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教室で漢字を学ぶということ―個と協働のバランス―

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Academic year: 2021

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実 践 紹 介

65 1.漢字 5 概要

 漢字

5

は,早稲田大学日本語教育センターの総合科目群に位置付けられる科目であり,

コーディネーターの作成したシラバスに沿って複数のクラスが同時進行で開講され,担当 者にその運営が任されている。クラス目標として,「中級の漢字の字形,それらを用いた 和語や熟語の意味と読み方が分かる」「使い方が分かる中級,中上級語彙を増やし,類義 語の使い分けや適切な共起関係が理解できるようになる」「語構成,和語と漢語の対応,

反意語,類義語などメタ的な観点から語彙を整理し,未習語の意味や読み方が推測できる ようになる」「漢字の読み方を文の中で理解し,音声として聞いた言葉・文を漢字を使っ て書ける」「辞書やクラスメート,教師の力を借りながら,自力で漢字の知識を増やせる ようになる」の

5

つが示されており,INTERMEDIATE KANJI BOOK 漢字

1000

plus VOL.

1

6

10

課を用いて進めていく。

 総合科目群の漢字科目は

1

から

5

にレベル分けされているが,漢字

5

の履修者は単に漢 字の知識があるだけではなく,印象としては上級の日本語能力を有し,相応のやりとりが 可能である。ここから考えられるのは,レベル相応に,個々人が漢字学習のスタイルを 持っており,課ごとの新出漢字は,ほとんどの履修者にとってある意味で既習であるとい うことである。そこで,クラスとして何が求められるのかという点が浮上する。

2.科目担当者としての配慮のあり方

 これまで漢字の字形や読み方,意味,使い方について,それぞれが自分なりに獲得して きた学習のスタイルがあると考えると,独りで学習可能なこと,あるいは,独りで自分な りにしたほうが効率や方略の点で有効なことがあるはずである。その点をふまえ,クラス という環境を活かした学びとは何か,漢字を学ぶことにクラスがどう資することになるの か,ということを,配慮すべき点として 改めて 考えることとなった。

 そこで,担当する漢字

5 αのクラスを,協働による学びの場,ペアやグループによる活

動によって,やりとりしながらクラス目標に取り組む設計をし,実施した。しかし,初め て担当したクラスの期末に実施された学生授業アンケートの結果,「グループワークが少 し多すぎる」「グループ活動の時間はちょっと長すぎてつまらなくなった」という記述が 早稲田日本語教育実践研究 第 8 号

教室で漢字を学ぶということ

―個と協働のバランス―

齋藤 智美

  科目名:漢字 5

  レベル:初級 1・2 /中級 3・4・ 5 /上級 6・7・8   履修者数:22 名

(2)

早稲田日本語教育実践研究 第 8 号/ 2020 / 65―66

66 あり,授業設計を見直す契機となった。

3.個と協働のバランス

 「グループワークが多すぎる」という評価は,その活動の意義が感じられないことに起 因すると考察した。クラスメートとの協働の学びという機会をどう活かせるかを考えて も,その意義や効果が感じられなければ意味がない。そこで次の学期からは,なぜ協働 か,なぜ個か,あるはなぜクラス全体で行うのかについて,各回の学習目標に沿って狙い を明確にし,学生に示せるようにした。

 漢語の語構成を学ぶ

6

課では,漢語と和語について学ぶ項目がある。漢語と和語は変換 可能な語ではなく,使い分けがあることは,個々がそれなりに理解しているであろうし,

使い分けているであろう。しかし例えば「ひるごはん/昼ご飯/昼食/ランチ」のニュア ンスが異なることについて,独り辞書で納得出来るものだろうか。その使い分けにルール があるわけではないが,このレベルの学習者であれば,それなりにそのニュアンスに違い があることを認識している。クラスでは,誰と何処でどのような状況の場合が「ひるごは ん/昼ご飯/昼食/ランチ」なのかを全体で意見交換することによって,自分の認識を振 り返り,新たにする様子が見られた。また,漢語の読み取りについては,直近の記事を用 いてみると,意味取りに困難はないことがわかるが,語構成については個人的には流され る可能性があると考えた。そこで,どのような語構成であるかを共に考え,構成を知るこ とが日本語でのコミュニケーションに資することを実感できるよう授業設計した。

 また,10課の「発達/進歩/発展」のような類義語の使い分けは,独りで辞書片手に 記憶するだけでは,なかなか使用語彙として身につけるのが難しい項目であると考えられ る。これについてクラスメートと協働で,使い分けが明らかになる語とのコロケーション を考える活動では,互いの異見や指摘,同意によって研がれていく様子が見られた。

 他にも,語彙マップを書くという課題は宿題として独りで行うが,それをクラスで他者 に向かって解説することで何が生まれるのか等,独りの作業の意義と,協働で生まれるも のの意義を共有した上で,学びの基本を授業設計の基礎として明確に認識することを,ク ラス担当として深く意識した。

 このような取り組みの結果として,学生授業アンケートでは「皆と一緒に漢字を学ぶ のを楽しんでいました」「活動は特に役に立った」というように,協働の効果が記述され るようになった。また,「I ve learnt Kanji usage in context」「Kanji is sometimes difficult to me But teacher s class I can use it very well」という記述も,クラスという環境ならではの学び があったということであろうと考えられる。

 個の学びと協働の学びを,履修者それぞれがバランスよく活かせるよう,今後ともコ ミュニケーションを密にしながら図っていきたい。

(さいとう さとみ,早稲田大学日本語教育研究センター)

参照

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