公正証書遺言に関する若干の疑問点 : 主として、
作成件数、作成手数料、管理について
その他のタイトル Sur des questions concernant le testament authentique
著者 千藤 洋三
雑誌名 關西大學法學論集
巻 37
号 5‑6
ページ 1323‑1343
発行年 1988‑03‑01
URL http://hdl.handle.net/10112/1804
千 藤 洋
公正証書遺言に関する若干の疑問点
ー主として︑作成件数︑作成手数料︑管理について
1
目 次 ー は じ め に
二公正証書遺言の作成件数
︱︱
︱公 正証 書遺 言の 作成 手数 料
四公正証書遺言の管理
五 終
Hわ り に
公正
証書
遺言
に関
する
若干
の疑
問点
遺言者本人であることを確認するために︑印鑑 現在は︑遺言ブームということで︑多くの遣言書が作成されている︒土地価格の騰貴にみられるように一般庶民
レベルにおける処分可能な財産の増加︑家意識の喪失・核家族化による遺産争いの増大︑生前に死後のことを取り決
めることは死を早めるといった迷信が藩れてきていること︑等の諸原因に基づいて生前に遣言書を作成することによ
り︑死後においても自己の希望どうりに財産が扱われるように︑あるいは死後の争いをあらかじめ防止しておこうと
する傾向が強まっている︒こうした傾向は︑たとえば日本公証人連合会による﹃遣言のすすめ11遺言公正証書の手引
(1 )
き11﹄といった小冊子の発行や主要新聞紙上での広告にみられるようないわば公の機関による努力のみならず︑とり
(2 )
わけ信託銀行等を中心とした私企業による遺言制度の活用キャンペーンなどに負うところが大きい︒そして︑三種の
(3 )
︵4
)
普通方式遣言と四種の特別方式遺言のうち︑公正証書遺言の増加が顕著である︒従来から公正証書遺言は︑費用がか
(5 )
かること︑証人が必要なこと︑秘密がもれること︑などが短所のようにいわれてきたが︑二人とも証人が必要な点は
(6 )
ともかく︑今日の物価水準から比較して︑費用が高いとは言い難くなってきているといえよう
(7 )
ところで︑公正証書遺言は︑公証人役場︵公証人の出張した場所も含む︶において︑公証人に対して︑二人以上
の証人の立会のもとに︑遺言者が遺言の趣旨を口授し︑公証人がこれを筆記して遺言者及び証人に読み聞かせ︑遣言
者及び証人が筆記の正確なことを承認した後︑各自署名・押印し︑公証人が方式に従って作成されたものである旨を
付記して署名・押印することによって︑成立する︵民法九六九条︶︒
登録証明書と実印の提示が求められる︒ただし︑印鑑を登録していない人もしくはする気のない人︑あるいは急迫の
は じ め に
二九三
︵一
三二
五︶
一部の人の利益のみに 事情があるときには︑本人の写真の貼ってある自動車運転免許証︑旅券︑外国人登録証明書︑身体障害者手帳︑など他の方法により人違いでないことを証明することも可能である︵公証人法三六条六号︑八号︶︒このように厳格な要
件が課せられているのは︑本来︑遺言者の最終意思を明確にする必要があること︑作成に偽造・変造等の問題を生じ
させないためであること︑などに拠る︒しかし︑法律の専門家のうちでも︑能カ・識見等において最も高度な地位を
有する公証人が関与している公証業務において︑近年︑しばしば問題となる面が見られない訳ではない︒たとえば︑
クレジット・サラ金など消費者金融が盛んとなるなかで︑債務不履行の場合の強制執行認諾条項を入れた公正証書作
(9 )
成のため︑一度に大量の申請が出るいわゆる集団事件と呼ばれる出来事などはその典型例である︒公正証書遺言につ
( 10 )
いても︑証人欠格者を証人にしたために︑遣言全体を無効にしてしまうなどの例がまれではない︒それだけ︑公正証
書が利用されるようになり︑国民生活に密着してきた証左ともいえようが︑信託銀行等が業として︑公正証書遺言の
作成過程に関与するようになってきた今日︑予防司法の砦ともいうべき公正証書の作成には︑
偏ることなく︑出来うる限り厳正な態度を持することが要請されよう︒
( 11 )
公正証書遣言をめぐる問題点は数多くあり︑かつまた優れた先達の諸業績も多くみられるが︑これらに教えを受
けつつ︑公正証書遺言に関する幾つかの点について︑素朴な︑かつささやかな疑問を提起し検討を加えようとするも
( 12 )
のである︒今回は︑公正証書遺言の扱いについて︑とりわけ公正証書遺言が増加しているといわれるが︑その遺言件
数は正確に統計されているものなのか︑また遺言作成の手数料計算はどのようになされているのか︑さらには遺言の
管理はどうなっているのか︑といったいわば周辺部の︑しかし極めて重要な問題を取り上げることとする︒そして︑
いずれ近いうちに︑公正証書遺言の作成過程上の諸問題︑とりわけ現実の口授方法︑公証人による口授の筆記と読み 関法第三七巻第五・六号二九四
︵一
三二
六︶
公正証書遺言に関する若干の疑問点
だし︑たとえばある遺言者が︑ 公正証書遺言の作成件数は︑最近のほぼ二0年間の統計からも明らかなように︑
は否定すべくもないが︑わが国では︑公正証書遺言の統計に全面的な信頼が置かれない︒その理由の一っとして︑周
知の事実だが︑遺言作成件数の算出方法が実務界において混乱しているからである︒たとえば︑
の依頼者︵嘱託者︶が︑同一書面で複数人に異なった遺贈もしくは相続させるとの遺言を行った場合に︑同一書面だ
から一件と勘定する方法と︑相手方ごとに勘定する方法が存在している︒こうした相違を無視して統計をとってみた
ところで︑正確を期しえないことは明らかであろう︒このことは︑遺言書作成の手数料とも絡んでおり︑公証人手数
料規則によれば︑法律行為の目的の価額ごとに手数料が取れることから︑相手方ごとに数えるようになったものと解
される︒しかし︑通常一般人の理解するところでは︑やはり一人の遺言者ごとに集計すべきではないか︑
︱つの書面で法定相続人に特定財産を相続させるとし︑同じ時に︑異なった書面で第
四 た
し゜
れを知らず勝手に言える立場にはあるが︶︑ えないとする遺言の効力︑等を検討してみようと思う︒ 聞
かせ
︑
二九五 一貫して増加している︒このこと 口授・筆記・読み聞かせの順序︑証人の資格︑等を︑さらには公正証書遣言の内容に関する諸問題︑たとえ
ば﹁相続させる﹂と﹁遺贈させる﹂の違い︑遺留分を侵害する遺言︑特別受益者の相続分に関する指定︑寄与分を与
なお︑あらかじめお断りしておくが︑筆者は︑公証実務にはまったくの門外漠であるので︵そうであるが故に︑恐
見解の多くがとりわけ実務家にとってまとはずれ︑あるいは分かり切っ
たものに思われることであろう︒この点は︑今後ともこの分野についての勉強を深めていくということで御寛容願い
本稿で述べようとする点を︑あらかじめまとめれば以下のようになろう︒
一人の公正証書作成
︵二
‑三
七︶
と思う︒た
としても︑証人の手当てを明確化すべきではなかろうか︒ カ 4ヽ~ヽ
一通と扱うのか︑あるいは二通と数えるのか︑問題となろう︒
これまで︑公正証書遣言の欠点の一っとして︑作成費用が高い︑もしくは費用がかかる︑といった点が多くの教科 書等で挙げられてきた︒しかし︑遺言の管理・執行を業の一っとする私企業である信託銀行の手数料や諸経費と比較 したかぎりでは︑欠点はそれほどのものでないことが分かる︒ところで︑公正証書遺言の作成手数料は︑法律行為の 目的の価額ごとに算定することになっているが︑法律行為の目的の価額は何を基準として算定されるのか︒土地が対 象となっている場合には︑公示価格︑路線価格︑固定資産評価額︑等のいずれにしたがって判断するのか︒各地の公 証人役場によって異なると伺っているが︑統一化をはかるべきではないか︒また︑公証人の手数料とは異なるが︑公 正証書遺言の作成過程には二名の証人が必要とされており︑これら証人への謝礼が︑法文上︑明規されていない︒公 正証書遺言作成に業として携わるようになってきている司法書士︑弁護士︑あるいは信託銀行のコンサルタントなど は︑私的な形であれ︑当然に報酬を請求している︒司法書士の場合︑
素人の場合には︑たとえば東京では五千円某を支払うとか言われている︒こうしたことを放置しておいてよいものだ ろうか︒そのうち︑公証人役場の前に︑証人になることを業とする半玄人が出現しないとも限らない︒立法論になる フランスのように二人の公証人が作成過程に立ち入れば︑証人は不要にするといった改正︑あるいは現行のまま
現在︑公正証書遺言の原本は︑︱
‑ 0
年問保存されることになっている︒しかし︑これはあまりに短期ではなかろう
か︒各地の公証人役場では︑それぞれに工夫を擬らし︑八0
年と
か一
00
年間︑保存するようにしているとか聞く︒
明文規定で︑保存期間の延長をはかるべきであろう︒また︑それと同時に︑公正証書遺言の全国集中管理もはかるべ
者を特定受遺者として特定遺贈したような場合には︑ 関法第三七巻第五・六号
一件につき一万円以上請求しているとも聞く︒
二九
六
︵一
三二
八︶
( 1 )
たと
えば
︑昭
和六
二年
九月
0三
日の
朝日
新聞
や毎
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聞等
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朝刊
に︑
﹁明
日一
0月
一日
は法
の日
です
﹂と
して
︑
﹁Q&A遣言のすすめ遣言や契約は公正証書に﹂の広告が掲載され︑大阪府内の公証役場の住所・電話番号︑手数料な
どを
知る
こと
がで
きた
︒こ
れは
︑全
国的
に行
われ
たも
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れる
︒
( 2 )
たと
えば
︑筆
者の
手元
に︑
三井
信託
銀行
編﹃
よく
わか
る遺
言と
遺言
信託
ー一
00
の疑
問に
こた
える
﹄
ろう
︒
ば︑意味のないことである︒
二九
七
︵昭
六一
︶が
あり
︑
きである︒そうでないと︑たとえば同一人が東京と大阪で矛盾する内容の複数の公正証書遣言を行っていた場合︑後
の遺言で先の遺言と抵触する部分を取り消したことになるはずであるが︑それが不明という問題が出てくるからであ
る︒なお︑現在︑東京とか大阪では遣言書のカード化が進められ︑その地区内では集中管理を行っている︒また︑
九八九年をめどに全国的な集中管理をめざしているとのことである︒しかし︑たとえ全国集中管理をしたところで︑
たとえば東京の人が家族に知られたくないとして︑沖縄で公正証書遣言を行い︑しかも遣言執行者を指定していない
ような場合には︑遺言者が死んでも︑遣言書の存在が明らかにならないという恐れがある︒遺言者の生死に関する情
報管理まで行うのであろうか︒公正証書遣言が安全・確実といったところで︑その存在自体︑分からないままであれ
その他︑やや暴論ではあるが︑公証実務で用いられる﹁遺言公正証書﹂とか﹁公証役場﹂という文言と︑慣用され
ている﹁公正証書遺言﹂や﹁公証人役場﹂の違いが一般人には分りにくく︑
公正証書遣言に関する若干の疑問点 できるだけ後者を用いるようにできない
ものだろうか︑あるいは︑たとえば神奈川県には二六カ所に公証人役場が存在するが︑それより人口の多い大阪府で
はわずか九カ所しか公証人役場がなく︑偏在しているといえないか︑といった疑問がある︒ともあれ︑今後とも公正
証書制度が︑より一層国民に親しまれるために︑公証人はもちろんのこと関係各位の多くの努力が払われる必要があ
︵一
三二
九︶
そこには全国の公証︵人︶役場の所在地と電話番号が掲載されている︒その他︑三菱信託銀行﹃まんがでわかる相続読本﹄
︵昭六二︶や住友信託銀行﹃相続と遺言書わかりやすい︑遺言書のつくり方読本﹄︵昭五八︶︑あるいは東洋信託銀行に
よる﹁一度は考えてみたい遣言の話﹂など多くの本やパンフレット類が出されており︑国民の誰しもが容易に手に入れるこ
とができる︒また︑これら信託銀行主催による講演会︑たとえば一例として三菱信託銀行主催による﹁資産対策諧演会八相
続対策と遺言>︵編︶﹂︑が各地で盛んに開かれている︒リビング名神というミニコミ新聞︵昭和六二年五月一六日五四二
号︶では︑﹁ファミリィ財務相談室﹂で︑住友信託銀行の財務コンサルタント某さんに﹁相続でもし遺言がなかったら﹂ど
うなるか︑を教えて貰う形で記述している︒そして︑﹁財務コンサルタントが︑遺言についてあらゆるご相談に丁寧に答え
ています︒この機会に︑ブームを呼んでいる遺言の大切さを身近に考えてみませんか﹂と結んでいる︒このように︑遺言書
作成に大手企業が︑業として関与し始めたと断言しうるであろう︒国民に遺言の意義・価値を知らしめた功績は否定しえな
いものの︑今後︑企業間の競争の激化とともに︑何らかの問題をもたらすのではないかと危惧される︒
( 3 )
日本公証人連合会による﹃遺言のすすめ11遣言公正証書の手引き11﹄のタイトル名でも明らかなように︑実務家は︑﹁公
正証書遺言﹂とは呼ばず︑﹁遺言公正証書﹂と呼ぶ︒遣言を公正証書にしておくという意味で︑遺言に限らず公正証書の場
合には︑すぺて00公正証書とされていることから︑厳密さからいえば﹁遺言公正証書﹂の方が正しいといえよう︒さらに︑
両者には︑相違があるとも解される︒しかし︑筆者の手元にあるいわゆる六法全書には︑すべて﹁公正証書遺言﹂と見出し
がつけられている︒正式な条文には︑見出しはついておらず︑各出版社が読者の便宜のために︑﹂自筆証書遣言﹂﹁秘密証書 遣言﹂との関連において︑いわば勝手につけたとはいうものの︑﹁公正証書遺言﹂の方が慣用されているのではあるまいか︒
現に︑前述の﹃遺言のすすめ11遣言公正証書の手引き11﹄の一七頁以下では︑﹁安全確実な公正証書遺言﹂との表題のもと
に︑公正証書遺言の説明を行っている︒いずれにせよ︑国民の目からみれば︑まぎらわしいことでもあり︑一般人向けには︑
常に﹁公正証書遺言﹂を用いるべきかもしれない︒少なくとも策者自身︑﹁遺言公正証書﹂という表現にはじめて接したと
き︑違和感を覚えた︒勿論︑公証人が︑職務上︑﹁遣言公正証書﹂という文言を用いることに異を唱えるつもりはない︒な
お︑大阪公証人会による﹁遺言等索引カード﹂の書式分類としては︑﹁遺言証書﹂︑﹁秘密遺言﹂︑﹁死因贈与﹂の一ー一種になっ
ている︒本稿では︑すべて﹁公正証書遣言﹂とする︒
( 4 )
公正証書遺言件数が増加していることは確かであるが︑本稿第二章﹁公正証書遺言の作成件数﹂で扱うように︑その件数 関
法 第 三 七 巻 第 五
・ 六 号
二九
八
︵ ご ︱ ︱
︱ ︱
1 0 )
公正証書遺言に関する若干の疑問点二九九 の統計数には︑幾つかの問題がある︒
( 5 )
鈴木禄弥﹃相続法講義﹄︵昭六一︶︱二八頁参照︒
(6 )
手数料をめぐっても︑幾つかの問題がある︒後述する︵第二章︶︒
( 7 )
昭和六二年七月一日現在︑全国で三0九カ所に公証︵人︶役場が存在する︵日本公証人連合会・前掲書ニ︱頁以下︒ちなみ
に︑全国の公証人数は︑およそ五一六名︶︒各都道府県の面積が異なり︑一カ所に複数の公証人がおられる場合もあるし︑
また交通の便等から単純比較はできないものの︑たとえば︑神奈川県には二六カ所の役場があるのに比して︑大阪ではわず
か九
カ所
︵総
数一
︱1 0
名︶しかない︒人口比からいえば︑偏在しているといえないだろうか︒それにしても︑明治二二年四月
10
日にわが国で初めて六九名が公証人に任命されて以来︑一00年になろうかというのに︑それほど人数が増加しなかっ
たのは︑国民生活における公証人の果たしてきた役割が小さかったことを物語るものといえよう︒なお︑注⑱で述べたのと
類似の疑問として︑﹁公証役場﹂と﹁公証人役場﹂とが用いられているが︑両者を区別する必要があるのか︑と思う︒公証
実務では﹁公証役場﹂が用いられ︑研究者は﹁公証人役場﹂を用いることが多いように見受けられる︒たまたま筆者の手元
にある弁護士の書かれた二冊の本では︑いずれも﹁公証人役場﹂が用いられている︵長戸路政行﹃内容証明公正証書起案作
成の手引﹄︵︵昭五四︶一八一頁以下︑今重一11今瞭美﹃クレジットの虚像と実像n﹄︵昭六二︶六四頁︒なお︑今著の六
五頁と七三頁に︑読売新聞の六1一年八月︱︱日付けと六二年八月九日付けの記事が掲載されているが︑八月︱︱日では﹁公
証役場﹂となっているけれども︑八月九日付けでは﹁公証人役場﹂とされている︶︒法務省民事局編﹃公証人法関係解説・
先例集﹄︵昭六一︶は︑随所に﹁公証人役場﹂を用いている︵同書五頁︑他︶︒また︑奥村正策﹃公正証書に関する総合的
研究﹄︵昭三六︶も︑﹁公証人役場﹂とする︵同書一0頁︑他︶︒公証人法施行規則二条は︑﹁公証人は︑その役場に︑公証
人某役場と記載した表札を掲げなければならない﹂と明規していることからいえば︑公証役場と公証人役場とは異なるとい
えよう︒﹁公証役場﹂は︑人ではなく場所を意味し︑﹁公証人役場﹂は︑公の機関としての公証人の仕事場︵事務所︶を意
味するというべきか︒病床に嘱託者を訪ねて公正証書遣言を作成する公証人の作成現場を︑公証人役場と呼べそうである︒
しかし︑一般人にとっては︑どちらでも同じことといえそうで︑分かり易い方︑つまり﹁公証人役場﹂に統一すべきではな
いかと思う︒もっとも﹁役場﹂そのものが︑古めかしくなじめないものであるが:;:︒本稲では︑公証人役場とする︒
( 8 )
鍛冶
良堅
﹃相
続法
講義
﹄︵
昭六
︱‑
)一
四三
頁︒
︵一
三一
︱︱
‑︶
関 法 第 三 七 巻 第 五
・ 六 号
︱ ︱ 1
0 0
︵
一三
=三
︶
( 9 )
大量の申請のため︑いわば流れ作業で機械的に公正証書を作成しており︑類型的であるので︑個々の証書の内容の確認を
怠っていること︑債権者・債務者の署名日と作成日が異なること︑クレジット会社の社員が債務者の代理人になることが通
例で︑債務者である本人の同意の有無の注意を欠いていること︑など多くの点で問題となっている︒大阪では︑
公正証書1 1
︱‑
番が弁護士事務所に設けられたことが︑日刊新聞紙上で報じられたりしている︒クレジット問題等については︑今0
重一
11
今瞭美﹃クレジットの虚像と実像
I I ﹄︵昭六二︶六一頁以下︑﹁クレジット・サラ金対策ニュース﹂三二号︵昭六二︶
特集が詳しい︒また︑ごく最近︑大前邦道公証人による﹁読売新聞の二つの記事を読んで﹂6公証﹂八三号五四頁以下︶と
いう非常に詳細な実務随想︵というよりも論文といった方が適切かも︶が出された︒ただ︑債権者の債権回収のための行き
過ぎた行為は︑立法手段により︑あるいは法の解釈作業により︑さらにはマスコミなどの社会的批判等により︑厳しくチェ
ックする必要があることはいうまでもないが︑数年もかかるような裁判に基づく権利保護を待っことの出来ない人々の簡便
な方法としての公正証書の利用を︑もう少し暖かく見守っていくべきではないかとも思う︒だからといって︑たとえば︑公
正証書遺言の作成業務について﹁年間四万件も作られる公正証書遺言の中に︑方式不備で無効となるものが何件あるという
のか﹂︵倉田卓次﹁最近の遣言判例﹂家月三九巻︵昭六二︶一七頁︶という論法の下に︑批判を許さないとすれば︑大いに問
題である︒小さな病理現象︵?︶であれ︑多方面の人が議論を交わすことによって︑一般人の納得しうる結論に到達するよう
努めるべきではないだろうか︒昭和六三年五月に﹁公証制度一00年記念行事﹂が行われることになっているが︑公正証書
は︑近年においてようやく広く国民に知られつつある︑というのが実情といえよう︒その利用が正しく好ましい方向に向か
っていくように︑関係者の努力が要請される︒なお︑昭和六一年五月に日本弁護士連合会より﹁公証人法に関する意見書﹂
が︑法務大臣宛に提出されている︵﹁公証﹂八三号一︱七頁以下︶︒(10)最判昭四七•五・ニ五(民集二六巻四号四七四頁)は、推定相続人の配偶者を証人として作成された公正証書遺言を無効
とした原審を支持したものである︒なお︑泉久雄﹁遺言の要式性﹂民事研修三五0号︵昭六二︶五六頁参照︒
( 1 1 )
現在までに公正証書遣言の裁判例に関する文献として︑主に以下のものが上梓されている︒高窪喜八郎11堀内節11田村五
郎編﹃学説判例総覧民法相続編︵下︶﹄︵昭三五︶︑我妻栄編﹃体系民法判例珊相続﹄︵昭四二︶︑島津一郎﹃判例コンメ
ンク
ール
7民法>相続渉外家族法﹄︵昭五三︶︑﹃親族法相続法判例体系︵第二期版︶﹄︑加藤永一﹃叢書民法総合判
例研究五七遺言︹増補︺﹄︵昭六二︶︑﹃民法コンメンクール相続編全二巻﹄︵昭六二︶︑など︒また︑公正証書遣言に
関する研究書・論文の類としては︑太田武男編﹃家族法判例・文献集成﹄︵昭五
0 )
に掲載されたもの以外に次のようなも
のを挙げ得よう︒東京公証人会﹁会報ー遣言特集号ー﹂︵昭五二︶︑同﹁会報ー遺言実務特集号ー﹂︵昭六一︶が実務の問題
点について詳しい︒法務省民事局編﹃公証人法関係解説・先例集﹄︵昭六一︶も極めて重要である︒著書としては︑成毛鐵
二﹃公証制度の課題と実務﹄︵昭六︱‑︶︑岩本信正﹃条解公証人法﹄︵昭五六︶︑太田武男編﹃現代の遺言問題﹄︵昭五四︶
︵本書のうち︑とりわけ国府剛﹁公正証書遣言の作成を通じてみた実態﹂同書三四五頁以下が貴重である︶︒論文の類とし
ては︑広中俊雄﹁公正証書遺言の方式と公証人の役割﹂﹃現代家族法大系五相続二遺産分割・遣言等﹄︵昭五四︶二四二頁
以下︑加藤永一﹁方式に瑕疵ある遣言﹂﹃現代家族法大系五相続二遣産分割・遣言等﹄︵昭五四︶1一六一頁以下︑野川照夫
﹁公正証書遺言の方式違背とその効力﹂﹃家族法の理論と実務︒別冊判ク八号﹄︵昭五五︶三七六頁︑野川照夫﹁公正証書
遣言の方式﹂﹃家族法判例百選︵第三版︶﹄︵昭五五︶二四0頁以下︑加藤永一﹁口授型遺言における﹃口授﹄について﹂東
北大教養部紀要四一号︵昭五九︶一五六頁以下︑倉田卓次﹁最近の遺言判例﹂家月三九巻五号︵昭六二︶一頁以下︑同﹁銀
行預金と公正証書遣言﹂手形研究三八六号︵昭六一︶四頁以下︑同﹁特定の相続財産を特定の共同相続人に取得させる旨の遣言の効力」家月三八巻八号(昭六一)―二三頁以下、「特集•これからの遺言制度」ジュリスト八八一号(昭六二)六頁
以下
︒
( 1 2 )
筆者は︑九年以上も前に︑今回の公正証書遣言と同じ口授型遣言に属する一般危急時遺言について検討を加えたことがあ
る︒﹁一般危急時遺言に関する裁判例の研究0.⇔未完﹂関大法学論集1
一八
巻一
号・
三号
︵昭
五一
︱‑
︶が
それ
であ
るが
︑九
年
もの間に︑遺言は随分と国民の間に入り込んできたとの感が強い︒今後もますます利用されるようになるものと予測される︒
︑︑
︑︑
しかし︑それだけに︑従来のように︑遣言要件の緩和を意図的に行うことにより遣言利用の促進をはかることには︑問題が
多いといえよう︒むしろ︑遣言制度の本来の趣旨に則り︑厳格に要件を遵守することが︑遺言制度に対する国民の信頼を失
わないためにも︑重要ではあるまいか︒
公 正 証 書 遺 言 の 作 成 件 数 全国の公正証書遣言の作成件数は︑およそ左記の表の通りである︒
公正証書遺言に関する若干の疑問点
︱ ︱ 1 0
1 ( ‑ =
= ‑ =
= ‑ )
典は︑明らかにされていないことになる︶︒ ︵表一︶と︵表二︶を比較すれば︑昭和四六年と四七年を除いて︑四八︑四九︑
異なる︒中川教授の統計件数の出典は︑最高裁判所事務総局・司法統計年報︵新受件数︶︑
によ
る︑
五0の各年度は両者の間で件数が
となっている︒また︑泉教授の場合は︑司法統計年報・家事編となっている︵但し︑教科書のなかで︑司法
統計年報・家事編は︑遺言検認事件数の出典だけ指しているとも読める︒その場合には︑公正証書遺言作成件数の出
これらの表により︑公正証書遺言の件数が増加していることは確かとい 東京公証人会ほか﹁会報﹂
︵ 表
二 ︶
年度 一
一件
数一
一 五 ︑
0
八ニ
︱ 四 六 年
一六
︑九
九二
︳ 四 七 年
﹂
二0︑0
八四 一
四 八 年
一 五
0年
︱ ︱ ︱ 1 1 '
︱ 01
︱ 1
ーニ
三︑
三六
六 四 九 年
(表
1の通りである。1)
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四七 四
四 年 年
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︵表
一︶
関法第三七巻第五・六号三0ニ
︵一
三三
四︶
( 1 )
以上の︵表一︶は︑昭和四一年度から五0年度までは︑中川淳教授がお書きになったものによる︒また︑昭和五二
(2 )
年度から六一年度は︑日本公証人連合会発行の︒^ソフレットによる︒しかし︑泉久雄教授が分担執筆された典型的な
(3 )
教科書の︱つによれば︑
えるものの︑そもそもなぜ統計数に違いが出てくるのだろうか︒そう大した違いはないとはいうものの︑なぜかを知 りたいとおもい︑少し調べたりお伺いした結果︑次のようなことが分かってきた︒これら公正証書遺言件数の全国統 計は︑かつて一こ一度﹃司法統計年報・家事編﹄に掲載されたこともあったようであるが︑今日では雑誌﹁公証﹂や
(4 )
東京公証人会﹁会報﹂等によって知りうるようである︒日本公証人連合会は︑昭和五
1一年度から全国統計を︑また昭
和五八年度から都道府県別統計を行っている︒また︑毎月︑統計を法務省に報告し︑法務省でも集計しているようで ある︒かつては︑法務省は︑公正証書遺言件数を公表したこともあったようであるが︑公証人の手数料が明らかにな るなど︑問題があったためか︑現在は公表していない︒しかし︑もともとわが国では遺言そのものが国民に馴染の薄 い制度であったため︑また家制度のもとにおいては個人が財産を処分する慣習は一般的でなく︑かつまた処分可能な 財産とて多くなく︑したがって公正証書遺言はまれであり︑近年はともかく︑大正・昭和時代の一時期を除いては︑
(5 )
全国統計は法務省にもないようである︒次の︵表一︱︱)が︑大正・昭和の統計である︒
︵ 表一 ︱
いずれにせよ︑統計のための計画的かつ正確な集計努力が払われるようになったのは︑前記の表から推測される ‑ )
ように︑昭和四一年よりさほど遠くない前からのことのようであった︒ところが︑折角の統計にもかかわらず︑この
公正証書遺言に関する若干の疑問点三
0 1 ︱ ︱
(
―
‑
―
‑ 三 五
)
件 年 件 年
数 度 数 度
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ヽ ヽ
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年四 四九 年四
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四 年 年
四
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五 七 七
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年 四 年
九 七
ヽ 八
七 年
!一
数字自体にはそれほどの信憑性が置かれないという問題がある︒それは︑遺言件数の数え方に︑各地の公証人役場で︑
あるいは公証人その人によって違いがあることによる︒たとえば一人の遣言者が同一遺言書で複数人への遺贈を行っ
ていた場合︑大阪では法律行為の数ごとに件数計算するのに対して︑東京では一っの遺言書なので一件として計算し
ているからである︒東京︑大阪という地区の違いのみならず︑同じ大阪でも公証人の間に違いがあるようである︒公
証人手数料規則によれば︑法律行為の目的の価額に応じて手数料が定められている︒それにしたがって︑日本公証人
遺言では︑財産をもらう人ごとに時価により手数料が計算されます﹂と説明し
ている︒手数料計算という面からいえば︑法律行為の数ごとに遺言が成立すると解することも可能である︒しかし︑
一件の遺言と勘定する方が庶民感情には合うように思われる︒仄
一九八八年には統一されるようであるが︑どういう方法で統一されるか
興味がもたれる︵近く︑法務省通達が出され︑遣言者を単位として一名ごとに一件と計上するものになるようであ
︱つの書面で法定相続人に特定財産を相続させるとし︑
に︑異なった書面で第三者を特定受遺者として特定遣贈したような場合には︑
( 1 )
中川
淳﹁
遺言
制度
の意
義と
機能
﹂太
田武
男編
﹃現
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遺言
問題
﹄
号︵
昭五
二︶
二頁
以下
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︒
( 2 )
日本
公証
人連
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め
11
遺言
公正
証書
の手
引き
11﹄ るのか︑問題は残るように思われる︒
︵昭
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二年
七月
八日
発行
︶三
頁に
よる
︒
︵昭
五四
︶三
0頁
︵な
お︑
本論
文は
︑ケ
ース
研究
一六
一通と扱うのか︑あるいは二通と数え
る ︶ ︒
それにしても︑たとえばある特定の遺言者が︑同じ時 聞するところによると︑こうした不統一は︑ 同一書面である以上︑手数料計算とは関係なしに︑ どのように計算されるのですか︒A 連合会発行の︒^ンフレット﹁公正証書
Q&A
﹂に
よれ
ば︑
﹁Q遺言で︑財産をもらう人が数名いる場合の手数料は︑ 関法第三七巻第五・六号三0四
︵一
三三
六︶
公正証書遺言に関する若干の疑問点
手 数 料
(3)久貴忠彦•他『民法講義八相続』(昭五一_一)―-七九頁(泉久雄分担執筆)。
( 4 )
たとえば︑東京公証人会﹁会報ー遺言特集号ー﹂︵昭五二︶一0三頁には︑遺言公正証書件数調︵法務省民事局・東京公
証 人 会 調 昭 和 五
1一年二月一日作成︶として︑昭和四六年から五0年までの五カ年分の統計が掲載されている︒しかし︑
雑誌﹁公証﹂の最近号︵八三号︶では︑﹁法律行為の目的価格に関する調査表︵昭和六一年度︶﹂が掲載されている︵同書
一六一頁︶ものの︑公正証書遺言件数は知り得ない︒
( 5 )
奥村正策﹃司法研究報告書第一三輯第一号・公正証書に関する総合的研究﹄︵昭一︳一六︶一四九頁以下︒なお︑本文と同じ
統計が︑福島昇﹃司法研究報告第三四輯第︱二号・公証人制度の研究﹄︵昭二三︶五頁にも掲載されているようであるが︑
未見
︒
公 正 証 書 遺 言 の 作 成 手 数 料 公証人の手数料は︑公証人手数料規則︵明治四二年六月二九日勅令一七四号︶で定められ︑幾度か改正を経て︑
昭和五九年一月一日から遣言書作成については下記の現行手数料となっている︒
四0
00
円六
00
九0円
00
0円
一万
1一
千円
□
00
0 万円を超えると
10
0万
円 ま で
00二
万 円 ま で
万円まで一0万円まで五五0000
00
万円までき0
法律行為の
五0
00
万円までごとに 目的の価額
一万円を加算 [
なお︑遺言の全部又は一部の取消しの場合には︑右記手数料の一
0
分の五である︒こうした手数料以外に︑公正証 書遺言作成に際しては︑用紙代︑出張の場合の交通費・日当が必要である︒
公証人の手数料が高いか安いかは︑個々人によって異なった受け止め方をされるであろうが︑
︱ ︱ 1 0
五
二 万 円
︵︱
‑︱
‑三
七︶
一般的にいって︑安
報酬について
①引き受けの予諾料について
引き受けの予諾をいたしますと︑当社では事務体制を整え︑また所定の書類の保護預りをいたしますので︑それらの事務費
用として一年につき一万円の予諾料をいただきます︒
②遺言執行費用について
お引き受けする財産の価額を基準として︑執行終了の際︑当社所定の料率によって算出した額をお支払いいただきます︒
なお︑公租公課︑鑑定料︑その他費用などの実費は執行報酬以外に別途お支払いいただきます︒
ー東洋信託銀行の遺言執行報酬基
一︑引受報酬
遣言執行財産の相続税評価額に対し下記の率を乗じた金額
五0百万円までの部分に対し⁝⁝⁝⁝⁝⁝⁝
・ ・ ・ 1
000 0 分の二
五0百万円を超え一億円までの部分に対し⁝⁝一000分の一五
一億円を超え三億円までの部分に対し⁝⁝⁝一000分の一〇
三億円を超える部分に対し⁝⁝⁝⁝⁝⁝⁝⁝一
00
0分の五
︵但し︑最低報酬額は五0
万円
とし
ます
︶
二︑特別報酬
特別の保存︑管理︑処分などを必要とする湯合は︑内容に応じて特別報酬をお支払いいただくことになります︒ の公証人手数料がさらに必要である︶︒ いと言えるのではなかろうか︒ちなみに︑私企業の︱つである東洋信託銀行に遣言執行業務あるいは遺言による信託
(1 )
を依頼した場合の手数料は︑左記の通りである︵公正証書による遣言書を作成していただくとなっているので︑前記
関 法 第 三 七 巻 第 五
・ 六 号
各銀行の手数料は︑若干の違いがあるものの似たような額といえよう︒
‑ 0 六
︵一
三三
八︶
以上の両表を比較した限りでは︵東洋信託銀行のものは︑遺言執行や財産の管理等の費用であることから︑単純比
較はできないし︑比較すること自体無理があるとしても︶︑
差支えないであろう︒つまり︑公正証書遺言の短所の︱つのようにいわれてきた費用が高いという考えは︑今日では
訂正すべき時期にきているといえる︵勿論︑公証人手数料規則の改正によって常にアップの可能性はあるけれども︑
ところで︑前節の遣言件数のところで取り上げた日本公証人連合会の︒^ソフレット﹁公正証書
Q&A
﹂に
よれ
ば︑
﹁遺言では︑財産をもらう人ごとに時価により手数料が計算されます﹂となっている︒この場合の時価とは何を指す
のであろうか︒手数料は︑法律行為の目的の価額によって算定され︑それは︑公証人が証書の作成に着手した時の時
価による︵公証人手数料規則三条︶ことになっているが︑時価は︑どのような基準によって出されるのであろうか︒
とりわけ土地が対象となっている場合には︑公示価格︑路線価格︑固定資産評価額︑等のいずれにしたがって判断す
るのか︒各地の公証人役場によって異なると伺っているが︑統一化をはかるべきではないか︒しかし︑地価が異常に
高騰した東京及びその周辺都市とそうでない地方都市では︑同じ基準によると︑東京の公証人が不当といえるほど収
入が増加したり︑あるいは管轄区域外に出られない地方の公証人が低収入で苦しまなければならない︑といったこと
公証人の手数料とは異なるが︑公正証書遺言の作成過程には二名の証人が必要とされており︑これら証人への謝
礼が︑法文上︑明規されていない︒公正証書遺言作成に業として携わるようになってきている司法書士︑弁護士︑あ
るいは信託銀行のコンサルクントなどは︑私的な形であれ︑当然に報酬を請求している︒また︑請求しても当然であ
公正
証書
遺言
に関
する
若干
の疑
問点
にもなりかねないであろうか︒ 私企業のそれとは比肩すべくもない︶︒
三0七
︵︱
‑︱
‑三
九︶
公証人による公正証書遺言の作成費用は安いといっても
( 1 )
四
ろう︒司法書士の場合︑
︵一 三四
0 )
一件につき一万円以上請求しているとも聞く︒素人の場合には︑たとえば東京では五千円某
が相場とか言われている︒しかし︑こうしたことを放置しておいてよいものだろうか︒そのうち︑公証人役場の前に︑
証人になることを業とする半玄人が出現しないとも限らない︒立法論になるが︑フランスのように二人の公証人が作
成過程に立ち入れば︑証人は不要にするといった民法九六九条の改正︑あるいは現行のままとしても︑証人の手当て
を明確化すべきではなかろうか︒勿論︑これは公正証書遺言に特有の問題ではなく︑証人制度のあり方︑ひいては遣
言制度全体を問い直すことになりかねない問題ではあるが⁝⁝︒
東洋
信託
銀行
発行
︒ハ
ンフ
レッ
ト﹁
一度
は考
えて
みた
い遺
言の
話﹂
ニ︱
頁全
文︒
公正証書遺言の管理
これまで︑保管が確実であるという点が︑公正証書遺言の長所の︱つであるといわれてきた︒つまり︑原本が公
( 1 )
証人役場に保管され︑何人も理由なく改甑することが不可能である︒しかし︑その法定保存期間が二0年と短く︑日
本人の寿命が延びている今日︑公正証書遺言を作成した後も遺言者が長期間生存した場合に問題が出てくるといえよ
う︒この点は︑各地の公証人役場で独自に工夫をこらして︑八0
年と
か一
00年間保存に努めているようである︒し
かし︑明文規定で︑保存期間の延長をはかるべきではあるまいか︒
公正証書遺言は︑現在︑全国集中管理が行われていない︒そのため︑たとえばある人が東京と大阪で矛盾する内
容の公正証書遺言を行っていた場合︑後の遺言で先の遺言と抵触する部分を取り消したことになるはずであるが︑そ
れが不明という問題が出てくる︒なお︑東京とか大阪では遺言書のカード化が進められ︑その地区内では集中管理が
関 法 第 三 七 巻 第 五
・ 六 号
1 0 八