高松平和病院
における
超音波検査の
位置付け
高松平和病院乳腺外科の1日平均 外来患者数は約30人。超音波検査は、 ほぼ全例に対して行っている。対策 型・任意型検診としての受診者も多 いが、精査・セカンドオピニオン目 的で来院されるケースも少なくない。 患者の年齢層は若年から高齢者まで 幅広い。 マンモグラフィやMRIなどの客観 的な存在診断を得意とするモダリテ乳房の正常構造をとらえて
良悪性を確実に診断
的確な超音波診断を
支えるのは、Aplio500の
高分解能Bモード画像
自覚症状のないうちに、気軽に乳 がん検査を受けてもらうことで、少し でも多くの女性の乳房を守りたい、と いう強い想いを持ちながらも「目指す のは、笑って帰れる乳腺外来です」と 優しく語る何森亜由美氏。 悪性像を追うのではなく、乳房の 正常構造から逸脱した部分を超音波 画像でどう見抜くか─早期乳癌の発 見に役立つ乳腺構造観察法の追求 には階調性の良い、東芝製超音波診 断装置Aplio500のBモード画像が大 きな役割を果たしていた。笑って帰 れる外 来 を目 指して〜
ィに対して、超音波検査は「病変の詳 細な評価や、インターベンションを どう進めるか」といったベットサイ ドでの診断に強みを持つ。特に、昨 今の装置の技術革新は、微細な石灰 化病変、非腫瘤性病変も早期から描 出できるだけの高いポテンシャルを 持っている。 超音波検査で、いかに良悪性を判 別し、同定するか。何森氏は、さまざ まな症例を観察し、「豹紋」と呼ばれ る正常乳腺の雲のような縞模様の流 れを追っていくことで「疑わしい病 変でも規則性の乱れがなく内部構造 が保たれていれば、精査を必要とし ない症例だと判断できるようになっ てきました」と語る。特に、プローブ が進化して高分解能になるほど、乳 腺の正常構造がますます正確に見え るようになり、精査対象とする症例 が減ったため、特異度が高く保たれ るようになったという。全ての症例は、
乳腺正常構造を
学ぶための教科書
何森氏は1995年に香川大学医学 部を卒業後、はじめは一般消化器外 ● ●I n t e r v i e w
● ● 香川医療生活協同組合高松平和病院
〒760-8530 香川県高松市栗林町1-4-1 電話: 087-833-8113(代表) 病床数: 123床 診療科目: 内科、消化器科、循環器科、呼吸 器科、外科、整形外科、リウマチ科、小児科、 緩和ケア科、病理科、理学療法科など何森亜由美
氏
高松平和病院外科 略歴/1995年3月:香川大学医学部卒、高松 平和病院外科勤務 2005年4月:たけべ乳腺 クリニック常勤医 2010年1月:がん研究会が ん研有明病院 乳腺センター外科 医員 2011 年4月:高松平和病院 乳腺外科・がん研究会が ん研有明病院 乳腺センター外科 嘱託医員 出版/2014年5月15日 「誰も教えてくれなか った乳腺エコー」(医学書院)3 Vol.3 No.8(205) ● ● ● ●
I n t e r v i e w
● ● ● ●何森亜由美
氏 高松平和病院外科 科医としてキャリアをスタートした。 出産をきっかけに乳腺外科医へ転身 し、乳腺超音波診断を始めてしばら くして何森氏は、超音波画像にも、胃 カメラや大腸内視鏡におけるピット パターン(腺管構造)のような画像の 規則性があるのではないかという感 覚を持った。 何森氏は、その仮説を検証するべ く「自分が検査した良性〜正常症例 の超音波のパターンを、毎日診療後 に繰り返し追いかけていました」と 話す。臨床現場においては、日々の 検査で「この方からは脂肪の入り方 を勉強させていただこう」「この方 からはクーパー靱帯の構造を学ばせ ていただこう」とテーマを決め、3 分間集中して検査を行う、というト レーニングを続けていた。「悪性像 を見つけようとするのではなく、正 常構造を確認したい、という思いで 検査を行っていました」と語る。目 の前の患者、すべての症例が教科書 と思って、一例一例を大事に診てい くことが、診断力の向上につながっ たのだろう。高分解能エコー
ならではの臨床的
有用性とは?
〜超音波による
乳腺構造観察法のポイント
何森氏が解明した乳腺構造は、小葉 外間質は2種類あり、超音波で乳腺内 に見られる斑〜豹紋状の模様は、「小 葉─乳管とそれを取り巻く周囲間 質」を見ているということだ(図1、 2)。さらに「周囲間質の量、腺葉の大 きさ、萎縮の程度、脂肪化の割合」が超 音波画像上の個人差となる事も明ら かにした。そして「乳腺内の模様は乳 管の走行を反映している構造であ る」と言う事を念頭に置きながら正常 な乳腺構造の流れを追い(図2、3)、 構造の途絶えや乱れが見られる部位 に注目すれば、淡い病変や微小な病変 の存在を指摘できるという(図4)。 何森氏が同院で使用する超音波診 断装置は、Aplio500(東芝メディ カルシステムズ)と、マトリックスプ ローブPLT-1204BXだ。 「以前の超音波診断装置でも存在診 断は可能でしたが、最近の装置では内 部構造の詳細な観察により、質的診断 にも自信を持って踏み込む事が可能 となってきた」(図4、5)という。装 置が進歩し、Bモードの基本画質が 向上するほど、何森氏の観察法の確信 度が高まっていった。患者にとっても、 検査時間が長引かず、精査の要不要を 的確に判断してもらえる、というメリ ットにつながっている。MRI・
セカンドルックUSの
勘どころ
MRIで病変を指摘されたあとの超 音波画像診断においては、病変の同 定を行いながらその根拠を客観的に 説明できるようにならなければいけ ない。MRIでの乳腺正常構造から病 変の位置を立体的に把握し、それを 超音波画像で正確に描出することが 重要である。日頃から超音波で立体 的に正常構造を読む訓練をしていな いと、同定した部位を客観的に説明 することが困難になってしまう。 何森氏は、「クーパー靭帯や血管 走行などを繊細に読みとれる高分解 能なエコーの活用」そして「変形する 乳房の立体構造を理解しながら的確 にプローブを当てるテクニック」が、 セカンドルックUSにおける勘どこ ろであり、これらを備えられれば、 9割以上は同定できるようになるだ ろう、と力強く答える。病理像に近い
素直な画像で
見 や す いAplio500
のBモード
何森氏は超音波画像と病理像を比 較して、解剖学的な乳腺構造が超音 波画像ではどう表現されているのか を解明、論文に発表し、その成果が 2014年の日本乳腺甲状腺超音波診 断医学会の診療ガイドラインに反影 された。 高松平和病院にAplio500が導入 されたのは2011年。乳腺の内部構 造を観察したい、という何森氏にと って、東芝製超音波装置のBモード 画像は距離分解能が高く、階調性が ▲ Aplio500 ▼ マトリックスプローブPLT-1204BX図5 等エコー病変 悪性 等エコー構造が乱れたり、途絶えたりしている。図4との違 いは、内部構造が不均質で低エコーが不規則なパターンで 出現することである。高分解能エコーによる内部構造の詳 細な観察が質的診断を可能にしている。 良いため「病理像に近い素直な画像 で、見やすい」と高く評価する。何森 氏はAplio500の導入前に、各社装置 をデモ使用して比較したところ「前 の世代のAplio XGでも、Bモード画 像の画質は十分よいと感じました」 と評価していたが、分解能は高けれ ば高いほど乳腺の正常構造をより厳 密に観察できるという点で、画質が 改良された現在のシリーズでも高周 波 マ ト リ ッ ク ス プ ロ ー ブPLT-1204BXが使用できる、最高機種の Aplio500を選択したという。「第一 印象は『ここまで細かい構造が繊細 に観察できるのか!』という驚きでし た。繊細な乳腺の構造が素直に表現 されているので、この装置を使って 正常構造を観察するのがますます楽 しくなりました」と何森氏は目を輝 かす。各社の超音波診断装置の画質 はコントラストを強調するか、構造 の違いを描出するか、という2つの 方向性で進歩しており、医師の好み や、何を観察したいかによって選択 される。デンスブレストのような、 日本人特有の乳腺組織の構造を観察 するのには、構造の違いを高分解能 で描出する東芝製装置の画像が、何 図3 腺葉の境界面 画質の向上により、腺葉の境界面が広い範囲で観察できる症 例が増え、腺葉の重なりと乳腺構造の流れが判りやすくなった。 図4 等エコー病変 良性 正常等エコー構造が乱れたり途絶えたりしている部位に、 等エコー病変や嚢胞などが出現している。 内部構造が均質で、良性と判断できる。 図2 正常乳腺構造 周囲間質が均等に分布し、中心乳管も高エコーのラインで 確認できる。正常構造の流れが追いやすい乳腺。 図1 乳腺組織像と超音波画像(文献1より転載) ⑴周囲間質:乳管ー小葉を取り巻く間質:等エコー ⑵浮腫状間質:⑴の間を充填する間質:高エコー
5 Vol.3 No.8(205) 森氏のニーズにも合致したのだ。
Elastographyや、
血流観察技術SMIの
乳腺画像診断に
おける可能性
Aplio500は、診断をサポートする アプリケーションが豊富に搭載され ている。乳腺画像診断において貢献 するのが、Elastography機能と、SMI による血流観察だ。 Bモード画像での観察が基本では あ る が、 何 森 氏 はStrain Elasto- graphyを、「悪性腫瘍なのか、嚢胞 や乳腺脂肪なのかを確認したい時に、 Elastographyで硬さを確かめれば、 確実に除外することができる」と、判 断に迷った時の最終鑑別に役立てて い る。Aplio500のElastographyは、 データの信頼性が上がり、画像も安 定して表示されるようになったと実 感しているという。 また、東芝独自の血流表示技術SMI は、高分解能・高フレームレートで微 細血管の血流形態を評価するのに役 立っている。血流が貫入・貫通など していれば悪性が疑われ、なだらかな カーブを描いていれば良性、といった 判別も、従来は動画でないと困難であ ったが、「SMIであれば一枚の静止画 キャプチャーで、Vascularityだけで なく血流形態を立体的に評価できる ほどの画像が簡便な操作で得られ、客 観性の担保につながっている」と何森 氏は高く評価している。 高松平和病院では、日本乳腺甲状 腺超音波診断医学会の「乳房腫瘤の 超音波診断におけるカラードプラ法 判定基準作成およびその有用性に関 する多施設共同研究(JABTS BC-04)」 に取り組んでいる。非造影のSMI画 像でも従来のカラードプラ以上の臨 床情報を得ることができるが、造影 SMI検査からは、バスキュラリティの 小さな病変でも高フレームレートで 低流速かつ微細な血流を表示でき、 乳癌術前診断や治療効果判定など、 さらに多くの知見が得られるのでは ないか、と何森氏は期待を寄せる。乳癌の早期発見に
かける想い─
相手の気持ちに
寄り添う超音波検査
乳がん検診の受診率は、平成25年 度の国民生活基礎調査(厚生労働省) によると43.4%と、欧米と比較して いまだ低い傾向にある。何森氏もこ れまでの経験を振り返り「独居の方 などは、なかなか周囲にも気づかれ ず、症状が進行して皮膚病変が生じ たころに来院されるようなケースが「
東
芝
製
超
音
波
装
置
の
B
モ
ード
画
像
は
距
離
分
解
能
が
高
く
、
階
調
性
が
良
い
た
め
病
理
像
に
近
い
素
直
な
画
像
で
、見
や
す
い
で
す
」
いまだに減らない」と語る。何森氏 は「患者さんには知る権利だけでな く、知りたくないという想いもある と思います。この方は何をどう知り たいのか? を検査中の会話から探 り、相手の気持ちに合わせて告知す る情報とその表現を選びます」と、医 師として、患者と協力して治療に取 り組もう、という気持ちを常に抱い ている。 高松平和病院には、地域の口コミ を聞いたママ友グループで検診を受 けに来られるケースや、県外からの 来院も多数あるという。「自覚症状 のないうちに、乳がん検診に少しで も気軽に来ていただき、必ず笑顔で 帰っていただける外来にしたい」と いう何森氏の想いは、着実に拡がっ ている。 <文献>1) Izumori A et al: Proposal of a novel method for observing the breast by high-resolution ultrasound imaging: understanding the normal breast structure and its application in an observational method for detecting deviations.Breast Cancer 20(1):83-91, 2013 ● ● ● ●