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人と博物館を「結びつける」方法に関する一考察

―「展示」「来館者行動」「学習支援」の研究動向から―

仲  久 徳

A Study to Connecting Peoples with Museums:

Review of Recent Research of Exhibition, Visitor Behavior and Study Supports in Museums NAKA Hisanori

星槎大学紀要(Seisa Univ. Res. Bul.)共生科学研究 No.12 87〜94(2016)

星槎大学共生科学部

1.はじめに

近年、博物館における教育活動が注目を浴びている。それに伴い、博物館あるいは博物館 教育についての研究が様々な分野から多角的なアプローチが試みられている。博物館教育研 究においては、来館者の多様性、目的の多角化といった点から一般化できる理論を構築する ことは難しい。しかし、博物館あるいは博物館教育についての研究成果を横断的に整理し、

教育学的な視点からの考察を行うことにより、今後の博物館教育の充実を図る手掛かりや根 拠となり得る理論的背景を探ることには意義があると考えられる。

本報告では、博物館あるいは博物館教育についての研究のうち、「展示」「来館者行動」「学 習支援」に視点を当てて研究動向と課題について整理し、博物館教育の充実に向けた示唆や その理論的背景を探るとともに、「学び」を軸として多様な人々と博物館を「結びつける」

方法について考察する。

2 .「展示」に関する研究動向から

1 )展示に関する学習論からの検討

学校教育における授業設計の研究で援用される学習論として、例えば、鹿毛(2010)は

「心理学史上、行動主義から認知的構成主義(対象へのはたらきかけをとおして学習者自身 が認知過程を生み出すという考え方)、社会的構成主義(認知過程は複数の人の相互的な行 為のなかで達成されるという考え方)へと理論が展開し、学びや教育の意味が広がってきた」

(p.24;原文ママ)と紹介している。同時に「3つの理論的立場にはそれぞれ固有の教育的意 義があり、優劣をつけることは不可能」(p.25)と補足する。

研究ノート

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では、博物館教育においてはどのような学習論が議論されているのか、いくつか検討して みたい。ただし、先述したように博物館での教育研究では体系づけられた研究が進められて いないため、「科学系博物館」と「歴史系博物館」、さらには「美術館」といった館種により 学習論の展開に差異があること(安達ら2006、など)、また、学校教育と博物館教育に関す る先行研究を分析する際、先の「行動主義」や「構成主義」の捉え方においても差異がある ことに留意する必要がある。

第1には「来館者への研究成果の還元」を指向して、「来館者が『もの』を媒介にして、

展示するものの意図、つまり博物館側のメッセージを読みとる」という関係での捉え方があ る。

吉田ら(2000)は、教育工学の立場から、科学系博物館におけるそのアプローチについ て、まず、「伝達としての展示法」として、行動主義の視点から「所与の環境(展示システ ム)を適切に設計・制御してやれば、来館者の学習反応(行動)を縦横に駆使できる」(p.93)

とし、展示方法として「提示型展示法」「ジオラマ」「プラネタリウム」「説明型展示法」を 掲げる。一方、「『体験する環境』としての展示法」として、構成主義の視点からPiagetの 認知発達理論や「応答する環境」の理論を援用し、「相互作用(インタラクション)」を軸と して「知識は伝達されるのではなく能動的に構成される」(p.96)とし、展示方法として「触 れる体験型展示法」といった6つの方法を掲げる。いずれにせよ「博物館側のメッセージを 読みとる」関係においてのアプローチである。

第2には「利用者(来館者)主体」を指向して、「自己の変容と他者の変容に相互に関わる」

という立場からの捉え方がある。

並木(2008)は、「利用者主体の教育論の構築」という視点から、そもそも「博物館教育」を「博 物館側が来館者に何らかの働きかけをすること」(p.170)と広く定義したうえで、「利用者(来 館者)主体」のアプローチについて①学習主体として「自由選択」という積極的な存在とし て見ること、②博物館の成立を支え、そのことによって組織も変化させていく責任を博物館 と利用者で分かちあうという「参加論」の採用、③利用者それぞれが、深い省察をする上で 自分の経験を意味づけるための「ナラティヴ」という様式があること、を掲げる。その上で「学 習が社会的な営みであることを考えると、展示室という環境でおきる微視的な学習だけでな く、利用者の参加によって、さまざまな変化が博物館だけでなく多くの学習施設で巻き起こ る、そのダイナミックな学習についても、博物館側として知るべきであろう」(pp.180-181)

と指摘する。

第3には「一緒に考える」(あるいは「一緒に創りあげる」)という捉え方である。

小島(2008)は、主として歴史系博物館において「歴史展示における模型の意味と活用」

の視点から、「歴史資料(実物)そのものの展示」および「過去のある情景を再現しての提示」

のそれぞれの短所、すなわち、前者についてはテーマ設定の限界や資料の持つ多義性ゆえの テーマ以外の読み解きが可能であること、後者について再現されたものは多かれ少なかれ事 実ではないし、ステレオタイプ的な理解につながることを踏まえ、「歴史像はすべて何らか の資料によって作られている以上、結果としての歴史像を学ばせるのではなく、その資料を

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元に『一緒に考える』こと以外、歴史展示は正当性を持ちえない」(p.204)と指摘する。

この点については、小笠原(2015)も「知識とは、私たちと環境と社会との関係で、私た ちの世界へのかかわりを導く働きがあるとすれば、それはそれぞれの人において様々であり うる。私たちは、それが文字化されるがために、だれでも同じ知識があり、それの正しいわ かり方もあるのだと夢想しているにすぎない。そうだとすれば、その困難さにめげずに、学 芸員としての自分のかかわりを通じて、来館者のかかわりを助ける、あるいは自分と来館者 とが協働でその都度、新たな知をつくりあげる、そういった仕事を引き受けなければならな い」(p.67)と指摘している。

第1の捉え方は、いずれのアプローチを採用したとしても「知識獲得」に主眼を置いたも のであるのに対し、第2の捉え方は、個人の文脈に即した知識構成、いわゆる「認知的構成 主義」に軸を置いたもので、博物館教育において根強く支持されている捉え方である。第3 の捉え方は、いわゆる「社会的構成主義」の視点で展示(あるいはテーマ)を核とした第1 と第2の両者の融合を図った方法と考えられる。この捉え方は、科学系博物館では「サイエ ンスコミュニケーション」、美術館における「哲学対話」などの展開を鑑みると、今後の博 物館展示と来館者の学習を「結びつける」方法を探るための有効な学習論であると筆者は考 える。

2 )「展示の理解」の視点からの検討

門林ら(1999)は、博物館の展示を「学芸員が展示のテーマに沿ったモノを選び出し、説 明札やパネルで提供する情報を選別し、モノどうしを関連づけて展示に意味的構造を持たせ、

その構造がうまく伝わるようにモノを展示室へ配置すること」と捉え、「意味構造の個人 化」という視点から研究を展開して いる。手法としては、展示室や展示 物に付与される説明文を学芸員の知 識とみなして統計処理した後に「展 示空間」として可視化する。展示空 間にあるオブジェクトの中から興味 あるものを見学者に選択させ、見学 者の「興味空間」を形成する。最後 に見学者の興味空間を展示空間に融 合させて「個人化空間」を構成する。

これらの3つの空間それぞれにおけ る距離の変化(「近い」「遠い」の組 み合わせ)から表1のような8つのパターンを描き、その特徴を整理している。

以下、門林らの各パターンの解釈(pp.984 – 985)から教育学的に意味がありそうなパター ンをいくつか引用する(なお、下線は筆者による)。

○パターン2:この変化は、学芸員と見学者の双方が同様に関連性が高いと意識していた 1 3つの空間のパターン(門林ら,1999p.984

パターン 展示空間 興味空間 個人化空間

1 近い 近い 近い

2 近い 近い 遠い

3 近い 遠い 近い

4 近い 遠い 遠い

5 遠い 近い 近い

6 遠い 近い 遠い

7 遠い 遠い 近い

8 遠い 遠い 遠い

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ものが、学芸員の知識に見学者の視点を導入した結果、関連性が低くなるという、見学 者にとっても学芸員にとっても意外性を与えるものである。

○パターン3:この変化は、学芸員が用意した展示空間では関連性が高いとされていたに もかかわらず、見学者の興味空間では関連性が薄れてしまったが、両者を仲介すること によって再度近く配置されることになり、その関連性があらためて見学者に伝えられる ことになる(以下、省略)。

○パターン5:学芸員が意識していなかった関連が、見学者によって示され、仲介機能が 見学者の意見を支持する形で両者を融合したと考えることができる(以下、省略)。

○パターン7:この場合は、学芸員も見学者も関連が深いとは意識していなかったものが、

仲介によって両者の知識と視点が融合されて初めて顕在化する関連である(以下、省略)。

門林らの研究の教育学的なポイントは、門林らは「個人化空間」を「見学者の興味空間を 展示空間に融合」(p.987)という表現に留めているが、筆者は「個人化空間」の形成におい て学芸員の知識と見学者の興味とを「仲介」する「出来事」が存在すると推察する。その「出 来事」は「教材」といった博物館側の意図的な働きかけであるかもしれないし、人々あるい は人々と展示との多様な相互作用から生み出される意味や価値かもしれない。

筆者は博物館での「出来事」を収集し、操作することでパターンを様々に変化させること で、よりよい「学びの場」の提供が可能となると捉えている。

3 .「来館者行動」に関する研究動向から

亀岡(2003)は、環境心理学の視点から美術館と博物館利用者の認知について研究を進め ているが、博物館については「博物館を展示の場としてではなく、展示環境との相互作用に よって、来館者自らが望む情報獲得のために利用する環境として認知している傾向がある」

(p.8)と指摘している。

朴ら(2005)は、科学系博物館を対象に、展示手法を①体験型(全身・五感利用で自ら体 験できる仕組みになっている展示であり、形態の視覚的注目性が高く、利用する人の操作に よって様々な反応及び結果が生み出される。即ち、利用者の体験と展示装置の相互作用によっ て情報獲得が可能な展示手法)の割合が高い展示室、②参加型(単純にボタンを押したり、

映像を見たりするタイプであり、体験型より操作が簡単で、結果が予測可能な展示装置の仕 組みになっている展示手法)の割合が高い提示室、③鑑賞型(手で触ることができず、視覚 だけで情報を得られ、説明や標本のパネルなどの操作が不可能な展示手法)の割合が高い展 示室、(①、②は「ハンズ・オン」、③は「ハンズ・オフ」)に分けて利用者行動を調査した。

その結果、体験型の展示は、利用率は3つの手法の中では高いものの、「1人の利用が多いこと、

利用グループ内でのコミュニケーションを促進するものではなかった」(p.62)こと、それと は対照的に鑑賞型の展示は、利用率は低いものの、「グループ内での会話等の行動が観察され、

体験型と対照的であった」(p.62)と指摘する。菅ら(2002)も「ハンズ・オンを中心とした 体験型展示の問題点として、知識の伝達に限界が出やすいことが指摘されている。インター

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フェースの大きさや性質からたいてい『順番待ち』する必要があり、また体験の結果学ぶべ き事柄が必ずしも伝達されるとは限らない」(p.1)とハンズ・オンが万能ではない点を指摘 する。

ところで、菅ら(2002)は、「お互いの行為を発話レベル、身体レベルの両方において観 察することにより、共有空間に参与している人びとは相互行為を達成していることが明らか になる」(p.3)として共有空間に参与する観客について相互行為分析を行っているが、ユニー クな点は菅らが「傍観者(bystander)」と呼ぶ観客の存在である。「傍観者」とは「共有空 間に参与する観客のなかでも、展示装置に触れる実践者ではないが、傍らで実践を見て共 に鑑賞行為に参与している人」(p.4)を指すが、菅らは「今後のミュージアムの展示デザイ ンにおいては、実践者の動線を考えることに加え、傍観者(bystander)が実践者に対して 適切な身体配置と共有空間をつくりあげることができるような空間の構成が望ましいといえ る。そのような共有空間における実践者と傍観者(bystander)との相互行為の特性は今後 さらに探究されなければならない」(p.9)と指摘する。

これらのことから、展示方法にはそれぞれ特性があり、来館者との関係性やそれらの相互 作用の実態において選択する必要がある。また、グループ学習において「傍観者」と「実践 者」の交代は常に起こりうるのであって、「傍観者」と「実践者」の間での相互作用にも着 目した実践や研究を注視していく必要がある。

4 .「学習支援」に関する研究動向から

奥本ら(2010)は、博物館展示を理解・解釈するための学習支援に関する研究において、

初心者限定の実験を美術館で行った結果、「博物館学習支援は、単に展示の知識を学習者に 教授しても展示学習とは連動せず、展示から新しい発見を行い、その発見を自分なりに解釈 する鑑賞方略を支援することが、展示学習の発展を支援している」(p.429)と指摘する。

一方、清水ら(2010)は、親子向けのクエスチョンカードの導入が「滞在時間が延び、親 子での会話・交流も増加し、各展示ゾーンの少なくとも1か所でパネルや展示物を学ぶ機会 をつくることができたことが明らかになった。子どもが『これ何?』などと保護者に質問し たり、保護者が、クエスチョンカードを手に子どもに声かけをしたり、展示物やパネルを指 さして読みきかせる姿が多くみられるなど、展示物に対する積極的なアクションなど行動・

導線の変化もあった」(p.54)と効果を述べている。また、セルフガイドやキットの導入は

「自宅に帰ってから他の家族や子どもたちに博物館体験を伝えることのできるセルフガイド やキットは、潜在的来館者へのアウトリーチとしては有効である」(p.52)としている。青 木(2013)も、持ち帰り解説シートといった「情報の持ち帰り」について「この方法は、見 学者心理に満足感を齎す方法であると評価できる。ミュージアム・ワークシートの解説との 連携をはかれば、さらなる情報伝達効果とリピート客の誘引に直結するものと考えられる」

(p.162、なお、ふりがなは筆者による)と主張している。

また、松尾(2006)は自身の学芸員として体験から「展示解説員」と「展示交流員」との

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差異について触れ、「展示交流員」について、当時滋賀県立琵琶湖博物館に勤めていた布谷 知夫学芸員の話として「多くの人は博物館の展示室においても、一方的に知識を教えられる のではなく、対話の中から展示されていることに関連して自分が知っていることも発言した いものです。展示室が体験と発見、そして対話の場であるならば、いわゆる展示解説員は教 えるよりも、来館者の話を聞き、来館者が新しい発見をするように手伝ってあげ、来館者が 考えるときの手助けをする」(p.41)と説明する。

以上のことから、学習支援においては、「教える」という行為に固執することなく、博物 館では「相互作用」や「交流」を深めるといった視点からの人、モノ、情報の整備が求めら れてくるといえよう。

5 .まとめと今後の課題

1 )博物館教育の充実に向けた示唆

本研究では、「科学系博物館」「歴史系博物館」「美術館」の差異を踏まえつつ、「展示」「来 館者行動」「学習支援」の点から博物館及び博物館教育の研究動向の分析を試みた。以下、

得られた示唆や理論的背景、今後の課題を整理する。

①学習論に関する分析から:博物館での学びの多様性を鑑みると、複数の学習論からのア プローチを採用し、来館者のニーズや博物館の提供する教育の目的に応える必要がある。特 に、従来からの学習観である「知識獲得」の他に、「個人的に意味・価値のある知識構成」(い わゆる「認知的構成主義」)、「社会的に意味・価値のある知識構成」(いわゆる「社会的構成 主義」)に分けて捉えられること、特に、後者については学芸員や来館者と「一緒に考える」

という視点でその具体的な方法や「学びの環境」の構成への検討が求められるであろう。ま た、学校教育との比較において、博物館には「研究」という機能もあるため、研究者という 側面を持つ学芸員とともに協働して学術研究に参加することで高度な「学び」を提供できる。

また、「展示空間」「興味空間」「個人化空間」という視点から教育的意図をもった展示の充 実のために、それらを仲介する「出来事」に着目した研究の推進が必要である。

②来館者行動に関する分析から:展示方法にはそれぞれ特性があり来館者との関係性やそ れらの相互作用の実態把握において選択する必要がある。先行研究の分析において、来館者 は博物館の企画や展示意図に沿った行動をとるとは限らないことから、「学びの環境」を提 供するといった点から教育的な働きかけや仕掛けを用意することが考えられる。また、「傍 観者」と「実践者」という点について、学校教育では、クラスという中での学習活動におい て「傍観者」と「実践者」ともに何らかの関係がもともとあるが、博物館の場合、多くの場 合、見知らぬ者同士が「傍観者」と「実践者」になるため、両者の交代による相互作用は学 校のそれとは大きく異なるであろう。そういう意味において、「傍観者」と「実践者」に着 目した実践や研究を推進することで博物館ならではの「学び」につながると考えられる。

③学習支援に関する分析から:「教える」という行為に固執することなく「相互作用」や

「交流」を深めるといった視点からの人、モノ、情報の整備が求められてくる。特に、「情報

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の持ち帰り」という点において、従来からあるパンフレットやワークシート以外に、来館者 の学びを記録し、その記録に意味や価値を持たせた成果を持ち帰らせることも重要な「結び つける」方法になり得ると考えられる。これについては、展示見学ポートフォリオづくりの 実践(田口2016)が参考になる。この実践は、そもそも「ベルトコンベア方式」と揶揄さ れる博物館での校外学習に対して博物館側からのアプローチにおいて「学びの充実」を図る ために取り組まれたものである。具体的には、①展示を来館者目線で自由にデジタルカメラ で記録し(1時間程度)、②記録した写真をプリントアウトし、専用の台紙に時系列に貼っ ていき、③特徴的な写真に対してコメントを書き込み、④来館者同士で(あるいは学芸員も 含めて)共有を行う、といった活動である。この実践で期待されることは、記録に残し、「情 報を持ち帰る」こと以外にも、制作過程及び完成作品の来館者同士及び学芸員による交流に よる多様な視点での学びの充実が図れること、来館者目線での展示の捉え方を博物館展示へ フィードバックできるということが考えられる。

今後の課題として、現在、学校教育に関しては次期学習指導要領の改訂に向けた政策が展 開されつつある。博学連携において注視すべき点は「主体的・対話的で深い学び」「社会に 開かれた教育課程」であろう。これらの政策動向も含め、博物館での学びと学校教育での学 びの差異を踏まえた効果的な実践について展開していきたい。

2 )人と博物館を「結びつける」方法の在り方

博物館では多層的な学び、多様な学びが提供できる。その背景には、①「博物館−展示−

来館者」「展示−人・モノ・情報−来館者」さらには「来館者−展示−来館者」あるいは「来 館者−展示−学芸員」といった多様な「横断的な関係」、②堀池(2007)が「展示はメディ アであり、展示空間はミュージアムと利用者のコミュニケーションの場であるが、展示に係 るコミュニケーションは展示会場でのみ介在するのではない。利用者の視点からみれば、来 館者の来館動機となる情報受信や、来館後の記憶、リピーターとなる動機まで、ミュージア ムの外部においても様々なコミュニケーションの形態がある」(p.247)と指摘するような時 間軸で捉えられる「縦断的な関係」が存在する。

最近では、本研究で取り上げたような既存の学習論に依拠した博物館での学びや交流に よって「結びつける」方法以外に、例えば、筆者が既報(仲2015)で紹介したような北名 古屋市立歴史民俗資料館において高齢者向けに実践している「回想法」を取り入れた新たな

「学び」や交流、あるいは、山中ら(2011)がマンガを主題とした(多様な活動や学びを保 障する環境としての)「マンガ環境」の在り方を主張しているように、人と博物館を「結び つける」方法も多様化している。

この点についても、今後、人と博物館を「結びつける」方法についてこれらの事例を「学 び」の側面から分析し、その理論的背景を探る研究を継続していきたい。

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引用・参考文献

青木豊(2013)『集客力を高める博物館展示論』雄山閣.

安達文夫・竹内有理・小島道裕 [他](2006)「展示の理解の評価に関する検討」国立歴史民 俗博物館研究報告 130,1-20.

小笠原喜康(2015)『ハンズ・オン考−博物館教育認識論』東京堂出版.

奥本素子・加藤浩(2010)「博物館展示を理解・解釈するために必要な学習支援についての 考察」日本教育工学会論文誌 33 (4),423-430.

鹿毛雅治(2010)「学習環境と授業」(高垣マユミ編著『授業デザインの最前線Ⅱ理論と実践 を創造する知のプロセス』北大路書房)21-38.

門林理恵子・西本一志・角康之 [他](1999)「学芸員と見学者を仲介して博物館展示の意味 構造を個人化する手法の提案」情報処理学会論文誌 40 (3),980-989.

亀岡聖朗(2003)「美術館・博物館利用者の認知に関する環境心理学的研究」MERA Journal=

人間・環境学会誌 8 (2),1-10.

小島道裕(2008)「歴史展示における模型の意味と活用」国立歴史民俗博物館研究報告 140,

201-211.

清水麻記・河野央・平井康之 [他](2010)「大学博物館展示と来館者をつなげる教育補助ツ ールの開発と効果」九州大学総合研究博物館研究報告.8,49-55.

菅靖子・山崎晶子・山崎敬一(2003)「インタラクティブな展示装置を中心とする鑑賞者の 相互行為」デザイン学研究 49 (5),1-10.

田口公則(2016)「展示見学ポートフォリオづくりの講座実践」自然科学のとびらVol.22 No.4, 30-31.

仲久徳(2015)「『共に生きる』社会と博物館の役割」共生科学研究 : 星槎大学紀要 (11),68-74.

並木美砂子(2008)「博物館の利用者主体の教育論構築にむけて:異文化理解を促す学習論 の紹介と提案」国立歴史民俗博物館研究報告 140,169-183.

朴鍾来・花里俊廣(2005)「科学系博物館における展示手法と利用者の行動特徴からみた展 示の分析」日本建築学会計画系論文集 (593),57-63.

堀池佳世子(2007)「双方向メディアとしてのミュージアム展示とコミュニケーション」立 教ビジネスデザイン研究 (4),245-260.

松尾知(2006)「博物館における展示と交流:展示室スタッフの視点から」タクサ : 日本動 物分類学会誌 (21),40-45.

山中千恵・伊藤遊・村田麻里子 [他](2011)「人はマンガミュージアムで何をしているのか:

マンガ文化施設における来館者行動と〈マンガ環境〉をめぐって」マンガ研究 17,76-85.

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参照

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