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安定同位体窒素を用いた落葉広葉樹当年生稚苗の窒素利用効率に関する研究

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(1)

安定同位体窒素を用いた落葉広葉樹当年生稚苗の窒

素利用効率に関する研究

著者

清和 研二

(2)

安定同位体窒素を用いた落葉広葉樹当年生稚苗の

窒素利用効率に関する研究

(研究課題番号076601 78)

平成7年度∼平成9年度科学研究費補助金

基盤研究(C)研究研究成果報告書

平成10年3月

研究代表者 清和研二

(東北大学農学部大学院生物共生科学教授)

00010173594 ■   

(3)

-目 ′  次

はじめに

研究組織・研究経費・研究発表一覧

資料・1 )安定同位体窒素を用いたクリの当年生稚苗の窒素利用効率に

関する研究

資料2)異なる光・土壌条件下でのクリ・ミズナラの実生の成長に

及ぼす種子サイズの影響

資料3 ) Importance of seed size for the establishment of seedlings of five

deciduous broad-leaved tree species・

資料4 ) Variable regeneration behaviour of Ulmus davidiana var. )'aponica in

respons to distu・rbance reglme for risk spreading.

資料5 ) Advantages of early germination on growth and survival in Acer

mono under different overstorey phenology in deciduous broad-leaved

forests.

資料6)食植性鱗麹目昆虫の食害に対する窒素並びにタンニンのおよぽす影響

資料7 ) Forest type affects predation on gypsy moth (LepidopteraI

Lymantriidae) pupae in Japan

資料8) Changes in the number of egg masses in Japanese gypsy moth in relation to stand density.

(4)

はじめに

1 )落葉広葉樹当年生稚苗の窒素利用効率

落葉広葉樹林では、発芽当年生時の稚苗死亡率は極めて高く、この時期における稚

苗の光、養分などの資源利用効率の解明は更新のメカニズムを知る上で極めて重要で

ある(資料3,4,5) 0

当年生稚苗の成長は、発芽直後は種子の貯蔵養分にのみ依存する(資料2,3)が、貯

蔵養分によって子葉(または本葉第一葉)が展開すると、葉の光合成への依存度を高

めていく(資料1,2,3) 。葉の光合成速度は窒素含有率に依存することが知られいる

が、これまで、落葉広葉樹の種子の窒素含有量(率)に関する研究は極めて少なく、展

葉に伴う窒素転流に関する研究は実生の資源利用様式を探る上で重要である考えられ

る。‥

一方、落葉広葉樹の種子重は、種内で大きなバラツ辛があり(資料1、 2)種子サイ

ズによって、種子の窒素含有量、子葉(本葉)への窒素供給量が異なる(資料1,3) 0

したがって、広葉樹の実生の成長は種子内の貯蔵用分量と発芽場所の環境の資源量の

両者に大きく依存する。すなわち、種子および土壌からの窒素供給量(速度)の違い

は葉の生産量や生産速度、葉の光合成機能に大きく作用し、ひいては、個体の成長・

生存にも大きく影響するものと予想される。すなわち、窒素含有量の大きな種は、貧

栄養で根から十分に窒素が供給されない場所でも、種子から葉への十分な窒素の投資

によって、その光合成は栄養条件の影響が少なくて済むだろう。一方、窒素含量が少

ない種の葉の光合成は土壌から吸収した窒素に大きく依存するのではないか、といっ

た予測がなされる。

本研究は、落葉広葉樹の種子の窒素含有量(14N)を明らかにすると共に、種子貯

蔵窒素が、稚苗の成長・生存に与える役割を安定同位体窒素(15N)を用いて明らか

にした(資料1 ) 。さらに、落葉広葉樹の定着適地を種子貯蔵窒素と土壌栄養条件との

関係から明らかにしていくことを目的とした。

2)食植性鮮麹目昆虫の食害対する窒素並びにタンニンのおよぽす影響

食植性昆虫は時として大発生し、林中の葉を一枚残らず食べてしまう。しかし、

植物 はこのような食害をなす術もなく受け入れているわけではない。フェノール類な

ど昆虫にとって有害な化学物質が食害とともに葉に増加することが明かになっている

(Haukioja and Neuvonen 1985; Faeth 1986).食害にともなう変化(induced

defenses)に加えて、あらかじめ食害を防ぐためにフェノール類などを葉に備えてい

ることも(constitutive defenses)よく知られている(Rossiteret aI. 1988)こ

のような植物の質的変化は、昆虫の摂食様式にもさまざまな影響を与えているはずで

ある。北海道のミズナラ(Ouercus mongol/'ca var. grosseserrata)を材料として

葉の窒素含量の季節変化が調べられ、開葉直後と開葉80日後に窒素含量が高くなるこ

とが明かにされている(Kudo 1996) 。この変化は、ミズナラの食植性鱗麹目幼虫の

種数や個体数が6月と8月に多くなる2つのピークを持つ(Yoshida 1985)ことと対応

している。植物は固着性の生活を営んでいるのに対して、食植性昆虫の多くは移動分

(5)

散する時期を生活史のなかに取り込んでいる。したがって、植物の開葉や展葉は生育

場所によって大きく異なるが、食植性昆虫の摂食時期は場所によってそれほどの違い

はない。植物にとって摂食を受けやすい時期をMarcelo and W川iam (1995)は

phenological wjndowと呼び、植物の生育場所によってphenological windowと

食植性昆虫の摂食時期が同調する場所とずれる場所があることを兄いだし、場所間でノ

食害率に大きな差がある場合の重要な要因とした。 phenological windowと食植性

昆虫の摂食時期が同調した結果激しく食害を受ける植物は不幸としか言いようがない

が、植物個体内においてこうした場所による食害の違いがある場合は、話は別であ

る。植物の適応度にとっては隣接個体との空間をめぐる 競合とともに、太陽エネル

ギーの摂取量が大きいものほど有利である。この場合、空間をめぐる競合は樹冠の

もっとも外側が重要であり、太陽エネルギーの摂取には樹尭上方が重要である。した

がって、樹冠外側と比較すると樹冠の内側は植物の生活史にとってそれほど重要でな

いと思われる。防御物質にもコストがかかるはずであるから、こうした場合、樹冠外

側と内側では葉に質的な差が存在すると思われる。こうして、植物個体内部での質的

変化は生活史戦時における理解を深めるためにも重要であり、とくに高木の植物でそ

の違いが重要と思われるにも関わらず、これまでほとんど研究されなかった。

本研究は、ミズナラを優占種とする北海道の広葉樹林で鱗麹目幼虫による大発生を調

査し、樹冠内部と外側とで食害率を比較して植物個体内部の食害率に実際差があるか

どうかを検証したものである。また、ミズナラの樹冠内部と外側の葉の窒素含量とタ

ンニン含量を当該鱗麹目幼虫の食害時期に比較し葉の質的変化を検証したものであ

る。

研究組織

(研究代表者)清和研二

(研究分担者)東浦康友

(研究協力者)渡辺あかね

寺沢和彦

梅木清

滝谷美香

研究経費

平成7年度  900千円 平成8年度  700千円 平成9年度  700千円 合計    2300千円

(東北大学農学部教授)

(北海道立林業試験場主任研究員)

(東北大学農学部)

(北海道立林業試験場)

(北海道立林業試験場)

(北海道立林業試験場)

(6)

研究発表

学会誌等

1・渡辺あかね・清和研二・赤坂臣智(1996)異なる光・土壌養分条件下での

ミズナラの実生の成長に及ぼす種子サイズの影響、川渡農場報告12・31 -/

2・ Seiwa, K・ &Kikuzawa, K. (1996) hnportance of seed size for establishment of

seedlins of丘ve deciduous broad-leaved tree species・ Vegetatio, 123, 51-64

3 ・ _写eiwa, K・ (1997) Variable regeneration behavior of UImusあtidiana var.japonicain response to disturbanα regmeforrisk spreading・ Seed Science Reserch, 7, 195-207.

4・ Seiwa, K・ (1998) Advantages of early gemination f♭r growth and suⅣival of

seedlings ofAcer mono under different overstorey phenologleSindeciduous broad-leaved

leaved forests・ Joumal of Ecology, 86, (in press).

5・ Andrew M・ Liebhold, Yasutomo Higashiura 良 Ak血Unno (in press) Forest type

affects predation on gypsy moth (Lepidtptera: Lymantriidae) pupaeinJapan.

血vironmental Entomology I

6・ Yasutomo Higashiura (in press) Changesinthe number of egg massesin Japanese gypsy mothinrelation to stand density・ Proceedings・・ U・ S・ Department of Agriculture hteragency Gypsy Moth Research Forum 1998・

口頭発表

1・渡辺あかね・清和研二・赤坂臣智(1997)クリの実生更新に与えるネズ

ミの貯食様式と種子サイズの関係 一磁石を用いた追跡実験-. 42日本生態学会

東北地区会

2・清和研二(1997)オニグルミの果実内の資源配分が発芽とその後の成長

に与える影響. 42日本生態学会東北地区会

3・清和研ニ(1998)ミズナラの定着に及ぼす種子サイズと発芽時期の影響

日本林学会発表予定

4・渡辺・清和・赤坂(1998) 安定同位体窒素を用いたクリの当年生稚苗の窒

素利用効率に関する研究 日本生態学会発表予定

(7)

資料1

安定同位体窒素を用いたクリの当年生稚苗の窒素利用効率に関する研究

清和研二・渡辺あかね

′ はじめに 一般に植物の種子重は、棟内で大きなバラツ牛があることが知られている(SeeMcGinley et al. 1?87) 。種子サイズによって異なる貯蔵葦分量は、実生の出現や出現以降の稚苗の成長・生存に 大きく影響することが知られている。一般に、大種子由来の実生は生育場所の環境にかかわらず 小種子由来の実生より、出現率が高く、出現速度も速い。また大きな成長量を示し、生存率も高

-いことが知られている(e.g., Hove azld Richter 1982, Stanton 1985, Choc et a】・ 1988, Manasse1990,

Tripathi益d皿姐1990, Westoby1992) 。これらの有利性は特に被陰下や箕栄養条件下、 、隣接個体

間の競争が激しい環境下、また深く埋められた場合など資源が制限されたストレス環境下では、

とくに大種子は小種子よりその優位性が覇者である(Haskins and GorZ: 1975, Gross 1984, Wt)班

1986a、斎藤1981、 1983, Bon斑1998) 。これは実生の成長が種子内の貯萄養分に依存する割合が大 きいためであると考えられている(Migberg ad LAmOnt 1997)。 しかし、一旦発芽した実生が、貯蔵養分によって子葉(または本葉第一葉)を展開すると、 貯蔵養分のみならず葉の光合成への依存度を高めていく(Ampofo et al. 1976)。他の草本との政争 がない環境下や、ギャップのような光環境のよい場所、すなわち環境の資源量が制限されない場 合において、小種子は大種子と同等ないしはそれに近い成長量を隼得することがいくつかの種で 認められている。小種子が大種子と同等の個体垂を獲得する現象は、草本では肋a saliva L

田endrix et al. 1991,1992), HelianLhus Euberoms (きくいも)匹ondo and Oshima1981), Desmodit)m

paniculatum(ヌスビトハギ属)くWulff1986b)で認められており、また、樹木ではクリでのみ(渡辺・ 清和・赤坂1996) 、この現象がみられたにすぎない。このクリの試験では種子貯蔵養分の消糞速 度や薫の生存様式の違いからそのメカニズムを探ったが、小種子由来の実生が大種子由来の実生 の個体重に追いつく現象のメカニズムは解明されなかった。すなわち、小種子ほど速く種子貯蔵 養分を使いきることはなく、また、小種子ほど薫の展薫期間が長いとか葉の寿命が短く、葉の回 転率が高いというような小種子由来の実生の成長を促進するような要因は見出せなかった。この ように環境の資源量が制限されると大種子有利で、環境が制限要因とならなければ小種子もま た、子葉展開以降の成長如何で大種子に追いつくこともありうることが示唆されている。実生の 成長は種子の貯蔵養分の大小と環境の資源量の大小に大きく影響されると考えられる。 実生の初期成長速度はRGR (相対成長率)によって表される。 RGRは葉への配分率(LWR ) 、葉重当たりの葉面積(SLA)と耗同化速度(NAR)の種で示される。ところが、植物のRGR \ ノ

(8)

は何によって説明しうるかは植物種によって異なり、たとえば、 Kadsson and Norden(1987)や Waltdrs etal・ (1993)は、葉への配分率(LWR)と個体垂当りの葉面積(L姐-SLAXLWR)が、

Poorter and Remkes (1990)はNAR (純同化速度)ではなく、 LARがRGRの違いを説明するのに重

要であると結論づけている。また. RGRを説明する一つの変数であるNARは葉の窒素含量に大き く依存することが知られている(彦坂1998) 。葉に含まれる窒素には、種子由来窒素と土壌から 根が吸収した窒素とがあるが、葉の展開に伴い、どちらがどれだけ吸収され利用されているのか についての知見はない。葉に含まれる窒素含量とその由来別の比率が種子サイズによって異なる のかを知ることは、種子サイズとRGRの関係をみるために重要な視点である。すなわち、小種子 由来の実生ほど土壌由来窒素を多く吸収、利用するようなことがあれば、小種子由来の実生の葉 ほど窒素含量が高く、 NARを高めRGRを大きくすることに貢献しうるだろう。 また、 Kramitz(1997)は九rshia tfidb地zkzで種子の窒素濃度が種子サイズにより異なる現象を見出 している。クリにおいては、種子の窒素濃度と種子サイズの関係は明らかにされてないが、その 違いがRGRに影響している可能性も考えられる。 由来別の窒素の移動量を調べるのに、同位元素を用いる方法は有効である(武藤1978,山室1989 ) 。本研究では、種子のもつ窒素濃度を種子サイズ別に測定し,、さらに、安定同位元素である重 窒素ラベルした窒素肥料を用いて、葉や個休全体の窒素が、根が吸収した窒素または種子窒素に どれくらい由来しているかを明らかにし、それらと実生の成長との関係を生長解析の手法から考 察した.クリの実生の成長PGR)が種子の貯蔵養分(種子由来窒素)と環境の資源量のどちらにど れだけ影響されるのかその相対的貢献度とそれらの交互作用を検出することを目的とした。 材料 と 方法 1、材料 クリ(払Lana cr92ab2)の種子は東北大学附属農場内及び農場に隣接する-桧山(標高540m、 播種地から7.9km北東)の二本の母樹から1996年10月に採取し、直ちに冷温(5℃)で保存した。 二本の母樹から採取した種子の窒素含量を測定した。栽培には一本の母樹の種子を用いた。播種 前にシイナ・虫食いの種子を取り除き種子重量を測定した。種子サイズクラスは3つ:小(2.7-5・6g: 4・54±0・13) 、中(5.8-6.9g : 6.31±0.06) 、大(7.0-9.6g : 8.03±0.ll)に分けた。括弧 内に範囲と平均値、標準誤差を示した。

(9)

2、試験設計 試験は、東北大学附属農場内のハウス内でポット栽培で行った。ポットサイズは直径28cm.潔 さ40cmのものを用いた。処理は、窒素のみ施肥量をかえた多窒素区と少窒素区を設定した。ポッ トには砂とバーミキュライトをユ: 3の割合で10リットル入れ、窒素肥料には、重窒素ラベルした 硫安(即H4)2SO4)を用いた。週・ポット当たりの施肥量を成分量で示すと、多窒素区はN: ノ 54・5mg (5・04Atom%)、少窒素区はN : 5・45mg (30・6 Atom%)を、またそれぞれに、 P : 36.2mg OVaH2PO4 ・ 2H20) 、 K: 45・5mg、 S : 32・1mg (K2SO4)、 Ca : 23・4mg (ChC】2 ・ 2H20)、 Fe : 4.9mg qe-EDTA)∼ Mg : 28・8mg (MgC】2 ・ 6H20)を、週2回にわけて600miの水に溶かして施肥した(秦

4-1) o微量要素は乾土当たりの濃度でZn(Sppm), Cu(5ppm), Mn(8ppm), B(2ppm), Mo(3ppm)を全層

元肥施肥した.窒素の施肥量は、吉田ら(1980)の森林の乾性土壌を60日間インキュベーション して求めた無機化された窒素量(9・07g/m2/60days)を参考にして決めた。全窒素施肥量は、多窒素 区の出現後45日目抜き取り個体で8・86 g/m2、 80日目に抜き取った個体では14.2 g/m2、少窒素区の 45E]目の抜き取り個体では0・886 g/m2、同80日目抜き取り個体で1.42g/m2となったoその他の養分 は、東北大学農芸化学科編農芸化学実験書(1989)を参考にした。 各処理区には各サイズの種子が均等に配分されるように区分けして1ポットに1個の種子を深さ 5cmで播種し、ポットはランダムに配置した(図-1) 。反復数は、各処理各サイズ16個(8個ずつ2 回抜き取り)とした。種子は1997年5月20日に播種した。 3、調査・分析方法 (1)種子の窒素含量測定 二本の母樹から採取した健全な種子でサイズが異なるものを、それぞれ12,15個選び、 70℃で48 時間乾燥させた。その後、種皮を除いて種子貯蔵養分の乾重を測定し、微粉砕器で粉砕した。粉 末試料500mgを硫酪過酸化水素法(水野・南1980)で分解後、水蒸気蒸留して全窒素濃度を測定 した。 (2)抜き取り 出現稚苗は個体識別し、 3-4日間隔で出現日及び個体当たりの展葉・落葉数を調査した。調 査・分析に使った個体は、生育期間の違いが個体重、窒素含量、窒素吸収率に影響しないよう に、最初の個体が出現してから二週間以内に出現したものを選んだ。抜き取りは出現後45日日( 45・8±0・5) 、 80日目(78・4±0・9)に2回行った.抜き取り個体は根・幹・葉・種子貯蔵養分(種 皮を取り除いた子葉及び広)とに分け、葉は葉面積を測定後、各部分は70℃で48時間乾燥させ、

(10)

SJS寸  N.9g  (9.0m)S寸.S SO等  N.9m  (寸〇'S)S.寸S 凶傭鯛4, 凶催鯛.* n d  (%uJ01V)N (竜aき\10dJ6∈)叫aF墳?おお聖増

(11)

○㊤○○(∋0

○○①○○(ら

多窒素区 少 ) hセb 多窒素区 少 ) hセb 多窒素区 少窒素区 多窒素区 少窒素区

図1試験配置図

各処理各サイズのポットをランダムに配置した。

(12)

乾重を測定した。幹と掛ま、子葉の葉柄基部の位置で区分した。 (3)植物体の窒素吸収 抜き取り個体は、乾燥後、各部位別に微粉砕器で粉砕した。粉末試料を、多窒素区の葉のみ 400mg,その他の部位は500mgを硫酸過酎ヒ水素法(水野・南1980)で分解後、水蒸気蒸留して 全窒素濃度を測定した。また、 15N含有率は発光分析法(伊藤・木村1990)により測定した。分 析の手順は、以下の通りである。試料の分解液10mlを50mi容三角フラスコに取り、 10規定NaOH を加えた。濃縮トラップ用ガラス管をゴム栓に取り付け、 0.2規定HCIO.2mlを注入した。このゴ ム栓で先の試料入りの三角フラスコを密栓した。これを30℃で3日間放置した。試料由来の窒素が 塩化アンモニウムとして、ガラ・ス管に濃縮され、その塩化アンモニウム溶液をキャピラリー菅 (微量検査用ガラス毛細管)に取り、 110℃で1時間加熱して乾国させる。このキャピラリー管 を、ガラス管(内径6mm,外径8m)に、線状酸化銅、酸化カルシウムとともに真空に封入し、 550℃で1時間加熟して、中の塩化アンモニウムをガス化した。この封入管を15Nアナライザーで 測定した。封入菅は試料1点につき、 3本つくり、 15Nアナライザーの測定は3反復した。得られた 測定値から、施肥由来の窒素吸収割合を算出した。算出方法は、施肥由来窒素の割合をZ, 15Nア ナライザーの測定値をR (%) ,肥料の15N濃度をA(%)とすると、 Z = P-0・365)/(Al0・365) で求められる。なお、 15Nの自然存在率比は0.365%とする。 (4)生長解析と用語の定義 個々の種子サイズは種皮を除いた種子貯蔵養分の値を用いた。播いた種子と同じ母樹から採取 した種子の中から種子サンプルを36個取り、皮を含めた生重と、種子貯蔵養分の乾重との回帰直 線式(y-o・3056Ⅹ-0・0218, I-0・9266, m-36)から、播いた種子の初期種子貯蔵養分重を推定した。ま た、種子の窒素濃度は種子サンプルの種子貯蔵養分の窒素濃度を測定して求めた。個体重は、 根・幹・葉・種子貯蔵養分の乾重の合計を用い、種皮の部分は除外した。 個体重の配分をみるため、地下部(根・種子貯蔵養分)重を地上部(葉・幹)重で除して、地 下部室/地上部重比を算出した。 各抜き取り時に種子内に残存していた種子貯蔵養分の残存割合を、種子貯蔵養分の残存割合 (%) = (残存種子貯蔵養分重/初期貯蔵養分重Xl00)として算出した。 RGR (相対成長率) 、 SLA (単位葉董当たりの葉面積) 、 LWR (個体垂当たりの葉重) 、は 以下の式で求めた。 RGR- (loglO(個休重) -loglO (初期種子養分童)) /出現から抜き取りまでの日

(13)

数、 sLA=葉面積/葉童、 LWR=葉重/個体重。 Niarea (葉面積当たりの窒素量)は個休単位で、薫の窒素量を葉面積で除して算出した。 (5)統計の方法 ノ 統計的検定には、 SAS杜のJMPを用いた(SAS 1995) 。個体重に与える、施肥窒素・種子サイズ の影響を二元の分散分析で検定した。さらに各処理ごとに、個体重が種子サイズによって異なる か、一元の分散分析で検定し、その後Tukey-KmmerのHSDで個々の差を検定したo RGR, SLA, LWR、葉の窒素濃度、葉における施肥由来窒素の割合、個体全体における施肥由来窒素の割合と 初期種子養分重の関係をピアソンの相関係数をつかって検定したこ地下部の割合が施肥窒素・種 子サイズによってどう影響されるかをみるため、地下部/地上部比を二元の分散分析で検定した。 また、 、 Arcsin変換後、施肥窒素・種子サイズの影響を、二元の分散分析法で検定した。個体重 は】oglO変換後、地下部/地上部比はArcsin変換後に計算を行った。各検定はサンプリングした45日 及び80日の生育段階ごとに行った。 結     果 1 )種子の窒素濃度 栽培に用いた母樹の種子窒素濃度は1.19±0.05%、 -桧山から採取した他の一本の母樹のものは 1137±0.05%であり、それぞれ同一母樹から採取した種子では種子サイズによる窒素濃度の違いは なかった(図-2) 0 2)個体重の変化 出現後45日、 80日の個体童(乾童)の二元の分散分析の結果を示したく真一2) 。個体重に与え る施肥の影響は、生育と共に大きくなった。種子サイズの影響は、生育と共に小さくなったが、 80日目でも有意な差があった。施肥窒素*種子サイズの交互作用は、 45日目でのみみられた。 個体童の経時的変化を大・中・小各種子サイズ別に示した(図-3) 。個体童は多窒素区の方が 少窒素区より常に大きかった。多窒素区では、初期サイズ(0日目)は大・中・小種子の順に重 かったが、 45日目・ 80日目では、個休重に種子サイズ間の有意な差は認められなかった.一方、 少窒素区ではいずれの測定日でも種子サイズが大きいほど有意に重かった。 3)種子サイズとRGRの関係

(14)

● 播種したクリ

〇 一桧山のクリ 0    1    2     3

種子サイズ(乾重)

図2 クリ種子の種子サイズと窒素濃度の関係

二本の母樹から採取した種子を測定した。

(15)

6MNト.0 MMOO'O LOOO.> 9NM.0 SN9.9 6N・寸tS 寸LO.0 96Nd 9gL.L SL LO.O LOOO.> 6000.0 9S寸.S 9m.9L M94寸L 。14こEy%準e潜感樹OL6oJfJ倒せ零せ M90.0 6寸N.0 Lこ.〇 .YyLiかせ*横側監増 Yyh小津 傭側聖増 0!teJL 岸火鉢 0!)eJL 犀火鉢  嘩Efl皿 EIE]09 卦韻Q) 皿ⅢS寸

‖‖腰

(trJ・甘・Y)YJ・かかせ92嘩(令 愉)磯倒聖増や¥叶り)糾せ寧 甚令轟令e僻目e(.弓C))倒せ寧e皿E309・S寸 N蛸

(16)

多窒素区

少窒素区

- 小種子 - 中種子 一 大種予 0  20  40  60  80    0   20  40  60  80 (日)      は)

出現後日数

図3 各処理別、種子サイズ別の個体重の推移

井P<0・05 ; HP<0101 ; …P<0・001 ; NS -No且Significant

(17)

図4に出現後45日・ 80日の種子サイズとRGR (相対成長率)の関係を示した。多窒素区では少 窒素区より種子サイズ全般にわたって高いRGRを示した。多窒素区では、種子サイズとRGRは負 の傾向がみられ、種子が小さいほどRGRが大きく、 80日目では5 %の有意な相関があった。一 方、少窒素区では種子サイズとRGRの有意な関係は見出せなかった0 ノ 4)種子サイズとSLA ・ LWRとの関係 SLAと種子サイズとの相関は多窒素区ではみられなかった。少窒素区では45日目で相関がみら れた(嘉一3) 0 IJWRと種子サイズの関係をみると、負の相関(45日日1%有意、 80日目5%有意) があり、小種子ほど個体垂当たりの葉垂の占める割合が大きいことが分かった。一方、少窒素区 では80日目でのみ負の相関がみられた(図-5) 。 5)葉の窒素濃度と種子サイズの関係 図-6に種子サイズと葉の窒素濃度(%)の関係を示した。葉の窒素濃度は、いずれの種子サイ ズでも、多窒素区の方が少窒素区より高い値を示した。多窒素区での葉の窒素濃度と種子サイズ の間には、 80日日では有意ではないが負の相関がみられ、小種子の方が葉の窒素濃度がやや高い 傾向を示した。一方、少窒素区ではいずれの時期でも、葉の窒素濃度と種子サイズには相関はみ られなかった。 N/area (葉面積当たりの窒素量)と種子サイズの相関は、多窒素区・少窒素区ともにいずれの時 期でも有意な傾向はみられなかった(表4). 6)施肥由来窒素の割合と種子サイズの関係 葉における施肥由来窒素の割合と種子サイズの関係を図-7に示した。多窒素区での葉における 施肥由来窒素の割合は、 45日目で43.2-73.8%、 80日目で62.9-923%と、生育と共に高くなっ た。一方、少窒素区では45日目で1.4-7.1%、 80日目で5.6-18.9%と生育と共に高くなったが、 その割合は多窒素区に比べて極めて低く、薫の窒素の8割以上は種子由来窒素であることが分かっ た。 種子サイズと葉における施肥由来窒素の割合には多窒素区では80日目、少窒素区では45 ・ 80日 目ともに負の相関があり、小種子ほど葉における施肥由来窒素の割合が高い傾向がみられた。 図-8に個体全体における施肥由来窒素の割合と種子サイズの関係を示した。多窒素区では個体 全休における施肥由来窒素の割合は、 45日目で41.8-70.7%、 80日目で66.3-87.5%と、葉と同様 に、生育と共に高くなった。一方、少窒素区では、 45日目で1.8-9.0%、 80日目で8.7-24.2% と、葉と同様に生育と共に高くなったが、その割合は低く、個体全体の窒素の75%以上は種子由 \

(18)

45日日

多窒素区

● ● ●ノ (Tゝ噂PT66∈)tJ9tJ 0.01 r= -0.3732

● ● ● 1     2     3

少窒素区

1     2     3

80日日

1     2

種子サイズ(乾重)

図4 種子サイズとRGRの関係

(19)

表3  SLAと種子サイズの相関 ノ 458日      80日日 相関係数 サンプル致  相関係数  サンプル数 多窒素区   -0.41 73  1 3    0.0866    20 少量素区   -0.6229 ★★ 16    -0.1095   19 表4  N/areaと種子サイズの相関 45日日      80日日 相関係数 サンプル数  相関係数  サンプル数 多窒素区   0.4086  1 3    -0.3775    20 少窒素区   0.4038  1 6    0.0071  1 9

(20)

45日日

多窒素区

(T66)tJき1 1     2     3

少窒素区

0.5 ● ●  ● ●

.1..I. ..

r= 0.4206 1     2     3

80日日

1     2     3 1     2     3

種子サイズ(乾重)

図5 種子サイズとLWRの関係

(21)

45日日

多窒素区

(%) 髄鞘傭洲e耕

Liii 7 1.2 1

少窒素区

2.2 1    2     3

80日日

1     2     3 ● ●● ●

!∼+

●● rニー0.0510 ● 1     2     3

種子サイズ(乾重)

図6 種子サイズと葉の窒素濃度の関係

(22)

45日日

多窒素区

(%)一朝覇e傭鮒瑞EF聖増

0   0 6    5 40 ・0 ■ 3 1     2     3

少窒素区

8     6 4 2 0 1     2     3

80日日

1     2     3 1     2     3

種子サイズ(乾重)

図7 葉における施肥由来窒素の割合と

種子サイズの関係

(23)

45日目

多窒素区

80日日

(%).加Wr]柵e牒榊米EFJ聖増 5   40   0 1     2     3

少窒素区

1   ・ 2     3 1     2     3 1    2     3

種子サイズ(乾重)

図8 個体全体における施肥由来窒素の割合と

種子サイズの関係

(24)

来窒素であることが分かった。 また、多窒素区の80日目、少窒素区の45 ・ 80日目では、種子サイズと個体全体における施肥由 来窒素の割合は負の相関があり、小種子ほど個体全体における施肥由来窒素の割合が高い傾向が みられた。 ノ 7)地下部室/地上部室比 図-9に地下部重/地上部重比を種子サイズ別・処理別・生育段階別に示した。いずれの段階で も、種子サイズによる地下部重/地上部重比の違いはみられなかった。また、施肥処理間では0.1% で有意に違いがあり、少窒素区で地下部の割合が高かった。 8)種子貯蔵養分の消費速度 種子貯蔵養分残量割合(%)の二元の分散分析を、出現後45日目・ 80日目に行った(蓑¢5) 0 いずれの時期でも施肥窒素・種子サイズの影響は見られなかった。しかし、多窒素区の45日目 で、大種子が小種子より種子貯蔵養分が消費されずに残っていたく匡ト10). 考    察 本研究ではクリの個体重の増加に対する種子サイズ(種子貯蔵養分重)へ依存度合いが土壌の 肥沃度によって異なることを明らかにした。多窒素区では小種子ほどRGRが大きく、生育が進む と個体重は種子サイズ間で有意な差が認められなくなった。渡辺・清和・赤坂(1996)は、好適 な光環境下ではクリの小種子が大種子より高い成長率をもち、大種子と同等の個体重を獲得する 現象を兄い出しているが、本研究でも追試できたといえる。また、この現象は、草本種で2、 3見

出されているにすぎない(Kondo and Oshima 1981, Hendrix et aJ・ 1991,1992) 。このメカニズムにつ

いては・種子貯蔵養分の消費速度や薫の生存様式によって解明しようとしたが、明らかな説明は 見出せなかった(渡辺・清和・赤坂1996) 。 KondoandOshima (1981)は塊茎サイズの小さいもの ほど光合成器官(葉)への分配率を高くすることによって小さな初期サイズをもつものが、高い 成長率を持つことを明らかにしている。 本研究では、多窒素区では、葉重当たりの葉面積(SLA)は種子サイズによる違いはみられず、 SLAではRGRの違いを説明し得ない。小種子由来の実生ほど、葉重当たりの葉面積を大きくし て、より大きい面積で光を受ける形態を作り出していたとはいえない。一方、葉への配分率( Ⅰ∬R)は、多窒素区の出芽後45日・ 80日で種子サイズと有意な負の相関があり、小種子由来の実 生ほど、光合成器官である葉への配分率が高く、そのことが小種子のRGRの高さに寄与している

(25)

皿E709園 皿EIS寸図 3  3  芸  oN

]7腸丁和/堪i和

山蓋舶7着\爺i曹OrJy.YJ・TG・小母.宗野lJTW 6囲

(26)

0999.0 L99S'0 6S寸ト.0 L9m.〇  トL.寸L 6MS..0  90.ON トot.0 S96.L 0!teJ山  岸B:zk EIE]09 。14こ時頼聾e潜感側u!SULVf面前榊ばe虫榔樺色小憩☆ 9SトL.0 寸○卜N.O M989.0 9ト9JO M9.m9 SgM.0 S9.L9 S9し.〇  寸99.の .YJ・・6・小世故催側聖増 YJ・かかせ 牒側監増 0!1eJ山 岸火鉢  噸EF]El 皿ⅢS寸 執韻Q)(trJ・甘・Y).YJ・卦か潜る噂(4,・愉)傭柵聖増岬Y廿日】糾せ賢 等余益虫e僻目e(%)和南側蝶e余榔樺色i=世e皿E)09・S寸 S僻

(27)

多窒素区

0  5 2   1

(%)和rIf壮ぜQ)令榔礎盤巾世

5  0 45日日

少窒素区

80日日 45日日

出現後日数

80日日

十大種子

ケ(h顗

+中種子

図10 種子貯蔵養分の残存割合の推移

(28)

ノ 表6  種子サイズとそれぞれの相関係数(ピアソン)

多窒素区少窒素区

45days80days 鼎VF F RGR-0.3719-0.4698★ S R SLA-0.41730.0866 蔦 緜## ィ 「モ 迭 LWR-0.7102★★-0.5465★ 紊# bモ 經3 「 葉の窒素含量(%)0.2881-0.4121 」 bモ S 葉の施肥窒素割合-0.1825-0.5919★★ 蔦 經涛8 「モ 繝 SX ィ ィ 「 個体の剤巴窒素割合-0.2842-0.5548★ 蔦 縱#S ィ 「モ 縱3 「

(29)

と考えられた。

RGTRは、 SLA、 LWR、 NARの積で表されるが、 NARは純同加速度で単位葉面積当たりのみか

けの光合成量・葉面の夜間の呼吸量・葉以外の部分の呼吸量により決まる(玖村1987) 。この試 験の場合のように・生育初期という総生産に対する呼吸の比率が低く、相互遮蔽が少なく、一種 を、同一環境下(多窒素区のみ)で比較した場合は、 NARは全薫の平均的な光合成能力に近いも のを示す(玖村1987) 。また、葉の光合成能力は葉の窒素量と高い相関を示す(Reich and SchoettJe 1988,彦坂1998)ので葉の窒素濃度がNARの指標となると考えられる. 多窒素区での葉の窒素濃度と種子サイズは、有意な相関はなかったが、出芽後80日目では小種 子由来の実生の方が葉の窒素濃度がやや高い傾向が認められた。これは小種子がNARを増加さ せ、それがRGRの高さに寄与したものと考えられる。 さらに本研究は・このような小種子由来の実生の葉ほど高い葉の窒素濃度をもつのは、小種子

ほど土壌由来窒素の吸収割合が高いためであることを明らかにしたo Grubb and Coomes(1997)は樹 木の柱間で、 Kramitz (1997)は木本の一種(Purshia Eriden肋)で、種子の窒素濃度が種子サイズ

により異なる現象を見出している。しかし、クリでは種子サイズによる種子の窒素濃度の違いは なかった(図4-2) oしたがって種子の窒素濃度が、薫の窒素濃度の違いを引き起こしてはいな い。本研究では、童窒素含有肥料を用いて実生の各部位に含まれる施肥由来窒素の割合を正確に 求めることが出来、その結果、葉・個体全体ともにおいて小種子の方が施肥由来窒素の割合が高 いことが明らかになった。したがって、小種子ほど土壌窒素の吸収割合が高く、それ力噂の窒素 濃度を高めて、高いRGRをもつことができたと考えられるoすなわち内的資源である種子の窒素 の濃度は同じであったが、外的資源である土壌の窒素の利用量が異なるためであった。 しかし、少窒素区では小種子の方が施肥由来窒素の割合が高いが、にもかかわらず、種子サイ ズによるRGRの違いはみられなかった。これは、少窒素区での施肥由来窒素の割合が全体的に低 く、葉の窒素濃度に種子サイズ間の違いがみられなかったためである。多窒素区で約8割が施肥 由来窒素であるのに比べ、少窒素区では80日後でも、その75%以上は種子由来窒素が占め、施肥 由来窒素の割合が8・7∼24・2%と非常に少なかったことにより、その効果がRGRや葉の窒素濃度に 現れなかったと考えられる。 だが、小種子ほど土壌窒素の吸収割合が高いのはなぜかという疑問が残る。小種子由来の実生 と大種子由来の実生の根の形が相似形であるとすると、小さい根の方が休積当たりの表面積は大 きくなる(Mcmahon 1973)。表面積の割合が高いということは、土壌窒素に接する面積割合も大き きくなり・このことが小種子が相対的に窒素吸収割合が高いことを説明できるかもしれない。 以上のように、クリでは光・土壌養分の豊富な環境下でのみ小種子は大種子より高いRGRをも \

(30)

ち、大種子と同等の個体重を獲得する現象がみられた○そのメカニズムは小種子ほど光合成器官 である葉への乾物の配分率が高いため、さらに土壌窒素の吸収割合が高く葉の窒素濃度を高くし 光合成速度が高められたことによるということが明らかになった。 一掛こクリは林縁やギャップなど明るい環境下で更新してくることが知られている。清和・渡 辺・入江(未発表)は、クリの種子に磁石を入れて動物の種子散布場所の選択性を調べた結果、 種子は林冠下に多く散布されるもののそこではすべて捕食され、ギャップに散布された少数の種 子が再捕食を免れ、出現してくることを明らかにしている○つまり、ギャップなどで出現しやす いものと考えられる。このようにギャップで特異的に出現するもののギャップでも土壌養分量は 例えば、尾根のギャップと斜面下部のギャップでは異なってくるだろう。クリの親木にとって は、どのような土壌条件を持つ場所に散布されるかは予測不能である。したがって、クリの親木 は実生の確実な生存を果たすためには、大種子も小種子もつくる必要があり、両方の選択圧がこ のような種子サイズのバラツ牛をもたらしているものと考えられる。 文    献

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