博 士 ( 医 学 ) 阿 部 理 一 郎
学位論文題名
Enhancement of macrophage mlgrationinhibitory f ・aCtor (MIF )eXpreSSlonlnlnJuredepidernliS andCulturedfibroblaStS
(創傷部表皮およぴ線維芽細胞における マクロファージ遊走阻止因子の発現増強)
学位論文内容の要旨
背景と目的
ヒトマクロファージ遊走阻止因子(macrophage migration inhibitory factor: MIF)のcDNAが1989年に ク ロー ニ ング さ れ, そ の 後の 研 究に よ りMIFは 炎 症性サイトカイン,下垂体ホルモン,グルチコルチコイド誘導性免疫調節蛋白 として再評価されている。皮膚においてMIFは表皮基底層に強く発現しており、
アトピー性皮膚炎の重症度とMIFの血中濃度が相関することも明らかになった。
し かし 、 皮膚 に おけ るMIFの生理学 的役割は未 だ充分解明 されていな い。
一方創傷治癒過程において,様々なサイ卜カインが発現時期および発現量を 複雑に調節しながら治癒を促進することが知られている。このような経緯から MIFはサイトカインとしても、この創傷治癒過程において何らかの役割を果た している可能性が示唆される。
本研究の目的はラットを用いて皮膚創傷治癒におけるMIFの関与を明らかに することである。
方法
ウイスターラットを用い、背部皮膚に切傷を作成し継時的に創傷部皮膚を採 取し、Reverse transcription‑polymerase chain reaction/Southern blot (RT‑
PCR/Southern)を用 いてmRNAの発現を検討した。同時に血清を採取し血清中 のMIF濃 度をELISAで計測 し、創傷部 位でMIF蛋 白の発現を 免疫組織学 的に 検討し た。またBoyden chamberを用いてMIFの表皮細胞遊走能に対する影響 を検討し、さらに皮下に埋めたスポンジから分離、培養した線維芽細胞,いわ ゆる 創傷部線維芽細胞 におけるMIFの産生能を測定した。またマウス背部
皮膚に切傷を作成した皮膚創傷モデルにおいて、MIFに対し中和作用を持っポ リクローナル抗体投与の創傷治癒に対する効果をみた。
結果
創 傷 部 皮 膚 に お い てMIF mRNAは 増加 し 、 創傷 後3時 間 と12時間 で 二相 性に ピ ーク がみられ た。同様に 血清中のMIF濃度も創 傷後3時 間、12時間と でピークが みられた。 創傷後12時間 後の免疫組 織染色ではMIF蛋白の発現は 創傷部位の 表皮全層に みられた。Boyden chamberを用いた遊走能の検討では MIFは表皮細胞の遊走能を有意に亢進した。加えて創傷部位から分離、培養し た線維芽細 胞において は、LPS刺激により、MIFの産生能が有意に増加した。
さらにマウス皮膚創傷モデルにおいて、MIF中和抗体投与群はコント口ール群 に比べ有意に創傷治癒を遷延させた。
これらの結果より、MIFは皮膚創傷治癒促進に対して重要な役割を果たして、
いると示唆された。
学位論文審査の要旨
学位論文題名
Enhancement of macrophage mlgrationinhibitory f ・ aCtor ( MIF )eXpreSSloninlnJuredepidermiS andCulturedfibroblaStS
(創 傷 部 表皮 およぴ線 維芽細胞に おける マ ク ロフ ァ ー ジ遊走阻 止因子の発 現増強)
ヒトマクロファージ遊走阻止因子(macrophage migration inhibitory factor: MIF)のcDNAが1989年 に ク ロ ー ニ ン グ さ れ , そ の 後 の 研 究 に よ りMIFは 炎 症 性 サイ トカイン, 下垂体ホ ルモン, グルチコ ルチコイ ド誘導性 免疫調節蛋 白 と し て再 評 価さ れ て いる 。 我々 は 皮 膚におい てMIFは表皮 基底層に 強く発現し て こ とを 報 告し て い る。 し かし 、 皮 膚におけ るMIFの生理 学的役割 は未だ充分 解 明 され ていない。 一方創傷 治癒過程 において ,様々な サイトカ インが発現 時 期 お よび 発現量を複 雑に調節 しながら 治癒を促 進するこ とが知ら れている。 そ こ で サイ ト カイ ン と して のMIFも 創 傷治 癒に関与 している ことが予 測される。
本 研 究の 目 的は ラ ッ トを 用 いて 皮 膚 創傷治癒 におけるMIFの関与を 明らかにす ることである。
ウイ スタ ーラットを 用い、背 部皮膚に 切傷を作 成し継時 的に創傷 部皮膚を採 取し、Reverse transcription‑polymerase chain reaction/Southern blotを用いて mRNAの 発 現 を 検 討 し た 。 同 時 に 血 清 を 採 取 し 血 清 中 のMIF濃 度 をELISAで 計 測 し た 。 あ わ せ て 創 傷 部 位 でMIF蛋 白 の 免 疫 組 織 染 色 を 行 っ た 。Boyden chamberを 用い てMIFの 表 皮 細胞 遊 走能 に 対 する 影 響を 検 討 した 。 さらに皮 下 に 埋 めた スポンジか ら分離、 培養した 線維芽細 胞,いわ ゆる 創 傷部線維芽 細 胞 にお い てMIFの 産 生能 に つい て も検 討した。 またマウ ス背部皮 膚に切傷を 作 成 した 皮 膚創 傷 モ デル に おい て 、 抗MIF抗体投 与の創傷 治癒に対 する効果を
宏 樹
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平 雅
水 原
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清 杉
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授 授
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教 教
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査 査
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主 副
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みた 。 創傷部皮 膚においてMIF mRNAは 増加し、創 傷後3時間と12時間 で二 相性にピ ークがみら れた。同様 に血清中のMIF濃度も創傷後3時間、24時間 とでピー クがみられた。創傷後12時間後の免疫組織染色でMIF蛋白は創傷部 位の表皮 全層にみられた。Boyden chamberを用いた遊走能の検討ではMIFは 表皮細胞の遊走能を著明に亢進した。加えて創傷部位から分離、培養した線維 芽細胞において、LPS刺激により、正常皮膚から分離した線維芽細胞に比べ有 意にMIFの産生能が増加していた。さらにマウス皮膚創傷モデルにおいて、抗 MIF中和抗体投与群はコントロール群に比ペ有意に創傷治癒を遷延させた。こ れらの結果より、MIFは皮膚創傷治癒促進に対して重要な役割を果たしている と考えられた。
公開発表に際し、副査の渡辺雅彦教授から、血清中MIF濃度の上昇はどの細 胞から産生され、どの細胞に作用するのかとの質問、また副査の杉原教授から、
MIFは表皮全眉に発現がみられるが炎症における特有の現象なのかとの質問、
主査の清水教授から今後の臨床応用に際して、MIFの局所投与で創傷治癒を促 進できるのではないかと質問、その他多くの質問があったが、申請者は最新の 情報を混じえ、大概適切な解答をなしえた。
この論文は、サイトカインのーつであるMIFが創傷部位で強く発現し、同時 に表皮細胞の遊走能を増強させることで再上皮化を促進し、創傷治癒全体にお いても、治癒を促進させていることを明らかにした点で高く評価され、今後の、
臨床応用に対する取り組みが期待される。
審査員一同は、これらの成果を高く評価し、申請者が博士(医学)の学位を 受けるのに充分な資格を有するものと判定した。