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研究題目 : 地域のニーズに基づいた在宅における 食べること の支援 に関する調査および実践研究 はじめに 医食同源の言葉の通り 在宅医療においても 食べることを支援しながら 適切な栄養指導 管理を行っていくことは欠かすことができない 食べる楽しみ は QOL に直結する大きな因子であり 経口摂取の

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2013 年度前期 在宅医療助成勇美記念財団

研究助成 完了報告書

地域のニーズに基づいた在宅における

「食べることの支援」に関する調査および

実践研究

代表研究者: 吉野浩之

あしかがの森足利病院 医師

〒326-0011 栃木県足利市大沼田町615番地

E-mail:

hyoshino@jichi.ac.jp

(2)

研究題目:地域のニーズに基づいた在宅における「食べること

の支援」に関する調査および実践研究

【はじめに】

医食同源の言葉の通り、在宅医療においても、食べることを支援しながら、適切な 栄養指導・管理を行っていくことは欠かすことができない。「食べる楽しみ」は、QOL に 直結する大きな因子であり、経口摂取のための口腔ケア、摂食嚥下障害症例への対 策は、誤嚥性肺炎の予防、介護者の負担軽減を考える上でも重要である。 このことは、2014 年の診療報酬改定にも明らかとなっている。つまり、胃瘻造設に 関わる診療報酬改定である。胃瘻造設術の診療報酬が約 6 割に減額された反面、術 前の嚥下機能評価に対する加算が設定され、造設後のリハビリテーションの評価が 高まったほか、完全に経管栄養から離脱した場合の「胃瘻抜去術」が新設された。逆 に、年間 50 件以上の多くの胃瘻造設を行っている施設では、経口回復率が 35%以上 でないと 8 割に減額される等の改定となっている。こうしたことからも、「食べることの 支援」は、喫緊の課題になって来ていると言えよう。 「食べることの支援」には、中核病院から地域の在宅関係機関や介護施設等のシ ームレスな連携と、地域全体の意識向上が必要である。私たちは、群馬県前橋市に おいて、「栄養療法ネットワーク・前橋」を中心に平成 20 年より継続的に活動し「顔の 見える地域連携」を行ってきた。また、群馬在宅療養支援診療所協議会も在宅におけ る摂食嚥下評価に積極的に取り組んでおり、両者の連携も広く行ってきた。 しかし、現在の地域での活動において、「①介護食が施設毎にばらばらである」ため に病院や施設間の連携がうまくとれないこと、「②在宅患者の介護食を作る負担が大 きい」ために在宅での摂食嚥下指導が進まないこと、在宅医療の中での「③摂食嚥下 の定期的な評価・指導」を行うことができる医療体制が不十分といった問題が、喫緊 の問題として存在しており、さらに、地域の実情を踏まえた「④適切な講演や勉強会 を継続的に行っていく必要」も強く認識している。 まず、摂食嚥下障害に対する食事形態については、昨年、日本摂食嚥下リハビリ テーション学会から、「嚥下調整食学会基準案」が提案されたが、介護現場では充分 な専門職種が配置されていない場合もあり、十分に浸透していないのが実情である。 適切な食事形態を提供するためには、地域の嚥下調整食の実態の把握とともに、中 核病院の管理栄養士の知識や経験の伝達も欠かせないが、こうした連携は現在のと ころ不十分である。

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また、在宅患者においても適切な嚥下調整食を提供することができれば、食べるこ とへの有効な支援となるが、特別な食事を作ることが介護負担の増加へつながること から、現在のところ在宅への普及が十分ではないと言えよう。現状の把握とともに、 適切な嚥下調整食を簡便に作る知識や技術の確立と地域への伝達や、市販食の利 用と言った工夫が欠かせない。 さらに、在宅では漫然と胃瘻からの経腸栄養管理が行われていることも珍しくなく、 定期的な栄養評価、嚥下機能の評価を行い、現状に合った栄養量や経口摂取の指 導が見直されるべきだと考える。そのため、圏内の在宅患者や施設に対して、多職種 の専門チームで訪問し、口腔ケア、摂食嚥下の評価・指導、薬剤指導等を、幅広く実 践する必要がある。

【目的】

このような背景のもと、以下の4つについて、調査・研究を実施し、より適切な摂食 嚥下療法の普及、シームレスな地域連携ネットワークを目指すことを目的とする。 ① 病院及び介護施設等の摂食嚥下食の統一を目指したアンケート調査 ② 在宅での介護者の摂食嚥下食のイメージと介護負担感のアンケート調査 ③ 摂食・嚥下食を用いている患者に対する評価及び指導の実践 (多職種連携で施 設・在宅等を訪問し摂食嚥下評価及び指導を実施する) ④ 在宅関係者への知識の普及(講演会、実技セミナー等の実施) ①~③で得られた知見を元に、摂食嚥下機能支援に関する講演会の実施、資料作 成を行い、在宅関係者への知識を普及させる。 以上の 4 つの目標を立て、本年度の研究を行った。 研究期間は 3013 年 8 月より、2014 年 8 月である。

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【1】 病院及び介護施設等の摂食嚥下食の統一を目指した

アンケート調査

<背景> 介護食の形態が施設毎にばらばらであるために、介護食についての病院や施設間 の連携がうまくとれない現状があり、これに対し、日本摂食嚥下リハビリテーション学 会から、「嚥下調整食学会基準案」が提案されたが、介護現場では充分な専門職種 が配置されていない場合もあり、十分に浸透していない。このため、摂食嚥下リハビリ テーションを中核病院から始めても、その訓練が施設・在宅で生かされていないとい う現状がある。また、経管栄養の栄養剤やその形態(半固形化または液体など)につ いても、栄養剤の採用状況なども統一されていないため、患者・利用者の適切な栄養 管理に障害が出ているケースも少なくない。 <目的> このため、群馬県前橋地域における栄養療法のスムーズな連携を目的として、現状 の調査を行い、現在の介護食の状況、対応できる形態、経腸栄養剤の採用状況など を把握し、今後の病院―施設間での栄養療法における名称と品質の統一をめざし た。 <対象と方法> 前橋医療圏にある、中核病院、一般病院、特別養護老人ホーム、老人保健施設の うち、栄養療法ネットワーク前橋に参加している施設を対象に、各施設の管理栄養士 等にアンケートによる調査を行った。 <結果> 1)対象 施設数は 20 か所。病院が 12 か所、特別養護老人ホーム(以下、特養)が 3 か所、 老人保健施設(以下、老健)が 5 か所であった。 2)使用している経腸栄養剤等 12 か所の病院で採用している経管栄養剤は平均 9.5 種類、中央値は 12 種類、最も 多いところは 21 種類、最小の所は 3 種類であった。また、病態用栄養剤(糖尿病、腎 不全、肝不全)は 1 か所を除く 11 か所で採用されており、4 病院では 3 種類の全てが 導入されていた。また、3 病院では免疫調整の栄養剤も採用されていた。

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8 か所の特養・老健では平均 3.8 種類であり、中央値は 3 種類、最も多いところで 8 種類、最も少ないところで 2 種類であった。 また、粘度調整のされた栄養剤である半固形化栄養剤を採用しているところは、病 院で 9 か所(75%)、特養・老健では 5 か所(63%)であった。 次に、液体栄養剤の半固形化・粘度調整を行っているか否かをたずねたところ、全 20 か所のうち半数でトロミ調整を、3 か所で寒天とトロミの両方を行っており、寒天の み行っているところはなく、液体栄養剤を半固形化・粘度調整のいずれも行っていな い施設が 7 か所であった。 また、粘度調整を行っている施設(13 か所)では、調整剤の濃度を決めて行ってい るところが 6 か所、特に濃度は決めずに行っているところは 7 か所であった。 胃瘻等からのミキサー食の注入についてたずねたところ、5 か所(25%)でミキサー 食の注入を行っていた。

寒天

, 0,

0%

とろみ

,

10, 62%

寒天ととろ

, 3, 15%

やってい

ない

, 7,

35%

(6)

3)特別な食事提供等について 調理体制は、直営が 6 か所(30%)、調理のみ委託が 3 か所(15%)、献立・材料発 注・調理を含めた委託が 7 か所(35%)、その他一部委託が 4 か所(20%)であった。 嚥下困難者への特別な食事提供は 17 か所(85%)で実施しており、2 か所(10%) は実施していなかった。(記載なしが 1 か所)

直営

, 6,

30%

委託(調

理のみ)

,

3, 15%

委託(献

立・材料

発注・調

理)

, 7,

35%

その他

, 4,

20%

(7)

4)食事形態等について 食事形態について、①一口大食、②粗きざみ、③きざみ・みじん、④極・超きざみ、 ⑤ゼリー・ムース、⑥ミキサー・ペースト、⑦ソフト食、⑧嚥下訓練食、⑨その他につい てたずねた。平均は 3.6 種類、中央値は 3.5 種類で、最も多いところで 7 種類であった。 最も少なく 1 種類のみの施設は 4 か所あり、ミキサー・ペーストのみが 2 か所、ソフト 食のみが 2 か所であった。

実施して

いる

, 17,

85%

実施して

いない

, 2,

10%

無記入

, 1,

5%

(8)

5)食形態の名称について 食形態とその名称について、関連施設との名称統一を図っている施設は 7 か所 (35%)、統一をしていない施設は 6 か所(30%)であった。また、名称を決めるにあた って参考にした基準は、嚥下食ピラミッドが 3 か所(15%)、自施設独自のものが 8 か 所(40%)、特にないが 4 か所(20%)などであった。 6)水分のとろみの濃度基準について 水分につけるとろみについて、施設内で基準を決めているか、作成者に任せている かなどについて尋ねた。施設内で一定の基準を作っているところは 11 か所(55%)、 基準を作っていない施設が 9 か所(45%)であった。また、基準があると答えた施設で も、その濃度は 1~4%とさまざまであった。 7)他の施設との共有、情報提供について 他施設との情報のやりとりにおいて、共有したい情報について記述にて回答を求め た。 連携に当たり、「ソフト食(またはムース食)の有無」、「採用している経腸栄養剤の 種類」などが必要との回答があった。 また、地域で統一したい基準として、「トロミ食、ゼリー食、ソフト食の統一」、「とろみ の粘度」、「栄養補助食の投与基準」などの希望があった。

嚥下食ピ

ラミッド

, 3,

15%

嚥下食

ピラミッ

+許可

基準

, 1,

5%

嚥下食ピ

ラミッド

+

自施設

, 2,

10%

自施設

, 8,

40%

特にない

,

4, 20%

無記入

, 2,

10%

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施設等からの質問として、「嚥下造影(VF)を行っているか」、「造影に用いる食事を どうしているか」、「褥瘡患者への栄養学的なアプローチについて」、「効率の良い調 理作業について」、「患者の病態と嚥下困難食の判断基準」、「糖尿病患者の栄養剤 選択」などが見られた。 さらに、現在の各施設での問題点として、「調理委託会社の理解と協力」、「嚥下食 のコストの問題」、「食事の形態と見た目の工夫」などが課題となっていることがわか った。 <まとめ> 今回の調査では、前橋市内の多くの病院の協力が得られた反面、介護施設は 8 か 所と市内にある 38 か所の老人介護施設のうち 21%の協力が得られたのみであった。 この 8 か所のうち 6 か所は「栄養療法ネットワーク・前橋」に常時参加している施設で あった。 経腸栄養剤の使用については、各施設の入院・入所者の状況・病状などに加え、直 営・委託の違いなどもあり、一概には言えないが、今回、回答いただいた施設では、 病態に合わせた栄養剤の工夫が、可能な範囲で行われていると言えよう。 一方で、今回の調査のきっかけとなった「連携」に視点を当てると、嚥下食形態につ いてであるが、各施設で対応しているもののその名称と実際の食事は各施設の独自 の対応が見られていた。このことからも、地域連携に関わる施設間の名称や形態の 統一について、大きな課題であると言えよう。今後の取り組みの中で、統一した基準 を「栄養療法ネットワーク」を中心に対応していく必要性が強く認識された。

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【2】 在宅での介護者の摂食嚥下食のイメージと介護負担感の

アンケート調査

<背景> 2014 年 4 月の診療報酬改定において、特に「食べること」への支援に注目が集まっ ている。胃瘻に関する診療報酬は大きく変更され、PEG 造設は約 4 割という大幅な減 額となった。一方で、造設前に嚥下内視鏡や嚥下造影といった食べることの評価を行 うと「嚥下評価加算」が算定できるようになった。さらに、摂食嚥下訓練に対する加算 も新設され、経口復帰への努力によっては「胃瘻造設は決して減額ではない」という 説明さえされている。しかし、診療報酬に示された「35%以上が完全に経口回復する」 という条件は、機材やスタッフの整った病院で、患者や家族の「熱心な協力」なくして は克服できない非常に高いハードルと言えよう。 一方、地域医療に関わる医療者からは、「よほど介護力に余裕があり、熱意のある 家族がいなければ、在宅患者の摂食嚥下訓練を進めることは難しい」という意見が多 く聞かれる。特に、せっかく急性期病院などで理想的な摂食嚥下訓練をし、患者に最 適な嚥下食を提供・提案してきても、実際の在宅の場では継続することが難しい。 特に摂食嚥下食は、先の研究で分かる通り、病院や熱心な介護施設でさえ統一さ れておらず、大きく混乱していると言わざるを得ない。いわんや、在宅で、栄養療法の 素人である家族が摂食嚥下食を作り、提供することは容易ではない。この「摂食嚥下 食の介護負担の高さ」が、在宅における経口回復を妨げていると言えよう。 こうした中で、某社から、味も見た目も非常に優れた摂食嚥下食「あいーと○R」が発 売されている。「栄養療法ネットワーク・前橋」で、医療者、介護者、患者家族を対象と した試食会を行ったところ、「とても味が良い」、「おいしそうに見える」と、一様に高評 価を受けた。しかし、この製品は価格が比較的高く、すべての食事をこの食品で提供 することは、経済的に難しいと言わざるを得ない。しかし、こうした製品を上手に利用 することで、患者の経口回復を促進することができるのではないかと考えた。 今回、在宅の摂食嚥下訓練中の患者を対象に、「摂食嚥下食の介護負担」に注目 し、実際にこの製品を提供し、患者家族から、 1、摂食嚥下食「あいーと○R」の評価 2、介護負担を軽減するか 3、今後、どのように利用するべきか について、アンケート法を用いて調査を行った。 特に、医療者ではわかりにくい、「在宅介護現場の食事」について、家族の提案を受 けるという視点を重視し、アンケート票を作成した。

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<対象と方法> 対象は、在宅療養中で、主治医から経口摂取の許可を受けているが、現在も摂食 嚥下訓練中の患者とし、その家族をアンケート対象とした。対象は、病院に胃瘻交換 のために受診した患者、在宅で胃瘻交換をした患者、訪問看護を受けている患者の 中から、家族から調査への協力を得られたものとした。 病院外来または在宅で書面と口頭で説明し、アンケートの同意を得た家族に対し、 摂食嚥下食「あいーと○R」を 5 食提供し、提供前とこの製品を使用後にアンケートに答 えていただくこととした。 まず、事前アンケートとともに注文票を渡し、欲しい食事を選んで送ってもらい、これ をメーカーに発注し、冷凍便で宅配してもらった。また、宅配便とともに事後アンケート も送付し、郵送にて送り返してもらう方法とした。 <結果:事前アンケート> 1)対象患者 事前アンケートと事後アンケート、両方にこたえてくれた患者を分析の対象とした。 対象は 33 名、男性 13 名、女性 19 名(不明 1 名)であった。平均年齢は 77.2 才であ った。また、在宅での療養期間は平均 67.4 か月(約 5 年半)であった。 介護者は男性 7 名、女性 24 名、男女両方が 1 名であった。 2)介護度 介護度は要介護5が 11 名(33.3%)、介護度4が 9 名(27.2%)、3 が 1 名、2が2名 要介護度1が7名(21.2%)であった。 3)病態 患者の病態は、22 名(66.7%)が「安定している」、6 名(18.2%)が「頻回の入院があ る」であった。 4)胃瘻等(経管栄養)の有無と現在の食形態 経管栄養を併用している患者は 5 名(15.2%)、経口のみが 28 名(84.8%)であった。 また、経管栄養の患者のうち、「完全経口」は 0 名、「半分程度」が 1 名、「2-3 割程度」 が 4 名であった。 5)介護サービスの利用 医療系のサービスでは、訪問看護が 22 名、訪問リハは 6 名、訪問診療が 12 名であ った。 デイサービスは 17 名、ショートステイは 9 名であった。

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また、配食サービスを受けている患者は一人もいなかった。 6)介護食の現状 摂食嚥下食を介護者が作っているものは 21 名(63.6%)、作っていないものが 12 名 (36.4%)だった。21 名のうち、介護者自身が摂食嚥下食を「すべて自分で作っている」 ものは 17 名(81.0%)、「協力を受けているもの」が 4 名であった。 現在の食形態は「ゼリー・ムース食等」が 2 名、「ミキサー食等」が 6 名、「やわらかい もの」が 11 名、「全粥など」が 3 名であった。 7)介護負担度 介護負担の程度について尋ねたところ、「経済的な負担」は 18 名(54.6%)、「肉体的」 「精神的」がどちらも 25 名(76.3%)であった。 「作るのが大変」「手間がかかる」と答えたものは、どちらも 19 名(70.3%)、「つくる種 類が限られてしまう」が 24 名(85.8%)と、摂食嚥下食は負担がかかる上、食事の種 類が限定され、バリエーションが少ないことを訴えていた。 8)介護食のイメージ スーパーやドラッグストアで売っている介護食について尋ねたところ、「栄養バランス は良さそう」「値段はあまり高くない」という答えが多い反面、「おいしそうに思えない」 「毎日は使いたくない」がどちらも 27 名(90%)であり、「普段使いますか」という問いに 28 名が「全く」または「ほとんど使わない」と答え、介護食は評判が悪く、あまり使われ ていない現状がみられた。 9)食事で大切にしていること 食事の中で大切にしていることとして、「家族でたのしく」が 30 名とほとんどが重視し ており、「準備に過剰な時間がかからない」が 25 名であった。また、「患者の食欲がわ く」「患者さんの笑顔」が全員が大切と答えた。 <結果:事後アンケート> 1)「あいーと○R」の感想 「見た目の良さ」「食事の楽しさ」は 32 名(97.0%)が良いと答えた。また、「介助のし やすさ」は全員が良いと答えた。また、「食事の意欲は増えたか」の問いには、29 名 (87.9%)が増えたと答えており、非常に評価が高いことがわかった。 2)介護負担の変化 この製品を使ったことにより、「食事の準備」「食事のかたづけ」ともに、28 名(87.6%)

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が「楽になった」と答えており、逆に「楽になっていない」は 4 名(12.5%)だった。 3)患者の様子 患者さんがこの製品を食べている様子について尋ねたところ、「満足している様子」 が 26 名(79.7%)である反面、「満足していない」が 7 名(21.2%)であった。 4)値段について この製品の値段についての問いには、27 名(90%)が「高い」と感じており、「あまり 高くない」は 3 名(10%)だった。 5)今後使いたいか 「今後使っていきたいか」については、「使いたい」が 25 名、「あまり使いたくない」が 7 名、「全然使いたくない」は 0 名であった。 また、値段を考えて、今後使う場合の頻度については、「毎食使いたい」は 1 名しか おらず、「1 日 1 回」が 6 名、「週に数回」が 8 名、一方、「全く使いたくない」も 12 名と 40%もいた。 6)介護食のイメージ 「あいーと○R 」を食べた後の介護食のイメージの変化についての問いでは 30 名 (90.9%)が「おいしそう」と、味についてのイメージが大きく変わっていた。また「種類 が豊富」も 31 名(99.9%)と大きく上昇していた。逆に「値段が高い」は 22 名(73.3%) と悪化していた。また、その他の項目では大きな変化はなかった。 <考察> 本調査の前、われわれの「「あいーと○R」に対するイメージは、「味も、見た目も非常 に優れている」反面、「この値段では、行事食のような特別な食事としてしか使えない のではないか」と考えていた。実際、限定販売された「うな重」は土用の丑の日を中心 に非常に好評であったと聞いている。 今回の調査でも、「味と見た目」の評価が非常に高い一方、「値段」についてはシビ アな意見が多かった。しかしながら、値段上「全く使いたくない」が 40%もいた反面、 「限定して使いたい」が 60%と半数以上いた。特に「食欲が増えた」が 9 割近くと、高い 評価を受けていること、さらに、「自分で作る摂食嚥下食ではメニューが限られてしま う」という悩みが多い中で、「種類が豊富」であることが高く評価されていた。このこと から、在宅での摂食嚥下指導を行っていくうえで、ワンパターンになりがちで、食欲が 落ちてきてしまったような患者に、「食事のアクセント」として使っていくような使用法が あることを教えていただくことができた。この点は、当初、想定していなかったことであ

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り、本調査で最も有用な結果と言えよう。 また、介護負担の面では、食事の準備や片付けが明らかに楽になっており、介護疲 れの際にも有用であることが示唆された。 <まとめ> 「食事のアクセント」と「介護疲れ」に対し、経済的負担を考慮しつつ、適切に使用す ることで、この製品は有用であると思われる。 今後は、週のうちでどのようなタイミングで使うことがより有効であるかについての 検討を行っていきたい。 また、家族は食事の時間の「楽しさ」を重視していることから、メーカーに対しては、 季節を感じられるような特別食などを提案していきたい。

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【3】 摂食嚥下食を用いている患者に対する評価及び指導の実践

<背景> 近年、地域包括支援が叫ばれる中、地域における多職種連携お重要性 は高まっており、その実現には「顔の見える連携」が必須であると言えよう。一方で、 職種の違い、地域性の違いなどのために、良好な連携を作ることは容易ではない。 一方で、医療・介護の両面から必ず必要になるものが「栄養の支援」である。「栄養 療法」は、病院での栄養支援チーム(NST)活動を中心に全国的な広がりをみており、 「医食同源」「栄養なくして、医療なし」といった、ごく当たり前のことが再認識されつつ ある。これまで、医学、看護、介護等の教育の中では、「栄養」について学ぶ機会は少 なかったと言わざるを得ないが、多くの現場から「褥瘡患者の栄養管理」や「外科術前 後の栄養管理」、「栄養と入院期間」など、栄養管理の重要性が認識されるようになっ た。また、在宅や介護施設においても、栄養管理の重要性は再認識されつつある。 「栄養療法」は、全ての在宅患者にとって重要なものであり、言い換えれば、「在宅・ 施設・病院共通の問題」ということができよう。地域での多職種連携において、「栄養 療法」は職種に関わらない共通の問題であり、全ての職種の関心事であるといえよ う。 こうした中、我々は 2007 年 7 月から「前橋胃ろうネットワーク」を立ち上げ、医師会・ 歯科医師会・薬剤師会の協力を得ながら、管理栄養士、医師、看護師、リハビリ、歯 科医師、歯科衛生士、薬剤師、介護士、ケアマネジャー、MSW、学校教員、大学研究 者など、幅広い職種の参加を見ながら、かつ、病院、介護施設、訪問看護・リハビリ、 学校、大学など様々な機関で働く実践者が参加するネットワークを立ち上げた。その 活動は、当初から在宅の連携を視野に入れていたものの、2007 年当時、地域での大 きな関心事は胃瘻患者の管理であった。その後の活動の中で、摂食嚥下、口腔ケア、 栄養剤、栄養評価など、胃瘻から派生した様々な問題に対処していく過程で、「胃ろう」 だけでなく「栄養療法を軸にした地域連携の構築」へと幅を広げた活動に変化してき たため、2012 年より名称を「栄養療法ネットワーク・前橋」と改称した。 月に 1 回の定例会と勉強会は、一度も休むことなく、7 年以上にわたって続けてきた。 この中で、単に勉強するだけでなく、参加者の提案によって様々な独自の活動も行っ てきた。その代表的なものとして、「往診による在宅胃瘻カテーテル交換」と「多職種 による訪問指導」がある。前者は、前橋市内を中心に 2 つの医療機関から往診を行い、 在宅や施設の胃ろう患者のカテーテル交換を行うものであり、すでに 200 人を超える 患者の交換を行っている。この活動は、通院が困難な患者や家族の負担軽減になる ばかりか、中核病院医師の負担軽減、医療費・介護費の軽減にも貢献するものとして、 多くの方に感謝されているのはもちろん、学会等での発表で全国的にも高く評価を受 けている。

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「多職種による訪問指導」は、中核病院で NST に関わっているような専門的なスタッ フが、多職種でチームを組んで施設や在宅を訪問し、栄養評価、口腔ケア・摂食嚥下 の評価や指導、食形態の提案、薬剤の管理、胃瘻管理、さらに全身管理まで、さまざ まなアドバイスや実践を行い、多くの患者や施設関係者に感謝されてきた。形態は数 人のチームから、10 人以上のスタッフによるものまで様々であり、中にはその分野で 全国的にも著名な者も参加しており、その専門性の高さは定評がある。しかし、こうし た活動は制度がないため、全て参加者のボランティアで行っており、訪問できる機会 は限られてきた。 一方で、介護を要する利用者は老人に限らない。近年、知的障害施設入所者の高 齢化は大きな問題となっているが、こうしたことはあまり知られていない。高齢化に伴 い、広義の栄養療法の対象となる入所者が急速に増加しているが、制度上もスタッフ の教育上も対応できていないのが現状である。しかし、こうした施設は「限定的な福祉 施設」と考えられがちであり、地域との連携に乏しく、専門的な指導からはかけ離れて きたと言わざるを得ない。そのため、これまで対象とできなかったような施設に対して も、「多職種による訪問指導」を行う必要がある。 今回、これまで地域との摂食嚥下を中心とした知的障害者施設からの要望に対し、 「多職種による訪問指導」を行うこととした。 <目的> 「栄養療法」の専門的な知識のない知的障害者施設の職員に対し、利用 者が将来にわたって健康に過ごせるような「栄養療法」の基礎知識を伝え、利用者の 「末永い食べることへの支援」を通して、健康な日常を送れる一助となることを目的と した。 また、今後、高齢者だけでなく障害者に対する医療・介護スタッフの視野を広げるこ とと、これまで地域連携に関わることの少なかったような分野の方の連携への参加を 促し、さらに、このプログラムを通して、あまり知識がないことで連携に参加するのを ためらってきたような在宅家族や施設職員への教育のモデルとなることを目的とし た。 <対象と方法> 対象は近隣にある知的障害者入所施設 A である。入所者は約 350 人で、近年、高齢化が深刻な問題となっている点では、全国の知的障害者施設と同 様である。特に、後期高齢者の増加が目立っており、元来の知的障害に伴う困難さに 加え、加齢による疾病・障害が加わってきており、摂食の問題がクローズアップされて いる。 第1に摂食嚥下の基礎的な知識を講演し、第 2 に多職種訪問による個別な対応に ついて指導を行った。

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<結果> 1)摂食嚥下の基礎講習 対象は、A 施設の看護・介護職員、約 100 名である。 研修プログラムは、「群馬県知的障害者(児)摂食嚥下研究会 基礎実技講習」で開 発したものを用いることとした。このプログラムは、基礎知識がほとんどない受講者を 対象として作られたものであり、摂食嚥下の基礎的な知識から、食べ物を使った体験 的学習も含んだ内容となっており、定評のあるものである。 内容は、「食べることの意義」、「栄養の大切さ」、「経口摂取と胃ろうとの関係」、「食 べることに関わる解剖と生理」、「検査」などを、スライドを用いて説明した後、実技とし て、「口唇閉鎖の意義」、「舌の動きと食形態」、「摂食嚥下のⅣ期」、「今後学んで欲し いこと」などを、食材を用いて実体験してもらうというものである。なお、食材は同施設 の好意で施設にて購入していただいた。 終了後、ほぼ全員から「よく理解できた」または「おおむね理解できた」と好評を得た。 また、次回、行う予定の訪問指導の準備ができたという回答もあった。 2)多職種による訪問指導 参加者は、医師 1 名、歯科医師 1 名、薬剤師 1 名、摂食嚥下認定看護師 2 名、看 護師 1 名、管理栄養士 1 名、歯科衛生士 2 名、臨床検査技師 1 名の、計 13 名である。 対象患者は 13 名(61 才から 80 才)、知的障害に加え、器質的疾患によるものでは ない摂食嚥下機能の低下が認められる患者である。 ①口腔状態 おおむね口腔清掃状態は良好であった。一方、ほとんどの患者に欠損歯があり、顔 面の変形も伴っていた。これらは、咀嚼機能に大きな影響を与えていると考えられた。 また、知的障害の影響から、初めて診察するスタッフによる口腔内の触診は困難であ り、知的障害者特有の問題も認められた。 ②服薬指導 患者は平均して 7.5 種類の内服薬を服用していた。知的障害者の特徴として、内服 薬の単独での服用を拒否することも多く、今回の対象者は食事に混入することで内 服を行っていた。このため、薬剤の配合変化などについての指導も行われた。 また、薬剤相互作用の上からの提案も行われた。 ③摂食嚥下評価 2 名に対し、VE(嚥下内視鏡)による評価を行った。その結果、1 名は過去に「嚥下不 可能」と診断され禁食であったが、VE による診断で改善を認めており「摂食可能」と評 価された。また、もう 1 名も禁食であったが「一部摂食可能」と評価された。

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④摂食嚥下指導 実際の食事介助場面を通して、摂食嚥下認定看護師や ST から指導を行った。 ・ 食具について: 全体にスプーンなどが摂食嚥下困難者に適したものでなく、施設 全体として患者ごとに適正な食具の提案を行った。 ・ 介助法について: 介助者ごとに、比較的自己流の介助法を行っていたため、基本 的な介助法を教授した。具体的には、患者の観察法を中心に、介助者は目線を患者 に合わせることや、喉頭挙上や口腔内の残留を観察しながら進めていくこと、食形態 を意識することなどである。 ・ また、今後の食事の進め方、食形態などについても個別にアドバイスした。 ⑤食事作成の指導 先の調査でも明らかなように、施設毎に食事の形態や名称は異なっているが、A 施 設も同様であった。そのため、管理栄養士からのアドバイスを行った。 ・ 1 回の食事の中で、食形態が嚥下レベルの異なるものがないように配慮する。 ・ とろみの調整は介助者ごとに行っていたため、毎回の調整具合にばらつきが出や すかった。介助者が替わっても同じとろみが調整できるよう、全体として統一する基準 を提案した。 <まとめ> 今回の指導には、専門的な指導のできるスタッフが多く参加していた。そのため、こ れまで意識していなかったような点についてアドバイスがあり、施設の関係者からは 大いに感謝された。 一方で、さまざまな場面で知的障害特有の問題も発見され、普段は脳卒中後など の疾患による嚥下障害を扱うことが多い病院のスタッフには新たな発見があり、訪問 したスタッフからも「勉強になった」という言葉が聞かれ、今後の診療の中で「障害者」 という認識を新たにした。 また、基礎知識に加えて実践的なアドバイスを受けたことにより、今後の施設の取り 組みの改善が期待できると思われた。 こうした取り組みが、今後の「知識が少ない取り組みの遅れた家族施設へのアプロ ーチ」という、当初の目的にとって有用な経験となった。今後とも、こうした経験を積み 重ねるとともに、マニュアル化できるような取り組みを考えている。

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【4】在宅関係者への知識と技術の普及

<背景> これまでの研究を通して、実際に医療・介護に関わる様々な職種から意見 を聴取することができた。この中で、最も求められていることは栄養、胃瘻、口腔ケア、 摂食嚥下などについての知識と技術の普及であると思われた。それらのニーズをもと に、実際の講習会を企画した。 胃瘻については、特にハンドリングと専門知識を求める意見が多く、他地域で行わ れてきたセミナーを参考に、新たなセミナーモデルとすべく検討を加えた。このセミナ ーは、「九州 PEG サミット」を参考としたが、この「サミット」は 100 名以上の参加者、全 国から講師を招聘する大規模な「サミット」であり、地域密着型セミナーのモデルとす ることは困難であった。そのため、規模を縮小し、どこでも開催が可能なモデルとして 再編した「栃木 PDN セミナー」をベースとした。なお、このセミナーは、なるべく実践に 沿った形で行うため、実際に看護やケアに関わっている職種を対象としている。 口腔ケアについては、特に口腔ケアの知識や技術に自信がないというような受講 者に対し、口腔ケアの意義、使用する器具、実践的な技術などを、専門講師を招いて 行った。 摂食嚥下実技セミナーは、先の A 施設で行った「群馬知的障害者(児)摂食嚥下研 究会」の「基礎実技セミナー」をベースとして行っている。 <結果> 1)PEG 実技講習会 本セミナーは2回実施した。 ① 第 1 回は「栄養療法ネットワーク・前橋」の協力のもと、2013 年 2 月 8 日、前橋青 少年会館にて行った。当日は記録的な大雪となってしまい、多くの欠席者が出たもの の、それでも参加者は 26 名、病院看護師 8 名、訪問看護師 1 名、施設看護師 2 名、 薬剤師 6 名、介護士 2 名、管理栄養士 2 名、歯科衛生士 1 名、不明 4 名であった。 テーマを、「PEG をめぐる今日の話題」を基調講演とし、その後、参加者を 5 つのチ ームに分け、「1、口腔ケア」、「2、栄養剤と半固形化」、「3、薬剤」、「4、皮膚ケアと 日常管理」、「5、PEG の造設と交換」の 5 つをテーマとし、それぞれ別の部屋を設定し たブース形式にて行った。別の部屋を設定することで、ブース同士の声が干渉するこ となく、セミナーに集中できる環境とし、内容も可能な限り、実際の臨床に沿うよう、モ デルの工夫、器具や薬剤の工夫などを行った。 「口腔ケア」では嚥下体操や口腔ケア技術を中心に行った。 「栄養剤と半固形化」は、経腸栄養剤の知識と種類、分類に加え、近年、特に注目 されている半固形化栄養剤を実際に胃瘻に注入し、その圧力などを体験してもらうこ

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とに主眼を置いた。 「薬剤」では、経管栄養で、より薬剤の投与法として優れているとされている簡易懸 濁法について、実際の薬剤を懸濁法で注入する方法と、簡易懸濁法で注意すべき薬 剤を実際に手に取って行ってもらった。さらに、診療科により独特な処方があることに 注目し、実際の処方でよく見られる薬剤相互作用について、看護師や介護士にも知っ ておいて欲しい知識について説明した。今回の参加者のうち、薬剤師は 6 名(23%)と 多く、このテーマが専門の薬剤師にとっても、重要視されていることがわかった。 「皮膚ケアと日常管理」では、胃瘻患者で多いトラブルとその対処法について、具 体的な皮膚ケア剤などを手に付けてもらうなどして体験しつつ、さまざまな臨床のニ ーズにこたえることに主眼を置いた。 「PEG の造設と交換」では、普段、内視鏡室の看護師や医師以外は見ることの少な い PEG 造設を、独自に工夫したモデルを用いて実際の内視鏡を用い、造設に習熟し た医師によって供覧した。また、前橋地区では「訪問による在宅 PEG カテーテル交換」 を実施しており、現在 200 名以上の在宅患者の交換を行っている。こうした背景から、 特に訪問看護師や施設の看護師・介護士から要望の上がっている「安全な PEG カテ ーテル交換法」を専門の医師から実演してもらい、「カテーテル逸脱」といった合併症 についてもモデルを使って解説した。なお、このモデルは群馬県の PEG セミナーのた めに開発されたものに工夫を加えて作成してもらった。 受講者からは、全員から「とても参考になった」と、非常に高い評価を受けた。 今回のセミナーは、非常に専門性の高い講師を招いて行った。その目的は、今後、 こうしたセミナーを地域で容易に開催できるよう、すべてのブースを撮影し、次回以降 の開催の際に、地域の講師が参考とできるようにした。 ② 第 2 回は、第 1 回に参加できなかった群馬県東部地域や近隣の栃木県西部を主 な対象とした。2014 年 8 月 9 日、場所はあしかがの森足利病院の多目的室を中心と し、いくつかの部屋を用意した。参加者は 33 名、看護師 21 名、介護士・保育士 6 名、 リハビリ関係 5 名、管理栄養士 1 名であった。後に述べる摂食嚥下口腔ケアセミナー を 3 週間ほど前に近隣で開催した関係から、今回は「口腔ケア」を除いた 4 ブースとし た。 今回は、「地域で容易に開催できる」ことを一つの主眼としており、前回のセミナーで は企業からの無償で協力を受けた「内視鏡セット」は病院のものを活用し、逆に前回 無償で借り受けた「モデル」は規定通りのレンタル料を支払うなど、金銭面でも「どこで も開催できる」ことを考えた。 参加者の感想は、前回に引き続き、全員から「とても役にたった」と評価された。

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2)口腔ケア講習会 現在、口腔ケアの重要性は広く認識されつつある。一方で、いまだに十分な対応が できていない地域や施設がみられる。このため、「口腔ケアに自信がない」という施設 を対象に口腔ケアの講習会を企画した。2014 年 7 月 19 日、場所は、星風会病院星風 院の会議室で行った。参加者は同院の看護師・保育士に加え、近隣施設の看護師・ 介護士等で、27 名が受講した。かなり基礎的な知識から、実際の臨床で使える物品 や技術の指導があった。 参加者からは、「とても役に立った」が 24 名、「まあ役に立った」が 3 名と、すべてが 肯定的な意見だった。また、「実際の臨床生かせるか?」との質問には、25 名が「とて も」、2 名が「まあ生かせる」と、かなり高い評価を受けた。 3) 摂食嚥下実技セミナー 本セミナーは、2013 年 9 月 11 日、社会保険群馬中央病院の大会議室にて行った。 参加者は約 70 名、職種は、医師、看護師(病棟、内視鏡、訪問など)、リハビリ(ST、 PT)、管理栄養士、ソーシャルワーカー、ケアマネジャー、歯科医師、歯科衛生士など、 広範囲に及んだ。このセミナーの参加者は、その多くが「栄養療法ネットワーク・前橋」 の参加者であり、自身が摂食嚥下を実践している者が多い。また、後輩の指導などに 当たる者も多く、このため、ベースには「群馬知的障害者(児)摂食嚥下研究会」の基 礎実技セミナーを置いたが、主眼は「自分の病院や施設、ステーションで、後輩にどう 教えるか」とした。 参加者からは、「教えるという視点がこれまで欠けていたことを痛感した」や、「ぜひ、 自分のステーションで行いたいからパワーポイント資料が欲しい」などの意見が相次 いだ他、セミナー終了後も活発な議論と質問が相次いだ。 <まとめ> 3 種類、計 4 回のセミナーを通して、これまで培ってきた「地域連携」の中で受けてき た要望に多く答えることができたと感じた。一方で、1 年間という短い時間の中で、単 独の研究者が、企画を立て、会場を押さえ、広報して受講者を募集し、機材や消耗品 をそろえることは、各講師やネットワークの人脈を利用しても、年に 4 回程度が限界で あるという現実もあった。 しかし、こうしたセミナーを画像として記録することで、「誰でも、どこでも開催できる」 可能性ができてきたことは、非常に有意義であった。

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【5】 まとめ

今回の研究を通して、 まず、病院や施設間の介護食の検討から、病院から在宅への食事のスムーズな 連携のためには、地域での食事の統一が重要であることが再認識された。この研究 をきっかけに、栄養連携を具体的に推し進めていくことができつつある。 次に、摂食嚥下訓練を病院から在宅までスムーズに進めていくためのツールとして、 食事の指導を続けていくことはもちろん、既製の食品をどのように使っていくべきか、 患者や家族に新たな提案ができることがわかった。 これまで地域連携の輪に入ることが少なかった「障害者施設」が加わることは地域 連携のレベルアップにつながり、障害者の幸福に寄与するばかりか、医療者がこうし た施設や患者を意識することが、医療者に自身にとっても重要であることが再認識さ れた。 また、我々が行ってきたセミナーは非常に高い評価を受けており、これらを映像や マニュアルとして提案し、「どこでも、だれでも容易に開催できるセミナー」を提案でき るものと考えられる。 <本研究は、2013 年度在宅医療助成勇美記念財団の助成を受けて行った。>

参照

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