用諸器具について
著者 植村 正治
雑誌名 社会科学
巻 42
号 2‑3
ページ 171‑202
発行年 2012‑11‑30
権利 同志社大学人文科学研究所
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000012910
《研究ノート》
工部大学校(工学寮)における 博物場・器具室と実習用諸器具について
植 村 正 治
本稿では,欧米近代工業技術の日本への移転経路の 1 つとして,学校教育が重要で あると考え,明治初期における本格的工学教育機関である工部大学校(工学寮)を取 り上げた。同校ではイギリス人お雇い教師を通して近代工学技術が日本人学生に教え られたが,専門用語は抽象的であるうえ,用語そのものが外国語であったので,教室 における講義だけでは,日本人学生は講義内容を十分に理解することはできなかった。
エアトンらのイギリス人教師が器具を提示し実験や実習に使用するばかりでなく,学 生達にリピートさせることにより学習内容の理解が深められた。本稿では,工学教育 のための基盤科目である理学(もしくは物理学)を取り上げ,その理解度を高めるた めに必要な実験・実習用諸器具や,これらを収納・展示する器具室および博物場に焦 点を当てて,不十分ながら検証した。まず,工学寮工作場や製作寮赤羽製作所で製作 された諸器具,輸入諸器具について検討を加え,エアトンが理学講義で利用した実験・
実習用諸器具と理学テキストとの対応関係を見た。さらに理学分野に含まれる電信学 科の博物場に展示された諸器具の紹介を行った。
は じ め に
前工業化社会から近代工業化社会への転換に大きな推進力となったのは,地下資源も しくは鉱物資源を利用する工業技術の進歩であった1)。近代日本の工業化は,これらの工 業技術を欧米から移転することにより可能になったと言っても過言でない。様々な経路 を経て技術移転が促進された。外国人技術者・技能工の雇用2),欧米機械メーカーの代理 店3),リバース・エンジニアリング4),技術提携,技術者・技能工・製造機械などの一括 供与(the supply of integrated technology packages 5))などがあげられる。本稿では学 校教育もその重要な経路の 1 つと捉えた。工学系高等教育機関が拡張・普及していくに 応じて,工学教育を受けた大量の学生が,省庁,企業,研究所,大学,陸海軍等々に就 職し,転職を繰り返す過程で6),工業技術の移転と国内普及が進展するのはもっと後のこ とであるが,工学教育の原型がすでに明治前期に形成されていた。
前々稿において,本格的な工学教育機関である工部大学校(工学寮)の設立過程を検 討し7),前稿から,同校において各種工学教育の基盤科目である理学(もしくは物理学)
の教育内容について立ち入った検証を開始した8)。理学教育に限らず,工学教育全般に当 てはまるが,教育内容を学生に伝えるための必要資財として,(1)実物器具などを利用 して実験・実習を行う実験・実習室,(2)図面・模型・実物用具および,これらを収納 する器具室や展示もあわせて行う博物場,(3)図書および図書館があげられる。前稿で は(1)を中心にすえながら理学研究棟全体についても検討を加えてきたが,本稿では不 十分ながら(2)を中心に検討していく。またその際,理学分野の電磁気学と密接に関わ る電信学科(明治 17 年以降電気工学科)に関しても,理学の一分野という理解の下にあ わせて検討を加えた。
1 博物場
博物場は,元々は小学校校舎として予定されていた工学寮大学校校舎の中に配置され ていた9)。土木学科 1880 年卒業の逵邑容吉は「虎の門内御濠の上に建築中の工学寮講堂 及器具機械雛形並に製紙製糸等の図画陳列場,書房,広堂等の二階建煉化石造(時計台 もあり)一棟が出来た10)」とし
,
造家学科 1879 年卒業の曽祢達蔵は「濠側の高き石垣の 天端に近接して建てられたるゴシック式煉瓦造二階建11)」と表現している。図 112)は工 部大学校校舎建物配置図で,このうち№ 2 にあたる個所に建設された。図 213)は,旧江戸 城外堀(虎ノ門付近)を挟んで南方向から同校舎を描いたものである。時計台がある建物 が書房(図書館)となり,その両脇の建物に教室と博物場が配置されていた。工学寮が 明治 10 年 1 月に工部大学校と改称され,同年 11 月から新築校舎(図 1-№ 1 と№ 1')で 授業が行われるにともなって,旧校舎全体が博物場となった。博物場に関する英文・和文の 2 種類の規定が残されている。和文は基本的には英文を 日本語に翻訳したものであるが,必ずしも一致していない。前者は,工部大学校(工学 寮)学課並諸規則(以下,諸規則とする)で,後者は「Imperial College of Engineering,
Tokei. Calendar」もしくは「The Calendar of Imperial College of Engineering, Tokio」
(以下,
Calendar
とする)である。表 114)は,筆者が閲覧した両文献の年代を掲げたものである。明治 7 年 2 月,12 月の諸規則は,明治 6 年の
Calendar
にほぼ対応している。博物場に関する規則は,明治 7 年 2 月から明治 15 年 2 月までほとんど変化が見られな い。7 年 2 月の博物場(局)に関する規定は次のようになっている。
図 1 工部大学校校舎建物配置図
図 2 工学寮大学校校舎絵図
(注) 出所は(注 12)を参照。
(注) 出所は(注 13)を参照。
第七十七條 寮中諸学局ニ於テ要用ナル諸器摸形ヲ法ニ従ヒ序ヲ正シ整置シテ,生 徒ニ縦覧セシメ画図上ニ於テ知リ易カラサルノ物ヲ指示シテ解得セシム
第七十八條 局中諸器物逐次増加スヘシト雖モ,先ツ生徒機工場ニ於テ造為スル所 ノ諸摸形ヲ以テ局務ノ基礎ヲ創シ,又之ヲ他ニ求メ漸々ニ集メテ以テ整頓スヘシ
まず博物場の目的として,工学寮の諸学科に必要な用具や模型を整然と配置し,画図 では理解することのできない点に関し,実物を見ることにより理解を深めていくことを あげている。用具・模型は基本的には機工場において製作するが,他に求めることがあ るとしている。
機工場は,「博物場」条項のすぐ前の条項では「工作場」と表現されているが,
Calendar
ではどちらもworkshop
としている。「工作場」条項では「生徒ヲシテ諸機工ヲ学ハシム ル為ニ設ク」とあり,同所では機械工学関連の実習を行うことが目的とされているが,「機工製造究理ニ用ユル諸器ノ模形ヲ作ラシム」とも記されている。7 年 12 月諸規則で は,「工作場」は「工学試験局」という条項名に変わったが,2 月諸規則とほぼ同内容の ことが記され,実習とともに模型製造も行われていたことがうかがわれる。「虎ノ門内三 年町旧工部大学校作工場新築15)」という史料の表題にあらわれる「作工場」は,「工作場」
のことであろうか。同史料によると,「作工場」は明治 6 年 8 月 25 日に起工,同 7 年 9 月 10 日に竣工した。建坪 86 坪余の 2 階建煉化石造であった。表 2 は,「工部省第一回年
表 1 閲覧諸規則・Calendar の年月
年 代 諸規則 Calendar
明治 6 年(1873) ○
明治 7 年(1874) 2・12 月 明治 8 年(1875) 6 月
明治 9 年(1876) 3 月 ○
明治 10 年(1877) 3 月 ○
明治 11 年(1878) 12 月 ○
明治 12 年(1879) ○
明治 13 年(1880) ○
明治 14 年(1881)
明治 15 年(1882) 2 月
明治 16 年(1883) ○ ○
明治 17 年(1884) ○
明治 18 年(1885) ○ ○
(注) 何月と書き込まれているのは,当該月の諸規則が存在しているこ とを示し,○印は月が明示されていない諸規則・Calendarを示し ている。出所は(注 14)を参照。
報」の工学寮の項目に掲げられていた表に依拠したもので16),明治 8 年 7 月から翌 9 年 6 月までの 1 年間に工作場で製作された各種用具・模型などである。1873 年 6 月,機械学 助教師として雇用されたコーレー(G. Cawley)の報告によると(「Imperial College of
Engineering,Tokei. Class Reports by the Professors for the period 1873-77.
17)」(p.57.1877 年 10 月 1 日付け。以下,
Class Report
と略称する),明治 10 年に入り,工作場は廃 止された。30 〜 40 人の労働者が働いていたという。上記の 7 年 12 月諸規則には,2 月諸規則と同じ条項名の「工作場」として,「赤羽根ニ 設クル各種ノ工場」があげられている。同所は明治 4 年 12 月に製鉄寮として発足し,5 年 10 月,製鉄寮と造船寮が廃止されるにともない,製作寮に併合された。翌 6 年 12 月,
製作寮が工部省敷地に移転することになり,これ以降,残された施設を製作寮赤羽製作所 と称した。7 年 5 月,工学寮都検であるダイアーが赤羽製作所監督を兼務することになっ た。明治 10 年 1 月,製作寮が廃され,工作局が設置されるにともない,同施設は赤羽工 作分局と称され,16 年 2 月に海軍省兵器局に移管されるまで工作分局として存続した18)。 同所においても様々な欧米機器類のコピーや,工部大学校向け模型,実験用具が製作され た。表 3 は,明治 8 年 1 月から 6 月までの間に工学寮向けに赤羽製作所が製造した各種 用具・模型を掲げたものである19)。収納金が引渡価格,現費金が生産コストなので,此
表 2 工作場製造物品
物品 数 物品 数 物品 数
水平棹 1 水平管* 1 白銅大差金 1
水平台 2 英仏日本尺* 1 中差金 2
水平機 1 タライ盤中心金 1 大差金 3
図引留鋲フライス 1 中継真鍮中心 1 二尺差 4
エレキテル量機* 1 真鍮房中心 1 測量器 原名レイブル 1
歯車機械 1 中継夏中心機 1 朝顔銕 3
望遠鏡十字張器械* 1 中継真鍮中心 1 デットビットキアルバノメダー* 1
西洋秤* 1 真鍮製大中心 1 エレキ量機* 2
定規付度規 1 挑銕中心二本棒 1 調子調機 原名サイレン* 1
小定規付分度規 2 大工盤留中心機 1 眼鏡度量機* 1
定規付分度規 1 真鍮製大夏付中心 1 ロシアランプ 1
大定規付分度器 1 大差金 2 三ツ股金具製造器械 1
附属轆轤盤三ツ股房中心 1 測量器三ツ股 1 円形押切器械 1
大分度規 1 雑品図 1 夏形男女共図 1
テヲトライト* 1 レシスタンスボックス* 1 雑器図 1
タライ盤中櫓 1 理学時計器* 1 玉摺機 18
玉形大小 3 雑品 7169
(注) なお別の欄に合計個数 7248,合計入費金 215 円 89 銭と記入されていた。末尾に*印を付した製造物は理学教育 用の器具と見られる。出所は(注 16)を参照。
表 3 工学寮向け赤羽製作所製造品
製造品 個数 現費金 収納金 此益
運転真棒 1 本 13.603 14.963 1.360
アングルボイルス教示歯車雛形 1 組 12.723 13.995 1.272
壱番製雛形鉱山鎔鉄炉 1 組 23.894 26.283 2.389
鞴蒸気器械雛形 1 組 59.727 65.700 5.973
エキセンテレーキ鋳物 1 組 0.900 0.990 0.090
砂火炉鋳物 1 組 10.641 11.705 1.064
丸鋸器械運転真棒持鋳物 2 組 4.956 5.452 0.496
打鉄角物 1 個 9.204 10.124 0.920
雛形製造用真鍮鋳物 6 個 6.089 6.698 0.609
舎密ガス穴蓋壱組仕上ケ並ニ引手金物* 1 組 3.030 3.333 0.303
雛形用真鍮鋳物 202 個 89.367 98.304 8.937
丸鋸アングルボイルス鋳物木形 1 組 16.404 18.044 1.640
十二インチ帯車鋳物木形 1 個 2.521 2.773 0.252
四十馬力蒸気器械雛形 1 組 12.156 13.372 1.216
轆轤器械鋳物十六品仕上ケ並ニシヤフト弐本 52.874 58.161 5.287 弐番製雛形鉱山鎔鉄炉壱組並ニ風管室弐組 30.403 33.443 3.040 ピストンワーフ付属半体シリントル雛形 1 組 17.907 19.698 1.791 トルニングレース皮掛歯車付連車木形 2 組 22.415 24.657 2.242
木金力試シ器械木形 1 組 17.941 19.735 1.794
雛形用真鍮鋳物 54 個 45.919 50.511 4.592
スライトワーフシリントル雛形 1 組 8.667 9.534 0.867
消防ポンプ水吐口木形 1 組 3.310 3.641 0.331
ガルバニ用釷丹鋳物* 100 個 37.189 40.908 3.719
長D印ワーフ付半体シリントル雛形 1 組 20.594 22.653 2.059 三番製雛形鉱山鎔鉄炉壱組並ニ風管室弐組 38.913 42.804 3.891
真鍮鋳物 78 個 55.798 61.378 5.580
龍吐水銅管新製其外仕上ケ共 2.704 2.974 0.270
電信柱四本付属箱並ニ同断家根金物 4 枚* 54.659 60.125 5.466 ロブルビットワーフ付半体シリントル雛形 1 組 28.265 31.092 2.827
木歯植車木形 1 個 6.723 7.395 0.672
真鍮鋳物 188 個 75.132 82.645 7.513
打鉄並ニ仕上ケ共 1 個 2.896 3.186 0.290
ポンプ蒸気三ツワーフ付半体シリントル雛形 1 組 19.643 21.607 1.964
真鍮鋳物 3 個 4.392 4.831 0.439
四番製鉱山鎔鉄炉雛形 1 組 20.386 22.425 2.039
短D印スライトワープ付シリントル半体雛形 1 組 19.969 21.966 1.997
真鍮鋳物 53 個 21.464 23.610 2.146
弐ツ組コルネシボイレル蒸気缶雛形 1 組 18.320 20.152 1.832
小木金力試シ器械鋳物木形 1 組 12.158 13.374 1.216
ポンプ蒸気三ツワープシリントル付属品コンデンソル雛形 1 個 3.290 3.619 0.329
(注)*印については,本文参照。出所は(注 19)を参照。
益は個々の製品の工学寮への販売から得られた利益である。この半年間に 77 種類の製品 が製造されたが,うち 40 種 51.9%が工学寮向けで,赤羽製作所自身のも 37.7%を占めて いた。
一方,諸器具を他に求める方法として輸入があった。輸入を仲介したのが,工学寮設立 に際してイギリス人教師採用に尽力したヒュー・マセソンが社長を勤めるジャーディン・
マセソン商会であった20)。「工部省沿革報告」によると,明治 4 年 1 月,「曽テ太政官ニ 稟議シテ曰ク,外国人ノ雇傭並諸器械購買等従来正規ナク
, 技長傭外国人ノ意ニ放任」し
ていたが,「未タ内国人ニシテ充分検査ノ任ニ適スルモノ」がいないため,東洋銀行にこ れを委託した。しかし,翌 5 年に「工部大輔伊藤博文ヲ欧州ニ派遣セルトキ英国龍敦カー テンマチソン社ニ委托ス,但鉄道器械ハ委托セス21)」ということになった。明治 8 年の「工部省考課状22)」に,「本寮学校用書籍並器械等別紙記載ノ通今般龍動ヘ 注文購買致シ度,尤モ経費ノ儀ハ物品ノ定価並英貨相場ノ高低未タ判然不致候ニ付,見積 高壱磅ニ付金五円ノ見込ヲ以テ金弐千円ヲ目途トシ購買致シ度旨相伺候処,二月二日許 可アリ」という記載が見いだせた。工学寮から本省にロンドンから書籍や器械を購入する ことを伺い,8 年 2 月に許可が下りたのである。1 ポンド= 5 円のレートで 2000 円分を輸 入することになった。さらに「本寮学校用書籍器具摸形代価三千弗分英国ヘ注文致シ度旨 相伺候処,四月十二日許可アリ,因テ英国龍動マゼソン社ヘ注文ス」とあり,洋銀 3000 ドル分の「書籍器具摸形」をマセソン社へ発注することが明記されている。同史料の後段 で 5 月頃のものと見られる「外国ヨリ購買品之部」という表題の記事にも,「一理学化学 用器械 代価英貨三百弐拾磅拾五◇七邉 此洋銀千四百九拾七弗三拾弐セント 右英国 龍動府マゼソン社ヨリ買入」(◇印の漢字は口偏に時とある。シリングの宛字ではなかろ うか)とあった。先の 2 月段階の記事もマセソン社への発注であったと考えられる。表 4 は,表 2 と同じ文献に基づくもので,8 年 1 月から 6 月までの間に外国から輸入した各種 器具を一覧したものである23)。貨幣単位はポンド・シリング・ペンスであろう。
しかし,輸入製品の品質は良くなかった。ダイアーは,「Imperial College of Engineering
(KOBU-DAI-GAKKO),Tokei. General Report by the Principal for the period 1873- 77.24)」(p.35. 1877 年 10 月 1 日付け)の中で,次のように指摘している。
I would draw your special attention to the difference between the models made
at the College and those imported from abroad; the former are designed to show
correctly all details,and are specially adapted for teaching purposes,the
latter are(with very few exceptions)nearly useless for teaching purposes,
and sometimes so badly made,that I am almost ashamed to place them in the museum. In future I only propose to get such models or machines from abroad as would be difficult or expensive to make here.
工部卿と参議を兼任していた伊藤博文への報告書なので,yourは伊藤である。工部大 学校で製作した模型と輸入模型を比べると違いがあることに注意していただきたい,と する。前者は細かな部分すべてを明示するようにデザインされており,とりわけ教育目 的に適しているが,後者は教育目的にほとんど役に立たず,しかも非常に粗悪に製作さ れている場合もあり,博物場に配備することが恥ずかしく感じられる。将来的には,工 部大学校で製作が難しいか,高費用となる場合に限り海外から模型や機械を輸入するよ う要望するとした。土木学・機械学教員として 1875 年 9 月に着任した
J. ペリーも同様の
ことを指摘している。前掲のClass Report(p.43)において,工作場でペリーの生徒の
監督の下に製作された模型以外は使い物にならず,輸入された橋梁模型は教育用模型で はなく玩具にすぎない,これ以上,輸入しないことを勧めたいとしている。以上のような工作場・赤羽製作所製品や輸入品が,博物場に学科別に配備された。7 年 2 月段階の日本語訳学科名がまだ暫定的なものであったので,次の引用は,学科名が安定 した 12 月段階の配備機械・用具・模型に関する学科別規定である。
表 4 外国購買品表
物 品 個数・箱 英 貨 物 品 個数・箱 英 貨
書籍並紙類 10 220.0803 化学器具* 6 118.0406
書籍 1 5.1402 同 1 4.0030
測量銕具化学薬品格物器械* 19 285.1005 化学器具ゴム類* 3 36.1006
製図具理学器銕類* 7 155.0509 書籍 1 11.1610
紙筆類 2 92.0901 図学書 1 .1306
理学器地学器* 2 38.0200 雑書 1 括 17.0708
鐘物甲殻結晶見本書籍 15 526.0806 器械薬品* 14 408.1406
地図 1 21.1004 書籍 1 9.0506
書籍 1 5.1310 同 2 57.0311
化学薬品* 9 53.1601 器械書籍 4 51.1110
書籍 1 12.0211 錫銕等見本 贈物運賃 8 2.1904
器械書籍 3 34.1907 銕類見本 贈物運賃 3 2.0510
鉱石見本 1 22.0407 合計 2195.0208
(注)史料には「英貨」とあるだけだが,貨幣単位はポンド・シリング・ペンスであろう。出所は(注 23)を参照。
第八十四條 整置スル所ノ諸品ヲ左ニ概掲ス
一土木学 本課ノ講義ニ於テ説明スル工業ノ諸器且近時各国ニ於テ有名ナル工業必 需ノ器械雛形
一機械学 本課ニ用ユル機械器物蒸氣機関ノ模形 一電信学 電信線建架並ニ作用ニ用ユル諸器模形 一造家学 造家諸式模形
一化学 化学ニヨリテ生スル諸品類並ニ実地化術微細ニ関スル諸機械模形 一鉱山学 諸鉱物及ヒ鉱山並諸器ノ模形
一鉱物学 諸鉱物ノ鎔鋳法機械ノ模形
理学は独立した学科ではなかったこともあり,これらの条項には掲げられておらず,同 じ校舎内の理学教室に別置されていたものとみられるが,理学に関連する電信学科には,
後述のように電信線架設や電信のための各種用具・模型が展示された。明治 6 年
Calendar
には「Models of all the different apparatus used in the construction and working oftelegraphs」 と あ っ た。10 年 Calendar
か ら「and specimens of the various kinds ofinstruments arranged in working order」が加えられたが,諸規則でこれに対する訳が
確認できるのは明治 15 年諸規則である。「及各種実用電信器ノ見品」がこれにあたる。明治 16 年から諸規則全体の記載内容が大きく変わっていくが,電信学科の博物場規定 は「電信線架設及ヒ其作用ニ要スル所ノ各種装置ノ雛形,及ヒ実用ノ順序ニ於テ装置シ タル各種電信機械ノ見本」と,Calendarの内容に近い表現となったくらいで,内容変更 はない。ただし,この年から博物場管理規則が 10 項目にわたって詳細に規定された。17 年に電信学科が電気工学科に変更されるにともなって,「電信線架設」が「電信構造」に 変更され,まだ電信に限定されているが,電気工学に相応しい規則になった。ただし他の 文章には変化はない。ちなみに 18 年
Calendar
では学科名はElectrical Engineering
に 変更されているが,明治 10 年から記載内容の変化は認められない。利用史料が限られていたため,前掲表のうち,電信学科の博物場に収納されていた可 能性のあるものは,表 3 のうち製造品末尾に「*」を付した「電信柱四本付属箱並ニ同断 家根金物 4 枚」くらいのものである。理学研究棟器具室用と見られるのは,同表のうち,
「舎密ガス穴蓋壱組仕上ケ並ニ引手金物」(理学研究棟には水道・ガス管が整備されてい た25)),ガルバニ電池の亜鉛と見られる「ガルバニ用釷丹鋳物」である。表 2 では「エレ キテル量機」,「望遠鏡十字張器機」,「テヲトライト」,「デットビットキアルバノメダー」
(速示検流計と翻訳されている
dead-beat galvanometer
のことで,後述のように,エア トンは実験・実習用器具として紹介した(表 10)),「エレキ量機」,「眼鏡度量機」など,表 4 では「測量銕具化学品格物器械」,「製図具理学器銕類」,「理学器地学器」などであ る。
2 理学教育用諸器具
理学教育のうち電信学に関する諸器具については,電信学教育に必要なほとんどが上 記の博物場に配備されたが,他の理学分野の実験用具や模型などの諸器具は,博物場,
教室,理学器具室26)などに保管され,講義内容の理解を円滑にするために実習室や講義 室に持ち出された。その後,明治 10 年 10 月,前掲図 1-№ 1'に理学研究棟が建設される にともなって,旧校舎から理学教育関連の諸器具が新校舎理学器具室に移されることに なった。
ここで紹介する理学教育用諸器具は,旧校舎時代のもので,新校舎において一層充実さ れたはずの諸器具全般を紹介することができなかった。エアトンは
Class Report(p.23)
の中で,異国語で教育を受ける学生にとって,実験的実例は言葉や印刷物よりはるかに優 れているので,可能な限り器具類の収集を完全なものにすることが最も望ましいとした。
最初の年においては,エアトン自身がロンドンに諸器具を発注したけれども受諾されず,
実験用諸器具がないまま授業が行われたが,その後の理学部門への豊富な助成金,とり わけ前述の工作場により提供された諸便宜により,完全なものへ近づくことができたと している。
エアトンは,予科にあたる 1,2 年生用の理学テキストとして「Elementary Treatise
on Natural Philosophy」を使用した。原著は,1868 年,リセ・ルイ=ル=グランの物理
学(physics)教授のデシャネル(Augustin Privat-Deschanel)により著された「TraitéÉlémentaire de Physique」であた。ベルファストのクィーンズ・カレッジ理学(natural philosophy)教授のエベレット(J. D. Everett)は,同原著第 2 版(1869 年)の翻訳を行
う一方で,彼自身の判断で補足説明や新たな章も加えた。出版年は 1870 年である27)。エ アトンは,同書を理学テキスに採用した理由として,英語文献として最適であったこと,すばらしい諸器具図版(工部大学校に少ししか器具がない場合,生徒に大いに役立つとし ている)が掲載されていたこと,同テキストは 4 巻からなっており,1 年生に必要な個所 と,理学の各種分野の研究に従事する 2 年生に必要な個所が異なるため,分冊になってい
る方が便利がいいこと,をあげている。工部大学校書房図書は,「参考用図書」(General
Library)と「教科用図書」(Class Library)に分類され
28),1878 年の「Catalogue ofBooks contained in the Library of the Imperial College of Engineering
29)」には,教科 用図書分類の「Natural Philosophy」に含まれる 929 冊のうち,同テキスト 4 巻の複本 が 108 部あった。同分類図書の 46.5%も占めていた。エアトンの
Class Report(p.23)では,テキストに関する指摘のすぐあと,
「Catalogueof Physical Apparatus」という表題の下に,器具室に収納されたであろう実験・実習用諸
器具をアルファベット順に紹介している。エアトンはデシャネルのテキストにしたがっ てこれらの諸器具を整備したのであろう。デシャネル著書
part
Ⅰは表 5 のように,第 1 〜 18 章から構成されている30)。「図版 数」欄には,それぞれの章に図版として掲げられている具体的な実験器具の数だけを集計 し,器具の取り扱い説明図,原理を説明するための幾何図形,大規模な施設図面などは 除いた。表 6 は,上記「Catalogue of Physical Apparatus」に記載されている諸器具と デシャネル著書との対応関係を見たものである。たとえば「力の平行四辺形」の原理を 証明するための器具については,デシャネル著書part
Ⅰ第 2 章の「p.12」に「fig.2」と
して,「フラーフェサンデの器具」は同章「p.13」に「fig.3」として掲載されていること表 5 「Elementary Treatise on Natural Philosophy」part Ⅰ (Mechanics, Hydrostatics, and Pneumatics)の章題
chapter chapter head 章 題 図版数 器具数
1 Preliminary Notions 予備的考察
2 Mechanics 力学 2 2
3 Constitution of Bodies 物体の組成 4 2
4 Gravity 重力 8 1
5 Laws of Falling Bodies 落体の法則 5 3
6 The Pendulum 振り子 5 4
7 The Balance 天秤 5 1
8 Hydrostatics 流体静力学 6 3
9 Principle of Archimedes アルキメデスの法則 5 4
10 Application of the Principle of Archimedes to
the Determination of Specific Gravities アルキメデ法則の比重測定への応用 6 1
11 Vessels in Communication Capillarity 相互に通じる容器―毛細管現象 10 4
12 The Barometer 気圧計 12 4
13 Variations of the Barometer 気圧計の変化
14 Boyle's Law ボイルの法則 10 3
15 Air-Pump 空気ポンプ 14 7
16 Upward Pressure of the Air 空気の上昇圧力 2 1
17 Pumps for Liquids 液体用ポンプ 10 5
18 Efflux of Liquids 液体の流出 10 4
(注)出所は(注 30)を参照。
表 6 「Elementary Treatise on Natural Philosophy」part Ⅰとエアトンの実験・実習用器具との対照
器 具 邦訳名称 fig. ページ chapter
Parallelogram of Forces(apparatus to prove). 力の平行四辺形 2 12 2
Gravesandeʼs Apparatus. フラーフェサンデの器具 3 13 2
Oerstedʼs Piezometer. エールステッドの圧度計 12 26 3
Pneumatic Syringe. 空気注入器 13 27 4
Centre of Gravity(experiments to illustrate). 重心 26 39 4
Mechanical Powers(apparatus to illustrate). 機械動力 未確認
Fall in Vacuo(apparatus to illustrate). 真空落下 27 41 5
Inclined Planes. 傾斜面 28 41 5
Attwoodʼs Machine. アトウッドの器械 29 42 5
Centrifugal Force(experiments on). 遠心力 36 62 6
Gyrostat. ジャイロスタット 未確認 6
Katerʼs Pendulum. カーターの振り子 60 6
Cycloidal Pendulum. サイクロイド振り子 39 72 6
Balances. 天秤 40 80 7
Hydrostatic Bellows. 水圧鞴 未確認 8
Pascalʼs Vases. パスカルの花瓶 57 98 8
Barkerʼs Mill. ベーカーの水車 62 101 8
Archimedesʼ Screw. アルキメデスのスクリュー 未確認 9
Principle(apparatus to prove). アルキメデス原理 66 106 9
Cartesian Diver. 浮沈子 68 108 9
Specific Gravity Bottles. 比重ビン 未確認 9
Hydrometers, Nicholsonʼs, Ordinary. ニコルソンの液体比重計,一般的
液体比重計 78 115 10
Haldatʼs Apparatus. ヘラルドの器具 89 122 11
Spirit-levels. アルコール水準器 92 124 11
Capillarity(apparatus to show). 毛細管現象 99-103 128 11
Cathetometer. カセトメーター 104 130 11
Barometers. 気圧計 109 145 12
Specific Gravity of Gases(apparatus for
determining). 気体の比重 106 141 12
Sympiesometer. 合成気圧計 118 156 12
Aneroid Barometer. アネロイド気圧計 119 157 12
Boyleʼs law(apparatus to illustrate). ボイルの法則 125 171 14
Pouilletʼs Apparatus(compression of gases). プイエの器具 127 173 14
Regnaultʼs Apparatus to measure coefficient of increase of pressure of gases at constant volume
(model of).
ルニョーのガス圧増加係数測定器具 128 174 14
Air-Pumps, 空気ポンプ 表題 15
Babinetʼs. バビネ 147 199 15
Bianchiʼs. ビアンキ 139, 140 189 15
Condensing. 圧縮ポンプ 151 203 15
Sprengelʼs. シュプレンゲル 146 197 15
Receivers, and Apparatus for. 容器と器具 未確認 15
Fountain in Vacuo. 真空噴水 143 192 15
Air-Gun. 空気銃 207 15
Baroscope. 鋭感気圧計 153 208 16
Heroʼs Fountain. ヘロンの噴水 215 17
Suction Pump(models of'). 吸上げポンプ 157-160 215-9 17
Force-Pump(models of). 押上げポンプ 161 220 17
Centrifugal Pump(model of). 渦巻ポンプ 223 17
Bramahʼs Press ブラマ式水圧機 167 223 17
Torricelliʼs Experiment with Spouting Liquids. トリチェリの噴出液実験 169 227 18
Burettes. ビュレット 171 231 18
Siphons. サイホン 175 234 18
Tantalus Vase. タンタロスの瓶 179 237 18
(注) 出所は「Catalogue of Books contained in the Library of the Imperial College Of Engineering](国立国会図 書館蔵)。
を示している。また「ページ」欄に「未確認」とあるのは,デシャネル著書の中で確認 できなかった器具で,エアトンは当該器具を「chapter」欄の章で使用したのではないか と推測した。同じ欄に「表題」とあるのは,「Catalogue of Physical Apparatus」に 1 括 りの諸器具の表題となっていることを示している。たとえば「空気ポンプ」は 4 種類の ポンプおよびそれに関連する諸器具をまとめて表現しており,1 つの具体的器具を示すも のではない。「fig.」欄が空白のものは,当該の図版がデシャネル著書に見いだせなかった が,「ページ」欄のページに当該器具の名称が使用されていることを記している。表 5 の
「器具数」欄には,表 6 に掲げた器具数を章別に示した。この中には,デシャネルのテキ ストに掲載されていない,エアトンが独自に用意した器具も含めた。
すなわち,デシャネル著書
part
Ⅰでは 114 個の実験器具図版を掲げたのに対して,エ アトンはその 43.0%にあたる 49 個の器具を用意し,part
Ⅰの授業に使用したと考えられ る。板書やプリントを通してその構造が明らかになる器具については,それらを利用し たのであろう。43.0%をどのように理解すればいいのか,問題も残るが,デシャネルの著 書にしたがって授業を進めていくエアトンにとって,前述の彼の指摘ように,満足のい く器具数比率だったのであろう。表 7 は,デシャネル著書
part
Ⅱについて,同様の方法を用いて処理したものである。part
Ⅱは第 19 〜 34 章からなっており,「Heat」という副題が付せられている。上と同じ表 7 「Elementary Treatise on Natural Philosophy」part Ⅱ(Heat)の章題
chapter chapter head 章 題 図版数 器具数
19 Thermometry 温度測定 20 9
20 Formulae relating to Expansion 膨張の公式
21 Expansion of Solids 固体の膨張 4
22 Expansion of Liquids 液体の膨張 4 1
23 Expansion of Gases 気体の膨張 4 3
24 Fusion and Solidification 融解と凝固 7 1
25 Evaporation and Condensation 蒸発と凝縮 12 1
26 Ebullition 沸騰 8 6
27 Measurement of Tension and Density of
Vapours 蒸気圧・密度の測定 5 2
28 Hygrometry 湿度測定 8 1
29 Radiant Heat 輻射熱 10 1
30 Conduction of Heat 熱伝導 8 4
31 Calorimetry 熱量測定 6
32 Thermo-Dynamics 熱力学 5 1
33 Steam and Other Heat Engines 蒸気機関と他の熱機関 9 1
34 Terrestrial Temperatures 地上温度 1
(注)出所は表 5 と同じ。
基準にしたがって 111 の図版が確認できた。一方,表 8 は前掲の表 6 に対応するもので,
エアトンの「Catalogue of Physical Apparatus 」には 31 の器具しか見いだせなかった。
その比率は 27.9%にすぎない。この比率が比較的高い章は,19,23,26,30 の各章であ る。全体に低くなった理由としては,たとえば第 33 章の場合,大規模な器具であったこ
表 8 「Elementary Treatise on Natural Philosophy」part Ⅱ(Heat)とエアトンの実験・実習用器具との対照
器 具 邦訳名称 fig. ページ chapter
Expansion of Solids, Liquids, Gases, by Heat
(apparatus to illustrate). 熱による固体・液体・気体の膨張 182-184 242,3 19
Thermometers, 温度計 表題 19
Centigrade. 百度目盛り温度計
191 250 19
Fahrenheit. ファーレンハイト温度計
Kew standard. キュー標準温度計 未確認 19
Sixʼs. シックス温度計 194 254 19
Maximum and Minimum. 最高最低温度計 195 255 19
Metallic. 金属温度計 197, 8 261 19
Differential. 差動温度計 200 263 19
Determination of Boiling Point of Thermometers
(apparatus for). 温度計の沸点測定 189 248 19
Pyrometers. 高温度計 199 262 19
Hopeʼs Experiment. ホープの実験 211 279 22
Gay-Lussacʼs Law(apparatus to illustrate). ゲイ−リュサックの法則 216 288 23
Draught in Chimneys(apparatus to show). 煙突通気 220 298 23
Singing Flames(burner for). 発音炎 未確認 23
Crystals(specimens of). 結晶 226 309 24
Cryophorus. クリオフォール 240 330 25
Marcetʼs Boiler. マーセットの釜 未確認 26
Vapour-pressure(apparatus to measure). 蒸気圧 246 336 26
Papinʼs Digester. パパンの蒸解がま 251 339 26
Donnyʼs Experiment. ドニーの実験 252 342 26
Spheroidal State(apparatus to show). スフェロイダル状態 344 26
Distilling(apparatus to illustrate). 蒸留 257 347 26
Pulse Glass. パルスグラス 未確認 27
Daltonʼs Apparatus to Measure Vapour
Presssure. ドルトンの蒸気圧測定器具 259 350 27
Hygrometer, Masonʼs, Regnaultʼs. メイソン,ルニョー湿度計 270, 1 369, 370 28
Melloniʼs Apparatus(radiant heat). メローニの器具 285 397 29
Conduction of Heat(apparatus to illustrate). 熱伝導 293 416 30
Ingenhouseʼs Apparatus to measure Heat
Conduction. インヘンホウスの熱伝導測定器具 294 417 30
Safety Lamp. 安全灯 296 418 30
Norwegian Cooking Stove. ノルウェーレンジ 301 424 30
Pneumatic Syringe. 空気注入器 310 445 32
Papinʼs Steam Engine(apparatus to show
principle of). パパンの蒸気機関 469 33
(注)出所は表 6 と同じ。
⎫⎬
⎭
とが考えられるが,逆に器具を製作する必要がなく,デシャネル著書に掲載された図版で 十分に理解が得られたとも考えられよう。しかし,今後の検討課題であるが,Calendar に掲載された理学シラバスに同章に関連する項目が掲げられていないことから,授業で 取り上げられなかった可能性もある。
同様に,表 9 は
part
Ⅲの諸章である。第 35 〜 42 章が「Electricity」で,第 43 〜 44 章「Magnetism」,第 45 〜 52 章「Current Electricity」
であった。器具数比率は 37.7%と比
較的高いが,41A,45,46,50 の各章においてとくに高くなっている。これは,前述の電 信学科博物場に収納されている器具もここに再掲載されたためである。たとえば,表 10 の「Batteries」は,そのほとんどが博物場に配置されており,理学棟器具室に収納されて いたものではない。「Telegraph Cables」についても同様である。「 〃 Instruments」の個所には,「For a detailed account of the telegraphic apparatus see the preliminary
Catalogue of the Telegraph Museum」と注記されている(仮カタログについては次項で
表 9 「Elementary Treatise on Natural Philosophy」part Ⅲ(Electricity and Magnetism)の章題
chapter chapter head 章 題 図版数 器具数
35 Introductory Phenomena 基本的諸現象 2 1
36 Electrical Induction 電気誘導 2 2
37 Measurement of Electrical Forces 電気力の測定 4 1
38 Electrical Machines 電気機械 8 4
39 Various Experiments with the Electrical
Machine 電気機械に関する諸実験 12 1
39A Electrical Potential and Lines of Electrical
Force 電位と電気力線
40 Electrical Condensers 電気コンデンサー 11 2
41 Effects produced by the Discharge of
Condensers コンデンサー放電による作用 6
41A Electrometers 電位計 3 2
42 Atmospheric Electricity 空中電気 6
43 General Statement of Facts and Laws 事実と法則の概説 3 2
44 Experimental Details 実験詳細 10 3
45 Galvanic Battery ガルバニ電池 11 9
46 Galvanometer 検流計 5 7
47 Ohm's Law オームの法則 7 2
48 Electro-Dynamics 電気力学 11 1
49 Heating Effects of Currents 電流の熱効果 5 1
50 Electro-Motors ―Telegraphs 電動機, 電信 13 11
51 Electro-Chemistry 電気化学 3
52 Induction of Currents 電流誘導 15 3
(注) chapter番号にAが付されているchapterは,エベレットがあらたに書き加えたchapterである。chapter35 か ら「Electricity」,chapter43 から「Magnetism」,chapter45 から「Current Electricity」となる。出所は表 5 と同じ。
表 10 「Elementary Treatise on Natural Philosophy」part Ⅲとエアトンの実験・実習用器具との対照
器 具 邦訳名称 fig. ページ chapter
Amber(specimens of). 琥珀 506 35
Electroscopes. 検電器 表題 36
Gold Leaf. 金箔検電器 339 517 36
Quadrant Pith Ball. ピスボール検電器 351 536 36
Coulombʼs Torsion Balance. クーロンのねじり秤 340 519 37
〃 (electric)Machines, 電気機械 533 38
Winterʼs. ウインターの電気機械 353 533 38
Ebonite. エボナイト 544 38
Electrophorus. 電気盆 358 544 38
Alvergniatʼs Apparatus(electric non-conductivity
of perfect vacuum). Alvergniatの器具 368 552 39
Condensers(1/10 to 3 microfarads capacity). コンデンサー 379 567 40
Battery of Leyden Jars. ライデン瓶 383, 4 571 40
Electrometers. 電位計 表題 41A
Reflecting Quadrant. 反射象限電位計 401C 594 41A
Ditto common. 同上 通常タイプ 401A 593 41A
Magnets. 磁石 612 43
Magnetism(apparatus to show experiments on). 磁気 612 43
Dip Circle(common). 伏角計 423 628 44
Marinerʼs Compass. 船用羅針儀 424 634 44
Electro-Magnet. 電磁石 427 635 44
Batteries, 電池 表題 45
Bichromate of Potash. 重クロム酸カリウム電池 未確認 45
Bunsenʼs. ブンセン電池 445 650 45
Groveʼs. グローブ電池 650 45
Daniellʼs. ダニエル電池 444 649 45
Leclancheʼs. ルクランシェ電池 未確認 45
Meidingerʼs. メイディンガー電池 未確認 45
Minottoʼs. ミノッティ電池 未確認 45
Smeeʼs. スミー電池 未確認 45
Thermopiles. 熱電対列 452 654 45
Galvanometers. 検流計 表題 46
Astatic 無定位検流計 464 662 46
Dead Beat. 速示検流計 未確認 46
Differential. 差動検流計 661 46
Reflecting(high resistance). 鏡検流計 464A 663 46
Tangent. 正接検流計 460 660 46
Vertical. 垂直検流計 未確認 46
Eudiometers. 水電量計 未確認 46
Rheostats. 可変抵抗器 467 669 47
Wheatstoneʼs Bridges. ホイートストーンブリッジ 471A 675 47
Solenoids. 筒形コイル 491 690 48
Electric Experiments(the ordinary). 電気実験 表題 49
〃 (electric) Light. 電灯 509 702 49
Telegraph Cables(specimens of). 電信ケーブル 534 733 50
〃 Construction(apparatus used in). 電信架設 未確認 50
〃 Instruments, 電信機 表題 50
Alarum. 警報 522 721 50
Autographic. 自記電信機 530 730 50
Block, ブロック電信機 未確認 50
Breguetʼs. ブレゲ指字電信機 518 713 50
Morse. モールス電信機 525 724 50
Single Needle. 1 針式電信機 517 717 50
Wheatstoneʼs A, B, C. ホイートストーンABC電信機 722 50
〃 Insulators(specimens of) 碍子 517 716 50
〃 Poles(models of). 電柱 713 50
Commutators(electric). 整流子 548 763 52
Induction Coils. 誘導コイル 549 764 52
Geisslerʼs Vacuum Tubes. ガイスラー真空管 550 765 52
(注)出所は表 6 と同じ。
取り上げる)。これらの器具を除くと,
part
Ⅲに対応する器具数はかなり少ない。エアト ンの主な専門分野は電磁気学であったため31),工部大学校生徒への平易な説明に多くの 器具を必要としなかったと理解できるかもしれない。もしくは,電磁気学実験器具に関 して工作場などの製作能力が低かったことによるのかもしれない。また,上述のように,授業で割愛された章もいくつかあったと考えられる。
最後の
part
Ⅳについては,表 11,12 の通りである。第 53 〜 56A章が「Acoustic」,第 57 〜 65 章が「Optics」であった。図版数が 79 であったのに対して,エアトンは 50 個の 器具を用意している。 その比率は 63.3%であったが,表 12 を見ると,全体に輸入品では ないかと推測させる器具が多い。とくにレンズ関連の器具はそうであろう。また第 53 〜 55 章のように,器具製作が比較的簡単であったことも器具数比率を高めた。3 電信学科用博物場
電信学科の博物場に収納された用具や模型,各種見本が,上記の「The Imperial College
of Engineering,Tokei. Preliminary Catalogue of the Apparatus in the Telegraph Museum,by W. E. Ayrton
32)」(以下,Catalogueとする)から明らかになる。1877 年に 作成されたものだが,エアトンのClass report
にCatalogue
が作成されていたことが記 されているので,まだ新校舎が完成してない段階の収納諸器具である。表 13−1 および 後掲表 13−2 がそれらの英語名称と暫定的な日本語名称である。合計 139 品目が掲げら れているが,以下のように,11 に分類できる。ただし 4 〜 5 ページが欠落し,№ 23 から表 11 「Elementary Treatise on Natural Philosophy」part Ⅳ(Sound and Light)の章題
chapter chapter head 章 題 図版数 器具数
53 Production and Propagation of Sound 音の生成と伝播 12 2
54 Numerical Evaluation of Sound 音の数値的評価 2 2
55 Modes of Vibration 振動モード 9 10
56 Analysis of Vibrations. Constitution of Sounds 振動分析 音の組成 5 2
56A Consonance, Dissonance, and Resultant Tones 協和音,不協和音,結合音
57 Propagation of Light 光の伝播 5 1
58 Reflection of Light 光の反射 10 10
59 Refraction 屈折 8 4
60 Lenses レンズ 6 2
61 Vision and Optical Instruments. 視覚と光学機器 11 8
62 Dispersion. Study of Spectra 分散 スペクトル研究 7 5
63 Colour 色 1
64 Wave Theory of Light 光の波動説 1
65 Polarization and Double Refraction 偏光と複屈折 3 3
(注)chapter53 から「Acoustic」,chapter57 から「Optics」となる。出所は表 5 と同じ。
表 12 「Elementary Treatise on Natural Philosophy」part Ⅳとエアトンの実験・実習用器具との対照
器 具 邦訳名称 fig. ページ chapter
Speaking Trumpet. 拡声器 581 809 53
Ear(model of). 耳 809 53
Siren. サイレン 583,4 822 54
Phonautograph. フォトノートグラフ 825 54
Sonometer. 測音器 587 831 55
Tuning Forks. 音叉 592 836 55
Organ Pipes. オルガンパイプ 593, 4 837 55
Reed Pipe. リードパイプ 599, 600 844 55
Königʼs Experiments on Manometric Flames. ケーニッヒ圧力炎実験 601 846 55
Flute. フルート 837 55
Koto(Japanese harp). 琴 未確認 55
Samisen(Japanese guitar). 三味線 未確認 55
Throat(model of). 咽喉 未確認 55
Melde's Apparatus(transformation of
vibrations). メルデの器具 未確認 55
Tuning Forks with Mirrors. 鏡付音叉 602 848 56
Blackburnʼs Pendulum ブラックバーン振子 605A 852 56
Photometers. 光度計 621 881 57
Kaleidoscope. 万華鏡 633, 4 890 58
Mirrors, Silvered Copper, Parabolic 銀被膜銅鏡,放物面鏡 893 58
〃 Silvered Glass, 水銀ガラス鏡 未確認 58
Concave. 凹面鏡 638 897 58
Convex. 凸面鏡 645 905 58
Interference. 干渉 未確認 58
Parabolic. 放物面鏡 894 58
Plane. 平面鏡 626 886 58
Sextant(model of) 六分儀 634B 892 58
Solar Mirror. 太陽鏡 未確認 58
Duboseʼs Apparatus for measuring the difference between the refractive indices of two
substances, when this difference is very small. デュボスの屈折率差違測定器具 912 59
Duboseʼs Apparatus to prove Laws of Reflection, Refraction, Polarization &c.
デュボスの反射・屈折・偏光法則
証明器具 912 59
Camera Lucida. カメラルシダ 657 916 59
Double Refraction(experiments on). 複屈折 667 926 59
Camera Obscura. カメラオブスクラ 687 942 60
Solar Microscope. 太陽顕微鏡 688 944 60
Anorthoscope. アノーソスコープ 未確認 61
Eye(model of). 眼 690 946 61
Stereoscopes. 立体鏡 692 950 61
Microscope Compound. 複式顕微鏡 698 956 61
〃 Model of. 顕微鏡模型 697 956 61
Telescopes, 望遠鏡 表題 61
Refracting. 屈折望遠鏡 700 958 61
Gregorian. グレゴリー望遠鏡 962 61
Models of. 望遠鏡模型 未確認 61
Prisms, プリズム 表題 62
Ordinary. 通常型プリズム 未確認 62
Rock Salt. 岩塩プリズム 978 62
To illustrate Achromatism. 色消しの例証 995 62
Spectroscope. 分光器 716 983 62
Lime Light. 石灰光 988 62
Diffraction Gratings with Telescope. 望遠鏡付回折格子 1026 64
Tourmaline Pincers. 電気石ペンチ 1032 65
Polariscope. 偏光器 730 1033 65
Nicholʼs. ニコルプリズム 731 1036 65
Bellows. 鞴
(注)出所は表 6 と同じ。