関係市町村数,人口規模のばらつきの影響の推定結果………..……12 5.7 関係市町村数,人口規模のばらつきの影響の推定結果の考察………..……13 6 おわりに………..……..14 謝辞………..15 参考文献……….….16 補論 市町村合併が各部門の職員数に与えた影響……….………….17

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1 1....はじめにはじめにはじめに はじめに 平成における市町村合併は,人口減少・少子高齢化など社会経済情勢が大きく変化する 中で,地方分権の担い手となる基礎自治体にふさわしい行財政基盤の確立を目的として取 り組まれてきたものであり,その始まりは,1999 年の「地方分権の推進を図るための関係 法律の整備等に関する法律」,いわゆる地方分権一括法による「市町村の合併の特例に関す る法律」 (以下「合併特例法」) の改正とされている.この改正によって,合併特例債の創 設といった合併を促進する政策が実施され,全国的に推進されてきたところである 1 . 合併により新たな時代に対応できる自治体に生まれ変わるためには,行政能力を質的に 高めるだけでなく,予算,人員などの限られた資源を効率的に配分し,適切な行財政運営 に 取 り 組 む 必 要 が あ る .地 方 自 治 体 に お け る 合 併効 果 に 関 す る 先 行 研 究 とし て は , 宮 崎 (2005) が,1990 年から2000年のデータを用いて,合併前後の市町村の1人当たり歳出額 を分析し,歳出額は合併後増加するものの,その後は規模の経済によって毎年減少するこ とを明らかにしている.西川 (2009) は,合併前の市町村の歳出の推定値を合計した数値 と合併後の規模による推定値を比較し合併による歳出の削減効果を推計しており,その際 に,最小効率規模の考え方から,一定規模を超えるような合併の組み合わせは効果が少な いことを明らかにしている.また,広田他 (2011) は,総務省自治財政局が作成している「類 似団体別市町村財政指数表」の1998年度における類型を利用して,2001年度から2006年 度の決算額について,合併市町村と同じ類型に属する市町村の平均を積み上げた合成値と 合併市町村の額を対比することで分析を行い,合併による歳出削減効果が経年で薄れてい くことを明らかにしている. 職員数に関しては,吉村 (1999) が,最適都市規模を分析する中で,1994 年度のデータ に基づき人口規模と職員数との相関を扱っており,最適な規模を概ね人口20万人程度の規 模とするとともに,人口規模と職員数との関係を利用し,広域市町村圏が合併した場合の 職員数の変化のシミュレーションを行い,約18%の職員が削減されると推計している. このように,市町村合併による歳出面での削減効果についての先行研究は多いが,歳出 削減に大きく関連すると思われる職員数をテーマとした研究は少なく,また,実際に平成 の合併の結果としての職員数の変化を全国的に調査分析した研究は見当たらない.職員数 については,歳出削減と密接に関係するだけでなく,地方自治体が住民サービスを提供に あたって投入する資源の1つであり,市町村合併が職員数の変化に与えた影響を分析する ことは効率性の理解を深めるうえで意味があるものと思われる. 市町村合併では,通常,合併前に地方自治法第 252条の2第1 項の規定に基づき合併協 議会を立ち上げ,その場において,合併に関係する自治体間の住民サービス水準等の調整 ∗ 本稿は筆者の個人的な見解を示したものであり,所属機関の見解を示したものではありません.本稿に ある誤りは全て筆者の責任です. 1 総務省「「平成の合併」について」3頁を参照のこと.

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2 を図っていくことが一般的である.同じ地方自治体とはいえ,昨今では提供しているサー ビスは多種多様であり,調整には時間と手間がかかるだけでなく,合併時に統一された新 サービスに足並みをそろえることができるとも限らず,合併後に調整が続くことも想定さ れる.また,新たな事務処理に職員が慣れるまでのコスト,組織が巨大化することによる 組織間の調整コストなども発生することが考えられる. 本稿では,合併を構成する関係市町村数及び市町村規模の組み合わせにより調整コスト が変化するとの仮説をたて,発生する調整コストが,自治体組織における管理部門であり, 総合的な調整業務を行っている総務部門の職員数の削減に与える影響について分析した. その結果,関係市町村数が少なくなるほど調整のコストが小さくなり職員数の削減が進み やすいこと,また,自治体間の人口規模の差 2 が大きい場合は,自治体間の発言力などに大 きな差が生まれることで,調整のコストが小さくなり,職員数の削減が図られやすくなる ことが示された.つまり,市町村合併により総務部門の職員数の効率性を追求する場合に は,関係市町村数が少なく,かつ,自治体間の規模の差が大きい組み合わせが最も望まし いことが明らかとなった. なお,本稿の構成については次のとおりである.第 2 章では,平成の市町村合併の概要 に触れ,第3 章では,分析対象を総務部門に絞った理由を説明する.第 4章では,検証す る仮説として,関係市町村数と規模のばらつき度合いが職員数削減に影響すると考えられ る理由を整理し,第 5 章で仮説に基づいた実証分析及び分析結果の考察を行う.最後に, 第6章において,分析結果を踏まえた効率的な市町村合併のあり方について提言する. 2....平成平成平成の平成の市町村合併のの市町村合併市町村合併市町村合併のののの概要概要概要概要 本章では,まず,平成の市町村合併が推進された社会的背景について,次に,平成の合 併の進捗状況について整理するほか,市町村合併の一般的な手続きについて述べる. 2....1 市町村合併市町村合併の市町村合併市町村合併のの社会的背景の社会的背景社会的背景社会的背景 市町村の合併については,市町村の廃置分合の一形態であり,その法律上の根拠は,市 町村の廃置分合について規定した地方自治法第 7 条にあり,市町村の合併について,さま ざまな法律の特例措置を定めているものが合併特例法となっている. いわゆる平成の大合併の契機となった合併特例法の改正が行われた背景には,地方自治 体を取り巻く社会経済情勢が大きく変化したことが挙げられる.法改正前の1997年7月8 日の地方分権推進委員会第 2 次勧告では,国・地方を通じた厳しい財政状況の下,今後と もますます増大する市町村に対する行政需要や住民の日常生活,経済活動の一層の広域化 に的確に対応するためには,基礎自治体である市町村の行財政能力の向上,効率的な地方 行政体制の整備・確立が重要な課題となっていることから,積極的に自主的な市町村合併 を推進することを勧告しており,都道府県に対し地域の実態を反映した市町村の合併パタ 2 本稿での人口規模の差は,絶対的な差ではなく,相対的な差をいう.

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3 ーンの提示,国の指針作成などを求めている.また,1998年4月24日の地方制度調査会の 市町村の合併に関する答申においては,市町村合併の必要性として,第1に地方分権の推 進が実行の段階に至り,自己責任,自己決定の原則の下,住民に身近なサービスの提供は 地域の責任ある選択に決定されるべく,個々の市町村が自立することが求められているこ と,第 2 に,本格的な少子高齢社会が到来し,市町村が提供するサービスの内容が高度か つ多様になるとともにその水準を確保することが期待されていること,第 3 に,極めて厳 しい財政状況の中で,今後の社会経済情勢に適切かつ弾力的に対応するため財政構造の改 革とともに,効率的,効果的な行政の展開が求められていること,以上 3 点から市町村が 行財政基盤の強化,人材育成・確保等の体制整備,行政の効率化を図ることが重要であり, 市町村の合併により対応することは有効な方策であるとし,自主的な市町村の合併をさら に推進することを答申している. これらの勧告等を踏まえ,地方交付税を合併後10年間は合併前の区域で算定される額の 合計額を下回らないように算定し,その後 5 年間については段階的に縮減するといった地 方交付税の合併算定替の期間延長や,合併市町村の速やかな一体化を図るために行う公共 施設等の整備に利用できる合併特例債等の手厚い財政措置を含む合併特例法の改正が行わ れたところである. 2....2 合併合併の合併合併ののの状況状況状況状況 表 1は,1999年度以降の合併件数を示したものであり,2003年度から2005 年度にかけ て合併件数がピークであったことを示している. この理由については,同時期に,国庫補助負担金改革,税源移譲,地方交付税改革を内 容とする三位一体の改革が進められ,そのうち地方交付税について2004年から2006年の3 年間でおよそ 5 兆円程度抑制されたことから,社会福祉経費の増大などと相俟って地方財 政を大幅に悪化させる結果となり,合併特例債などの手厚い財政措置の期限が2005年度ま での合併となっていたこともあり,2005 年度に合併が集中したものとされている.また, 合併の結果,各自治体の平均面積もほぼ倍増するとともに,人口 1 万人未満の市町村が減 少しており,市町村合併が相当程度進捗したものと考えられている 3 . 3 総務省「「平成の合併」について」4頁を参照のこと.

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4 2....3 合併の合併合併合併ののの手続手続手続手続ききき き 市町村の合併に関わる一般的な手続きは,地方自治法及び合併特例法で規定されている 4 . 合併をしようとする市町村は,地方自治法第 252条の2第1項の規定により,当該市町 村の議会の議決を経て,合併協議会を置き,市町村建設計画の作成その他市町村の合併に 関する協議を行う.市町村建設計画とは,「市町村の合併の特例に関する法律」第6条に基 づくもので,合併市町村の円滑な運営の確保及び均衡ある発展を図るための基本方針を含 むほか,合併市町村又は合併市町村を包括する都道府県が実施する合併市町村の円滑な運 営の確保及び均衡ある発展に特に資する事業に関する事項,公共施設の統合に関する事項, 合併市町村の財政計画について作成することとなっている. 合併協議会での協議を踏まえ,合併をしようとする市町村は,当該市町村の議会の議決 を経て,都道府県知事に申請を行う. 申請を受けた都道府県知事は,当該都道府県の議会の議決を経て,市町村の合併を定め, 直ちにその旨を総務大臣に届けなければならないとされている. 届出を受理したときは,総務大臣は直ちにその旨を告示するとともに,これを国の関係 行政機関の長に通知しなければならず,市町村の合併の処分は,総務大臣の告示よりその 効力を生ずることになる. これらの過程で最も重要なプロセスは,実際に合併の中身について協議する合併協議会 4 以下の手続きの流れは,市町村自治研究会編集『市町村合併ハンドブック』を参考にした. 前年度末 当年度末 1 9 9 9 年度 1 4 3 ,2 3 2 3 ,2 2 9 2 0 0 0 年度 2 4 3 ,2 2 9 3 ,2 2 7 2 0 0 1 年度 3 7 3 ,2 2 7 3 ,2 2 3 2 0 0 2 年度 6 1 7 3 ,2 2 3 3 ,2 1 2 2 0 0 3 年度 3 0 1 1 0 3 ,2 1 2 3 ,1 3 2 2 0 0 4 年度 2 1 5 8 2 6 3 ,1 3 2 2 ,5 2 1 2 0 0 5 年度 3 2 5 1 ,0 2 5 2 ,5 2 1 1 ,8 2 1 2 0 0 6 年度 1 2 2 9 1 ,8 2 1 1 ,8 0 4 2 0 0 7 年度 6 1 7 1 ,8 0 4 1 ,7 9 3 2 0 0 8 年度 1 2 2 8 1 ,7 9 3 1 ,7 7 7 2 0 0 9 年度 3 0 8 0 1 ,7 7 7 1 ,7 2 7 2 0 1 0 年度 0 0 1 ,7 2 7 1 ,7 2 7 2 0 1 1 年度 6 1 4 1 ,7 2 7 1 ,7 1 9 計 6 4 8 2 ,1 6 1 出典:総務省ホー ムペー ジより作成 年度 件数 合併関係 市町村数 市町村数 表1  1 9 9 9 年以降の合併件数

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5 であると考えられる.合併協議会においては,基本の項目として,合併の方式,合併の期 日,新市町村の名称,新市町村の事務所の位置の 4 項目,時間を要する項目として,市町 村議会議員の任期の取扱い,財産の取扱いなど,合併に係る多くの調整項目を協議するこ ととなり 5 ,合併協議会での協議が整わないと合併に至らない場合もある. 3....分析分析分析の分析ののの対象対象対象対象 本稿では合併の効率性を捉える指標として,総務部門の職員数を利用する.市町村合併 の全体としての影響を捉えるためには,本来であれば職員数についても自治体における総 職員数の変化を分析することが望ましい.未合併も含む全市町村のデータにはなるが,表2 に示すように,総職員数及び一般行政部門 6 の職員数は全体として減少の傾向にある 7 .その 場合,行政サービスの水準が一定であると仮定すれば,職員数の減少は効率性の向上と考 えられる.しかしながら,合併によってサービス水準が変動している可能性が高い中で, 合併前後のサービス水準の変化を把握する適切なアウトカム指標が無かったこと,また, 消防部門など合併前は一部事務組合 8 等で対応していた場合に,合併前の職員数として把握 できないなど,合併前後の変化を把握するうえで困難な点があった. 総務部門という限られた分野の職員数の変化を分析することについては,合併の効果に ついてもその限られた面を捉えることになるとは思うが,総務部門は,管理部門として自 治体業務の全般を総合的に調整する,人事,財政,法制,出納などの部署を含み,一般的 にどの自治体も同じ水準,同じ内容で実施する業務を行っていると考えられる.従って, 福祉部門など直接住民にサービスを提供する部門と異なり,自治体の規模や合併前後で行 政サービス水準の変化がほとんどないと仮定することが容易であり,職員数の減少を効率 性の向上と捉えることができる.また,通常,公務員は恒久的な任用であり,職員数の削 減については,退職による自然減と採用抑制によって対応されると思われることから,退 職者数や年齢構成などが自治体間の削減結果の差に影響することも考えられる.しかしな がら,行政サービスに対する様々な住民ニーズが高まっている現状にあっては,内部部門 である総務部門を可能な限り業務量に応じた適切な職員数で管理し,他のサービス部門に 配置換をすることが望ましい対応であると考えられ,総務部門に限定して分析することも 合併効果を検証する上で意味があるものと思われる. 合併後の職員数に影響すると思われる調整コストが発生する理由としては,関係市町村 間で異なる住民サービスを統一するにあたり,そもそも統一自体を合併後に先送りする場 合があるほか,サービスの激変緩和のため内容を段階的に変化させるケース,旧市町村の 5 市町村自治研究会編集『合併協議会の運営の手引き』より. 6 総職員数から教育部門,消防部門,公営企業等会計部門を除いた部門.総務,民生,土木などの部門を 含む. 7 総務省「地方公共団体団体区分別職員数の状況」http://www.soumu.go.jp/iken/pdf/kazu_04.pdf 8 地方自治法第284条第2項及び第285条に規定する地方公共団体の事務の一部を共同処理することを目 的に設立される組合

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6 地域バランスを考慮した事業計画の作成など,事業実施における調整コストのほか,新た な業務を遂行するための職員の教育,行政組織内での部署間の調整などもコストと考えら れる.これらのコストは,職員の人員配置や組織間の調整,全庁的な事務処理に係る相談 対応,資料のとりまとめなど,総務部門の業務量に最も顕著に反映されると思われる. 4....検証検証検証する検証するするする仮説仮説仮説仮説 調整に関するコストを左右する要因としては,合併を構成する関係市町村数及び市町村 規模のばらつきが考えられる. まず,第 1 の仮説は,関係市町村が少ないほど職員数の効率化が高まるというものであ る.市町村数が多い場合,サービス水準が異なる可能性が高く,調整の機会が増えること が予想されるほか,新自治体での事業実施時も旧市町村の地域バランスを考慮する必要が ある場合,市町村数の多さは,コストの増加に結びつく.また,横道他 (2001) は,1991 年から1995年に合併した9事例を調査し,旧役場庁舎はいずれも総合支所又は支所として 残されていることを明らかにしているが,平成の合併においても住民サービス維持の観点 から同様のことが想定され,関係市町村数が多い場合は出先機関の増につながり,組織数 の増加による調整コストの発生も見込まれる. 第 2 の仮説は,市町村規模のばらつきが大きい場合は,職員数の効率化が高まるという ものである.市町村規模のばらつきについては,政令指定都市,市,町,村といった自治 体の位置付けが人口要件 9 等で決定されることから,市町村規模は人口規模として取り扱っ 9 地方自治法第8条及び第252条の19参照.なお,平成15年の合併特例法の改正により平成17年3月31 日までに合併が行われる場合には,市となるべき人口要件は3万人以上とされていた. ( 単位: 人,%) 職員数 対前年 増減数 対前年 増減率 職員数 対前年 増減数 対前年 増減率 2 0 0 1 1 ,5 2 3 ,0 6 5 ▲ 1 4 ,2 8 8 ▲ 0 .9 8 1 6 ,6 1 0 ▲ 3 2 ,2 4 0 ▲ 3 .8 2 0 0 2 1 ,5 0 5 ,9 8 2 ▲ 1 7 ,0 8 3 ▲ 1 .1 8 0 7 ,6 2 6 ▲ 8 ,9 8 4 ▲ 1 .1 2 0 0 3 1 ,4 8 6 ,6 8 8 ▲ 1 9 ,2 9 4 ▲ 1 .3 7 9 8 ,3 0 1 ▲ 9 ,3 2 5 ▲ 1 .2 2 0 0 4 1 ,4 6 2 ,6 7 5 ▲ 2 4 ,0 1 3 ▲ 1 .6 7 8 6 ,7 5 7 ▲ 1 1 ,5 4 4 ▲ 1 .4 2 0 0 5 1 ,4 3 2 ,4 9 4 ▲ 3 0 ,1 8 1 ▲ 2 .1 7 7 1 ,8 7 2 ▲ 1 4 ,8 8 5 ▲ 1 .9 2 0 0 6 1 ,4 0 2 ,0 9 7 ▲ 3 0 ,3 9 7 ▲ 2 .1 7 5 5 ,2 6 9 ▲ 1 6 ,6 0 3 ▲ 2 .2 2 0 0 7 1 ,3 7 1 ,5 1 8 ▲ 3 0 ,5 7 9 ▲ 2 .2 7 3 8 ,6 9 5 ▲ 1 6 ,5 7 4 ▲ 2 .2 2 0 0 8 1 ,3 3 8 ,6 2 3 ▲ 3 2 ,8 9 5 ▲ 2 .4 7 1 9 ,8 8 9 ▲ 1 8 ,8 0 6 ▲ 2 .5 2 0 0 9 1 ,3 1 2 ,4 0 1 ▲ 2 6 ,2 2 2 ▲ 2 .0 7 0 6 ,0 4 4 ▲ 1 3 ,8 4 5 ▲ 1 .9 2 0 1 0 1 ,2 8 8 ,7 7 1 ▲ 2 3 ,6 3 0 ▲ 1 .8 6 9 5 ,2 7 4 ▲ 1 0 ,7 7 0 ▲ 1 .5 2 0 1 1 1 ,2 7 3 ,1 4 5 ▲ 1 5 ,6 2 6 ▲ 1 .2 6 8 8 ,7 8 1 ▲ 6 ,4 9 3 ▲ 0 .9 出典:総務省ホー ム ペー ジより作成 表2  市町村の総職員数及び一般行政部門職員数の推移 年 総      数 一般行政部門

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7 て差し支えないと思われ,人口規模のばらつきで考察する.人口規模のばらつきと調整コ ストとの関係については,住民サービスの水準が異なる 2 つの自治体が合併するケースで サービスを統一する場合,人口規模が同程度の2 自治体の合併と大きな差がある 2自治体 の合併を比較すると,人口規模が同程度の合併では調整コストが大きくなるものと予想さ れる.なぜなら,人口規模に差がある合併では,合併前に相対的に多くの住民が受けてい るサービス水準を維持するために,合併時点で規模の大きな自治体のサービス水準に統一 される 10 ことが想像され,合併後に調整される余地が小さいと思われることや,仮に調整を 要する場合でもサービス対象者である住民が少なくて済むことから大きな事業変化が伴わ ず,コストが小さくなることが見込まれるからである.一方,同規模自治体同士の合併で は,合併前の協議時点での手間と時間がかかることも想定されるが,合併特例債などの財 政面での優遇措置を享受するための合併にタイムリミットがある状況においては,合併の 事実を優先し,事務事業の整理を合併後に先送りする可能性も相対的に高くなると思われ, 合併後においても事業内容の検討や事務処理の統一など調整に係るコストがより多く発生 するものと思われる.また,同規模同士の合併では,変更後の事業,新たな事務処理手法 に対する職員の習熟度合いについても,新自治体を構成する職員のほぼ半数が新たな手続 き等に慣れる必要がでてくることから,調整コストが高まる可能性が高いと考えられる. 5....実証分析実証分析実証分析 実証分析 本章では,第1節から第3節において,分析の方法,データの出典,推定式を示し、第4 節,第 5 節において,現時点において市町村合併が職員数の削減に与えた平均的な影響と その経年での効果を分析するとともに,分析結果の考察を行う.そして,第6 節,第 7 節 では,合併に関係した市町村数と人口規模のばらつき度合いが与えた職員数削減への影響 について分析するとともに,その分析結果についての考察を行う. 5....1 分析分析の分析分析ののの方法方法方法方法 関係市町村数や人口規模のばらつきが職員数に与える影響を定量的に評価するために, 2001年度から2010年度における,未合併市と合併市の合併前後のパネルデータを作成し, 固定効果モデルによるDID分析を行う. 平成の合併は前述のとおり1999年の法改正以降の合併を指し,1999年度から2009年度 まで毎年市町村合併は行われているが,本稿で対象とする合併自治体は,合併数がピーク を迎えた2003 年度から2005 年度の3か年において合併した事例のうち,合併後が市であ り,かつ,2001年度から2010年度で1回のみ合併を経験しているケースとしている.つま り,合併後が政令指定都市,町,村であるものと複数回の合併を行っているものを除いて いる.また,2010 年度までに政令指定都市に昇格したケースも除いている.これは,サン 10 横道他 (2001) では,新設合併の場合には,原則的にサービスは高い方に,負担は低い方に合わせる傾 向にあり,編入合併の場合は,編入する市町村の制度に統一するのが原則としている.

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8 プルサイズを確保しつつも,合併前後,特に合併後のデータとして 5 年以上の期間を把握 し,経年での職員数の変化を分析することを試みたためである.また,合併の与えた影響 及び自治体の行政機能の条件を可能な限り同一にするために,1回のみ合併した市に限定し たところである.なお,DID におけるコントロールグループとしての未合併自治体は,平 成の合併の始まった1999年度から2010年度までに合併を経験していない市としている 11 . また,合併市における合併前のデータは,関係市町村の職員数,人口などのデータを単 純に合計することで仮想合併市のデータを作成した 12 . 5....2 データデータ データデータ 分析に用いる総務部門の職員数データは,総務省「地方公共団体定員管理調査」による 毎年度 4 月1 日時点の総務一般部門の職員数を利用した.なお,当該調査においては,大 部門,中部門,小部門があり,中部門と小部門に総務一般部門があるが,本稿では,中部 門における総務一般部門のデータを引用しており,総務,人事,財政などの業務以外に, 会計出納,管財などの業務に携わる職員数を含んでいる. 人口については,総務省「市町村別人口,人口動態及び世帯数」による毎年度3月31日 時点の住民基本台帳人口を引用した. 市町村の財政に関するデータについては,総務省「市町村別決算状況調」から毎年度決 算における基準財政収入額及び基準財政需要額を引用した. 退職者数については,総務省「地方公務員給与実態調査」別冊における市町村の退職者 数を引用した. 関係市町村数,合併年度については,総務省ホームページ 13 を参考に作成した. 5....3 推定推定式推定推定式式式 推定モデルについては,まず,合併の平均的な影響を式1で,合併後経年での影響を式2 で分析する. 次に,市町村数と人口規模のばらつきが与える影響を式3,人口集中度が与える影響を式 4で分析する. 式1 ln _soumu GD X ε 式2 ln _soumu AGD X ε

式3 ln _soumu GD ln_city ∗ GD ! ln_pop_cv ∗ GD $X ε

式4 ln _soumu %GD & ln_pop_hhi ∗ GD X ε ※αは定数項,βはパラメータ,εは誤差項,iは市,tは年である. 11 2006年度に財政再建団体の指定を受けた夕張市を除く. 12 山梨県上九一色村については,甲府市と富士河口湖町に分割編入されており,本稿での分析の対象とな る甲府市への人口等の編入割合については,旧村の4分の1としている. 13 総務省ホームページ合併関係資料集http://www.soumu.go.jp/gapei/gapei.html

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9 (1)被説明変数 ln_soumuは,総務部門の職員数の対数値とした. (2)説明変数 ①合併の与えた影響を見るために着目する変数 GDは合併前後ダミーであり,合併前の年度は0,合併後の年度は1となるダミー変数で ある. AGD(after GD)は合併後の経過年数ダミーであり,合併市における合併後の時間を通じた 効果を表す指標であり,合併市の合併後年ごとに1,それ以外は0をとる. ln_city は関係市町村数の対数であり,関係市町村数が合併による職員数の変化に与える 影響の観察に用いるもので,合併前後ダミーとの交差項を利用する. ln_pop_cvは,関係市町村の人口規模のばらつき程度が職員数に与える影響の観察に用い るもので,関係市町村の合併直前の年度における人口の多寡によるばらつきの標準偏差を 平均値で除して変動係数を算出し対数化したものであり,合併前後ダミーとの交差項 14 を利 用する.人口規模のばらつき度合いについては,標準偏差,分散の値を使うことも検討し たが,人口の絶対値が大きくなった場合に,標準偏差等も大きな値となる傾向があり,規 模を一定として,純粋にばらつき度合いを把握するため変動係数を採用したところである. ln_pop_hhiは人口集中度を表し,関係市町村の人口規模の集中度が職員数の変化に与える 影響を観察するために用いるもので,市場における集中度を示すハーフィンダール指数と 同様の算出方法で計算した値の対数であり,合併前後ダミーとの交差項を利用する.ハー フィンダール指数と同様の算出方法による指標を作ることで,市町村数の影響も加味して ばらつき度合いを捉えることができると思われる.独占状態が高いと,相対的に偏りが大 きく,規模の異なる市町村の合併と考えることができる.具体的には,合併市を構成する 関係市町村の合併直前の年度におけるそれぞれの人口が全人口に占める割合を 2 乗し,足 し合わせた数値の対数に合併前後ダミーを乗じている.例えば,2 自治体の合併において, それぞれの自治体が,合併市の人口の90%と10%を占める場合の指数は,90の2乗と 10 の2乗の和である8200となり,50%同士の場合は 5000となることから,前者の方が集中 度が高いことを示す.また,4 自治体が合併する場合に,人口割合がそれぞれ 25%であっ た場合,2500 となり,2自治体が 50%同士で合併する場合と比べて,市町村数が多いほど 数字が低くなる傾向がある. ②その他のコントロール変数 Xはその他のコントロール変数であり,人口の対数,財政力の対数,退職者数の対数,2001 年から2010年の年度ダミーである.財政力については,基準財政収入額を基準財政需要額 14 未合併市の変動係数は0のため対数が欠損値となるが,交差項は0として扱っている.

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10 で除した数値を利用した.なお,通常,自治体の財政力を示す各年度の財政力指数につい ては,基準財政収入額を基準財政需要額で除した数値の過去 3 か年の平均を利用している が,本稿では,各年度における算出値をそのまま利用している. (3)仮想合併市のデータ作成方法 合併市における合併前のデータについては,旧市町村のデータを単純に合計することで, 仮想合併市としてのデータを作成している. ただし,基となるデータの基準日によっては,合併した年度のデータを仮想合併市と同 様の方法で算出している場合がある. 例えば,鹿児島市は2004年11月1日に,5つの町と合併を行っているため2004年度の 合併として取り扱っている.2001年度における仮想鹿児島市の総務部門職員数は329人と なっているが,これは,鹿児島市ほか5町の2001年4月1日時点の職員数である,251人, 12人,17人,19人,16人,14人を足し合わせた数となっている.2004年度は合併年度で あるが,職員数データが合併前の4月1日時点のデータであることから,1市5町を合計し た仮想合併市としてのデータになっている.人口,基準財政需要額,基準財政収入額,退 職者数についても,それぞれ基準日は異なるが,計算方法としては,いずれも同様の方法 で各年度の値を算出している. 5....4 合併全体合併全体としての合併全体合併全体としての影響としてのとしての影響影響影響ののの推定の推定推定推定結果結果結果結果 合併が総務部門職員数に与えた平均的な影響については,合併前後ダミーの符号は負と なったものの,統計的に有意な結果にはならず,全体として職員の実数が減少している状 況において,未合併市の職員数の減少のトレンドと比較した場合,ほとんど差がないこと

Variable Obs Me an Std. De v. Min Max

so u mu 総務部門職員数( 人) 69 2 0 8 0 .7 9 54 4 6.5 89 3 15 33 3 G D 合併前後ダミー 69 2 0 0 .3 2 69 0.46 9 1 0 1 AGD 合併前ダミー 69 2 0 0 .6 7 31 0.46 9 1 0 1 合併1 年目ダミー 69 2 0 0 .0 5 03 0.21 8 6 0 1 合併2 年目ダミー 69 2 0 0 .0 5 03 0.21 8 6 0 1 合併3 年目ダミー 69 2 0 0 .0 5 03 0.21 8 6 0 1 合併4 年目ダミー 69 2 0 0 .0 5 03 0.21 8 6 0 1 合併5 年目ダミー 69 2 0 0 .0 5 03 0.21 8 6 0 1 合併6 年目ダミー 69 2 0 0 .0 5 03 0.21 8 6 0 1 合併7 年目ダミー 69 2 0 0 .0 2 23 0.14 7 5 0 1 合併8 年目ダミー 69 2 0 0 .0 0 29 0.05 3 7 0 1 city 関係市町村数 69 2 0 2 .4 2 49 1.99 2 6 1 1 4 po p_ c v 人口規模変動係数 69 2 0 0 .4 0 49 0.49 8 8 0 2.1 95 8 po p_ h hi 人口集中度 69 2 0 7 ,6 6 9.8 31 2 ,7 69 .5 9 9 1 ,3 09 10 ,00 0 po pulatio n 人口( 人) 69 2 0 1 0 0,51 9 .7 9 6,30 3 .9 5 4 ,4 25 6 04 ,13 3 f i_ de mand 基準財政需要額( 千円) 69 2 0 16 ,5 0 0,0 00 1 3 ,6 00 ,00 0 2 ,15 5 ,4 74 10 4 ,0 00 ,00 0 f i_ in co me 基準財政収入額( 千円) 69 2 0 11 ,7 0 0,0 00 1 2 ,6 00 ,00 0 25 2 ,1 70 10 8 ,0 00 ,00 0 zaisei 財政力 69 2 0 0 .6 4 96 0.27 1 4 0 .1 0 23 2.3 57 3 retir 退職者数( 人) 69 2 0 5 0 .2 2 14 4 8.7 45 8 0 60 7 表3  基本統計量

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11 が示された. 次に,合併後の経過年数ダミーを用いて分析したところ,合併 1年目及び合併 2年目ダ ミーの係数は正の符号となるものの,3年目以降はすべて負の符号となるとともに,係数の マイナス値が大きくなる傾向がみられた.合併 2 年目のデータは統計的に有意とは言えな いものの,それは係数が 0 である可能性が高いことを示しており,合併後,時間が経過す るほど職員数の削減効果が大きく出ることが示された. なお,合併 1 年目ダミーは合併した年度であり,係数の解釈については,前述したとお り同一年度内において,4月1日に合併したケースでは職員数は新市のデータとなるが,そ れ以降の合併のケースでは仮想合併市と同様の算出によるデータとなるため,合併の効果 が現れていない状況での数値の影響が出ている可能性がある. 被説明変数: 総務部門職員数( 対数) 説明変数 係数 標準誤差 合併前後ダミー - 0 .0 0 0 8 0 .0 0 4 4 人口( 対数) 0 .5 9 2 7 * * * 0 .0 4 9 3 財政力( 対数) 0 .1 2 8 1 * * * 0 .0 2 2 1 退職者数( 対数) - 0 .0 0 3 2 0 .0 0 3 8 2 0 0 1 から2 0 1 0 年度ダミー 省略 定数項 - 2 .3 7 5 0 0 .5 5 3 0 観測数 6 9 1 8 決定係数 0 .6 3 1 8 ※ ***,**,*は、それぞ れ,1%,5%,10%で統計的に有意であるこ とを示す . 表4  式1 の推定結果

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12 5....5 合併全体合併全体としての合併全体合併全体としてのとしてのとしての影響影響の影響影響のの推定結果の推定結果推定結果推定結果ののの考察の考察考察 考察 総務部門以外の部門 15 については,議会部門,企画開発部門などが合併直後に大きく合併 による職員の削減効果がでており,合併以降は横ばいの傾向が強い. 合併直後に職員数の変化が著しい部門と比較すると,総務部門については,業務のアウ トカムに大きな変動がない状況で,経年での変化が顕著に表れており,調整に関するコス トの減少を表していると考えてよいのではないかと思われる.合併後直後は,決算業務な どの合併業務の後始末があるほか,関係市町村間におけるサービス水準の差の調整や組織 が大きくなったことによる組織間の調整コストが発生しているが,サービス水準の統一や 各部門の新市における業務への習熟が進むことで,合併後数年たってから効果が出るとと もに,経年で効果が増すことを示していると思われる. なお,一般行政部門における合併効果及び経年変化 16 を見た場合,経年の傾向では効果が あるようにも見えるものの,現時点では,未合併市のトレンドと比較して職員削減が進ん でいるとは言えない状況である.そのような状況において総務部門が顕著に減少傾向にあ ることは,必要な部署に必要な人員を配置する適切な人員配置が進んでいる状況を表して いるとも考えられる. 5....6 関係関係市町村数関係関係市町村数市町村数市町村数,,,,人口規模人口規模の人口規模人口規模のののばらつきばらつきばらつきばらつきのの影響のの影響影響影響のののの推定結果推定結果推定結果 推定結果 15 分析結果は補論に示す. 16 分析結果は補論に示す. 被説明変数: 総務部門職員数( 対数) 説明変数 係数 標準誤差 合併1 年目ダミー 0 .0 3 5 2 * * * 0 .0 0 6 0 合併2 年目ダミー 0 .0 0 4 2 0 .0 0 6 4 合併3 年目ダミー - 0 .0 1 1 1 * 0 .0 0 6 5 合併4 年目ダミー - 0 .0 1 9 7 * * * 0 .0 0 6 6 合併5 年目ダミー - 0 .0 2 4 6 * * * 0 .0 0 6 6 合併6 年目ダミー - 0 .0 2 9 4 * * * 0 .0 0 6 7 合併7 年目ダミー - 0 .0 3 1 8 * * * 0 .0 0 9 2 合併8 年目ダミー - 0 .0 6 1 4 * * * 0 .0 2 1 1 人口( 対数) 0 .5 0 2 0 * * * 0 .0 4 9 9 財政力( 対数) 0 .1 5 7 7 * * * 0 .0 2 2 4 退職者数( 対数) - 0 .0 0 2 9 0 .0 0 3 8 2 0 0 1 から2 0 1 0 年度ダミー 省略 定数項 - 1 .3 2 9 0 0 .5 6 0 5 観測数 6 9 1 8 決定係数 0 .6 0 3 8 ※ ***,**,*は、それぞ れ,1%,5%,10%で統計的に有意であるこ とを示す . 表5  式2 の推定結果

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13 関係市町村数と人口規模のばらつきそれぞれの合併前後ダミーとの交差項による影響の 分析については,市町村数の係数の符号は正,人口規模のばらつき度合いの係数の符号は 負になるとともに,いずれも統計的に有意な結果となり,仮説を支持するものとなった. また,人口集中度を示す指数と合併前後ダミーの交差項による影響の分析については, 係数の符号が負となるとともに,統計的にも有意な結果となり,仮説を支持するものとな った. 5....7 関係市町村数関係市町村関係市町村関係市町村数数,数,,,人口規模人口規模人口規模人口規模ののばらつきののばらつきばらつきばらつきののの影響の影響影響の影響の推定結果のの推定結果推定結果の推定結果ののの考察考察考察考察 合併後は,旧自治体それぞれの区域に支所等を配置するため,関係市町村の増加は,組 織数の増加に結びつく可能性が高い.また,関係市町村の増加は,多種多様な地域的特性 被説明変数: 総務部門職員数( 対数) 説明変数 係数 標準誤差 関係市町村数( 対数) ( 交差項) 0 .0 5 3 3 * * * 0 .0 0 7 3 人口規模変動係数( 対数) ( 交差項) - 0 .0 3 3 7 * * * 0 .0 0 5 0 合併前後ダミー - 0 .0 7 6 7 * * * 0 .0 1 0 4 人口( 対数) 0 .6 3 3 0 * * * 0 .0 4 9 4 財政力( 対数) 0 .0 9 0 8 * * * 0 .0 2 2 4 退職者数( 対数) - 0 .0 0 4 4 0 .0 0 3 8 2 0 0 1 から2 0 1 0 年度ダミー 省略 定数項 - 2 .8 4 5 1 0 .5 5 4 2 観測数 6 9 1 8 決定係数 0 .6 5 6 5 ※ ***,**,*は、それぞ れ,1%,5%,10%で統計的に有意であるこ とを示す . 表6  式3 の推定結果 被説明変数: 総務部門職員数( 対数) 説明変数 係数 標準誤差 人口集中度( 対数) ( 交差項) - 0 .0 5 9 7 * * * 0 .0 0 7 1 合併前後ダミー 0 .5 0 9 7 * * * 0 .0 6 1 2 人口( 対数) 0 .6 5 7 9 * * * 0 .0 4 9 6 財政力( 対数) 0 .0 8 7 7 * * * 0 .0 2 2 5 退職者数( 対数) - 0 .0 0 4 6 0 .0 0 3 8 2 0 0 1 から2 0 1 0 年度ダミー 省略 定数項 - 3 .1 2 4 5 0 .5 5 7 2 観測数 6 9 1 8 決定係数 0 .6 6 0 2 ※ ***,**,*は、それぞ れ,1%,5%,10%で統計的に有意であるこ とを示す . 表7  式4 の推定結果

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14 を持つ自治体が合併する可能性を高め,都市部と農村部の自治体が合併する場合など新た な行政需要に対応するための組織が必要となり,組織数が多くなることが想像される.ま た,市町村数が多いほど,合併前のサービス水準,事務処理の方式などに差が出やすいこ とから,合併に伴う調整の手間と時間が大きくなり,職員数が減りにくくなるのではない かと思われる. 人口規模のばらつきの影響については,変動係数を利用していることや関係市町村数に よる影響をコントロールしていることから,同じ規模の新市を構成する場合において,同 規模の自治体同士の合併では調整の手間が大きく,規模の違いが大きいほど調整コストが かからないことを示しているものと判断してよいと思われる.おそらく規模の大きな自治 体と小さな自治体が合併する場合は,合併前の協議で大きな自治体の行政処理の方式,サ ービス水準に統一される可能性が高く,合併後の事業内容の調整が少なくなるほか,合併 後に事業内容を段階的に調整する場合も,小規模自治体の住民は相対的に少ないことから, 事業変更のコストも低くなる.また,小規模自治体の職員は相対的に少数であることから 新たな業務に習熟するための調整コストも小さいのではないかと思われる. 人口集中度の与えた影響については,市町村数と人口規模のばらつき度合いを,異なる 指数を用いて同時に分析したものと解釈できる.この指数は,合併に関係する市町村数が 少なく,かつ,自治体間の規模が異なる場合に大きく算出されるものである.従って,人 口の集中度が高くなるほど負の影響が出るということは,市町村数が少なく,規模の差が 大きいほど職員数の削減効果が大きくなることを示しており,前述の市町村数に係る係数 の符号が正であり,変動係数に係る符号が負であることとも整合的である. 6....おわりにおわりにおわりに おわりに 市町村合併は,行財政運営の効率性の向上をはじめとする自治体の体力強化を図ったも のであるが,分析により,総務部門職員数に関しては,大きな自治体を作るために数多く の自治体が合併することが必ずしも効率的になるとは言えない面を明らかにした.合併に 関係する市町村が増えるほど調整コストが大きくなること,また,相対的に規模に差がな い自治体が合併する場合には調整コストが大きくなることが示されたことで,今後の合併 における自治体の組み合わせによる職員数の効率化を予測する上での参考になるものと思 われる. 総務部門職員数の削減に対する効果については,規模の大きな1自治体が周辺の小さな1 自治体を編入する形での合併が,最も効率的な結果になると思われるが,その効率性を追 求すると,これから新たに合併を検討する場合と既に合併相手方との協議が進んでいる場 合について,異なる対応が考えられる. まず,合併相手が決まっていない場合は,地理的条件,住民の生活圏,住民感情などを 踏まえる必要はあるが,国,県などが,地域における核となる相対的に規模の大きな自治 体に周辺自治体との合併を働きかけるなどして,効率的な合併をあっせんすることが望ま

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15 しい. 次に,合併相手が決まっている場合において,3 つ以上の市町村が合併するケースでは, 人口規模の差が最も大きくなる組み合わせの 2 自治体が,まず先行して合併し,一定期間 後に,合併済みの拡大した自治体に,残りの1自治体が合併することが望ましい可能性が ある.この場合,合併のインターバルについての分析が必要であるほか,合併時に発生す る取引費用についても,同時合併と順次合併を比較するなどデメリットの更なる分析が必 要である. その他の課題としては,今回の分析に利用した合併市のデータは,2003年度から2005年 度に合併したものであるが,2010 年度決算までのデータで分析しているため,合併後経過 年数としては長いもので,合併後 8 年分のデータとなっている.分析で示されたとおり, 年数を経ることで合併効果が現れるのであれば,さらに長い期間で分析を行うことで今回 の分析とは異なる結果となる可能性があり,今後の経過を調べる必要があると思われる. 調整コストに関しては,合併後の職員のパフォーマンスによる影響もあると思われるが, その影響を考慮するためには,職員の配置状況,モチベーションなども定量的に把握する 必要があり,これらの要因を含めて分析することでより効率的に調整コストを削減する方 法を見いだせるのではないかと思われる. また,今回の分析の対象として総務部門に絞った理由は,各自治体において業務内容, サービス水準が一定であるという前提を強化するためであった.市町村合併の効果として は,全体の職員数を分析できることが望ましく,そのためには,アウトカムとしての住民 サービス水準の変化を把握できる指標が必要であり,権限移譲などの地方自治体の機能も 考慮した適切な指標を利用することで市町村合併だけでなく,国と地方自治体の権限配分 の効率性についても理解を深めることができるものと思われる. 謝辞 謝辞 謝辞 謝辞 本稿の作成に際し,福井秀夫教授(プログラムディレクター),西脇雅人助教授(主査), 安藤至大客員准教授(副査)をはじめ,まちづくりプログラム並びに知財プログラムの先 生方から丁寧なご指導と貴重なご意見を賜りましたことに感謝申し上げます. また,政策研究大学院大学での研究の機会を与えていただいた派遣元及び最後まで支え てくれた家族に深く感謝いたします.

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16 参考文献 参考文献 参考文献 参考文献 西川雅史(2009)「市町村合併による支出削減と市町村構成の変化:市町村合併が都道府県に 与える影響」『会計検査研究』№39,37-56 広田啓朗,湯之上英雄(2011)「平成の大合併と歳出削減-類似団体別市町村財政指数表を用 いた実証分析-」MPRA paper

宮崎毅(2005)「市町村合併には歳出削減効果があるのか」21 世紀COE Hi-Stat Discussion Paper Series,№128 横道清孝,和田公雄(2001)「平成の市町村合併の実証分析(下)」『自治研究』第77巻,118‐ 129 吉村弘(1999)『最適都市規模と市町村合併』東洋経済新報社 市町村自治研究会編集(2001)『合併協議会の運営の手引き-市町村合併法定協議会運営マ ニュアル-』ぎょうせい 市町村自治研究会編集(2004)『市町村合併ハンドブック第 3 次改定版』ぎょうせい 総務省(2010)「「平成の合併」について」http://www.soumu.go.jp/gapei/pdf/100311_1.pdf

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17 補論 補論 補論 補論 市町村合併市町村合併が市町村合併市町村合併がが各部門が各部門各部門各部門ののの職員数の職員数に職員数職員数ににに与与与与えたえたえた影響えた影響影響影響 市町村合併が,各部門の職員数に与えた平均的な影響について分析した結果を表 8 に示 す.被説明変数は各部門の職員数の対数であり,表には,各部門の合併前後ダミーの係数 を掲載し,その他の説明変数については掲載を省略する. なお,部門の区分については,企画開発及び住民関連は,「地方公共団体定員管理調査」 における中部門の区分,議会などその他の部門は大部門の区分に基づく. 次に,一般行政部門及び合併が与えた平均的な影響の係数の符号がマイナスであった部 門における経年での変化について分析した結果を表9に示す. 説明変数は,合併後の経年ダミーであり、その他の説明変数は掲載を省略する. 一般行政部門において,合併効果が現れていない理由としては,職員の自然減と採用抑 制による削減の取り組みについては時間がかかることが想像されるほか,合併により住民 部門 係数 標準誤差 観測数 決定係数 一般行政 0 .0 2 2 6 * * * 0 .0 0 1 7 6 9 1 8 0 .8 5 9 8 議会 - 0 .2 4 9 1 * * * 0 .0 0 6 4 6 9 0 5 0 .7 3 2 9 企画開発 - 0 .2 3 2 2 * * * 0 .0 1 4 2 6 9 1 7 0 .3 9 3 5 住民関連 0 .1 2 0 0 * * * 0 .0 0 7 0 6 9 1 8 0 .8 2 0 5 税務 - 0 .0 6 0 4 * * * 0 .0 0 3 8 6 9 1 8 0 .8 9 4 1 民生 0 .0 4 6 4 * * * 0 .0 0 4 0 6 9 1 8 0 .6 8 7 2 衛生 0 .0 6 4 3 * * * 0 .0 0 5 7 6 9 1 8 0 .6 7 5 2 労働 0 .0 6 0 3 * * * 0 .0 2 1 0 3 6 7 7 0 .2 4 3 3 農林水産 - 0 .0 5 7 0 * * * 0 .0 0 5 7 6 9 0 3 0 .0 1 7 6 商工 0 .1 1 1 0 * * * 0 .0 1 0 1 6 8 9 5 0 .1 2 6 2 土木 0 .0 4 9 3 * * * 0 .0 0 4 4 6 9 1 8 0 .8 1 3 9 ※ ***,**,*は、それぞ れ,1%,5%,10%で統計的に有意であるこ とを示す . ※観測数が異なるのは、職員数が0の場合の対数を欠損値としているこ とによる 表8  各部門の職員数に合併が与え た影響 部門 説明変数 係数 標準誤差 係数 標準誤差 係数 標準誤差 係数 標準誤差 係数 標準誤差 合併1 年目ダミー 0 .01 3 6 * ** 0 .0 0 24- 0 .0 3 5 8 ** * 0 .0 0 80- 0 .0 0 42 0.0 19 2- 0.0 18 8 * * * 0 .00 5 2- 0.0 06 9 0 .00 7 7 合併2 年目ダミー 0 .02 7 1 * ** 0 .0 0 26- 0 .3 1 2 3 ** * 0 .0 0 87- 0 .3 2 10 ** * 0.0 20 7- 0.0 76 1 * * * 0 .00 5 7- 0.0 66 7 * * * 0 .00 8 3 合併3 年目ダミー 0 .02 9 1 * ** 0 .0 0 26- 0 .3 4 2 0 ** * 0 .0 0 88- 0 .3 0 40 ** * 0.0 21 0- 0.0 77 0 * * * 0 .00 5 7- 0.0 77 6 * * * 0 .00 8 5 合併4 年目ダミー 0 .02 7 7 * ** 0 .0 0 26- 0 .3 5 3 1 ** * 0 .0 0 88- 0 .3 3 67 ** * 0.0 21 1- 0.0 75 7 * * * 0 .00 5 8- 0.0 74 1 * * * 0 .00 8 5 合併5 年目ダミー 0 .02 5 9 * ** 0 .0 0 26- 0 .3 4 8 6 ** * 0 .0 0 88- 0 .3 3 55 ** * 0.0 21 2- 0.0 74 6 * * * 0 .00 5 8- 0.0 75 4 * * * 0 .00 8 5 合併6 年目ダミー 0 .02 3 1 * ** 0 .0 0 27- 0 .3 4 7 0 ** * 0 .0 0 90- 0 .3 4 42 ** * 0.0 21 6- 0.0 84 5 * * * 0 .00 5 9- 0.0 94 8 * * * 0 .00 8 7 合併7 年目ダミー 0 .02 3 8 * ** 0 .0 0 37- 0 .3 3 5 6 ** * 0 .0 1 23- 0 .3 7 17 ** * 0.0 29 6- 0.0 92 5 * * * 0 .00 8 1- 0.1 16 9 * * * 0 .01 1 9 合併8 年目ダミー 0 .01 0 8 0 .0 0 84- 0 .2 8 5 2 ** * 0 .0 2 83- 0 .4 7 43 ** * 0.0 67 8- 0.0 83 8 * * * 0 .01 8 6- 0.1 79 6 * * * 0 .02 7 3 観測数 69 1 8 6 9 0 5 6 9 71 6 91 8 6 90 3 決定係数 0 .86 2 5 0 .7 3 1 4 0 .3 5 34 0 .8 8 56 0.0 12 6 ※ ***,**,*は、それぞ れ,1%,5%,10%で統計的に有意であるこ とを示す . 一般行政部門 表9 一般行政部門及び合併が与え た影響の符号がマイナス で あった部門の経年変化 議会 企画開発 税務 農林水産

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18 サービスが向上した場合など,業務量の増に対応している可能性もある. 合併による職員数削減効果があったと思われる部門の理由については,次のとおり考え られる. 議会部門については,各自治体でほぼ同様の業務であったと思われることから,重複し ていた業務を整理できるほか,議員数が減ることで業務量が減少すること,また,合併前 に議員任期などの将来の取り扱いが完全に整理されてしまうことから,調整業務など経年 による業務量の変化が少ないことが要因ではないかと考えられる. 企画開発部門は,合併前に特命業務として合併業務自体を所管している可能性が高いこ とや市町村独自の調査研究など定型的な業務ではない業務自体の性格から,合併直後に大 きく減少したものと思われる. 税務部門については,税の滞納者数や家屋評価件数など定量的に合併後の業務量を見込 みやすいことから合併時点で業務量を踏まえた人数に査定が行われることで,合併直後に 大きく人数が変化するものと思われる. 農林水産業部門については,総務部門とほぼ同様の推移を示すものの,専門職の配置な ど合併前後でサービス水準,職員体制が変化している可能性が高く,農林水産業に係る歳 出等も併せて分析する必要があることから,変化の理由は不明である.

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実際, クラス C の多様体については, ここでは 詳細には述べないが, 代数 reduction をはじめ類似のいくつかの方法を 組み合わせてその構造を組織的に研究することができる

解析の教科書にある Lagrange の未定乗数法の証明では,

しかし , 特性関数 を使った証明には複素解析や Fourier 解析の知識が多少必要となってくるため , ここではより初等的な道 具のみで証明を実行できる Stein の方法

析の視角について付言しておくことが必要であろう︒各国の状況に対する比較法的視点からの分析は︑直ちに国際法

項目 評価条件 最確条件 評価設定の考え方 運転員等操作時間に与える影響 評価項目パラメータに与える影響. 原子炉初期温度