「改正労働契約法」の活用と
非正規労働者の処遇改善
非正規センター(ゆい)第1 「改正労働契約法」のポイント
1 無期契約への転換(18条)
有機労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込み、期間の定 めのない労働契約(無期労働契約)に転換。2 「雇止め法理」の法定化(19条)
客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、雇止め はできない。3 不合理な労働条件の禁止(20条)
期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止(均等待遇)。第2 改正の立法趣旨
○ 「有期労働契約の反復更新の下で生じる雇止めに対する不安を解消していくこと」及び 「期間の定めがあることによる不合理な労働条件を是正」して「労働者が安心して働き続 けることができる社会を実現する」ものである(法改正案政府提出理由説明)。 ○ 立法趣旨に基づき、厚労省が「労働契約法の施行について」(基発0810第2号)を発 出しており、法律解釈にこの通達が重要となる。第3 無期転換ルール(18条)
1 趣旨
有期労働契約が反復更新され5年を超えたときは、労働者の申し込みによって、期間の定 めのない労働契約(無期労働契約)に転換するルール。 ※ 2013年4月1日以降5年間の雇用が対象 2013年4月1日以前の雇用期間はカウントされない。2 要件
● 同一使用者との間の有期労働契約を更新して通算5年の契約期間を超えること ● 現に締結している有期労働契約期間内に無期転換の申し込みをすること (1) 同一の使用者の解釈 ○ 他の会社を辞め郵便局に採用された場合、他の会社の雇用期間はカウントされない。 ○ 郵政の場合、例えば日本郵便で雇用が継続された場合、職場(局)を替わったとしても 継続としてカウントされる(あくまでも同一の使用者とは職場ではなく会社をさす)。 ○ 問題は日本郵便からゆうちょ銀行などのようにグループ会社間の雇用期間の取り扱い △ 原則としては「同一の使用者」とはいえず雇用継続がカウントされない可能性が大 きい(交渉で整理必要)。 △ ただし、無期転換を免れる意図を持って会社がグループ間で契約変更を繰り返した と認められるような場合は、雇用継続が認められる可能性が大きい(客観的に個別判 断)。(2) 労働者による申し込み ○ 労働者による無期転換申し込みが必要(無期転換申込権の行使) ○ 申し込みをしないで雇用が継続した場合は有期雇用契約となる。 ○ 申し込みは口頭でも有効であるが「申込書」を提出する方が望ましい。 ⇒労働組合として「申込書」を用意して、提出するよう周知することが検討。 ⇒会社として申込権が発生した期間雇用社員に対し「申込書」を渡すように要求。 ※ 有期雇用契約から無期雇用契約への転換は全く労働者に不利益につながるものはな く、5年間継続する場合は「申込権の行使」を必ず行使するよう周知必要。 (3) 無期転換申込権事前放棄は違法 あらかじめ無期転換申込権を放棄することを許容すれば、使用者が有利な立場を利用し て転換権放棄を強要する場合も想定され、労働者の無期転換権事前放棄は違法であり、無 効となる。
3 効果
(1) 無期労働契約への転換 ○ 期間の定めのない労働契約になるが、現に締結している労働契約と同一の労働条件にな るのが原則 ○ 正社員と同一の労働条件となるのではない (2) 「別段の定め」による労働条件の変更 ○ 無期労働契約転換に際し「別段の定め」によって労働条件を変更することは可能。 ⇒ 労働組合として正社員との均等待遇にするような「別段の定め」を要求し、協約、就 業規則の改正を求める取り組み必要。 (3) 「別段の定め」による労働条件の不利益変更 ⇒ 労働契約法18条では「現に締結している労働契約と同一の労働条件」が原則であり、 その意味からも不利益変更は許されないと解釈すべき。 (4) 個別合意による不利益変更 ⇒ 施行通達において、「無期労働契約への転換に当たり、職務の内容などが変更されな いにもかかわらず、無期転換後における労働条件を従前よりも低下させることは、無期 転換を円滑に進める観点から望ましいものではない」としている。 (5) 就業規則による不利益変更の場合(無期契約転換時点で給与を○円減額など) ⇒ 就業規則の不利益変更については、「厳格な合理性」が求められ、その要件が認めら れない限り拘束力はない。 ⇒ 組織率4分の3未満の労働組合が労働条件を切り下げる労働協約を締結したとして も、労組法17条の一般的拘束力は生じない。 (6) クーリング期間 → 一定の労働契約を締結していない期間があった場合は、契約期間の通算をリセットす ること ① 空白期間が6ヶ月以上の場合 ⇒ 通算契約期間がリセットされる。 (例)2014年1月1日から1年間勤務したが 2014年12月31日に離職した場合 △ 2015年6月30日までに有期契約で再雇用 →前の1年間は通算契約期間にカウント △ 2015年7月1日以降に有期契約で再雇用 →前の1年間はカウントされない② 直前の有期労働契約の契約期間が1年未満の場合 ⇒ 空白期間が6ヶ月より短くてもクーリングとなる →「その直前の有期労働契約の契約期間の2分の1を基礎」 (例)直前の有期労働契約として6カ月勤務の場合 ⇒ 3ヶ月間の空白でクーリング(以前の6ヶ月間はカウントされない) ⇒ 3カ月を過ぎた再雇用の日から5年間で無期労働契約となる
4 無期転換ルールの問題点と課題
○ 法律適用が2013年4月1日からであり、それ以前の雇用期間はまったくカウントさ れない。 ⇒ 無期労働契約への転換は法改正と関係なく会社の判断で可能であり、法趣旨を踏まえ、 長期有期労働契約継続者の早期無期労働契約転換の要求 ⇒ 郵政の場合、10年以上継続勤務者が26.1%、5年以上継続勤務者は60.5%ともな り、2014年4月1日から5年間となると15年以上も有期労働契約でやっと無期労働契 約となる労働者が3割近く存在することになる(PIWU13春闘アンケートより)。 ○ 使用者によるクーリング期間の悪用 ⇒ 4年6カ月雇用継続し、いったん雇用継続を打ち切り6カ月後に再度有期労働契約で 雇用するなど ⇒ 郵政の場合は、期間雇用社員人数も多く、5年以内にいったん雇用打ち切り6カ月後 再雇用はかなり困難と考えられる。 ⇒ クーリング期間悪用として、限定した人数に対する雇止め、そして再雇用とする場合、 労働契約法19条との関係で合理的理由が存在しないとして雇止め無効となる可能性が 極めて高い。第4 雇止め法理の明文化(19条)
1 趣旨
「解雇権濫用法理の類推適用」(判例法理)の法定化2 要件
① 申込み ⇒ 有期契約期間満了する日までに有期労働契約の更新の申込み又は期間満了後遅滞な く有期労働契約の締結の申込みをすること ② 合理的期待等 ⇒ 反復更新され社会通念上無期契約と同視できる ⇒ 期間満了時に更新されるものと期待することについて合理的理由がある ③ 客観的合理性及び社会相当性 ⇒ 使用者の拒絶が、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でないこと3 予想される問題点
(1) 無期転換回避のための雇止め → 無期契約転換を回避するための雇止めは違法・無効となる。(2) 就業規則の改悪で雇用上限を設定する(5年以上は更新しない等) → 今まで更新してきた更新回数や更新期間の上限設定は、労働条件の不利益変更で、不合 理であり、労働者を拘束しないとの争いとなる。 (3) 次回は更新しないとの不更新条項による契約更新 → 法律的には、不更新条項の条件を拒否して従前の労働契約申し込めばよいことになる。 → 不同意条項に同意しないからとの理由だけでの雇止めは客観的合理性も社会相当性もな いと判断される。 → ただ、期間雇用社員が不更新条項による契約更新を拒否できるかどうかは難しい問題で あるが、雇止め法理が法律化されたことによって不更新条項拒否による雇止めを争った場 合勝利する可能性は大きくなっており、裁判実績で不更新条項による契約更新をさせない 取り組みが必要となる。 (4) 最初の契約時で契約回数や期間が決められる場合 → 法律解釈としては違法・無効というのは困難。 → 郵政の場合、実態として回数制限もなく、10年以上も雇用継続している実態があり、 期待権として争うことは可能。
第5 不合理な労働条件の禁止(20条)
【20条全文】 (期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止) 第20条 有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定 めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働 契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業 務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という)、当 該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであ ってはならない。1 20条の意義
「有期を理由とする不合理な労働条件を禁止する」ことが明記された法律となったことに より、正社員との労働条件の格差是正を求める法律上の根拠ができた。 ※ 「パート法8条」は「正社員との均等待遇」について、「正社員と同一の労働条件」を 要件としていたが、新労働契約法20条は同一ではなくとも「不合理な格差」とされた。2 20条の労働条件の範囲
賃金、賞与、退職金、各種手当や労働時間など、狭義の労働条件のみならず、労働契約の 内容となっている災害補償、服務規律、教育訓練、付随義務、福利厚生など、労働者に対す る一切の待遇を含む。3 労働条件の相違が不合理か否かの判断方法
労働条件の相違が不合理と認められるかどうかの判断は、次の要素を考慮して個々の労働 条件ごとに判断される(施行通達)。 ① 労働者の業務の内容及び当該事業に伴う責任の程度 ② 当該職務の内容及び配置の変更の範囲 ③ その他の事情以上の項目は要素とされ、①②とも「正社員と同一」が要件ではなく、同一でなくても2 0条は適用される。