小学校算数科における速さの性質を用いて解決できる速さの問題場面に関する研究 : 「1つの対象の2つの動作」の問題場面の成立条件についての分析
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(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第67巻 第1号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 67, No.1. 平 成 28 年 8 月 August, 2016. 小学校算数科における速さの性質を用いて解決できる 速さの問題場面に関する研究 ― 「1つの対象の2つの動作」の問題場面の成立条件についての分析 ―. 渡 会 陽 平 北海道教育大学札幌校数学教育学研究室. A Study of Situations of Problems about Speed in Elementary School Mathematics Under the Nature of Speed : Analyzing the Conditions of Situations of “One Object, Two Motions”. WATARAI Yohei Department of Mathematics Education, Sapporo Campus, Hokkaido Unⅳersity of Education. 概 要 本稿の目的は,小学校算数科で扱うことができるが従来の学習内容では扱われていない速さ の性質を用いて解決することのできる速さの問題場面を明らかにするための基礎的研究とし て, 「1つの対象の2つの動作」の問題場面の成立条件を明らかにすることである。そのために, 速さの問題場面の成立条件を明らかにするための方法について検討した上で,仮定の設定の仕 方により場合分けされた各場合の問題場面としての成立条件について分析した。 その結果として,各場合の問題場面の成立条件を示すとともに,問題場面として成立する場 合は,解答となる数値を求めるための手続きに着目するとⅰ算術的な操作で求められる問題場 面,ⅱ一次方程式によって求められる問題場面,ⅲ二次方程式によって求められる問題場面の 3つに分類することができ,提示されている数値の扱い方に着目するとⅰ提示されている数値 をそのまま用いる問題場面,ⅱ提示されている数値を無視したり,任意に設定したりすること ができる問題場面の2つに分類できることを示した。. 1.研究意図. 理解することが難しい量である。平成10年改訂・ 平成14年度実施の学習指導要領から速さは小学校. 速さは異種の2量の割合として捉えられる量な. 算数科第6学年の学習内容として位置づけられて. ので,感覚的には分かるが概念の意味については. いるので,平成19年度から行われている全国学. 237.
(3) 渡 会 陽 平. 力・学習状況調査では速さの問題は出題されてい. より,任意に設定した道のりに対する平均の速さ. ないが,平成13年度教育課程実施状況調査(国立. と実際の道のりに対する平均の速さは等しいと判. 教育政策研究所教育課程研究センター,2003)で. 断することで,「往復で2時間かかった」という. は速さの問題が第6学年の調査問題として出題さ. 情報を用いることなく解決している点に特徴があ. れている。その結果によれば,速さの問題の演算. る。. 決定の正答率は8割を超えているので,これまで. さて,速さの理解に関して本稿において問いた. に行われてきた指導で速さについての理解は概ね. いことは,日本の算数教育を受けた児童はこの解. 達成できているとみることもできる。しかしなが. 法の妥当性について説明することができるのかと. ら,従来の学習内容で果たして本当に速さについ. いうことである。日本の算数科の教科書を見てみ. て理解させることができているのだろうか。. ると,教科書会社によって多少の違いはあるが,. Jang, Hwang & Cai(2014) はTIMSSやPISA. 速さの単元における具体的な学習内容としては主. といった国際比較調査で上位の成績を出している. に速さの比較,速さの定義,道のりを求める問題,. 中国とシンガポールの児童の問題解決における思. 時間を求める問題を順に学習する構成になってい. 考の特徴を明らかにすることを目的として,両国. る。そして,これらの学習内容における問題解決. の小学校第6学年の児童が速さの問題を解決する. は「速さが一定の時には時間と道のりが比例する」. ときに用いるストラテジーについて調査を行って. という性質を用いてなされ,その結果として速. いる。その調査において,簡略化して示せば「行. さ・時間・道のりの形式的な乗除の関係がまとめ. きは時速40km,帰りは時速120km,往復で2時. られ,その後はその関係を用いて問題を解決して. 間かかったときの往復の平均の速さを求めよ。」. いく。また,比例・反比例の単元では「道のりが. という問題が出題されている。このような問題は. 一定の時には速さと時間が反比例する」という性. 日本の算数科の速さの学習では扱われていない. 質が反比例の関係にある2つ量の事例として扱わ. が,中学校数学科の方程式の学習ではこのような. れているが,この性質を用いた問題解決は扱われ. 問題も扱われるので,その学習を通して容易に解. ていない。中学校数学科では速さは文字式や方程. 決できるようになる。しかしながら,Jang達の. 式,関数の学習で扱われる題材の1つとなり,そ. 調査において上記の問題を次のように解決した児. の問題解決は速さ・時間・道のりの乗除の関係か. 童がいた。. ら関係式を作り,その関係式に対する代数的な操 作によりなされる。もちろん,上記の児童の解法. 片道の道のりが1kmだとすると,行きに. において片道の道のりが任意でよいことは文字式. かかる時間は 1 ÷ 40 = 1 / 40時間。帰りにか. の学習内容を用いれば次のようにを示すことがで. かる時間は 1 ÷ 120 = 1 / 120時間。往復2km. きる。. にかかる時間は1 / 40 + 1 / 120 = 1 / 30時間。 よって,往復2kmの平均の速さは2÷(1 / 30). 片道の道のりが xkmだとすると,行きにか. = 60より時速60km。従って,実際の道のり. かる時間は x / 40時間。帰りにかかる時間は. についての往復の平均の速さも時速60kmで. x / 120時間。往復 2xkmにかかる時間は x / 40. ある。. + x / 120 = x / 30時間。よって,往復 2xkmの 平均の速さは 2x /(x / 30)=60より時速60km。. この解法は「速さが一定の時には時間と道のり. 従って,片道の道のりが何kmであったとし. が比例する」という性質の逆とみることができる. ても往復の平均の速さは時速60kmである。. 「道のりが変わってもそれに伴って時間も変われ ば速さは変わらない」という性質を用いることに. 238. しかし,上記の説明では代数的に片道の道のり.
(4) 小学校算数科における速さの性質を用いて解決できる速さの問題場面に関する研究. xkmが往復の平均の速さに影響しないことを示 しただけにすぎず,児童がどのような根拠に基づ. 2.研究課題と研究方法. いて片道の道のりを任意に設定して解決を進めた. ⑴ 考察対象とする速さの問題場面. のかについては説明することができない。このよ. 本研究はどのような速さの問題場面においてど. うに,日本の従来の算数・数学教育では速さ・時. のような速さの性質が用いられるのかを明らかに. 間・道のりの乗除の関係による問題解決はできる. することを目的とする。そのために,まずこれま. ようになるが,その一方で速さの性質を用いた問. での算数教育において主に扱われてきた速さ・時. 題解決という点については十分ではないのであ. 間・道のりの乗除の関係を1回用いて解決できる. る。つまり,速さの理解といったときに,速さ・. 問題場面の他にどのような速さの問題場面がある. 時間・道のりの乗除の関係の理解についてはこれ. のかについて整理する。. までの指導でなされているが,速さに伴う性質の. Mayer(1981)は当時のアメリカ・カリフォル. 理解については十分ではないのである。上記のよ. ニア州で使われていた中学校用の標準的な代数の. うな速さの問題を解決できるようにすればよいと. 教科書で扱われている文章題の分類を行い,速さ. いうことならば,これまで通りこのような問題は. の問題については13タイプ(単純な道のり・速. 方程式の学習において扱うだけで十分である。し. さ・時間,追いつき,正反対の方向に離れる,往. かしながら,速さについてのよりよい理解を目指. 復1,接近1,速さの変化1,等しい時間,等し. すならば, 「速さが一定の時には時間と道のりが. い道のり,直角に離れる,往復2,接近2,同じ. 比例する」という性質を用いた問題解決や速さ・. 方向で離れる,速さの変化2)に分類している。. 時間・道のりの乗除の関係による問題解決だけで. Mayerの分類における往復,接近,速さの変化に. はなく,その他の速さの性質を用いた問題解決も. ついてそれぞれ2種類あるのは,例えばある距離. 学習内容に位置づけて,速さについての見方を拡. を2人の人が互いに近づいていき,出会うまでに. げる必要がある。. どれだけの時間がかかるのかを求める問題場面に. 算数科においてこれまでに扱われている速さの. おいて, 「Aさんは時速3km,Bさんは時速6km. 問題場面は主に速さ・時間・道のりの乗除の関係. で近づく」というようにそれぞれの数値が提示さ. を1回用いて解決できるものに限られている。ま. れている場合と「BさんはAさんの2倍の速さで. た,教科書によっては旅人算も扱われているが,. 進む」というように同種の2要素の関係が提示さ. その解決は表に数を当てはめる推測と確認による. れている場合で区別しているからである。. ものである。このように日本の算数教育では上記. ま た,Jang達(2014) は 上 記 のMayerの 分 類. のような速さの性質を用いて解決することができ. と中国とシンガポールの算数科の教科書で扱われ. る速さの問題場面はこれまでに扱われてこなかっ. ている速さの問題に基づいて,両国の小学校第6. た。従って,速さの性質を用いた問題解決を実現. 学年向けに次の5つの分類から調査問題を出題し. するためには,まずどのような問題場面において. ている。. どのような速さの性質が用いられるのか,そして. ⅰ 「1つの対象の1つの動作」の問題場面:. 算数科で扱うことを前提としているから文字を用. Mayerの分類における単純な道のり・速さ・時. いる代数的な方法を用いなくても解決することが. 間の問題場面であり,日本の算数科において速. できるのかを明らかにする必要がある。. さの単元で扱われている問題場面である。. 以上の問題意識から,本研究は小学校算数科で. ⅱ 「1つの対象の2つの動作」の問題場面:. 扱うことができるが従来の学習内容では扱われて. Mayerの分類における速さの変化1,速さの変. いない速さの性質を用いて解決することのできる. 化2の問題場面である。. 速さの問題場面を明らかにすることを目的とする。. ⅲ 「1つの対象の往復」の問題場面:Mayerの. 239.
(5) 渡 会 陽 平. 分類における往復1,往復2の問題場面である。 ⅳ 「2つの対象のそれぞれ1つの動作」の問題. そこで,これら2つの問題場面の解決において用 いられうる速さの性質を明らかにすることを本研. 場面:Mayerの分類における追いつき,正反対. 究の課題とする。. の方向に離れる,同じ方向で離れる,接近1,. ⑵ 速さの問題場面の成立条件についての課題. 接近2の問題場面である。Jang達の調査問題. 算数科の速さの単元でこれまでに扱われている. では出題されていないが等しい時間,等しい道. 「1つの対象の1つの動作」の問題場面には速さ. のり,直角に離れるもこの分類に属する。. (v),時間(t),道のり(d)の3つの要素が関. ⅴ 「1つの対象の3つの動作」の問題場面:中. わり,v × t = d という関係が成り立つ。よって,. 国・シンガポールの両国の算数科において扱わ. この問題場面では3つの要素のうちの2つが既知. れていないが,児童が平均の速さの概念を3つ. 数として提示されていれば,それらを用いること. の動作に対しても適用できるかを調査するため. で残りの1つの要素を求めることができる。それ. に出題されている。. に対して,「1つの対象の2つの動作」の問題場. 上記のようにJang達の分類はMayerの分類を. 面には,第1区間における速さ(v1),時間(t1),. より大きな集合でまとめる分類である。Jang達. 道のり(d1),第2区間における速さ(v2),時間. の分類では「1つの対象の2つの動作」と「1つ. (t2),道のり(d2),全体の道のり(dt),全体の. の対象の往復」が分けられているが,往復とは「1. 時間(tt),全体における平均の速さ(vt)の9つ. つの対象の2つの動作」の問題場面において第1. の 要 素 が 関 わ り,v1 × t1 = d1 ,v2 × t2 = d2 ,vt. 区間と第2区間の道のりが等しいという同種の2. × tt = dt ,t1 + t2 = tt ,d1 + d2 = dt の5つの関係. 要素の関係が提示されているとみなすことができ. が成り立つ。このように「1つの対象の2つの動. るので, 「1つの対象の往復」を「1つの対象の. 作」の問題場面は要素間の関係が複合的であるた. 2つの動作」に含めることができる。そこで本稿. め,求めたい要素に対してどの要素が既知数とし. では,Jang達の5つの分類をさらに整理してⅰ. て提示されていれば,もしくはどの同種の2要素. ⅱⅳⅴの4つにまとめる。. の関係(例えば,d1 = d2 や t1 = t1 × 2)が提示さ. この4つの分類のうち, 「1つの対象の1つの. れていれば解決することのできる問題場面として. 動作」は日本の算数科の速さの単元でこれまでに. 成立するのかが明らかではない。同様に「2つの. 扱われている問題場面である。 「1つの対象の2. 対象の1つの動作」の問題場面においても関係が. つの動作」 と 「2つの対象のそれぞれ1つの動作」. 複合的になるので,解決することができる問題場. は「1つの対象の1つの動作」について動作数と. 面の成立条件は明らかではない。. 動く対象の数をそれぞれ1つ増やした問題場面で. 従って,本研究において考察対象とする2つの. あり,従来算数科で扱われている速さの問題場面. 問題場面で用いられうる速さの性質について検討. を1段階拡張した問題場面とみることができる。. するためには,それに先立ってそれぞれの問題場. また, 「1つの対象の3つの動作」は「1つの対. 面の成立条件を明らかにする必要がある。よって,. 象の2つの動作」について動作数を1つ増やした. 「1つの対象の2つの動作」及び「2つの対象の. 問題場面であるから,従来算数科で扱われている. 1つの動作」の問題場面の成立条件を明らかにす. 速さの問題場面を2段階拡張した問題場面とみる. ることも本研究の目的を達成するための課題となる。. ことができる。従って,従来扱われている速さの. ⑶ 本稿の目的. 問題場面を1段階拡張した「1つの対象の2つの. 以上より,本研究の目的を達成するために次の. 動作」と「2つの対象のそれぞれ1つの動作」の. 4段階を設定する。. 2つの問題場面が,従来の速さの学習を既習とし. ⅰ 「1つの対象の2つの動作」の問題場面の成. て解決に取り組みやすい問題場面になるだろう。. 240. 立条件を明らかにする。.
(6) 小学校算数科における速さの性質を用いて解決できる速さの問題場面に関する研究. ⅱ 「1つの対象の2つの動作」の問題場面で用 いられうる速さの性質を明らかにする。 ⅲ 「2つの対象の1つの動作」の問題場面の成 立条件を明らかにする。 ⅳ 「2つの対象の1つの動作」の問題場面で用 いられうる速さの性質を明らかにする。. 造関係”とし,それに対して問題文において提示 される同種の2要素の関係を“仮定関係”とする。 そして構造関係において,v1 × t1 = d1 ,v2 × t2 = d2 ,vt × tt = dt の3つを“乗法的構造関係とし, t1 + t2 = tt ,d1 + d2 = dt の2つを“加法的構造関 係”とする。また,問題文において既知数として. そして,上記のⅰを解決することを本稿の目的. 提示されている要素を“仮定要素”とし,問題文. とする。. において求めるべき未知数として設定されている. ⑷ 研究方法. 要素を“結論要素”とする。. 上記の目的を達成するために,本稿では以下の. ② 問題場面の図表現についての規定. 方法による理論的考察を行う。. 「1つの対象の2つの動作」の問題場面には上. ① 問題場面の成立条件についての分析方法の検. 述したように5つの構造関係が成り立ち,問題の. 討:まず問題場面として成立するとはどういう. 解決にはそれらが用いられる(構造関係が関係式. ことかについて規定する。次に,問題場面の成. としてそのまま用いられる場合もあれば,構造関. 立の成否に関わる問題場面の要素の影響につい. 係に基づく比例関係や反比例の関係が用いられる. て考察し,問題場面をどのように場合分けして. 場合もある)。しかし,問題の解決に必ず5つの. 分析をしたらよいのかを定める。最後に,上記. 構造関係が用いられるとは限らず,問題文におい. の判定基準と問題場面の場合分けに基づいて,. て設定された仮定によって解決に用いられる構造. どのような分析手続きを行えばよいのかについ. 関係の組み合わせは異なってくる。そこで,本稿. て示す。. では解決に用いられる構造関係の組み合わせを予. ② 問題場面の成立条件についての分析:①で定. め設定し,そこにさらに結論要素,仮定関係,仮. めた分析の手続きに基づいて,場合分けされた. 定要素を設定することによって問題場面の場合分. 各場合に対して問題場面の成立の成否判定を行. けを行い,それぞれの問題場面の成立条件を分析. う。それにより,各問題場面がどのような仮定. する。よって,問題場面の場合分けは多様になる。. の設定仕方の下で問題場面として成立するのか,. それを言葉で表現すると煩雑になるため,本稿で. 成立しないのかを特定する。即ち,本稿の目的. は図表現で表す。「1つの対象の2つの動作」の. である問題場面の成立条件を明らかにすると. 問題場面における5つの構造関係には相互関係が. は,各問題場面が問題場面として成立するため. あり,それを整理すると図1のように表せる。図. の仮定の設定の仕方を明らかにすることである。. 1の相互関係を本稿では簡略化して図2のように 表す。そして,問題場面の場合分けにおける図表. 3.「1つの対象の2つの動作」の問題場面の 成立条件についての分析方法の検討. 現を図3のように表す。図3における2本の太線 (┃と━)は解決に用いられる構造関係を表す。 □は結論要素として設定されていることを表し,. ⑴ 本稿における表現についての規定. ●は仮定要素として設定されていることを表す。. 分析方法の検討に先立って,本稿において用い. そして,2つの乗法的構造関係を横断する . る用語と図表現について規定する。. は, に囲まれた2つの要素の仮定関係が設定. ① 用語についての規定. されていることを表し,3つの乗法的構造関係を. 本稿では, 「1つの対象の2つの動作」の問題. 横断した は, に囲まれた3つの要素のう. 場面に内在する v1 × t1 = d1 ,v2 × t2 = d2 ,vt × tt. ちの両端の2つの仮定関係が設定されていること. =dt ,t1 +t2 =tt ,d1 +d2 =dt の5つの関係を“構. を表す。. 241.
(7) 渡 会 陽 平. できる。しかし,この場合は構造関係 v1 × t1 = d1 を用いることを前提としているにもかかわら ず,それを用いることなく解決できてしまってい るので問題場面として成立しているとは言えない。 【図1】. 【図2】. 【図3】. 従って,図3の場合は,v1 × t1 = d1 と t1 + t2 = tt の2つの構造関係を用いる問題場面で,求める べき要素は v1 であり,tt と dt の数値,そして t1. 【図8】×. 【図9】× 【図10】○. 【図11】○. と t2 及び d1 と dt の同種の2要素の関係が問題文 において提示されていることを意味する。具体的. 図8の場合は,2つの仮定関係を t2 = t1 ×. には, 例えば 「Aさんが家から公園まで行くのに,. tt = t2 ×. 公園から学校まで行くのにかかった時間の3倍か. る。一方で,問題解決では用いないが加法的構造. かり,結局家から学校まで行くのに2時間かかっ. 関係から tt = t1 +. た。また,家から公園までの道のりは家から学校. 1,. 2 と す る と,tt = 1 t1 × 2 = 1 2 t1 と な. 1 t1 = ( 1 + 1) t1 となる。よって,. 1 2 t1 = ( 1 + 1) t1 となるが任意の 1 2= 1+1. 1 , 2 につい. が成り立つわけではない。従って,. までの道のりの 3 / 5 で,家から学校までの道の. て. りは10kmである。このとき,家から公園まで進. 任意に. んだ速さを求めよ。」という問題場面になる。. 定に不整合が生じうることになるので,問題場面. ⑵ 問題場面の成立条件の判定基準. として成立しているとは言えない。. 次に,問題場面として成立するとはどういうこ. 図9の場合は構造関係 v1 × t1 = d1 と仮定要素. となのかについて検討する。. t1 ,d1 を用いて結論要素 v1 を求めることができ. 1 , 2 を設定した場合には問題場面の仮. るが,仮定要素 t2 は解決に用いられていない。 任意の t2 について問題場面の仮定に不整合が生 じることもない。よって,問題場面として成立し ているとみることもできる。しかしながら,本稿 【図4】×. 【図5】○. 【図6】○. 【図7】×. の目的は解決することのできる問題場面になるた めの成立条件を明らかにすることであって,問題. 例えば,図4の場合は仮定で設定されている構. 場面の仮定に不整合が生じるラインを明らかにす. 造関係 v1 × t1 = d1 と仮定要素 d1 を用いて結論要. ることではないので,問題解決に用いない仮定が. 素 v1 を求めることができないので,問題場面と. 設定されている場合は問題場面として不成立とす. して成立していない。しかし,図5の場合は仮定. る。一方で,1.で示したJang達の調査問題(図. で設定されている構造関係 v1 × t1 = d1 と仮定要. 10)場合には,仮定要素 tt を用いなくても解決で. 素 t1 ,d1 を用いて結論要素 v1 を求めることがで. きるので tt は過剰な仮定とみることもできる。し. きるので問題場面として成立している。さらに,. かしながら,tt が提示されている場合には tt を用. 図 6 の 場 合 も 構 造 関 係 v1 × t1 = d1 と 仮 定 要 素. いて解決することもできるので, tt を設定した場. t1 ,d1 を用いて未知数 v1 を求め,それと v1 と. 合(図10)と tt を設定しない場合(図11)ともに. v2 の仮定関係を用いることで結論要素 v2 を求め. 問題場面として成立するとする。. ることができるので問題場面として成立してい. 以上より,ⅰ設定された仮定から結論要素を求. る。一方で,図7の場合は v1 と v2 の仮定関係と. めることができる。ⅱ結論要素を求める過程にお. 仮定要素 v1 を用いて結論要素 v1 を求めることが. いて,設定されている仮定を全て用いている。ⅲ. 242.
(8) 小学校算数科における速さの性質を用いて解決できる速さの問題場面に関する研究. 設定された問題場面の仮定に不整合が生じない。 という3項目を全て満たす場合には問題場面とし. (ⅲ-2) 乗法的構造関係と加法的構造関係を1つ ずつ用いる場合. て成立すると判定し,いずれかを満たさない場合 には問題場面として成立しないと判定する。 ⑶ 仮定設定による場合分けについての検討. (ⅲ-3) 加法的構造関係を2つ用いる場合. 問題場面の成立の成否には,問題場面の仮定の 設定の仕方が影響する。即ち,解決に用いられる 構造関係の組み合わせは何か,そして結論要素, 仮定関係,仮定要素の配置場所はそれぞれどこか. ⅳ 構造関係を3つ用いる場合 (ⅳ-1) 乗法的構造関係を3つ用いる場合. である。そこで,次は構造関係,結論要素,仮定 関係,仮定要素による場合分けの仕方について検 討する。 ① 構造関係の組み合わせによる場合分け. (ⅳ-2) 乗法的構造関係を2つ,加法的構造関係 を1つ用いる場合. 「1つの対象の2つの動作」の問題場面の解決 に用いられる構造関係の個数は0~5であるか ら,解決に用いられる構造関係の個数によって場 合分けが可能である。しかし,乗法的構造関係と. (ⅳ-3) 乗法的構造関係を1つ,加法的構造関係 を2つ用いる場合. 加法的構造関係は仮定関係との関わりに関して性 質が異なっている。つまり,仮定関係は乗法的構 造関係との関わりにおいては2つの乗法的構造関 係の要素間の関係を示すのに対して,加法的構造 関係との関わりにおいては1つの加法的構造関係. ⅴ 構造関係を4つ用いる場合 (ⅴ-1) 乗法的構造関係を3つ,加法的構造関係 を1つ用いる場合. の中の2つの要素間の関係を示すのである。よっ て,乗法的構造関係,加法的構造関係がそれぞれ いくつ用いられるのかを考慮して場合分けをする と,大きく分けて以下の12通りに分けられる。. (ⅴ-2) 乗法的構造関係を2つ,加法的構造関係 を2つ用いる場合. ⅰ 構造関係を用いない場合 ⅵ 構造関係を5つ用いる場合 ⅱ 構造関係を1つ用いる場合 (ⅱ-1) 乗法的構造関係を1つ用いる場合 ② 仮定要素の設定の仕方 ⒜ 仮定要素の値の範囲 (ⅱ-2)加法的構造会関係を1つ用いる場合. 図12,13の場合において,それぞれ仮定要素 d2 と dt は解決には用いない過剰な要素である。 図12の場合は任意の d2 について問題場面の仮定. ⅲ 構造関係を2つ用いる場合 (ⅲ-1) 乗法的構造関係を2つ用いる場合. に不整合は生じない。しかし,図13の場合は例え ば d1 > dt となるように d1 と dt を設定してしまっ た場合には,構造関係 d1 + d2 = dt に不整合が生 じることになる。つまり,2つの量 d1 ,d2 の和で 243.
(9) 渡 会 陽 平. ある dt は必ず2つの量よりも大きくならなけれ. について,本稿の図表現では図17のように,必ず. ばならない。. 設定されなければならない仮定要素は●,いずれ か1つが設定されればよい仮定要素については代 表の1つを. ,他に可能性のある配置場所を で. 表す。そして,いずれか1つが設定されればよい 仮定要素の組が2組ある場合は,1組目を と , 【図12】×. 【図13】×. 2組目を. と で表す。. 【図14】○. 【図15】×. 同様に時間,速さについても要素間の大小関係 がある。そこで本稿の分析では,仮定要素は次の 条件を満たすように任意に設定できるものとする。 ⅰ 各要素は量:v1 , v2 , vt , t1 , t2 , tt , d1 , d2 , dt ∈ℝ+. 【図16】○. 【図17】○. ⅱ 速さの条件:v1 < vt < v2 または v2 < vt < v1 ⅲ 時間の条件:t1 , t2 < tt かつ t1 + t2 = tt. ③ 結論要素の配置場所による場合分け. ⅳ 道のりの条件:d1 , d2 < dt かつ d1 + d2 = dt. 問題場面として成立するかどうかには結論要素. ⒝ 仮定要素の配置場所. の配置場所も影響する。例えば,図18の場合は仮. 図14のように仮定要素が3つ配置されている場. 定要素及び構造関係を2つ用いることで結論要素. 合には,まず加法的構造関係を用いて t1 を求め,. を求めることができる。しかし,図18における結. それから乗法的構造関係を用いて結論要素 v1 を. 論要素の配置場所を図19のように2つの構造関係. 求めることができる。一方で,図15のように仮定. の交点に配置した場合には,どのように仮定要素. 要素が3つ配置されている場合には加法的構造関. と仮定関係を設定したとしても解決に用いない構. 係を用いることなく乗法的構造関係を用いるだけ. 造関係が存在してしまうため問題場面としては成. で結論要素 v1 を求めることができる。このよう. 立しない。このように構造関係上に結論要素を配. に配置される結論要素の個数が同じであっても,. 置する場合には,構造関係の交点に配置するか,. 配置される場所によっては設定されている構造関. 交点ではない位置に配置するかが問題場面の成立. 係が用いられないため問題場面として成立しなく. に影響する。では,構造関係の交点に結論要素が. なる。従って,本稿における分析では図15のよう. 配置された場合には問題場面として成立しないか. な問題場面として成立しなくなるような仮定要素. というと必ずしもそういうわけではない。例えば,. の配置は予め排除し,分析の対象外とする。. 図20の場合は問題場面として成立する。さらに,. また,図16の場合は仮定関係を dt = d2 × と. 構造関係上の交点ではない位置に配置する場合で. すると,dt =d1 +dt / だから d1 =( -1)dt / 。. あっても,乗法的構造関係上に配置するか,加法. よって,v1 = ( - 1) dt / t1 と結論要素を求める. 的構造関係上に配置するかも問題場面のタイプに. ことができる。この関係式から結論要素を求める. 影響する。また,図21のように構造関係上ではな. ために必要な仮定要素は dt と t1 であることが分. い位置に結論要素が配置された場合には必ず仮定. かるが,一方で v1 = ( - 1) d2 / t1 というように. 関係が必要になってくる。. dt の代わりに d2 が仮定要素として設定されてい ても問題場面として成立する。従って,この問題 場面において t1 は必ず設定されなければならな い仮定要素であり,dt と d2 はどちらか一方が設 定されればよい仮定要素である。このような違い. 244. 【図18】○. 【図19】×. 【図20】○. 【図21】×.
(10) 小学校算数科における速さの性質を用いて解決できる速さの問題場面に関する研究. そこで,本稿における分析においては,結論要. 「3倍の時間がかかった」のような乗法的な仮定. 素がⅰ解決に用いる乗法的構造関係上にあって構. 関係である。この違いの影響についてJang達の. 造関係の交点にはない場合,ⅱ解決に用いる加法. 調査問題の改題を用いて検討する。. 的構造関係上にあって構造関係の交点にはない場. 「P地点からQ地点までは時速40km,Q地点. 合,ⅲ解決に用いる構造関係の交点にある場合,. からR地点までは時速120kmで進み,合計2時間. ⅳ解決に用いる構造関係上にはない場合の4通り. かかった。Q地点からR地点までの道のりはP地. の場合分けを行う。. 点からQ地点までの道のりの2倍である。P地点. ④ 仮定関係の設定の仕方. からR地点までの平均の速さを求めよ。」という. ⒜ 仮定関係の配置場所による場合分け. 仮定関係が乗法的な問題場面ならば,1.で示し. 図8の場合,つまり同一の加法的構造関係にお. た児童の解法のように「合計2時間かかった」と. いて2つの仮定関係が提示されている場合には問. いう情報を用いないで解決することができる。一. 題場面の仮定に不整合が生じた。では,加法的構. 方で,「P地点からQ地点までは時速40km,Q地. 造関係は存在しないが図22のように速さについて. 点からR地点までは時速120kmで進み,合計2時. の仮定関係が2つ提示されている場合はどうなる. 間かかった。Q地点からR地点までの道のりはP. のか。2つの仮定関係を v2 = v1 ×. 1 ,vt = v2 ×. 地点からQ地点までの道のりよりも48km多い。. 2 と す る と,v2 = 1 v1 ,vt = 1 2 v1 と な る。 平. P地点からR地点までの平均の速さを求めよ。」. 均 の 速 さ に つ い て は 必 ず v1 < vt < v2 ま た は v2 <. という仮定関係が加法的な問題場面において,1.. vt < v1 を満たすから,v1 <. 1. で示した児童の解法のように「合計2時間かかっ. 1< 1 2<. た」という情報を用いない場合には次のようにな. v1 <. 1 2 v1 < 1 v1 または. 1 2 v1 <v1 より,1< 1 2 < 1 または. 1 が成り立たなければならない。しかしながら, この関係式は任意の. る。. 1 , 2 について成り立つわ. けではないから問題場面の仮定に不整合が生じう. 第1区間の道のりが1kmだとすると,第. る。以上より,同種の要素間について2つの仮定. 2区間の道のりは49kmである。第1区間に. 関係が設定されている場合には問題場面として成. かかる時間は 1 / 40時間。第2区間にかかる. 立しないと結論づけられる。. 時間は49 / 120時間。全体の道のり50kmにか かる時間は 1 / 40 + 49 / 120 = 13 / 30時間。よっ て,全体の平均の速さは50 / (13 / 30) = 1500 / 13だから時速1500 / 13km。従って,実際の 道のりについての平均の速さも時速1500 /. 【図8】×. 【図22】×. 13kmである。. そこで,本稿における分析では,同種の要素間. しかしながら,この解答は正しくない。つまり,. に設定できる仮定関係は1つという条件のもと. 仮定関係が加法的な場合には1.で示した児童の. で,ⅰ仮定関係が提示されない場合,ⅱ仮定関係. 解法で解決することができないのである。速さは. が1つ提示される場合,ⅲ仮定関係が2つ提示さ. 乗法的な概念であり,速さの性質も乗法的な性質. れる場合,ⅳ仮定関係が3つ提示される場合のそ. である。それ故に,仮定関係が乗法的な場合のほ. れぞれの場合について分析する。. うが速さの性質が用いられやすくなる。そこで,. ⒝ 仮定関係の種類による影響. 速さの性質が用いられる問題場面を明らかにする. 仮定関係には2通りが考えられる。即ち,「6. という本研究の目的を鑑み,本稿の分析において. 時間多くかかった」のような加法的な仮定関係と. は仮定関係は乗法的な関係のみを扱う。. 245.
(11) 渡 会 陽 平. ⑷ 問題場面の成立条件についての分析方法. ① 構造関係を用いない問題場面. 以上の検討に基づいて,本稿では構造関係の組. 次の1タイプが問題場面として成立する。. み合わせそれぞれについて次の手順で分析をする。 ⅰ 分析対象とする構造関係の組み合わせに対し て,結論要素の配置場所で場合分けをする。 ⅱ さらに,提示される仮定関係の個数及びその 配置場所で場合分けをする。. 【図0.1】. ⅲ 各場合について仮定要素を設定する。 ⅳ 各場合について,設定された仮定要素と仮定. ② 乗法的構造関係を1つ用いる問題場面. 関係及び場合分けで設定されている用いられる. 結論要素が構造関係上にある場合(図1.1~1.3). 構造関係の組み合わせに対して算術的な操作も. の3タイプ,構造関係上にない場合(図1.4,1.5). しくは代数的な操作を適用し,それにより結論. の2タイプが問題場面として成立する。. 要素を求めることができるかを確認する。併せ て,結論要素を求める過程において設定された 仮定が全て用いられているかを確認する。 ⅴ 結論要素が求められた場合には,設定した仮 定に対して不整合が生じていないかを確認する。. 【図1.1】. 【図1.2】. 【図1.4】. 【図1.5】. 【図1.3】. 4. 「1つの対象の2つの動作」の問題場面の 成立条件についての分析結果 ⑴ 各問題場面についての分析結果 解決に用いられる構造関係,結論要素の配置場. ③ 加法的構造関係を1つ用いる問題場面. 所,仮定関係の配置場所,結論要素の配置場所に. 次の3タイプが問題場面として成立する。. よって場合分けされた各問題場面に対して上記の 手続きで問題場面の成立条件の分析を行った。本 稿では紙幅の都合により分析の手続きについては 省略し, 問題場面として成立した場合のみを示す。 特に説明が必要な場合のみ,その旨について述べ. 【図1.6】. 【図1.7】. 【図1.8】. る。 また,本稿では問題場面として成立した個々の. ④ 乗法的構造関係を2つ用いる問題場面. 場合を網羅して示すのではなく,同じタイプの問. 次の3タイプが問題場面として成立する。特に. 題場面の代表となる1つの場合のみを示す。例え. 図2.2と図2.3の場合は提示する仮定要素の個数を. ば図1.3の場合ならば,乗法的構造関係の選び方. 変えても問題場面として成立するという特徴があ. が3通り,各構造関係において結論要素の配置場. る。. 所の選び方が3通り,2つの仮定関係それぞれに ついて配置場所の選び方が2通りずつあるから図 1.3と同じタイプの問題場面は3 × 3 × (2 × 2) = 36通りある。これらの代表として図1.3を示す。 【図2.1】. 246. 【図2.2】. 【図2.3】.
(12) 小学校算数科における速さの性質を用いて解決できる速さの問題場面に関する研究. 例えば,図2.2において2つの仮定関係を t2 = t1. 場合(図2.16~2.18)の3タイプが問題場面とし. ×. て成立する。. 1 ,d2 = d1 × 2 とすると,. v1 = (d2 / 2) / (t2 / 1) =. 1 (v2 t2) / 2 t2 = 1 v2 / 2. と結論要素を求めることができるので問題場面と して成立する。それだけでなく,上式の計算過程 では t2 が消去されているので,t2 が仮定要素とし て提示されている場合も問題場面として成立する. 【図2.4】. 【図2.5】. 【図2.6】. 【図2.7】. 【図2.8】. 【図2.9】. 【図2.10】. 【図2.11】. 【図2.12】 【図2.13】. 【図2.14】. 【図2.15】. 【図2.16】 【図2.17】. 【図2.18】. ことになる。これまでに分析してきた問題場面に おいては,問題場面として成立する場合は図1.7 の場合を除いて全ての場合で仮定要素が構造関係 と仮定関係の交点ではない場所に配置されてい た。しかし,この場合は構造関係と仮定関係の交 点にある t2 が仮定要素になる。図1.7の場合は構 造関係と仮定関係の交点になっている2ヶ所が仮 定要素を配置可能な場所であったが,この場合も, v1 = (d2 / 2) / t1 = v2 t2 / =. 2 t1 = v2 ( 1 t1) / 2 t1. 1 v2 / 2. というように他の交点である t1 が消去される計 算過程でも結論要素を求めることができる。よっ て,仮定要素の配置場所は t1 でもよい。さらに, v1 = d1 / (t2 / 1) =. 1 d1 / (d2 / v2). =. 1 v2 d1 / 2 d1 = 1 v2 / 2 ,. ⑥ 加法的構造関係を2つ用いる問題場面. v1 = (d2 / 2) / (t2 / 1) =. 1 d2 / 2(d2 / v2). いずれの場合も問題場面として成立しない。. =. 1 v2 / 2. ⑦ 乗法的構造関係を3つ用いる問題場面. というように他の交点である d1 ,d2 が消去され. いずれの場合も問題場面として成立しない。. る計算過程でも結論要素の求め方もできる。従っ. ⑧ 乗法的構造関係を2つ,加法的構造関係を1. て,この場合の仮定要素の配置場所は図2.3のよ. つ用いる問題場面. うに v2 は固定で,もう1つは構造関係及び仮定. 結論要素が乗法的構造関係上にある場合(図3.1. 関係の交点4ヶ所から任意に選べばいい。このよ. ~3.11)の11タイプ,加法的構造関係上にある場. うに,代数的な操作による計算過程において要素. 合(図3.12~3.15)の4タイプが問題場面として. が消去される場合には,消去される要素を仮定要. 成立する。図3.5と3.6,3.7と3.8,3.9と3.10はそれ. 素として提示した場合も,提示しない場合もとも. ぞれ提示する仮定要素の個数を変えても問題場面. に問題場面として成立する。また,構造関係及び. として成立する関係にある。. 仮定関係の交点上の要素が仮定要素になる場合に は他の交点上の要素も仮定要素になりえる。 ⑤ 乗法的構造関係と加法的構造関係を1つずつ 用いる問題場面 結論要素が乗法的構造関係上にある場合(図2.4. 【図3.1】. 【図3.2】. 【図3.3】. 【図3.4】. ~2.9)の6タイプ,加法的構造関係上にある場 合(図2.10~2.15)の6タイプ,構造関係上にない. 247.
(13) 渡 会 陽 平. の要素だから交点上の要素から2個選んだ組み合 わせが仮定要素の候補になる。しかし,ⅰ同一の 【図3.5】. 【図3.6】. 【図3.7】. 【図3.8】. 仮定関係内の要素を2つ選んだ場合,ⅱ結論要素 を含む構造関係上の要素を2つ選んだ場合に問題 場面として成立しないことは明らかである。よっ て,速さと時間の要素を1つずつ,速さと道のり. 【図3.9】. 【図3.10】. 【図3.11】. 【図3.12】. の要素を1つずつ時間と道のりの要素を1つずつ 選んだ場合が残りの候補になる。v1 と t1 が仮定要 素の場合には計算過程において v1 が消去されて tt =( 1 + 2) t1 /. 【図3.13】 【図3.14】. 【図3.15】. 1 となる。v1. と t2 が仮定要素の場. 合 に は 計 算 過 程 に お い て v1 が 消 去 さ れ て tt = ( 1 + 2) t2 /. 2 となる。v1. と d1 が仮定要素の場合. は上記で示されている。v1 と d2 が仮定要素の場 図2.3の場合は代数的な操作において構造関係. 合 に は tt =( 1 + 2) d2 /. 及び仮定関係の交点上の要素が仮定要素になった. 仮定要素の場合には計算過程において d1 が消去さ. 場合に他の交点上の要素を仮定要素としても問題. れ て tt =( 1 + 2) t1 /. 場面として成立したが,図3.11は必ずしもそうな. 素の場合には計算過程において d2 が消去されて tt. らない場合である。図3.11において2つの仮定関. =( 1 + 2) t1 /. 係を v2 = v1 ×. 1 ,d2 = d1 × 2 とすると,t1 = d1 /. 記の6通りの場合と同様である。よって,いずれ. 2 d1 / 1 v1 だから tt = ( 1 + 2) d1 / 1 tt で. の場合も結論要素を求めることができたから,仮. ある。d1 は構造関係及び仮定関係の交点上の要. 定要素の配置場所は上記の2つの条件ⅰⅱを満た. 素だから他の交点上の要素も仮定要素の候補にな. さないように交点上の要素から2つ選んで配置す. る。しかし,v2 を仮定要素とした場合に問題場面. ればいい。このように,構造関係及び仮定関係の. として成立しないことは明らかである。また, t1. 交点上の要素が2つ以上仮定要素になる場合には. を仮定要素とした場合には. 交点上の要素の組み合わせも仮定要素になりえる。. v1 ,t2 =. より. 2 v1 t1 = 1 v1 (tt - t1). 2 t1 = 1 (tt - t1) となるが,この式は任意の. t1 ,tt ,. 1 2 v1 と な る。t1 と. 1 と な る。t1. d1 が. と d2 が 仮 定 要. 1 となる。残りの6通りの場合も上. また,上記で示したように図3.14の場合におい. 1 , 2 について成り立つわけではない。. て仮定要素の一方に時間の要素を選んだ場合に. つまり,設定した問題場面の仮定に不整合が生じ. は,もう1つの要素は計算過程において消去され. うることになる。t2 に配置した場合も同様であ. る。よって,図3.15のように仮定要素が1つしか. る。よって,仮定要素の配置場所は tt は固定で,. 提示されない場合も問題場面として成立すること. もう1つは d1 または d2 のどちらかである。この. になる。t1 は構造関係の交点上の要素だから交点. ように,構造関係及び仮定関係の交点上の要素が. 上の他の要素も仮定要素の候補になるが,他の要. 仮定要素になる場合に他の交点上の要素も必ず仮. 素を1つ選んだ場合に問題場面として成立しない. 定要素になるわけではなく,問題場面として成立. ことは図3.14の場合で明らかである。. しない仮定要素の配置は除外する必要がある。. ⑨ 乗法的構造関係を1つ,加法的構造関係を2. 図3.14の場合は仮定設定において仮定要素を2. つ用いる問題場面. つ選ぶことができる問題場面である。2つの仮定. 結論要素が乗法的構造関係上にある場合(図. 関 係 を v2 = v1 ×. 1 ,d2 = d1 × 2 と す る と,tt =. 3.16~3.21)の6タイプ,加法的構造関係上にあ. 1 v1 と結論要素を求めることができ. る場合(図3.22~3.30)の9タイプが問題場面と. ( 1 + 2) d1 /. る。v1 と d1 はともに構造関係と仮定関係の交点上 248. して成立する。.
(14) 小学校算数科における速さの性質を用いて解決できる速さの問題場面に関する研究. 【図3.16】. 【図3.17】. 【図3.18】. 【図3.19】. 【図4.13】. 【図4.14】. 【図3.20】. 【図3.21】. 【図3.22】. 【図3.23】. 【図4.17】. 【図4.18】. 【図4.15】. 【図4.16】. 次に,結論要素が加法的構造関係上にある場合 【図3.24】. 【図3.25】. 【図3.26】. 【図3.27】. は図4.19~4.30の12タイプが問題場面として成立 する。図4.27と4.28,4.29と4.30はそれぞれ提示す る仮定要素の個数を変えても問題場面として成立 する関係にある。. 【図3.28】. 【図3.29】. 【図3.30】. ⑩ 乗法的構造関係を3つ,加法的構造関係を1 つ用いる問題場面. 【図4.19】. 【図4.20】. 【図4.21】. 【図4.22】. 【図4.23】. 【図4.24】. 【図4.25】. 【図4.26】. 【図4.27】. 【図4.28】. 【図4.29】. 【図4.30】. いずれの場合も問題場面として成立しない。 ⑪ 乗法的構造関係を2つ,加法的構造関係を2 つ用いる問題場面 まず結論要素が乗法的構造関係上にある場合は 図4.1~4.18の18タイプが問題場面として成立す る。図4.9と4.10,4.11と4.12,4.13と4.14,4.15と4.16, 4.17と4.18はそれぞれ提示する仮定要素の個数を 変えても問題場面として成立する関係にある。. 図4.20と図4.29の場合は仮定設定において仮定 要素を2つ選ぶことができる問題場面である。こ 【図4.1】. 【図4.2】. 【図4.3】. 【図4.4】. の仮定設定においては,図3.14の場合で示したよ うにⅰ同一の仮定関係内の要素を2つ選んだ場 合,ⅱ結論要素を含む構造関係上の要素を2つ選 んだ場合に問題場面として成立しない。よって,. 【図4.5】. 【図4.6】. 【図4.7】. 【図4.8】. 図4.20の場合の仮定要素の配置場所は dt は固定 で,残りの2つは上記の2つの条件を満たさない ように構造関係及び仮定関係の交点6ヶ所から2 つ選んで配置すればいい。また,図4.29の場合の. 【図4.9】. 【図4.10】. 【図4.11】. 【図4.12】. 仮定要素の配置場所は上記の2つの条件を満たさ ないように構造関係及び仮定関係の交点7ヶ所か. 249.
(15) 渡 会 陽 平. 所のいずれかに2つ配置すればいい。. ら2つ選んで配置すればいい。. 【図4.31】. 【図4.32】. 【図4.33】. 【図4.34】. 【図5.4】. 【図5.5】. 【図5.6】. そして,図5.4の問題場面における特筆すべき 【図4.35】. 【図4.36】. 【図4.37】. 【図4.38】. 点として,図5.5または図5.6のように仮定要素を 配置した場合には結論要素を求める代数的な手続 きにおいて二次方程式を用いる必要が生じること がある。つまり,仮定関係に交わる2つの乗法的. 【図4.39】. 【図4.40】. 【図4.41】. 【図4.42】. 構造関係において一方で時間の要素を,もう一方 で道のりの要素を仮定要素として選んだ場合に は,結論要素を求めるために二次方程式を解かな. 最後に,結論要素が構造関係の交点上にある場. ければいけないのである。例えば,図5.5におい. 合は図4.31~4.42の12タイプが問題場面として成. て仮定関係を v2 = v1 × とすると,tt = d1 / v1 +. 立する。図4.39と4.40,4.41と4.42はそれぞれ提示. t2 ,dt = d1 + v1 t2 だ か ら vt = (d1 + v1 t2) / (d1 /. する仮定要素の個数を変えても問題場面として成. v1 + t2) となる。この式を整理すると t2 v12 + (d1. 立する関係にある。. - vt t2) v1 - vt d1 = 0 となり,この二次方程式を. ⑫ 構造関係を5つ用いる問題場面. 解くことで結論要素 v1 を求めることができる。. まず結論要素が乗法的構造関係上にある場合は 図5.1~5.4,5.7,5.11,5.12,5.14,5.15の9タイプ が問題場面として成立する。図5.2と5.3,5.11と 5.12,5.14と5.15はそれぞれ提示する仮定要素の個 数を変えても問題場面として成立する関係にある。. 【図5.7】. 【図5.8】×. 【図5.9】×. 【図5.10】 ×. 図5.7の場合は仮定設定において仮定要素を3 つ選ぶことができる問題場面である。この場合は 【図5.1】. 【図5.2】. 【図5.3】. ⅰ同一の仮定関係内の要素を2つ選んだ場合,ⅱ 同一の構造関係上に結論要素及び仮定要素を合わ せた個数が3つになるように選んだ場合に加え. 図5.1と図5.4の場合は仮定設定において仮定要. て,ⅲ図5.8,5.9,5.10のように仮定要素を配置. 素を2つ選ぶことができる問題場面である。よっ. した場合も問題場面として成立しない。よって,. て,図5.1の場合の仮定要素の配置場所は v2 と vt. この場合の仮定要素の配置場所は上記の3つの条. は固定で,残りの2つは先述の条件ⅰを満たさな. 件を満たさないように構造関係及び仮定関係の交. いように構造関係の交点6ヶ所のいずれかに2つ. 点8ヶ所から3つ選んで配置すればいい。また,. 配置すればいい。また,図5.4の場合の結論要素. この場合は図5.5や図5.6のように仮定関係に交わ. の配置場所は vt は固定で,残りの2つは先述の. る2つの乗法的構造関係において一方で時間の要. 条件ⅰⅱを満たさないように構造関係の交点6ヶ. 素を,もう一方で道のりの要素を仮定要素として. 250.
(16) 小学校算数科における速さの性質を用いて解決できる速さの問題場面に関する研究. 選んだとしても結論要素を求めるための代数的な. の場合は先に示した2つの条件に加えて,ⅲ図. 手続きにおいて二次方程式を解く必要が生じない。. 5.18のように仮定要素を配置した場合も問題場面. 図5.12の場合は仮定設定において仮定要素を2. として成立しない。よって,この場合の仮定要素. つ選ぶことができる問題場面である。先に示した. の配置場所は vt は固定で,残りの2つは上記の. 2つの条件に加えて,ⅲ図5.13のように仮定要素. 3つの条件を満たさないように構造関係及び仮定. を配置した場合も問題場面として成立しない。. 関係の交点7ヶ所のいずれかに2つ配置すればい. よって,この場合の仮定要素の配置場所は上記の. い。また,5.20の場合の仮定要素の配置場所は v1. 3つの条件を満たさないように構造関係及び仮定. は固定で,残りの2つは先述の2つの条件を満た. 関係の交点8ヶ所から2つ選んで配置すればいい。. さないように構造関係及び仮定関係の交点6ヶ所 のいずれかに2つ配置すればいい。どちらの場合 も図5.19や図5.21のように仮定関係に交わる2つ の乗法的構造関係において一方で時間の要素を,. 【図5.11】. 【図5.12】. 【図5.13】×. もう一方で道のりの要素を仮定要素として選んだ 場合には,結論要素を求めるための代数的な手続 きにおいて二次方程式を解く必要が生じる。 図5.4,5.7,5.16,5.20の分析結果より,結論要. 【図5.14】. 素を求めるために二次方程式を解く必要が生じる. 【図5.15】. 仮定設定の条件について整理する。図5.4,図5.17, 図5.20については結論要素を求めるために二次方. 次に,結論要素が構造関係の交点上にある場合. 程式を解かなければならない場合があったが,図. は図5.16,5.17,5.20,5.22~5.27の9タイプが問. 5.21についてはそのような場合はなかった。二次. 題場面として成立する。図5.24と5.25,5.26と5.27. 方程式を解く必要が生じた場合に共通すること. はそれぞれ提示する仮定要素の個数を変えても問. は,ⅰ解決に構造関係を5つ用いる問題場面であ. 題場面として成立する関係にある。. り,ⅱ仮定関係が速さの要素間に対して1つ提示 され,ⅲその仮定関係内に含まれない速さの要素 が仮定要素として配置され,さらにⅳ仮定関係に 交わる2つの乗法的構造関係において一方で時間. 【図5.16】. 【図5.17】. 【図5.18】 × 【図5.19】. の要素が,もう一方で道のりの要素が仮定要素と して配置されていることである。この4つの条件 を全て満たす場合には結論要素を求めるためには 二次方程式を解く必要が生じる。図5.7の場合は. 【図5.20】. 【図5.21】. 【図5.22】. 【図5.23】. ⅰⅱⅳの条件を満たすことはできる。しかし,仮 定関係に含まれない速さの要素が結論要素である ため,ⅲの条件を満たすことはできない。 ⑵ 分析結果のまとめ. 【図5.24】. 【図5.25】. 【図5.26】. 【図5.27】. ⑴においては,解決に用いる構造関係,結論要 素の配置場所,提示される仮定関係の個数と配置 場所,仮定要素の配置場所による場合分けによっ. 図5.17と5.20の場合は仮定設定において仮定要. て,各問題場面の成立条件の分析を行った結果を. 素を2つ選ぶことができる問題場面である。5.17. 示した。それらの全ての問題場面に対する包括的. 251.
(17) 渡 会 陽 平. な成立条件については本稿では追究しない。本稿. ためには,vt t2 + (2 - 1) d1 = 0 または 4 (1 - ). では,分析結果のまとめとして解決の仕方を視点. d1 2 = 0 にならなければならない。まず,vt t2 + (2. とした問題場面の分類を示す。. - 1) d1 = 0 の場合には根号の中は 4 (1 - ) d1 2. ① 結論要素を求めるための手続きによる分類. になる。しかし, (1 - ) を2乗の形にはできな. 結論要素を求めるための手続きに着目すると,. いので,この場合には成り立たない。次に,4 (1. 問題場面として成立する場合はⅰ算術的な操作で. - ) d1 2 = 0 の場合には d1 > 0 だから = 0 また. 求められる問題場面,ⅱ一次方程式によって求め. は = 1 にならなければならない。しかし, =. られる問題場面,ⅲ二次方程式によって求められ. 0 ならば移動していないことになり問題場面とし. る問題場面の3つに分けることができる。. て成立しない。また, = 1 ならば速さが変化し. 図5.1aはⅰの問題場面の例である。この問題場. ていないので,求めるべき第1区間の速さと提示. 面は既知数に対して算術的な操作を繰り返すこと. されている平均の速さが同じであることは明らか. で容易に結論要素を求めることができる。. である。よって,この場合も問題場面として成立. 図4.31はⅱの問題場面の例である。この問題場. しない。従って,代数的な操作において二次方程. 面は既知数に対して必ずしも算術的な操作を適用. 式を解く必要が生じる問題場面では必ず無理数の. できるとは限らないので,未知数を文字で表した. 値が関わるので,算数科では扱うことができない。. り,未知数を仮定したりする必要が生じる。. ② 仮定要素の扱い方による分類. 図5.5はⅲの問題場面の例である。ⅱの場合と. 解決の手続きにおける仮定要素の扱い方に着目. 同様に既知数に対する算術的な操作だけでは結論. すると,問題場面として成立する場合はⅰ提示さ. 要素を求めることができないので,未知数を文字. れている仮定要素をそのまま用いる問題場面,ⅱ. で表す必要があるが,その際,ⅱの場合は一次方. 提示されている仮定要素を無視したり,任意に設. 程式を解くことで結論要素を求めることができた. 定したりすることができる問題場面の2つに分け. が,この場合は二次方程式を解かなければならな. ることができる。. い。そこで,このような問題場面を算数科におい. 図5.1a,4.31,5.5はいずれも提示されている仮. て扱うことができるのかについて検討する。. 定要素をそのまま用いるのでⅰのタイプの問題場 面である。一方で,図2.2,2.3,3.5,3.6はいずれ もⅱのタイプの問題場面である。. 【図5.1a】. 【図4.31】. 【図5.5】. 図5.5において仮定関係を v2 = v1 × とすると,. 【図2.2】. 【図2.3】. 【図3.5】. 【図3.6】. t2 v1 2 + (d1 - vt t2) v1 - vt d1 = 0 であるから, v1 =. vt t2 - d1 ± vt 2 t2 2 + 2 (2 - 1) vt t2 d1 + d1 2 2 t2. 図2.2(図3.5)の問題場面の仮定設定が提示さ れた場合には,図2.3の場合も問題場面として成 立するので,問題解決において任意に t1 ,t2 ,. である。算数科では無理数を扱えないから,上式. d1 ,d2 の値を定めたとして結論要素を求めるこ. を解として扱うためには根号の中の式を2乗の形. とができる。さらに,図3.6の場合も問題場面と. 2. 2. にして,根号を外す必要がある。vt t2 + 2(2 - 2. 2. 1) v t t 2 d 1 + d 1 ={v t t 2 + (2 - 1) d 1}+ 4 (1 - ) 2. d1 であるから,根号の中の式を2乗の形にする 252. して成立するので,任意に tt ,dt の値を定めたと しても結論要素を求めることができる。 一方で,図2.3や図3.6の問題場面の仮定設定が.
(18) 小学校算数科における速さの性質を用いて解決できる速さの問題場面に関する研究. 提示された場合には,代数的な操作の計算過程に. 引用・参考文献. おいて消去される仮定要素(図2.3ならば t1 ,t2 , d1 ,d2 ,図3.6ならば tt )の値をそのまま用いて も解決できるが,その仮定設定を無視して上記の 場合のように任意に要素の値を定めたとしても結 論要素を求めることができる。. Jang, C., Hwang, S., & Cai, J. (2014). Chinese and Singaporean sixth-grade students’ strategies for solving problems about speed. Educational Studies in Mathematics, 87⑴, 27-50. Mayer, R. E. (1981). Frequency norms and structural analysis of algebra story problems into families,. 5.まとめと今後の課題 本稿では,速さの問題場面における「1つの対 象の2つの動作」の問題場面について,解決に用 いる構造関係,結論要素の配置場所,提示される 仮定関係の個数と配置場所,仮定要素の配置場所. categories, and templates. Instructional Science, 10⑵, 135-175. 国立教育政策研究所教育課程研究センター編(2003).『平 成13年度 小中学校教育課程実施状況調査報告書 小学校 算数』 .東洋館出版社.. (札幌校特任講師). を観点とした場合分けを行い,各場合について問 題場面として成立の成否を分析を行った。その結 果として,各場合の問題場面としての成立条件を 示すとともに,問題場面として成立する場合は, 結論要素を求めるための手続きに着目した場合に はⅰ算術的な操作で求められる問題場面,ⅱ一次 方程式によって求められる問題場面,ⅲ二次方程 式によって求められる問題場面の3つに分類する ことができ,仮定要素の扱い方に着目した場合に はⅰ提示されている仮定要素をそのまま用いる問 題場面, ⅱ提示されている仮定要素を無視したり, 任意に設定したりすることができる問題場面の2 つ分類できることを示した。また,結論要素を求 めるための代数的な操作において二次方程式が必 要になる問題場面については,仮定関係及び仮定 要素の値をどのように設定したとしても必ず無理 数が関係してしまうため算数科では扱うことがで きないことを示した。 本研究の目的は,小学校算数科で扱うことがで きるが従来の学習内容では扱われていない速さの 性質を用いて解決することのできる速さの問題場 面を明らかにすることなので,4.⑵で示した解 決の仕方による問題場面の分類をもとにしなが ら,どのような問題場面においてどのような速さ の性質を用いることで解決することができるのか を明らかにすることが今後の課題である。. 253.
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