カンボジアの国際経営環境 一人的資源、経済、
外資投資法、会社法、労働法
丹 野 勲
は じめに
カ ンボ ジア は、 公 式 国名 が カ ンボ ジア王 国 (Kingdam orCambodia)で、1953年11月 に独 立 し た。 国土の面積 は、約18万平方 キ ロメー トル 、 日本 の約 半分程度 であ る。 首都 はプ ノンペ ン、
総人 ロは約1,400万人 で あ る。 言語 は クメール 語 、政体 は、 ノロ ドム ・シハ ヌー ク国王 を元首 とす る立憲 君 主制 で あ る。 通 貨 は リエル(Riel) であ るが、米 ドル もか な り流通 してい る。 カ ン ボジアは,イ ン ドシナ半島 に位 置 し,タイ,ラオス, ベ トナム とそれ ぞれ 国境 を接 してい る。 カ ンボ ジアの気候 は、熱 帯モ ンスー ン気候 に属 してい る。
カ ンボ ジアは、 9世紀 には ジャヤ ヴァルマ ン 2世 に よ りア ンコール朝 が創建 され、12‑13世 紀 頃に巨大 なア ンコール 遺跡 が建設 され た。 同 朝 は勢力範 囲 を拡大 し、ベ トナ ム南部 、 タイ東 部 、 ラオス南部 を支配 したが、14‑15世紀頃 に はシャムのアユ タヤ王朝 との戦争 が激化 し、同 朝 は衰退 した。
19世紀後半か らフランスの植 民地支配 を受 け、
1887年 に仏領 イ ン ドシナ連邦 に編入 され た。 第 2次大戦後、1953年 にカ ンボジアは独 立 した。
1970年 、ロン ・ノル首相 がクーデ ター を起 こ し、
シハ ヌー ク国王は追放 され 、 クメール共和 国が 樹立 された。ポル ・ポ トを中心 とす るクメール ・ ルー ジュが、1975年 に ロン ・ノル政権 を倒 して 民主カ ンプチア政権 が樹 立 され た。 クメール ・ ルー ジュは、反対勢力 を抑圧 し、急進 的 な共産 主義 を進 め、100万人以 上 の国民 を虐 殺 した と いわれ てい る。 1979年 にボル ボ ト政権 はベ トナ
ム侵攻 に よ り崩壊 し、‑ ン ・サ ム リンに よるカ ンプチア人民共和国が樹 立 され た。 これ に対 し、
シハ ヌー ク殿 下は、1982年 にシハ ヌー ク派、 ソ ン ・サ ン派 、お よび クメール ・ル ー ジュに よる 民主カ ンボ ジア連合政府 を結成 して同政権 に対 抗 し、 この対立は1991年 のパ リ和平協定の締結 まで続 いた。 この間、悲劇 的 なポル ・ポ ト時代 を含 む 内戦 を経験 して きてい る。1991年 のパ リ 和平協定 に よ り内戦 は終結 し、1993年 の国連 カ ンボ ジア暫 定統治機構(UNTAC)監視 下 に よる総 選挙 を経 て、国内は徐 々に安 定 して きてい る。
2004年 に人 民党 の フン ・セ ン首相 に よる新政 権 が発 足 した。 また同年10月 にシハ ヌー ク国王 が退位 し、 シハモ ニ殿 下が王位継 承 した。
本稿 は、著者 のカ ンボジアでの現地調査 の結 果 を踏 まえて、カ ンボジアの人的資源 、貧 困、
教育 、経 済、産業政策 、外資政策 、会社 法、労 働 法 な どについて考察す る。
なお、本論文 は、文部科学省科 学研 究費補助 金基盤研 究
C
「ア ジア ・太平洋 の フロンテ ィア 地域 の国際経 営」 (課題番号18530309)の研 究 成果 で もある。第
1
章 カンボ ジアの人的資源、貧困、教育
第
1
節 人的資源、貧困カ ンボ ジアの
1
人 当 り国民総所得( GN
I)は、世界銀行 「世界 開発報告 (2008年 )(1)に よる と 480ドル で、低 所得 国 に分類 され てい る。 物価 水 準 を考慮 した
、PP
P (購 買力平価 )表示 の国 カンボジアの国際経営環境一人的資源、経済、外資投資法、会社法、労働法 43民総所得 は
2 9 2 0
米 ドルである。 また、国際貧 困 線 に関す る2 0 0 4
年調査̀2)に よる と、1日 1ドル 未満 の人 口割合 は6 6. 0%
、 1日2
ドル未満 の人 口割合 は8 9. 8%
であ る。 カ ンボジアでは、貧 困 問題 が依然 と して深刻である。 カ ンボジア政府 は、2 0 01 ‑2 0 05
年 を計画期間 とす る、「第 二次社 会経 済 開発 計画( S EDP
II )
」、お よび2 0 0 3 ‑ 2 0 0 5
年 を計画期 間 とす る、 「国家貧 困削減戦略( NPRS ) 」
において、貧困削減 を最重要課題 に掲げている。
カ ンボジアの人 口は
、2 0 0 6
年 で約1 4 0 0
万人で ある(3)。 カ ンボジアは、世界の中で人 口増加 率 の高い国の一つ であ る。NIS (Nationalinstitute ofStatistics)(4)に よる と、人 口増加 率 は、1 9 9 0
年代 で年平均2. 0
パーセ ン ト、2 0 0 0 ‑ 0 6
年 では年 平均3. 8
パーセ ン トで増加 した。NIS (NationalInstituteofStatistics)(5)による、
労働力 (労働者総数 、労働人 口) の成長率 をみ る と
、2 0 0 6
年 の労働参加 率 は5 7. 2%
、総雇用者 数 は約8 0 0
万人、2 0 0 5
年 よ り約2%
の増加 で、ほぼ人 口増加 率 と同 じであった。
図表1(6)は、NISに よる、産業別 の雇 用者数 をみた ものである
。2 0 0 6
年の総雇用者数 は約8 0 0
万人、2 0 0 5
年 よ り約2
パーセ ン ト増加 した。 産 業別( 2 0 0 6
年度 ) にみ る と、農業5 7
.4パーセ ン ト、 工業 は1 4. 5
パ ーセ ン ト、 サ ー ビス業 は、2 8. 1
パーセ ン トである。 カ ンボジアでは、近年 サー ビス産業の雇用者 の増加 が著 しい。これ は、カ ンボジアの経済の成長 を受 けて、
新 しい労働力が農業か ら製造業、サー ビス産業 に雇用 され てい ることを示 してい る。 カ ンボジ アの 田舎 の若者 が雇用 を求 めて、農村部か ら都 市部 に移住 してい る とい う事情 もある。男性 の 移住者 は建築現場 で働 き、女性 の移住者 は被服 縫製 工場で仕事 を しているケースも多い。また、
移住者は、サー ビス産業に従事 している者 も多い。
第
2
節 教育カ ンボジアの教育制度 は、初等教育
6
年 、前 期 中等教育3
年 、後期 中等教育3
年 の6‑3‑
3
の教育 システ ムが基本 である。義務教育は、44 国際経営論集
No . 3 6 2 0 0 8
初等教育 と前期 中等教育 までの計
9
年 とされ 、 無償制 であ る。 また、高等教育機 関 としての入 学 は通常 4‑ 7年である(7)。カンボジアの
2 0 0 5
年度 での初等教育修 r率は9 2%
、 小 中学校就 学者 の男女比率 は男性 を1 0 0
とす ると女性 は
87
である̀8)。カンボジアの初等 ・ 中等教育は近年急速 に改善 され てきてい るが、まだ就学率が低 く、退学率 も高い。就学率の男 女格差 、都 市部 と農村部 ・山岳部 との地域格差 の問題 がある。 また、学校施設 の不足 とい う問 題 がある。小学校 では、農村地域 な どでは
3
・4
年次まで しかな く5 ・6
年生 に進学す る場合 には転校 しなければな らない とい う状況 もある。農村地域 では通学で きる範 囲内に中学校 (前期 中等教育)がないケース もある。 さらに、教材 が不足 し、十分 な教育 を受 けた教員 も不足 して い る(9'。
2 0 0
1/ 0 2
年 の大学 な どの高等教 育‑ の総就 学 率 は3
%(男性 が4%
、 女性 が2
%)程度 で あ る。国公立大学は王立プ ノンペ ン大学等
9
校である。従来、大学 ・高等教育機 関はすべて国公立であっ たが
、1 9 9 6
年以降、カ ンボジア経営大学、カ ン ボジア大学な どの私立大学が相次いで創設 され、就学者 が急増 してい る(10)0
第
3
節 カンボ ジアの識字率 と賃金水準政府 に よる多 くの努力 にもかかわ らず 、カ ン ボジアの教育はまだ多 くの難局に直面 している。
た とえば、識字率の低 さと教育の質 の問題 があ る。
図表2(ll)は、 タイ、中国、ベ トナム、カ ンボ ジアの識字率 を比較 した ものである。世界銀行 の 「世界 開発報告
2 0 07 」
によれ ば、カ ンボジア の識字率は7 4
パーセ ン トで、近隣のベ トナム9 0
パーセ ン ト、 タイ9 3
パーセ ン ト、お よび 中国91
パーセ ン トと比較す る と低 い。 この よ うなカ ン ボジアの識字率の低 さは、外 国投資家か ら見 る とカ ンボジアの人的資源 が魅力的でない ことを 示 してい る。図表3(12)は、カ ンボジアの衣服産業労働者の
賃金 をみた ものである。 これ による と、カ ンボ ジアの2006年 の平均月給 は約66米 ドル程度であ る。2006年度 は、前年度 よ り賃金増加 率 はUSD で約
1 1 %
程度 と増 えてい る。現地通貨の リエル 換算で も同様 の傾 向である。 カ ンボジアの賃金 水準は、隣国のベ トナム よ り低 い水準である。第
2
章 カンボ ジアの経済第
1
節 経済の概況カ ンボジアは、前述 した よ うに1991年10月の パ リ和平協定締結 に よ り内戦 が終結、93年5月 の
UNTAC(
国連カ ンボジア暫定統治機構)監視 下 での選挙 を経て、内戦状態 が終結 した。 この よ うな政治的安定 に よ り、カ ンボジアの経済 も落 ち着 きを取 り戻 した。カ ンボジアは、内戦終結後の1990年代 に計画 経 済 か ら市場経 済‑ の移 行 政策 を実施 した。
1993年9月 に施行 され たカ ンボ ジア王国憲法 に お いて市場経済体制 を採 用す る(第56条)と明文 化 された(13)。
天川 (2004)(14)は、社 会 主義 的経 済体制 か ら 市場経済体制‑の移行 に関 して、法制度 、特 に 憲法 との関係 について以下のよ うに述べている。
「カ ンボジアにお ける社会 主義的経済体制 か ら 自由市場経済体制‑の移行 は、1989年 の憲法改 正 に始 まる。 カ ンプチ ァ人民共和国は、1989年 4月の憲法改正 によって、1981年憲法 にあった
「漸進 的 に社会 主義 に前進 す る」 とい う文言 を 削除 した(第 1条)。 さ らに、経 済主体 と して、
1981年憲法で認 めた 「国家経 済
」
「集 団経 済」「家族経済」 に、 「混合経済
」
と 「私有経済」
を 付加 し (第14条)、 国民 に対 して土地 を所有す る権利 を認 めた(第15条)。 この憲法改正 に対応 して施行 されたのが、1989年投資法 と、居住地 の私的所有権 と耕作地の 占有権 に関す る大 臣会 議1989年第3
号命令 であった。 これ ら一連 の法 措置 によって、土地 に関す る私的所有権 と民間 企 業設 立の 自由が確 立 され た。 カ ンプチア人民 共和国の支配政党であった人民革命党 もまた、1991年10月 に採択 した政治綱領 で、 「自由市場 経 済 を実施す る」 こ と、 「家族 、個 人 、カ ンボ ジアまたは外国の民間会社 による土地 、家屋 、 財産、生産手段 な どの現在 の合法的 な所有 を認 め、断固 として保護す る」 こと、お よび 「国内 の、また外 国か らの投資に対 して開放政策 を採 用す る」 ことを謳 った。 この よ うに、パ リ和平 協定調印以前 か ら、経済の 自由化 ・市場化 に向 けての取 り組みは行われ ていた。 1993年憲法が 市場経 済体制 を採用す る(第56条)た めの素地 は 作 られていた と考 え られ る。 しか し、 よ りカ ン ボジア経済に決定的な影響 を与 えたのは、パ リ 和平協定に よって可能 になった国際社会‑の復 帰であった
。」
カ ンボジア経済は、近年比較的高い経済成長 を達成 して きてい る。 カ ンボジアは、1999年 に
AS E AN
に加盟 し、2004年 にはWTO
に加盟 した。1990年代半ば以降に縫製業の直接投資が増加 し、
同国の リーデ ィング産業 に成長 してい る。 カ ン ボジア‑ の外 国直接投資が増加 した要因 として は、米国 よ り最恵 国待遇 を得 て、繊維縫製 品の 輸 出が有利 であることが考 え られ る。
第
2
節 カンボ ジアの近年の経済成長図表4(15)は、2000年 か ら2006年 までのカ ンボ ジアGDP成長率 をみた ものである。 カ ンボジア の経済は、2006年 までかな り良い状況で推移 し て い る。 特 に実質GDPは 、2004年 が10.0%、 2005年が13.5%、2006年 が10.8%と好調 である。
産業別 に見 る と、縫製業、建設業、観 光、不動 産 な どの貢献が大 きい。
農業 も経済成長 に貢献 してい るが、その貢献 度 はそれ ほ ど高 くない。 しか しなが ら、農業セ クターは農村地域 ではまだ重要な役割 を果た し てい る。 そ こでは、大部分が生計維持 のための 稲 の耕作 に よってい る。
第
3
節 カンボ ジアの産業1
.農畜産 ・林業 ・水産業カンボジアの国際経営環境一人的資源、経済、外資投資法、会社法、労働法 45
図表5(16)は、2000年 か ら2006年 までのカ ンボ ジアの農 畜産 ・林業 ・水産業 の成長率 をみた も のである。2006年のカンボジアの農畜産 ・林業 ・ 水産業 は、GDPの約28パーセ ン ト、労働 力 の約 57.4パ ーセ ン トを 占めてい る。
近年農業生産量 は、変動 してい るが、 これ は 天候 に よ り影響 を受 けた米生産 に よる ところが 大 きい。 カ ンボジアの農業 は、 中国な どの近隣 諸 国‑ の輸 出のた め、米以外 のキ ャ ッサバや ト
ウモ ロコシな どの付加価値 の高い作物‑ の耕 作 多様化 がみ られ 、農家 の収入 に貢献 してい る。
畜産 については、カ ンボジア農林水産省 に よ る と、鳥イ ンフル エ ンザの発 生数 は2005年 に2 件か ら2006年 には6件 に増加 した。水産業では、
小規模 、あ るいは家族経 営の養殖漁業 は過 去 4 年 間著 しく増加 してい る。 さらに、林業 では、
焼畑 と永久的 な土地転換 に よる森林伐採 と森林 劣化 が問題 となってい る。
2.
工業図表6(17)は、2000年 か ら2006年 までのカ ンボ ジアの工業の成長率 をみた ものであ る。2006年 の工業は、カ ンボジアのGDPの約29パーセ ン ト、
労働 力 の約14パーセ ン トを 占めてい る。
工業は近年 かな りのス ピー ドで成長 してい る。
特 に工業 の 中で、都 市部 での縫製産業 と建設業 の貢献が大 きい。縫製 業 の生産 は、2006年 に約 13パーセ ン ト増加 した。
3.鉱業
カ ンボジアの天然資源 は、大 きな潜在 的可能 性 が ある。地 質学 と鉱物調査 は、カ ンボ ジアに は重要 な鉱物 が あるの を示 してい る、ボー キサ イ ト、宝石 、固形燃料 、金属 あ るいは非金属 の 鉱物 、石材 な どがあ る。 近年 、 この よ うな鉱物 資源 を開発す るための投 資が増 えてい る。
4.サー ビス業
図表7̀18)は、2000年 か ら2006年 までのカ ンボ ジアのサー ビス業 の成長 率 をみ た ものであ る。
2006年のカ ンボジアのサー ビス業 は、GDPの約 46 国際経営論集 No.36 2008
38.2パ ーセ ン ト、労働 力 の約26.0パーセ ン トを 占めてい る。 サー ビス業 は、2005年度 は約12.7
%、2006年 は約10.3%成長 した。 特 に、観 光 、 貿易、ホテル、 レス トラン、不動産、 ビジネス ・ サー ビスな どのサー ビス業の貢献 が大 きい。
第
4
節 カ ンボ ジアの投資図表8(19)は、2000年 か ら2006年 までのカ ンボ ジアの国別 ・産業別 の投資額 をみた ものである。
近年 、カ ンボ ジアの投 資額 は急拡大 してい る。
カンボジア開発省
( CDC;De v e l o p me n tCo u n c
il) に よる と、カ ンボジアの認 可 され たプ ロジェクトの総投資額 は、2005年 で11億6200万米 ドル 、 2006年 で26億3300万米 ドル で ある。
国内投資お よび海外 か らの直接投 資 ともに増 大 してい る。2005年 をみ る とカ ンボジアの国内 投資額 が
3
億8400万米 ドル 、海外 か らの直接投 資額 が7億7800万米 ドル、2006年 をみ る とカ ン ボ ジアの国内投資額 が11億4500万米 ドル 、海外 か らの直接投資額 が14億8800万米 ドル に増加 し てい る。海外 か らの直接投資 を国別 に見 る と (2006年 度 )、 中国が第
1
位 で7
億6300万米 ドル 、2
位 が ロシアで2
億7800万 ドル 、第3
位 は タイで1
億200万米 ドル 、第4位 は韓 国 で7900万 ドル 、 第5
位 は米 国で6200万 ドル とい う順 になってい る。 投 資額 を産業別 に見 る と (2006年度)、建 設 、鉱 業 、縫製 、エネル ギー、お よびセ メン ト の割合 が高い。もちろん、認 可 され た投 資プ ロジェク トがす べて実行 され たわ けで はない こ とに も注意 しな けれ ばな らない。
工業‑ の投資 は(2006年度)、10億5500万米 ド ル と、カ ンボ ジアの総投資額 の約40パーセ ン ト を 占めてい る。 この うち、縫製業 は2億1100万 米 ドル 、鉱 業 は 4億300万米 ドル 、エネル ギー は1億6700万米 ドル で ある。特 に、最近原 油の 発 見 に よ り、原 油採掘 ‑の投 資が劇 的 に増 えて い る。
サー ビス業 は、2006年 で最 も大 きい投資セ ク
タ‑である。サー ビスセ クターの投資認 可額 は ビス業の中で、建設 の割合 が最 も高 く、その約 10億7200万米 ドル に達 した。サー ビス産業‑の 86%を 占め9億800万米 ドル である。
投資はカ ンボジアの総投 資額 の約40パーセ ン ト を占め、2005年のそれの約5倍 に増大 した。サー
図表
1
カンボ ジアの産業別 の雇用者数の増加 と人数 (1) 労働 力の成長率E
㌔㌫
十
! .
早 + : \ ‑
f 一 一 一 ■ ■‑
(出所 :CDRI(2008).pp.84)
( 2)
産業別 の雇用者数( 2000‑ 2006
年) (単位: 1 000
人)(出所 :CDRI(2008).pp.85)
カンボジアの国際経営環境一人的資源、経済、外資投資法、会社法、労働法 47
図表
2
カンボジア、タイ、中国、ベ トナムの識字率 (15才以上、2006
年)(出所 :World DevelopmentIndicator2007)
図表
3
カンボジアの衣服産業労働者の賃金月給
( USD)
2001
年2002
年2003
年2004
年2005
年2006
年62
.463. 1 5 67. 56 6 4. 29 5 9. 3 66. 2 4
リエル (現地通貨)による名 目日給8 48 3 9087 9888 99 45 9600 1 0 , 48 4
リエルによる実質 日給(2000年11月をベース)8 479 8 770 95 27 91 38 8338 88 93 UsD
に よる変化率 (%)1 . 6 1 . 2 7. 0 ‑ 4. 8 ‑ 7. 8 11 . 7
リエル に よる名 目変化 率 (%)7. 8 7. 1 8. 8 0. 6 ‑ 3. 5 9. 2
リエル に よる実質変化 率 (%)6. 3 3
.48. 6 ‑ 4. 1 ‑ 8. 7 6. 6
(出所 :CDRI(2008).pp.88)
48 国際経営論集 No.36 2008
図表
4
カンボジアのGDP
成長率( 2000‑2006
年)(出所 :CDRI(2008).pp.53)
図表
5
農畜産 ・林業 ・水産業の成長率O o
0
1 ‑ 2 8 4% 0% 4
%%%表 ▲ ■ 一一 器 一 ̀ \ 一 、闇 ‑ '圏 lr . . 1 1
■ヽ<〜●でく..■ . \ . / . J . W { . : L で . I . 8% 40 0 ‑ 12 4%
%/
%0 0
2000 2001 2002 2
[二二:=コ農業 E:≡≡∃畜産業
003 2004 2005 2006
国 水産業(出所 :CDRI(2008).pp.54)
カ ンボ ジアの国際経 営環境‑ 人的資源 、経 済 、外 資投資法 、会社 法 、労働 法 49
図表6 カンボジアの工業の成長率 (2000‑2006年)
0 0
0 30%
25%
20%115%0%5%0% 20%5%30%0%25%110%.5%0
l l l l 一 一
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006
■■ー 鉱業 }蘭 』 製造業 ⊂::=コ 電力
囚 建 設 業 + 工業
囚 建 設 業 + 工業
(出所 :CDRI(2008).pp.55)
図表7 カンボジアのサー ビス業の成長率 (2000‑200600 年)
0 1 ‑ 2 8 4
0%4 % % 0
%/
0⊂:=コ トラン
‑
84%
0%1 4 2
%%%
0 iI
:::I: !小1; l2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006
その他 国 ホテルとレス
∈≡≡ヨ 交通 と小売 噛 圏 金融 匹盗≡召 公共部門
(出所 :CDRI(2008).pp.57)
50 国際経営論集 No.36 2008
図表
8
カ ンボ ジアの国別 ・産業別 の投 資額 (単位100万 ドル) 2000 2001 2002 2003 2004 2005%ii 270 235 255 318 340 1,162 国別
カ ンボ ジア 中国 ロシア タイ 韓 国 米 国 その他
6135
0
262ll0171 ‖H6280
153641 94240 0
82352 201450
123453 14089218496 4004840
506151つJ42 11457632781027962204産 業別 農 業 工 業 建材 セ メ ン ト エネル ギー 食 品 縫製 鉱 業 紙 石 油 薬 品
プ ラスチ ック シュー ズ タバ コ 木材加 工 そ の他 サー ビス業
建設 教 育 イ ンフラ 通信 交通 その他 観光 ホテル
0
15570
336870 1 1
11610
101140 0
310 0
470観 光 セ ンター 9
その他
o
5105
0 0
503320 1 0 0
2741512580
220 0
1569=o
12620 0
50
440 1
411 0 0
331810 0
68640
2470 0 0
1330 0
341650 1 0
70 1
32=185120
15100 0
135130
91760 0
2611350
31 0 1
15141530 0
400 0 0
38750
209310
1812891920018120
71028131211300
58130
31070 0
5061055213216732211403150
12340
4510729080
450
22577150
(出所 :CDRI(2008).pp.62)
カンボジアの国際経営環境一人的資源 、経済、外資投資法、会社法、労働法 51
第
3 章
カンボジアの外国投資法第
1
節 カ ンボ ジア王国投資法 の制定カ ンボ ジアは、 1994年 に 「カ ンボ ジア王国投 資法」 を施行 した。 同法 は、2003年 に一部 改正 を行 った。本稿 では、カ ンボジア王国投資法 の 主要 な条文 に従 って考察す る(20)。
第
2
節 投資法 の概 要「この法律 は、カ ンボ ジア王国内のカ ンボ ジ ア人 、及 び、外 国人投資家 に よる全 ての投資プ ロジェク トに適 用す る (第1条)。」
「投資家 は、 自然 人た る と法人た る とを問わ ない (第 2条)
」
カ ンボ ジアの投 資法 は、第
1
条 、第2
条 で規 定 してい るよ うに、海外 の投資家 (個人 と法人) お よび国内の投 資家 (個人 と法人) に適用 され る法律 で あ り、他 のアジア諸 国 にみ られ る外 国 投資家 のみ を対象 と した外 国投 資法ではない。「カ ンボ ジア開発評議会 は、復興 ・開発 と、
投資活動の監督 に責任 を持つ唯一のワン ・ス トッ プ ・サー ビス機 関であ る。 カ ンボジア開発評議 会 は、全 ての復 興 ・開発 ・投資活動 の評価 ・決 定に責任 を持つ王国政府機 関である (第
3
条)。」「カ ンボ ジア開発評議 会 は、以 下の二つ の組 織 に よ り構成 され る。 1.カ ンボ ジア復興 開発評 議会
、2.
カ ンボ ジア投資委員会 (第4
条)。」カ ンボジア は、国内‑ の投資 を促進す るた め に、カ ンボ ジア開発評議 会
( CDC)
を設 置 してい る。 この 下部組 織 と して 、 投 資委 員 会(CIB)を 設 立 し、国内外 の投資家 に対 し、 ワン ・ス トッ プ ・サー ビス を提供 してい る。「投資家 は、カ ンボジア王国憲法 に よ り規 定 され る土地 の所 有権 を除 き、平等 に取 り扱 われ る (第8条)
。」
この条項 は、カ ンボ ジア企業 と外 国企業 を差 別 してい ない こ と(た だ し土地所 有 に関す る事 項 を除 く)と規 定 してい る。 この点 にお いては、
他 のアセア ン諸 国の投資法 に比較す る とカ ンボ 52 国際経営論集 No.36 2008
ジアの優位性 であ る。す なわ ち、カ ンボジア資 本 と外 国資本 を法的 に区別 していないため (土 地所 有 を除 く)、 カ ンボ ジア投 資 で の外 資 の参 入障壁 が原則 として存在 しない とい う点である。
したが って、外 国企業 の製造業 のみ な らず小売 業 な どのサー ビス産業 の直接投 資が原則 として 認 め られ る。
「王国政府 は、カ ンボ ジア国内において、投 資家 の所有資産 に影響 を与 える国有化政策 を と
らない (第
9
条)。」
この条項 は、民間資産 を国が収用 しない こと とい う、投資資産 の保 障 を規 定 してい る。
「王国政府 は、政府 か ら事前 に許可 を得 た投 資家 の製 品や サー ビスに対 し、価格規制 を しな い (第10条)
。」
この条項 は、政府 が販 売価格規制 を しない こ とを保 障 してい る。
「カンボジア国立銀行 によ り定め られた法律 ・ 規制 に従 い、王 国政府 は、カ ンボ ジアにお ける 投資家 に対 し、銀行 システ ム を通 じた外貨 の購 入 、及び 、投資 に伴 う借入れ の返済 を 目的 とし た海外外貨送金等 を許 可す る。 以下 に この範境 に入 る例 を挙 げ る。
1.輸入代金 の支払 い、及 び 、海外借入資金 の 元本 ・利 子返済
、2.
ロイ ヤルテ ィー 、マネー ジ メ ン ト ・フ ィー の支払 い、3.利 益 の送金、4.投 下資本 の本 国送金 (第1
1条)。」
この条項 は、政府 が海 外送金規制 を しない こ とを保 証 してい る。
第
3
節 投資イ ンセ ンテ ィブカンボジア王国投資法では、投資イ ンセ ンテ ィ ブ (優遇措置) につ いて以下の よ うな規定があ る。
「王 国政府 は 、適 格 投 資 プ ロジ ェ ク ト(QIP:
Qualified InvestmentProject)に対 して、イ ンセ ンテ ィブ を与 える (第12条)。」
「イ ンセ ンテ ィブ としては、適格投資プ ロジェ ク トに対 して法人税 の免 除、輸 出税 の免税 な ど が ある (第14条)。」
適格投資プ ロジェク トとは
、1 0 0%
輸 出型投 資、各種製造業の投資、各種のイ ンフラ投資な どカンボジア政府 が歓迎す る投資プ ロジェク ト である。 なお、非適格投資プ ロジェク トは、貿 易、流通、サー ビス、金融 、マスコ ミな どの優 遇措置 を受 けない投資プ ロジェク トである。以上のよ うに、カンボジア政府 は投資法 を整 備 し、法人税 の免除、輸 出税の免税 な どのイ ン セ ンテ ィブを提示す ることによ り、外国企業の 誘致 を行い、成果 を上げっっある。
第
4
節 雇用「カ ンボジア王国‑の投資家は、労働法、及 び、入国管理法に抵触 しない限 り、カンボジア 国籍保持者で も、外国人で も自由に雇用す るこ とができる (第17条)
。」
「外国人 を雇用す る投資家は、以下を満 た さ ねばな らない。 1.特定の能力や専門性 が、カ ン ボジア王国内で得 られ ない場合。
2.
投資家 は, カンボジア人スタ ッフに対 し、適切かつ一貫 し た トレーニングを行 う義務 を負 う。3.カンボジ ア人スタッフの上級職‑の昇進 を常時行 う。外 国人被雇用者 は、カンボ ジア王国内で得た給与 を、適切 な税金 を支払 った後、銀行 を通 じて得 た外貨で本国に送金できる (第19条)。」
以上の条項 は、当該資格や専門性 がカンボジ ア国内で得 られない場合 には、管理者、技術者、
熟練作業者 として外国人 を雇用す るための ビザ や労働許可を得 ることを認 めている。 さらに、
外国人が所得 を海外 に送金す ることを認 めてい る。
第
4
章 カンボ ジア会社法1
.会社 に関する法制度カ ンボジアの会社 に関す る法律 として、 「商 業規則 と商業登記 に関す る法律」 (Law Bearing uponCommercialRegulationsandtheCommercial Register)は1995年5月 に制 定 され、 1999年11月 に改正 された。 この法律は、「取引業者
」
「貿易」「通 商行為」等 の内容 が定義付 け られ、外 国企 業 を含む会社の登記義務 と登記手続 きが定め ら れた。
2 0 0 5
年4月2 6
日に 「商 業 企 業 法」
(Law on CommercialEnterprise)が採択 され、2 0 0 5
年5
月 19日にカンボジアで最初の包括的な会社法 とし て公布 された。 この会社法では、企業形態 とし て 「パー トナー シ ップ」(一般パー トナー シ ッ プ と限定パー トナー シ ップ)、 「有限責任会社」
(私的有限責任 会社 と公 開有 限責任 会社)、 「外 国企業」が規定 されている。本稿では
2 0 0 5
年商業企業法(21)について、必要 な場合 日本の会社法 と比較 しなが ら詳 しく分析 す る。2.企業形態
「クメール国籍会社 は事業の場 と登録事務所 をカ ンボジアに有 し、かつ 51%以上の投票株式 を、クメール国籍 を有す る自然人又 は法人が所 有す る場合 において、カンボジア国籍の会社 と みな され る(同法第101条)
。」
カンボジアの企業法において、カ ンボジア企 業 とは以上のよ うな条件の企業であ り、外国企 業が
51 %
以上 を所有す る企業は、外 国企業の子 会社 (後述す る) として法律上扱 われ る。カンボジア会社法に基づ く企業形態 としては、
私的有限責任会社 と公開有限責任会社か らなる 有限責任会社、お よび一般パー トナーシ ップ と 限定パー トナー シ ップか らなるパー トナーシ ッ プがある。
(1)パー トナーシップ(Partnership)
「パー トナー シップ とは、2人またはそれ以 上の関係者 間の契約 であ る(第
8
条)。」
日本 の 企業形態では、民法上の組合 (ただ し、 日本の 民法上の組合 は法人格がない) に近い。「パー トナーシ ップ契約 は、 口頭 ない しは書 面によ りな され る(同法第9条)
。」
①一般パー トナー シ ップ
「一般パー トナー シ ップは、それが登記 された ときに法人格 を得て、以下の権利 を持つ。
自己の名義によ り動産 ・不動産を所有できる。
カンボジアの国際経営環境一人的資源、経済、外資投資法、会社法、労働法 53
自己の名義 に よ り取 引がで きる。
自己の名義 に よ り契約 がで きる。
自己の名義 に よ り訴訟 がで き、また訴訟 に応 じる ことがで きる(同法第12条)
。」
「各パー トナー は、パー トナー シ ップ に よる 利 益 ・損失 を分配す る(同法第
2 3
条)。」
「全 てのパー トナー は、共 同または個別 的 に 債務 を負担す る。債権者である第三者が、各パー トナー に対 して債務履行 を求 め る前 に、パー ト ナー シ ップ法人 に対 して債務 と財 産 に対す る履 行 を求 めなけれ ばな らない(同法第42条)
。」
② 限定パー トナー シ ップ
「限定パー トナー シ ップは、一般パー トナー と限定パー トナー間の契約 であ る。 一般パー ト ナー は、パー トナー シ ップ を運営す る出資者 で あ るのに対 して、限定パー トナー は有限責任 の 出資者 で ある。(同法第64条)
。」
「限定パー トナー は、出資割合 に応 じて利益 を受 け取 り、債務 については出資額 または資産 の価 値 を限度 とす る有 限責任 のみ を有す る(同 法第71,72条)
。」
「一般パー トナー は、第三者 に対 して共 同 し て 、個別 的 に負 債 に対す る無 限責務 を負 う(同 法第
7 5
条)。」
以上か ら、一般パー トナー シ ップは、原則 と して無限責任 を持つ実際に事業を行 うパー トナー シ ップ者であるのに対 して、限定パー トナー シ ッ プは、原則 と して出資額 のみ の有 限責任 を有す るパー トナー シ ップ者 であ る。
( 2)
有 限責任会社( L i mi t e dc ompa n y )
「会社 法」 では、カ ンボ ジアにおいて事業 を 行 な う際に 「私的有 限責任 会社」(privatelimited companies)と 「公開有限責任会社」(publiclimited companies)の2つ の形態 の有 限責任 会社 の設 立 を認 めてい る(第85条)0
① 私的有限責任 会社
「私的有 限責任 会社 は、登記 が行 われ 、株 主 数 が
2
名〜3 0
名 、株 式 が非公 開、発行 済み株 式 の譲渡制 限 を持 つ、出資者 は全 て有 限責任 であ 54 国際経営論集 No.36 2008る会社 であ る(第86条)
。」
なお 、一人 の株 主 に よって設 立 され る私的有 限 責 任 会 社 は 、 「単 独 株 主 有 限 会 社」 (single MemberLimited Company)と呼 ばれ る。
以上 か ら、カ ンボ ジアの有 限責任会社 は、 日 本 での株 式会社 に近 い企 業形態 であ る。
②公 開有 限責任 会社
「公 開責任会社 とは会社法 に よ り株 式 の一般 公開を認 め られた有限責任会社 である(第
87
条)。」
カ ンボ ジアの公 開有 限責任 会社 は、 日本 での 公 開会社 に近 い企業形態 で ある。
3.有 限責任会社 の設立
「一人 ない しは複数 の適法 自然人 または法人 は、会社 定款 を商業省 に届 け出 るこ とに よ り有 限責任会社 を設 立で き る (第
91
条)。」
「会社 設 立証 明 が商 業省 よ り発 行 され る(法 97条)
。」
「会社登記 の 日を もって会社 は公 的存在 とな り法人格 を獲得す る(同法第
9 8
条)0」
以上 の条文 では、有 限責任会社 は1人以上の 自然人 または法人 の出資 に よ り設 立 され 、商務 省 に よ り設 立証 明が発行 され る と法人格 を得 る
ことが出来 る としてい る。
4.
株式「会社 は額 面4,000リエル(約1米 ドル)以上 の 株 式1,000株 以 上 を発行 す る必要 が あ り、 定款 に他 の定 めのない限 り全 て同種株 とし、株 主の 権利 は平等 であ る(第144条)
。」
「株 主 の会社 に対す る責務 は、引 き受 け株式 の金額 に限定 され る(同法第147条)
。」
「全会一致原則 の取 り決 めが ある場合 には、
株 式 の券面 にその 旨表記 す るこ とが必要 とな る (第
2 2 3
条)。」
これ ら条項 は、有 限責任会社 の株 主は、出資 額 限 りの責任 しか負 わない有 限責任 であること を規 定 してい る。 また、株 式 の発行 に よる最低
資本金額 を規定 してい る。
5.
記録義務「会社 は次の文書 を記録 し、登録住所 で保管 しなけれ ばな らない。
定款 ・会社規則及びそれ らの修正。
株 主総会議事録及び決議。
法に よ り提 出 し、保 管す るこ とが義務付 け られ た全ての通知の コピー。
株 式登録。(第109条)
」
「上記文書記録 に加 え、各会計年度終了時か ら10年 間会 計記録 を保 管 しな けれ ばな らない (第113条)
。」
以上の条文では、法定上の会社保管文書 は定 款 、会社規則 、株 主総会議事録 ・決議 、株式登 録 、会計記録 である としてい る。
6.取締役
「私的有限責任会社 は一人以上の取締役 を有 し、公 開有限責任会社 では最低3人の取締役 を 選任す る。株主は通常決議 に よ り取締役 を選任 す る(第118条)
。」
「取締役会 は役員間にお ける多数決 で会長 を 選任す る(第
1 2 7
条)0」
「取締役 の任期 は 2年 間で、再任 は可能 であ る(第
1 21
条)。」
「18歳以上の法的適格者 は取締役 に選任 され ることができる(第
1 2 0
条)。」
以上の条文では、取締役会 の選任 は株 主総会 による通常決議 に よってな され ること、会長 の 選任 は役員 による互選 に よる と規定 してい る。
7.取締役会
「取締役会 は会社 の ビジネ ス と業務 を司 る。
取締役 は定款 に基づ き、次の業務 を担 当す る。
各職員の任命 と配置転換 、権限の決定、給与 及び他 の報酬 の決定。
手形、社債、その他の会社の債務証書の発行。
定款改定 ・削除、他社 との吸収 ・統合 の株 主 に対す る提議。
会社 の解散 ・清算 の株 主‑の提議 等。(第119 条)
」
以上の条文では、取締役会の決議事項 として、
会社の人事、社債 ・手形な どの債務証書の発行、
定款改定 ・合併 ・解散な どの株主総会‑の提案 、 な どであるとしてい る。
8.合併
「2社 また又 はそれ以上の会社 が一つの会社 として合併 し、又は新会社 を設 立す るために統 合す ることができる。被吸収会社 の法人格 は、
商業省が存続会社 に対 して 「合併証 明書
」
を発 行 した 目に消滅す る。 (第2 41
条)」
「合併 を提議 した各社 の取締役会 は合併契約 を承認す る決議 をなす ことを要す る(第
2 4 2
条)。」
以上の条文では、会社 の合併 については、提 議 した会社 の取締役会 で合併契約 を承認 し、商 務省 が存続会社 に対 して合併証明書 を発行す る
とい う手続 きを規定 してい る。
9.解散及び清算
「株式 を発行 していない会社 は全 ての取締役 の決議 によ り何時で も解散す ることがで き、資 産及び負債 を有 しない会社 も株 主 の特別決議 で 解散す ることができる。会社 は商業省 の会社管 理部署 に解散規約 を送付 し、 これ を受領後商業 省 は 「解 散証 明書
」( ce r t i nc a t eo fDi s s o l u t i o n )
を発行す る。(第
2 51
条)」
「取締役又 は年次株 主総会 にお ける投票権 を 有す る株主は、 自発 的清算又 は解散 を提案す る
ことができる(第
2 5 2
条)。」「解散及び清算 に関す る条項 は、裁判所 に破 産 を申 し立てた会社 には適 用 され ない (第
2 5 8
条)。」
ただ し、 「破 産法
」( La w o nI n s o l v e n c y )
の草 案 は完成 してい るが、国民議会 に よる採択 はなされ ていない 。
カンボジアの国際経営環境一人的資源 、経済、外資投資法、会社法、労働法 55
10.外国企業 の定義
「外 国企 業 とは、外 国の法律 に基づ き設 立 さ れ 、カ ンボ ジア に拠点 を有 しビジネ スを行 な う 法人 を指す(第270条)
。」
「外 国企業 は次の形態 に よ りカ ンボ ジアで ビ ジネ スを行 な うこ とがで きる。
商 務 代 表 事 務 所 (Commercialrepresentative ofofnce)。商務連絡事務所(Commercialrelations ofrlCe)又 は代理店 (Agency)。 以 上 を駐在 員事務 所(Representative0円ce)と総称す る.
支店 (Branch)。
子会社(subsidialy)。(第271条)
」
「駐在員事務 所及 び支店 は親 会社 の代理 であ り、親会社 とは異 な る法人格 を有 しない。外 国 企業が下記業務 を行 な う場合 には、 ビジネ ス行 為 を行 なってい るもの とみ な され る。
1ケ月以上 にわた り、製造 ・加 工 ・サー ビス のた めの事務所 その他 の場 を貸借す る場合。
1ケ月以上 にわた り、 自己のために他 人 を雇 用す る場合 カ ンボ ジアの法規 に よ り外 国人又 は 外 国法人 に認 め られ た行為 を行 う場合。(第272 条)
」
以上 の条文で は、外 国企業 の駐在員事務所 、 支店 、子会社 のカ ンボ ジアでの ビジネ ス を認 め てお り、駐在員事務所 と支店 につ いては法人格 を持 たず 、外 国企業 の代理 で ある と規 定 してい る。
ll .
駐在員事務所「商務代表事務所又 は商務連絡事務所 はカ ン ボ ジアにおいて次の業務 を営む こ とがで きる。
親 会社‑ の紹介 を 目的 とす る顧 客 との接触。
商業的 な情報 の調査 とその親 会社 ‑の連絡。
市場調査 の実施。
展示会‑ の物 品の売 り込み と自己の事務所又 は展示会 でのサ ンプル ・物 品の展示。
展示会 に向けた物 品の購入 と保管。
事務所 の賃借 と雇員 の雇用。
56 国際経営論集 No.36 2008
親 会社 の代理 と しての契約行為。(同法第274 条)
」
「駐在員事務所 は、カ ンボジアにおいて定期 的な売 買行 為 、サー ビスの提供 、製造行為 、加 工、建設 を行 な ってはな らない。駐在 員事務所 は親会社 の判 断 で閉鎖 で きる。(第277条)
」
12.支店「支店 は駐在員事務所 と同様 の業務 を行 なえ、
さらに法律 に よ り外 国人又 は外 国法人 に対 して 禁止 され てい る行為 を除 き、内国企業 と同様 に、
定期的な物 品及びサー ビスの売買、製造 、加 工、
建設 に従事 し得 る。(第278条)」
「支店 の資産 は親 会社 の資産 であ り、親 会社 は支店 の負債 に対 して責任 を負 う(第279条)。」
「支店 は親 会社 の判 断 に よ り閉鎖 し得 る(第 282条)
。」
13.子会社
「子会社 は、外国企業の最低51%の出資によっ てカ ンボ ジア に設 立 され る会 社 で あ る (第283 条)
。」
「子会社 は、親 会社 とは異 な る法人格 を有す る(第284条)
。」
「子会社 は、パー トナー シ ップ又 は有 限責任 会社 として設 立で きる(法285条)
。」
「カ ンボジア法規 に よ り外 国人又 は外 国法人 に対 して禁止 され てい る業務 を除 き、内国法人 と同様 の業務 を行 な うこ とがで きる(第286条)
。」
以上の条文 では、外 国企業 の直接投資 であ る 外 国企業 の子会社 につ いて規 定 してい る。外 国 企業 がカ ンボジアに51%以上 の出資 を して設 立 した企業 が、カ ンボ ジア会社法 では外 国企業の 子会社 と して扱 われ る。 子会社 は、法人格 を持 つ。子会社 は、内国企業 と同 じくパー トナーシッ プまたは有限責任会社 と して設 立で き、外 国法 人 ・外 国人 に禁止 され てい る業務 を除 き、内国 法人 と同 じ業務 を行 うこ とがで きる。
第
5
章 カ ンボ ジアの労働 法カ ンボ ジアは、1992年3月 に労働 法 が制 定 さ れ、1997年
3
月に改定 され た。 1997年労働法は、社会主義的色彩 の濃 か った1992年労働法 に大幅 な修正 を加 えた もので、 自由主義 的で、労働者 や組合 の権利 を尊重 した もの となってい る。
本稿 では このカ ンボ ジア1997年労働 法(22)につ いて、必要 な場合 日本 の労働 法 と比較 しなが ら 詳 しく分析す る。
1.労働者 のカテ ゴ リー
「労働法 では、 自然人 、法人 、国営 ・公営 、 民営が、1人以上 の従業員 を雇用 して企業 を構 成すれ ば雇用主 とな る (第2条)
。」
「この法律 が定義す る労働 者 とは、 自然 人、
法人 、公営 、民営 との間で、雇用 主の監督 と指 示 の下で報酬 を得 る雇 用契約 を結 んだ性別や 国 籍 に関わ りないすべての人で あ る (第3条)
。」
以上の条項 は、カ ンボジア労働法では、個人、
法人 、民間企業 、または国や地方公 共団体 が雇 う雇用契約 を締結 した従 業員 は、労働 法 の対象 になる。 なお、労働 法では、軍人、航空 ・海運 、 裁判官、公務員 は除外 され る対象 (第1条) と
してい る。 労働 法 で労働 者 として認 定 され るの は、第1に雇 用主の監督 と指示 の下で働 いてい る とい うこ と、第2に労働 の対価 と して報酬 を 得 てい る条件 で ある。
「雇用 の形態 に よ り、正社員 、臨時工 に区別 され る (第
9
条)。」「臨時工は、別 々に規定 され た条項 を除いて、
正社員 と同等 の規則 、義務 、権利 を持つ (第
1 0
条)。」「報酬 の種類 に よ り、労働者 は以下の よ うに 分類 され る。
月給 、 日給 、時給 な どの時間をベ ー ス と した 労働者 (その労働者 は毎 日、15日か1カ月 よ り 長 くない間隔で給料 を支払 う)0
生産量か出来高に よって報酬 を支払 う労働者。
歩合 によって報酬 を支払 う労働者。 (第11条)」
以上の条項 は、カ ンボ ジア労働 法 では、原則
と して正社員や 臨時工が同等 の規則 、義務 、権 利 を持つ ことを規定 してい る。
2.雇用 の差別 と強制労働
「労働者 を人種 、皮膚 の色 、性別 、教義 、宗 教 、政治信念 、出生、出身 、労働組合員 、労働 組合活動 な どの よ り、採用 、仕事 、職 業訓練 、 配置 、昇進 、報酬 、付加給付 、雇 用契約 な どで 労働者 を差別 してはい けない (第12条)
。」
「強制労働 については、1969年2月 にカ ンボ ジアが批准 した
I LO
の規 定 に よ り禁 じられ てい る (第15条)。」
以上の条項 に よ り、カ ンボジア労働法 では、
I LO
条約 を基 準 と した雇 用 の差別 と強制 労働 を 禁止 してい る。3.
雇用 の申告、内部規則、雇用 カー ド「この労働 法が適応 され るすべての雇用者 は、
企業 を設 立す る際 に、人事 に関 して労働省 に 申 告 しなけれ ばな らない (第17条)
。」
「全 ての雇用者 は、従業員 の採用 ・解雇 の度 に、書面 に よ り、採用 ・解雇 の 日か ら15日以 内 に労働省 に 申告 しな けれ ばな らない(第21条)
。」
「少 な くとも
8
人 の従業員 を雇用す る雇用者 は全 て、会社 の内部規則 を作成 しなけれ ばな ら ない(第22条)。」
「カ ンボ ジア国籍従業員 は、雇用 カー ドを持 つ必要があ る (第
3 2
条)。」「雇用 カー ドは、労働 監督官庁 に よって発効 され る (第35条)
。」
以上 の条項 に よ り、カ ンボ ジアでは、従業員 を雇用す る場合 、労働省 ‑ の 申告 、人事 に関す る社 内規則 の作成 、雇 用カー ドの取得 な どが必 要であ る。
4.雇用契約 (労働 契約)
「雇用契約 は、労働者 と雇用者 との間で労働 条件 に関 して締結 され た契約 であ る。雇用契約 カンボジアの国際経営環境一人的資源、経済、外資投資法、会社法、労働法 57
は一般法 の規 定 に よるもの と し、契約 当事者 の 合意 に よって締結 で きる。契約 は書面 に よって も口頭 で もで きる。 口頭 であ る場合 は、就 業規 則 を尊重す る。(第
6 5
条)。」
「期 間 を定 めた雇用契約 (有期雇用契約 ) は 正確 な終 了 日を記載す る もの と し、契約期 間は
2
年 を越 える ことはで きない。 また最長2
年 を 超 えない限 り、複数 回 にわた り更新 で きる。 こ の規定 に外れ る場合 においては、有期雇 用契約 は無期雇用契約 とな る。(第6 7
条)」
「就業時間外 の他 の職 業‑ の兼業 は、原則 と して認 め られ てい る (第69条)。」
「雇 用契約満 了後 に、職 業や就職 を制 限す る 雇用条項 は無効で あ る (第70条)。」
以上 の条文 では、雇用契約 (労働 契約) は、
使用者 と労働 者 の合意 に よって締結 で きる とさ れ てお り、雇 用契約 は書 面で も 口頭 で も可能 で あ る と してい る。 なお、 中国では新 たな労働 契 約 法 に よ り労働 契約 は 口頭 に よる型 は認 め られ ず 、必ず書面 に よって行 われ な けれ ばな らない としてい る。 日本 の労働 契約 法 では、で きる限 り書面 に よ り確認 す る もの とす る と規 定 してい る。
カ ンボ ジアの雇 用契約 は、 2年以 内の期 限 を 定 めた雇用契約 、お よび期 限の定 めのない無期 雇用契約 があ る。 また、就業時間外 の兼業 を認 めてい る。
5.
雇用契約 の終 了「有期雇用契約 は、通 常定 め られ た終 了 日に おいて終 了す る。 しか し、労働検査官 の立会い の下で書面での合意 が為 され 、両者 が署名 した 場合 にお いて は終 了 日以前 で も終 了す るこ とが できる。 も し両者の合意が成立 しない場合 には、
不正行為 があ った場合や不可抗 力 に よる場合 に のみ雇 用 終 了 日以 前 に解 消す る こ とが で き る (第73条)
。」
「無期雇 用契約 は契約 当事者 の一方 の意思 に よって終 了す るこ とがで きる。 終 了を望む契約 当事者 は他 の 当事者 に対 して事前 の書面 に よる 58 国際経営論集 No.36 2008
通知 を行 なわなけれ ばな らない。 ただ し、労働 法 では、労働者 の態度や行動 に正 当な理 由がな い限 り解雇 はで きない。(第74条)
。」
「雇用修 了の予告 は、勤務期 間が6カ月以 内 では 5目前 、勤務期 間が 6カ月以上 2年以 内で は
1 5
目前 、勤務期 間が2
年以上5
年以 内では1
カ月前 、勤務期 間が 5年 以上 10年 以 内では 2カ 月前、勤務期 間が10年 以上では 3カ月前 、に行 わなけれ ばな らない (第7 5
条)。」
以上の条約文 で、無期雇用契約 の終 了につ い ては労働者 または使 用者 の意 思 に よって終 了で きるが、事前 に通知 しな けれ ばな らない とし、
労働 者 の解雇 につ いて は、労働 者 の態度や行動 に正 当な理 由がない限 り行 うことはで きない と
してい る。
6.
解雇 に対 す る保 障「雇用契約 が雇 用者 の事 由で修 了 した場合 、 従業員 に過 失 があ る場合 を除いて、以下の よ う な保 障 を しなけれ ばな らない。 勤務期 間が
6
カ 月以上12カ月以内では7日分 の給料 と付加給付、勤務期 間が 1年 以上 では勤務年数 が 1年 ご とに
1 5
日分 の給料 と付加給付 、保 障の最大 は6
ケ月 分の給料 と付加給付 を支給 しなけれ ばな らない。(第89条)
」
以上 の条文 では、使 用者 の事 由で雇用契約 を 終 了 した場合 、法定の保 障金 を支払 う必要があ
る と してい る。
7.大規模 な レイオ フ (解雇)
「雇用者 が レイオ フを実施す る場合 、従業員 の技能 、勤務年数 、家族 の負担 を考慮 して解雇 者 を選 定 しなけれ ばな らない。 大規模 な レイオ フをす る前 に、従業員 の代表 に対 して通告 しな けれ ばな らない。解雇 では、技能 レベル の低い 人 、お よび勤務年数 の短 い人 を先 に レイオ フす る。 なお 、勤務年数 は、結婚 してい る従業員 は 1年 、子供 のい る従業員 は子供 1人 につ き 1年 勤務年数 を加 えるもの とす る。2年以上勤務 し
て解雇 され た従業員 は、再雇用の際、優先権 を 持つ。 (第
9 5
条)」
以上の条項 か ら、カ ンボ ジアでは解雇 につい て、技能 レベル の低 い人、お よび勤務年数 の短 い人 を先 に レイオ フす る とい う解雇 のルール が 労働法において規定 されている点はが興味深い。
日本 の労働法では、解雇 のルールが条文 に規定 され ていない とい うことと比較す る と、カ ンボ ジア労働法 は解雇 のルール が明確 である とい え るであろ う。
8.
労働協約「労働協約 の 目的は、組織 を代表す る雇用者 と従業員の間で労働や雇用条件 を規制、決定す る協約 である。 労働協約 は、法律的 に認 める労 働組合 を拡張 し、労働者 の社会的 リス クを保護 す るもので もある。 労働協約 は、雇用者や雇用 者 の代表す る者 と労働者 を代表す る1つ以上の 労働組合組織 との間で合意 された文書化 した協 約 である。(96条)
」
「労働協約 の条項 は、組織 内のすべてのカテ ゴ リーの従業員に適用す るもの とす る(第
9 7
条)。」
「労働協約 の規定が、カ ンボジアの労働法や 条例 よ り上位 であって も良いが、法律や条例 に 違反す る条項 は無効 である (第
9 8
条)。」
以上の条文では、使用者 と労働組合 または従 業員代表 との間で合意 され た労働協約 に関 して、
企業内のすべての従業員 に適用す ること、労働 法や条例 を最低 限厳守 しなけれ ばな らない と規 定 してい る。
9.賃金
「賃金 は少 な くとも最低賃金 に等 しくなけれ ばな らない。す なわち、全 ての労働者 に人間の 尊厳 に矛盾 しない生活水準 を保証す るものでな けれ ばな らない (第
1 0 4
条)。」
「最低賃金 は専門や職業 に よる差別 な しに、
労働省の省令 によ り決定 され る。 専門や職業 に よる差別 な しに、労働担 当省 の省令 に よ り決定
され る。最低賃金 は、経済状況や生活 コス トを 考慮 して改定 され ることがある。(第
1 0 7
条)。」
「作業員が他 の方法 に よることに同意 しない 限 り、賃金 は現金 をもって当該作業員 に直接支 払わなけれ ばな らない (第113条)
。」
「作業員 の賃金 は最長16日間の間隔で、最低
1
ケ月 に2
回支払 わなけれ ばな らない。 また職 員の給与 については最低1ケ月 に1回支払 うも の とす る(第116条)。」
以上の条文では、労働者 の賃金 は国が定めた 最低賃金 を上回 る額でなけれ ばな らない ことが 規定 されてい る。 さらに、賃金 は現金 のみの支 払いで、現物 出資な どは認 め られ ない。 また、
賃金の支払いはブルーカ ラー従業員 (作業員) は
1
ケ月 に2
回以 上 、 ホ ワイ トカ ラー従 業員 (職 員) は 1ケ月 に 1回以上 であ る と規 定 して い る。10.労働 時間
「男女 ともに作業員 の労働 時間は1日8時間 又 は
1
週 間 に4 8
時 間 を超 え る こ とが で きない (第1 3 7
条)。」
「作業工程がシフ ト制 による場合 は、企業経 営者 は通常、朝 シフ トと午後 シフ トの 2シフ ト 制のみ を とり得 る(第
1 3 8
条)。」
「例外的かつ緊急の仕事 によ り残 業 を行 な う 場合 にお いては、通常 の作業時間 よ り
5 0 %
増 し の賃金 を支払 うもの とす る。残業が夜 間又 は週 休 日にわた る場合 には、1 0 0 %
増 しとす る(第1 3 9
条)
。」
「
「夜 間」
とは、午後1 0
時か ら翌朝午前5
時 の間を含む、連続す る11時間 を指す。昼勤 と夜 勤 を交互 に行 な うシフ ト制 による連続作業以外 に、企業 にお ける作業 は夜 間に も行 ない得 る。夜 勤 について は本法
1 3 9
条 に規 定す る割 増賃金 を支払 うもの とす る(第1 4 4
条)。」
以上の条文 よ り、カ ンボジアの労働 は
、I LO
条約 の最低基準である、1
日8
時間、週4 8
時間 労働 を法定 としてい る。 また、残業での通常の 割 り増 し賃金は5 0 %
増 し、夜間お よび休 日は1 0 0
カンボジアの国際経営環境一人的資源、経済、外資投資法、会社法、労働法 59%増 しと規定 している。
l
l.休暇「同一一一の労働者 を
1
週 に6
日を超 えて労働 さ せ ることはで きない (第1 4 6
条)。」
「週休 は最小限
2 4
時間連続 して与 えなければ な らず 、原則 的 には 日曜 日に これ を与 える(第1 4 7
条)。」「全ての作業員 は勤続 1ケ月につ き
1 5
日の有 給休暇 を取得できる。 この有給休暇は、更に勤 続3
年 ごとに1
日の割合で増加す るもの とす る (第1 6 6
条)。」
「年次特別休暇は通常 クメール正月 に与 え ら れ る。作業員が
1 5
日を越 える有給休暇 を有す る 場合 においては、残余 日数 を他の時機 に取得す る権利 を有す る(第1 7 0
条)。」
「雇用者 は、作業員の直系の家族 に直接影響 を与える事象 が起 きた場合 には、当該作業員 に 最長
7
日間の特別休 暇 を与 え る権利 を有す る (第1 6 9
条及び1 71
条)0」
「女性は
9 0
日の出産休暇を とる権利 を有す る。出産休暇明け職場復帰の最初の2ケ月間は、軽 作業のみに従事す る。 出産休暇 中においては給 与の半額 を支給 され るもの とす る(第
1 8 2
条及び1 8 3
条)。」
以上の条文 によ り、休暇は 1週間に 1日は与 えること、年 次有給休暇 は1ケ月以上勤務 した すべての従業員 に対 して年
1 5
回、 さらに勤続3
年 ごとに 1日の割合で増加す ると規定 している。12.労働組合
「労働者 と雇用者 は、如何なる差別 も事前の 承認 も要せず 、 自らの選択 によ り職業的組織 を 結成す る権利 を有 し、調査、利益の増進 、組織 の規則 によ り成員 と認 め られた人々の道徳的 ・ 物質的利益 を含む集団的 ・個別的権利 の保護 を 図 ることができる。労働者 の職業的組織 は 「労 働組合」 と呼ばれ、雇用者の職業的組織 は 「雇 用者協会」 と呼ばれ る。 この法の 目的に従い、
6 0
国際経営論集No . 3 6 2 0 0 8
雇用者 と労働者 の双方 を含む労働粗合又は雇用 者協会 は禁止す る(第
2 6 6
条お よび省令3 0 5
号)。」
「最少
8
人 を常時雇用す る全ての企業や団体 においては、全ての労働者の唯一の代表 として、企 業や 団体 での投 票資格 の あ る組 合代表委員
( s h o ps t e wa r d )
を選 出 しなければな らない (第2 8 3
条)。」
「仲裁決定を拒否す る場合 に、紛争の一方の 当事者がス トライキや ロックア ウ トを行 な う権 利は保証 され る(第
31 9
条)。」
「ス トライキ権は、仲裁評議会が労働 に定め られた期間内に裁定を下 さない か連絡 しない場 合 において行使 し得 るもの とす る。 また、労働 者 を代表す る組合が、集団取 り決めや法の遵守 を執行す るために、ス トライキ権 を行使すべ き であるとみな した場合 において も行使 できる。
一般的に、労働者 の経済的、社会 ・職業的利益 を守 るために も行使 され ることができる(第
3 2 0
条)。」
「ス トライ キは少 な くとも7労働 日の事前通 告 を必要 とし、企業や 団体及び労働担 当省 に提 出 されなけれ ばな らない(第
3 2 4
条)。」
「ス トライキは平和的に行 なわれなければな らない。 ス トライキ期 間中において暴力的行為 を行 な うことは、深刻 な違法行為 とみな され、
出勤停止や懲戒的一時解雇 を含む罰則の対象 と な り得 る(第
3 3 0
条)。」
「ス トライキ不参加者 の労働 の 自由は、あ ら ゆる種類の威圧や脅迫 か ら保護 され なければな
らない(第
3 31
条)0」
以上の条文によ り、カ ンボジアでは労働組合 を設立す る権利 が認 め られているが、中国やベ トナムのよ うに労働組合設立の義務 はない。 ま た、労働組合のス トライキ権 も法の規定の範囲 で認 め られている。
13.外国人従業員
外国人従業員 について
、1 9 9 7
年労働法は次の よ うな規定を設 けてい る。「労働 担 当省 に よ り発行 され た労働許 可書
(work permit)と雇用 カー ド(Employmentcard)を 保有 しない限 り、外 国人従業員 は就業す るこ と がで きない。
「労働許可 は 1年 間有効で 、当人の居住許 可 に定 め られ た期 間 を超 えない期 間延長 が可能 で ある (第261条)。」
以上の条文 の よ うに、カ ンボ ジアでの外資系 企業 の 日本 人派遣社員 を含 む外 国人従業員 は、
1年 間有効 の政府 か ら発行 され る労働許 可書 と 雇用 カー ドを取得す る必要 が あ り、期 間の延長 は可能 であ る。
おわ りに
著者 は、本年 の2008年
3
月 にカ ンボ ジア を訪 問 した。本稿 は、そ こで の現地資料 を中心 と し て最新 のカ ンボジアの情勢 を踏 まえて執筆 した。著者 の現地での印象 と して、想像 以上 に活気 があ り、新 しい国を作るんだ とい うバイタリティー に溢れ ていた。 また、海 外 か らの援助 も活発 に 行 われ てい る。 プ ノンペ ンに関 してい えば、治 安 は安 定 して きてい る。 カ ンボ ジアは、 日本 か らの投資 はまだ少 ないが、ア ジア諸 国か らの投 資 は拡 大 してい る。
日本 か らの投資 で注 目され てい るのは、ヤマ ハ がカ ンボ ジアに二輪車 工場 を作 る とい う計画 で あ る。 ヤマハ発動機 は、豊 田通商 な どと共 同 で二輪車 の組 み立て、販 売拠 点 を設置す る計画 で ある。計画 に よる と2010年 に年 間
3
万台 を生 産す る。 そのために、2008年8月新会社 「ヤマ ハモー ター カ ンボ ジア」 を資本金約12億 円でプ ノンペ ンに設 立 し、約 9万平方 メー トル の工場 用地 を取得 した。 2009年7
月 まで に新 工場 を稼 動 させ る予 定で ある とい う。カ ンボジアは、まだ多 くの困難 があ るが、ア ジアの投資の フ ロンテ ィア として、将来が期待 され る国の 1つ で あろ う。
注
1.WorldBank(2008)。 2.WorldBank(2008)。 3.WorldBank(2008)。
4.Cambodia Development Resource Institute (CDRI)(2008)。
5.Cambodia Development Resource Institute (CDRI)(2008)、pp.84.
6.Cambodia Development Resource Institute (CDRI)(2008),pp.85.
7.石田正美編 (2005)、95‑96ペー ジ。
8.WorldBank(2008)0
9.石 田正美編 (2005)、98ページ。
10.石 田正美編 (2005)、98‑99ページ。
ll.WorldBank(2007)。
12.Cambodia Development Resource Institute (CDRI)(2008)、pp.88.
13.カンボジア憲法については四本健二 「カンボ ジアの復興 ・開発 と法制度」天川直子編 (2001) 第3章、お よび、四本健二 (1999)参照。
14.天川 (2004)、13‑15ページ。
15.Cambodia (CDRI)(2008)、 16.Cambodia (CDRI)(2008)、 17.Cambodia (cDRl)(2008)、 18.Cambodia (CDRI)(2008)、 19.Cambodia (CDRI)(2008)、
Development Resource Institute pp.53,
Development Resource Institute pp.54.
Development Resource Institute pp.55
Development Resource Institute pp.57.
Development Resource Institute pp.62.
20.カンボジア投資法に関 しては、四本 (1999) 278‑284ペー ジ、お よび ジェ トロ (2000) 141‑
146ペ ー ジに 日本語 訳 、 カ ンボ ジア開発評議 会 (2006)55‑59ページに英文の条文がある。
21.カンボジアの会社法については、カンボジア 開発評議会 (2006)、10‑13ページを参考に した。
22.カンボジア労働法に関 しては、カンボジア開 発評議会 (2006)、 10‑13ペー ジに解説 が、 Sok siphana(1998)に英語訳条文がある。
参考文献
1.綾部恒雄 ・石川米雄 (1996)「もっ と知 りた いカンボジア」弘文堂。
2.天川直子編 (2001
)
「カ ンボ ジア復興 ・開発 メコン地域開発」アジア経済研究所。3.天川直子編 (2004)「カンボジア新時代」ア ジア経済研究所。
4.Cambodia Development Resource Institute
ヵンポジアの国際経営環境一人的資源、経済、外資投資法、会社法、労働法 61
(CDRI)(2007),"Annual Development Review 2006‑07、 Cambodia Development Resource lnstitute.
5.Cambodia Development Resource Institute (CDRI)(2007),"pro‑PoorTourism‑intheGreater Mekong Sub‑Region、Cambodia Development ResourceInstitute.
6.Cambodia Development Resource Institute (CDRI)(2008),"Annual Development Review 2007‑08、 Cambodia Development Resource lnstitute.
7.カ ンボ ジア開発評議 会 (2006)「カ ンボ ジア 投資ガイ ドブ ック」カ ンボジア開発評議会。
8.Economic Institute of Cambodia(2005), HcambodiaCompetitivenessReport2005‑2006", EconomicInstituteofCambodia.
9.EconomicInstitute ofCambodia(2007),"Export Diversification and Value Addition",Economic lnstituteorCambodia.
10.石 田正美編 (2005)「メ コン地域 開発 」 ア ジ ア経済研 究所。
ll.石 田正美 ・工藤 年博編 (2007
)
「大 メ コン圏 経済協力」アジア経済研 究所。12.ジ ェ トロ編 (2000)「ビジネ スガイ ド カ ン ボジア」日本貿易振興会。
13.四本健 二 (1999)「カ ンボ ジア憲法論」到 草 書房。
14.日本政策投資銀行 メコン経済研 究会編 (2005)
「メコン流域 国の経済発展戦略」日本評論社。
15.日本 労働研 究機 構 (2002)「カ ンボ ジア 外 資系衣料産 業の拡大 と雇用変動」 日本労働研 究機構。
16.虞畑 伸雄 (2004)「カ ンボ ジア経 済入 門」日 本評論社。
17.Sok Siphana(1998),"LaborLaw in Cambodia", The Combodian LegalResourcesDevelopment Centre(Phnom Penh).
18.WorldBank(2007),"WorldDevelopmentReport 2007",World Bank(田村勝省 訳 「世界 開発 報 告2007」一灯舎、2007年)
19.WorldBank(2008),"WorldDevelopmentReport 2008",World Bank(田村勝省訳 「世 界 開発 報 告2008」一灯舎、2008年)
62 国際経営論集 No.36 2008