研究論文
中国の労働契約法 と人的資源管理
丹 野 勲
はじめに
中国は、1995年1月 に労働 法 を施行 した。 さ らに、中国は、2007年6月 に 「中華人民共和国 労働 契約 法」 (以下 「労働 契約 法」 とい う) を 公示 し、2008年1月 に施行 した。労働契約法は、
労働法 を基礎 に して、 中国に新 たな労働者 の契 約制 を導入す るこ とを 目的 とした法律 である。
本稿 では、 この中国の労働 契約法(1)を中心 と して、中国の労働法、労働組合法 も加 えなが ら 中国の労働 関連法 とこれ に関連す る中国の人 的 資源管理ついて分析す る。 また、必要 な場合 、
日本 の労働 関連法 との比較 を行 な う。
なお、本論文 は、文部科学省科学研 究費補助 金基盤研 究C 「アジア ・太平洋 のフロンテ ィア 地域 の国際経 営」 (課題番 号18530309)の研 究 成果 で もある。
第
1
節 労働法 ・労働契約法 に適用 される対象中国国内の企業、個人経済組織及び民営非営 利企 業単位 等 の組織(以 下 「雇 用単位 」 とい う)
と労働者 とが労働 関係 を確 立 し、労働契約 の締 結、履行、変更、解 除、または終了の場合 には、
本法 を適用す る。 国家機 関、事業単位 、社会 団 体が労働者 と労働 契約 関係 を締結 し、履行 、変 更、解 除、または終了の場合 には、本法 に よ り 執行す る。 (労働 契約法第2条)
この条 文 で、 「企 業」 とは、各種所 有形態 の 企業 で あ り、工場 、会社 な どを含 む。 「個 人経 済組織」 とは、個 人企業 な どで あ り、 「民間非 営利企業」 とは協 同組合 な どの組織 である。 し
たが って、外資企業 (独資企業、合弁企業、合 作企業がある) も当然労働法の対象 となる。
労働法 ・労働 契約法 を適用す る 「労働者」の 範 囲には、以下の3分野が含 まれ る。
(1)国家機 関、事業単位 、社会団体の従業員。
(2)経営や管理 を行 う経営者 ・管理職。
(3)労働 契約 (雇 用契約 を含 む)を通 じて国家機 関、事業単位 、社会団体 と労働 関係 を形成す る その他 の労働者。
ここで重要なのは、会社の社長、取締役 といっ た経営者 、及び部長 、課長 とい った管理職 も労 働 法 ・労働契約法が適応 され る労働者 である と い う点である。 また、国営企業の経営者 も国家 機 関、事業単位 な どと労働契約 関係 がある とし て労働者 のカテ ゴ リー に含 まれ る。
なお、本法の適用範 囲か ら公務員及び公務員 制度 を準用す る事業単位及び社会団体 の職員、
農 業 に従事す る労働者 、現役 の軍人並び に家政 婦 な どは、除外 してい る。
労働契約法が適用 され る労働者 は、民間や外 資 を含む全雇用者 であ る。外資系企業 において も、臨時工、契約 工 を含 む全 ての雇用者 が対象 とな る。以上か ら、中国の労働法 ・労働 契約法 に適用 され る労働者 は、かな り広い範 囲を対象 に してい る とい う特徴 がある。
日本 の労働基準法、労働契約法 においては、
会社 の社長 、取締役 な どの経営者 は、通常、労 働者 ではな く使用者 とみ な され る。
第
2
節 書面契約 の締結義務1
.規則制度の制定中国の労働契約法と人的資源管理 41
使用者 は、賃金、労働時間、休 日 ・休暇、労 働安全衛生、保険福利 、教育訓練、労働規律 な どの重大事項 を制定 ・変更す る場合には、従業 員代表大会または従業員全体での討議 を経て、
案 と意見 を提 出 し、労働組合または従業員代表 と平等 に協議 して確立 しなければな らない、規 則制度の実施過程で、労働組合 または従業員 が 使用者 の規則制度が不適 当であると考 える場合 には、使用者 に対 して指摘 し、協議 を通 じて改 正す る権利があるo この規則制度は開示す るか、
従業員 に告知 しなけれ ばな らない。 (労働契約 法第4条)
就業規則等の規則制度の制定 と変更に対 して、
使用者 に労働組合 または従業員大会の討議 を経 て意見を提 出す ること、お よび労働組合 または 従業員代表 との平等協議の上決定す ることを義 務付 けた。すなわち、従来の よ うに経営者が一 方的に就業規則 を制定す ることを禁 じたのであ る。 また、規則制度が違法でない場合で も、労 働組合 または従業員大会が不適 当であるとす る と、使用者 に指摘 し、協議 を通 じて改正す る権 利 を認 めた ことになる。
この労働契約法第4条に定める手続 きを経 な い就業規則 は、法的に無効 となるので、経営者 は労働条件 について大 きな制約 を受 けることに なる。
日本の労働基準法 (第89条)では、常時10人 以上の労働者 を使用す る使用者は、就業規則 を 作成す ることを義務づ けてい る。また、使用者 は、就業規則 の作成 ・変更について、事業場 の 過半数組合、それがない場合 は過半数代表者 の 意見を聞かなければな らない (日本労働基準法 第90条) としている。ただ し、 これは意見 を聴 くのみで、協議や 同意 を得 ることを求 めていな い。次に、使用者 は就業規則 を行政官庁 に届 け なけれ ばな らない (日本労働基準法第89条) と してい る。 日本の労働基準法では、使用者 が一 方的に就業規則 を作成 し、変更す ることを認 め ているのに対 して、中国の労働契約法では使用 者 が一方的に就業規則 を制定す ることを禁止 し ている。
42 国際経営論集 No.37 2009
2.
書面 による労働契約の締結労働 関係 の成立にあたっては、使用者 と労働 者 で書面によ り労働契約 を締結 しなければな ら
ない。すでに労働 関係 を確立 してい るが、書面 による労働契約 を締結 していない場合 には、雇 用 の 目か ら1か月以 内に書面 によ り労働 契約 を 締結 しなけれ ばな らない。 (労働契約法第10条)
労働契約 は、次 に掲 げる条項 を備 えていなけ れ ばな らない。
(1)雇用単位 の名称、住所及び法定代表者又は 主たる責任者
(2)労働者の氏名、住所及び住民身分証その他 の有効な身分証書の番号
(3)労働契約 の期間 (4)業務 内容及び業務場所 (5)業務時間及び休息休暇 (6)労働報酬
(7)社会保険
(8)労働保護 、労働条件及び職業上の危害の防 護
(9)法律及び法規 によ り労働契約 に組み入れ る べき旨が規定 され るその他 の事項
労働契約 には前項所定の備 えるべき条項のほ か、雇用単位 と労働者が協議 の上、試用期間、
養成 ・訓練、秘密保持、保 険及び福利待遇等の その他 の事項 を約定す ることがで きる。 (労働 契約法第17条)
雇用単位 と労働者 とは、協議 によ り合意 した ときは、労働契約 に約定 した内容 を変更す るこ とができる。労働契約 を変更す るときは、書面 の形式 を採用 しなければな らない。変更後の労 働契約文書は、雇用単位及び労働者がそれぞれ
1通 を保有す る。 (労働契約法第35条) 中国では、従来か ら書面による労働契約 を結 ばず、使用者 との 口約束だけで雇用す るケース が多かったが、新労働契約法では、雇用 した 日 よ り1カ月以内に書面による労働契約 を義務づ けた。 また、労働契約 の変更については、双方 が協議 し合意す る必要があ り、書面によらなけ ればな らない としている。
さらに、以下のよ うな違反違反 に対す る大 き なペナルテ ィーを果た してい る。 この よ うな大 きなペナルテ ィーの規定は、従来 中国では、労 働法規 を遵守せず、労働契約 を締結 しない事例 がかな り多かった状況‑の改善を 目的 とす るも のであろ う。
使用者 が労働者雇用 した 日か ら1年以 内に労 働者 と書面によ り労働契約 を締結 しない場合 に は、無固定期間労働契約 を締結 しているもの と みなす (労働 契約法第 14条第 3項)。 この無 固 定労働契約 は、期間を定めない雇用契約である ため、いわば終身雇用の雇用 となる。
しか も、 この条項 を遵守 しない場合、以下の よ うな賠償金がついてい る。
書面による労働契約 を締結 しない状況が雇用 した 日よ り1か月過 ぎ1年未満 の場合 には、毎 月2倍 の賃金 を支払わなけれ ばな らない。 (労 働契約法第82条)。
労働法 と労働契約法が適用 され る労働者 は、
民間や外資を含む全雇用者 である。外資系企業 において も、臨時工、契約 工を含む全ての雇用 者 は、書面による労働契約 を締結す ることが必 要である。 さらに、特に不安定な雇用状態であっ た農民工に とって この条項は強力な後 ろ盾 にな
る。
日本 の労働契約法 においては、 「労働契約 の 内容 について、できる限 り書面によ り確認す る もの とす る (第4条)」 とし、 中国の よ うな強 制的な書面による労働契約の締結義務 はない。
3.パー トタイム (非全 日制)労働者の除外措置 パー トタイム (非全 日制)労働者使用の双方 の当事者 は、 口頭 による合意 を締結す ることが できる。 (労働契約法第69条)
以上の規定によ り、パー トタイム (非全 日制) 労働者 については、書面による労働契約ではな
く、 口頭 による合意 を認 めている。
第
3
節 労働契約の類型労働契約には、期限のある固定期間労働契約、
期限のない無固定期間労働契約、お よび一定の 仕事の完成 を期限 とす る業務任務完了労働契約 の3種類がある。 (労働契約法第12条)
1
.固定期間労働契約固定期間労働契約 とは、使用者 と労働者が契 約終了の時を約定す る労働契約 をいい、使用者 と労働者 が協議 によ り合意 した ときは、固定期 間労働契約 を締結す ることができる (労働契約 法第13条)。
固定労働契約 は、中国で従来か ら一般的であ る期限を定めた契約 による従業員、契約工 とい
う形態である。
中国では、1986年国務院の国営企業の労働契 約制度の 「4つ の暫定規定」 (「国有企業実行 労働合 同制暫定規定」、 「国営企業招用工人暫定 規定」、 「国営企業辞退違紀規職 工暫定規定」、
「国営企業職工待業保険暫定規定」)によ り契約 工の導入 を法律で明文化 し、契約 による雇用が 一般化 していった(2)。契約 による雇用は、その 後、外資企業、中国民間企業で も一般化 した。
この雇用形態によ り、中国は若年労働者 を低賃 金で、短期間雇用 (多 くは1年) とい う労働条 件 となった。20歳代の青年男女が1年契約、数 年で入れ替わるとい う労働形態である。 このよ うな低賃金で、短期雇用 による労働 が、中国を 世界の工場 として支えていた と言 って もいいだ ろ う。 さらに、都市労働者 の他 に、 2億人以上 い ると言われている農村か らの出稼 ぎ農民であ る農民工 も、 この よ うな契約 による形態の労働 者であった。 しか し、農民工、契約工の多 くは、
不安定な雇用条件で、低賃金であるため、中国 社会 において格差 とい う深刻な社会問題 が生 じ て きている。
2.
無固定期間労働契約無固定期間労働契約 とは、使用者 と労働者 と が終了の時の確定がない旨を約定す る労働契約 である。使用者 と労働者 が協議 によ り合意 した ときは、無固定期間労働契約 を締結す ることが で きる。下記 のいずれの事 由があ り、労働者が 中国の労働契約法と人的資源管理 43
労働契約 の更新 も しくは締結 を提起 し、または これ に同意す る場合 には、労働者が固定期間労 働契約 の締結 を提起す る場合 を除き、無固定期 間労働契約 を締結 しなけれ ばな らない。
(1)労働者 が当該使用者 において連続 して満10 年勤務 しているとき。
(2)使用者が初 めて労働契約制度 を実行 し、ま たは国有企業が制度改革によ り新たに労働契約 を締結す るときに、労働者 が当該使用者 におい て連続 して満10年勤務 し、かつ、法定の退職年 齢 まで10年 に満たない とき。
(3) 2回の固定期間労働契約 を連続 して締結 し、
かつ、法定の解除事 由がな く労働契約 を継続す る場合。 (労働契約法第14条)
この無固定期間労働契約 は、いわば終身雇用 による雇用形態である。労働契約法は、中国の 深刻 な社会問題 となってい る格差社会 を是正す るため、労働者 の雇用 を期 間による契約か ら終 身雇用 に転換 させ ることを誘導す ることを狙 っ た ものであると言 えるであろ う。その意味で、
第14条は、労働契約法 において最 も重要な条項 である。
第14条2項1, 2号では、労働者が10年以上 勤務 している場合、労働者が希望すれば雇用主 は無固定期間の労働契約 を締結 しなければな ら ない と規定 している。無 固定期間 とは期限の定 めのない労働契約 であ り、いわば終身雇用であ る。勤続10年以上で、労働者が継続 を希望すれ ば雇用主は終身雇用 を法的に義務付 け られてい る。
なお、 日本の労働 関連法ではこのよ うな規定 はない。
第14条2項3号では、期間の定まってい る労 働契約 を2回連続 して提結 し、かつ法定の解 除 事 由がな く労働契約 を継続す る場合、無固定期 間労働契約 を締結 しなければな らない としてい る。例 えば、 1年間の労働契約 を2回連続 して 契約 し2年就労 した後、労働者 が労働契約 の継 続 を希望すれ ば雇用主はこれ を拒絶できず、無 固定期間労働契約 を義務付 け られ る。 この規定 は、実質的には、 2回の労働契約が締結 されれ 44 国際経営論集 No.37 2009
ば、法定の解除事 由がな く労働契約 を継続す る 場合、無 固定期間労働契約 になるとも解釈でき る。例 えば、ある企業に最初 に勤 める時に第1 回の1年 間の労働契約 を締結 し、その契約が終 了す る2年 目に第2回の労働契約 を締結 した と
しよ う。その場合、 3年 目の第3回の労働契約 は、労働者が労働契約 の継続 を希望すれば雇用 主はこれ を拒絶できず、無固定期間労働契約 を 義務付 け られ ることになる。以上の よ うに、 2 年 目の第2回の労働契約 が締結 され ると終身雇 用 になると解釈す ることができる。 2回 目の労 働契約 は、企業に とってその労働者 を終身雇用 にす るか とい う判断を迫 られ る、極 めて重要な 労働契約 であることになる。使用者の固定期間 労働契約 の更新拒絶権 は、 1回限 りとい うこと になる。
この中国労働契約法の規定は、短期間の雇用 契約 が一般化 した中国の雇用 を一変 させ る改革 であると言 える。特 に、若年の低賃金労働者 が 数年で入れ替わ る労働契約 の下で成立 していた 多 くの外資系企業に大 きな影響 を与 えるであろ う。 この労働契約法は、雇用期間の長期化 ・安 定化お よび終身雇用制‑の誘導 とい う立法趣 旨 は明 らかである。
3.
一定の業務任務の完了を期間 とする労働契 約一定の業務任務 の完了を期間 とす る労働契約 とは、使用者 と労働者がある業務 の完了を契約 期間 として約定す る労働契約 である。使用者 と 労働者 は、協議 によ り合意 した ときは、一定の 業務任務の完了を期間 とす る労働契約 を締結す ることができる。 (労働契約法第15条)
以上のよ うに、 日系企業を含む外資系企業は、
一斉 に長期雇用体制 または派遣労働者‑の転換 を余儀 な くされ、若年労働 ・低賃金 を前提 とし た対 中進 出に大 きな転換点が訪れている。
第
4
節 試用期間の規定1
.試用期間の規定労働契約 には、試用期間を約定す ることがで きる。試用期間は、最長 で6か月を超 えてはな らない。 (労働法第21条)
労働契約期間が3か月以上1年未満である場 合 には、試用期 間は、 1か月 を超 えてはな らな い。労働契約期間が1年以上3年未満 である場 合 には、試用期間は、 2か月 を超 えてはな らな い。 3年以上の固定期間及び無固定期間の労働 契約 については、試用期間は、 6か月 を超 えて はな らない。同一の使用者 と同一の労働者 とは、
1回に限 り試用期間を約定す ることができる。
一定の業務任務の完了を期間 とす る労働契約 ま たは労働契約期間が3か月未満である場合には、
試用期間を約定 してはな らない。試用期間は、
労働契約期間内に含 まれ る。 労働契約が試用期 間のみ を約定す る場合 には、試用期間は成立せ ず 、 当該期 間は労働 契約期 間 とす る。 (労働契 約法第19条)
労働者 の試用期間にお ける賃金 は、当該使用 者の同一の職位 の最低 ランク賃金 または労働契 約 に約定す る賃金の80パーセ ン トを下回っては な らず、かつ、使用者 の所在地の最低賃金標準 を下回ってはな らない。 (労働契約法第20条)
試用期間において、法定の解除事 由がある場 合 を除き、使用者 は労働契約 を解 除 してはな ら ない。使用者 は、試用期間に労働契約 を解 除す る場合 には、労働者 に理 由を説明 しなければな らない。 (労働契約法第21条)
以上の よ うに、労働契約法では、従来問題 の 多かった試用期間の悪用 を禁止 した。農民工や 季節労働者 は、労働契約期間が少 ないにもかか わ らず、試用期間を不 当に長 く設定 した り、配 置転換 ごとに何度 も試用期間を設 けるといった 行為 に歯止めをかけた。試用期間は、労働契約 期間3カ月以上1年未満 の場合1カ月以内、労 働契約期間1年以上3年未満の場合2カ月以内、
労働契約期間3年以上お よび無固定の場合6カ 月以内、 と規定 された。
また、同一使用者 は同一労働者 と試用期間を 1度 しか約定できない と規定 し、企業が何度 も 試用期間を設 けることを禁止 した。使用期間中 の解雇 について も、法定の採用条件 に合致 しな い と証明 された場合に限るなどと制限を加 えた。
さらに、試用期間の賃金 については、最低賃金 水準を規定 し、同一の職位 の最低 ランク賃金ま たは労働契約の賃金 の80パーセ ン ト以上で、か つ、最低賃金標準を下回ってはな らない とした。
以上のよ うに、季節工な どが、従来使用期間中 は 自由に解雇 された り、試用期間を悪用 した り す る行為 を禁止 した り、不 当に低賃金で働 かせ
ることな どを規制 したのである。
2.
パー トタイム (非全 日制)労働者の試用期 間の禁止パー トタイム (非全 日制)労働者使用の双方 の 当事者 は、試用期 間 を約 定 して はな らない (労働契約法第70条)0
パー トタイム (非全 日制)労働者 については、
試用期間を設定 してはいけない と規定 している。
3.
試用期間の違反 に対する賠償金雇用単位 が この法律の規定に違反 して労働者 と試用期間を約定 した試用期間は無効であ り、
労働行政部門が是正 を命ず る。違法に約定 した 試用期間が既 に履行 されている場合 には、雇用 単位 が労働者 の試用期間満 了月賃金 を標準 とし て、既 に履行 された法定の試用期間を超 えた期 間に基づ き労働者 に賠償金 を支払わなけれ ばな
らない。 (労働契約法法83条)
以上の規定は、使用者 が違法な試用期間を設 定 し、労働者 に仕事 をさせ た場合、賠償金 を払
うことを定めた ものである。
4.
試用期間における解約の制限試用期間において、労働者 に第39条並びに第 40条第(1)号及 び第(2)号所定 の事 由があ る場合 を除き、雇用単位 は、労働契約 を解除 してはな らない。雇用単位 は、試用期間に労働契約 を解 中国の労働契約法と人的資源管理 45
除す る場合 には、労働者 に理 由を説 明 しなけれ ばな らない。 (労働契約法第21条)
なお 労働契約法第39条、お よび第40条第 (1)(2)号は、以下の よ うな規定である。
労働者 に次に掲げる事 由の‑がある場合には、
雇用単位 は、労働契約 を解除す ることができる。
(1)試用期間において採用条件 に適合 しない こ とが証明 された とき。
(2)雇用単位 の規則制度に重大に違反 した とき。
(3)職責の著 しい怠慢、私利 を図 り、雇用単位 に重大な損害をもた らした とき。
(4)労働者が同時に他の雇用単位 と労働 関係 を 確立 し、当該単位 の業務任務の完了に重大な影 響 をもた らし、又は雇用単位 の指摘 を経て、是 正 を拒絶す る とき。
(5)詐欺若 しくは脅迫の手段 によ り、又は人の 危難 に乗 じて、相手方 にその真実の意思に背 い た状況下で労働契約 を締結 させ、又は変更 させ た ときに起因 して労働契約が無効 となった とき。
(6)法 によ り刑事責任 を追及 された とき。 (労 働契約法第39条)
次に掲 げる事 由の‑がある場合 には、雇用単 位 は、30日前までに書面によ り労働者本人に通 知 し、又 は労働者 に1か月分 の貸金 を余分 に支 払 った後に、労働契約 を解除す ることができる。
(1)労働者が病 を患い、又は業務外の原 因に よ り負傷 した場合 において、所定の医療期間満 了 の後 に現業務 に従事す ることができず、また、
雇用単位 が別途手配 した業務 に従事す ることも できない とき。
(2)労働者が業務に堪えることができず、養成 ・ 訓練又は業務職位 の調整 を経て、なお業務 に堪 えることができない とき。 (労働契約法第40条)
試用期間において労働者の解約す る場合、従 来の よ うな根拠があいまいで、一方的な形での 解約 は認 め られない。労働契約法では、試用期 間にお ける解約 については採用条件 に照 らして 法律 に準拠 した解約事 由について証拠 をつ けて 労働者 に説明す る必要がある。 も ししなかった 場合 は、使用者 は法律違反 として賠償金 を払 う 場合がある。試用期間にお ける労働者 の安易 な 46 国際経営論集 No.37 2009
解雇 を厳 しく禁止 した。
第
5
節 無効な労働契約下記の労働契約 は、 これ を無効 とし、又は一 部無効 とす る。
(1)詐欺、脅迫等の手段 によ り、又は人の危難 に乗 じて、相手方 にその真実の意思に背いた状 況下で労働契約 を締結 させ、又は変更 させた と き。
(2)雇用単位 が 自己の法定責任 を免除 し、又は 労働者の権利 を排除す る とき。
(3)法律及び行政法規の強制的な規定に違反す るとき。
労働契約 の無効又は一部無効 について紛争の ある場合には、労働紛争仲裁機構又は人民法院 が これ を確認す る。 (労働契約法第26条)
労働契約 の一部無効が、その他の部分の効力 に影響 しない場合 には、その他 の部分は、なお 有効 とす る (労働契約法第27条)。 この条項 は、
いわ ゆる条項 の分割性 が規定 され てい る(3)。 労働契約 が無効 と確認 された場合 において、
労働者が既 に労働 を提供 しているときは、雇用 単位 は、労働者 に労働報酬 を支払わなければな らない.労働報酬の額 は、当該単位 の同一又は 近接す る職位 の労働者 の労働報酬 を参照 して確 定す る。 (労働契約法第28条)。
この条項 は、労働契約が無効であると確認 さ れた場合であって も、労働者がすでに労働 を し てい る場合 は、賃金 を支払わなけれ ばな らない としてい る。
第6節 労働契約の履行及び変更
1
.賃金支払いに関する介入強化雇用単位 と労働者 とは、労働契約 の約定に従 い、各 自の義務 を全面的に履行 しなければな ら ない。 (労働契約法第29条)
雇用単位 は、労働契約 の約定及び国の規定に 従い、労働者 に遅滞な く満額 によ り労働報酬 を 支払わなければな らない。雇用単位が労働報酬
の支払いを遅延 し、又 は満額 によ り支払わない 場合 には、労働者 は、法 に よ り当該地 区の人民 法院 に支払命令 を申請す る こ とがで きる。 (労 働契約法第30条)
雇用単位 に次 に掲 げる事 由の‑がある場合 に は、労働行政部 門が期 間を限 り労働報酬 、時間 外労働手 当又は経済補償 を支払 うよ う命ず る。
労働報酬が 当該地 区の最低賃金標 準 を下回 る場 合 には、その差額部分 を支払 わなけれ ばな らな い。期 限を過 ぎて も支払 わない場合 には、支払 うべ き金額 の50パ ーセ ン ト以上100パ ーセ ン ト 以下の標 準 に従 い労働者 に賠償金 を追加 して支 払 うよ う雇用単位 に命ず る。
(1)労働 契約 の約 定又 は国の規定 どお りに遅滞 な く満額 に よ り労働者 に労働報酬 を支払わない
とき。
(2)当該地 区の最低賃金標準 を下回って労働者 に賃金 を支払 うとき。
(3)時間外労働 を手配 して時間外労働手 当を支 払 わない とき。
(4)労働契約 を解 除 し、又 は終了 し、 この法律 の規定 どお りに労働者 に経済補償 を支払 わない
とき。 (労働契約法第85条)
これ らの条文 は、使用者 が賃金 の支払いの遅 延 、最低賃金以下の賃金 、時間外手 当の不払 い な どを した場合 、労働者 は裁判所 に支払いの 申 し立てができること、使用者 は労働者 に賠償金 を支払 う義務 が生 じる とした。雇用主 に対す る 賃金支払 の規制 を強化す る狙 いがある。
2.
時間外労働 、残業への規制強化雇用単位 は、労働 ノルマ標 準 を厳格 に執行 し なければな らず、労働者 に時間外労働 を強要 し、
又 は形 を変 えた強制残業 を行 ってはな らない。
雇用単位 は、時間外 労働 を手配す る場合 には、
国の関係規定 に従い労働者 に時間外労働 手 当を 支払わなけれ ばな らない。 (労働 契約法第31条)
この条文 は、残業 ノルマ を厳格 に し、使用者 の労働者‑ の時間外労働 の強要 の禁止 と、時間 外労働 の支払 を厳格 に した ものである。
第
7
節 雇用主身分変更への対策雇 用単位 が名称 、法定代表者 、主た る責任者 又は投資家等の事項 を変更す ることは、労働契 約 の履行 に影響 しない。 (労働契約法第33条)
雇 用単位 に合併又 は分割等の状況が発 生 した 場合 において、元 の労働契約 は、継続 して有効 であ り、労働 契約 は、その権利及び義務 を承継 した雇用 単位 が継 続 して履行す る。 (労働 契約 法第34条)
以上の条文は、企業の合併 ・買収 な どによ り、
不正な人員カ ッ トな どを防止す るために、合併 ・ 買収 な どの場合で も労働者 との労働契約 を継続 す ることを規定 してい る。
第8節 契約の解除、終 了
労働契約法では、労働契約 の解 除及び終了に 関 して、雇用 単位 と労働者 とは、協議 に よ り合 意 した ときは、労働 契約 を解 除す ることができ る とい う規定がある。 (労働 契約法第36条)。
1
. 労働者の使用者への契約解除労働者 は、30目前 までに書面に よ り雇用単位 に通知 した ときは、労働契約 を解 除す ることが で きる。労働者 は、試用期 間内において、 3日 前 までに雇用単位 に通知 した ときは、労働 契約 を解 除す ることができる。 (労働契約法第37条)
以上の規定は、労働者 が労働契約 を解 除す る 場合、30目前 までに書面 にて使用者 に通知すれ ば、契約 を解 除 して退職 で きる。
雇用単位 に次 に掲 げ る事 由の‑がある場合 に は、労働者 は、労働契約 を解 除す ることができ る。
(1)労働契約 の約定 どお りに労働保護又 は労働 条件 を提供 しない とき。
(2)遅滞 な く満額 に よ り労働報酬 を支払 わない とき。
(3)法 どお りに労働者 のために社会保 険料 を納 付 しない とき。
(4)雇用単位 の規則制度 が法律及び法規 の規定 中国の労働契約法と人的資源管理 47
に違反 し、労働者の権益 を損 な うとき。
(5)詐欺若 しくは脅迫の手段 によ り、又は人の 危難 に乗 じて、相手方にその真実の意思に背 い た状況下で労働契約 を締結 させ、又は変更 させ た ときに起因 して労働契約が無効 となった とき。
(6)法律及び行政法規の規定によ り労働者が労 働契約 を解除す ることのできるその他の事 由
雇用単位 が暴力、威嚇若 しくは人身の 自由を 不法 に制限す る手段 をもって労働者 に労働 を強 要す る場合、又は雇用単位 が規則 に違反 して指 揮 し、若 しくは危険 を冒す作業 を強要 して労働 者の人身の安全 に危害を及 ぼす場合 には、労働 者 は、直ちに労働契約 を解除す ることができ、
事前 に雇用単位 に告知す る必要 はない。 (労働 契約法第38条)
本条で規定 されてい る場合 は、労働者 は使用 者 に通知せず に契約 を即刻解除できる。
日本の労働基準法では、中国労働契約法 と同 じく、使用者 は、労働者 を解雇 しよ うとす る場 合、少 な くとも30目前までにその予告 を しなけ ればな らない。30日前に予告 を しない場合 は、
30日分以上の平均賃金 を支払わなければな らな い (第30条) としてい る。
2.
使用者の労働者への契約の解除労働者 に次に掲げる事由の‑がある場合には、
雇用単位 は、労働契約 を解除す ることができる。
(1)試用期間において採用条件 に適合 しない こ とが証明 された とき。
(2)雇用単位の規則制度に重大に違反 した とき。
(3)職責 を重大 に失 当 し、私利 を図 り、雇用単 位 に重大な損害 をもた らした とき。
(4)労働者 が同時に他 の雇用単位 と労働 関係 を 確立 し、当該単位 の業務任務の完了に重大な影 響 をもた らし、又は雇用単位 の指摘 を経て、是 正 を拒絶す るとき。
(5)詐欺若 しくは脅迫 の手段 によ り、又は人 の 危難 に乗 じて、相手方にその真実の意思に背 い た状況下で労働契約 を締結 させ、又は変更 させ た ときに起因 して労働契約が無効 となった とき。
(6)法 に よ り刑事責任 を追及 された とき。 (労 48 国際経営論集 No.37 2009
働契約法第39条)
次に掲げる事 由の‑がある場合 には、雇用単 位 は、30日前までに書面によ り労働者本人に通 知 し、又は労働者 に1か月分の賃金 を余分に支 払った後に、労働契約 を解除す ることができる。
(1)労働者が病 を患い、又は業務外の原 因によ り負傷 した場合 において、所定の医療期間満了 の後 に現業務 に従事す ることができず、また、
雇用単位 が別途手配 した業務 に従事す ることも できない とき。
(2)労働者が業務に堪えることができず、養成 ・ 訓練又は業務職位 の調整 を経て、なお業務 に堪 えることができない とき。
(3)労働契約締結 の際に根拠 とした客観的状況 に重大な変化 が生 じ、労働契約 を履行す るすべ をな くさせ 、雇用単位 と労働者 の協議 を経て、
労働契約 内容 の変更につ き合意 に達す ることが できない とき。 (労働契約法第40条)
労働者 に次に掲げる事由の‑がある場合には、
雇用単位 は、前二条の規定によ り労働契約 を解 除 してはな らない。
(1)職業病 の危害 に接触す る作業に従事す る労 働者で職位 を離れ る前の職業健康検査 を してお らず、又は職業病 の疑いのある病人で診断若 し くは医学観察期 間にある とき。
(2)当該単位 において職業病 を患い、又は業務 によ り負傷 し、かつ、労働能力 を喪失 し、又は 一部喪失 した ことを確認 された とき。
(3)病 を患い、又は業務外の原因により負傷 し、
所定の医療期間内にあるとき。
(4)女子従業員が妊娠期間、出産期間又は授乳 期間にあるとき。
(5)当該単位 において連続 して満15年勤務 し、
かつ、法定の退職年齢まで5年に満たない とき。
(6)法律及 び行政法規所 定のそ の他 の事 由。
(労働契約法第42条)0
次に掲 げる事 由の‑がある場合 には、労働契 約 は、終了す る。
(1)労働契約の期間が満 了 した とき。
(2)労働者が基本養老保険待遇 の法による享受 を開始 した とき。
(3)労働者が死亡 し、又は人民法院に死亡を宣 告 され、若 しくは失足宗 を宣告 された とき。
(4)雇用単位が法によ り破産を宣告 された とき。
(5)雇用単位 が営業許可証 を取 り消 され、閉鎖 を命ぜ られ、取 り消 され、又は中途解散す る旨 を雇用単位 が決定 した とき。
(6)法律及び行 政法規所 定のその他 の事 由。
(労働契約法第44条)
以上の規定は、労働者 の有責に基づ く雇用主 の労働契約解除権 を明確 に した ものである。 ま た、労働者の観 点か らみ ると、解雇 の事 由につ いて使用者 は法律 に基づ く証拠 をつ けて労働者 に説明す る必要があることになる。労働契約法 では、使用者 、労働者 ともに解雇 の法律的な事 由が明確 になった とい えるであろ う。
3.
人員削減 による解雇次に掲 げる事 由の‑があ り、人員 を20名以上 削減 し、又は20名 に満 たないけれ ども企業従業 員総数の10パーセ ン ト以上 を削減す る必要があ る場合 には、雇用単位 は、30日前までに労働組 合又は従業員全体に状況 を説明 し、労働組合又 は従業員の意見を聴取 した後に、人員削減方案 が労働行政部門に報告 され ることを経て、人員 を削減す ることができる。
(1)企業破産法の規定によ り更生をす る とき。
(2)生産経営に重大な困難 が生 じた とき。
(3)企業の生産転換、重大な技術革新又は経営 方式の調整によ り、労働契約の変更を経た後に、
なお人員削減 を必要 とす る とき。
(4)労働契約締結の際に根拠 としたその他 の客 観的経済状況 に重大な変化 が生 じた ことに起因 して、労働契約 を履行す るすべがな くなった と き。
人員 を削減す るときは、次に掲げる人員 を優 先 して継続雇用 しなけれ ばな らない。
(1) 当該単位 と比較的長い期間の固定期間労働 契約 を締結 しているもの
(2)当該単位 と無固定期間労働契約 を締結 して いるもの
(3)家庭 に他の就業人員がな く、扶養 を必要 と
す る老人又は未成年 を有す るもの
雇用単位 は、第1項の規定によ り人員 を削減 した場合 において、 6か月内に新たに人員 を募 集採用す るときは、削減 された人員 に通知 し、
かつ、同等の条件 において削減 された人員 を優 先 して募集採用 しなけれ ばな らない。 (労働契 約法第41条)
以上の規定によ り、雇用単位 が人員削減 によ る解雇 を行 う場合、労働組合又は従業員全体 に 説 明 し、意見を聴取 し、労働行政部門に報告す る必要がある。また、人員削減 を行 う場合 は、
(1)企業破 産法 の規 定 に よる更生、 (2)生産経 営 の重大 な困難、 (3)企業 の生産転換 、重大 な技 術革新 ・経営方式の調整 によ り、労働契約の変 更 を経 た後 で もなお人員 削減 が必要、 (4)客観 的経済状況に重大な変化 によ り労働契約 を履行 で きない、に限定 してい る。
さらに重要なのは、解雇する際の優先権のルー ル を規定 していることである。すなわち、解雇 の場合 、(1)勤務年数 の長 い固定期 間労働 契約 を締結 してい る労働 者、 (2)無 固定期 間労働 契 約 を締結 してい る労働者、 (3)家庭 に他 の就業 人員がな く、扶養 を必要 とす る老人 ・未成年が い る労働者 、を優先 して雇用 を継続 して、それ 以外の労働者 か ら先 に解雇す るルールである。
また、再雇用の場合で も同様 なルールが適応 さ れ ると明記 している。
なお、 日本 の労働 関連法では、 このよ うな解 雇 をす る際の優先権 のルール に関す る規定はな い。
4.
労働契約の解除の場合の労働組合への通知 義務雇用単位 は、一方的に労働契約 を解除す ると きは、事前に理 由を労働組合 に通知 しなければ な らない。雇用単位 が法律 もしくは行政法規の 規定又は労働契約 の約定に違反す る場合 には、
労働組合は、雇用単位 に是正す るよ う要求す る 権利 を有す る。雇用単位 は、労働組合の意見 を 検討 し、かつ、処理結果 を書面によ り労働組合 に通知 しなけれ ばな らない。 (労働 契約法第43
中国の労働契約法と人的資源管理 49
条)
以上の規定は、使 用者 が労働者 の労働契約 を 解 除す る場合 、労働組合‑通知す る義務が あ る こ とを規定 してい る。 さらに、労働組合 は、法 や 労働契約 に違反す る解雇 の場合、使用者側 に 是正 を求 める権利 があ る と定 めてい る。
なお、 日本 の労働 関連法では、使用者 が労働 者 の労働 契約 を解 除す る場合 、労働組合への通 知義務 はない。
第9節 解雇の場合の経済的保 障
雇用単位 は、法律 で規定 され た労働者 の労働 契約 を解 除す る とき、労働者 に経済補償 を支払 わな けれ ばな らない (労働 契約法第46条)。 す なわち、雇用主の契約不履行 に よる労働者 か ら の解 除 (労働 契約法第38条)、合意解雇 (労働 契約 法第36条)、業務 不適合 な どの よる合法 的 な解 雇 (労働 契約法第40条)、人員 削減 に よる 合法 的解雇 (労働 契約 法第41条)、期 間任期満 了な どによる解雇 (労働契約 法第44条)破 産等 の解雇 (労働契約法第44条) の場合 は、使用者 は解雇 した労働者 に経済的保 障 を支払 わなけれ ばな らない と規定 してい る。
経済補償 は、労働者 が当該単位 において業務 した年数 に従 い、 1年 を満 たす ご とに 1つ の月 賃金 を支払 う標 準 によ り労働者 に支払 う。 6か 月以上1年未満 である場合 には、 1年 として計 算す る。 6か月 に満 たない場合 には、労働者 に 半分 の月賃金 の経済補償 を支払 う。労働者 の月 賃金 が雇用単位 の所在す る直轄市又 は区を設 け る市級人民政府 の公布す る当該地 区の前年度 の 従 業員月平均賃金 の3倍 を上回 る場合 には、 当 該者 に経済補償 を支払 う標準 は、従業員月平均 賃金 の3倍 の額 に従 い支払 い、 当該者 に経済補 償 を支 払 う年数 は、最 高 で12年 を超 えない。
(労働契約法第47条)
す なわ ち、経済的補償 の金額 は、勤務年数満 1年 ごとに 1カ月の賃金相 当額である。ただ し、
6か月以上1年未満 の場合 は1年、 6か月末満 の場合 は、半月分 の貸金相 当額 である。 また、
50 国際経営論集 No.37 2009
労働者 の月賃金 が使用者 の所在す る地 区の従業 員月平均賃金 の3倍 を上回 る場合 には、経済補 償 は、従業員月平均賃金 の3倍 の額 で、経済補 償 を支払 う年数 は最高で12年 を超 えない。
さらに、使用者 が経 済的保 障の支払いを怠 っ た場合 、ペ ナルテ ィー として払 うべ き金額 の50
%以 上100%以下 の加 重金 を支払 わな けれ ばな らない (労働契約法第86条)0
ただ し、パー トタイ ム労働者 については経済 的保証が除外 され てい る (労働契約法71条)0
以上の よ うに、期 間満 了に よる解雇 な どの合 法的な解雇 もまた コス トがかか ることとし、で きるだけ解雇 しに くくす るとい う狙いであろ う。
なお、 日本 の労働 関連法では、 この よ うな解 雇 の場合 の経済的保 障 とい う規定はない。
第10節 労働協約
1
.労働協約 の締結企業従業員側 と雇用単位 とは、平等 な協議 を 通 じ、労働 報酬 、業務 時間、休息休暇、労働安 全衛生及び保 険福利等 の事項 につ き、労働協約 を締結す るこ とがで きる。 労働協約案 は、従業 員代表大会又 は従業員全体 の討論 に提 出 して採 択 しなけれ ばな らない。労働 協約 は、労働組合 が企業従業員側 を代表 して雇用単位 と締結す る。
労働組合 を確立 していない雇用単位 については、
上級 の労働組合 の指導 によ り労働者 の推薦す る 代表 が雇 用 単位 と締 結す る。 (労働 契約 法第51 秦)
企業従業員側 と雇用単位 とは、労働安全衛生、
女子従業員 の権益保護及び賃金調整 メカニズム 等 の専門項 目の労働協約 を締結す ることができ
る。 (労働 契約法第52条)
労働協約 は、従業員側 ・労働組合 と使用者平 等 な協議 の上、締結す る としてい る。 さらに、
労働協約は従業員大会の採決が必要である。よっ て、労働 協約 は使用者側 の一方的 な押 し付 けに よる形 は認 め られ ない。
2.
労働協約 の労働行政部 門への報告労働協約は、締結後に、労働行政部門に報告 ・ 送付 しなけれ ばな らない。 労働行政部 門が労働 協約文書 を受領 した 目か ら15日内に異議 を提 出 しない場合 には、労働協約 は、直 ちに効力 を生 ず る。法 によ り締結 された労働協約 は、雇用単 位及び労働者 に対 し拘束力 を有す る。業種性及 び区域性 の集 団契約 は、 当該地 区の当該業種及 び 当該 区域 の雇用単位及び労働者 に対 し拘束力 を有す る。 (労働契約法第54条)
労働 協約 にお ける労働報酬及び労働 条件等 の 標 準は、当該地 区の人民政府所定の最低標 準 を 下回 ってはな らない。雇用単位 と労働者 とが締 結す る労働契約 にお ける労働報酬及び労働条件 等 の標準 は、労働協約所定の標準 を下回っては な らない。 (労働契約法第55条)
労使 が締結 し労働 協約 は、労働行政部 門に報 告 しなけれ ばな らず 、労働 協約 での労働報酬 ・ 労働 条件等 は、最低基準 を下回ってはな らない
と規定 してい る。
3.
労働協約 の違反雇用単位 が労働 協約 に違反 し、従業員 の労働 権益 を侵害す る場合 には、労働組合 は、雇用単 位 に責任 を負 うよ う法 によ り要求す ることがで きる。 労働協約 の履行 に起 因 して紛争 が生 じ、
協議 に よる解決 が不調 である場合 には、労働組 合 は、法 によ り仲裁 を申 し立て、又 は訴 えを提 起す ることができる。 (労働契約法第56条)
本条では、労働協約 の違反 の場合 は、労使 の 協議 も しくは法 に訴 えるこ とがで きる としてい る。
現実には、 中国での労働 協約 の締結状況 は、
民間企業では低 い とい う現状がある。 労働 協約 の締結促進 が今後 の課題 であろ う。
第
11
節 労働 時間 ・休憩 ・休 日 ・休 暇1
.労働 時間 と休 日中国の法定労働 時間は、 1日の労働 時間が8 時間以 内、 1週 間の平均労働 時間が44時間以 内 と してい る (労働 法第36条)。 しか し、労働 法
が施行 され た95年3月 、週労働 時間 を短縮 して 40時間 とす る 「従業員 の労働 時間に関す る国務 院 の規定の改正」が出 され 、現在 この規定が施 行 されてい る。
法定労働 時間は、出来高払いの労働者 に も適 用 す る (労働 法第37条)。 ただ し、企業 は、実 情 に基づ き、標 準労働 時間の範 囲内で労働 時間 を設定す ることができるが、 1日の労働 時間は 8時 間 を超 えてはな らず、 1週 間の平均労働 時 間 は40時間 を超 えてはな らない。 (「労働 法」
の若 干 の条文 に関す る説 明(4)第36条お よび95 年3月 の国務院規定の改正) 以上の規定に よ
り、 1日8時間、週40時間の範 囲で、工場 な ど の事情 に合 わせ て柔軟 に労働 時間を決 めること ができる。
休 日は、労働者 に対 し、毎週少 な くとも1日 の休 日を保証 しなけれ ばな らない (労働法第38 条) す なわち、使用者 は労働者 に毎週少 な く
とも1回、24時間の間断ない休息 を保証 しなけ れ ばな らない。
例外 として、企業が生産上の特徴 に よ り、以 上 の よ うな労働 時間 と休 日が実施 で きない特殊 な場合 、特殊 な労働 時間制度 として、労働行政 部 門の認 可 を経 て、その他 の労働並びに休憩及 び休 日の方法 を実施す ることができる (労働法 第39条)。 定 時労働 時 間制 の実施 が適 さない、
例 えばタクシー運転手、森林巡視員 な ど従業員 については、国務院主管部 門に提 出 し、認 可 し た場合 には裁 量労働 時間制 を実施す ることがで き る と規定 してい る (「労働 法」 の若 干 の条文 に関す る説 明、第39条)。
2.
労働 時間の延長使 用者 は、生産経営の必要 に よ り、労働組合 及 び労働者 との協議 を経 た後 、労働 時間 を延長 す ることがで きるが、通常、1日につ き1時間を 超 えてはな らない。特別 な事 由に よ り、労働 時 間の延長 を必要 とす る場合 は、労働者 の身体の 健康 を保 障す ることを条件 として、1日につ き3 時間 を超 えない範 囲で労働 時間を延長す ること がで きる。 ただ し、 1か月 に36時 間 を超 えては 中国の労働契約法と人的資源管理 51
な らない。 (労働法第41条)
以上の規定によ り、中国での残業時間は通常 1日1時間、特別 な場合1日3時間、 1ケ月36 時間以内 とい うことになる。
ただ し、 以下の事 由がある場合、労働 時 間 延長の特例が認 めれれ る。
(1) 自然災害、事故又はその他の事 由が発生 し、
労働者の生命、健康及び財産の安全が脅か され、
緊急 に処理す る必要がある場合
(2)生産設備 、交通運送路線又は公共施設 に故 障が発生 し、生産及び公衆の利益 に影響 を及 ぼ し、速やかに応急処置 を しなければな らない場
令
(3)法律、行政法規が規定す るその他 の事 由が ある場合 (労働法第42条)
中国では、法律上の残業時間は、 1日3時間、
1か月36時間以内に制限 されてい るので、 日系 企業において も残業時間管理 に注意 を要す る。
3.
年次有給休暇労働者 は、連続 して1年以上勤務 した場合 、 年次有給休暇を とることができる。その具体的 な内容 については、国務院が規定す るとしてい る。 (労働法第45条)
なお、実際の中国 日系企業の年次有給休暇は、
勤務年数が1‑10年の場合5日以上、10‑20年 の場合10日以上、20年以上の場合14日間程度が 標準のよ うである。
第
1 2
節 賃金1
.賃金 に関する原則賃金 は、同一労働 同一報酬 を原則 とす る (労 働法第46条)。使用者 は、 自主的に賃金 を決 定 す ることがで きる (労働 法第47条)。 以上の規 定によ り、中国では、同 じ仕事 を している労働 者は同 じ賃金 を支払 うとい う原則 を定めている。
また、中国は社会主義国であるが、賃金 の決定 については、企業が 自主的に行 うことができる
してい る。
国は、最低賃金保 障制度 を実施す る。最低賃 52 国際経営論集 No.37 2009
金の具体的基準は、省 、 自治区又は直轄市の人 民政府 が規定 し、国務院に届 け出る。使用者 が 支払 う労働者の賃金は、現地の最低賃金基準 を 下回 ってはな らない。 (労働 法第48条)最低賃 金 には、基本賃金、賞与、手当及び補助金が含 まれ るが、時間外労働 の割増賃金、特殊 な労働 条件下における手 当、国の規定す る社会保険及 び福利 は含 まない。 (「労働法」の若干の条文に 関す る説明、第48条)
賃金は、通貨 によ り毎月労働者本人に支払わ なけれ ばな らない (労働 法第50条)。本条 にお ける 「通貨 によ り」は、現物、有価証券な どで 支給す ることを除外す る。 「毎月支払 う」 は、
毎月少 な くとも1回賃金 を支払い、月給制 を実 施す る単位 においては、賃金 は必ず毎月支払わ なければな ら。 時間給制、 日給制、週給制 を実 施す る単位 の賃金 は、 日又は週 ごとに支払 うこ ともで き、全額 を支払 わ なけれ ばな らない。
(「労働法」の若干の条文に関す る説明、第50条) 中国での実際の 日系企業の給与体系は、基本 給、各種手 当、お よび賞与で、月給で支払われ る型が一般的である。 なお、中国では、手 当の 種類 が多い とい う特徴 がある。
2.
割増賃金以下の事 由のいずれか一に該 当す る場合、使 用者 は、次の各号に掲 げる基準に基づ き、労働 者 の通常の労働 時間の賃金 よ り高額の割増賃金
を支給 しなけれ ばな らない。
(1)労働者 に労働 時間 を延長 させ る場合 、賃金 の150%を下回 らない賃金報酬 を支給す る。
(2)休 日に労働者 に勤務 させ 、 かつ 、代替休暇 を手配できない場合、賃金の200%を下回 らない 賃金報酬 を支給す る。
(3)法定休暇 日に労働者 に勤務 させ る場合 、賃 金 の300%を下回 らない賃金報酬 を支給す る。
(労働法第44条)
中国の 日系企業では、 この法定割増賃金の下 限を残業手当、休 日手当 として支払 っている型 が一般的である。
第13節 労使関係 と労働紛争処理
労働組合 については、労働組合法が規定 して いる。労働組合法は、1992年 に制定 され、2001 年 に改正 した。従業員が25名以上の企業、事業 単位 は、 労働 組合 を設 立 しなけれ ばな らない (労働組合法第10条) とし、労働組合 の設 立義 務 を明文化 してい る。 また、従業員が200名以 上の企業、事業単位 の労働組合は、専従の労働 組合主席 を置 くことができる (労働組合法第13 条) としてい る。企業 ・事業別労働組合 は、上 級の労働組合連合組織 によ り指揮、監督 を受 け る (労働組合法第9条) としている。企業は、
労働組合の活動経費 として全従業員の賃金総額 の
2%
を労働組合 に交付す ること (労働組合法 第9条)、お よび労働組合 の活動場所 を提供 し なければな らない (労働組合法第45条) と規定してい る。
中国での実際の労働者 の労働組合加入率(5)
をみ る と、公有企業は66.8%、民間企業 は59.4
%である。 なお、 日系企業の場合は、民間企業 の平均 よ り高い水準にあるよ うである。
中国の労働組合員の特徴 として指摘できるの は、企業の管理職 、経営者 も労働組合員である ケースがあることである。 中国での労働組合は、
一般的に企業経営においても大きな影響力を持っ ている。
使用者 と労働者 との間に労働紛争が発生 した 場合、当事者 は、法 によ り調停 もしくは仲裁 を 申 し立て、又は訴訟 を提起す ることができ、協 議により解決す ることもできる (労働法第77条)
労働紛争が発生 した後、当事者 は、当該企業 単位 の労働紛争調停委員会 に調停 を申 し立てる ことができる。調停が不調であった場合 におい て、当事者 の一方が仲裁 を求めた ときは、労働 紛争仲裁委員会に仲裁 を申 し立てることができ る。 当事者 の一方 は、労働紛争仲裁委員会 に直 接仲裁 を申 し立てることもできる。仲裁判断に ついて不服である場合 は、人民法院に訴訟 を提 起す ることができる。 (労働法第79条)
1
.企業単位内の労働紛争調停委員会使用者 は、その企業単位 内に労働紛争調停委 員会 を設立す ることができる。労働紛争調停委 員会は、従業員の代表、使用者の代表及び労働 組合の代表 によ り構成 され る。労働紛争調停委 員会の主任 は、労働組合の代表が担 当す る。労 働紛争が調停 を経て合意に達 した場合、当事者 は これ を履行 しなけれ ばな らない。 (労働法第 80条)
中国の労働紛争 において、重要な役割 を担 っ ているのは、企業内の労働組合である。 中国で は、労働組合が労働紛争 を解決す る大きな役割 を果た してい る。
2.
労働紛争仲裁委員会労働紛争仲裁委員会は、労働行政部門の代表、
同 レベルの労働組合の代表、お よび使用者側の 代表 (政府 が指定す る経済総合管理部門又は関 係 の社会団体の代表) によ り構成 され る。労働 紛争仲裁委員会の主任 は、労働行政部門の代表 が担 当す る。 (労働法第81条)
労働紛争が企業単位 内での労働紛争調停委員 会 で解決できない場合 は、よ り上位 の レベルで の労働紛争仲裁委員会での仲裁 となる。
3.
仲裁仲裁 を求める一方の当事者 は、労働紛争の発 生 日か ら60日以内に労働紛争仲裁委員会に対 し て書面により申立てを提出 しなければな らない。
仲裁判断は、通常、仲裁 申立てを受領 してか ら 60日以内に しなけれ ばな らない。仲裁判断に異 議 のない場合、当事者 は、 これ を履行 しなけれ
ばな らない。 (労働法第82条)0
労働紛争の当事者が仲裁判断に対 して不服で ある場合、仲裁 を受領 した 日か ら15日以内に人 民法院に訴訟 を提起す ることができる。一方の 当事者 が法定期間内に訴訟 を提起せず、かつ、
仲裁判断を履行 しない場合、他方の当事者 は、
人民法院に強制執行 を申し立てることができる。
(労働法第83条)
労働紛争 が労働紛争仲裁委員会で も解決でき 中国の労働契約法と人的資源管理 53
ない場合、民法院な どの司法、裁判所での判 断 となる。
4.
労働協約 に関する紛争解決労働協約 の締結 に起因 して紛争が発 生 し、 当 事者の協議 によ り解決できない場合は、現地 の 人民政府労働行政部門は、関係各方面 を組織 し て調整 し、処理す ることができる。労働協約 の 履行 に起因 して紛争が発生 し、当事者 の協議 に よ り解決できない場合 は、労働紛争仲裁委員会 に仲裁 を申 し立てることができる。仲裁判断 に ついて不服である場合 は、仲裁判断書 を受領 し た 目か ら15日以内に人民法院に訴訟 を提起す る
ことができる。 (労働法第84条)
5.
労働監査県 レベル以上の各 レベルの人民政府労働行政 部門は、法によ り使用者の労働 に関す る法律 、 法規の遵守の状況について、監督検査 を行い、
労働 に関す る法律 、法規 に違反す る行為に対 し て、 これ を制止 し、かつ是正 を命 じる権限を有 す る (労働法第85条)。
各 レベルの労働組合は、法によ り労働者 の適 法な権益 を擁護 し、使用者の労働 に関す る法律、
法規の遵守状況 について監督 を行 う。いかなる 組織又 は個人 も、労働 に関す る法律 、法規 に違 反す る行為 について、告発 し、及び告訴す る権 利 を有す る。 (労働法第88条)
以上の規定によ り、中国では各企業の労働 状 況 に関 して、国や地方 レベルでの労働監査のみ な らず、労働組合 に労働監査の権限を労働法 に 明記 してい るとい う点が注 目され る。
第14節 派遣労働
中国では、北京、天津、上海 、広東 な どの都 市部で、派遣労働者が増 え、労働者派遣企業 も 多 く存在 してい る。派遣先の業種 としては、銀 行 、ホテル、病院、家政、運輸 な どのサー ビス 業や建設業、お よび製造業‑の派遣が多い。農 村か らの出稼 ぎ労働者、解雇 された労働者、新 54 国際経営論集 No.37 2009
卒者、お よび一部の専門人材が派遣社員 になる ことが多い。 中国の派遣企業は、 3つのタイプ がみれれ る。第1は、総合人材会社で、労務派 遣のみな らず職業訓練、職業紹介、請負 な どの サー ビスを提供す る企業である。第2は、国営 企業が解雇 した労働者の再就職 をす るために設 立 した人材派遣会社である。第3は、出稼 ぎ労 働者 を対象 とす る派遣機構 である。そのほ とん どが政府 の指導 を受 けている機構で、出稼 ぎ労 働者 に基本的な職業訓練 を受 けさせて、労働者 を派遣す る(6)。
中国では、派遣労働者 の増加 による社会的問 題が顕著になってきてい ることもあ り、労働契 約法では、新たに派遣労働 の条文 を設 けて、派 遣労働 を規制 してい る。
1.派遣企業
労働契約法では、中国で比重 を増 している派 遣労働 についてかな り厳格 に規制 している。
派遣労働単位 は、会社法の関係規定によ り設 立 され なければな らず、登録資本 は50万元 を下 回ってはな らない。 (労働契約法第57条)
派遣労働者 の派遣会社 は中国会社法 に沿って 設立 され、会社規模 も登録資本が50万元以上 と 規定す ることによ り、小規模 な悪質な派遣企業
を規制 してい る。
派遣労働 は、一般 に、臨時的、補助的又は代 替的な業務職位 において実施す る。 (労働契約 法第66条)
労働契約法によ り派遣が認 め られ る分野につ いては、必ず しも法的に厳密 に規定 されてい る のではな く、 「一般 に、臨時的、補助的又 は代 替的な業務職位」 とあいまいな表現 となってい
る。
2.
派遣労働者 と派遣企業 との労働契約 派遣労働単位 は、 この法律 にい う雇用単位で あ り、雇用単位 の労働者 に対す る義務 を履行 し なけれ ばな らない。派遣労働単位 と被派遣労働 者 とが締結す る労働契約 には、所定の事項 を記 載 しなければな らないほか、被派遣労働者の労働者使用単位及び派遣期間、業務職位等の状況 を記載 しなければな らない。
派遣労働者 は派遣労働単位企業 と労働契約 を 締結す ること、かつ労働契約 は書面で行い、契 約の条項は通常の労働契約事項 に加 えて、派遣 労働者の派遣先使用者 と派遣労働者 との間の派 遣期間、業務職位等 を記載 しなければな らない としている。 中国での派遣労働者の労働契約は、
派遣 され る使用者 との契約ではな く、派遣会社 (派遣労働 単位) との労働 契約 であることの注 意す る必要がある。
3.
派遣労働者の労働契約期間 と報酬派遣労働単位 は、被派遣労働者 と2年以上の 固定期間労働契約 を締結 し、月 ごとに労働報酬 を支払わなければな らない。被派遣労働者 が業 務のない期 間にあるときは、派遣労働 単位 は、
所在地の人民政府所定の最低賃金標準に従い、
当該者 に月 ごとに報酬 を支払わなけれ ばな らな い。 (労働契約法第58条)
派遣労働 単位 と派遣労働者が締結す る労働契 約 は、 2年以上の期間の固定労働契約 を締結す ることが義務づけ られている。 さらに、派遣労 働者 に対 して、業務のない月であって も最低賃 金 に相 当す る賃金 を月給 として支払わなけれ ば な らない と規定 している。 よって、派遣労働者 を正 当な理 由がな く2年以内に解雇す ること、
また派遣先の仕事の都合 による賃金未払いを厳 しく禁止 している。以上か ら、本条は不安定な 存在である派遣労働者の身分 を改善 させ ること を 目指 した ものであろ う。
4.
派遣労働単位 と労働者使用単位 との契約 派遣労働 単位 の労働者派遣 は、派遣労働形式 に よる労働者使用 を受 け入れ る単位(労働者使 用単位)と派遣労働合意 を締結 しなけれ ばな ら ない。派遣労働合意には、派遣職位及び人員数、派遣期間、労働報酬及び社会保険料の額 と支払 方式並びに合意違反 に係 る責任 を約定 しなけれ ばな らない。
また、派遣労働使用単位 は、業務職位 の実際
の必要に基づ き派遣労働単位 と派遣期間を確定 しなければな らず、連続す る労働者使用期間を 分割 して複数の短期派遣労働合意 を締結 しては な らない。 (労働契約法第59条)
以上の よ うに、派遣労働 の場合、派遣労働単 位 と労働者使用単位 との間で必ず契約 を締結 し
なければな らない としてい る。
5.
派遣労働者か らの不当な費用徴収の禁止 派遣労働単位 は、派遣労働合意の内容 を被派 遣労働者 に告知 しなければな らない。派遣労働 単位 は、労働者使用単位 が派遣労働合意 に従い 被派遣労働者 に支払 う労働報酬の上前 をはねて はな らない。派遣労働単位及び労働者使用単位 は、被派遣 労働 者 か ら費用 を収受 してはな らない。 (労働 契約法第60条)
以上の よ うに、派遣労働 単位お よび労働者使 用単位 は、被派遣労働者 か ら不当な費用や ピン
‑ネ をす ることを禁止 してい る。
6.
労働者使用単位 に対する規制労働者使用単位 は、派遣労働単位 を設立 し、
当該単位又は所属単位 に労働者 を派遣 してはな らない。 (労働契約法第67条)
労働者使用単位 は、被派遣労働者 を更に他 の 雇用 単位 に派遣 してはな らない。 (労働契約法 第62条)
派遣労働者の派遣先使用者である派遣受 け入 れ企業 (労働者使用単位)は、当該単位又は所 属単位 に労働者 を派遣す るために派遣労働 単位 を設立す ること、お よび派遣労働者 を更に他の 雇用単位 に派遣す る事 を禁止 してい る。
7.
派遣先使用者企業の連帯責任労務派遣 に関 して法律の規定に違反 した場合 には、派遣業者 が所定の関係 主管部門が ら是正 を命 じられ るか、事案が重大である場合には罰 金 を科 し、かつ営業許可証 を取 り消 され る。 さ
らに、被派遣労働者 に損害をもた らした場合 に は、派遣業者及び労働者使用単位 は、連帯賠償 中国の労働契約法と人的資源管理 55
責任 を負 うとしている。 (労働契約法第92条) すなわち、派遣業者が派遣労働 に関 して労働 契約法 に違反 した場合、派遣 を受 け入れ る側 も 労働者 に対す る損害賠償 について連帯責任 を負 うとい う、派遣先使用者企業 に対 しても重い責 任 を定めている。
8.
派遣労働者の労働組合への参加権被派遣労働者 は、派遣労働単位又は労働者使 用単位 において法によ り労働組合に参加 し、又 は これ を組織 し、 自身の適法な権益 を維持 ・保 護す る権利 を有す る。 (労働契約法第64条)
本条は、派遣労働者 の労働組合加盟権、お よ び派遣労働者 の団結権 を明確 に認 めてい る。
第15節 パー トタイム (非全 日制)労働
パー トタイム (非全 日制)労働者使用 とは、
時間による報酬計算 を主 とし、労働者 の同一の 雇用単位 における通常の平均の1日の業務時間 が4時間を超 えず、 1週の業務時間累計が24時 間を超 えない労働者使用形式である。 (労働 契 約法第68条)
パー トタイム労働者使用に従事す る労働者は、
1つ以上の雇用単位 と労働契約 を締結す ること ができる。ただ し、後 に締結 した労働契約 は、
先 に締結 した労働契約 の履行 に影響 してはな ら ない。 (労働契約法第69条)
パー トタイム労働者使用の時間による報酬計 算標準は、雇用単位 の所在地の人民政府所定の 最低時給の標準 を下回ってはな らない。パー ト タイム労働者使用の労働報酬計算 ・支払周期は、
最長 で15日を超 えてはな らない。 (労働 契約 法 第72条)
労働 契約法では、 1日の労働 時間が4時間以 下で1週の労働時間が24時間以下の時間給 に よ る労働 をパー トタイム (非全 日制)労働 として 特別 に規定 している。パー トタイム (非全 日制) 労働者 は、 口頭 に よる労働 契約 を認 め るこ と
(労働契約法第69条)、試用期間の設定はできな い こと (労働契約法第70条)、複数 の雇用単位 56 国際経営論集 No.372009
と雇用契約 を締結できること、賃金額 は最低賃 金 を上回ること、賃金支払 は1ケ月2回以上で
あること、な どを規定 している。
おわ りに‑外資企業の対応
中国の新たな労働契約法は、 日系企業の現地 経営に大きなインパ ク トを与える可能性がある。
新 しい労移動契約法に対す る 日系企業の対応 に ついてみてみ よ う(7)。
第 1は、最初の労働契約 の更新時 (2回 目の 労働契約時) にほ とん どの労働者 を解雇 して、
新 しい労働者 を改めて雇い入れ るとい う施策で ある。 しか し、中国では、近年若年労働者 を大 量に採用す るのは困難 にな りつつ ある。 また政 府 の立法趣 旨か らして、 2回 目の労働契約 をほ とん ど拒否す るといった姿勢には問題 がある。
さらに、 日系企業の現地経営 とい う視点で も、
特に工場 ・生産現場での技能 の移転、熟練形成 か ら、 この措置 に問題 が多い。
第2は、労働者 を労働者派遣やパー トタイム 労働 といった非正規労働者 に転換 してい く施策 である。 中国では、近年労働者遺業事業が拡大 してお り、現実にかな り数 の派遣労働者 が存在 している。民間の派遣企業のみな らず、公的性 格 を持つ派遣事業 もあることか ら、派遣労働者 の活用 も考 え られ る。 しか し、 日本 の事例が示 しているよ うに、派遣労働者の大幅な活用には 限界があ り、企業内の技能形成、熟練形成 にも 問題 がある。
また、労働契約法では、派遣労働 に関 して規 制 を している点 も注意すべ きである。労務派遣 業者 は2年以上の期間の定まっている労働契約 を締結 しなければな らな く、月 ごとに労働報酬 を支払わなければな らない。派遣労働者が業務 のない期間にあるときは、労務派遣業者 は、所 在地の人民政府所定の最低賃金標準に従い、当 該者 に月 ごとに報酬 を支払わなければな らない (労働契約法58条) と、派遣業者 の義務 を定め てい る。 さらに、派遣業者 が労働契約法に違反 した場合 の厳 しい規定がある。労務派遣業者が