九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
マイクロダイアリシス法を用いた薬物動態のIn Vivo 評価に関する研究
中嶋, 幹郎
https://doi.org/10.11501/3099947
出版情報:Kyushu University, 1994, 博士(薬学), 論文博士 バージョン:
権利関係:
マイクロダイアリシス;去を用いた 薬物動態のIn Vivo評価
に関する研究
1 994年
中 嶋 幹 郎
の
マイクロダイアリシス法を用いた 薬物動態のIn Vivo評価
に関する研究
1 994年
中嶋幹郎
目次
序論 ・
第1章 マイクロダイアリシス法を用いたラットに於けるL-dopaの in vivo脳内移行動態の検討
第1節 L-dopaならびに関連代謝物の透析プローブによる
in vitro回収率の検討 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 9
にυ
第2節 L-dopa関連代謝物の内因性物質のベースライン値の検討・ ・ ・ 11 第3節 Carbidopa及びbenserazideの透析液中薬物量の検討
1 3
第4節 L-dopaの体内動態 に対するcarbidopa及びbenserazideの
AADC阻害作用の比較検討
1 6
4-1
L-dopaの脳内移行性・1 6
4-2
血中に於けるL-dopa関連代謝物の動態· 2 0 4-3
線条体に於けるL-dopa関連代謝物の動態· 2 6
第5節 小括
. 32
第6節 実験の部
. . . . . . 34
第2章 マイクロダイアリシス法を用いたラットに於けるvalproate
(VPA)のin vivo経皮吸収動態の検討
. . . . . · 4 1
第1節 In vivo経皮マイクロダイアリシス法の開発· 4 3
第2節 VPAの経皮吸収に対するHPE-I0lの促進効果 ・· 4 5
第3節 小括
. 50
第4節 実験の部 ・
- ・ ・ ・ 5 1
7$3苧: マイクロダイアリシス法を用いたラットに於けるmethotrexate
(MTX)のin vÍVO経皮吸収動態の検討 ・
2H 1節 MTXの終)支l吸収に対するHPE・101の促進効果
tf� 2 í和
小折・
第3 ÎlÍ'j 実験の��I�
第4市 マイクロダイアリシス法を用いた家兎に於けるvalproate
. 54
5 5 6 2 6 3
(VPA)のin vivο血妓蛋白結令の検討
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 6 6
tf} 1節
l次消失モデル実験装置を用いた透析プローブからのVPAのin vitro [f!]収率の検討-
第2節 透析プローブによるVPAのin vitro回収率 2 - 1 溶媒の影響
・
2-2
濃度、 温度及び撹鮮の影響 ・ ・ 第3節 血中濃度推移第4節
In
vivo血竣蛋白結合4
-1 In vitro回収率を用いての血禁中遊離VPA濃度の
補正算出
4 -2 VPAのin
vi v
o血紫蛋白結 合 率 ・
第5節 小括 ・第6節 実験の部 ・
6 7 6 9 6 9
・ 7 2
•
7 6
・ 7 9
•
7 9 8 1 8 2 8 3
結論
・ ・ ・ ・ . . . . . ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 8 9
参考文献 ・ ・ ・ ・ ・ ・ . . . . . ・ ・ ・ 9
2
付記 ・ ・ ・ ・ ・ ・ . . . . . ・ ・ ・ ・ ・ 9 9
謝辞 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ . . . . . ・ ・ 100
序論
近年、 医薬品開発に於て、 薬物投与の最適化を指向して製剤設計を行うドラッ グデリバリーシステム(drug delivery s ys tem : DDS)の概念が導入されてきてい るし 2)。 この概念に沿って、 薬物の生体内挙動を精密に制御することを目的と した製剤設計の研究が、 薬剤学の領域に止まらず、 数多くの学際領域で盛んに行 われている。 実際の臨床の場に於ても、 慢性動脈閉塞症に伴う阻血性潰蕩に対し て適用するプロスタグランジンElの脂肪乳剤化製剤、 狭心症に対して適用する
ニトログリセリンの経皮吸収製剤など続々と登場してきている。
ところで'" DDSの開発に於ては、 臨床段階での製剤の有効性及び安全性を予測 するために、 前臨床段階の動物試験で、 生物薬剤学とりわけファーマコキネティ
クスを基礎として、 薬物の生体内動態を定量的に把握することが必要不可欠とい える。
薬物動態を評価するためには、 目的に応じた適切な実験法と、 その実験で得ら れた動態データの正確で信頼性のある解析法の確立が重要であるが、 最近、 動態 データ解析のための簡便なソフトプログラムの開発3、4
)や安価なパーソナルコ
ンビュータの普及によって、 解析法に関する研究は著しく進展してきている。なかでもYamaokaら5)及びCutler 6)が提唱したモーメント解析法は、 特別な
モデルを構築することなく、 薬物の体内動態データを普遍的に解析することが可 能なため、 今日では各種製剤の定量的評価に繁用されている7ー1 1)。 また最近で は、 薬物の生化学的機構と生体の生理学的、 解剖学的機構に基づいて構築され る生理学的モデルによる解析法1 2ー1 4
)が提唱され、 同法を用いることにより、
in vitroで測定された薬物の動態をin vivoの状態にまでスケールアップするこ とも可能となってきている1 5、1 6 )。
一方、 薬物動態解析に必要なデータを得るための実験法としては、 in vitro、
」 一 一 一
-一一r
in situ及びin vivo系に於て、その同的に応じた方法が用いられているが、薬物 動態ぷ礎研究のr 11心的実験手伎としての位置を獲得している方法はin vitro及び in situ系の実験法・である。 それらの実験法では、臓器の生理的な構造を保持した
ままで、 実験条件を任怠に設定することが可能であり、in vivoでの薬物動態予 測をr
1
(1<]として多極多様な実験法が新しく考案され実用化されている1 7)。 例え ば、 投与された薬物の体内挙動を支配する重要な臓器である肝臓内の薬物動態の 実験法を例にとると、肝への薬物取り込み過程及び肝での薬物代謝過程の実験系 としては、 jfj1縦肝細胞や培養肝細胞または細胞膜ベシクル等を利用するin vitro系がjdもjよく用いられており、生理的条件下での薬物取り込み実験法としては
in
situ JJ
r-泌流法などがイf力な手段となっているl7、1
8)。 一方、in vivo系の実
験訟は、 集物投与後、 血液、尿または糞を採取し、試料中の薬物濃度を測定する か、)材殺後、 組織を採取して組織中薬物濃度を測定する方法が主なもので、通常、
1サンプルに1イ同体を必要とし、 屠殺動物数も移しい数に上がることもあり、
史に合理的な系開発の余地が残されている。
197
0年代前半Delgadoら1 9 )及びUngerstedtら2 0 )により開発されたマ イクロダイアリシス法は、in vivoの条件下で実験動物の脳内微小部位に小型の 透析プローブを挿入し、液を濯流し、 半透膜を介して濯流液中へ、脳の細胞間|療に存在する脳内伝達物質を回収する画期的技法である。 この手法は、無麻酔、
無拘束の状態で動物の行動変化を観察しながら、脳内局所の細胞外液中に放出 される内因性神経伝達物質(カテコールアミン類2 1 )、アミノ酸22 )、アセチル
コリン23、24
)等)の経時的変化を連続的にモニターすることを可能にした点で
優れた方法論であり、従来から、主として神経薬理学研究の領域において繁用 されてきた。ところで、この透析プローブは、脳2 1ー24 )をはじめとして生体のほとんど 全ての組織中への埋め込みが可能で、血管25-27)からは血液中の物質を、
肝28-3 0)、肺29 )、 筋肉29 )等からは、その組織の細胞外液中物質を回収する
-2-
ことができる。 また、マイクロダイアリシスtkは、1)実験動物を)再殺せずに
1イ間休から終日寺的に多数の試料の採取が可能である。 2) I試料採取11年に体液;止の 損失がない。 3)符られた試料r
�
1には両手ぷやili (1成分の混入がなく、 試料サンプ ル中での代謝による量的変化が認められない。 4 )試料のクリーンアップ操作を 必要とせず、直接分析機器に適用できる等の優れた特徴を有しており、普遍的な in vivoサンプリングの手段としての有用性が期待できる。本マイクロダイアリシス法を組織中薬物のi刀VIVO定泣法として迎用する場合 には、被!投薬物の透析プローブからのin vivoでの凶収率を正確に37iliすること が必要である。 しかし、通常'はin vivoに於ける透析プローブからの薬物rr 11収率 の正確な測定が凶難なため、本法は、 薬物動態に及ぼす併用�の影響など薬物動 態研究に関する相対的変化を検討する方法としては編めて有効であるが、絶対抗 を検討する方法としては限界があるとも考えられる。
このような状況の下、 著去は、マイクロダイアリシス法を川いた薬物動態の ln VIVO実験法の確立を日的に、脳内及び皮膚内の薬物動態ならびに薬物の|虹
策蛋白結合を本法により種々検討した。 第1章では、 L-dopaをモデル薬物に選 び、ラットの血符rl.:lとその作用部位である線条体内へ透析プローブを姉人し、
L-dopaの血中及び線条体内に於ける動態、 更に代議jに対する脱炭l唆酵素阻古薬 carbidopaならびに bcnserazidcの併用効果をそれぞれ薬物速度論的に検討し、
その相違をin vivoで明らかにした。 第2章では、マイクロダイアリシス法によ るin vivo経皮吸収実験法を新たに考案し、 同法によりラットの皮膚内に透析 プローブを埋め込み、モデル薬物に選んだvalproate(VP A)の経皮吸収動態を 検討するとともに、経皮吸収促進剤1・[2・( dccylthio )ethy
1]
azacyclopentane-2-one (H PE- 1 0 1)
3 1 )の併用効果をin vivoで検討した。 第3章では、VPAに比べ脂溶 性の低いmethotrexate(MTX)をモデル薬物に選び、ラットに於けるMTXの経 皮吸収動態、に対する吸収促進剤HPE-I01の併用効果を、経皮及び血中マイクロ ダイアリシス法を用いて皮膚内MTX濃度と全身血中MTX濃度の変化から併せ-3-
長 二 二 三三三三三三竺竺プ 工 一 一一一一一 一 .
-,._...� 二 |
て検討した0
111・4
r;;J�では、 薬物一血液蛍(]結令研究に於けるin vivo実験法とし てのマイクロダイアリシス法の迎合性について、 実験動物として家兎を用い検IÎナした。 r(lL奴蛍1'1結合性の1��5
�
'\薬物としてVPAをモデル薬物に選び、 VPAのin vitro [rDゆく本に対する種々の実験条件の影響を精査し、 マイクロダイアリシス 法によって血液中遊離VPA濃度を定位する場合の最適なin vitro回収率の算出 条件について検,Hした。 史にVPAのin vivο血紫蛋I�I結合率に関して、 マイク ロダイアリシス法から得られた結*を|以外ろ過法から待-られた結果と比較した。
以ト-、 各市に於て、 これらの検討から得られた矢IJ見について詳述する。
-
4
-第1章 マイクロダイアリシス法を用いたラットに於けるL-dopaの in vivo脳内移行動態の検討3
2、33 )
各種(1)中枢性疾患の治療を目的とした新規医薬品を開発する際、 '-1寸枢作用薬の 血液脳関門(blood- brain barrier : BB B)を介した脳内移行動態を定量的に解明 する事は極めて重要な研究課題である。 これまで薬物の BBB透過性の評価法と して最も繁用されている実験法は、 brainuptake index法(BUI法、 in vivo頚動 脈一回注入法〉やmulti ple ind icator d il u tion法(MID法、 in situ脳濯流法〉で あり、 現在までこれらの手法を用い多数の知見が得られている1 8 )。
BUI法は、 Oldendorf 3 4 )により開発された方法論で、 同法はラベルされた目 的化合物と適切な対照物質の混液を頚動脈に瞬時に投与することによって、 脳 一同通過における取り込み率を算出し、 透過クリアランスを算出するものである が、 BBB透過性の低い化合物の透過クリアランスの測定には適用できないとい う欠点がある。
一方、 Rapoportら35 )により開発されたMID法は、 麻酔下のラットを用い、
脳実質部に関係しない分枝動脈を結さつ後、 右外頚動脈よりラベルされた目的 化合物の濯流液を注入し、 一定時間後に断頭し、 脳への取り込み量から透過クリ
アランスを算出する方法である。 この方法には、 ペプチドのような BBB透過性 の低い高分子化合物の透過クリアランス測定にも適用可能であるという利点が あり、 近年、 Zlokovicら36-40)は、 動物種をモルモットに変更することによっ て、 更にMID法の有用性を高めることを報告している。
しかし、 上述の BUI法ならびにMID法は、 脳組織の採取が必要なため、 1個 体から得られるデータはl点のみであり、 侵襲の少ないin vivo実験法とはいい がたい憾がある。
これに対してマイクロダイアリシス法は、 序論でも触れた如く、 1 )脳地図を 指標にして、 任意の脳内微小部位に透析プロープを挿入することにより脳内局所
-5-
巳一一 一 一ー ー 一一一一一一一一一一 一 一一一 三 ι 一一一一一一一一一一一一一 二 一一一.
の細胞外液を採取できる。 2 )実験動物を屠殺せずに1 {団体から経時的に多数の
l試料が採取できる。 3 )試料採取時に体液量の損失がない。 4 )得られた試料中 には酵素や蛍(1 成分の混入がなく、 試料サンプル中での代謝による量的変化が認 められない。 5 )試料のクリーンアップ操作を必要とせず、 直接分析機器に適用 できる等の利点をイずしている。|司法は、 脳内局所の細胞外液中に放出される内因 '[11: fllr経伝迷物質2
1 .-
2 1\)の変動をフリームービング(無拘束状態〉で経時的にモ
ニターすることをnI能にした点で優れており、 従米から、 主として神経薬理学の似城にj冷けるの- )Jな実験千段として利用されてきた。 本法は、 脳内神経伝達物質 1df先のみならず、 体循域系に木梢投与された中枢作用薬の脳内局所への分布動態
L-dopa
P G
O -t
M.W. 197.19
Carbidopa
Bense工azideCH3 HO-l、-CH2一;-CO
HHÓ NHNH,
� O 11
HO � )- CHl-NH-NHーC-CH一CH,OH
HO/ "OH NH,
M.W. 226.23 M.W. 257.25
Fig. 1. Chemical Structures of L-dopa, Carbidopa and Benserazide
を、JJ削|持lil、 分l珂することなく、 非侵襲的状態で定量的に評価できるin vivo実 験法としても適用可能と考えられる。
ところで、 本市に於けるモデル薬物、L-dopaは、 パーキンソン病の治療薬と して広く使川されている1
1ー44〉o
ノぐーキンソン病は黒質線条体系の変性に伴うdopaminc ( DA)の減少に起因する疾患で、 DAがBBB を通過できないため、 こ れを補充する目的で DAの前駆体であるL-dopa療法が1 960年代に考案され
た1
5 )。 しかし、 経日投与されたL-dopaの大部分は、 脳に到達する前に主に肝
PeripheraI Side
BBB
Brain Side
HO-Q-仙-UHZ
H:9-川ーCK� ↓
DA
k_( 、j
tPCMz-uHZ
L-DOPA
に於て芳香族アミノ酸脱炭酸酵素(aromaticamino acid decarbox
y
las e : AADC)Carbidopa Benserazide
により代謝を受け、 大部分が不活性化され、 最終的にBBB を通過して脳移行するL-dopaは、 投与量の1%以下とされている46 )。 従って、 脳内での十分な L-dopa呈を得るためには、 いきおいL-dopaの大量投与が必要となってくる45)。
AADC
HO-o-仇-C∞H
Hn C
∞
A 〈 A1
ω↓仙川
D
X J
]
ZJ\f Hn
ベOIC
そこで、 このL-dopa大量投与を回避する方法として、 末梢性 AADC阻害薬で
un Od nu・r ω D A 〈 M uu N
ある carbidopaならびにbenserazideとL-dopaとの併用療法が考案され、 現在、
臨床の場に於ては、 これら併用療法が一般的となっている41
- 4 4)
0Fig.
1に はL-dopa、 carbidopaならびにbenserazideの構造式を示し、 Fig. 2には末梢でのL-dopa代謝挙動に対する AADC阻害薬の阻害作用のメカニズムと脳内での L-dopaの代謝経路を図示している。
H附Oφ:口Ur:「「一4一C
NE
↓
HO
円内:
引陥MHPG
Fig. 2. Inhibition Mechanism of AADC Inhibitor at peripheral Side and Metabolic Passway of L-dopa at B工ain side
-6- - 7 -
- ニニー一一一ー一一一 ー 一 二 一一一一 色一一 ι
一一一一 一 」
L-dopaから産生されたDA は、 脳内だけでなく末梢に於ても、 主に
norcpinephrin (NE)、 3,4-dihydroxyphenylacetic acid (DOP AC)、 homovanillic acid (HVA) ならびに3 -methoxy-4-hydroxyphenylethyleneglycol (MHP G) へ、
!)iに代議jされる。
AADC阻??薬の併用により、 脳に到達するまでのL-dopaの不活性化と、 それ にイ、I�し1産生されるDA に起因する悪心・ 幅吐、 食欲不振、 動惇などの末梢性副
作)8が軽減され、 血中L-dopa量は上昇し脳内へのL-dopa移行量が増加する結 果となる。 臨床上使用されている carbidopaとL-dopaとの合剤、 ならびに
bcnserazideとL-dopaとの合剤に関しては、 これまでパーキンソン病の改善効 果に於ては、 両者いずれも同等であるとする報舎47-51)が定着している。 しか しながら、 AADC阻害薬併用時にも on-off現象やwearing-off現象等、 L-dopa 薬効のI
J
I付動指の問題が存在することは明らかで52-54)、 副作用に関しては、bcnscrazide併用群側がより低率であるとする報告4 8、5 1、55 )と、 いずれの AADC阻害薬併用群でも差はみられないとする報告49 )があり、 いまだ一定の
結論は得られていない。 また、 L-dopaの血中及び線条体内に於ける動態ならび に代謝に対する上記2種のAADC阻害薬の併用効果を同時に比較検討したもの は、 動物試験に於ても報告されてはし1ない。
本章では、 上述の問題をふまえL-dopa投与に対するAADC阻害薬併用の効果 を評価すべく、 carbidopaならびに benserazideを併用した際のL-dopaのラット
の血中及び線条体内に於ける動態、 更に代謝をマイクロダイアリシス法を用いて 薬物速度論的に比較検討し、 中枢作用薬の脳内移行動態をin vivo評価する実験 法として本法を適用したので以下に詳述する。
-8-
第1 î{fj L-dopaならびに関連代議j物の透析プローブによる
in vitro r口!収率の検討
マイクロダイアリシス法を組織中薬物のÍn v Ívo
Æ Ir1:
11として池川する助令に は、 Jn VJVOに於ける被験薬物の透析プローフ.,' 7J'Iらの[I}j収率をJE維に31J11するこ とが重要である。 しかし、 透析プローフーからの薬物問収不をかV1Vοの状態で、求 めることは難しいため、 通常、 その[ul収率はin V itro実験により決定される。動物笑!換の際には、 そのin vÍtro [r-rl収率に息づき、 透析液rf1 �築物ほから組織rfr薬 物量を補正算出する方法が繁用されている25 -2
8、56)o
In vitro tJ14X本実験は、既知の薬物量を含む溶液に透析プローブを浸して、 -kiiのIL�q 市lJilMでサンプリン グを行い、 回収した透析液中薬物量の溶液中既知薬物泣に刈する;1河合(Ín vitro
口|収率〉を算出するものである。 また、 透析プローブをÍn vÍvo J白川する前に、
被験薬物のÍn vitro回収率を測定することは、 in vivo実験に用いる透析プロー ブロット間での被験薬物の回収率の変動性を検討するためにも重要である。 しか し一方で、 in vitro実験により得られる薬物回収率は、 必ずしもÍn vivoに於け る薬物回収率を正確に反映するものではないことも報告されており5
7
_-6 1)、
in vitro回収率を用いて透析液中薬物量から補正算出された組織中薬物量は、 真 の組織中薬物量と一致しない可能性も考えられる。
本章では、 これらの知見を考慮し、 動物実験に用いる透析プローブについて、
各々測定対象薬物の透析プロープロット間に於ける回収率の変動性を検討する」
的でin vitro回収率の測定を行い、 得られたin vitro回収率に基づく血中及び線 条体内薬物の絶対量の算出は行わず、 また、 その値に基づく透析液中データの補 正も行わないこととした。
-9-
本立に於ける脳内ならびに血rl!マイクロダイアリシス実験では、 ラットの線条 体のサイズに令わせ、 透析膜の長さ3 mrnの透析プローブ(CMA/10 、 Carnegie Medicin製〉を使用した。 本実験で使用した透析プローブをFig. 3 に示す。
Fig. 3.
CMA/IO
Mic工odialysis P工obe動物実験と同じ濯流液の流速2.0 Jll!m旬、 温度37 ocの条件下で、 透析プロー ブをin v ivo適用する前に求めた各々測定対象薬物のin vitro回収率の平均値は、
L-dopa、 ca rbidopa及びbens erazid eについては、 それぞれ24%、 24%ならびに 20%であり、 L-dopaの関連代謝物であるDA、 NE、 DOPAC、 HVA及び MHPG
については、 それぞれ26%、 26%、 30%、 31%ならびに30% であった。 また、
これら測定対象薬物のin vitJO回収率各値の変動係数は、 いずれも6,,-,9% と小 さいことが確認できた。
これらの結果より、 本章に於て測定の対象とした上記8種の薬物の透析プロー ブからの回収率には、 ほとんと透析プローブのロット問での差異が存在せず、 本 研究で使則した透析プローブからは、 対象薬物の回収がほぼ一定の割合で行われ ることが確認できた。
-10-
第2節 L-dopa関連代謝物の内因性物質のベースライン値の検討
本章に於て測定の対象とするL-dopa代謝物のDA、 NE" DOPAC、 HVA及び MHPGは、 いずれも生体内に存在する内因性物質でもある。 従って、 L-dopa投 与後に於けるこれら代謝物の血中及び線条体内での量的変化を検討するためには、
ラットに於ける内因性物質 量に相当するベースライン値を確定 することが必要 課題である。
カテコールアミン類は、 一般にストレスにより大きく濃度が変動することが知
られており、 本研究に於ても、 線条体から回収された透析液中 の各内因性物質 量は、 透析プローブ挿入直後には大きく変動した。 しかし、 挿入後60分以上経 過すると、 L-dopaの関連代謝物はDA を初めとして、 NE、 DOPAC、 HVA及び MHPGいずれもベースラインレベルは安定し、 一定値を示すことが確認できた。
従って、 本節に於けるベースライン量の検討では、 透析プローブ挿入後100 '"'"
160分に亘って20分間隔で回収した3サンプルの透析液について内因性物質 をそれぞれ求め、 各々内因性物質に於けるこれら3サンプルの値の平均債をベ ースライン値とした。
その結果をTable 1 に示すが、 DA、 NE及び MHPGのベースライン値は、 フッ トの血中 から回収された透析液中 では検出されず、 線条体から回収された透析 液中 でも極めて低いものであった。 一方、 DOPAC及びHVA のベースライン値 は、 ラットの血中ならびに線条体から回収された透析液中 に於て高値を示した。
-11-
Table 1. Endogenous Baseline Levels of the L四dopa Related Metabolites Obtained
in
Dialysates ln RatsCompound
DA
NE
DOPAC HVA MHPG
Baseline level (pmol/20min)
Blood Strìatum
nd
0.17
:!:0. 05
ndO.lU
:!:0. 05 0.30
:!:0.20 45.3
士8.80. 33
:!:0. 22 27. 9
:!:9.4
nd0. 18
:!:0. 06
Values represent the mean :!: S.D.f n= 19-2 1.
nd : not detec七ed.
マイクロダイアリシス訟によって何られた透析液rrの内以卜|生物質量に於て、 ラッ トの総条件�I)�でDOP
AC
lj�:lえびHVA量がDA量に比較して高いという知見は、|υJ ì.tによるいj伎な検討を行ったAcquasら6 2 )及びKaakkolaら6 3 )の報告とも ほぼね:令している。
ベースラインイ1ft測定に引き続き、 透析プローブ抑入160分後にcarbidopaまた はbenscrazidcの前投与を行い、 その40分後(透析プローブ姉入200分後〉に
L-uopaを投りする実験プロトコールによって、 L-dopaの血中及び線条体内での 体内�U山態に対するcarbidopaならびにbcnscrazidcのAADC 阻害作用の相違を検
li�ーした。 そのた山県を次に箆3的Îl之び第4 î(tiに於てJÆべる。
-12-
第3節 Carbidopa及びbcnscrazidcの透析液'1'薬物況の検討
臨床で実際に使用されるL-dopaとcarbidopaの投lL日比はモル比でがj 10
:
1 であるが、 benserazid cの場什carbidopaより2.5仇!?.5し、J1J量でいj等の治療効果 をあげることが認められている47--51)。 木京では、 ,a,j AADCドf1. �存薬を比較する ため、 L-dopaとcarbidopaの投l子反
比を12日比月1 hfを反映 させたモル比の10
:1
とし、 更にL-dopaとbcnscrazid cの投与量比をcartヲidopaと同じモル比である 10 : 1とbenserazideの臨床用量を反映させたモル比である4 : 1に設定し、 同 AADC阻害薬併用時の効果を等JTI量比ならびに臨床JD最比に於て検討した。
Carbidopa 25 pmollkg腹腔内投与時に於ける、 ラットの,(rpl'から同収された透 析液中のcarbidopa量の経時変化をFig. 4に示す。 グラフ縦11[,],のcarbidopa量の 単位は20分間当りの透析液中への阿収量で示しており、 グラフには平均似をボ している。
,圃・、
E
。
E
N。
E
。ー cu a 百。 a 、.
cu
υ 50
40
30
20
10
2 3 4 5 6 7 B 9
Time after carbidopa administration (h)
Fìg・ 4. Time Course of the Amounts of Carbidopa in Blood Dialysate a工ter 工.P. Administration of Ca工bidopa
(25μmol/kg) in Rats
Poìnts 工epresent the mean, n=4.
-13-
血中から回収された透析液中のcarbidopa量は、 投与20'"'" 40分後のフラクショ ン でその最高値を示し、 投与部位から 血中への良好な移行性が示唆された。 その
後 、 血中 から回収された透析液中のcarbidopa量は緩やかに減少し、 投与9時間 後のフラクションまでは検出されたが、 それ以降の透析フラクションに於ては検 出されなかった。 Fig. 4に示す回収された carbidopa量の時間的推移から求めた
各モーメントの値は、 0次モーメントである透析液中薬物総回収量が244
:t
58 pmol (n=4)、 l次モーメントである 平均滞留時間(MRT)が2.() :t
0.2 h (n=4)であった。
Benserazideの投与は、 carbidopaと等モルである25 pmol/kgと|臨床用量比を 参考に設定した62.5μmol/kgの両投与量で検討を行った。
40
�旬、
c
E
。E、4 30
、、、
。
E
a CI) 20 百
N
""
CI) 、陣 ω c ω 10 国
2 3 4 5
Time after benserazide administration (h)
Fig. 5. Time Courses of the Amounts of Benserazide in Blood Dialysate afte工 工.P. Adminis七工ation of Bense工azide
(. : 25μmo 1/ k g , Â
:6 2 . 5μmol/kg) in Rats points represent the mean, n=4.
-14-
Bens erazide腹腔内投与時に於ける 、 ラットの血中 から回収された透析液中の
bens erazide量の経時変化をFig. 5に示す。 グラフ縦軸は、 carbidopaの場合と 同様に20分間当りの透析液中へのbenserazideの回収量 で示しており 、 グラフ には平均値を示している。
血中 から回収された透析液中のbenserazid e量は、 両投与量群ともに投与20'"'"
40分 後のフラクションに於てその最高値を示し、 carbidopa同様 、 投与部位から 血中への良好な移行性が示唆された。 しかし、 その後 血中から回収された透析
液中のbenserazide量 はcarbidopaの場合に比べ速やかに減少し、 両投与量 群と
も 、 投与 後 5 時間以降の透析フラクションに於ては検出されなかった。 Fig. 5 に示す回収された benserazide量の時間的推移から求めた各モーメントの値に
関しては、 透析液中薬物総回収量は、25 pmol/kg投与 時には41 士3 pmol (n=4) であったが、 62.5 pmol!kg投与時には2.4倍高値 である 98士30 pmol (n=4) で あった。 一方、 benserazideのMRTは、 25 )lffiol!kg投与時には0.9士0.1h (n=4)、 62.5μmol/kg投与時には0. 9士0.4h(n=4)と両投与量群間で等しい値 を示した。 両AADC阻害薬の血中MRTを比較してみると 、 benserazideの血中
での滞留時間はcarbidopaに比較して有意に短いことがわかった。
一方、 ラットの線条体から回収された透析液中には、 carbidopa ならびに
bens erazide は検出されず 、 本研究で用 いた投与量では、 いずれのAADC阻害 薬も末梢に於てのみ AADC阻害作用を示す ことが確認された。 Kaakkolaら64 )
は、 末梢投与された carbidopaの脳内 移行性についてマイクロダイアリシス法 による 検討を行い、 ラットに50 mg/kg腹腔内投与した 場合には、 線条体から旧
収された透析液中にcarbidopaが検出されたと報告している。 しかし、 本論文 に於ける carbidopa投与量はKaakkolaらが検討した投与量の1/ 8に相当する低
用量である ため、 線条体から回収された透析液中にcarbidopaが検出されなかっ た本論文のデータは十分妥当な結果である。
-
1 5
-�n 4 ftíJ
L-dopaの体内動態、に対するcarbidopa及び benserazideの AADC阻宵作用の比較検討4
-1
L-dopaの脳内移行性L-dopa 250 pmol!kg単独腹腔内投与時ならびに各AADC阻害薬併用時に於
る、 ラットの血中及び線条休から回収された透析液中のL-dopa量の経時変化を Fig. 6に/1ミす。 グラフ縦申,jlのL-dopa量の単位は、 20分間当りの透析液中への 同収量で‘ぶしており、 グラフには平均値を示している。 また、 Table2には、
Fig. 6にぷす[111収されたL-dopa量の時間的推移から求めた各モーメントの値と、
それぞれのモーメント群に於けるL-dopa単独腹腔内投与時のモーメント値に対 するAADC I{rl宵薬併用時の各値の割合を示す。
I(IL
Iいから1111の〈された透析液中のL-dopa量は、 全ての投与群に於て投与後60分までに最高値を示し、 以後速やかに減少した。 血中L-dopa量の上昇に伴い、 線 条休から回収された透析液中L-dopa量も、 いずれの場合も投与後60分までに は以内市立に注し、 以後速やかに減少することが認められた。
Carbidopaならびにbenserazideの併用により、 血中から回収された透析液中 のL-dopa足は、 いずれの場合も常にL-dopa単独投与時に比べ著しい上昇を示 した。 このH在、 L-dopaは血液透析液中に投与10時間後まで検出され、 末梢に於 けるL-dopaの代謝は十分抑制されていることがうかがえた。
� )j、 L-dopaの作用部位である線条体内L-dopa量に関しては、 L-dopa単独 投与|時、 線条体から同収された透析液中にL-dopaは投与後4時間までしか検出 されなかった。 しかし、 AADC阻害薬併用時には、 いずれの 場合も血中L-dopa Uのt界に1l合した線条休透析液中L-dopa量の著しい上昇が認められ、 線条体 透析液中でL-dopaは投与6時間後まで十分検出できた。
-
1 6
-Blood 600
言 500
。
E
c、』
400
、、、
。
E
a.300
ro 。.
。
200
百
.
」
100
2 3 4 5 6
7 8 910
Time after L-dopa administration (h)
Striatum 12
,..・・、
E
10
一
。
E
N 8
司、-司h 一
。
E
立6
-
ro a.
。
4
百
.
ー」
2
34 5 6
Time after L-dopa administration (h)
Fig. 6. Tirne Courses of 七he Amounts of L-dopa in Blood Dialysate and Stria七al Dialysa七e after I.P. Adrninistration of L-dopa
(250
�rnol/kg) with or withou1ニ AADC Inhibito工s in Ra七S POlnts represen七 七he rnean, n=4-5.o
: L-dopa alone,・:L-dopa wi七h benserazide (25μmol/kg) I 企:L-dopa wi七h bense工azide (62.5μmol/kg),・:L-dopa with carbidopa (25μmol/kg) . -17一
Table 2. Momen七 Parameteどs of L-dopa in Blood and S七r1a七um af七er 工.P.
8ite
blood
S七r1a七um
Adminis七ra七ion of L-dopa (250 �ol/kg) with or wi七hout AADC 工nhibitors in Ra七s
AADC inhibi七or Does (μmol/kg)
+Benserazide 25 +Benserazide 62.5 +Carbidopa 25
+Benserazide 25 +Benserazide 62.5 +Carbidopa 25
XTa) Ra七iob) (prnol)
610 :!: 170
(1.
0) 1526士260* (2.5) 3371 :!: 626** (5.5) 2149土818* (3.5)9 :!:
30 :f:
55士 72 :t
2 (1. 0) 10* (3.3) 7** (6.1) 11** (8.0)
MRTC) Ra七iob) (h)
1.22 :!: 0.27
(1. 0)
1. 50士0.39 (1. 2 ) 1. 67士0.25合 (1. 4) 1.91 :f: 0.26* (1. 6)
1. 04士0.11 (1. 0) 2.01 :f: 0.62** (1.9) 1.92 :f: 0.09** (1.9) 1. 89土0.24** (1.8)
a) The 七0七al出noun七 of L-dopa collec七ed in blood and striatal dialysa七es.
Values represent 七he rnean :f: 8.D., n=4-5.
b) The ra七io of the value wi七h AADC inhibi七0ど 七o the value wi七hou七 AAOC inhibi七or, respec七ively.
c) The mean residence 七irne of L-dopa in blood and s七ria七四n. Values represen七 七he mean :!: 8.0.
8ignifican七ly differen七 from L-dopa alone: * n pく0.05, "" Pく0.01.
AADC阻害薬の効果をモーメント解析による薬物速度論的ノマラメーターから考 察すると、carbidopa併用時L-dopaの透析液中総回収量(XT)は単独投与時に 比べ血中では3.5倍の有意な増加(p<0.05)を示し、更に線条体内に於ては8.0 倍の有意な増加(p<O.Ol)を示した。 一方、carbidopaと等モルのbenserazide
(25 }lmol!kg)を併用した場合は、L-dopaのXTは単独投与時に比べ血中では 2.5倍の有意な増加(p<0.05)を示した反面、線条体内では有意ではあったが
3.3倍の増加(pく0.05)を示すに止まり、carbidopa併用時に比較しAADC阻害
薬としては効果の低さを示した。 しかし、 臨床用量比を参考に設定した62.5
pIDol/kgのbenserazideを併用した際には、L-dopaのXTは血中に於ては最も大 きい5.5倍もの有意な増加(p<O.Ol)を示し、 更に線条体内に於てもcarbidopa 併用時とほぼ等しい6.1倍の有意な増加(p<0.01)が認められた。-18-
以上の結果より、 AADC阻吉薬併月lによるラットの線条体内L-dopaliRの|二 界効*は、 等モルの投与量では明らかにhcnserazide
{)f:)1J
IlS:に比べcarbidopa 併用時の方が優っていることが認められた。 しかし、|恥民川�It 1:ヒを参JSに設定した6:2 5 pmol!kgのbenserazideを併用した場令には、線条体内L-dopa量が carbidolJa併用時とほぼI�じ程度にまで上昇することがin v ivoで尖証された。
この矢11 t,Lは、 現在臨床使用されているcarbidopaとL-dopaとの合剤ならびに
bens era.:ideとL-dopaとの合剤が、 パーキンソン病に対する治療効果の上では 同等性を有していることIj 7 _-
5
1 )の圭要な恨拠となるものと考えられ税めて興 味深い。 一方、 臨床用量比のAADC阻害薬併用時に於けるラットの血IドL-dopa 量に関しては、線条体内L-dopa量がほぼ同じ程度であったにも拘わらず、62.5 pmol/kgのbenserazide併用時の}jがcarbidopa併川町に比べそのL舛効果に於て優っていた。 この結果は、現在臨床使用されている上記2種のAADC阻害楽 とL-dopaの合剤をノfーキンソン病治療に用いた際、 治療効果は同等であるが、
benserazide配合剤の方がcarbidopa配合剤に比べ血中L-dopa濃度の上長効果 が著しいというLiebermanら5 0)ならびにRinncら5 1 )の|臨床報告ともよく
致し、L-dopaの脳内への移行効率は、 benserazidcとcarbidopaを併用した場 合ではそれぞれ異なり、benserazidcを併用した時の方がcarbidopa併用時に比 べ劣っている可能性が示唆された。
方、線条体内でのL-dopaの平均滞留l時間の指標となるMRTの値は、
carbidopaならびにbenserazide併用時に於いて、いずれの場合も単独投与時に
比べ、 1.8倍から1.9倍に有意に延長(p<0.01)し、AADC �[L存薬併用による L-dopaの作用時間延長を示唆する結果が得られた。
ところで、薬物の組織分布におけるモーメント解析に於て、その組織の平均 通過時間は、組織中薬物量の時間的推移に基づき算出されたMRTから、血中 薬物量の時間的推移に基づき算出されたMRTを差し引くことによって表わさ れる。 本論文では、L-dopaを単独で腹腔内投与した際、線条体内に於ける
-19-
MRTと血中に於けるMRTがほぼ等しい値を示した。 この知見はL-dopaの BBBの通過にはほとんどタイムラグがないことを示唆するものである。 一方、
carbidopa併用|時のL-dopaのMRTについては、 L-dopa単独投与時と同様な結 果がぶされたにも拘わらず、 benserazidc併用時には、 いずれの場合も血中での
MRTに比べ線条休内でのMRTが大きくなる傾向が認められた。
このことは、carbidopaと bcnscrazidcをそれぞれL-dopaと併用した場合、 木梢での不活性化
を免れたL-dopaの脳内への移行効率に関して差異が存在している可能性がある とIllj様に、 L-dopaのBBB 通過l時間に関しても何らかの変化が生じている可能性 があることをノJミ唆している。
4
-2
JITUI'に於けるL-dopa関連代謝物の動態、L-dopa 250川lol!kg単独腹腔内投与時ならびに各AADC阻害薬併用時に於け る、 ラットの血中から回収された透析液中のL-dopa代謝物の経時変化をDA量
及びDOPAC量についてはFig. 7-1に、 またHVA 量についてはFig. 7-2にそ れぞれぷすO グラフ縦軸の各代謝物量の単位は、 20分間当りの透析液中への回
収量で示しており、 グラフには平均値を示している。 また、 Table3には、 Fig.
7・1及びFig. 7・2にぷす各制収された代謝物量の時間的推移から求めた各モーメ ントの値と、 それぞれのモーメント群に於けるL-dopa単独腹腔内投与時のモー
メント値に対するAADC阻害薬併用時の各値の割合を示す。
0.6 DA
0.5
-、c
ε 0.4
。N
』、、
。
E 0.3
a 白〈 0.2
0.1
0.0 -2
。1 2 3 4 5
6 7 8 910
Time after L-dopa administration (h)
DOPAC
30
-旬、
E
25
。
E
Nh、、
20
。
E
a15
0 E4L
Z
。 10
。
5
-1 0 1 2 3 4 5
6 7 8 910
Time after L-dopa administration (h)
Fig. 7-1. Time Courses of the Amoun七s of DA and DOPAC in Blood
Dialysa七e after I.P. Adminis七どa七ion of L-dopa (250 μmol/kg) wi七h or withou七 AADC Inhibitors in Rats
Poin七s represen七 七he mean, n=4.
o
: L-dopa alone,.: L-dopa wi七h benserazide (25μmol/kg) , Â :L-dopa wi七h benserazide (62.5μmol/kg) I・:L-dopa with carbidopa (25μmol/kg)・
-
2 1
-HVA
60
10
Table 3. Moment Parame七ers of七he L-dopa Rela七ed Me七aboli七es in Blood af七eど 工.P. Adminis七どa七ion of L-dopa (250 μmol/kg) wi七h or wi七hou七 AADC 工nhibi七ors in Ra七s
Compound AADC inhibi七or Dose XTa) Ra七iob) MRTC) Ra七iob)
(μmol/kg) (pmol) (h)
DA 3.09 ::t 1.46 (1. 0) 1. 37士0.15 (1. 0)
+Benserazide 25 1. 74士0.93 (0.6) 1. 41士0.59 (1. 0) +Benserazide 62.5 0.76::t 0.41* (0.3) 1.64::t 0.21 (1. 2) +Caどbidopa 25 1.09 ::t 0.81 (0.4) 1.24::t 0.34 (0.9)
DOPAC 185士 48 (1. 0) 1.92::t 0.28 (1. 0)
+Benserazide 25 101 ::t 41 (0.6) 2.02 ::t 0.30 (1.1 ) +Benseどazide 62.5 76 ::t 16オ (0.4) 2.30士0.53 (1. 2) +Carbidopa 25 122 ::t 16 (0.7) 2.09 ::t 0.24 (1. 1)
HVA 577 ::t 176 (1. 0) 3.09 ::t 0.12 (1. 0)
+Benserazide 25 549 ::t 60 (1. 0) 4.68::t 1.39 (1. 5) +Benserazide 62.5 264 ::t 82女 (0.5) 3.92 ::t 1. 02 (1. 3) +Carbidopa 25 586 :t 274 (1. 0) 4.20:t 1.17 (1. 4) E
50
EON\
40
O E a
30《〉工
20
O
-2 ・1 0 1 2 3 4 5 6 7
Time after L-dopa administration (h)
Fig. 7-2・ Time Cou工ses of七he Amoun七s of HVA in Blood Dialysate af七er 工.P. Adminis七工a七ion of L-dopa (250 μmol/kg) wi七h 0工 withou七 AADC Inhibi七ors in Rats
points rep工esen七 七he mean, n=4.
o : L-dopa alone,・:L-dopa wi七h benserazide (25μmol/kg),
Å :L-dopa wi七h benserazide (62.5μmol/kg) f
・:L-dopa with carbidopa (25μmol/kg)・
a) The 七0七al田noun七 ofthe L-dopa related metaboli七es collec七ed in blood dialysa七e. Values represen七 七he mean ::t S.D., n=4.
b) The ra七io of七he value wi七h AADC inhibi七or 七0 七he value wi七hou七 AADC inhibi七or, どespec七ively.
c) The rnean residence time of七he L-dopa rela七ed rne七aboli七es in blood.
Values represen七 七he mean士S.D.
Significantly differen七 from L-dopa alone: * pく0.05.
-22一 -23-
血中から同収された透析液中のDA量は、 L-dopa単独投与時 に最 も高く推移し、
投与60,,-,80分後のフラクション に於て最 高値を示した後速やか に 減少した。 血 液透析 液 中に DAは投与 後5時 間までは検出されたが、 それ 以降の透析フラクショ ン に於ては検 出されなかった。 一方、 AADC阻害薬であるcarbidopaならびに bcnserazide併用時 に於ては、 L-dopa単独投与時 に比べいずれ も血中DA量の減
少が認められた。 そのことは各々のXTの変化として現われ、 AADC阻害薬併用 時 に於ていずれ も小さくなり、 末梢でのDA産生が十分抑制されていることが in vivoで実証された。 更 に、 その程度は、 臨床用量比を参考 に設定した62.5 μmol!kgの bcnscrazi deを併用した 際 に特に顕著で、、 血中DAのXTは L-dopa
巾独投与l時 に比べ1/4 に有意 に減少(p<0.05)した。
1(1任中から回収された透析液 中のDOPAC量ならびにHVA量 については、 血中 DA同級L-dopa単独投う時 に最 も大きく、 AADC阻害薬であるcarbidopa なら びにbenscrazidcの併用 によっていずれ も小さくなる傾向が認められ、 血中DA
ほの変化とよく符合するパターンを示した。 そのことは 血中DOPAC及び血中 HVAの XTの変化として現われ、 AADC阻害薬併用時 に於て 小さくなり、 その
れ度は 62.5μmol!kgのbenserazide併用時 に於てのみ、 血中DOPAC及び血中 HVAいずれ に於て も顕著で、 L-dopa単独投与時 に比較し有怠 に減少(p<0.05) した。
L-dopaのAADC阻害薬併用療法の際、 パーキンソン病患者 に現われる悪心・
幅日などの末梢性副作用 についてGreenacreら4 9)は、 carbidopa、 benserazide のいずれの併用療法の際 もその出現率 には差はなかったと報告している。 しかし、
Pakkenbcrgら11
8 ) 、
Rinneら5 I )及び印東55 )は、 benserazide併用時の方がcarbidopa併用11与に比I絞し、 悪心 . PIill1吐などの末梢性副作用の出現率は有意 に低 かったと報公しており、 その原因として、 直接測定してはいない が、 L-dopa と 4対1の配合比のbcnscrazid e併用時の方が、 配合比10対1のcarbidopa併用 時 に比べて末梢に於けるDA産生の抑制効果が大きい 可能性を上げている。
-24-
本研究により示されたラットの血中に於けるDA、 DOPAC及びHYAの兆/lild:が、
臨床川量比を参考 に設定した62.5μmol!kgのbcnscrazid c併川11手 に於て 、 いずれ も25μmol/kgの carbidopa併J1
J
11.):に比べ小さかったとの知見は、 動物試験でぶ されたものではあるが、 上述の臨床試験に於て Pakkcnbergら、 Rinncら及び印 米が推定した末梢性副作用の出現本にイ-J,立主が/I=.じる以!大|を以付けるものである。また、 benserazidcの臨床用量比(62.5μmol!kg)の併川 に於ては、 I(U,rlr DA 民 生量の訟 も顕著な抑制が認められ、 且つ本的iの4 - 1で述べた慌にlüLrjrL-dopa
量の仁昇効果が carbidopa併用時 に比べ優っていた。 このことは、 !日J休川:lt比で‘
両AADC阻害柴を併用した場合、 ラットの末梢でのL-dopaから DAへの代謝を 阻害する効果が、 benscrazide併用時に於てcarbidopa併5-11 時に比べ�jl�きである
ことを示しており、 末梢 に於けるL-dopa代謝動態が carbidopa と bcnscrazidc を併用した場合では微妙 に異なっている可能性を示唆している。
般に、 九A..DC阻害薬を併用 すると、 末梢に於ては、 AADCが強く阻1?される 代り、 カテコールーOーメチル転移酵素(catechol- 0-mcthy l
t
rans f
crasc : COMT) による代謝系の働きが 活発 となり、 3・0・methyldo pa ( 3・OMD) が大足に産性され ることが知られている5 2、 5 3、 G 5、 66) O また、木
梢 に於ける3-0MDの産生日
は、L-dopaのAADC による代替j系 が 抑制される程度 に比例して附加すると報告。(け されており、 L-dopaのAADC によるDAへの代謝と COMT による3-0MDへ の代謝 には密接な関係 があると身えられている。 更 に、 この3-0MDは、 BBB
で L-dopaの脳内移行と競合的に括抗し、 臨床面に 於ては、 on-off現象や
wearing-off現象等、 L-dopa薬効の日内動揺をひき起こ す原因物質の 」っと も
舵定されている53、 65)o
本論文では、 ラットの血中3・OMDを直接定量してはいない が、 本節で得られ た知凡より、 末梢でのL-dopaの3-0MDへの代謝が、 benserazide併用時 に於て
carbidopa併用時 に比較しより活性化されていることが 推察される。 以上のこと が、 本節4 - 1に於て示唆されたL-dopaの脳内移行性が benserazide併用時 に
-25-
DA
0.20
0.15
0.25
(E一EON\一oEa)《白
於てcarbidopa併JíJ ILÿに比べ劣っていることと大きく関連しているものと推測す
L-dopa関述代謝物の動態 線条休に於ける
る。
4-3
0.10
時ならびに各AADC阻害員長併用11寺に於け L-dopa 250μmol!kg単独腹腔内投
0.05
トの線条休から回収された透析液巾のL-dopa代謝物の経時変化をDA る、 フッ
またHVA量及びMHPG量について ilt及びDOPAC :,(についてはFig. 8-1に、
6 5 4 2 3
0.00 。
20分間当りの ・2
グラフ縦車IIrの各代議I物量の単位は、
はFig. 8-2にそれぞれぷすO
Time after L-dopa administratlon (h)
グラフには平均値を示している。 また、
透析液中への巨l収長でノIえしており、
Fig. 8-1及びFig. 8-2に示す各回収された代謝物量の時間的推移
Tablc
4には、DOPAC
から求めた各モーメントの値と、120
100
20 80
60
40
(E一EON\一oEa)υ《乱。。
L-dopa単独 AADC阻害薬併用時の各値の割合を示す。
それぞれのモーメント群に於ける JJ.友作内投与II.Jのモーメント他に対する
6
Time after L-dopa admlnistratlon (h)
4 5 3
。 2 0 -1
・2
in S七riatal (250μrnol/kg) of L-dopa
DA and DOPAC Administra七ion
of the Amounts of
C 山
七u 0 ・n七・工
e w 七a E S O VA 可ム hu a 七
・1・1
D W
工.P.
af七er Tirne Courses 8-1.
F工9・
(25μrnoJ I kg ) , 工n Rats
Points represen七 七he mean,
o
: L-dopa alone,園:L-dopa with bense工azide 企:L-dopa with benserazide・:L-dopa with carbidopa
Inhibi七ors n=4-5.
(62.5μrnol/kg) , (25μrnol/kg)・
-27-
Table 4. Mornen七 Par出ne七ers of 七he L-dopa Rela七ed Me七aboli七es in 8七ria七urn af七er 工.P. Administration of L-dopa (250μrnol/kg)
工nhibi七ors in Rats
with or wi七hou七AADC
Ra七iob) Ra七iob)
XTa) (prnol)
MRTc) ( h) AADC inhibi七or Oose
(同nol/kg) Cornpound
(1.
0)(1. 0) (1.1 ) (1. 2 ) 1.93 ! 0.21
2.06 ! 0.58
(1. 0) (1. 2) (1. 3
) (1.
6)2.24士0.34
1.72! 0.19 2.03 ! 0.52 2.20 ! 0.34*
2.66 ! 0.35女 (1. 0)
(1. 3) (1. 8) (1. 9) 25
+Carbidopa
HVA
80
70
60
50
1.87 ! 0.42 (1. 0)
(1. 1) (1. 3) (3.3) 0.63 ! 0.20
0.72 ! 0.22#
0.82士0.38#
2.05 士0.17女安 25
62.5 +Benserazide
+Benserazide DA
40
30
20
(c一PEON\一oEa)《〉工
10
528 ! 201 OOPAC
706 ! 229 960士286*
976 ! 172安 25
62.5 +Benserazide
+Benserazide 6
5 3 4
2
。 0
・2
2.59 ! 0.38 (1.0) 3.61 ! 0.37** (1.4) 3.89! 0.73** (1.5) 0.25*女(1.5) (1. 0)
(1. 4) (2.4) (2.2)
*
*
*
* 7 5 5 4 唱ム 可i nU 内む 可よ 吋3 今3 1i
‘ +一+一+-
門4 nu RJ AHE Au- nU1 AHE ζu nu
ti
25
25 +Carbidopa
+Benserazide HVA
Time after L-dopa administration (h)
3.80 !
2.66 ! 0.33 (1.0) 3.41 ! 0.26** (1.3) 3.79士0.28**(1.4) 3.65士0.34女*(1.4) (1. 0)
(1. 7) (2.3) (2.5) 977 !
2.81 ! 0.96 4.82士1.06 6.40 士0.67女合 6.90 士0.80女合 62.5
25
25 62.5 +Benserazide
+Benserazide +Benserazide +Carbidopa MHPG
25 +Carbidopa
a) The to七al arnoun七 of 七he L-dopa rela七ed rne七abolites collec七ed in s七ria七al dialysa七e. Values represen七 七he rnean ! 8.0., n=4-5.
The ra七io of 七he value wi七hAADC inhibi七or 七o 七he value wi七hou七 AADC inhibi七or, respec七ively.
The rnean residence 七irne of 七he L-dopa rela七ed rne七aboli七es in s七ria七urn.
b)
c)
Values represen七 七he rnean ! 8.D.
8ignifican七ly differen七 frorn L-dopa alone: * p<0.05, ** Pく0.01.
8ignifican七ly differen七 frorn +carbidopa 25μmol/kg: # pく0.01.
MHPG
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
(E一EON\一oEa)oazE
0.1
6
Time after L-dopa admlnlstration (h)
5 4 2 3
1 -1 。
0.0
・2
in S七riatal HVA and MHPG
of 七he Amoun七s of Time Cou工ses
8-2.
Fìg.
μmol/kg) (250
of L-dopa Administration
I.P.
after Dialysate
ln Ra七s 工epresen七 七he mean,
alone,・:L-dopa with benserazide bense工azide
Inhibitors n=4-5.
AADC or wi七hou七 Poìn七s
wi七h
(25μmol/kg) ,
(62.5μmol/kg),
(25μmol/kg)・
wi七h
o
:L-dopa•
:L-dopacarbidopa :L-dopa with
。。
線条イ本からrll[収された透析液'11のDA量は、 L-ùopaを単独投勺した場合、 投 lj・後似)"-'80分のフラクションに於て最高値を示し、 以後緩やかに減少した。
なお、
DAは線条休透析液中 に投与後61時間にu:って検IUされた。 _方、
carbiùopa併川IL]:に於ては、 DA hlはL-dopa �Í.独投与時に比べいずれの透析フ ラクションに於ても符しくl匂く批移し、 こ の8S:11目的推移から求めた線条体で の
DAのXTもL-dopa単独投lL時に比べ 3.3倍有意に増加(p<O.Ol)した。 しかし、
bcnscrazidcを併用した場介のDA坑は、 いずれの投与世群に於てもL-dopa単 独投Ij-ll.j=のレベルと|li14U度で、
これ ら の|時間的推移から求めた線条体でのDA
のXTも、 qt独投ljl時に比べ25 umol/kgのbenserazide併-用時に於ては 1 .1倍、62.5
}J
mo l/kg 1J1:川IlS:に於ては1.3倍のJ特加 に!lこまった。 L-dopaより DAへの変 換に |刻するcarbidopa とbcnscrazideの併用効果を比較すると、 benserazide で は62.5μmol!kg の臨床用最比併川H、?に於てもDAのXTは carbidopa併用時の約1/3 と有d立に低く(p<O.Ol)、 L-dopa腹枠内投与l時に於ける線条体細胞外液中 のDA動態に対するAADC �rl主薬併用時の効果が、 carbidopaとbenserazideの 併川l叫に於て、 それぞれ異な っている可能性を示唆した。
島方、 線条体から回収された透析液中のDOPAC量については、 XT で みて み るとcarbidopa ならびに62.5 umol/kgのbenserazide併用時に於て、 それぞれ L-dopa 単独投与時に比べ1 .9倍な らびに 1.8倍と同程度の有意な増加(p<0.05)
をぶした。 なお、 、予均滞留時間の指標であるMRTもDOPAC に関しては、
carbidopaならびに62.5
).l
mol/kgのbens erazide併用時に於て、 ともに L-dopar-p_独投与時に比べ有志に延長(p<0.05)し、 線条体細胞外液中のDOPAC 動態に 対するAADC阻害薬併用時の効果は、 carbidopa とbenserazideをそれぞれ臨床 用量比 で併用した際 には同等であるこ とが示された。 更に、 AADC阻害薬併用 時の効果は、 線条体から回収された透析液中のHVA量及びMHPG量の時間的 推移に於ても同機に認められた。 すなわちcarbidopaならびに benserazideを臨 床用量比 で併用した際には、 いずれの場合に於ても線条体でのXTは2.2'""2.5
倍有志に増加(p<O.Ol)し、 MRTに関しては1.
4'"" 1.
5倍の千i立な延長(pく0.01) が認められた。 しかし、 HVA泣及びMHPG 泣の時間的推移については、 いずれ の場合も最高値をぷすフラクションがL-dopa投与後120分以降に遅延しており、前述のDA量な らびに DOPAC量の以内偵をぷす フラクションがL-dopa 投与後 120分迄に 出現している点とは見なる様子を日している。 このことに関しては、
HVA及びMHPGの産性にはモノアミノ酸化酵素(monoamino oxiJasc MAO) とCOMTの双}jの代議j系 が関与するのに対して、 DOPACの比JI:_にはMAO の代 謝系のみ が関与しているため、 この点が律速段階となって遅延したものと�_祭す る。
Acquasら6 2 )は、 ラットの線条体でのL-dopa動態に対するbenscrazidc併用 時の効果について検討しているが、 この中で 細胞外液rl'のDOPAC :1�:及びHVA 量が L-dopa単独投与時に比べ有意に上昇する反面、 DA止には1:引が忍められ
なかったと報告している。 この報告は、 本研究で得られた結果と .fj(するもので ある。
L-dopaのAADC阻害薬併用療法の際、 パーキンソン病患者に別われる中似 性副作用について、 Pakkenbergら4 8)は精神症状の出現率には庄はない が dyskinesiaの出硯率は carbidopa併用時の方が bcnscrazid e併用時に比べl:.5かっ たと報告している。 他方、 印東5 5
)は、 dyskinesiaのみならず精神症状の/1}現
率もcarbidopa併用時の方が benserazide併用時に比べ高かったと報告しており、
この説明として、 L-dopa と4対1の配合比のbenserazidc併用時に於ては、 rl1 4怪性副作用を生じない程度に脳内DAの産生促進効果 が現われており、 配令比
10対1のcarbidopa併用時に於ては、 脳内のDA量が必要以上に高くな ってい るからだとしている。 本論文のin vivoマイクロダイアリシス実験から得られた
ラット の線条体細胞外液中のDA量が、 carbidopa併用時に於て benserazidc併 用時に比べ有意に高い との知見は、 両AADC阻害薬併用療法時に於て、 脳内で のDA産生促進効果に差異が存在するという上述の印東5
5
)の推論と密接な関係-
3 1
-があると思われる。
第5節 小括
AADC阻害薬であるcarbidopaならびにbenserazideを併用した際のラットに 於けるL-dopaの血中及び線条体内での動態ならびに代謝をマイクロダイアリシ ス法によりin vivoで測定し、 薬物速度論的に比較検討した。
臨床で実際に使用されるL-dopaとcarbidopaの投与量比はモル比で約10 : 1 であるが、 benserazideの場合、 carbidopaより2.5倍高い用量で同等の治療効果 をあげることが認められている47-51)。 本章では、 両AADC阻害薬を比較する ため、 L-dopaとcarbidopaの投与量比を臨床用量を反映させたモル比の10 : 1 とし、 更にしdopaとbenserazideの投与量比をcarbidopaと同じモル比である
10 : 1とbenserazideの臨床用量を反映させたモル比である4:1 に設定し、
carbidopaとbenserazid eのAADC阻害作用を等用量比ならびに臨床用量比に於 て比較した。
その結果、 AADC阻害薬併用時には、 いずれも血中L-dopa量の増加に符合し た線条体内L-dopa量の有意な増加が認められたが、 benserazideは、 臨床用量比 の併用に於て、 はじめてcarbidopa併用時と同等の線条体内L-dopa量の上昇効
果を示すこと。 及び、 両AADC阻害薬の臨床用量比に於ける併用時を比較した 場合、 carbidopaとbenserazideは、 L-dopaの脳内移行性、 血中及び線条体細胞 外液中に於けるDA 動態には異なる作用を及ぼすことが認められた。 また、 本研 究のマイクロダイアリシス法を用いたin vivoの検討に於て、 L-dopa及び関連代 謝物は、 脳内出現量の立ち上がりから消失までを、 ほぼ6時間に亘って一匹の実 験動物で観察することが可能であった。 その聞の血中及び脳内薬物量の時間的推 移は、 ブロードなクロマトグラムと類似しており、 このことは、 クロマトグラム 解析理論を基にYamaokaら5)及びCutler 6)が提唱したモーメント解析法が、
-32-
本マイクロダイアリシス法には最適の解析法であることを実証した。
本論文では、 L-dopaの脱内移行動態に及ぼすcarbidopaとbenserazjdcのりí�用 効果をマイクロダイアリシス法によりin vivoで評価することができ、 本法が、
中枢作用薬の脳内移行動態に関する相対的変化を比較検討する方法として有用で あることを明らかにできた。
-33-
第6節 実験の部
1
試料ならびに試薬Carbidopaは蔦有製薬 、 benserazide塩酸塩は日本ロシュから供与されたもの を使用した。 L-dopa、 DA塩酸塩、 NE塩酸塩、 DOP AC、 HVA ならびに MHP G ヘミピペラジニウム揮は全て Sigma製特級試薬を用いた。 オクタンスルホン酸
ナトリウムは Aldrich製を用いた。 過塩素酸 (PCA) 、 塩酸 、 リン酸ーカリウム、
リン酸ならびにエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA・2Na)は和光純 薬の特級試薬を用いた。 メタノー ル(MeOH)は和光純薬の 高速液体クロマトグ ラフ用特級試薬を川いた。 ウレタンは東京化成工業の特級試薬を用いた。 リン ゲル液(147 mEq/L Na+、 4.5 mEq/L Ca2+、 4 mEq/L K+及び 155.6 mEq/L Cf : pH 6.5)ならびに生理食塩液は大塚製薬 より購入した。 水は蒸留水を超純水製 造装置(Milli-Q、 Miliporc製 )に通し精製したものを使用した。
2
実験動物長崎大学医学部附属動物実験施設で飼育されたSPFのWistar系雄性ラット (休重280,,-,320 g)を用いた。
3
マイクロダイアリシス装置マイクロインジェクションポンプ (CMA/100)及びマイクロダイアリシスプロ ーブ (CMA/10)は Carnegie Mcdicin製の ものをビー ・ エー ・ エ スより購入して
実験に用いた。 CMA/10プローブの先端はポリカーボネート製の透析膜で覆われ た構成になっており、 透析膜のカットオフは 20,000 dalton、 分子量5,000以下 の物質の回収が可能である。 透析膜の長さは 1 mm、 2 mm、 3 mm、 4 mm及び
10 mmの5種類があり、 実験による選択が可能で、 透析膜の外径は 0.50 mm、
シャフトの外符は 0.64 mmである。 本章では、 線条体のサイズに合わせ透析膜
-
34
-の長さJ mmの透析プローブを選択した。 透析プローブをCMA/100マイクロ インジ二クションポンプに接続し、 リンゲル液を濯流液とし流速2.0μl/minで
微小濯流した。
4 L-dopa、 L-dopa関連代謝物 、 carbidopa及び benserazidcの 定量
L-dopa、 L-dopa関連代謝物 、 carbidopa及び bcnserazideは高速液体クロマト グラフィー電気化学検出法(high pcrformance liquid chromatography electro-
chemical detection HPLC-ECD)を用いて定量した。
4
.1
標準液の調製L-dopa、 DA塩酸塩、 NE 埼酸塩、 DOPAC、 HVA、 MHPGヘミピペラ ジニウ ム塩、 carbidopa及び bcnserazid e塩酸塩の 50μmolをそれぞれ 0.5 M PCAに溶 解して100 mlとし、 5 nmolimlまで希釈後、 遮光して冷凍庫に保与した。 実験 を行う|時に、 用時希釈し標準液を調製した。
4.2
分析機器 ならびに測定条件高速液体クロマトグラフは Shimadzu製の LC・6A型ポンプを用い、 検出器とし てShimadzu製の L-ECD-6A型電気化学検出器を設定首位800 mVに於て用いた。
検出器からのクロマト信号は Shimadzu製の C-R3A )���クロマトパックで秘算処 理した。 カラムはTosoh製のTSK-GEL ODS-80TM (村係5μm、 4.6
X
150 mm) を用いた。溶出は、 1.1 mMオクタンスルホン酸ナトリウム、 1.0 mM EDTA・2Na及び 15% MeOHを含みリン酸で pHを2.95に調整した0.05 Mリン円安カリウム緩衝
液を移動相とし、 ポンプ流速1.0 ml/ minを用い、 室温で、 検出感度を4 nA/FS に設 定して行った。
測定の対象とした上記8種の薬物を各々2.5 pmol含んだ10μiの 0.5 M PCA をHPLC-ECDに注入した時のクロマトグラムをFig. 9に示す。 なお、 括弧内に
は各薬物の 保持時間を併せ て示している。