単一契約における一部無効の判断方法
著者 近藤 雄大
雑誌名 同志社法學
巻 60
号 7
ページ 539‑574
発行年 2009‑02‑28
権利 同志社法學會
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000011648
単一契約における一部無効の判断方法五三九同志社法学 六〇巻七号
単一契約における一部無効の判断方法
近 藤 雄 大
(三五五七)
はじめに
「部行民法制定当時から全無は効と対比し言及してきた現説一明部無効」は日本民法に文学で規定されていないが、。
議論の中心は、一部無効の問題を解釈する基準をいかにするか、すなわち、当事者の推定的意思によるべきか、仮説的
意思に基づいて判断すべきかという点である。他方で、その前提となる要件論については意識的な議論が十分には行われてこなかった (
かの用である。一部無効判て断は、無効にならな有い。討しかし、要件論を検すおることは、次の点に 1)
った部分を有効な契約として維持させることを意味するから、有効な契約内容を形成することと同義であるといえる。これは、当事者の締結した契約への介入という側面を有するため、市民法の大原則である私的自治の原則あるいは契約
自由の原則と対立する危険性をはらんでいる。そのため、裁判官による契約改訂の限界付けを行うためにも、一部無効
単一契約における一部無効の判断方法五四〇同志社法学 六〇巻七号
の判断対象となる法律行為を明確にする点である。そこで、本稿では、一部無効の問題を「法律行為の一部の無効が法
律行為全体にいかなる影響を及ぼすか」との視点でとらえ、一部の無効が法律行為全体に影響を及ぼすための要件を中心に検討する。なお、複数の契約からなる取引関係における一部無効の問題については、要件の一つである一体性の判
断基準とその要素に関して別稿 (
。てり上げて検討しいをくことにしたい取約でか論じていることら契、本稿では単一 2)
本稿では、まず日本での一部無効の学説をもとに「一部無効」概念の理解について整理する。そして、一部無効に際
し、学説がいかなる類型の法律行為を想定しているかを考察していく。一般に一部無効が問題とされる場合、たとえば契約の一部が強行法規に違反し、または公序良俗に反するためにその部分が無効となるというように単一の契約が想定
される。それに加えて、複数の契約からなる取引において、一方の契約が何らかの原因で無効となるときに、他方もまた無効となるか、という事例でも一部無効が問題となりうる。これらを統一的に「法律行為の一部無効」と表現してい
る記述が多いが、両者において「法律行為」の意味する範囲は異なっているといえる。このように、一部無効の判断対象となる法律行為が自明であるとはいえないので、この点を明らかにしておく必要がある。
そして、単一の契約が複数の合意事項から成り立っている場合には、この合意の性質を明らかにすることが要求される。なぜなら、合意を「意思表示の合致」とするならば、この合意事項自体が法律行為であるのかという疑問が生じる
からである。この定義に基づくと、単一の契約が複数の法律行為から成り立っていると考えられ、当該契約は数個の法律行為の集合体ということになる。しかし、このような結論は従来の法律行為の定義からは導かれないので、この合意
の性質について検討しなければならない。この結果を前提として、単一の契約の場合に一部無効をどのように判断するのかということについて考察する。
以上のような議論は、いささか概念法学的な要素を含んでいるが、一部無効の要件を明らかにすることにより、一部
(三五五八)
単一契約における一部無効の判断方法五四一同志社法学 六〇巻七号 無効の対象となる法律関係を明確にすることができると考えられる。
本稿では、一部無効に関する諸問題を検討するにあたり、ドイツでの議論を参考にする。ドイツでは、BGB一三九
条が一部無効を「法律行為の一部が無効であるときに、無効な部分がなくともその行為を行っていたであろうと認められないときは、法律行為全体が無効になる」と規定している。一方で、日本の民法には、この規律に相当する条文が存
在しない。そのため、一部無効に関する初期の学説は、BGB一三九条の条文解釈をそのまま転用していた。これは、日本における一部無効の解釈の原点がBGB一三九条の解釈にあることを示しており、この解釈は現在の議論に対して
も影響を与えている。さらに、BGB一三九条では、一部無効解釈基準の定立の前提として、詳細な要件論が展開されている。後述するように、日本においては「一部無効」概念それ自体に関して見解の対立があるものの、要件に関して
はこの見解の対立は大きい影響を与えるものではない。これらのことから、一部無効の問題を検討するに際して、ドイツにおける要件論などを参考にしていくことは有用であるといえる。
そこで、第一章では、日本の従来の学説における一部無効の見解を参考に、「一部無効」概念を確定し、その要件を抽出する。次に第二章では、その一部無効概念に基づいて単一契約における一体性の要件の役割について明らかにする。
第三章では、ドイツでの議論をもとに可分性の要件について検討する。最後に第四章において単一契約における一部無
効の判断方法について考察する。
(三五五九)
単一契約における一部無効の判断方法五四二同志社法学 六〇巻七号
第一章 日本における「一部無効」と「法律行為」概念
第一節 学説の概観 前述のように、日本には一部無効に関しての条文が存在しない。しかし、すでに岡松参太郎博士の著書において一部無効に関しての記述が見られる (
い用釈をそのまま転すのる形で論述されて解条学九本での初期の説。ではBGB一三日 3)
た。
以下では、一部無効の定義と要件に着目し学説を検討する。
①初期の学説(全部無効原則説)
日本での初期の学説は全部無効原則説を採用していた。富井政章博士は、「法律行為ハ幾多ノ意思表示ヲ包含スルコ トナキニ非スト雖モ通常其意思表示ハ各自分立スルニ非スシテ相合シテ単一ナル行為ヲ組成スルモノト見ルヘシ」とし、それゆえ「一部ノ無効ハ全部ノ無効ヲ来スヘキコト」を原則とする (
。 4)
また、鳩山秀夫博士は旧説において「法律行為ノ内容ハ不可分的関係ヲ有スルヲ原則トスル」ので、一部のみを有効とすることは、当事者の意思に反するとしている (
。 5)
これらの見解からは、法律行為の内容は原則として不可分であると考えていることが窺える。つまり、前述の富井博士の見解を契約に即して考えてみると次のようになると思われる。各当事者の意思表示だけでは何らの法的な効果を生
じず、一方当事者が提示した一体的な条項群に対し、相手方がその全部に合意することにより、初めて契約という一個の法律行為を形成することになる。そのため法律行為に可分性を認めることはできない、ということである。
そして例外的に「法律行為ノ内容ノ不可分ナリト言フハ当事者ノ意思ヲ根拠トスルニ外ナラサルヲ以テ当事者ノ意思
(三五六〇)
単一契約における一部無効の判断方法五四三同志社法学 六〇巻七号 解釈上其内容ノ可分ナルヘキモノニ付テハ一部ノ無効、一部ノ有効ヲ認メサルヘカラス」としている (
。てのみ、一部無効を認めい合るにすぎないのであるに場にづの意思」る基き可分性が肯定され りつま。「当事者 6)
したがって、この段階では一部無効が認められる要件は、可分性が存在することであるといえる (
、持否を則原の効無部全るい失を者支すに第次は説則見解が主流となる定 ( 。原効無部全、おな 7)
。のるあで解見の後そ、は説学の下以。 8)
②近藤栄吉の見解
近藤英吉博士は「無効なる一部が全体として重要なる部分なるときは、行為全部が無効となり、然らざる場合には、
有効なる部分のみは有効なるものと解すべく」とし、一個の法律行為の事例に言及した後、「幾多の法律行為が一個の法律行為として、結合せしめらるる場合にありても、各個の法律行為が、経済上の目的に於て、何らの関連をも有しな
いとき、又は行為の時に於て当事者がその一部の無効なることを知りたるときは、一法律行為の無効は他の法律行為の効力に何等の影響をも及ぼさぬものと解すべきである」とした (
数行複、ずらなみの合場の為律法の個一、は解見のこ。 9)
の法律行為も一部無効の判断の対象になることに言及したものであり注目に値する。③田村五郎の見解
「うは他の部分の効力はどな、るのか、無効な部分の影でる﹃と一部無効﹄の論理構成はあ、契約の一部分が無効で響 を受けて無効となるのか、それとも影響を受けないのか、という問いの立て方に支配された論理構成」であるとする (
最る月〇一年〇三和昭裁高判あ日で象対の評批本、てしそ決七 ( 。 10)
無効の体全約契はていひ、は無⋮⋮るた部一の約契「は 11)
効を来たすものと解する」としており、本判決もこの論理構成を採用していると評価する。
そして、「一部無効の論理構成は、稼働部分と前借部分との多かれ少かれ独立的な併存関係と相親しみ、両者の一体
性とは相反撥する」としている。その理由として、①前借金の有効無効を、前借金自体に内在する性格から無効を導き
(三五六一)
単一契約における一部無効の判断方法五四四同志社法学 六〇巻七号
出そうとせず、稼働契約という外在的なものから導き出すことは、本質的に無効なものと、無効でないものとの対抗が
前提とされており、両者の完全な一体性とはかけ離れている。②一体性を徹底すると、両部分の構成する一体物ないし全体が無効だから、両部分は無効となるはずである。本件に即して言うと、この契約は全体として無効だから、それを
構成する前借金契約と稼働契約はすべて同時的に無効であるとしなければならない。
以上のように、「真の﹃一体性﹄と一部無効の論理構成とは本来相互に矛盾し、同一判決のなかでの同時存在を許さ
ぬものである」から、「一体性」の論理と一部無効の論理とが共存しているならば、いずれかが他方への従属的地位になければならない。そのため、「判旨にいう﹃一体性﹄﹃不可分性﹄は一部無効の論理構成と矛盾・排斥し合う真の意味
での一体性・不可分性ではなく、一部無効の論理構成に下属し、それ故にまたそれと容易に抱合・共存し得る意味での一体性・不可分性である」とする。したがって、「この一体性は、一部の無効を他部の無効にまで拡大させる橋わたし・
媒介として一部無効の論理に奉仕する制限的内容の一体性に過ぎない」から、「﹃一体性﹄とは、両部分のいわば統一性を意味するものではなく、接合性を意味するものである」としている。
この見解は、一部無効の論理構成自体には賛成しながらも、本件のようないわゆる前借金契約の場合は、この理論が適用されないとして判決には反対している。一部無効が前借部分と稼働部分の独立を前提にしているのに対し、前借金
は常に実質的には稼働への対価の性質を有するので、一の契約としてみるべきであり、前借部分と稼働部分を独立可分のものと見るべきではないからである。他方、判旨を分析し、独立を前提とする「不可分性」と結合を意図する「一体
性」を両方用いていることを矛盾なく説明しようとするならば、判例は一部無効の理論を利用し、一部の無効を他部の無効に及ぼすための要件として「一体性」を要求していると考えるのが合理的である。
以上のことから、要件としては、可分性のほかに、二契約を接合させるものとしての一体性をも提示しているようで
(三五六二)
単一契約における一部無効の判断方法五四五同志社法学 六〇巻七号 ある。④薬師寺志光の見解 る法な分可が容内の為行律。場るず生にきとるす存のる合原存あ人数者事当は又、しがに因原効無きつに部一のそ因効 「なれさと」ういをとこる効要無が部一、はと効無部、一無律きつに分部成構の為行法にの個一は効無部一「し関件
場合にその一人につき無効原因が生ずるときは、一部無効を生ずる」としている。前者の例として「千坪の土地を贈与する旨の契約をしたるに、その中の三百坪が不融通物なりし場合」を挙げている。また後者の例として「甲乙丙三人に
て社団法人を設立したるに、甲の為した設立行為が無効なる場合」としている (
。 12)
薬師寺説も、一部無効の要件を法律行為の内容の可分性に求めているが、当事者が複数の場合にも言及している点で これまでの見解よりも一部無効の範囲を広く捉えているといえる (
⑤石外克喜の見解 。 13)
を、場きべず生が効無部一てをしそ。るれさと」るあ合次合一容内のそ、てしに為行単の①。るいてけ分にり通四で場 「場、はに的理論、はと合き該べず生の題問の効無部当一る一れらめ認が係関のと部の律そと体全、ていおに為行法
効果の面で分割し得る場合(例えば、一の遺言が数個の内容を含んでいる場合)、②法律行為が数個の条項を含む場合
(例えば、複数の条項からなる賃貸借契約など)、③数個の法律行為が不可分なものとして結合している場合(売買契約と同時になされる管理委託契約など)、④多数の者が当事者として法律行為に関与する場合(例えば、合同行為)であり、
これらの場合には法律行為において、可分性と不可分性とがともに認められる。ただし、当事者の意思が明白であって解釈を施す余地がない場合、解釈による一部無効の問題は生じない (
い分てい用で稿本、はと」可不「るあに③、おな。 14)
る一部無効の要件としての可分性や不可分性を意味するものではなく、むしろ「一体性」を表すものであろう。なぜな
(三五六三)
単一契約における一部無効の判断方法五四六同志社法学 六〇巻七号
ら、不可分であると断定できるのであれば、そもそも一部無効は問題とならないからである。この場合には全部無効と
なるだけである。不可分であるといえるかどうかが問題の本質である。⑥平井一雄の見解
一部無効の理論について、法律行為の内容が、可分であるか、不可分であるかで場合分けをしている。すなわち「⑴当該の法律行為の内容が可分である場合には、⒜主観的にも客観的にも無効な部分が存在することで目的を達成しえな
いときは全部無効であるが、⒝当初の目的の全ては達せられないが、可分な一部の残存が主観的にも客観的にも意義があると認められる場合は一部のみが無効となる。たとえば、畑地と山林とを一括代金で同時に売却したところ、農地調
整法により畑地の売買が無効とされたが山林の売買には影響がないとされた事例。⑵内容が不可分のものである場合には、⒞一部無効は原則として全部無効とならざるを得ない。⒟これに反し、不可分であっても、無効の部分が要素に存
しないかもしくは附帯的部分が無効である場合には一部無効にとどまる。たとえば、譲渡担保契約に伴う代物弁済の約定部分を無効と解すべき場合でも、譲渡担保契約全体が無効となるものではないとした事例」である (
。このことから、 15)
一部無効の理論適用の要件を可分性に求めているといってもよいであろう。⑦石田穣の見解
法律行為の一部に無効事由がある場合を一部無効とする。そして、一個の契約の数量的あるいは質的一部に無効事由がある場合 (
と複数の契約が不可分 16)(
はが部に無効事由あるる場合に分け一いい一に結合しその部るの契約の全部あて 17)(
。こ 18)
のように、意識的に契約の個数で場合分けをする見解はあまり存在しない。これは、法律行為概念や一体性に関連する問題を含んでいる。
⑧辻正美の見解
(三五六四)
単一契約における一部無効の判断方法五四七同志社法学 六〇巻七号 一部無効とは「法律行為の一部について無効原因があるときに、これが法律行為の全部の無効をきたすかどうか」であるとする。一部無効には、①契約内容が複数の条項に分けて定められている場合に、その条項のいずれかに限って無 効原因がある場合と、②不可分 (
で合味意な格厳(場はるあが因原効か「にいるあがと)がな一はで」効無部無 ( ずれいたあ約契の個数るにの係関な接密し(となと)約契金借前約え契働稼婦酌、ばい 19)
が数性体一に約契の複、はで解見のこ。 20)
認められる場合を「厳密な意味では一部無効ではない」としている点に特徴がある。すなわち、この場合に想定されている一部無効は、あくまで一個の法律行為の事例であることがこの表現から推測される。
第二節
「一部無効」概念 以上の学説をもとに、「一部無効」概念について検討をする。一部無効の用法については、次のように見解が分かれているため現在混乱が生じている。第一の見解は、「一部のみが無効とされ残部が有効とされる場合」すなわち全部無 効をきたさない場合のみを一部無効とする (
る無かという問題については、「一部効の理論」としているようである ( え与無をの見解の中では、さらに一部効。が法律行為全体にいかなる影響こ 21)
。 22)
他方で、無効原因が一部について存するときその部分が無効となることを「一部無効」(
Te iln ic ht ig ke it
)として、か かる一部無効が法律行為全体にいかなる影響を及ぼすか、すなわち全部無効を招来するかあるいは残部は有効として維持されるか、という場合を指す第二の見解もある (題お問の様同と論議の効無部一るけに条九三一BGB、は解見のこ。 23)
設定である。
このような用法の差異が生じる原因としては、具体的な議論のレベルでは他に適切な言葉がないことがあっていずれ の事態も「一部無効」と呼ばれていることが挙げられる (
。 24)
(三五六五)
単一契約における一部無効の判断方法五四八同志社法学 六〇巻七号
では、この差異によっていかなる違いがもたらされるのであろうか。先述の用法によると、前者の見解のほうが一部 無効をより広く捉えているように思われる(以下、「広義の一部無効」という。)。つまり、この見解によると、後者の見解がいう「一部無効」のほか、法律による一部無効 (
合効場いなが地余の釈解、りなと無が分部該当に的械機にうよの 25)
も含まれることになる。たとえば、二〇〇六年改正以前の利息制限法の規定により制限超過部分のみが無効となる場合には、前者の見解によれば、一部無効と考えられていたが、後者の立場は、法律による無効は法律行為全体に何らの影
響も与えていないことから一部無効の問題ではない、としていた。後者の見解による場合は、解釈による一部無効の問題のみが「一部無効」に該当し、法律の適用による一部の無効は「一部無効」の問題とならないのである(以下、「狭
義の一部無効」という。)。
しかし、「広義の一部無効」概念であったとしても、法律の適用による一部無効は自明なことであるから、解釈上の 問題が生ずるのは、「狭義の一部無効」概念にいう一部無効の事例である。よって、本稿における一部無効概念は「狭義の一部無効」を意味するものとする (
。 26)
第三節 一部無効にいう「法律行為」概念 一部無効の問題を考えるに際して法律行為をどのように考えるか。この問題は、どのような法律行為を念頭において一部無効の判断をおこなうか、ということに帰着するので非常に重要である。にもかかわらず、この点について詳細に
論じられている学説はほとんど存在しない。前掲の学説においては、近藤説、石外説と石田説が、複数の法律行為が一体性を有している場合をも視野に入れた記述をしている。また、辻説は、さらに踏み込んで、一個の法律行為である場
合が、一部無効が本来予定されている場面であり、複数の法律行為が一体性を有している場合にはその一部無効の理論
(三五六六)
単一契約における一部無効の判断方法五四九同志社法学 六〇巻七号 を類推ないし準用するというような記述が見られる。しかし、これらの記述からも一部無効の判断の対象となる法律行為の概念ないし範囲は明確にならない。これは、法律行為の範囲について十分に意識されているとはいえないことに起
因する。ただ、奥田昌道教授がドイツ民法についてではあるが、次のように一部無効における法律行為を定義していることは参考になろう。すなわち、「ここでいう﹃法律行為﹄とは、厳密に法律学的意義における法律行為をさすもので
はなく、むしろ、経済的かつ事実的に一体的な行為を意味し、この一体的行為の個々の部分が法律学的意義での種々の典型的な合意(契約)たりうるようなものをいう。いいかえれば、法律学的意義での最小単位の法律行為の複合体であ
りながら、一個の一体的行為としてなされている場合の問題である。したがってまた、﹃一部﹄も、上述のような最小単位の法律行為として成り立ちうるものでなければならない」としている (
。 27)
以上のことから、一部無効の判断対象となる法律行為は、一個の法律行為が想定されつつも、複数の法律行為が何らかの関連性を有することによって一体的行為であるとみられる場合も含んでいる。
第四節 一部無効と判断されるための要件 すべての見解において「可分性」が、その要件としてあげられている。無効の部分を除去することができなければ、
法律行為全体に無効の影響が及び、全部無効を招来することになるから、可分性が求められることは自明なことである。一部無効が全部無効を来さない場合とする見解からは、当然の帰結であるといえるし、辻説からはこの可分性があるか
否かが、一部無効であるかの分水嶺となる。以上のように、「可分性」の要件は重要なのであるが、しかし実際に可分か不可分かを判断することが困難である事例も多く含まれている。たとえば、人身売買のケース、譲渡担保契約に代物
弁済の約定が含まれている場合や一部の暴利行為などである。これらにおいては、事例ごとに可分性の有無を判断する
(三五六七)
単一契約における一部無効の判断方法五五〇同志社法学 六〇巻七号
必要性が生じることになる。
次に、契約の概念と密接に関連する「一体性」も要件として言及する見解が見受けられる。もっとも、これらの見解は「一体性」といった表現ではなく、「結合せしめらるる」(近藤)、「接合性」(田村)および「数個の法律行為ないし
契約が不可分に結合し」(石外、石田)としている。一体性に注目するか否かは、個々の論者がどのような場合を想定して一部無効の問題を考えているかに関連する。すなわち、一個の法律行為における一部無効(暴利行為など)が念頭
に置かれている場合には、一体性という概念は特には取り上げられていない。それに対し、複数の契約の場合にも一部無効判断を行おうとするときは、一方に他方の無効の効果が及びうるといえるほどの密接した関連性が必要になること
から、両者を接合させるための要件として「一体性」を求める。
このように、日本の一部無効に関する学説においても、その要件として「一体性」と「可分性」が導き出されている。
しかしながら、具体的にどのような場合にこれらの要件が満たされるのかについては十分な検討がなされているとはいえない。そこで、次章以降では、ドイツにおける議論を参考に「一体性」および「可分性」が肯定される要素などにつ
いて検討していく。
第二章 単一契約における「一体性」要件
第一節 単一契約の意味
第
一概は、一般的な法律行為念為よりも広い意味で用い」行章効で見たように、一部無の律判断の対象となる「法ら
れており、同じ用語であるにもかかわらず、両者は相違する。そこで、その原因を探るために法律行為の定義・範囲を
(三五六八)
単一契約における一部無効の判断方法五五一同志社法学 六〇巻七号 検討する。
まず、一般的に用いられる意味での法律行為について概観する。かつて法律行為は意思表示そのものであると考えら れていたこともあるが (
りのっがたしに容内示私表思意のそが法、て法る上てれさと」のもめるしぜ生を果効のい ( あで数行たま個一「は為律件法に的般一はで在は個、要要律法るすと素のの欠可不を示表思意現 28)
。この法律行為は、構成要素 29)
たる意思表示の結合の仕方により単独行為・契約・合同行為に分類される。各行為の要素である意思表示の個数は、単独行為では多くの場合に一個、契約の場合に多くは申込と承諾の二個である (
型示類為行各は数個の表思意にうよのこ。 30)
により異なるが、意思表示に基づき成立する法律行為は一個である。つまり特定の意思表示に対応して生じる法律効果は一つであり、法律行為の個数は一個であると考えられる (
俎のの題問の効無部一に特ちう為行律法、はで下以、おな。 31)
上にのせられることの多い「契約」を主に取り上げていく。そこで、上記の意味における契約を「単一契約」という。
第二節 ドイツにおける一体性を有する法律行為 前述のように「法律行為」という用語は、単一契約のみならず、複数の契約を包摂する場合にも用いられる。そのた
め、一体性の意味も、どのような態様の法律行為であるかによって異なる意義を有すると考えられる。この点に関して、
初めて言及したのは
A nd ré
であった。A nd ré
(為行一 ( 表一個の意思ら示かてなる「単、し件と法律行為の要おはよび内容を標準、 32)
sg ein fa ch e R ec ht es ch äft e
数意のま複は表た思の示に加えて他個行為まり一思()」、複数の意表は示によ、もしく 33)たは事実によって意図された一つの法律効果が達成される「合成行為 (
結一さる締に別個複数の法律行為が体う的な行為を構成する「複合行為れ (
ec R sa m m en ge se tz te ht sg es ch äft e zu
(、)」、および 34)sg ve rb un de ne R ec ht es ch äft e
三類種にの)」( 35)分類した (
べを類を行わず、内容のみ基の準に法律行為を分類す分為要行の見解に対しては、件。と内容に基づく法律こ 36)
(三五六九)
単一契約における一部無効の判断方法五五二同志社法学 六〇巻七号
きであるとの批判があり、その後の学説はこのような観点から主張されている。
E nn ec ce ru s
は、合成行為 (he G st re ng e in he itl e äft ch es s te tz se ge en m m sa zu ic
法(為行律密るあの性体一に厳、と)( 37)G es ch äft e
)に項目を分けてBGB一三九条の要件を検討している。そして、後者にBGB一三九条が適用されるのは、契約条項の中の一または複数の条項が無効である場合であるとし、具体例として次のようなものをあげている。①合意された給付の一部が不能である場合、②合意された給付が一部のみ法律上の禁止に該当する場合、③販売に際して所有
権が留保されているために自助条項が不適法である場合である。しかしながら、契約の本質的構成部分が無効である場合にはBGB一三九条の規定を考慮する必要はないとする。このようなときには、契約の本質に基づいて契約全体が無
効となるからである (
。 38)
vE sc h
も、当事者意思により一体とする複数の契約からなる「複合的に一体である契約」と、法律が予定している契 約類型に一致する「厳密に一体な契約」とに類別する。そして、単一契約に相当する後者の場合には、①給付が一部法律上の禁止に該当する、②ある条項が無効であるという場合に一部無効が問題になるとしている (。 39)
H ef er m eh l
は、厳密な意味での一体性は、一の契約における数個の条項の結集であり、個々の条項が一体的な契約の独立していない部分であるとする (。 40)
以上のように、ドイツにおいては複数の契約が結合している場合と、単一契約の場合とを意識的に分けて要件などの検討が行われている。このうち単一契約において一部無効が問題となるのは、合意された給付の一部が何らかの原因に
よって不能あるいは無効となる場合である。このときには、不能または無効となる条項は契約から独立したものとして位置づけられているのではなく、契約の一部として当該契約に内在するものであることが前提となっている。
(三五七〇)
単一契約における一部無効の判断方法五五三同志社法学 六〇巻七号 第三節 単一契約における一体性の意義
H ef er m eh l
の説明に基づいて、ドイツにおける厳密に一体性のある法律行為(da s s tr en g ein he itl ic he R ec ht sg es ch äft
)を日本の法律行為に引き直してみると、いわゆる単一契約がこれに当たる。単一契約とは、複数の個別条項から構成される契約である。このことから、個別的合意から成り立っている契約は単一契約に該当する。
そこで、単一契約における一体性の意義を明らかにするために、単一契約の構造について検討する。まず、いかなる
事項が契約の内容となっているのか。この点に関して、富井政章博士は、法律行為には三種の原素があり、これが法律行為の成立および効力に関する作用を異にする点において重要な区別であるとする。第一に、「法律行為ノ本質ヲ組成
スル原素」として「要素」があり、その一つを欠くときには法律行為は成立し得ないとする。そしてこの「要素」には、「一切ノ法律行為ニ具ハラサルヘカラサルモノ」である一般要素(意思表示、目的 (
」為ノモルナ要必ニ行律法ノ種特「と) 41)
である特別要素がある。たとえば、売買における特別要素は目的物、代金および「此二者ニ付キ双方ノ合意」である。第二に、「通常法律行為ノ性質又ハ効力ヲ為スモ別段ノ意思表示ヲ以テ変更又ハ除去スルコトヲ得ルモノ」である「常
素」がある。売買における担保義務がこれにあたり、「特約ナキ限ハ常ニ存在スルモノ」である。第三に、「法律行為ノ本質又ハ常性ヲ為スニ非スシテ当事者カ特ニ之ニ附加シタル条款」を「偶素」という。売買における買戻しの約款や代
金支払いの期限が、偶素である。そして、「当事者カ特ニ或常素ヲ変更若クハ除去シ又ハ或偶素ヲ附加シタル場合ニ於テハ条款ハ通常法律行為ノ内容ヲ為ス」としてい (
る 42)(
。 43)
以上の見解で「要素」といわれる部分が本質的部分ないし核心的合意部分に当たり、「常素」「偶素」といわれる部分が付随的部分ないし付随的合意部分に当たる (
。 44)
ここで、契約の成立要件につき、大村敦志教授は「﹃契約の成立は当事者の合意による﹄という基本命題(これ自体
(三五七一)
単一契約における一部無効の判断方法五五四同志社法学 六〇巻七号
は民法五二一条以下から導くことも可能)とそこでいう﹃合意(意思の合致)とは契約の本質的な部分に関する表示の
合致で足りる﹄という付属命題からなる」とする。そして「通常は、契約類型に固有の要素(売買なら目的物と代金。民五五五条参照)についての合意が最低限必要」であるとし (
れにあが致合の思意もていつ分部いなで的質本「にらさ、 45)
ば、それは契約内容に含まれることになる」とする (
。 46)
このことを前提とすると、本質的部分に無効の原因が存在し、契約を維持できない場合には、そもそも一部無効は問
題にならない。ただし、契約は成立するものの、公序良俗違反などにより、事後的に一部無効が問題となる場合には、契約を全部無効にするのか、合理的な金額に制限をして、それを超える部分のみを無効にして契約自体の効力は維持す
るのかが問題となる (
。性なるもの、一体のは題とはならない問 のについて要検討は必と分性可効、かし、この場合は後述する力。維持的縮減が問題となるためし 47)
一体性との関係では、付随的部分に無効原因が付着している場合が問題となる。なぜなら、付随的部分の無効が本質的部分にいかなる影響があるのかを考える必要があるためである。この場合には、次のことが考慮されなければならな
い。すなわち、付随的事項の合意を、契約成立のためにされた合意とは別個の意思表示の合致と構成することができるかということである。本質的部分も付随的部分も同一の意思表示(申込み)でなされたと考える場合には、一般に意思
表示段階における一部無効が否定されていること (
れすていつに分部る存みが由事効無とる至の無るでわ思にうよいなき明効説がとこるきでににれ意合が示表思意、ずさ 可な思意。る合と題問が性示整表分自体は不とであるにもかかわらの 48)
るからである。
単一契約においても「要素」たる本質的部分に対しての意思表示の合致と「常素」「偶素」たる付随的部分(複数の
条項の集合体)の合意とは、別個になされていると考える。付随的部分、特に偶素については特約的なものであるとい
(三五七二)
単一契約における一部無効の判断方法五五五同志社法学 六〇巻七号 え (
捉め、でのいなはでのもるしのぜ生を動変のどな滅消・こ合変法てしとのものそ為行律ち意わなす致合の示表思意を更 ・うれ生を任責行履不務債ばす生反違に容内意合のこたじる、り発の係関律法もてし出取。をけだ意合のこで方一ま 49)
えることはできない。したがって、この付随的部分に包含される合意事項が何らかの原因により無効とされる場合には、契約全体に影響を与えうるのは本質的部分を中核に付随的部分が相互に密接に関連性を有しているからであると考え
る。この意味において、単一契約の場合にも一体性が要件とされているのである。
以上のことから、一体性は、無効原因が契約成立に必要な合意すなわち本質的合意ではなく、付随的になされる合意
に存する場合に意味を有する。そして、この合意は「一体性」というパイプによって契約成立に必要な本質的部分についての合意と密接に関連していることから、契約全体に及ぼす影響如何という一部無効の問題が生じるのである。
第三章
「可分性」要件 第一節 ドイツにおける可分性要件 第一款 契約の一体性との関係 契約の一体性が肯定された場合には、次に可分性の問題が検証されなければならない。多くの場合に、単一のないし一体の契約が推定されるとの理由だけでは、契約全体についての無効は生じない (
て意っよに定推の思的定仮、ろしむ。 50)
契約の可分性が優先的に審査されることになる。すなわち、可分性が肯定されるならば、当事者が合意した事項を分割できることになるので、独立して効力を生じうる一部が存在することになる。この場合にはじめて、無効な部分が切り
離されたとしても、契約を存続させることを望んでいるかという当事者の意思が問題となるのである。
(三五七三)
単一契約における一部無効の判断方法五五六同志社法学 六〇巻七号
単一契約の個別的合意が無効である場合が、BGB一三九条の本来的な適用範囲である。ただし、第
二章で述べたよ
うに、一つの契約における申込のみ、また双務契約において反対給付のみが無効である場合には、独立性は認められない。この場合には、意思表示自体が独立の契約を意味しないので全部が無効となる。それ以外の部分に、無効事由が生
じているときには、原則として可分性が認められる。判例においても、このような場合に不可分とされる事例はあまり現れておらず、全体的に可分性を肯定する傾向が生じている。多くの事例において、契約が一部無効になるか、あるい
は全部無効になるかの判断については、当事者の仮定的意思が一義的に決め手となっている (
らはこと自体に無効という法律効果生そじ得ないので可分性は問題となの、るとにおけは転のご移き実行為について事 えた、たと定ば占有改。ま 51)
ない (
。 52)
第二款 一体的な条項の可分性と補充的契約解釈の関係 BGB一三九条が想定する可分性は、ある条項が無効である場合に、その部分を切り離すことができるかという意味 で用いられている。つまり、可分性は
A lle s od er N ic ht s
の判断がされることになるのである。そのため、量的に過大ものを一定の適切な範囲に制限するという手段は、本来はBGB一三九条にいう可分性の役割を超えることになる。したがって、BGB一三九条の直接適用によって、このような解決を図ることはできない。しかしながら、量的に適切な範囲を超えているだけの事例において、BGB一三九条を適用せずに、すなわち一部無効の可能性を考慮することなく、
すべてを全部無効として処理することは、契約はできる限り有効に解釈すべきであるとの要請や、現実の取引実態に鑑みても適切であるとはいえない。そこで、判例や学説は、BGB一三九条を類推適用することによって実質的に一部無
効の結論を導く解釈を許容している。特に、本質的合意部分に無効原因が生じている場合には、このような判断方法が
(三五七四)
単一契約における一部無効の判断方法五五七同志社法学 六〇巻七号 問題となる。つまり、適切な範囲で契約そのものを維持することができるか否かが問われることになるからである。 一般的にBGB一三九条が類推適用されるのは、ある条項が本来的に無効である場合に、当事者がその無効を認識し、
適切な水準に制約された他の条項に変更しようとする事例である。たとえば、連邦通常裁判所は、一人あるいは複数の組合員を自由裁量で組合から排除する権限を、ある組合員に付与するという契約上の条項について、重大な事由による
場合にのみ組合からの排除を許容するという制約を付して維持した (
時除間的に制限された排権として維持している ( 、をれ権た、契約上合意さた。無期限の解約告知ま 53)
切た適おな、てっわ代に項条な効無しも。合が者事当、意例事のれずい 54)
な水準に修正された他の条項を合意したと推定される場合であるので、BGB一三九条の直接適用の範囲には含まれない。しかし、実際には前述の両判決において、一部無効が補充的契約解釈によって推定されるかということが論点とな
っているのである。
これに関して会社法では、任意法規に対する補充的契約解釈の優先の原則が推定される (
。また、法規違反ないし良俗 55)
違反の場合においても、補充的契約解釈は禁止されていない (
がに契的充補、も釈解の必要性合生じ約釈場定いないてれさ否のは用適な的則原る ( に解らに、ある条項の無効よ。ってはじめて補充的契約さ 56)
的る定仮の者事当けおに合場のこ。 57)
意思は、一部無効か全部無効かの問題について判断するのでなく、欠落補充の問題に関して機能することになる。そし
てこの判断が、BGB一三九条を直接的に適用することを断念し (
。と方法を承認するこを意味するのであるの
n tio uk alt ge ng se rh ltu en n R ed de
持、効力維減的縮() 58)第三款 可分性の検討 BGB一三九条が適用されるためには、①全体の性質に変更をきたすことなく一体的に認識される契約を分割できる
(三五七五)
単一契約における一部無効の判断方法五五八同志社法学 六〇巻七号
こと、②無効部分の排除により、なお残存している契約がそれだけで当事者が意図していた形で独立して存在しうる契
約であることが必要である (
。討類して検分をっている行 び主観的およ可量的分性に的、観関客くの学説は、可分性にし。ては事例の内容に応じて多 59)
一.客観的可分性㈠ 客観的可分性は、前述のように単一の契約において特定の条項のみが無効であるときに、その無効の条項が除去さ
れたとしても、その他の部分が効力を有する契約として存続しうる場合である。たとえば、専売契約にカルテル法によると無効になる価格拘束条項を含んでいる事例、また用益賃貸借契約中における先買権条項が無効であった事例があ
る。
後者の事例は次のようなものである。事業を営むために工場と機械について用益賃貸借契約が締結された。原告はそ
の契約中で先買権が付与されていた。本契約は公正証書により作成されていたが、先買権に関しては公正証書に記載されておらず無効とされた。そこで、「先買権がなくとも当該用益賃貸借契約を締結していた」といえるかが争点となった。
これに対して、帝国裁判所は、一部無効の一般論を展開した後に、「先買権は契約上の給付の履行を保証する目的を有しておらず、むしろ用益賃貸借に基づく権利義務関係の外に生じ、先買権の行使は用益賃貸借関係の終了を意味して いる」として、用益賃貸借と先買権の間には内部的な関連性はないと判断して可分性を肯定し、先買権に関する契約条項のみを無効とした (
。 60)
㈡ 次に、農場地区と山林地区から全価格が生じるように、一体となっている可分の対象物が売却される場合も、それぞれ独立した部分への分割が考えられるので、一部に無効が生じた場合には一部無効の問題となりうる。この場合には、
反対給付を客観的基準によって、適切に分割することができるかが重要な問題となる。
(三五七六)
単一契約における一部無効の判断方法五五九同志社法学 六〇巻七号 また、有償部分と、BGB五一八条によって方式無効となる無償部分への分割が可能な混合贈与の事例もこの場合に該当する (
のる〇〇〇〇マルクに関す借に用書を発行したが、こ五)死Ⅹ(被告:Y)は弟(亡。したため妻が原告:兄 61)
借用書は公正証書などでは作成されていなかった。Xが支払いを求めたところ、Yはこの借用書の意味合いは贈与約束であるとし、公正証書などの方式を欠くために無効であると主張した。帝国裁判所は、まず、当該約束に贈与約束と債
務約束が含まれているならば、両者を分割することは可能であるとして、可分性を肯定した。ただし、贈与約束であるかどうかは当事者の意思に基づいて判断されるとしている。次に、贈与約束部分が方式を欠くために無効であるときに、
他の部分も無効となるのは、無効な部分がなくとも実行されたであろうと推定されない場合であるとした。そして、本件においては、Xは弟に父親の死亡の際に存在していた金額を贈与し、その際に債務の弁済も行うという意図があった
という認定された事実から、全部が無効になると判断した (
さと理権の範囲内にある部分残がりの範囲外の部分に分割代為し行代理人が代理権を越権て行為をする場合、当該㈢ 。 62)
れうるとする見解もある (
。 63)
これに対して、連邦通常裁判所は、無権代理人と同時に自己の名で締結した契約の事例において次のような判断をし
た。すなわち、当該契約の可分性を否定し、BGB一三九条を適用するならば、契約全体が無効になると。その理由と
しては、関連する合意が無効であると知っていたならば、当該契約の締結を断念していたことがあげられている (
rG be R
に護目的に基づく場合、はの全部無効になるとされて保い)の㈣一方で、法律相談分野における濫用防止法( 。 64)る (
。 65)
(三五七七)
単一契約における一部無効の判断方法五六〇同志社法学 六〇巻七号
二.主観的可分性
㈠ 主観的可分性は、法律行為の一方または両方に複数人が関与しており、かつ当事者の一人の法律行為が無効である場合である。これは、各当事者の意思表示が法律行為の一部と位置づけられているからである (
。部分的な全責任である 66)
か、または全債務上の全責任であるかという共同での関与の方式を問わず、BGB一三九条の適用がある。しかし、部分的な持分の共同体である共有または共通の客体である共同相続に関する処分は、法律行為の相手方の給付に対応する
当該持分の部分的所有全部の処分を意味するものではないので、BGB一三九条の適用が排除される。㈡ 判例は、複数の人物が契約締結者として関与する連帯債務関係の事例にも適用があるとしている。その理由として
は、契約で連帯債務を負う二人の人物のうち一人が行為能力を有しなかったならば、連帯債務関係は生じないため、そもそも連帯債務に関する規律を適用することはできない。したがって、ある者が法律上有効な債務を生じるかについて
は、連帯債務関係の性質からではなく、その意思表示がなされた諸事情全体から評価されうる。そして、どの人物が契約締結者として関与するかという当事者に関する条項は契約の重要な一部であるから、その条項が無効である場合に
は、契約締結に関与している複数の人物のうちの一人に該当するにすぎないとしても、BGB一三九条を適用することができるとして、可分性が存在することを認めている (
。 67)
可分性は、共同保証による保証の引受についての判決でも認められている (
一表効有的法の示思に意の証保の他性かそしの務債帯連、とかいなた持をりわの、の証人の一人保の意思表示の無効は 、則原保はでこしと証て、複数の共同。そ 68)
部無効に関する判例法理 (
。をるいてしといないてし除排とこるす用適もに係関証保が 69)
死因処分は、金銭贈与により複数の相続人が負担を負っているが、その共同相続人のうちの一人の負担が無効である 場合には、可分性が肯定される (
行執三二BGB、が条の六言遺たれさ定指。〇 70)(
またはBGB二二八九条 71)(
によって、複数 72)
(三五七八)
単一契約における一部無効の判断方法五六一同志社法学 六〇巻七号 の相続人の一人について無効である場合、もしくは、全遺産についての遺言の執行が指定されていたが、共同相続人の一人に対する指定が無効である場合も可分性が認められる。
それに対して、共同代理人の一人の意思表示が無効である場合には、その代理権の法的性質によれば常にすべての代理人の協力を必要としていることから、無効事由に該当せずに独自に存続する部分を想定することができない、すなわ ち、その他の代理人の意思表示のみでは契約が存続し得ないので、可分性は排除される (
。 73)
三.量的可分性
給付の数量または契約上の拘束の継続が法律上適切な範囲を超えていたとしても、なお契約が有効に維持されるの は、当事者がより低い期間や金額でも履行をするであろうと推定される場合である (
分本に特、はで稿、題がるたわに岐問とは性可な的銭金と分な可な的間時る多題縮決問を用いた解減がられている。図 前の類型では、力述の効維持的。こ 74)
性について検討することにする (
。 75)
⑴ 時間的な可分性 判例は、時間的な可分性という意味において、継続的債権関係にも以前からBGB一三九条を用いている (
に、がとられている。なぜなら当手事者が合意した無効な条項法の一九その際にはBGB用三条の適用ではなく類推適 。、しかし 76)
代わり、他の適切な水準に縮減された条項を合意したであろうということが判断の基準となっているからであり、このような場合にはBGB一三九条が直接にはあてはまらないからである。規定自体が定めている無効の効果を制限すると
いう意味において、可分性ではなくむしろ保護目的が重要な問題となるのである。
(三五七九)
単一契約における一部無効の判断方法五六二同志社法学 六〇巻七号
たとえば、BGB一八二二条五号 (
、BGB一六四三条一項 77)(
賃裁益用るす要を可許の所判めたの間期の期長るす当該に 78)
貸借は、許可が拒絶されたことによって、保護目的に基づき最も適切な許可を要しない期間で維持された。後見裁判所の許可を要する場合にそれが存在しない賃貸借の場合にも保護目的が重要となる。
判例は、期間が長期にわたることにより良俗違反となる契約の評価に重点を置いているので、契約の全期間の履行のために必要となる仮定的当事者意思のみを否定する。この場合でも、契約期間に関する条項以外の条項にも無効とされ るような問題が生じていない限りにおいて、適法な期間において法律行為を維持することができる (
割での契約部分を排除することがき違ない場合には、拘束期間の分反俗、の違反がなお良の他そ原じ、因ため生もらか 。俗良、てっがたし 79)
または縮減は認められない。
たとえば、BGB一三八条一項の規定する良俗に反する拘束の結果、長期にわたるビール供給契約は、BGB一三九 条の類推適用によって良俗に適う最長期間である二〇年間に限定された (
。、関に間期のそはて減縮の間期約契し広う価るれさ響影に評くの審実事な由自なよ縮の年に短されたものもある。こ 、はてっかよに例効有ら期間が二〇年。一五事 80)
期間の短縮は、両当事者の契約上の義務に関する他の部分に何ら変動を及ぼすものではなく、単に継続期間のみを短縮するものにすぎない。法的安定性の利益を考慮するならば、同種の事例であれば同じような結果が生じるように扱う権
限を判例に認めなければならない (
。す不鮮明さに言及る術ことはできないの技るののように考えな。らば、法律上こ 81)
同様に、量的可分性は過度に長期にわたり拘束する地上権契約に含まれる買取義務についても推定される (
。また適切 82)
な期間への縮減は、過度に長期間にわたり永続しているマネージメント契約および契約上の競業避止義務の過度な存在に対しても当然に適用がある。しかし、判例は委任者保護条項(「
M an da nt en sc hu tz kla us el
」)においては効力維持的縮 減を不適切であるとしている (し一ことのできない体す的な規定であるとる割禁分た、包括的競業止。は複数の部分にま 83)
(三五八〇)
単一契約における一部無効の判断方法五六三同志社法学 六〇巻七号 て、弁護士事務所の売買契約当事者間での時間的、場所的また物的に無制限の競業避止義務についても期間の短縮を認めなかった (
。 84)
前述のように、連邦通常裁判所は、長期にわたる継続のみが良俗違反の推定に関する原因を形成するときに期間の縮減を認める傾向にあるので、さらに異なる良俗違反となるような問題点が付加されるときは縮減を認めない。連邦憲法 裁判所決定 (
が裁に向傾な的制抑の所判常し通邦連、らかとこのこ対てるに解見るすとるれらめ認的、般一は減縮的持維力効。す用 Gはてし対に反違の性度過、ばれよに則原たし立BBが、作が条五一三BGB条一二四二BGB、条八三樹 85)
ある。⑵ 金銭的な可分性 判例は、多くの事例において、契約が給付の一方が過度に高額ゆえにBGB一三八条に反するならば、一般に可分性を否定している。この場合には、適切であり異議を唱えられない部分と、良俗に違反する部分に給付を分割することは
できない。なぜなら、契約は、相手方に損をさせて自らが儲けようとする者に、法律上規定されている無効の効果に付随しているリスク負担を免らせしめるものではないからである。また、双方の利益を正当に判断し、良俗違反の効果を
回避する契約の形成を当事者のために行うことは裁判官の任務ではないからである (
。 86)
可分性の否定は、良俗違反の評価の範囲において効力維持的縮減の禁止を意味する。さらには、裁判官がみだりに当事者が決定する等価関係に影響を与えるおそれも生じるから、効力維持的縮減を慎むべきであるとの考慮も存在する。
したがって、このような事例では本質的にBGB一三九条の問題として扱われず、事例ごとに審査されなければならない。
以上のように判例は、一三九条を用いて暴利行為や暴利類似行為を相当な反対給付によって維持することを避ける傾
(三五八一)
単一契約における一部無効の判断方法五六四同志社法学 六〇巻七号
向にあ (
る 87)(
。 88)
それに対して学説は、暴利行為禁止の意義と目的は一部の無効を要求するにすぎないとする。
R ot h
によると、とにかく価格が法的に決定され、あるいは十分確実に推定されうるならば、契約は適切な価格に維持されなければならない。そうすると、たいてい客観的に市場価値が推定されるので、暴利的売買も常に全部の無効になることはない。したがって、多くの場合には、縮減の可能性が常に存在していないわけではないとしている。実際に効力維持的縮減は、少なく
とも公共の住宅企業からの個人住宅の売買の特例にみられると指摘している (
条済費消でま日期返借たれさ意合に貸を無、八三一BGBし無といよてしと償効、G一て借主はBB八七条二文によっ
h R ot
、は合た利暴、の消費貸借の場。ま 89)二項に該当する場合も、連邦銀行の重点利息(
Sc hw er pu nk tz in s
)で契約を維持することは正当であるとしている (。 90)
判例は賃貸借の暴利行為の事例には効力維持的縮減を行っている。連邦通常裁判所は、経済刑法(
W iS tG
)五条の本 来的範囲まで引き下げる判断をしている (hn H un ge rlo
為、ばれよに項効二条二一六BGB、は無飢なた行利暴の金賃る当「に)」(金賃餓判例く同。るすとるじR h ot
を適、はつ、ていなに断判の切考価やあで当正りは、値はのるす慮。こ 91)にも効力維持的縮減を行っている。ただし、ここではBGB一三九条の適用は、保護法の解釈の優先により排除される。
第四章 単一契約における一部無効
第一節 単一契約における一体性の分析 一部無効の判断の要件としては、一体性と可分性があげられる。ここでは、一体性の意義について分析する。
第
二てと付随的合意とによっ構合成されると考えること意的章ににおいて検討したよう、質単一契約の場合は、本が
(三五八二)
単一契約における一部無効の判断方法五六五同志社法学 六〇巻七号 できる。このとき、本質的合意が契約を成立させるために必要不可欠なものであるのに対し、付随的な合意は、契約履行上の便宜を図るなどの目的でなされる合意である。この付随的合意は、契約を成立させるために必須の合意ではない
ので、本質的合意とは契約成立に対して有している意味の重さが異なる。このように合意の意味が異なるため、これらの合意は、一個の意思表示によってなされたと考えるべきではない。単一の意思表示ですべての合意がされたとするな
らば、意思表示が不可分である以上、付随的合意に無効原因が存する場合にも、すべての事例において全部無効を来すことになりかねないからである。以上の考察から、単一契約では、本質的合意と付随的合意を結び付ける役割を果たす
のが一体性であるとの結論に至った。この結果から単一契約については、次のことがいえる。
まず、本質的な合意に無効原因が存在し、特定の契約が成立するのに必要な合意を欠くに至る場合には、当然に全部 無効となる。ただし、一応、契約が成立し、公序良俗違反などにより、事後的に一部無効の問題となる場合には、条項の部分的無効ではなく、契約全体が無効となるかが問われることになる (
。 92)
次に、付随的な合意が無効となる場合である。この場合には、その合意自体で、契約の存立に直接に影響を与えることはないので、この付随的合意の無効が契約全体にいかなる影響を与えるかという、一部無効が問題となる。
以上の検討に基づくと、本質的部分に無効原因が存在するものの、契約が一応成立する場合には、効力維持的縮減と
いうかたちで可分性が問題となる。また、本質的な合意部分と付随的な合意部分との間に一体性が存するので、無効原因が存する付随的合意事項の内容いかんにより、契約の存立に影響を及ぼすことがある。このような事態が生じた場合
にも可分性の肯否が検討されることになる。
(三五八三)