一︑労働法の基本関係
二︑労働関係の分析
三︑労働関係の成立と労働契約
四︑労働関係の内在的秩序と労働契約
語 五︑結
喝 一労働怯の基本関係
i︑民放の予想する社会ほ\独立︑自由︑平等な人と人との関係である︒それは︑現実のあらゆる差別を捨象せ ︵ 1︶ る無色透明な﹁人格者﹂︵Pers呂︶というような概念を基調となすもので︑かのカント︵舛ant︶やルソー︵R害琵aエ
のいわゆる個人主義的理想婁碗に胚胎するものである︒しかし︑何人にも遠屈しうる最大公約数的な︑人格者概念
を中心とする生括関係町如きは︑これを理念としてほ描きえても︑実在するところのものではない︒従って︑かか
る抽象的社会を想像する民法からは︑到底︑それと興る実在の生蒋関係を規定することほ不可能である︒
しかるに︑冥在の生清閑係のうち︑特に労働敢引の対象となる︑いわゆる﹁労働関係﹂︵A旨ts扁旨賢nis︶ 軋抹 ︵ 2︶ 多種多様のものがあり︑ことに︑わが国のそれほ各国とも異った特質を有する︒しかし︑この多様性︑特殊性のう.
労働契約と労働関係
労働契約と螢働関係
田 住 男
二 第二十六巻 第二号
や︑展も代表的︑典型的場合は︑近代的企葵における盟本家と労働者の間にみられる関係である︒従って︑かの︑
いわゆる﹁理念型﹂としての労働関係を定立して︑洪律的︑体系的処理を与えるためにほ︑労働法は右の代表的︑
典型的高藤を捉えて︑その中に顕現する理想朋︑概念的な特質を考察しなけれはならない︒しかるに︑この種の労
働関係の著しい特質ほ︑その具体朋内容が︑個々の労働者の意思と関係なく︑最初か.ら山股的に決定せられている
という点にある︒民放理論に従えば︑貸銀も労働時間も︑契約当事者たる労働者の一人一人が︑資本家と対等に自
由な意思の合致によつて決定する︒属洪の﹁魔傭契約﹂でほ︑その内容は当事者これを知り︑かつ︑欲するが故に
その効力を発するという考え方である︒しかるに︑現実の労働関係においては︑そのれうな七とほ全くみうけられ
ない︶その具体的内容は︑資本家たる乳用潜が一方的に︑給与規程︑就業規則︑或は服務規律を以て決定するか︑
しからずんば労働協約を以て決定するを通常とする︒すなほち︑使用者が絶対優勢なる地佗を占め︑労働者との問
に︑実質上︑支配と従属の関係が存在んている事実ほ否定しえないところである︒
このよう芸えて︑ドイツの法学者が容芸勤労働関係に注目したとき︑そこ監上げた理論が﹁従属的労齢﹂
︵die等買掛geAr訂it︶である︒藍本主義経済の発展に伴つて︑他人のために労働を提供する者ほ︑大企業舶撤
の極めて僅少なる部分檻つ十て︑量的労働を供給するにとどまるものとなれば︑.彼らの労働ほ独立にほ社会的効兵
を発揮しえなくなり︑専ら使用薯の緒療命令に従わざるをえなくなる︒のみならず︑
位の懸絶が次第に甚しくなるので︑労働者ほ一層従属的地梗軋たたざるをえない︒そこで︑このように︑使用者に
従属してその指揮命令紅よつて労働すべき関係︑すなはち従属的労働関係という特色を捉えて︑ここから︑労働法
の対象となる生活関係を洪的に構成せんとするのが︑今日︑多くの学者に共通の廉慶となつている︒
すなはち︑このような従属関係において給付される労働は︑もはや民法の契約概念によつて規律すべき関係とは
よる奥約の形式をとつても︑エの契約によつて導き出される労働関係は︑もはや︑戌凍原理では賄いきれない支配
︵4︶ 従属の関係である︒ここから︑かの﹁鎮働契約﹂へA首eit害己ag︶の概念は生れる︒それは︑民法の契約理論をこ
こにもちこむことの︑いかに見当獲いであり︑いかに蚤大な誤謬をおかすものであるかが論議せらるるに従い︑層
僻契約から区別するため軋たてられた新概念である︒∴わが労働基準法が第二賓監新しく労働契約の見出を掲げて︑
成文法上はじめて︑この程の藤念を明発したこ〃﹂も︑′右のよ㌢な学問的立場に連るものである︒このように︑従属
的労働関係のために行われる屈傭の限宋的港形式が労働契約であり︑真働契約を中心とする封働契約関係こそは︑
たしかに︑・労働漁の基本的関係である︒ よはどその趣きを異虹したものでなければならな′い︒打とい使用者とめ関係ほ︑その成耳の点からみれば︑
労働契約と労働関係 ︵l︶川島﹁民法の概念﹂民法講義 第一巻︵昭三ハ︶四貞以下参照 ︵2︶わが国の労働関係にまつわる前近代的性格の指摘ほ︑末弘﹁労働関係の複雑性﹂労働法のほなし︵昭二ご︶四二衰以下
参照
︵ヱSi註賢er・Gru訃音desArbe旨邑tsS﹂:f・古妻﹁労働の従属性﹂法律タイムス 苧七 加藤﹁労働の従
属性﹂法学論叢 五五巻五こハ
︵4︺﹁市民法原理を修正する統劇的立法攣皿のための法原理ほ︑法的基礎菟噴に対する強い反省の穿求であるじかかるもの
として︑まず︑ローーマールによつて労働契約が捉えられる︒やがて︑ローーマールの抽象的な労働契約概念の批判
として︑歴史的概念たる従属労働の検討から︑宙民法的人格者に対する労働者像の分析となり︑\労働契約から労働協
約へと概念ほ発展する︒﹂沼田﹁労働法学綱要﹂二二頁参照︒
第二十六巻・第二号 四
こ︑ところで︑従糸の支配的学説は︑企業者︑労働給付義務者問に︑労働蹄係存在の有無を決定するものは︑ひ
とり︑労働契約のみであると説く︒この見解紅従えば︑労働関係とは労働契約関係である︒それは︑労働契約によ
︵1︶
って発生する債権関係であり︑その本質的内容は︑労働給付義務の引受であるといわれる︒従って︑通説によれば∴労働契約に基因せざる一切の活動関係は︑労働盤上の意義における労働関係とはならない︒これを﹁既発関係﹂
︵野sc試買g呂gS諾旨賢nis00エとよび︑或はまた﹁事実上の労働関係﹂︷訂ktiscFe Arbeit等er訂−tnisse︶と名づける
のも︑その趣旨とするところは︑いずれも︑労働契約に琴つく淡得関係︵労働添上の労働関係︶から明確な区別を
設けるためである︒
しからば﹂風説の︑このように厳格な態度は︑いかなる根拠によつて導かれたものであろうか︒通鋭の見解をめ
ぐつて︑すでに早く異説があり︑論議は社会政策ないし法律磯の基本問題にふれて展開せられたところである︒こ
の間題をめぐつての対立は︑自由経済を絶対的軋形成せんとする立場と︑︶完全なる白由経済は不可能であり︑また
自由な労働契約思想も誤れる前拉にたつてとを承認する立場との抗争であつたともみられる︒
その前者たる︑自由経済の絶対的形成に努める立場ほ︑常に︑労働関係結合の原理とtて︑必ず労働契約を前挺
となすべきことを主張した︒このことほ︑周知の賓討としての﹁計算可能性の要素﹂︑とともに作用すべしとする資
本制経済秩序の本質に適合している︒契約蔽おいては︑相互の権利童務を確実虹規癒しうるが故に︑右の密語は広
く満足せしめられるであろう牒何故なら︑単に財産取引に酪してのみでなく︑労働契約をも計めて︑﹁契約は守ら
︵2︶ るべきである﹂︵pactas呂tSer遥nda︶という原理が︑経済における計算可能性の.期待を導くと考えられてよいか
らである︒
これに対して︑その後着たる反対の見解は︑絶対的な自由経済の可能性を廉い︑かつ︑自由な労働契約思想も誤
働契約を必穿となすやの点について他人の安住を決定する︒
労働契約と労働関係 れる前提に立脚するものとなすことは︑すでに指摘したところである︒これによれば︑﹁労働権レ︵Recどa已・A↓訂ヱ を実現すべき唯心の可能性は︑ただ︑労働関係の中にのみ布衣する︒労働関係は労働者の有する唯一の資本=労働 力が︑そこに投入せられ︑かつ︑労働者の仝生活上の地位が英魂せしめられるところである︒労働関係こそは︑労 働者が社会的生産の関与者たることを有効ならしめる冬めに︑その唯一ゐ資本〃労働力を利用する形式である︒か かる特徴的な見解にとつては︑労働契約は労働関係に対して董もその基本的前提たることを意味するものではな い︒いな︑却て︑労働契約は︑一定労働関係の具体化の手段として︑二稜の形成的作用を組当する軋すぎないもの ︵ 3︶ である︒
ところで︑このような論争は︑一見︑純理上の間飽に関する如くであるが︑その有する夷際上の意義には︑衰過
しぇ庵い盗大なものを含んでいる︒い革労働法の基本関係を労働契約から補足する通説の立場に従って考察する
とき︑′次の各場合紅ついての英際問題はいか町琴解せられること守なるであろうか︒
その一は︑すべての労働法規範ほ契約的基礎を有する清勤関係の上にのみ︑その効力を及ぼすと考えられる点に
っいてである︒もし︑労働契約のみが労働関係を法律関係として基礎づける地佗にあるものとすれば﹂労働契約の
欠映せる場合には︑労働協約規範は寛にL﹁審真上の労働関係﹂を理解し︑把握しえないごととなるほずである︒し
かし︑このことは琴英と全く仙致しない帰結である︒労働協約当事者はいかなる場合にも︑労働協約の効典を労働
契約の存在に紫らしめようとは欲していない︒こやような掛態は︑例ゝ蒜︑労働契約の無効の場合転も発生する︒
すでに職蓼において労働が開始継続されたる場合に︑﹁労働契約なき就業の企発着に対する法律関係如何﹂という決
盤的な関越となつて現われる︒しかも︑かか.る英際問題は︑窮極において︑労働関係に基づく語東棟の行使には労
五
六 第二十大巻 第二号
その二は︑労働保護法の規定は︑労働契約の存在を無視して︑職場における既発の事実に目榛をおく点について
セある︒通説の立場に従えば︑労働契約なき労働関係や契約の無効なる場合の恐察上の労働関係に対して︑労働基
準汝を通用し︑かつ︑労働朗合洪の救済手続を与える法学的説明が困難である︒
このように考察するとき︑愚説の見解には右の困難をも矛借なく統﹂的伝説明す甘塩論が欠けているのではない
︵4︶
か︒このような気持のもとに︑労働契約と労働関係との関連を︑特に従来からの通説に対立する立場に拠って反省 ︵ 5︶ せんとするのが本稿の目的である︒しかし︑ここで紘︑率直軋︑協働関係をそれ菖体として把挺せんとする立場を
紹介し︑かつ批判しっつ︑㌻厄の結論を述べてみたいと思う︒
労働関係の分析トノ
l︑労働関係の連結原理として︑常に︑労働契約を問題とする通鋭的立場に対して︑葦衝からこれと対立する見解 ︵l︶<g−.N.B.Hgk・ヨpp邑eyゝe≡宍FdesA計i−sre蔓s﹂や裟賢一JS・還買い舛ask㌣ロerscgAr訂≡︒︒ぎー器N︸
S.︼ぴ叫P戸a.m.
︵2︶﹁契約ほ守らるぺきである﹂という考え方は︑近代初期の自然法学者たちにみられる普通の態度である︒恒藤﹁契約﹂
岩波︑倫理学十四冊一四頁
︵3︶<箪 N●P一芸ck・ヨpp誓d蔓a・a・〇・監・Hu S﹂−−芦
︵4︶この意味で問題の捉起を試みたものとして拙稿二労働法の対象となる生活関係﹂香川労働時報 第三巻四号
︵5︶宅i−Fe−mM2腑.ロasAr訂its竃邑tロ・Sこや忘 本稿の﹁労働関係の分析﹂ほ本番に負うところが最も多い︒
す︑濱︑みは︑争憲賢あるとい老ければな賢いbむしろ︑葺︑豪実の労空清において︑人間の労賢
利用がいかなる形式を以七始まるかを眺めなければ軋ら恕い︒以下︑この点空裔の場合に分けて考察をサすめる
こととする︒
出 自己固有の権利範囲において首己の労働力を利用する形式 例えば︑薪採り︑気まぐれ仕事︑小説の執筆︑
︵2︶
機械の発明︒かかる形式ほ︑民法上の問題となつても︑労働添上ほ仝く緻密昧である︒坤 自己の労働力を利用する形式に対して︑他人の労働力を利用する形式は全く対立する︒これは︑現代経済・の
要求紅応じてぃさらに岐かれて の他人の労働力の利用が他人の権利範囲匿おいて行われる場合と 何日己の権利
範囲払おいて行われる場合との二形式を生む︒
他人の権利範囲において︑他人の労働力を利用することほ︑山般的にほ例外に属する︒労働力の処分を労働義務
薯の権利に叫任したる場合においてほ︑せ労働読務者は従属労働に従事するものでほない︒彼は︑労働義務の引受に
も拘らず︑自主的に労働時間や労働期間を決選しぅる︒
民法ほ︑労働量祷の引受に関するかかる形式として︑二檻の債権関係を規定している︒
︵3︶ 何 語負契約 論食入は契約の目的たる仕雷を完成すべき安住を負う︒すなほち︑請嚢契約の問題点ほ︑具体的
個別的に給付すべき﹁仕事の結果﹂︵Leist呂讐fO−讐︶であ葛︒この給付ほその精兵については注文者によつて予定
せられているが︑履行の終了についでは︑注文潜の指示とほ別個の時期に泳いて︑独立しても行われうる︒労働義
七 労働契約と労働関係 行うもの 的前掟 ほ︑自由な労働契約の思想が誤れる前提笹立脚するど指摘する︒この見解においては︑労働契約が労働関係の基本
た た る
る こ にと す ぼ
ぎ 許 な√.さ
いう、る 0)ベ 従って︑ここで淀︑労働関係の概念に到達するために︑これを契約概念から誘導せんと Yもない︒労働契約は︑ただ︑二冠労働関係の具体化の手段として︑一線の形成作用を
第二十六巻 第二号
溶着にとつて︑あ牒醍の従属性を生ずるとしても︑それほ殆んど人格的なものではなく︑仕事の観斯から条件づけ
られたもの軋すぎない︒従って︑請負契約は債権契約上の効果を生ずるけれども︑労働汝上の規制ではありえな
い︒
㈲ 雇傭契約 民法の雇傭契約は︑原理的にほい両当尊者聞の債権関係を根底にもつ︒それほ︑山方︵雇主︶・が
労傲給付の債権者として他方︵労働義務者︶が労働給付の債捧薯として現われ︑その履行を労働給付の提供に見出
︵4︶
す債権関係である︒かかる雇傭契約は︑︸本来︑交換関係として捉えられている︒しかし︑実は︑債権準=取引法の意味紅おける交換関係は︑履傭契約匿おいては直攫的な問題ではない︒雇僻契約においては︑むしろ︑継続的状態
において履行が満足せしめらるペき債権関係たることが重要である︒ここから︑後に︑﹁継続的債権関係の範疇﹂
︵diの⁚芥ate等訃de00Da寺rSeF已dくe旨賢已s諾S︶ が形成せられ︑これが債権契約の履行によつて生ずる状態を法
︵5︶ 的紅性格づけるものとなる︒しかしながら︑民法の雇傭の規定は︑履行について唯︑︹回の給付のみを以て究了する
︵6︶ 〝
ものに及んでいるから︑・原則的軋は︑いわゆる継続的債権関係に適合しないところがある︒虚傭契約によつて成立する債権関係ほ層傭関係であるが︑それは︑予め規定された活動についての法律関係であ
︵7︶
り︑労働義務者の経済的︑社会的独自性払おいて実現せられる︒従って︑屈傭契約の対象となるものは︑市民漁的概念構成の意味での︑交換関係貯類似せる債権関係に限定眉れ︑眉働関係とほ明白に∵繰を画している︒
ゆ︑しかるに∵使用者に固有なる支配領域としての︑経営︑企発︑家事等の範鴇において︑継続的軋他人の労働
力を利用する形式が発生すると︑
この形式たよる他人の労働力利用において本質的な事態は︑使用者が労働着を自己の支配のもとにおき︑自由か
︵8︶
つ継続的に︑労働力を処分しうる唯一者となるという点軋みられる︒前ノにふれた︑いわゆる従属労働ほここ軋発生対して︑.労働関係の本質的契機を従属労働において把擁する態度を是認しつつ︑
して︑その戯織的団体的性格を考察せんとする立場がある︒たとえば︑マウス ︵Ma宏u頑ilF巴m︶はこれを次の如
くに述べている︒
﹁労働義務者が他人の生清領域に細入配盈された瞬間︑彼は協同関係の.一員として︑その社会的機能を全く決定
的に変ぜしめる虻この点は︑何人といえども︑これを承認せざるをえないであろう︒殊に︑この点を考察すること
紅よつてのみ︑労働関係の本質ほ︑これを分乗協同経済における社会的機能の諸関係として是認しうる︒しかも︑
労働関係のこれらの機能ほ︑厳密にほ︑各労働の機能に即応せる法律関係として顕現する︒これを添樺的に表現す
︵9︶
勃ば︑労働関係と埜定生汚圏内の特定社会機能によつて特級づけられた労働者の洪約諾関係の仝秩序である﹂︒︵10︶ 畢寛︑この意味での労働関係の概念ほ︑労働者が社会的機能・職場労働を遂行し実現する継続的状態に関する添
的規制の総体を包含するものである︒しからば︑このように概念せられた労働関係の内包するところのものは何で
あるか︒
︵1︶締出 本文五頁参照︒
︵2︶本文例示の紆一繭ほ︑民法上︑所有権の取得若くは処分︑後二例ほ著作者または発見者の取得︒
︵3︶出GBⅧ甲冨−声民法第六三条以下参照︒
︵4︶BGB∽閥已−f?民法第六三二条以下参照︒
へ5︶諾r N︑P H⁝器打⊥空pp票ムeyu L︒訂どchH−Pa・や・㌘㌘m・
︵6︶憲︼・Maus−牒・a・?S・−芦﹁絶統的債権関係︑従って層傭関係においては︑履行は端的に継統的に予定せられた
労働契約と労働関係 九 し︑労働蹄係の 的なるこの えて︑通説は と ノし これを承認する︒しか
へ ︑しかしながら︑右に緒述した意義の汝禅関係について︑その性質を明かならしめるためには︑労働契約の理
論は無力であ鳶ここでほ︑さらに進んで︑労働関係をそれ自体として把揺するところに眼目をおく態度が顧みら
れなければならない︒それほ︑労働関係を従来の港体係のなかに無理におしこみ︑これを従属労働者問の個別的な
諸関係として構成した通説の立場を超えるものでなければならない︒菩凄教腰が﹁単に労働者保惑庭中心とする索 ︵ 1︶ 朴な胡点を去って︑端的に労使関係そのものの現実分析を科学的な態度で実行すべきではないか﹂と問われる態度 第二十大巻 第一青
新しい状態の発生として成立する︒その特殊性は契約に因つて生ずるにあらず︑労働問題の性質に基因するものであ
る︒﹂
︵7︶例えば︑医者︑弁護宅芸術家︑私教師など非従属的︑罪放校的労働に従事する人々に適用をみるのが山般である︒
︵8︶己a宏︸ a・P 〇・S・−−ド
︵9︶a・a◆〇・︸ S・−∽N・
︵10︶判例にも.﹁継祝する法樺関係であるから︑当事者双方信義誠実の原則によつて結びつかねばならぬ﹂︵昭和二四︑八︑
山八︑東京地裁︑帝石事件︶とのぺ︑総統的な結合関係として労働関係を捉えようとする志向が見受けられる︒
この点について︑沼田教授の次の記述がある︒﹁かかる練統的結合関係ほ︑まず︑個別的労働関係においてほ契約労働
関係なのであり︑かかる契約労働関係ほ常に対立を内在せしめる関係であり︑それが意識せられる限りにおいて︑ま
さに労働契約なのである︒然るに労働契約における結合的契機が山麓対立的契機町中に摸せられて︑然も再び高度の
結合的契機としてあらわれた形態が労働協約である︒この総合面はまさに継続的関係だとせねばならない︒そこで労
働法はかかる継続的関係を︵個別的にも集団的にも︶維持することを志向する法であることほ疑いない︒﹂沼田労働
法・一巻㌦五頁以下蓼照︒
る理論の構成は︑かような反間を克服して︑初めて確葵なものとなるであろう︒労働関係の実態分析において新 ︵ 2︶ に通説を批判痘んとするドイツ労働淡学者の見解に窺われる鮨変にも︑ごれと軌をrにする尾のが見うけられる︒
通説が︑使用者と労働者の個別的関係二l労働契約関係を償える態度に対して︑たとえばマウスは有紀述べた見地か ︵3︶ ..﹂ ら︑労働関係を率直聖二箇の関係に分析して︑をの爽態を究めんと試みている︒以下︑響くこの点を追求考察して ︑訊 かかるもりとしての労働関係の性質を明かに∫しなけれはならない︒
糾使用者と労働者との関係
すでに繰りかえし述べた如く︑従糸︑労働関係ほ借用者と労働者の問の個紺的関係にのみ着眼して構成され︑こ
れを労働契約関係として承認した︒従.って︑男働関係の成立が偉用著︑労働密閉に個別的関係以外曙港律関係を惹
起宜しめる点は詳述せられていない︒労働契約関係は使用者労働者間の垂直的訟律関係として理解され︑両当事者
は倒立的な偵権者︑債務者以外の何ものでもない︒しかるに︑実態的考察取締巣は︑⊥股に個別的労働契約の締結
よりも︑むしろ︑労働者の雇入に際して不断に繰返えされる此ハ数的事態として︑猷働者ほすでに成立せる﹁労働協
︵4︶
同関係﹂︵Arb賢g昌昔c堅︶の新構成員となるという要約法律関係が嘗温いする︒かかる関係墓ずる本質的契梯ほ団体性に内在する秩序である︒そして︑・この点ほ原理的紅は︑労傲給付を志向する労働契約の締結とは
別個のものである︒従って︑︑この観点監皿てば︑通説のいわゆる労働契約関係ほ︑﹁労働契約当事者﹂問の﹁私的﹂
淡律関係として1労働関係の成立に随伴する∴帝にサぎない︒
㈱労働者と労働者団体との関係︑従って︑労働薯団体の所属農としての労働者の地位
労働者が労働組織軋編入酪隠されると︑㌦方においては︑労働者と他の労働者間の関係︵労働者組織︶が発生し 一山 労働契約と労働関係
一二 第二十大巻′第二号
他方においては︑労働者金員と使用者問の関係︵経・営の秩序︶が成立する︒これらの関係は両形式とも呼水平的関
係であり︑内在的秩序として同時に規制せられると考えられる︒それほ本質駒軋ほ同時に規制せられた使用者の機
能が一方払おい.て作用し︑そのまま︑他方において労働者団に影響するものを生ずるからである︒これほ﹁就業規
則令﹂ ︵汐trie訂g昌ein筈訂ft︶ の概念によつて覆われたところであつた︒次に場合をわけて考察する︒
扉 労敵者組織 新入労働者は就労と同時紅︑職場の﹁労働者団﹂の二月となる◇かかる団体展たる地佗は労働
関係の内在的秩序によつてのみ成立する︒職場への編入配置とともに︑右の団体貞たる地位ほ︑法規上の根拠をも
った添的地位の特殊部分として︑労働者団体内部において取得せられる︒かかる法的地位の内容は︑団体の経営結
合に対する組織的意思形成に参加する権利である︒新入労働者ほ︑とのようにして洪規によつて附阜せられた共同
決定の権利を行使しうる︒しかし︑この地位は同時に義務を負捜すべき根拠となり︑﹁経営内団体協約﹂︵汐triebで
讃告ぎruよ︶の締結によつて課せむれるべき義務に関与しなけれほならないか
︵5︶ ㈲ 経営の秩序 右に述べたところと並んで︑他方において労働者金員と使用者との間に︑﹁経営協同関係﹂を生
ずる︒㍗の関係において労働者の法的地位は完仝に実現し︑労働関係に基因する労働者の法的地他の具体化が行わ
れうる︒かかる関係の柿成員としての使職者並に労働層ほ︑労働関係によつてその権利を有効に行使し︑また︑ネ
︵6︶
の義務をも充足せしめる︒ここから経営的共同意思が形成せられ︑経営自瀞が実現する︒故に︑このような経営の秩序ほ︑廟述の労働者団と使用者問の契約関係とは全く別個のもめである1それは法的にほ︑生きた機能協同関係
として把握され︑そこにおいて︑労働者団ないし使用者に対する分業上の課題が充足され︑従って︑その権利義務
が発生する︒
二鱒労働条件笹関する協約上の規定が問題となる場合に︑償用薯にも労働者にも︑これらの団体への所属が意味
をもつであろう︒その際︑労働組合や使用藷団体の構成員たる身分もまた︑労働関係において作用サる︒けだし﹂
労働関係も同時に︑労働協約上の規定厳守に関する請求を基礎づけるからである︒しかしながら︑使用者も労働者
も眉働協約め締結に参加せざる限り︑かかる権利を享受しえないことは・いうまでもない︒ 靭∵労働者︑使用
︵ユ吾妻﹁臨時エと労働法規﹂法律タイムス 罪四巻四号 三四弓なお 吾安﹁労働法の基本問題﹂二二〇貫﹁労働法
上の労働関係ほ︑個々の契約上の労働関係でほなく大童的︑集団的な労働関係であることを示唆しこ⁝・:・まさにかか
る大量的︑集団的な労働関係の意味内容を明かにすること﹂を意図せられる︒
︵2︶Ma宏> a.a.P.︸ S.−W∽−−∽00.
︵3︶a・a・〇・﹀ S・−∽∽.
︵4︶ここに用いられた﹁労働協同関係﹂の語は︑山見︑嘗ての労使協同体とか事業一家とかの思想を連想せしめる︒しか
し︑真意は本文にもある如く︑あくまでも水平的法律関係としての意義のものである︒
︵5︶ ﹁経常協同関係﹂という用語の真意も前註と同一である︒これによつて︑労償協調ないし労働者の経営者に対する忠
誠服従思想の根拠となすならば︑そこ紅ほ本来の意味における労働組合運動の存在する余地ほない︒現代における企
業経常ほ︑多数労働者の授供する労働を分業の理紅従つて︑体系的に区分せられたいくつかの職場に配置するととも
に︑その労働を綜合的立場から指揮管理して︑全体として調和のあり統一ある生産力にまとめる仕方で行われる:J
のために企業の内面に体系的な労働組織が牽つくられなければならない︒とこに労働組織ないし経営秩序の問題をめ
ぐつての﹁労働観臓関係﹂という一つの特殊な社会ないし法律関係が示唆される︒柳川﹁追補判例労働法の研究﹂四
労働契約と労働関係 ∵≡ 薯及びそれらの団体︵労働組合︑使用者団体︶ノ間の関係
三︑以上の展開から帰結しえらるる特徴的な審柄ほ︑労働関係の本質を債権関係において表現しゝ竃いという点
である︒債権関係は物財取引の範疇であぺ債権者と横波著聞の給付を請求せしめる対立的個人間の法律関係であ
る︒しかるに︑労働関係ほ使用者︑労働者問の個別朋労働関係のみならず︑民法の債権関係から完仝に離脱せる組
︵1︶
織的法律関係をも包含する︒この故に労働関係の本磐は︑土れを債権関係として把揺することの秩▲攣なること︑従ってまた︑最近提案せられる﹁社会的﹂債権関係という概念構成も︑右の理由から︑これを斥けなけなければなら
ない︒
このように︑労働関儲の本質は山般市民法上の概念を以て結論することをえない︒それは︑ただ︑この法律関
係の特殊な社会的︑山荘済的械敵艦五度ることによつてのみ可能なのではないか︒この特殊な機能ほ︑使用者が副菜
目的実現のために購う労働力が︑特殊な組緻形態砿おいてのみ充足せられうるという点に成立する︒使牒者は︑た
寒一労働関係の中でのみ︑自′己の権利として労働者の労働力を処分しうる可能性を与えらるるにすぎな小︒もし使
用潜の権利範囲を解して↓彼の生蒲範囲すなはち︑労働目的実現のために用意された活動圏とみるならば︑労働関
係の成立ほ山の社会的機能的事態を意味する︒企紫衣の活動囲へ労働者の編入配露があり︑職場の労働者団に労働
者の加入結成があれば︑すなほち人的結合は成立する︒このために用いられる法稗関係の範疇は一種の﹁協同関係﹂ ㌻︶
であるという点は︑すで監馴紅二首したところである︒
企業家のエ場組織への繭入によつて欝さるるものは︑使用者︑痴働著聞の単なる債権関係ではない︒カスケル 第二十大巻 第二号
○頁参照︒
なお︑経営秩序に閲し 後藤﹁経常秩序と就業規則﹂労働法刷尊九九以下参照q
甘︶最近制定された西独の共同決定法ほこの思想の現れとみられる︒ 山四
︵内aske−︶ はこれを﹁人法的﹂ ︵peTS昌enHeCどーicF︶ 結合以外めある特殊の経弊のものとよんだが︑しか王 そこ
︵3︶
に何が理解せられているかについてほ︑遂些冨及するところがなかつた︒㌦般的には︑こや準符関係の特殊の性質より生ずる洪的効典を︑外朝粥に使用者と労働者閑の関係において特徴づけ︑この点を強調せんとするものの如く
である︒すなはち債権関係における財産法的なものよりも︑むしろ人的結合に存する人洪的なものを考え︑そこで
ほ︑俄に信義誠実の原則︵苫nzipderTre日昌dG−a旨en︶︑に導かれた法的保談義渉が関越上されているようであ
る︒従って︑人法的なものほ︑本来︑債権法的なものが常に財産法的劾具を多く問題とするのと対既約に︑殆んど
この点を問題としないという程庶の差に帰着する︒この点解を分析することほ難かしい︒この故に︑最近︑再び彦
頭しっつある傾向として︑労働関係を′山部共同体的に︑叫.部入漁的に性格づけんとする試みの如きも︑これを斥く
べきである︒かかる漠然たる概念構成の上に存する傾向ほ︑労働関係の本質認識にとつて何ら.頁献するところはな
いであろう︒
要する町財産法忙対立するものとしての入港概念では依然として不明捺を免れザ︑この概念を用いて洪律関係
の区別を論ザることは適当でほな
ら区別して入港的関係の概念を構成する態度を無視するほかない︒卒直整式つて︑労働関係においては︑常に入漁
的要索が財産港的請求権の根薙とさえなつている点が立証せられる︒八浜的結合においては︑単に使用者︑労働者
問の相互関係にのみ考察の焦点がおかれ︑労働関係における法的関連の多様性ほ見落されている︒労働関係は何よ
りもまず︑複合的な洪律関係である︒
以上のようにみてくかと︑﹁団体協同の関係﹂としての労働関係の把握ほ︑甚だ本質的なるものを立言する1し ∴4︶ かし︑例えば労働細合における利益的結合常に着服し七︑誤解を生じ易い協同関係よりも︑むしろ﹁組終関係﹂と
山五 労働契約と労働関係
第二十大巻 第号 一六
よんでその団体低を把超しても差支えない︒そこには社会的労働集団への編入参加によつて生ずる二男の法的関連
の複合が包含せられている︒就中︑分業経済転おける労働者の地位が明かにせられ︑各人ほその労働力の価値実現
鱒関して完全性特定の可髄性を有している︒働く意志を有する者が︑他人との自由な契約によつて∵定の生括囲と
結合するその形式こそ労働法にとつてほ決定的な点である︒
しかし︑かくの如き事態ほ浜の他の領域にも稀でほない︒人は幾多の理由から自由に各檻の人的団体と結合する
例えば∵会社︑組合︑協会︑その他の団体員として︑通常の債権関係にみらるる当事者間の関係と興り︑各人は一
定活動圏に属し︑その内部紅おいて団体自体と構成員とに対し︑いわゆる﹁社員廠﹂︵Mit嘗乱recFt︶による保護を
うける︒かかる社員権に比すべき権利ほ労働関係においても存在する︒.殊にそれほ労働者の労働者団ないし経営協
︵5︶
同関係に対する関係において明かである︒さらに︑構成員の団体目的への結合は︑相互間の人的信頼に依存する点︵6︶
が労働関係にとつても決党的である︒この点は新規加入員が団体機関の同意を以て受入れられることからも知りうる︒従ってまた構成鳥の除名も︑信願がもはや正当づけられざる場合に限って許されることである︒
右の練兵ほ周伴性の内容に関しても
的追求のための誠実轟務を成立遺しめ︑誠実義務の破壊は団体解散の理由ともなる︒労働関係についていえば︑労
︵7︶
働者固またほ巌営協同関係の破壊解散に対応して︑解雇ないし脱退の問題を生ずる︒労働関係紅おける団体性の内容︑従りて︑その社会法的性格ほ︑これを精神的性質の団結とみてのみ理解しうる
︵8︶
であろう︒それほ︑社会関係の意味から生ずるもので︑労働関係におけ牒﹁誠実﹂の基礎はここ紅見出される︒このようにして︑労働関係における団体性伊内容には︑︑社会学的には︑次の関係を包含する︒.
何 他人の権利の尊重︵使用考労働者問の個人的関係及び労働者相互間の個人的関係︶
て労働関係の成立行為は︑′これを使用者からみれば﹁編入﹂︵Ei邑el−ung︶︑労働者からいえば﹁就任﹂︵Ste〒
昌antritt︶または﹁就労﹂︵A寮itsau訂PFme︶の行乱に該当する︒この行為を純然たる膚英上の事態についてのみ
考察するか︵ヨki00CF︶︑またほ契約上の遜礎に立脚して意思の合致を問題とするか︵一方に=ヨpperdey︑他方匠 かくて︑′労働関係ほ労働協同関係に内擁する秩序の承認によつて︑団体展各人の行為が把握せられる限りにおい てのみ︑よくその機能を果しうるで♭ろう︒ ㈲ 団体の権能の尊重︵個人と団体結合間.の関係︶
労働契約と労働関係 T︶前出 本文一一頁参照 ︵2︶Ma宏︶ a・a・〇: S・−裟・前由何貢註︵5︶■参照︒ ︵3︶舛ask已・D誓SCデ 曾beitrecぎ︵−器N︶︸ S.NⅥ ︵4︶柳川 前掲沓 貫参照︒ ︵5︶<g−己au¢﹀ む.au Oこ S.隻−. ︵6︶a・a・︒⁚S・−∽ご﹂の点紅ついてほ︑労働者の屈入︑編入紅際し︑労働協約に基く経営協議会の協同作用を考宜る∈
とができる︒Mausはこの作用を団体的法律婚為となす︒
︵7︶a.P 〇.U S.誓∽.
︵8︶a・a・〇・>S・ヨ・なお 沼田﹁労働法における道義則﹂労働法⁝巻六頁以下参照︒
≡ 労働関係の成立と労働契約
一八 第二十六巻 第二号
︵1︶ ︵Sie訂rt︶紅関してほ論争がある︒この争いほ単に理論上のみならず実際上の意轟をも有するが︑一・般虹労働関係
の成立は一二の理論の承認する如き統一的事態蔽よるものではない︒ ︵ 2︶ 労働関係の成立にほ︑次の二段階の汝律行為の存在を指摘しなければならない︒その〟は﹁義務負担行為﹂
人く還r−i¢ぎn芸eSC琵te︶︑いわゆる﹁労働契約﹂は協同関係を成立せしむる義務負担契約として考察せられる︒
その二は﹁義務履行行為﹂︵﹃inf昌喜gSge00C邑te︶︑ことでほ﹁編入﹂︵就労︶行為が︑法律関係を設定し変更する
形成行為として検討せられる︒以下︑この二段階の行為について眺める︒
鵬 労働関係の成立叱ほ二段階一の行為が存在すると指摘したが︑こ︑のような事情は他の洪域についても見出され
を例えば︑賃貸借においては﹁賃貸借成立の契約﹂︵Mぎb童監昌竃e吉a肌︶と︑その契約より生じたる法律 ︵ 3︶ 関係︑すなわち﹁貸貸借関係﹂︵Mie−▲竃邑−nis︶とを明かに区別しなければならない︒従来の私法挙が法律関係の
入口にすぎない契約を以て︑その法待関係全部の如くに解した点町︑生活の実際を直視しない概念の故巧が存在し
たといわれる︒貿貸借契約ほ当事者間の合意によつて成宰レ︑貸主ほその契約の定めるところに従って使用収益を
なさしめる義務を負担し︑借主ほこれを語求する権利を有している︒しかし︑貸主がその義務針履行しっつあり︑
また︑借主が現に賃借物を使用収益しっつある状態から生ずる借主の使用収益権は︑直避に物に対する支配権であ ︵4︶
って︑貸貸借成立の契約から生ずる使用収産請求権とは明かに区別すべきものである︒
同様の審曙は︑.団体関係を成立せしめる艶紺としての養子縁組契約にもみられる︒この契約は債権港上のもので
なく︑身分法上のものであるが︑家族的生括協同体の設定による親子関係の成立を目的とする︒そこには︑養親子
閑阻の成立と同時に︑養子︑養親問の生活協同関係が実現する順序となる.が︑成立契約とこれに撃つく生活協同関
係をほ明か虹区別すべきものである︒このことは︑さらに︑婚姻関係を成立せしめる婚姻契約と︑その契約から生
ずる婚姻関係それ自体とを明かに区別すべきものとする態濠についても岡故にいいヶる︒婚姻の質点は前者匿あを ︵ 5︶ のでほなく︑後者にある︒その他︑民法上の人的結合︑例えば社団についでも成立行為と団体関係とはこれを区別
して考察しうる︒
比喩的甘はあるが︑労働関係の成立も右に述べたところと仝く向一の事態で実現する︒団体成立契約とこれを履
行する行為とが︑相互に支えあつている︒そして前者たる団体成立契約こそ︑その規冥の機能を承認すれば︑卒直
に︑﹁労働契約﹂と呼ばるべき労働法上特有の契約である︒労働契約は労働関係の笑規を目指し︑かつ契約当事者に
締約上の目的を英観せしむべき遇の賓任を根拠づける︒Lこから︑やがて契約当事者はいずれも︑協同関係とし
ての労働関係実現のための仙切︵使用者は属人配澄︑労働者ほ就任︑就労等︶のことを履行すべきものとな.る︒
囲 前述の義治負担行為に対する義務履行行為とは︑労働者
組織への編入配置が︑これ軋該当することもすでに一昔した︒これらほ一致して窮極の洪律効果たる港律関係の設
定変更に関して協同する︒この際︑就労︑配置のいずれの事態についても︑問題レなる点は意思表示であつて︑ニ
ヘ・h\︶ キシユ︵買kiscF︶のいわゆる事実上の事態にほ問題はない︒職場組粒への編入配置は労働関係の成立に関与せ
︵7︶
る当事者の意思の合致なくしては実現しない︒労働関係=労働協同関係を実現すべき義務負担行為が労働契約であり︑労働関係を実現形成する行為ほ︑職場への編入配殴である︒労働契約によ
契約の履行という意味において︑直接に形成せられる︒寮するに︑﹁労働契約﹂に応ずる履行行為があつて︑初めて
有効転労働関係は成立するのである︒
すなほち︑編入配澄による権利形成行為が労働関係を実現形成し︑この時を以て︑誠実義務︑保護義務︑労働義
鋳︑貿銀安弘義務その他︑労働者の職場編入によつて発生する一切の権利︵選挙権︑被選挙権等︶が成立すること
労働契約と労働関係 山九
こ︑次に︑労働契約ほ㌦党労働条件を確定すべき場として作用する点を眺めようα労働関係の成立を目的とする
団体成立契約としての労働契約ほ︑その本質上︑絡んどあらゆる場合に豆つて︑労働条件に関する諸規定を包含す
る︒溺働条件に関する合意としてのこの部分ほ︑労働契約の存続する全期間を通じて労働関係を縫伴し︑︑かつ︑全 Tこ
面的に人的関係たるその内容に応じて︑労働関係を形成する︒ただし︑労働関係が秩序違反の方法を以て終了する
場合には︑港律関係の最終決定的帰結としての財産法上の請求権は︑労働契約を超えて︑その法的根拠を持続す
る︒この点については︑後に再び考察するところがある︒ 第二十大巻 第二号
となる︒
︵1︶ この論争の詳細はZikiscF﹀a●a・〇・
︵2︶Ma宏﹀ Arbeit等ert⊇g︵−や5︶﹀ S・還rf・
︵3・︶石田﹁契約の基礎理論﹂二五頁参照︒
︵4︶前掲啓 三〇貢参照︒
︵5︶前掲書 二五頁註五﹁内線の問題紅しろ︑また時効による婚姻関係の成立というよ㌢な考察にしろ︑すべて主眼点ほ
後者にあることが強調せられている︒﹂
︵6︶前出 本文融七買春照︒
︵7︶ga宏︸ AT訂its諾ユ邑tnis﹀ S■ ㌶●
︵1︶中● a.〇−V S・M詔芦 二〇
な姿をとつて登場する︒
労働契約と労働関係 すでだ前に労働関係kついて分析詳述したところから明かな如くに︑団体協同の関係を形成するものはその内在
︵1︶ 的秩序であつて︑それほ︑外からの‖形成に依存しない︒そして︑
ぺ㌢こと︑しかも︑それは多数の人々の協同階用によつて達成せらるべきことの各点である︒かかる協同作用は︑
各人紅目的達成に買献すべきことを奨求し︑かつ︑同時に一定の秩序の厳守せらるペきことを要求する︒労働関係
︵2︶
における各人相互間の顧慮と︑他に対する信腐とは︑団体協同の関係に内在する法的秩序の要素である︒之のような内在的秩序こそは︑団体協同関係の本質的特徴をなすもので︑それ故に団体関係ほ原則として外部か
らの秩序を断念するものである︒労働協同の関係自体も︑分葉経済の本質的前提の一として︑経営上の必要から自
然に生成する︑従って労働生活上疑うべからざるものとして︑右に述べた内在的秩序において法的効具を実現する
という帰結が示される︒ただし︑この点についてほ︑労働契約の存在が明確を欠ぐか︑すで匿消滅したるかへ或は
何らの集団的規制むも施されざる場合において︑内在的秩序の受配は最も鮮明であるということができる︒
ところで︑労働関係に内在する法的秩序に対して︑団体関係成立行為における童蹄負担契約としての労働契約の
関係が問題となる︒労働契約は労働関係に既存の秩序を変更する藷規定を包含しうるが︑これらの諸規定ほ人的ま
たは物的必要に応じて各個の場合に具体的に形成せられなければならない︒それは殆んど常庭︑労働契約によつ
て結ばれた﹁特別労働条件に関する合意﹂として現われるものである︒このような意思の合致があつて︑それまで
のいわば抽象的なる労働関係の中から︑特定の個別的労働関係が︑契約賢者者の意思によつて附与せられた具体的 四 労働関係の内在的秩序と労働契約
窮二十六巻 第二号 二二
︵3︶ これと関連して︑ノ労働条件に関する合意を生む労働契約と︑労働関係む具体的に形成する他の手段との関係につ
いても︑若干の考察を試みる必要がある︒労働関係を具体的に形成するものとして︑強制的なも法規ないし直律的
なる︵呂abding廿aユ協約規定が問題となるところでは︑鼻働契約による合意の作用する余地は殆んどありえない︒
労働契約の関与しうる場合としては︑労働関係の問題が一殴に規制せられていないか︑またほ洪規上或は協約上の
規定に関する問題が有利に規制せられているときに限られる︒その場合に︑両者の規制が同等ならば︑まず労働契
約が効力を有し︑協約ないし法規は停止する︒しかし︑両者の規定が平行線上を行く場合にほ︑協約は個別的合意
に優兜する︒淡規または協約による労働条件が︑合意による労働条件より有利なる場合には前者が後者を変更す
る︒しかし︑合意が漁規や協約七対して︑.より有利な条件を含む場合にほ︑この労働条件が優発する︒かかる場合
に労働関係たおける合意の形成カは完全にその効力を軍絆する︒
セだ︑ここで注意を要する点は︑前述の説明によつて計働関係が二級の興れる規別の下に並存すると考えてはな
らないことである︒前述の﹁平行線上﹂という表現の如きも︑労働関係における各種の形成手段の相互作用の関係
を示したのにとどまる︒各個具体の場合における港的規制は︑いう草でもなく銃山肌である︒右の相互作用欄関係
は特別の労働条件に関する合意の機能が︑いか笹効力を発揮し︑かつ理由づけられるかを暗示しただけである︒
︵1︶前出 本文の三 刷四貢以下参照︒
︵2︶Ma宏﹀ a● a−○: S・−舎◆ 本叉において屡々使用した﹁秩序﹂○乙n旨耶の語は︑Ma宏の用例に従ったものであるが
秩序の思想について︑Mausは次のような説明を試みている︒﹁ここにいう秩序の思想は︑例えば就業濁別命︵AOG︶
の支配下にあつて︑労働法を貫いた思想の如き︑国家的規制の意味に理解さるべ︑きでない︒それは︑何人も安んじて
ロにすることのできる︑しかし︑よ・り深い意味のもので︑不秩序に抗する個性の努力から生みだされるところのもの
労働契約と労働関係との関連紅おいて︑労働契約のはたす役割︑およびその占める地位を一般的に考察するのが
本稿の目的であった︒ここで︑いま一度︑この展開のあとを顧みて結論的に要約することとしよう︒
労働汝の対象となる労働関係虻存在が問題となる場合に︑これを労働契約の有無によつて把撞せんとするのが︑
従来の通説的見解である︒これによれば︑労働関係とは労働契約関係であり︑労働契約によつて発生する債権関係
として︑債権者と債治者上の対立する個別的関係である︒︑そして︑労働契約に基づかぎる一切の就巣関係は︑労働
エコ叶 労働契約と労働関係 条件の形成は不秩序への傾向をもつ︒︵精神生活の他の分野︑殊に現代物理学の領域において秩序の概念のもつ役割 を指摘して︑例えば︑気体︑液体︑固体の各種の物質の発令状態は︑原子や飯粒子の増大する秩序として区別せられ る点を引用する︶ここで使用する意味の秩序は︑一定の社会的状態に対する一定規制の指示︑適用である︒その際︑ 社会的諸粍能の合奏によつて︑法的叔制自侭が形成せしめられる︒故に成文法規の存在する︑以前に︑すでに法的規制 は存在しうる︒あらゆる法律協同体の最初に︑法は成文法規なくして支配した︒従て制定法規を欠くことは︑法規範
﹂ なきことを意味しない︒・⁚⁚⁚至
︵3︶本文において︑労働関牒の性質として外部からの秩序を必要としないと述べた︒しかし︑このことほ現代の経済がか
かる秩序を要求しないということではない︒特に労働法の領域紅おいてそれは多岐堅且って発展を遂げている︒本稿
の問題とした労働契約のはか︑制定法親︑協約規定︑経営内団体協約︑就業親則等各種の形成手段が労働関係に作用
する︒ である︒純粋に個人主弟的に把握せられる労働関係や質銀政魔︑ないしは完全性個々の職場の.枠内で建てられる労
五 籍
添上の意味での︑労働関係たること/をえないという帰結を承認せざるをえない︒ これに対して︑通説の緒論が必しも実際の取扱いと⊥致しない点を疑問とし︑さらに︑集団的労働関係の発達︑ すなわち︑労働組合主義を基調とする近代的な労使関係のもとに︑契約を労働法の出東点とする熊虞を間置とし た︒かくして︑卒革に︑労働関係そのもひについての分析をたどつて︑その集団的組織的性格を捉え︑団体に内在 する法的秩序としての労働関係を考察した︒ついで︑かかる労働関係を成立せしめる行為としての労働契約を分析 して︑団体成立の養添を負捜する行為と︑かかる轟務を履行して具体的に労働関係を形成する行為を区別し︑労働 契約はいわば抽象的労働関係を具体的に形成する作用の一面を掛当するにすぎないと帰結する︒労働契約が労働関 係を形成する唯一の原因でないと考えるとき︑これを形成す冬他の諸手段紅ついても︑検討すべき間超を残してい
るが︑ここ紅は触れていない1
労働契約と労働関係.との関連について︑根本的な反省を加えてみるということが︑本稿の琴本納な立場である が︑結局は︑論じて尽さ庵い不徹底に経つたようである︒満足すべき理論的解明は︑これを後日の補完に期するこ ととし︑とりあえず︑この稿を終ることとする︒ 第二十大巻 第一一号 二四