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ネギ葉枯病の発生生態と防除に関する研究 学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 農 学 ) 三 澤 知 央

学 位 論 文 題 名

ネギ葉枯病の発生生態と防除に関する研究 学位論文内容の要旨

  北海道におけるネギの収穫量は29,200t(全国第4位)であり,全国有数の産地である。道 内のネギ産地では2000年頃から収穫期に中心葉に発生する黄色斑紋症状が顕在化している。

ネギ(根深ネギ)栽培においては,葉鞘部に中心葉3枚をっけて出荷するため,黄色斑紋症状 の発生により外観品質が著しく低下し,栽培上の重要な問題となっている。本症状を顕微 鏡下で観察すると葉枯病菌の分生子を確認できることから,本症状と葉枯病の関係が指摘 されているが実験的な証明はされていない。また,ネギ葉枯病に関する研究知見は,これ まで国内および海外においてもほとんどなぃ。そこで本研究では,黄色斑紋症状の発生原 因の解明ならびに同症状およびネギ葉枯病の発生実態,発生生態および防除に関する研究 を行なった。

1.発生実態と被害

  2007年に全道のネギ主産地32圃場において葉枯病(従来から発生が知られている褐色楕 円形病斑)および黄色斑紋症状の発生実態を調査した結果,いずれの圃場でも褐色楕円形病 斑および黄色斑紋症状の発生が確認された。黄色斑紋症状の発病度は3.1〜61.3であり,本 症状による被害が全道的に発生している実態が明らかとなった。また,褐色楕円形病斑は,

葉身 先端部に 発生す る先枯れ病斑と葉身中央部に発生する斑点病斑の2種類に類別される ことおよび同病斑と黒斑病は病微が酷似し,病徴観察では識別できないことを明らかにし た。両病害を病斑上に形成した分生子の顕微鏡観察により識別した結果,99.5%の病斑で葉 枯病菌が確認され,道内のネギに発生している褐色で楕円形の病斑のほばすべてが葉枯病 であることが明らかとなった。

  2005〜 2007年に道内の主要作型である8r. 10月どり作型において発生推移調査を調査し た結果,先枯れ病斑は収穫期までに大半の圃場において発病株率70%以上に達した。斑点 病斑は,べと病,さび病,黒斑病が発生したあとに二次的に葉枯病菌が感染して発生し,

なか でもべと 病発生 の影響が 大きか った。黄 色斑紋 症状は9月どり作型において9月中旬

〜10月上旬にもっとも発生が多くなった。また,収穫時期が遅れるほど発生が増加した。

  発病と被害の関係を解析した結果,褐色楕円形病斑は主に外葉に発生するため出荷葉に まで発生することは稀であった。また,同病斑の発生により減収することはなかった。黄 色斑紋症状は,第1〜3葉に発生するため,発病の大半が出荷部位であり,発生が即被害に っ な が っ た 。 黄 色 斑 紋 症 状 が 出 荷 前 後 の 保 存 中 に 増 加 す る こ と は な か っ た 。 2.病原苗の同定と病原性

  分離菌の完全世代は,黒色・球形でくちばしを有する偽子のう殻,無色・こん棒状・二 重壁の子のう,その内部に長楕円形〜スリッパ形・黄褐色で縦横に隔壁を有する子のう胞 子を8個形成した。これらの形態的特徴よりPleospora sp.と同定した。不完全世代は,分 生子柄および分生子を形成した。分生子柄は先端が膨潤し,貫生により再伸長し,その先 端 に は分 生 子 を単 生し た。分 生子は縦 横に石 垣状の隔 壁を有し た。分 生子の縦 横比が 1.8〜1,9の 菌株をStemphylium veslcarium (Wallroth) Simmons,縦横比が1.4の菌株を S.botryosum Wallrothと同定した。

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  黄色斑紋症状および褐色楕円形病斑よりそれぞれ分離したS.vesicariumをネギ葉に接種 したところ,いずれの菌株も中心葉には黄色斑紋症状,外葉には褐色楕円形病斑を形成し,

接種菌が再分離され,黄色斑紋症状がネギ葉枯病の一病徴であることが明らかとなった。

そのため,本症状を黄色斑紋病斑と呼称することを提案した。

  北海道内のネギ主要産地の23圃場から採取した罹病葉より褐色楕円形病斑由来21菌株,

黄色 斑紋 病斑 由来23菌株の合計44菌 株を得,同定した結果,41菌株がS.vesicarium,3 菌株がS.botryosumであり,前者が優占種であった。

3.葉枯病菌の諸性質

  ネ ギ , ニ ラ , ア ス パ ラ ガ ス か ら 分 離 し た &botryosumお よ び ネ ギ か ら 分 離 し た S.vesicariumは,いずれもネギ,タマネギ,アスパラガスに病原性を示し,寄生性の分化 は認 めら れな かっ た。ネギ由来のS vesicariumおよびS.botryosumの培地上における生 育適 温は25℃ であ った。分生子の形 成適温はS vesicariumが15℃,S.botryosumが20℃ であった。子のう胞子の形成適温は,両種とも10℃であった。

4.葉枯病菌の感染・発病好適条件と伝染環

  ネギ葉枯病菌を種々の条件で接種し,接種温度,植物の生育ステージ,葉の濡れ時間,

接種葉位,接種方法と発病の関係を解明した。褐色楕円形病斑の発生好適温度は10〜15℃ で生育ステージと発生程度の間に明瞭な関係はなかった。一方,黄色斑紋病斑の発生好適 温度は15〜20℃で生育が進んだ株ほど発病が多くなる傾向があった。また,ネギ葉枯病菌 の病原性は極めて弱いことを明らかにした。

  圃場観察,胞子トラップ,病原菌の分離等の手法により,ネギ葉枯病菌S vesicariumの 伝染環を調査した結果,ネギの生育期間 中である7月〜10月中旬は褐色楕円形病斑上に多 量の分生子を形成し,二次伝染を繰り返した。これが中心葉に感染すると黄色斑紋病斑を 形成した。偽子のう殻の形成は生育期間の終盤あるいは収穫終了直後にあたる10月下旬に 始まった。ネギ葉枯病菌は,罹病葉上のみならず外観健全葉上にも偽子のう殻を形成し,

土壌表面および土壌中で越冬した。偽子のう殻からは翌春の3月中旬〜6月上旬に子のう胞 子が飛散し,これが本病の一次伝染源になっていると推定した。

5.防除対策

  本研究では,葉枯病のみならず本病と同時期に発生するネギ栽培における重要病害べと 病およびさび病に対する薬剤防除法を確立するため,3病害に対する各種薬剤の防除効果な らびに薬剤散布体系を検討した。はじめ にシメコナゾール・マンゼブ水和剤,TPNフロア ブル,アゾキシストロどンフロアブルなど10薬剤の防除効果を明らかにした。次に前記の 3剤を用いた 薬剤散布体系を確立した。すなわち,8月どり作型では6月中旬,9月どり作 型で は7月 上旬 ,10月どり作型では8月中旬からシメコナゾール・マンゼブ水和剤を2週 間間 隔で3回散 布し たの ち,9月ど り作 型で は収穫3〜2週間前にTPNフロアブルを2回,

収穫1週間 前に アゾ キシ スト ロビ ンフ ロア ブル を1回,10月どり 作型では収穫3〜2週間 前 に ア ゾ キ シ ス ト ロ ビ ン フ ロ ア ブ ル を2回 散 布 す る 薬 剤 散 布 体 系 を 構 築 し た 。   ネギ品種間の黄色斑紋病斑の発病差異を検討し,「北の匠」および「元蔵」では発生が多 く,「白羽ー本太」では中程度であり,「秀雅」は発生が少ないことを明らかにした。また,

窒素の過剰施用および土壌pHの低下は,黄色斑紋病斑の発生を助長することを明らかにし た。

  以上のように,本研究ではネギの中心葉に発生する黄色斑紋症状の発生原因を解明し,

同症状を含むネギ葉枯病について,病原菌の同定・諸性質,発病好適条件,病原菌の伝染 環 を 解 明 す る と と も に , 薬 剤 散 布 お よ び 耕 種 的 防 除 対 策 を 確 立 し た 。

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(3)

学 位 論 文 審 査 の 要旨

主 査   教 授

副 査 副 査 教 授 教 授

増田 上田 近藤

学 位 論 文 題 名

    税 一 郎 則 夫

ネ ギ 葉 枯 病 の 発 生 生 態 と 防除 に 関 す る研 究

  全国有数のネギ産地である北海道内のネギ栽培圃場では2000年頃から収穫期の中心葉に発生 する黄色斑紋症状が顕在化している.ネギ栽培においては,葉鞘部に中心葉3枚をっけて出荷す るため,同症状の発生により外観品質が著しく低下し,栽培上の重要な問題となっている.本症 状は葉桔病との関係が指摘されているが実験的な証明はされていない.また,ネギ葉枯病に関す る研究知見は,ほとんどなかった..そこで本研究では,黄色斑紋症状の発生原因の解明ならびに 同 症 状 お よ ぴ ネ ギ 葉 枯 病 の 発 生 実 態 , 発 生 生態 およ び防 除に 関す る研 究 を行 なっ た,

1.発生実魍と被害

  2007年に全道のネギ主産地32圃場において葉枯病(従来から発生が知られている褐色楕円形病 斑)および黄色斑紋症状の発生実態を調査した結果,いずれの圃場でも褐色楕円形病斑および黄色 斑紋症状の発生が確認され,黄色斑紋症状による被害が全道的に発生している実態が明らかとな った.また,褐色楕円形病斑は,葉身先端部に発生する先枯れ病斑と葉身中央部に発生する斑点 病斑の2種類に類別されることを明らかにした.

  2005〜  2007年に道内の主要作型である8〜10月どり作型において発生推移調査を実施した結果 先桔れ病斑は収穫期までに大半の圃場において発病株率70%以上に達した.斑点病斑は,主にべ と病が発生したあとに二次的に葉枯病菌が感染して発生した,黄色斑紋症状は9月どり作型にお     ´′―丶

いて9月中旬〜 IO月上旬にもっとも発生が多くなった.また,収穫時期が遅れるほど発生が増加 した.

2.病原苗の同定と病原性

  分離菌の完全世代は,偽子のう殻,子のう,子のう胞子を形成し,その形態的特徴よりPleospora sp.と同定した,不完全世代は,分生子柄および分生子を形成した.分生子の形態よりStemphylium vesicarium (Wallroth) Simmonsお よ びS.botryosum Wallrothと 同 定 し た ,

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  黄 色 斑 紋 症 状 お よ び 褐 色 楕 円 形 病 斑 よ り 分 離 し たS.vesicriumを ネ ギ 葉 に 接 種 し た と こ ろ , い ず れ の 菌 株 も 中 心 葉 に は 黄 色 斑 紋 症 状 , 外 葉 に は 褐 色 楕 円 形 病 斑 を 形 成 し , 接 種 菌 が 再 分 離 さ れ , 黄 色 斑 紋 症 状 が ネ ギ 葉 桔 病 の 一 病 微 で あ る こ と が 明 ら か と な っ た . そ の た め , 本 症 状 を 黄 色 斑 紋 病 斑 と 呼 称 す る こ と を 提 案 し た .

  北 海 道 内 の ネ ギ 主 要 産 地 か ら 採 取 し た44菌 株 を 同 定 し た 結 果 ,S.vesicariumが 優 占 種 で あ っ た , 3. 葉 枯 病Iの 請 性 質

  ネ ギ , ニ ラ , ア ス パ ラ ガ ス か ら 分 離 し たSbotryosumお よ び ネ ギ か ら 分 離 し たS.vesicariumの 問 で は . 寄 生 性 の 分 化 は 認 め ら れ な か っ た . ネ ギ 由 来 のSvesicariumお よ びS.botryosumの 培 地 上 に お け る 生 育 適 温 は25℃ で あ っ た , 分 生 子 の 形 成 適 温 はS.vesicrlum15℃ ,S.botryosum20 で あ っ た . 子 の う 胞 子 の 形 成 適 温 は , 両 種 と もIO℃ で あ っ た .

4. 薫 枯 病 ■ の 感 染 ・ 発 病 好 適 条 件 と 伝 染 環

  褐 色 楕 円 形 病 斑 の 発 生 好 適 温 度 は1015℃ で 生 育 ス テ ー ジ と 発 生 程 度 の 間 に 明 瞭 な 関 係 は 認 め ら れ な か っ た . 一 方 , 黄 色 斑 紋 病 斑 の 発 生 好 適 温 度 は1520℃ で 生 育 が 進 ん だ 株 ほ ど 発 病 が 多 く な る 傾 向 が あ っ た , ま た , ネ ギ 葉 枯 病 菌 の 病 原 性 は 極 め て 弱 い こ と を 明 ら か に し た .   ネ ギ 葉 枯 病 菌S vesicariumの 伝 染 環 を 調 査 し た 結 果 , ネ ギ の 生 育 期 間 中 で あ る7月 〜lO月 中 旬 は 褐 色 楕 円 形 病 斑 上 に 多 量 の 分 生 子 を 形 成 し , 二 次 伝 染 を 繰 り 返 し た . こ れ が 中 心 葉 に 感 染 す る と 黄 色 斑 紋 病 斑 を 形 成 し た . ネ ギ 葉 枯 病 菌 は , 罹 病 葉 上 の み な ら ず 外 観 健 全 葉 上 に も 偽 子 の う 殻 を 形 成 し 越 冬 し た . 偽 子 の う 殻 か ら は 翌 春 子 の う 胞 子 が 飛 散 し , こ れ が 本 病 の 一 次 伝 染 源 に な っ て い る と 推 定 した

5. 防 除 対 策

  本 研 究 で は , 葉 枯 病 の み な ら ず 本 病 と 同 時 期 に 発 生 す る ネ ギ 栽 培 に お け る 重 要 病 害 ぺ と 病 お よ び さ び 病 に 対 す る 薬 剤 防 除 法 を 確 立 す る た め ,3病 害 に 対 す る 各 種 薬 剤 の 防 除 効 果 な ら び に 薬 剤 散 布 体 系 を 検 討 し た , は じ め に シ メ コ ナ ゾ ー ル ・ マ ン ゼ プ 水 和 剤 ,TPNフ ロ ア ブ ル , ア ゾ キ シ ス ト ロ ビ ン フ ロ ア ブ ル な どIO薬 剤 の 防 除 効 果 を 明 ら か に し た . 次 に 前 記 の3剤 を 用 い た 薬 剤 散 布 体 系 を 確 立 し た ,

  品 種 比 較 試 験 の 結 果 , 「 北 の 匠 」 お よ び 「 元 蔵」 では 黄 色斑 紋病 斑 の発 生が 多 く. 「白 羽 ー本 太」

で は 中 程 度 で あ り , 「 秀 雅 」 は 発 生 が 少 な い こ と を 明 ら か に し た . ま た , 窒 素 の 過 剰 施 用 お よ ぴ土 pHの 低 下 は , 黄 色 斑 紋 病 斑 の 発 生 を 助 長 す る こ と を 明 ら か に し た ,

  以 上 の よ う に , 本 研 究 で は ネ ギ の 中 心 葉 に 発 生 す る 黄 色 斑 紋 症 状 の 発 生 原 因 を 解 明 し , 同 症 状 を 含 む ネ ギ 葉 桔 病 に つ い て , 発 生 実 態 , 発 病 生 態 を 明 ら か に し , 防 除 対 策 を 確 立 し た ,

  よ っ て , 審 査 員 一 同 は , 三 澤 知 央 氏 が 博 士 ( 農 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 十 分 な 資 格 を 有 す る も の と 認 め た ,

    l

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