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大学生における両親とのアタッチメント関係と 無気力感との関連性

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Rikkyo Clinical Psychology Research 原 著

2017, Vol. 11, 11- 23

立教大学大学院現代心理学研究科 望月 瞳2

Association between university students’ feelings of apathy and attachment relationships with their parents

Hitomi Mochizuki (Graduate school of Contemporary Psychology, Rikkyo University)

大学生における両親とのアタッチメント関係と 無気力感との関連性

1

問 題

「現代の若者は無気力だ」という非難を近年多 く耳にする。内田 (2014) によれば,休学理由の 実態調査において,1989 年度から 1996 年度まで は休学の理由として「積極的理由 ( 本人の主観と は関係なく,休学後大学教育路線に残るもの )」

が最も多かったのに対し,2003 年度以降は「消 極的理由 ( 休学後大学教育路線から離脱するもの で,学業不振,単位がとれないなどの学業上の問 題,意欲減退などが多いと考えられている)」に よる休学が最も多いことが示されている。なお,

退学の理由でも最も多いのが「消極的理由」であ ることも例年示されており (内田,2014),近年で は休学や退学をする学生のなかには無気力化した 学生が多く含まれていると推測される。さらに内 田 (2014) により,留年や休学,退学を経験した

ことのある学生は自殺のリスクが高い群であると いうことも示されている。したがって,無気力化 した学生に対し,彼らが学校に来られないような 状態になる前に支援をしていくことが求めら れる。

大学生の無気力についてはこれまで,大学生の 慢性的な無気力状態を病理的水準としてとらえた スチューデント・アパシーの研究 ( 笠原,1984;

Walters, 1961 笠 原・ 岡 本 訳 1975; 山 田,1990) や,大学生に限定しない青年期の生活感情として の無気力感の研究 ( 下坂,2001) など,さまざま な研究がなされてきた。これらの研究で考えられ てきた無気力のいくつかの要因のなかでも,母 親・父親と子どもとの関係性が無気力状態の背景 にあると論じた研究は多い。例えば,多くのス チューデント・アパシーの事例研究において,無 気力の形成因として学生と両親との不適応的な関 This study examined associations between university students’ feelings of apathy and attachment relationships with their parents. Additionally, we investigated whether the sex of the students and parents (i.e., mother and father) affected such associations differently. A total of 418 university students (204 male and 214 female) completed a questionnaire that measured two types of attachment relationships with their parents—avoidance and anxiety—and their apathy levels. Overall, high levels of avoidance and anxiety towards parents were both associated with high levels of apathy. The relationships were not modulated by the sex of the students or parents. These findings suggest that an intervention aiming to improve attachment relationships with parents will be helpful in treating apathetic students.

Key words : attachment relationships, feelings of apathy, university students, parents

(2)

係性について論じられてきた ( 小川,1992; 土 川,1990;山田,1990 など )。また,下坂 (2001) も,両親やきょうだいからのサポート期待感が低 い学生ほど「無気力感尺度」 (下坂,2001) の下位 尺度の 1 つである「他者不信・不満足」が高いと いうことを示している。これまで行われてきた 様々な無気力研究の知見を総括して考えると,両 親との関係性が適応的でなく,適切に両親からの サポートを得ることができないことが大学生の無 気力の要因の 1 つになっている可能性があると考 えられる。

親子における,サポートを求めたり与えたりす るといった関係性を説明する概念の 1 つにアタッ チメントがある。アタッチメントは,「個体があ る危機的状況に接し,あるいはまた,そうした危 機を予知し,恐れや不安の情動が強く喚起された 時に,特定の他個体への近接を通して,習慣的な 安全の感覚を回復・維持しようとする傾性」と定 義される (遠藤,2005)。危機的状況に遭遇したと きに,他者に助けを求め安心を得ようとする行動 をアタッチメント行動というが,アタッチメント 行動のとり方にも個人差があり,どのようなア タッチメント・スタイルを持つかは人によって異 なっている。他者とのアタッチメント関係は,危 機的状況に遭遇したときに適切にアタッチメント 行動を取ることができ,その結果安心感を得るこ とができるかどうかにより,安定的 (secure) か不 安定的 (insecure) かに分けることができる ( 林,

2010)。なお,安定的,不安定的という言葉は正 確な翻訳ではないことから,本研究においては,

以後,secure を安心な,もしくは安心的,insecure を非安心な,もしくは非安心的と訳して用いる

3

スチューデント・アパシーの概念を提唱した

Walters (1961,笠原・岡本訳,1975) は,戦時中

の兵士たちが,捕虜となっている間に「看護」し てくれる「仲間」がいない場合に完全に無気力状 態になって死亡してしまうということや,捨て子 の赤ん坊が母親の代理となる者が見つかるまでの 間,仮眠状態や無食欲になり深刻な場合では死ん でしまうという例から,「母親的」な保護を与え

てくれる者の不在とアパシーとの関連性について 示した。これは,アタッチメント欲求が満たされ ず個体の安全が脅かされる状況において人が無気 力状態に陥ることを示唆していると考えられ,無 気力とアタッチメントとの関わりが推測される。

これまでの無気力研究の知見と併せて考える と,両親に対し適切にアタッチメント行動をとり アタッチメント欲求を満たしてもらえるかどう か,すなわち両親とのアタッチメント関係が安心 的であるか非安心的であるかということは大学生 の無気力に大きな影響を与えていると考えられ,

その関連性を検討することは大学生の無気力の要 因を理解する上で重要であると思われる。しか し,これまでの無気力と親子関係との関連につい ての研究では,親子のアタッチメント関係に焦点 を当てた研究はほとんどない。そこで本研究で は,両親とのアタッチメント関係が無気力とどの ように関連しているのかを,実証的な手法を用い て検討する。

鉄島 (1993) は,親子関係と大学生のアパシー との関連性における男子学生と女子学生による差 異や,母親と父親による差異について示してい る。アパシー傾向尺度 ( 鉄島,1993) 得点と,両 親に対して抱いているイメージや家族メンバー同 士の心理的距離感との関連を男女別に検討した結 果,女子では母親との心理的距離が遠いと感じて いるほどアパシー傾向が強いことが示された。一 方,男子では母親との心理的距離はアパシー傾向 と関連していなかった。鉄島 (1993) は,これら の結果から,男女それぞれ異なった視点から母親 イメージを検討することの必要性を指摘して いる。

また,鉄島 (1993) では男女ともに父親との心

理的距離とアパシー傾向との間に有意な関連は示

されておらず,親子関係と無気力感との関連性に

は母親と父親によって差異があるということも示

された。このことから,大学生の親子関係とアパ

シーとの関連性は男子学生と女子学生,また母親

と父親によって異なると考えられる。しかし,大

学生の無気力にとって母親と父親のどちらとの関

(3)

係性が重要であるか,また男子学生と女子学生の どちらが両親との関係性から影響を受けやすいの かを比較検討した研究は少ない。そこで,アタッ チメント関係に焦点を当てて捉えた両親との関係 性と,無気力との関連性において,男子学生と女 子学生との間に,また母親と父親との間にどのよ うな差異があるのかを検討する。これにより,無 気力状態の学生を支援していくための一助となる 新たな知見を得ることができると考える。なお,

無気力現象の年齢層の拡大を踏まえると,青年期 全体に共通する心性として無気力を捉えることが 有効と考えられる ( 下坂,2001) ことから,本研 究においては青年期の生活感情としての無気力感 という観点から検討を行う。

以上のことから本研究では,以下の 2 つを検討 することを目的とする。(a) 大学生を対象として,

両親とのアタッチメント関係と無気力感との間に 関連があるかどうかを検討する。(b) 両親とのア タッチメント関係と無気力感との関連性が男子学 生と女子学生,また母親と父親によって異なって いるかどうかを検討する。

また,本研究の仮説は以下の 2 つとする。(a) 両親と非安心なアタッチメント関係をもつ大学生 は,両親と安心なアタッチメント関係をもつ学生 よりも無気力感が強い。(b) 両親とのアタッチメ ント関係と無気力感との関連性は男子学生と女子 学生,また母親と父親によって異なっている。

方 法 調査対象者と調査時期

首都圏の私立・国立大学の学生 513 名に質問紙 を実施し,有効回答数は418 名であった (有効回 答率81%)。調査対象者のうち男性は 204 名,女性 は214 名であった。学年は 1 ~ 4 年,年齢は18歳

~28歳であった。対象者のうち男性の平均年齢 は 19.6 歳 (SD =1.37), 女性の平均年齢は 19.5 歳 ( SD =1.29) であり,対象者全体の平均年齢は 19.6 歳 (SD =1.33) であった。

2015 年 4 月~ 5 月に,大学の複数の授業で質

問紙を配布し,その場で回収した。

使用した質問紙

フェイスシートで性別,所属する学部学科,学 年,年齢を尋ねた後,以下の 71 項目に回答を求 めた。

 両親とのアタッチメント関係 中尾・加藤 (2004)

がBrennan, Clark, & Shaver (1998) の「親密な対人 関 係 体 験 尺 度 (Experiences in Close Relationships inventory ; ECR)」 を日本語に翻訳して作成した

「日本語版ECR」を一部修正したものを用いた。

全 26 項目の回答を 7 件法で求めた。 日本語版 ECR は「親密性の回避」(17 項目 ) と「見捨てら れ不安」 (9 項目 ) の 2 つの下位尺度で構成されて いる。「親密性の回避」はアタッチメント対象と の親密な関係を回避する程度を示す因子である。

また,「見捨てられ不安」はアタッチメント対象 から見捨てられるかもしれないという不安の程度 を示す因子である。「親密性の回避」尺度と「見 捨てられ不安」 尺度は Bartholomew & Horowitz (1991) の関係尺度 (Relationship ques tion naire ; RQ) の 4 つのアタッチメント・スタイルとの対応が示 されており,妥当性が確認されている ( 中尾・加 藤,2004)。また,中尾・加藤 (2004) は「親密性 の回避」について

α = .91,「見捨てられ不安」に

ついて

α = .87

を得ており,信頼性が保証されて

いる。元来ECR は恋人に対するアタッチメント・

スタイルの 2 因子を測定するための尺度である が,本研究では母親・父親とのアタッチメント関 係を測定するため,アタッチメント対象を母親と 父親のそれぞれに改編し,父母別に測定を行っ た。

 無気力感 下坂 (2001)

が作成した,青年期の 生活感情としての無気力感を測定する「無気力感 尺度」(全19項目) を用いた。「無気力感尺度」は,

「現在から将来にかけての自分自身が把握できな いこと」を指す「自己不明瞭」( 全 9 項目 ),「他 者に対する不信感や不満感」を指す「他者不信・

不満足」( 全 6 項目 ),「日常生活での精神・身体

的な疲労感」を指す「疲労感」( 全 4 項目 ) の 3

(4)

つの下位尺度により構成されている。下坂 (2001) は無気力感尺度について,中学・高校生では中・

高生版無気力感尺度 (笠井・三浦,1997),大学生 ではアパシー傾向 ( 鉄島,1993),自我同一性 ( 宮 下,1987),外的統制 ( 鎌原・樋口・清水,1982) との相関を示しており,妥当性を確認している。

また,無気力感尺度のそれぞれの下位尺度におい てα = .76 ~ .84 が得られており,信頼性が確認さ れている。

なお,これらの尺度を含めた質問紙は (a) 母親 をアタッチメント対象に設定した日本語版 ECR,

(b) 無気力感尺度,(c) 父親をアタッチメント対象 に設定した日本語版ECR の順序,もしくは (a) と (c) を入れ替えた順序の 2 パターンで作成し,調 査対象者間でカウンター・バランスをとって実施 した

4

結 果

母親・父親をアタッチメント対象に設定した 日本語版ECRの因子構造

最初に男女別に,母親・父親それぞれをアタッ チメント対象に設定した日本語版ECR の因子分 析を主因子法,プロマックス回転にて行った結 果,因子構造に性別による差異は見られなかっ た。そのため,次に調査対象者全体のデータを用 いて,母親・父親それぞれをアタッチメント対象 に設定した日本語版 ECR の因子分析を再度主因 子法,プロマックス回転にて行った。因子負荷量 が.40 以上を示すという基準にしたがい,母親を アタッチメント対象に設定した日本語版 ECR,

父親をアタッチメント対象に設定した日本語版 ECR の両方において,項目 19 ( 私は,( 母親/父

親に ) 見捨てられるのではないかと心配になるこ

とはほとんどない。 ) を分析から除外した。

残った全 25 項目で再び母親・父親ごとに日本 語版 ECR の因子分析を主因子法,プロマックス 回転にて行った。その結果を Table 1,Table 2 に 示した。 2 つの因子を構成する項目には,母親と 父親とで差異は見られず,それぞれの項目は中

尾・加藤 (2004) によって得られた 2 因子に含ま れていた項目と概ね一致していたため,第 1 因子 ( 全16項目 ) を「親密性の回避」,第 2 因子 ( 全 9

項目 ) を「見捨てられ不安」とした。

信頼性を検討するため

α

係数を算出したとこ ろ,母親をアタッチメント対象に設定した日本語 版 ECR では「親密性の回避」因子で

α = .95,「見

捨てられ不安」因子で

α = .79

を得た。また,父 親をアタッチメント対象に設定した日本語版ECR では「親密性の回避」因子で

α = .95,「見捨てら

れ不安」因子でα = .79 を得た。

ECR下位尺度得点および無気力感尺度得点 の性差

 ECR 下位尺度得点の性差 母親・父親それぞ

れに対する ECR の下位尺度得点に男女で差があ るかどうかを調べるために,対応のない t検定を 行った。なお,母親・父親それぞれに対するECR の下位尺度得点にはそれぞれの合計得点を項目数 で除した値を用いた。その結果,母親に対する親 密性の回避 (t (416) = 7.42, p < .001) と,母親に対 する見捨てられ不安 (t (416) = 2.50, p < .05),父親 に対する見捨てられ不安 (t (416) = 3.66, p < .001) に性差が認められ,それらの全てにおいて男性の 方が女性よりも得点が高かった。しかし,父親に 対する親密性の回避には性差は認められなかった ( t (416) = 1.24, ns ) 。母親・父親をアタッチメント 対象に設定した ECR の下位尺度得点の記述統計

量を Table 3 に示した。

 無気力感尺度得点の性差 次に,男女で無気力

感尺度得点に差があるかどうかを調べるために対 応のない t 検定を行った

5

。なお,無気力感尺度 得点には合計得点を項目数で除した値を用いた。

その結果,無気力感尺度得点に性差は認められな

かった (t (416) = 0.15, ns )。無気力感尺度得点の記

述統計量をTable 4 に示した。

(5)

Table 1 母親をアタッチメント対象に設定した日本語版ECRの因子分析結果

F1 F2

12 私は母親に何でも話す。( R) .88 -.14

6私は,あまり人に話さないような自分の考えや気持ちを母親に話すことに抵抗がない。

( R) .87 -.15

15 私は母親になぐさめや元気づけたりすることをふくめ,いろんなことで助けを求める。

( R) .86 -.16

3私は,母親になぐさめやアドバイス,助けを求めることに抵抗がない。( R) .83 -.10 13 私は母親と親密になることがとても快い。( R) .82 -.10 2私はたいてい, 自分の問題や心配事を母親と話し合う。( R) .81 -.16 17 私は母親とあまりに親密になることがどちらかというと好きではない。 .76 .13 20 私は母親とあまり親密にならないようにしている。 .73 .21

1私は母親に心を開くのに抵抗を感じる。 .72 .13

8心の奥底で何を感じているかを母親に見せるのはどちらかというと好きではない。 .70 .01 18 私は母親に頼ることに抵抗がない。( R) .69 -.04 14 困ったとき母親に助けを求めると,何かちょっとは (状況が)よくなる。( R) .68 -.05 25 私は, 母親が非常に親密になりたがってくると, いごこち悪く感じる。 .60 .24 21 私は母親があまりに自分と親密になってくると, とてもイライラしてしまう。 .58 .17 5私は自分が母親に依存することを許すことがなかなかできないと思う。 .57 .10 9母親が私と親密になろうとするやいなや,私は自分から母親との距離を取ろうとしている

ことに気付く。 .55 .33

24 私は (母親に) 見捨てられるのではないかと心配だ。 .02 .69 16 私はひとりぼっちになってしまうのではないかと心配する。 -.10 .64 22 私があまりにも気持ちの上で母親と完全に一つになることを求めるために,ときどき母親

はうんざりして私から離れていってしまう。 -.06 .64

26 私が母親ととても親密になりたいと強く望むために,ときどき母親はうんざりして私から

離れていってしまう。 .10 .63

23 私が親密になりたいと望むほどには母親は私と親密になりたいと思っていないだろう。 .13 .56 4 私が母親のことを大切に思うほどには,母親が私のことを大切に思っていないのではない

かと心配する。 .02 .53

11 私は,母親を失うのではないかとけっこう心配している。 -.19 .52 7 私はいつも,母親が私に対していだいてくれる気持ちが,私が母親に対していだいている

気持ちと同じくらい強ければいいのになあと思う。 -.43 .46 10 私は母親と親密になりたいのだが,いつの間にかついつい後ずさりしていることが多い。 .33 .44 .37 Table 1

母親をアタッチメント対象に設定した日本語版ECRの因子分析結果

項目

因子間相関 ) F1 : 親密性の回避, F2 : 見捨てられ不安。( R) は逆転項目。

因子

(6)

Table 2 父親をアタッチメント対象に設定した日本語版ECRの因子分析結果

F1 F2

15 私は父親になぐさめや元気づけたりすることをふくめ,いろんなことで助けを求める。

(R) .82 -.16

17 私は父親とあまりに親密になることがどちらかというと好きではない。 .82 .10

12 私は父親に何でも話す。(R) .81 -.18

13 私は父親と親密になることがとても快い。(R) .80 -.09 3私は,父親になぐさめやアドバイス,助けを求めることに抵抗がない。(R) .80 -.11

1私は父親に心を開くのに抵抗を感じる。 .79 .05

8心の奥底で何を感じているかを父親に見せるのはどちらかというと好きではない。 .77 -.06 2私はたいてい,自分の問題や心配事を父親と話し合う。(R) .75 -.19 6私は,あまり人に話さないような自分の考えや気持ちを父親に話すことに抵抗がない。

(R) .74 -.08

20 私は父親とあまり親密にならないようにしている。 .73 .15 25 私は,父親が非常に親密になりたがってくると,いごこち悪く感じる。 .68 .19 21 私は父親があまりに自分と親密になってくると,とてもイライラしてしまう。 .67 .19

18 私は父親に頼ることに抵抗がない。(R) .66 .05

14 困ったとき父親に助けを求めると,何かちょっとは (状況が)よくなる。(R) .65 -.05 9父親が私と親密になろうとするやいなや,私は自分から父親との距離を取ろうとしている

ことに気付く。 .63 .21

5私は自分が父親に依存することを許すことがなかなかできないと思う。 .53 .16 26 私が父親ととても親密になりたいと強く望むために,ときどき父親はうんざりして私から

離れていってしまう。 -.05 .71

24 私は (父親に) 見捨てられるのではないかと心配だ。 .03 .71 22 私があまりにも気持ちの上で父親と完全に一つになることを求めるために,ときどき父親

はうんざりして私から離れていってしまう。 -.06 .63

16 私はひとりぼっちになってしまうのではないかと心配する。 -.03 .60 4私が父親のことを大切に思うほどには,父親が私のことを大切に思っていないのではない

かと心配する。 .07 .53

23 私が親密になりたいと望むほどには父親は私と親密になりたいと思っていないだろう。 .13 .50 7私はいつも,父親が私に対していだいてくれる気持ちが,私が父親に対していだいている

気持ちと同じくらい強ければいいのになあと思う。 -.36 .48 10 私は父親と親密になりたいのだが,いつの間にかついつい後ずさりしていることが多い。 .29 .45 11 私は,父親を失うのではないかとけっこう心配している。 -.08 .41 .26 Table 2

因子 父親をアタッチメント対象に設定した日本語版ECRの因子分析結果

項目

) F1 : 親密性の回避, F2 : 見捨てられ不安。( R) は逆転項目。

因子間相関

(7)

ECR下位尺度得点と無気力感尺度得点との関連

ECR の下位尺度得点 ( 親密性の回避・見捨てら れ不安) と無気力感尺度得点の相関係数を男女別 に算出した。男性の分析結果をTable 5 に,女性 の分析結果をTable 6 に示した。男性・女性とも に, 全ての変数間に有意な正の相関が認めら れた。

母親・父親に対する親密性の回避と無気力感 との関連性

母親,父親に対する親密性の回避と無気力感と の関連性と,その関連性の女子学生と男子学生,

母親と父親による差異を調べるために,無気力感 尺度得点を目的変数にした階層的重回帰分析を

Table 3 ECR下位尺度得点の平均値と標準偏差

男性 3.8 (1.16) 2.4 (0.76) 4.1 (1.20) 2.4 (0.67)

女性 2.9 (1.19) 2.2 (0.78) 3.9 (1.31) 2.1 (0.67)

全体 3.3 (1.25) 2.3 (0.78) 4.0 (1.26) 2.3 (0.68)

親密性の回避 見捨てられ不安 親密性の回避 見捨てられ不安 Table 3

ECR下位尺度得点の平均値と標準偏差

ECR (母親) ECR (父親)

注) ( ) 内は標準偏差。

Table 4 無気力感尺度得点の平均値と標準偏差

平均値 標準偏差

男性 3.2 0.75

女性 3.2 0.77

全体 3.2 0.76

Table 4

無気力感尺度得点の平均値と標準偏差

Table 5 男性の各変数 (ECR下位尺度得点・無気力感尺度得点) 間の相関

無気力感尺度得点 .24 *** .34 *** .25 *** .38 ***

親密性の回避 () .27 *** .47 *** .23 ***

見捨てられ不安 () .34 *** .64 ***

親密性の回避 () .15 *

) *p<.05, **p<.01, ***p<.001.

Table 5

男性の各変数(ECR下位尺度得点・無気力感尺度得点)間の相関 親密性の

回避 ()

見捨てられ 不安 ()

親密性の 回避 ()

見捨てられ 不安 ()

Table 6 女性の各変数 (ECR下位尺度得点・無気力感尺度得点) 間の相関

無気力感尺度得点 .34 *** .44 *** .28 *** .47 ***

親密性の回避 () .28 *** .39 *** .27 ***

見捨てられ不安 () .17 ** .55 ***

親密性の回避 () .27 ***

) *p<.05, **p<.01, ***p<.001.

Table 6

女性の各変数(ECR下位尺度得点・無気力感尺度得点)間の相関 親密性の

回避 ()

見捨てられ 不安 ()

親密性の 回避 ()

見捨てられ 不安 ()

(8)

行った。まず,第 1 ステップに母親に対する親密 性の回避を,第 2 ステップに父親に対する親密性 の回避を,第 3 ステップには性別のダミー変数を 説明変数に投入した。さらに,第 4 ステップには 母親に対する親密性の回避と性別との交互作用項 と,父親に対する親密性の回避と性別との交互作 用項を説明変数に投入した。階層的重回帰分析の

結果は Table 7 に示した。なお,母親に対する親

密性の回避,父親に対する親密性の回避,性別の 各変数には中心化を行った。

その結果,第 1 ステップにおいて,母親に対す る親密性の回避を投入した後の R

2

の変化量は有 意であり (F (1,416) = 33.90, p < .001),母親に対す る親密性の回避と無気力感の有意な正の連関が認 められた (β = .27, p < .001)。

次に,第 2 ステップにおいて,父親に対する親 密性の回避を投入した後の R

2

の変化量は有意で あった (F (1,415) = 12.18, p < .001)。また,母親に 対する親密性の回避の無気力感との有意な正の連 関はそのままに (β = .20, p < .001),父親に対する 親密性の回避と無気力感の有意な正の連関が認め られた (β = .18, p < .001)。

次に,第 3 ステップにおいて,性別のダミー変 数 を 投 入 し た 後 の R

2

の 変 化 量 は 有 意 で あ っ た (F (1,414) = 3.96, p < .05)。また,母親に対する

親密性の回避 (β= .24, p < .001),父親に対する親 密性の回避 (β= .17, p < .01) の無気力感に対する有 意な正の連関はそのままに,性別が無気力感に対 して有意な正の連関を示し (β= .10, p < . 05),女性 の方が男性よりも無気力感が高いことが示さ れた。

次に,第 4 ステップにおいて,母親に対する親 密性の回避と性別との交互作用項,父親に対する 親密性の回避と性別との交互作用項を投入した後 の R

2

の変化量は有意でなく (F (2,412) = 0.70, ns ),

母親に対する親密性の回避と性別の交互作用項 (β = .06, ns),父親に対する親密性の回避と性別の 交互作用項 (β = .00, ns) の無気力感に対する有意 な連関は認められなかった。

さらに,ステップ 3 における母親に対する親密 性の回避の偏回帰係数と父親に対する親密性の回 避の偏回帰係数に差があるかどうかを調べるため に有意水準 5% でZ 検定を行った結果,母親に対 する親密性の回避の偏回帰係数と父親に対する親 密性の回避の偏回帰係数には有意な差は認められ なかった。

母親・父親に対する見捨てられ不安と無気力感 との関連性

母親・父親に対する見捨てられ不安と無気力感

Table 7 父母に対する親密性の回避と無気力感との関連性についての階層的重回帰分析結果

親密性の回避 () .27 *** .20 *** .24 *** .23 ***

親密性の回避 () .18 *** .17 ** .17 **

性別 .10 * .10

親密性の回避 () ×性別 .06

親密性の回避 () ×性別 -.01

.08 .10 .10 .10

.08 *** .03 *** .01 * .00

Table 7

父母に対する親密性の回避と無気力感との関連性についての階層的重回帰分析結果 標準化偏回帰係数 (β)

) *p<.05, **p<.01, ***p<.001.

step1 step2 step3 step4

(9)

との関連性と,その関連性の学生と親の性別によ る差異を調べるために,無気力感尺度得点を目的 変数にした階層的重回帰分析を行った。親密性の 回避と同様に,第 1 ステップに母親に対する見捨 てられ不安,第 2 ステップに父親に対する見捨て られ不安,第 3 ステップに性別のダミー変数,第 4 ステップに母親に対する見捨てられ不安と性別 の交互作用項,父親に対する見捨てられ不安と性 別の交互作用項をそれぞれ説明変数として投入し た。階層的重回帰分析の結果はTable 8 に示した。

なお,母親に対する見捨てられ不安,父親に対す る見捨てられ不安,性別の各変数には中心化を 行った。

その結果,第 1 ステップにおいて,母親に対す る見捨てられ不安を投入した後の R

2

の変化量は 有意であり (F (1,416) = 73.57, p < .001),母親に対 する見捨てられ不安と無気力感の有意な正の連関 が認められた (β = .39, p < .001)。

次に,第 2 ステップにおいて,父親に対する見 捨てられ不安を投入した後の R

2

の変化量は有意 であった (F (1,415) = 28.85, p < .001)。また,母親 に対する見捨てられ不安と無気力感との有意な正 の連関はそのままに (β = .21, p < .001),父親に対 する見捨てられ不安と無気力感との有意な正の連 関が認められた (β = .29, p < .001)。

次に,第 3 ステップにおいて,性別のダミー変 数 を 投 入 し た 後 の R

2

の 変 化 量 は 有 意 で あ り (F (1,414) = 3.93, p < .05),母親に対する見捨て られ不安 (β = .21, p < .001),父親に対する見捨て られ不安 (β = .31, p < .001) の無気力感に対する有 意な正の連関はそのままに,性別が無気力感に対 し有意な正の連関を示し (β = .09, p < .05), 女性 の方が男性よりも無気力感が高いことが示され た。

次に,第 4 ステップにおいて,母親に対する見 捨てられ不安と性別の交互作用項,父親に対する 見捨てられ不安と性別の交互作用項を投入した後 の R

2

の変化量は有意でなく (F (2,412) = 0.01, ns ) , 母親に対する見捨てられ不安と性別の交互作用項 (

β = .05, ns

),父親に対する見捨てられ不安と性別 の交互作用項 (β = .03, ns) の無気力感に対する有 意な連関は認められなかった。

さらに,ステップ 3 における母親に対する見捨 てられ不安の偏回帰係数と父親に対する見捨てら れ不安の偏回帰係数に差があるかどうかを調べる ために有意水準 5%で Z検定を行った結果,母親 に対する見捨てられ不安の偏回帰係数と父親に対 する見捨てられ不安の偏回帰係数には有意な差は 認められなかった。

Table 8 父母に対する見捨てられ不安と無気力感との関連性についての階層的重回帰分析結果

見捨てられ不安 () .39 *** .21 *** .21 *** .21 ***

見捨てられ不安 (父) .29 *** .31 *** .31 ***

性別 .09 * .09 *

見捨てられ不安 (母) ×性別 .05

見捨てられ不安 (父) ×性別 .03

.15 .20 .21 .21

.15 *** .06 *** .01 * .01

Table 8

父母に対する見捨てられ不安と無気力感との関連性についての階層的重回帰分析結果 標準化偏回帰係数 (β)

注) *p<.05, **p<.01, ***p<.001.

step1 step2 step3 step4

(10)

考 察

本研究の第 1 の目的は,大学生を対象として,

両親とのアタッチメント関係と無気力感とに関連 があるかどうかを検討することであった。本研究 では,母親・父親に対するアタッチメント関係と 大学生の無気力感との関連性の検討のために,

ECR の下位尺度である親密性の回避と見捨てら れ不安を用いて階層的重回帰分析を行った。その 結果,母親に対する親密性の回避と父親に対する 親密性の回避,母親に対する見捨てられ不安と父 親に対する見捨てられ不安のすべてにおいて,得 点が高いほど無気力感が高いことが示された。本 研究の調査対象者においては,父母に対する見捨 てられ不安得点の平均はともに2.3 と得点が低く 分布しているため,本研究では親密性の回避と見 捨てられ不安の 2 つの次元を用いたアタッチメン ト・スタイルの 4 分類による検討を行うことがで きなかった。したがって,本研究の結果は「両親 とのアタッチメント関係が非安心な大学生は,両 親とのアタッチメント関係が安心な学生よりも無 気力感が高い」という仮説 (a) を部分的に支持す るのみにとどまった

6

。今後は実際に休学や退学 をしたことのある学生や講義を休みがちな学生な ど,父母とのアタッチメント関係がより非安心的 と推測される群も含めたより多様なサンプルを対 象にし,アタッチメント・スタイルの 4 分類によ る検討をしていくことが望まれる。

今回の結果から,大学生が無気力状態になる背 景には両親との非安心なアタッチメント関係があ るという可能性が考えられる。青年期は,友人や 恋人などの両親以外の対象と接する時間が増える ことで,友人や恋人同士で親密な関係を築く時期 であると考えられており ( 安藤・ 遠藤,2005),

Hazan & Zeifman (1994) においては,児童期から 思春期の間には,主要なアタッチメント対象が両 親から友人に移行することが示されている。しか し片岡・園田 (2010) は,親をアタッチメント対 象として選択する割合は,高校生よりも大学生の 方が高い傾向にあることを示している。つまり,

青年期前期になるとそれまで主たるアタッチメン ト対象であった両親から分離し,友人や恋人など の新たなアタッチメント関係がより重要な位置を 占めるようになるが,青年期後期ごろには青年は 両親との関係性を見直すようになり,再び両親を 主要なアタッチメント対象として選択するように なると考えられる。したがって,両親を主要なア タッチメント対象として捉え直す大学時代に,両 親に対して適切にアタッチメント行動がとれず,

アタッチメント欲求を満たすことができないこと が大学生の無気力感を強めている可能性がある。

日常であったさまざまな悩みや問題について容易 に助けを求めることができ,それによって安心感 を得られるような良好な関係性を両親と築いてい ることが大学生の無気力化を防ぐためには重要で あるのかもしれない。

親子関係をアタッチメントに焦点を当てて捉え た本研究の結果から,無気力感はアタッチメント と 関 連 の あ る 感 情 で あ る こ と が 推 測 さ れ る。

Dozier, Stovall & Albus (2008) によれば,非安心型 のアタッチメント・スタイルの 1 つである回避型 ととらわれ型はそれぞれ,対象に対するアタッチ メント欲求の表現を最小化する方略と,最大化す る方略をとっているとされている。最小化方略で は,自己の感情やアタッチメント対象との問題か ら注意が防衛的に逸らされているため,不安や苦 痛などの自己内部の問題が行動上の問題となって 表出される外向性次元の障害に結びつきやすいと 考えられている。反対に最大化方略は,自己の感 情やアタッチメント対象との問題に過度に注意が 向けられているため,不安や苦痛そのものが症状 となって現れる内向性次元の障害と結びつきやす いと考えられている。従来の無気力研究には無気 力の行動面に注目するものと,生活感情としての 側面に注目するものとがなされており ( 下坂,

2001),無気力には行動的側面と心理的側面があ

ると考えられる。ECR における親密性の回避が

高い場合は回避型アタッチメント・スタイルに相

当し,見捨てられ不安が高い場合はとらわれ型ア

タッチメント・スタイルに相当する ( 中尾・加

(11)

藤,2004) ことから,ECR における親密性の回避 は無気力の外向性次元の障害に結びつき,見捨て られ不安は無気力の内向性次元の障害と結びつい ていることが推測される。例えば,親密性の回避 が高い者は,アタッチメント対象との問題につい て否認し,ひきこもるなどの行動化を起こし,そ の結果として無気力感情が強くなる傾向があるの かもしれない。反対に,見捨てられ不安が高い者 は,アタッチメント対象との関係に依存的である ために,不安や苦痛が過度に意識され,心理的に 疲弊しやすく,無気力感情を強く経験する傾向が あるのかもしれない。しかし非安心なアタッチメ ントが無気力感を引き起こすメカニズムについて は,今回の質問紙調査では捉えられないため,今 後, さらに実証的に検討をしていく必要があ ろう。

本研究の第 2 の目的は,両親とのアタッチメン ト関係と無気力感との関連性が,男子学生と女子 学生,また母親と父親によって異なっているかど うかを検討することであった。分析の結果,母 親・父親に対する親密性の回避と無気力感との関 連性と,見捨てられ不安と無気力感との関連性に は,男子と女子,また母親と父親による差異は見 られなかった。この結果は仮説 (b) を支持せず,

鉄島 (1993) とも異なっていた。これは測定尺度 の違いによると考えられる。鉄島 (1993) は無気 力感を授業や学業,学生生活に対する意欲減退を 表すアパシー傾向を用いて測定したが,本研究で は無気力感を青年が日常生活の様々な場面で感じ る生活感情の 1 つとしてとらえた下坂 (2001) の 尺度を使用した。また,鉄島 (1993) は両親との 心理的距離を測定したのに対し,本研究では両親 とのアタッチメント関係を測定した。その上,鉄 島 (1993) は心理的距離を,イメージを用いて測 定したのに対し,本研究ではアタッチメント行動 のとり方という,より具体的で行動的な側面を測 定しており,測定方法も異なっていた。

なお,無気力感尺度得点の平均値では性差が認 められなかったが,階層的重回帰分析では性別と 無気力感との有意な連関が認められた。これは,

母親・父親に対する親密性の回避得点と見捨てら れ不安得点のいずれにおいても女性よりも男性の 方が高く,それらの得点が重回帰分析において統 制されたためであると考えられる。しかし,無気 力感を規定する要因は両親とのアタッチメント関 係以外にも複数あることが推測される。従って,

今後はそれらの要因も含め,性別が大学生の無気 力感に影響しているのかどうかを検討する必要が ある。

本研究により,両親との関係性と大学生の無気 力感との関連性を,新たにアタッチメントという 観点から明らかにした。さらに,その関連性は性 差やアタッチメント対象が母親か父親かにかかわ らず見られることを示した。下山 (1997) は,無 気力状態の学生への支援において本人にのみ個人 的に心理療法を行うことの限界について指摘し,

学生本人への直接的な働きかけに加えて家族など を含めた関係者を通して間接的に学生本人に働き かけていくことが重要であると述べている。今回 得られた知見は両親への介入の重要性を示唆する ものであり,両親への介入において,特にアタッ チメント関係に焦点を当てて働きかけていくこと が重要であることを新たに示した。例えば,無気 力状態の学生の両親に対して,子どもが大学生活 で抱える不安やストレスを理解し彼らに寄り添う ように働きかけ,学生と両親が安心して頼り頼ら れる関係性を持てるようサポートをしていくこと は,無気力状態の学生への有効なアプローチとな るかもしれない。そしてこのアプローチは学生の 性別に関わらず,両方の親に行うことが重要であ ろう。

最後に,本研究の限界と今後の課題について述 べる。第 1 に,本研究は相関研究であるため,両 親とのアタッチメント関係と大学生の無気力感の 間の因果関係を示すことができなかった。今後は 縦断的な方法を用いて,両者の因果関係を検討し ていくことが求められる。

第 2 に,本研究では大学生の両親との非安心な

アタッチメント関係と無気力感との関連性につい

て調査したが,アタッチメントが組織化されてい

(12)

ない無秩序型を含めた検討は行っていない。遠藤 (2007) によれば,精神病理や問題行動の発生を考 える上では,アタッチメントが安心的か否かとい うことよりも,組織化されているか否かが重要で あると考えられており,無秩序型を含めて無気力 感との関連性の検討を行う必要があると考えられ る。質問紙調査では無秩序型を捉える事は困難で あるため,今後は面接法などを用いて検討するこ とが望まれる。

第 3 に,本研究では両親とのアタッチメント関 係以外の,大学生の無気力感に影響を与える要因 は検討していない。例えばアイデンティティの発 達やパーソナリティ特性などの個人内の要因や,

友人や恋人などの両親以外の対象とのアタッチメ ント関係などの要因である。本研究では両親との アタッチメント関係と無気力感との直接的な関連 性を検討したが,上記に挙げたような要因がこの 2 つを媒介している可能性がある。今後は両親と のアタッチメント関係以外の要因を含め,大学生 の無気力感のより包括的な因果モデルを確立する ことが課題である。

本研究の第 4 の限界は,データの収集が全て大 学の講義内に行われたという点である。すでに休 学をしている学生や講義に出席していない学生に 調査を依頼することは困難であるため,本研究で は大学の講義に出席している学生のみを対象とし た。しかし,大学生活に参加している学生と実際 に休学や退学をした学生や講義を休みがちな学生 とでは,両親とのアタッチメント関係と無気力感 との関連性に相違が見られる可能性がある。した がって今後は,実際に休学や退学をしたことのあ る学生,また,講義を休みがちな学生など,より 無気力感の高い群を含めて検討をしていくことが 望まれる。

脚 注

1. 本研究は,立教大学現代心理学部心理学科に 提出した卒業論文 (2015年度) の一部を加筆・

修正したものである。

2. 謝辞

   本研究に際して,立教大学の林もも子教授 から丁寧かつ熱心なご指導を賜りました。ま た,立教大学の中山真里子特任准教授から統 計解析等に関して様々なご指導を頂きまし た。ここに感謝の意を表します。

3. Personal communication, 2016 年 5 月.

4. (a) 母親をアタッチメント対象に設定した日

本語版 ECR と (c) 父親をアタッチメント対象 に設定した日本語版 ECR が連続することに よって一方の尺度の回答にバイアスが生じる のを防ぐため,(a) と (c) が隣り合うことのな いよう,間に (b) 無気力感尺度を入れた順序 にした。

5. 父母に対する親密性の回避と,父母に対する 見捨てられ不安それぞれとの関連性を,無気 力感尺度の 3 つの下位尺度である「自己不明 瞭」・「他者不信・不満足」・「疲労感」ごとに 階層的重回帰分析によって検討した結果,親 密性の回避・見捨てられ不安ともに step3 に おいて性別の主効果にのみ 3 下位尺度で結果 に差異が認められたが,その他の要因におい て差異が認められなかったため, 3 下位尺度 で結果に大きな差異は無いと判断し,本研究 では無気力感尺度全体を従属変数として分析 を行った。

6. ECR とRQ (Bartholomew & Horowitz, 1991) の 4 つのアタッチメント・スタイルとの対応関 係 ( 中尾・加藤,2004) から,親密性の回避 と見捨てられ不安がともに低い群がアタッチ メント対象と安心なアタッチメント関係を持 ち,親密性の回避と見捨てられ不安のいずれ か,もしくは両方が高い群が非安心なアタッ チメント関係を持っていると考えられる。

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  2016. 5. 9 受稿,2016. 6. 17 受理   

Table 1 母親をアタッチメント対象に設定した日本語版ECR の因子分析結果 F1 F2 12 私は母親に何でも話す。 ( R) .88 -.14 6 私は,あまり人に話さないような自分の考えや気持ちを母親に話すことに抵抗がない。 ( R) .87 -.15 15 私は母親になぐさめや元気づけたりすることをふくめ,いろんなことで助けを求める。 ( R) .86 -.16 3 私は,母親になぐさめやアドバイス,助けを求めることに抵抗がない。 ( R) .83 -.10 13 私は母親と親密になることがとて
Table 2 父親をアタッチメント対象に設定した日本語版ECR の因子分析結果 F1 F2 15 私は父親になぐさめや元気づけたりすることをふくめ,いろんなことで助けを求める。 (R) .82 -.16 17 私は父親とあまりに親密になることがどちらかというと好きではない。 .82 .10 12 私は父親に何でも話す。 (R) .81 -.18 13 私は父親と親密になることがとても快い。 (R) .80 -.09 3 私は,父親になぐさめやアドバイス,助けを求めることに抵抗がない。 (R) .80 -.

参照

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