九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
スギ樹冠における窒素分布と炭酸ガス固定機能の評 価に関する研究
小林, 元
Graduate School of Agriculture, Kyushu University
https://doi.org/10.11501/3147882
出版情報:Kyushu University, 1998, 博士(農学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
第3章 スギ樹冠の炭酸ガス固定機能
第1節 光合成速度に及ぼす葉の窒素含量と光強度の影響
1 . はじめに
スギ樹冠の光合成量を樹冠内の窒素分布から推定するためには, 葉の窒素含
と光合成速度との関係、を表すモデルが必要である. 光飽和下の最大光合成速 度は葉の窒素含量と正の相関にある(Field and Mooney, 1986; Evans, 1989) が, 光合成速度は光強度によっても変化する. したがって, 窒素含量から光合 成速度を推定するためには, 光強度を変数に加えたモデルが必要となる.
Hirose and Werger(1987a)は, 光一光合成曲線のパラメータを葉の窒素含量 の関数で表し, 葉の窒素含量から任意の光強度の光合成速度を推定するモデル を提示した. 彼らはこのモデルを用いて, 光強度の高い所に位置する葉ほど窒 素含量の増加に対する光合成速度の増加が大きくなることを示し, 光強度の高 い樹冠上層に多くの窒素が分配されることによって樹冠全体の光合成量が高め られるというField(1983)の説を支持した.
そこで本節では, スギの葉の光合成速度を窒素含量と光強度との関係から解
析した. さらに, 葉の窒素含量と光一光合成曲線のパラメータとの関係、を調べ,
Hirose and Werger(1987a)の提示したモデルがスギに適用出来るかどうか検討 した.
2. 材料と方法 1 . 材料
材料には, 九州大学農学部貝塚圃場で生育させた当年生のスギ挿し木苗(品 種:シャカイン)を用いた(プレート-3・1・1). 1995年3月に, 苗木を赤マサ
で満たした 1.81の素焼き鉢に植え, 3段階の施肥 処理( 1鉢あたりの全窒素 施 与量: 5.4 , 1. 8, 0 gTNpot ')と5段階の庇陰 処理(相対光強度: 100, 60, 36,
22, 130/0)を組み合わせた, 計15の処理区で約6ヶ月生育させた. 施肥区は緩 効性の18態窒素(ウッドエース , 三菱化成)を施与し, 庇陰区は寒冷紗で庇陰し た.
2. 光合成の測定
1995年9月12日から 27日に, 光合成速度の測定を同化箱を用いた通気法で 行った. 試料苗を鉢ごと九州大学農学部附属福岡演習林施設内の実験室に持ち 込み , 測定枝を20 cmほどの長さに水切りした. 試料葉は針葉が重なって陰に
なる部分が生じないように同化箱( 1.3 1)内に設置した. 葉 温は直径0.1 mmの 銅・ コンス タン タン熱電対を用いて測定し, 同化箱内に設置したサーモクーラ ー(SL-4FF,日本ブロ アー)で250Cになるように調節した.同化箱出入り口のCO日
濃度は赤外線ガス分析装置(ASSA-1610,堀場)で測定し, 温湿度は温湿度センサ ー(HMP133Y, ヴァイサラ)で測定した. 同化箱に流入する空気のCO2濃度は, 容 亘501のタンク内で安定させた.さらに,クールニクス(CTE42W, 島津)で水温 を調節した45 1 の水槽を通過させ, 露点が100Cになるよう調節した. 同化箱 入口のCO?濃度は 350μmolmol ',--...,380μmolmol ' で,同化箱への通気量は毎分1.0 lになるようにサーマル ・ マスフロー・コントローラ(KOFLOC-3610, 小島)で調 節した. 光源として, 250 Wのハロゲンランプ(HQ1 -TS 250W, オスラム)を2灯 用いた. 測定に先立ち, 1500 μmolm日s '以上の光強度で光飽和下の最大光合成 速度を安定させた. 安定後, 光強度がおよそ100 μmol皿、lになるまで, 暗灰 色に着色されたビニール・ シートで7段階に減光した. 同化箱内の光強度は,
光量子センサー(IKS-25-10, 小糸)で測定した. 光合成速度の測定後, 同化箱に 入射する光をアルミホイルで遮り, 暗呼吸速度を測定した.
測定は, 各処理区の当年葉で繰り返し3回行った. 測定後, 葉の面積を測定
した(第2章1節). さらに,葉と木部を分け,葉を700Cで48時間乾燥させた 後,重量を測定した. 得られた乾重を葉面積で除し,葉重比を求めた. 窒素含 量は, 試料葉を乳鉢ですりつぶし, 1 mmの円孔簡でふるったものを, CNコー
ダー(MT 500, 柳本)で測定した. 乾重あたりの窒素含量に葉重比を掛けて, 面 積あたりの窒素含量を求めた.
3. 光合成モデル
葉の窒素含量から光合成を推定する方法は, Hir ose and Werger(1987a)のモ デノレにしたがった.
光一光合成曲線は,非直角双曲線で近似される(J ohnson and Thorn 1 ey, 1984).
すなわち,
8P� - (αI +P maJ P +αIP max二o ( 1 )
P = [αI +PmaX - {(8I +PmilJ日- 4α8IP皿ax } 1/立]/28 ( 2 )
ここで, Pは総光合成速度(μmolCO�皿、1),Iは光強度(PPFD :μmol皿、1)である.
p田川, α, 8は光一光合成曲線の係数で, P maxは光飽和下の最大総光合成速度 (μmolCO日皿、1),αと0は光一光合成曲線の初期勾配(μmolCO日間01 1)と曲率であ る. 。はOからlまでの値をとり,光一光合成曲線はOがOのとき直角双曲線,
1のときブラックマン型になる.
純光合成速度は, 総光合成速度から暗呼吸速度を差し引いた値である.
P.. = P R ( 3 )
ここで, pflは純光合成速度, R は暗呼吸速度である.
( 2 )式の光一光合成曲線の3変数(Pn'''d α,8)と(3 )式の暗呼吸速度(R)を葉
の窒素含量の関数式で表すことによって, 葉の窒素含量から任意の光強度の光 合成速度を推定することが出来る.
3. 結果と考察
1 . 葉の窒素含量に及ぼす窒素施与量と光環境の影響
図-3・1. 1 に, 各施肥区における乾重あたりの窒素含量と葉重比および面積あ たりの窒素含量を相対光強度別に示した. 施肥区別に見ると,乾重あたりの窒 素含量は窒素施与量が多いほど増加した. 葉重比は, 無施肥区(N-O)が施肥区 (N-1. 8 , N-5. 4)より有意に大きかった. 面積あたりの窒素含量は,N-5.4区が N-O区とN-1.8区より有意に高かった.
光環境による変化を見ると, 乾重あたりの窒素含量は,N-O区では相対光強 度(RLI)が高くなるにしたがって低下した. 一方,N-1. 8区ではRLI 1 000/0区が RLI 130/0"'"'600/0区より高い値を示したが,N-5.4区では明瞭な傾向は見られな かった. 葉重比は,N-O区ではRLIが高くなるほど増大したが,N-1. 8区では明 瞭な違いは見られず,N-5.4区ではRLI 600/0"'"'1000/0区がRLI 130/0"'"'360/0区よ り大きい値を示した. 面積あたりの窒素含量は,N-O区では明瞭な傾向は見ら れず,N-1. 8区とN-5.4区では,RLI 600/0区と 1000/0区がRLI 130/0"'"'360/0区よ り高い値を示した.
一般に, 葉の窒素が欠乏した場合,葉面積の拡大が抑制されることから葉重 比は大きくなる. 無施肥区の葉重比が施肥区に比べて大きいのはこのような原 によるといえる. また,これまでの測定では,乾重あたりの窒素含量は相対光 強度が高くなるにしたがって増加した(第2章2節, 3節)が, 無施肥区では,
乾重あたりの窒素含量は相対光強度の高い葉ほど低い値を示した. 無施肥区で は, 面積あたりの窒素含量に相対光強度による差は見られないことから, 相対 光強度の高い葉ほど乾重あたりの窒素含量が低いのは, 葉重比が大きいためで あるといえる. 相対光強度の高い葉で葉重比が大きいのは, 光合成による同化 産物の蓄積量が多いためであると考えられる.
2. 光合成速度と窒素利用効率に及ぼす葉の窒素含量と光強度の影響
刈-3・1・2 に, 光強度(PPFD) 1500, 900, 540, 324, 194μmol皿、lにおける,
面積あたりの窒素含量と純光合成速度,および暗呼吸速度(R)との関係を示した.
純光合成速度は(2 )式と( 3 )式で計算し, (2)式の3変数(P max' α, 8)と( 3 ) バのR は各試料苗の実演IJ値を用いた. 純光合成速度は強光下で高い値を示した が, 光強度が低くなるにしたがって低下した. 光強度の低下による純光合成速 度の低下は, 窒素含量の高い葉ほど大きく, 窒素含量の低い葉, なかでも低RLI メで生育した葉では小さかった. このことから, 窒素含量と純光合成速度との 一次回帰直線の傾きは, 光強度が低くなるほど小さくなった. 光強度が低くな るにしたがって, 窒素含量の高い葉ほど純光合成速度が大きく低下するのは,
弱光下では光合成速度は光強度に律速されるため, 葉の窒素含量が増加しでも 光合成速度はあまり増加せず, 逆に暗呼吸速度が増加するためである(PPFD 0 の|火1). また, 低RLI区で生育した葉の光合成速度の低下が小さいのは, 光一光
ム成曲線の初期勾配が大きいためである(図-3・1・4 を参照)•
図-3・1・3に, PPFD 1500, 900, 540, 324, 194 μrnolrn lS 1における, 面積あた りの窒素含量と窒素利用効率( 純光合成速度を葉の窒素含量で除した値)との関 係を示した. 窒素利用効率は, 全ての光強度において窒素含量と負の相関を示 した. 窒素含量が増加するにしたがって窒素利用効率が低下するのは, 強光 では窒素含量の増加に対する純光合成速度の増加が相対的に小さいためであり,
弱光下では窒素含量が増加しでも光合成速度は変化しない, あるいは逆に低 するためである(図-3・1. 2) .
窒素利用効率は, x 軸に葉の窒素含量, y一軸に光合成速度をプロットした ときの, 原点から 線上にヲ|し\た線分の傾きとして表される(Hirose,
1984). 窒素利用効率は, 一次回帰式のy一切片が負の場合, 窒素含量と共に増 加し, 正の場合, 窒素含量が増加するにしたがって低下する. 一次回帰直線が 原点を通る場合, 窒素利用効率は一定である. 本研究で, 光飽和下に相当する 光強度 1500μrnol皿、lで測定された純光合成速度は,葉の窒素含量とy一切片が
正の一次式で近似された(図-3・1・2). 一般に, 窒素含量と光飽和下の最大光合 成速度との一次回帰式のy一切片は, 草本, あるいは落葉広葉樹で負となるが,
常緑の硬葉樹, あるいは針葉樹では葉の窒素含量の増加に対する光合成速度の 増加は相対的に小さいことから, y一切片は正となることが多い(Field and Mooney, 1986; Reich et al., 1995). 草本や落葉広葉樹に比べ, 葉の寿命が長 い常緑の硬葉樹や針葉樹は, 厚し\(葉重比の高し\)葉を持つ. 葉が厚くなると,
葉内で光合成に関与する器官以外へ分配される窒素の割合が多くなる(Evans,
1989). また, 葉内におけるCOヌの拡散抵抗(Medina, 1981; Field and Mooney,
1986 ; Vi touselくet a1., 1990; Lloyd et a1., 1992)や光減衰(Oelucia et a1. , 1992)等が大きくなる.このような理由から, 常緑の硬葉樹や針葉樹では, 窒素 含量が増加しでも光合成速度はあまり増加せず,y一切片は正になると考えられ
ている(Field and Mooney, 1986; Reich et a1., 1995).
3. 光合成モデルの検討
刈-3・1・4に, 面積あたりの窒素含量および相対光強度と光合成に関与するパ ラメータとの関係を示した. また, 表-3・1・1に, それらの関係を一次回帰した 結果を示した. 光飽和下の最大総光合成速度(PmaX>と暗呼吸速度(R)は, 窒素含 重および相対光強度の双方と正の相関を示したが, 窒素含量との相関係数が相 対光強度よりも高い値を示した. 光一光合成曲線の初期勾配(α)は, 窒素含量 と無相関であったが, 相対光強度とは負の相関を示した. 光一光合成曲線の曲 半(8)は, 面積あたりの窒素含量と相対光強度の双方と負の相関を示したが,
相対光強度との相関係数が窒素含量よりも高い値を示した.
光飽和下の最大総光合成速度(PDlaJが窒素含量と高い正の相関を示すのは, 葉 に含まれる窒素の多くを光合成のCO).固定反応系に関与する RuBPCase が占める ためである(Björkman, 1981; Evans, 1983, 1986; Makinoθt a1., 1984; Sage
θt a1., 1987; Seeman θt a1., 1987; Terashima and Evans, 1988). また, 暗
呼吸速度(R)が窒素含量と高い正の相関を示すのは,光合成活性の増大にともな
う維持呼吸の増大によるものと考えられる(Mooney and Gulmon, 1982). 相対光 強度とPmaxおよびRとの相関係数は窒素含量よりも低い値を示したが, これは,
葉の窒素含量が施肥水準によって異なるためである(図-3.1・1) . 光一光合成曲 線の初期勾配(α)は, 相対光強度の低い葉ほど大きな値を示した. 樹木の葉に おいて, 陰葉化に伴うαの上昇は広く知られた現象であり(依田, 1971), クロ ロフィル a/b比の低下に起因する(Bo ardman, 1977). また, 光一光合成曲線の 曲率(8 )は, 葉内でのco父の拡散抵抗(Rabinowitch, 1951)や光減衰(Ter ashima and Saeki, 1985)などに影響されており, 葉の厚さと関係しているといわれて いる. このことから, 8は葉重比と負の相関にあることが予想されたが, 有意 な相関は認められなかった(r一一0.236, p=O. 119).
Hirose and Werger(1987a )は, セイタカアワダチソウを供試した実験で, 光 一光合成曲線の3変数と暗呼吸速度は葉の窒素含量と直線関係、にあることを不 した. 一方, Schicving θt a1. (1992a )はスゲ(Carex acutiformis)において,
p田川(光飽和下の最大総光合成速度)と R( 暗呼吸速度 )は葉の窒素含量と直線関 係にあるが, α(光一光合成曲線の初期勾配)と8(光一光合成曲線の曲率)は葉の 窒素 含量と双曲線で近似され る関 係、に あ ること を 示 し てい る . Pons et
a1. (1989)もまた, クサレダ、マにおいて葉の窒素含量と αとの関係を双曲線で 近似しているが, 0との聞には相関が認められなかったことを報告している.
本研究では, 葉の窒素含量とPOJilXおよび R は直線関係にあったが, α とは無相 関で, 。との相関は低かった. そこで本論文では, PmaxとRを葉の窒素含量から 推定し, αと0は相対光強度から推定することにした. また, 窒素を用いた光 合成モデルでは, 葉の宅素含量と光飽和下の最大総光合成速度との一次回帰式 のx一切片, すなわち総光合成速度がゼロとなる値が, 窒素含量の最小値と仮定 される(Pons et a1., 1989; Anten et a1., 1995). しかしながら, 本研究では
x一切片が負となる(図-3-1-4)ことから,この方法で窒素含量の最低値を決める
ことが出来ない. 一方,葉の窒素含量と暗呼吸速度との一次回帰式のx一切片は の値(0. 922 gNm日)を示した(図-3・1・4)ことから, 窒素含量がこの値より低い とき暗呼吸速度が負の値となり, (3)式で総光合成速度に加算されてしまう.
このような理由から,本論文では窒素含量が1 gNm ')より低い葉の光合成速度の 計算は行わないことにした.
プレート-3・1・1. 試験地の概況
b a
C
30
18
12 24
(て。zo
E)
主。一ω〉〉」ωacωOO」日三百ω」
400
RLI 100 RLI 60 RLI 36 RLI 22
b a b
300
200
100
(N'EO) (叩εZO)
問ω」何」ω己ωω句EBω」何ω」何」ωacωOO」tch←何ω」
RLI 13
仁二コ
5.4
Fertilization level (g TN pot1 )
1 8
窒素施与量と光環境による乾重あたりの窒素含量(上図)と 葉重比(中図)および面積あたりの窒素含量(下図)の変化
図-3・1・1 .
5%水準で、有意差なし(シェアェ しし、もの は,
アノレブアベットのh 縦線は標準偏差(n-3)を表す.
の検定) .
15 12 9 6 3
。
ω
ト』 ー3
E
。('刈 15 にJ
。 12 E =1
9 6
+ω 何 Ld - 3
。 - 3 15 Z ω
12 9 6 3
。 - 3
PPFD 324
一ー一一
審会
・一一ザ
ー一ーI ・ -
PPFD 540
。 2
• RしI100
3 4 5 6 0
PPFD 194
PPFD 0
2 Leaf nitrogen content ( 9 N m-2 )
o RLI60 • RLI36 ロ Rし122
3 4 5
. RLl13
図-3・1・2. 面積あたりの窒素含量と純光合成速度および暗呼吸速度 との関係
PPFD 0の図は暗呼吸速度を表す. 直線は一次回帰式を表す. PPFD 1500: y=4. 717+ 1. 810x,
r=O . 723, Pく 0.001; PPFD 9 0 0: y=5. 611+1. 226x, r=0.5 9 9 , P く0.001; P P F D 5 4 0:
y=6.482+0.514x, r=0.297, Pく0.05; PPFD 324: y=6. 586-0. 102x, r=0.064, ns; PPFD 194:
y=5.462-0.399x, r=0.300, Pく0.05; PPFD 0: y=O. 416-0. 451x, r=0.752, PくO.001.
6
(Fめて(ZO)NOO一oεュ)
5 4 3 2
PPFD 324
。 5 4 3 2
PPFD 194
。 5 4 3 2
hυcω一υ一ヒωωωコCωOO」】一Z
6 5
4 3
2 ( 9
Nm-2)
。
Leaf nitrogen content
6 5
4 3
2
。
RLI 13 RLI22 ...
RLI36 口
RLI 60 •
RLI 100 。
•
面積あたりの窒素含量と窒素利用効率との関係 図-3・1・3.
900 : PくO.001 ; PPFO r=0.574,
1 500 : y=4. 719-0. 420x,
nu Fa pa pa
凡例は図-3・1・3と同じである.
324 : 540: y=4. 563-0. 593x, r二0.686, Pく0.001 ; PPFO
r=O. 709, Pく0.001.
r=0.649,
r=O. 698, PくO.001 ; PPFO 194 : y=3. 020-0. 502x,
Pく0.001 ; PPFO y=4. 711-0. 507x,
yニ4. 025-0. 606x,
g
20
15
Pmax
20
15
10
RLI
100 % 60 36 22 13-0・口A
10
(F'ωN 'E
N00一o
E1) hH一υω己句。
。一芯ZHch的ovozaωωO
」O
N-treatment 5.4 gNpot-1
1.8 0
-0・
100 80 60 40 20
.. 。
。
2.5
1.5
-J ・ ・
R
2.5
1.5
(F'
ωN
・EN 00一 oE1)
COZE互のω」ぷ」ωO
0・・
0.5 0.5
100 80 60 20 40
0.1
0.08
0.02 0.06
0.04 α
企ロ 4‘
ロ企 -
��開ι ・ .---ーー二タ
・・
-.� .
••
0.1
0.08
0.04
0.02 0.06
(F'ちE
iN00一oE44) ω立O一ω一gtc
100 80
• 。
60
•
40
• 20
。
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2 1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
(co一ωcωE一刀OC) hH一×ω〉C0
0
80 100
Relative light intensity (% )
40 60 20
aTt nH e ---K
nH
、,f nu内Jh川附 e N
勾gr・-,,.‘、a,.‘ nH F?1 a e i」
面積あたりの窒素含量(左図)および相対光強度(右図) と光合成に関与するパラメータとの関係
図-3・1・4.
表-3・1・1. 一次回帰の結果
Dependent Independent y-intercept variab1e variab1e
Pmax Narea (gNm -2) 2. 573
RLI (0/0) 9. 557
R Narea -0.416
RLI 1. 188
α Narea 0.0347
RLI 0.0384
8 Narea O. 938
RLI O. 783
Slope
3.321 0.0652
0.451 O. 0151
-0.000121 -0. 0000885
-0.110 -0.00383
df, 43; ns, not significant.
r Pく
O. 795 0.001 0.650 0.001
O. 752 O. 001
O. 523 0.001
O. 010 ns
O. 313 0.05 O. 338 0.05 0.488 O. 001
第2節 スギの葉の最適窒素含量
1 . はじめに
葉の窒素含量は樹冠の上層で高く,下層になるほど低くなる(Dejong and Doyle,
1985 ; Lemaire θt a1., 1991; Werger and Hirose, 1991; Ellsworth and Reich,
1993). 窒素含量の高い葉は光強度が高いほど光合成速度が高くなることから,
光強度の高い樹冠上層の葉ほど窒素含量が高いのは樹冠全体の光合成量を高め る上で有利である(Mooney and Gulmon, 1979; Field, 1983).
Hirose and Werger(1987a)は, セイタカアワダチソウを供試した実験で, 日 窒素利用効率(日純光合成量を葉の窒素含量で除した値)を最大にする窒素含量 が存在し, この最適窒素含量と日最大窒素利用効率は光強度が高くなるほど向 いことを示した. さらに, 葉冠各層で測定された葉の窒素含量は, 最適窒素含 量とよく一致することを明らかにした. このように, セイタカアワダチソウの 場合, 窒素は葉冠各層の窒素利用効率が最大になるように分配され, 窒素を葉 冠各層の光合成において効率よく利用することで葉冠全体の光合成量を高めて いると考えられている. しかしながら, スギの場合, 窒素利用効率は葉の窒素 A量が増加するにしたがって低下した(第3章1節)ことから, 光強度が高くな るほど葉の窒素含量が増加する現象(第2章1, 2, 3節)を, 窒素利用効率で 説明することは出来ない. 一方, 彦坂(1997)はホウレンソウにおいて, 葉の窒 素含量が円窒素利用効率と光合成量を最大にする中間値に収まった実験結果 (Hikosaka and Terashima, 1995; Terashima and Hikosaka, 1995)から, 窒素 は植物全体の窒素が不足しているときには窒素利用効率を高めるように葉に分 配され, 窒素が十分なときには光合成量を高めるように分配されているのであ
ろうと述べた.
これらの報告から, スギにおいては, 窒素は日光合成量を高めるように分配
されていると判断される. そこで, これまでのデータを用いて, 樹冠各層の日 光合成量を最大にする最適窒素含量を求め, 樹冠で測定された窒素含量と比較 することにより, この仮説の妥当性について検討した.
2. 日単位の光合成モデル
光合成速度を次式(Hirose and Wer ger, 1987a)から求めた.
Pn二[α1+P田川一{(81+Pmaxr� - 4α81 P max } 1/ヌ] 20 - R ( 1 )
ここで, Pnは純光合成速度(μmo1 CO�畑、1), 1 は光強度(PPFD :μmol皿、1)であ る Pmax' α, 8は光一光合成曲線の係数で,P回目Xは光飽和下の最大総光合成速度 (μmolCO).皿、1),αと0は光一光合成曲線の初期勾配(μmolCOヌμmol 1)と曲率であ る. Rは暗呼吸速度(μmolCO畑、1)である.
P maxとRを葉の窒素含量から推定し, αと0は相対光強度から推定した(第3
章1節) •
P田川 二2.573 +3.321NA (2)
R = -0.416 + 0.451Nへ (3 )
α= O. 0384 -O. 0000885RL1 ( 4 )
8 = 0.783 - O. 00383RL1 ( 5 )
ここで, NAは面積あたりの窒素含量(gN回日), RL1は相対光強度(0/0)である.
光強度(1)の日変化は, サイン2乗カーブで表される(Takenaka, 1986).
ただし,
1 - L"y s i n). {π(t-6)/12} (6壬t<18) (6)
Iニo ( 0豆t< 6 , 18三t<24 )
ここで, 1 maxは南中時の光強度(μmol皿、1), tは深夜0時からの時間(h)である.
3. 結果と考察
光強度による純光合成速度の変化を, 面積あたりの窒素含量 5, 4, 3, 2 gN皿 7について計算した. 図-3・2・1 に, 光強度と純光合成速度との関係を示した.
光強度は全天で1500μmo1皿、lとして計算し, 図では相対値(0/0)で示されてい る. 純光合成速度は, 相対光強度が 200/0(PPFD 300 μmo1皿、1)以上の強光下で 窒素含量が高い葉ほど高い値を示したが, 逆に相対光強度が 100/0(PPFD 150 μmo1rn I's 1)以下の弱光下では窒素含量が低い葉ほど高い値を示した. これは,
窒素含量が高くなるほど暗呼吸速度が増加し(第3章l節), 純光合成速度と暗 呼吸速度が等しくなる光補償点が高くなるためである. このように, 純光合成 速度を最大にする窒素含量は光強度によって変化する.
次に, 純光合成速度を日単位で計算した. 光強度の日変化は( 6 )式で表し,
南中時の光強度を 1500μmo1皿、1(日積算光強度32.40 mo1m勺ay 1)とした. I文
一3・2・2 に, 日積算光強度と日純光合成量との関係を示した. 図では, 日積算光
強度は相対値(0/0)で示されている. 日純光合成量は日積算光強度が高くなるほ ど増加したが, 図-3.2・1と比べると日光補償点が大きく右側に移行しているこ とから, 日純光合成量を最大にする窒素含量が日積算光強度によって変化する ことがより明らかである. 日純光合成量を最大にする窒素含量は, 相対光強度 100 % '"'"' 730/0が5 gNrn九72 '"'"' 5 4 0/0が4 gNrn t>, 53'"'"'370/0が3 gNmヘ360/0以下が
2 gNm l'であった.ここで, 日積算光強度ごとの日純光合成量の最大値を最大日
純光合成量, このときの窒素含量を最適窒素含量と定義した.
最大日純光 合成量 と最適窒素含量を, 日 積 算 光 強 度 43.2 , 32.4 , 2l.6 rno 1m ï.day 1 (南中時の光強度2000, 1500, 1000 μmo1皿、1)について計算した.
刈-3・2・3に, 相対光強度と最大日純光合成量および最適窒素含量との関係を不 した. 最大日純光合成量と最適窒素含量はいずれも相対光強度が高くなるほど 増加し, 日積算光強度が高いときほど高い値を示した. また, 相対光強度の増 加に対する最大日純光合成量と最適窒素含量の増加は, 日積算光強度が高いと
きほど大きかった.
このようにして求めた最適窒素含量が樹冠の窒素含量と一致するかどうかを,
第2章の1節と3節で示した林縁木および無間伐, 間伐林分の当年葉のデータ を用いて検討した. 林縁木と無間伐, 間伐林分の試料採取日は, そ れぞれ1992 年9月25日と1993年9月11日で, 光合成の測定を行った時期(9月12 日�27 日)と近い. 図-3・2・4に, 相対光強度と面積あたりの窒素含量との関係、を示し た. 実測された窒素含量をまとめて相対光強度と一次回帰し, この回帰直線を
適窒素含量と比較した.実演IJされた窒素含量は,この時期の日積算光強度38.88 molm 'lday 1(南中時の光強度 1800μmol皿、1)における最適窒素含量と比べ, 強 光下では低い値を示し,弱光下では高い値を示したが,相対光強度がおよそ300/0 以上では, そ の差は1 gNm '1以下であった. この相対光強度が30%となる層は,
樹冠が隣接個体と重なり合う陽樹冠と陰樹冠の境に相当する(第2章3節)• し たがって, スギにおいて, 窒素は陽樹冠で日単位の光合成量が最大になるよう に分配されるが, 陰樹冠では過剰に分配され, 光合成量は最大にはならないと いえる. 一方, 隣接個体に被陰されず相対光強度が300/0以上ある林縁樹冠では,
窒素は樹冠全層で光合成量が最大になるように分配されているといえる.
実測された窒素含量は最も低い値で2.05 gNm '1であったが, 最適窒素含量は 相対光強度が250/0以下になると2 gNm '1を下回り,1 5 0/0以下では1 gNm ')より低 くなった. 本研究で供試したシャカインの場合, 窒素含量は無施肥区(第3章1 節), あるいは季節的に最も低い6月(第2章3節)でも2 gNm 況を下回ることは なかった. このことから, 最適窒素含量が2 gNm 'lを下回る陰樹冠では, 窒素は 日光合成量が最大になるようには分配されていないといえる. また, 第2章3 節では, 間伐後1年目に窒素含量の増加が認められなかったことを示したが,
図-3・2.4から, 無 間伐林分では最適窒素含量より高い値を示した樹冠下層の窒 素含量が, 間伐林分では相対光強度が高くなることによって, 最適窒素含量に
近づいたことが読みとれる. このことから, 間伐は窒素が過剰に分配されてい る陰樹冠の光強度を高めることによって, 光合成量を高める効果があるといえ る.
Pons et al. (1989)は, 樹冠の下層葉で窒素含量が最適窒素含量より高い原因 として, 光合成における光斑の利用(Kriedemann θt al., 1973; Pearcy, 1988) を挙げている. 下層葉はしばしば光斑による強光に曝されるが, 葉の窒素含量 はこれらの強光を効率よく利用するために高く維持されている可能性がある.
また, 彼らは, 上層葉で窒素含量が最適窒素含量より低い原因として, 光合成 速度の日中低下を挙げている. 光合成速度は, 強光による光阻害, 湿度の低下 による気孔開度の減少(矢吹 ・ 宮川, 1970)等によって, 正午前後に低下するこ とが知られている. しかしながら, 本モデルではこのような条件は設定してい ない. さらにこのような要因を組み込むことによって, 最適窒素含量は実測の 窒素含量に近づくことが予想される.
15
5 4 3 2 一 一一一一ー一一一一 一一一一- -ー
一一一一一一 一ー ー
ー F F
". ,
t t
12.5
10
7.5
5
2.5 (寸的
NsEN
OO一oεュ)
ω戸町」υ一戸ω工戸chω0日O工a-ωZ
。
制2.5
0 20 40 60 80 100
Relative light intensity (%)
X15 PPFD
(μmol m-2 S-1 )
光強度と純光合成速度との関係 図-3・2・1 .
数字は面積あたりの窒素含量(gNm-2)を表す.
KUA『qunJι 300
- 100
- 200 0 200
100
。 (でKAmwちN'ENOO一oEE) ω一ωω工戸CKAωOHO工立】ω亡、250
100 80
60 40
20
Relative light intensity (%)
x 0.324
Daily PPFD (mol m-2 day-1 )
日積算光強度と日純光合成量との関係 図-3・2・2.
数字は面積あたりの窒素含量(gNm-2)を表す.
350
Daily PPFD
43.2a
300
250
200
150
(Feh何万N'E N
00一oεε) ω一ωω工ザCKAωOHO工己-och一一問。
100 80
60 40
20
。
b
Daily PPFD
43.27
5
3
(N'EZO)主ωさoocωOO」ZC』句ω」
。 60 80 100
Relative light intensity (010)
40 20
相対光強度と最大日純光合成量(a)および 最適窒素含量(b)との関係
図-3・2・3.
数字は日積算光強度(rnolm匂ay一1)を表す.
8
• Shaded crown
-、 7 。 Sunlit crown
P叶ε • Non-thinning
Z 口 Thinning
6 •
ロ3 聞
、、・... 。
-v C
G仁
。ι3 3 5 ロ 口•C
G
4E
33 C ー、 』のω 」ー 2
。 20 40 60 80 100
Relative light intensity (010)
x 0.389
Daily PPFD (mol m-2 day-1 )
図-3・2・4. 相対光強度と面積あたりの窒素含量との関係
実線は日積算光強度38. 88 molm-Zdayづの最適窒素含量を表す. 破線は一 次回帰直線を表す. y=2. 570+0. 0331x, r二O.846, Pく0.001.
第3節 樹冠の光合成量に及ぼす窒素分布の影響
1 . はじめに
前節では, 個葉の光合成量を最大にする最適窒素含量を示した. 樹冠全体の 光合成量は, 樹冠全層の葉の窒素含量がこの最適窒素含量と等しいときに最大 となるが, 個葉の光合成量を最大にする窒素含量と樹冠の光合成量を最大にす る窒素含量は必ずしも一致しない. なぜなら, 個葉の光合成量を最大にする窒 素含量は光強度で決まるが, 樹冠の光合成量を最大にする窒素含量は樹冠全体 の窒素量にも影響されるからである.
Field(1983)はラグランジュの乗数法(第1章3節を参照)を用いて樹冠の最 大光合成量を計算し, 現実の光合成量と比較した. ラグランジュの乗数法は,
樹冠全体の窒素量を制約条件とすることから 光合成量を窒素量の異なる樹冠 で比較する上で有効な方法である. 一方, Hirose and Werger(1987b)は樹冠の 最大光合成量を窒素の分配係数(第2章l節)を用いて計算した. Hirose らのモ デルでは, 窒素量に加えて積算葉面積指数を入力値として与えることから, 光
ム成量を積算葉面積指数の異なる樹冠で比較することが出来る.
第2章の1節と3節では, スギ樹冠における窒素分布を積算葉面積指数の 異 なる樹冠で比較した. そこで本節では 樹冠の光合成量を窒素の分配係数を用 いて計算し, 樹冠の光合成量に及ぼす窒素分布の影響について検討した.
2. 樹冠の光合成モデル
樹 冠 内 の 窒素分布か ら樹冠 の光 合 成 量 を推定す る 方 法 は , Hirose and Werger (1987b)のモデルにしたがった.
樹冠内における光強度の 分布は, Larnbert-Beer の法則を用いた次式(Monsi and Saeki, 1953)で表される.
1/ = I() exp (-K] F/) ( 1 )
ここで, Iz とI()は樹冠内の深さZと樹冠最上層における光強度, K]は吸光係数,
Fzは深さZまでの積算葉面積指数である.
光強度(1 ())の日変化は, サイン2乗カーブで表される(Takenaka, 1986).
I() - 11I1i1x ただし,
I() � 0 ( 0壬t<6, 18�玉t < 24 )
ここで, 1 は南中時の光強度, tは深夜O時からの時間(h)である.
樹冠内における葉の窒素含量 の分布は, 積算葉面積指数を変数とした次式 (Hirose and Werger, 1987b)で表される.
Ní'二No exp (-KaFz/Ft) ( 3 )
ここで, NïとNoは樹冠内の深さZと樹冠頂端葉における面積あたりの窒素含重,
Kaは窒素の分配係数, Ftは樹冠全体の積算葉面積指数である• Ka=Oのとき, 樹 元主内の全ての葉の窒素含量は等しくなる. K.が増大するにつれ, 下層葉の窒素 ふ量が上層葉より少なくなる.
樹冠の窒素量は, ( 3 )式のNí'をFI.で積分した次式(Hirose and Werger, 1987b) から求められる.
N1
1
1tNχ叫=NoF1(l-e h)/k aここで, Ntは樹冠の窒素量である.
( 4 )
( 4 )式より, N()はKiI' Nt, Ftから求められる(Hirose and Werger, 1987b).
N()-KaNt/Ft/ (l-e I\a) N() : N t / F t
(K礼*0) (K.ニ0)
純光合成速度は, 次式から求められる(Hirose and Werger, 1987a).
Pnニ[α1z + P max - {( 81 í' + P max ) ). -4αOIzPmilx}11ヌ]父O-R
( 5 )
( 6 ) ここで, Pnは純光合成速度, 1 zは光強度である. P max' α, 0は光一光合成曲線
の係数で, P mHXは光飽和下の最大総光合成速度, αと0は光一光合成曲線の初期 勾配と曲率である. Rは暗呼吸速度である.
Pn刷船li川とRを葉の窒素含量カか瓦ら推定し, αと0は相対光強度から推定した(第3
�1節).
PmHX - 2.573 + 3. 321N/ ( 7 )
( 8 ) ( 9 ) (10) R二 一0.416 + 0.451Nz
α= 0.0384 - 0.00885 (1z/1o) O二0.783 - 0.383 (Iï/1o)
ここで, Nzは面積あたりの窒素含量, 1ï/1o は相対光強度である.
樹冠の光合成量は, 純光合成速度(Pn)を時間(t)と積算葉面積指数(FZ)で重複
積分した次式から求められる(Hirose and Werger, 1987b).
,Au nドA,パu
pa
.
(るPあトfjoでrl量一
成 p川 PA 斗1品 樹 冠 の 光 合
で 、、,,ノ唱l・ム司lム,,l、
樹冠各層の面積あたりの窒素含量(Nï)は, 樹冠全体の積算葉面積指数(F)と 樹冠の窒素量(N t)および窒素の分配係数(KJを与えると(3), (4), (5)式で 決まる. 樹冠各層の相対光強度は, (1)式で決まり, 面積あたりの窒素含量と 相対光強度によって, 光合成のパラメータが(7)'"'"'(10)式で決まる. 時間t に おける光強度(1ï)は, 南中時の光強度(1冊川)を与えると(1), (2)式で決まる.
樹冠各層の純光合成速度(P,,)は, こうして決定された面積あたりの窒素含量と 相対光強度および光強度を( 6 )式 に 代入して求められ, 樹冠の光合成量(P(')は (11 )式の2重複積分式で求められる.
3. 材料と方法
樹冠の光合成量の計算には, 第2章1節で示した林縁木と, これと同じ林分 で間伐後6ヶ月経過した間伐林分, 対照区である無間伐林分(第2章3節)のデ
ータを用いた. 林縁木と無間伐, 間伐林分の試料採取日はそれぞれ, 1992年9
月25日と 1993年9月11日である.樹冠の光合成に関与するパラメータを表-3・
3・1に示した. 窒素の分配係数(KJは, 林内樹冠ではO.82 で林縁樹冠の 0.37 より有意に高い(第2章1節, 図-2・1・2, 表-2・1・2). 一方, 無間伐林分と間伐
林分では, それぞれO.89, O. 87とほぼ等しし\ [無間伐林分 : Nz二5.84exp(-0. 89 F7/Ft), n二18, r=O. 938 ;間伐林分 : Nz=5. 03exp (-0. 87 F z/F t)' nニ18, r=0.925J.
吸光係数(K,)は, 林内, 林縁樹冠と無間伐, 間伐林分で, ぞれぞれ 0.43(第2
�l節), 0.51(第2章3節)とした. 樹冠の光合成量は, 各層の窒素含量および 相対光強度が 一次枝先端と等しいと仮定し,日積算光強度38. 88molm /.day 1 (南 中時の光強度1800μmol皿、')で計算した.
4. 結果と考察
刈-3・3.1に, 窒素の分配係数(KJと樹冠の光合成量との関係、を示した. 積算 葉面積指数の大きい林内樹冠と無間伐林分では, 分配係数を増大させると光合
成量 が大きく増加した. これに対し, 積算葉面積指数が中程度の間伐林分では,
分配係数を増大させても光合成量の増加は小さく, 積算葉面積指数の小さい林 縁樹冠では, ほとんど変化しなかった. 以上の結果は, 積算葉面積指数が大き な群落ほど分配係数の増大に対す る 光 合 成 量 の 増 加が大き く なる という Hirose and Werger(1987b)の予測と一致する.
樹冠の光合成量を最大にする最適分配係数は, 林縁樹冠と間伐林分で, それ ぞれO.58, 1. 57 と推定され , 現実の分配係数(林縁樹冠: 0.37 ;間伐林分: 0.87)
より大きな値を示した. このように, 最適分配係数が現実の分配係数より 大き な値を示すことはHirose and Werger(1987b)やSchieving et al. (1992a, b)
らによっても報告されている. 一方, 林内樹冠と無間伐林分では, 最適分配係 数は今回計算した2までの範囲では現れなかった. 分配係数が2のときの林内
樹冠と無間伐林分の最下層における窒素含量は,それぞれl.06 gNmにl. 21 gNmヌ で,これ以上分配係数を大きくすると最下層の窒素含量が1 gNm"より低くなり,
( 8 )式において暗呼吸速度が負の値となるため, (6)式で総光合成速度に加算 されてしまう. このような理由で, これらの樹冠では最大光合成量を求めるこ とが出来なかったが, 分配係数が2のときの樹冠頂端葉の窒素含量(No)は, ( 5)
メより, 林内樹冠と間伐林分においてそれぞれ 7.86 gNm:り8 .94 gNm" で, 実 演IJ値から近似されたN(J( 林内樹冠: 4.97 gNm" ;無間伐林分: 5. 84 gNm ")を上lロ った. 前節では, 林内樹冠と無間伐林分では窒素が陰樹冠に過剰に分配されて いることを示したが, このことは, これらの窒素が樹冠全体の光合成量が最大 になるように分配された場合, 樹冠頂端葉の窒素含量は現実よりはるかに大き くなることを意味する. したがって, 積算葉面積指数の大きな樹冠では, 光合 成量を最大にすることは出来ないといえる.
表-3・3・2に, 均一な窒素分布(K,,=O)と現実の窒素分布, および最適分配係数 における樹冠の光合成量を示した. 樹冠の現実の光合成量は, 窒素が均一に分 配された場合と比べて, 積算葉面積指数の小さな林縁樹冠で1 0/0, 中程度の間 伐林分では50/0高い値を示した. また, 最適に分配された場合と比べると, 林 縁樹冠ではほぼ等しく, 間伐林分では1 0/0低い値を示した.
前節で, 林縁樹冠において, 各層の窒素含量は個葉の光合成量を最大にする 最適窒素含量と近いことを示し, 窒素は樹冠全層で光合成量が最大になるよう に分配されていると述べたが, 本結果においても, 林縁樹冠の光合成量は最大 光合成量とほぼ等しかった. さらに前節では, 間伐は窒素が過剰に分配されて いる陰樹冠の光強度を高めることによって光合成量を増大させる効果があると 述べたが, 本結果から, 間伐林分の光合成量は最大光合成量に大きく近づいて いたことが分かる. また, 間伐林分の光合成量(696 mmolCO"m "day 1)は, 樹冠 全体の積算葉面積指数(F1 )と窒素量(N1 )が無間伐林分のおよそ半分(表-3・3・1)
であるに もかかわらず, 無間伐林分(781 mmolCO川/.day1)の9割近い値を示し た. 間伐林分の本数密度は, 無間伐林分の半分(間伐林分 o. 8 tree m 7. ;無間 伐林分 l.6 t ree mつであることから, 間伐林分の光合成量を個木あたりで評 価すると870 mmolCO/.tree Idayで, 無間伐林分(488 mmolC07.tree lday)のl.8倍 の値になる. このことから, 間伐は個木あたりの光合成量を大きく増大させる 効果があるといえる.
ム問, 林内樹冠と無間伐林分では最大光合成量を求めることが出来なかった が, これらの樹冠の現実の光合成量は, 窒素が均一に分配された場合と比べて,
林内樹冠で 120/0, 無 間伐林分 では 150/0 高い値を示した. Ell sworth and Reich (1993)は, 積算葉面積指数が本研究の無間伐林分と近い(6 m/.m父)サトウ
カエデにおいて, 光合成量は窒素が均一に分配された場合と比べて130/0高い値 を示すことを報告している. このように, 積算葉面積指数の大きな樹冠におい て光合成量が窒素分布に大きく影響されることは, イ也の樹木でも確認されてい る.
表-3・3・1 . 樹冠の光合成に関与するパラメータ
Ft Nt Ka Kl
( m2m-2 ) ( gNm-2 )
Shaded crown 7. 12 24. 20 o. 82 0.43 Sunlit crown 1. 99 9. 14 O. 37 0.43 Non-thinning 6. 36 24. 59 0.89 0.51 Thinning 3. 39 13. 65 0.87 0.51
1200
Sunlit crown
1200 (Flh町村umω」何万CコO」ON'εN00一oεE)
Shaded crown
1000
800
600
Thinning Non-thinning
1000
800
600
的一ωω工vchωO】OZ♀haocmOKA一一旬。
400
0 2 0 0.5 1.5 2
Ka
1.5 0.5
窒素の分配係数(K)と樹冠の光合成量との関係
図-3・3・1 .万円丸は実測されたKa(表-3・3・1を参照)を表す. 白丸は林縁樹冠(0. 68)と間伐 林分で(1. 57)推定された最適分配係数を表す. 林内樹冠と無間伐林分では, 最 適分配係数は2までの範囲では現れなかった. 樹冠の光合成量は, 日積算光強 度38. 88 molm吋ay-lで、計算した.
表-3・3・2. 均一な窒素分布と現実の窒素分布および 最適分配係数における樹冠の光合成量
Uniform Actual
(阻01 CO2 m-2 ground area day-l )
Optimal
Shaded crown 1i
1i pO
り乙
円,a n同d 門rt 円hu nHU Aq phu
AU
976 (1. 12) 495 (1.01)
781 (1. 15) 488*
696 (1.05) 870*
496 (1. 00) Sunlit crown
Non-thinning
Thinning 704 (1. 01)
カッコ内の数字は左の列の数値に対する相対値, 星印は個木あたりの光 合成量(rnmolC02tree day-l)を表す. 無間伐林分と間伐林分の本数密度は,
それぞれ1.6 tree m-2, O. 8 tree rn-2で、ある.
第4章 総合考察
第1節 スギ樹冠の炭酸ガス固定機能を樹冠内の窒素分布から推 定するための評価法
第3章の3節では, スギ樹冠の光合成量を Hirose and Werger(1987b)のモデ ノレにしたがって推定した. ここでは, スギ樹冠の炭酸ガス固定量を樹冠内の窒 系分布から推定するため の評価法として, Hiroseらのモデルを部分的に変更し たモデルを提示した.
樹冠内における光強度の分布は, Lambert-Beer の法則を用いた次式(Monsi and Saeki, 1953)で表される.
、、,,,,マLRi 可EムUHH r'E、、、p x e nu γ1よ一一qL Ti
( 1 )
ここで, 1 zと10は樹冠内の深さZと樹冠最上層における光強度(μmolm-2s-1), Kl は吸光係数, Fzは深さZまでの積算葉面積指数(m2m-2)である.
光強度(10)の日変化は, サイン2乗カーブで表される(Takenaka, 1986).
10 = 1max sin2 {π( t -6) /12} ( 6 壬t<18) (2)
しだた
10 = 0 ( 0壬t< 6, 18壬t<24 ) ここでで、, 1n叩1
樹冠内における葉の窒素含量の分布は,積算葉面積指数を変数とした次式(第 2章1節)でで、表される.
z = No exp (-KnFz ) (3)
ここで, Nzと N。は樹冠内の深さZと樹冠頂端葉における面積あたりの窒素含量 (gNm-2), Knは窒素の減衰比である.
純光合成速度は, 次式から求められる(Hirose and Werger, 1987a).
P n = [α1 z + P max一{(81z+P凡II旧I
ここでで、,Pnは純光合成速度(μmo1COzm九ー1), 1 zは光強度(μmo1m-Zs-1)である.P max' α, 8 は 光 一 光 合 成 曲 線 の係数 で , P max は 光飽和下の最大総光 合 成 速 度 (μmo1COzm-Zs-1) ,α と 0 は光一光合成曲線の初期勾配(J.!mo1 COzμmo 1-1)と曲率で ある. Rは暗呼吸速度(μmo1 COzm-z s -1)である.
P maxとRは葉の窒素含量から,αと0は相対光強度から求められる(第3章1 節)•
P max二2.573+ 3. 321Nz R = -0.416 + O. 451Nz
α= O. 0384 - O. 00885 (lz/lo ) 8 = O. 783 - O. 383 (lz/lo)
ここで, Nz は面積あたりの窒素含量(gNm-Z), 1z/ 1。は相対光強度である.
( 5 ) ( 6 ) ( 7 ) ( 8 )
樹冠の光合成量は, 純光合成速度(Pn)を時間(t)と積算葉面積指数(Fz)で重複 積分した次式から求められる(Hirose and Werger, 1987b).
Pc=
f f
Pn(い) dFz dt ( 9 )第2章の1節と3節では, (1)式の積算葉面積指数(FZ)をプラント ・ キャノ ピー ・ アナライザー(LA1-2000, ライカ一社)で測定している. プラント ・ キャ ノピー ・ アナライザーで測られた積算葉面積指数は, 相対値としては信用出来 るが(玉泉ら, 1994;岡野ら, 1994), 絶対値は針葉樹の場合過小に評価される 傾向にあることが報告されている(Gower and Norman, 1991). 今後,プラント ・ キャノピー ・ アナライザーで測定された積算葉面積指数を刈り取り法で得られ た値と比較し, 絶対値の信用性を検討する必要がある.
樹冠内の窒素分布を表す(3 )式の No (樹冠頂端葉における面積あたりの窒素 含量)は,樹高成長に優れる地位の高い林分ほど高い値を示す(第2章2節).さ らに, N。には明瞭な季節変化が認められ, 成長期に増加し, 成長休止期には減
少する (第2章4節). 一方, (3)式のKn (窒素の減衰比)には季節変化は認めら れず (第2章4節), 樹冠全体の積算葉面積指数にも影響されない (第2章1節).
第2章で得られたこれらの結果は, スギ樹冠の炭酸ガス固定量を樹冠頂端葉の 窒素含量と積算葉面積指数からより簡便に推定出来る可能性を示唆するもので あり, リモート ・センシングへの応用が期待される.
門司・佐伯の群落光合成理論 (Monsi and Saeki, 1953)に基づく本モデルは,
( 1 )式と (3 )式で, 樹冠各層の光強度と葉の窒素含量を一次枝先端で測定した 値と等しいと仮定している. しかしながら, 樹冠の光強度は内側ほど低く? 葉 の齢は古くなることから窒素含量も低くなる. このことから, (1)式と (3 )エ で樹冠各層の光強度と窒素含量は過大に評価されている可能性がある. スギ樹 冠の光合成量をより正確に推定するためには, 樹冠内部での光減衰, 葉齢階構
造等の樹冠の多様性を考慮することが重要であり, この点については今後の課 題としたい.
第2節 最適窒素含量に基づいた適正な樹冠管理施業
第3章の2節では, 個葉の光合成量を最大にする最適窒素含量が存在し, ス ギの葉の窒素含量は, 陽樹冠で最適窒素含量に近いが, 陰樹冠ではこれより高 いことを示した. さらに, 間伐は, 窒素が過剰に分配されている陰樹冠の光強 度を高めることによって, 樹冠全体の光合成量を増大させる効果があることを 明らかにした (第3章3節). 樹冠全体の光合成量は, 樹冠全層の窒素含量が最 適窒素含量と等しいときに最大となる. そこで本節では, 最適窒素含量から推 疋した光合成量を最大光合成量とし, 第4章 1 節の評価法で推定した現実の光 合成量と比較することにより, 樹冠の炭酸ガス固定機能を最大限に発揮させる
ための間伐案について検討した.
( 1 )式の吸 光係数(K1)を0.51, (2)式の南中時の光強度(灯Imax)を 18 00 μmolm-九-1とし, ( 1 )式と(2 )式で決定される日積算光強度から最適窒素含量を 求め,最大光合成量を推定した.また,本モデノレでは,葉の窒素含量がO. 922 gNm-2 を下回ると(6 )式において暗呼吸速度が負の値となり, (4)式で総光合成速度
に加算されてしまう. そこで, 最適窒素含量が1 gNm-2 より低くなる積算葉面積 指数3.7 m2m-2以上の樹冠では, 窒素含量を1 gNm-2 と定めた. 現実の光合成量 は, 第2章3節で示した無間伐林分の 19 9 3年9月の窒素分布より, (3)式の
。(樹冠頂端葉 における面積あたりの窒素含量)を5 . 9 4 gNm-2, Kn (窒素の減衰比) を0.145 として推定した.
このようにして推定される最大光合成量と現実の光合成量を, 積算葉面積指 数が8 m2m-2 になるまで計算した. 図-4・2・1 に, その結果を示した. 現実の光 合成量は, 積算葉面積指数が小さいときは最大光合成量に近い値を示したが,
積算葉面積指数が増加する にしたがって最大光合成量よりも低くなった. さら に, 現実の光合成量は積算葉面積指数 6.24 m2m-2を境として増加から減少に転
じた.
現実の樹冠では葉の窒素含量は2 gNm-2以下にならなし\ (第2章3節, 第3章
1節)が, 最適窒素含量は積算葉面積指数2.72 m2m-2以上では2 gNm-2以下にな る. このような理由から, 積算葉面積指数2.72 m2m-2以上の樹冠で, 現実の光 合成量と最大光合成量との差が徐々に大きくなったといえる. また, 樹冠の光 合成量を最大にする葉面積指数は最適葉面積指数(Saeki,19 60)として知られて おり, このときの光強度は, 日あたりの純光合成量と暗呼吸量が等しくなる 光補償点にあたる. 吸光係数を0.51, 南中時の光強度を1800μmolm-2s-1とした 本計算では, この日光補償点は相対光強度 で 4 .17010, 日積算光強度では1.62 molm-2day-lに相当する. 無間伐林分の9月における積算葉面積指数は6.36 m2m-2
で, 最適葉面積指数(6.24 m2m-2)に近い値であった.
現実の光合成量は積算葉面積指数が6.24 m2m-2のときに最大となることから,
積算葉面積指数がこの値を超えないように樹冠を維持管理することが望ましい.
表-4・2・1 に, 積算葉面積指数が6 m2m-2のときの収量比数を1と仮定し, 間伐 による樹冠の光合成量の変化を収量比数ごとに示した. 樹冠の光合成量は, 収 比数 O. 8まで間伐する密仕立ではほとんど低下せず, 0.7まで間伐する中庸
仕立で6010, 0.6まで間伐する疎仕立でも12010しか低下しないことが分かる.
このことから, 現行の間伐範囲では, 樹冠の光合成量はほとんど損なわれない といえる.
また, 収量比数をO. 5 ( 積算葉面積指数で3 m2m-2)まで減らした場合, 樹冠の 光合成量は19010低下するが, 最適窒素含量から求めた最大光合成量に近づく (図-4・2・1)ため, 樹冠下層においても炭酸ガス固定機能をほぼ最大限に発揮さ せることが出来る. したがって, スギ人工林の公益性を高めることを目的とす る場合には, このような強度の間伐を行うことが望ましいと考えられる.
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積算葉面積指数と樹冠の光合成量との関係 図-4・2・1 .
実線と破線は, それぞれ最適窒素含量から推定した樹冠の最大光合成量(Popt)と現実の 光合成量(Pac t)を表す. 一点破線は相対光強度(RLI)を表す. 白丸は最適窒素含量が2 gNm-2以下となるときの積算葉面積指数(2. 72 m2m-2), 黒丸は最適葉面積指数(6. 24 m2m-2) を表す. 樹冠の光合成量は, 吸光係数(K1) O. 51, 日積算光強度38. 88 molm-2day-lで、計算
した.
表-4・2・1
.間伐
による樹冠の光合成量の変化
y DA +L PA Pしpi
( m2m-2 ) ( mmol CO2 m-2 day-l )
1.0 6. 0 769
0.9 5.4 763 (0. 99)
0.8 4. 8 749 (0. 97)
o.
7 4. 2 722 (0. 94)
O.
6 3. 6 680 (0. 88)
O. 5
3. 0 620 (0.81)
0.4 2.4 539 (0. 70)
O.
3 1.8 437 (0. 57)
O.
2 1.2 312 (0.41)
O. 1 O.
6 166 (0. 22)
RyとへおよびPcは, それぞれ収量比数, 積算葉面積指数, 樹冠の光 合成量を表す. カッコ内の数字は, 最上段の数値に対する相対値を 表す.
摘 要
スギ人工林について, 炭酸ガス固定量を葉の窒素含量から推定する評価法を 提示すると共に, 樹冠の炭酸ガス固定機能を考慮、した適正な樹冠管理施業を提 案することを目的とした. 以下に, 本研究で得られた知見を要約する.
1. スギ樹冠の窒素分布を樹冠の光環境との関係から解析した. 葉の窒素含
は相対光強度と正の相関にあり, 積算葉面積指数を変数とした指数関数式で 表された. また, 関数式の傾きは樹冠全体の積算葉面積指数に影響されず, 林 齢等によって積算葉面積指数が異なる林分でも, 同じ傾きの直線で表されるこ とを明らかにした.
2. スギ樹冠の窒素分布を樹冠の窒素量との関係から解析した. 相対光強度 と面積あたりの窒素含量との一次回帰式におけるy一切片は, 地位が高く,樹冠 の窒素量の多いプロットほど大きい値を示した. 一方, 回帰式の傾きにはプロ ット間で差が見られず, 樹冠内の窒素分布が樹冠の窒素量に影響されないこと を明らかにした.
3 . 間伐したスギ林分の窒素分布を調べ, 間伐後の樹冠の光合成能の変化を 窒素分布から間俵的に予測した. 樹冠各層の窒素含量は間伐後1年目では変化 せず, 2年目でも変化しなかった. このことから, 間伐によって樹冠の光合成 能は変化しなかったと考えられた. 窒素含量が変化しなかった原因として, 間 伐後1年目には窒素含量が光環境に対応して増加しなかったこと, 2年目には 積算葉面積指数の増加によって, 樹冠の光環境が間伐前の状態、まで戻っていた ことが挙げられた.