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ヒト卵胞液における Plasma Kallikrein の分子動態と 卵胞内組織 Plasminogen Activator(tPA) 活性化機構

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 工 藤 隆 之

     学位論文題名

ヒト卵胞液における Plasma Kallikrein の分子動態と 卵胞内組織 Plasminogen Activator(tPA) 活性化機構

学位論文内容の要旨

緒言

  組 織Plasminogen Activator(tPA)ーplasminogen( 以下PLG)‑plas min系 は ,排 卵に 先立 つ 卵 胞 壁 の 脆 弱 化 に 重 要 な 役 割 を 担 う と 考 え ら れ てい る. この うちtPAは ,前 駆体 の1本 鎖型

(sctP A)よ り2本鎖 型(2ctP A)へ の変 換を 受け 活性 化さ れ ることが知られているが,ヒト卵巣 顆 粒 膜 細 胞 で 産 生 さ れ るtPAの 卵 胞 内 活 性 化 機 序 は 未 だ 解 明 さ れ て い な い . こ の機 序に 関連 し て, 本研 究て は, 体外 受精 時 に得 られ たヒ ト卵 胞液 を材 料に ヒトPlasma Kallikrein(hPK) の 分 離 精 製 を 行 い , 精 製 品 を 用 い て ヒ トsctPA活 性 化 能 の 有 無 に つ い て 検 討 し た . 研究材料およぴ 方法

  1.卵胞液hPKの分離精製

  1996年10月 〜 12月 の 期間 に, 北海 道大 学医 学部 附属 病院 産婦 人科 にお いて , 体外 受精 の際 に得られた卵胞 液を材料とした(GnRHa‑hMG‑hCG過排卵刺激周期),

  卵 胞 液 上 清 に6倍 量P BSを 加え て希 釈し ,40%硫 安塩 析に て析 出し た分 画を 脱 塩透 析し た.

こ の 分 画 をDEAE‑cellvlose(DE‑52) 陰イ オン 交換 カ ラム (pH8.5)に 通し ,吸 着 成分 をO〜0.2 M NaCl連 続 濃 度 勾 配 に て 溶 出 し た と こ ろ , カ ラ ム に 非 吸 着 のThr.#1, 吸 着 し0.05M,0.13M NaClに より 溶出 され たElt.#1,Elt.#2の3つのhPK分 画が 分離 され た.Thr. #1はCM‑cellulo‑

se(CM‑52) 陽イ オン 交換 カラ ム (pH8.0)に 吸着 し,NaCI連 続濃度勾配により溶出された.この 分 画 は 更 にbenzamidine‑Sepharose 6Bカ ラ ム を 用 いて 精製 され た.Elt.#1は ,CM‑52カ ラム をpH6.0に平 衡化 した 以外 はThr.#1と同 じ方 法で 精製 され た,Elt .#2は,濃縮後Sephacryl S‑

300カ ラ ム を 用 い た ゲ ル ろ 過 お よ びheparin‑Cellulofineカ ラ ム を 用 い て 精 製 さ れ た .   hPK活 性の 測定 には ,合 成MCA(4‑m et hy】coumaryl‑7‑amide)基質を用いた.検体を基質と pH8.0,37℃ で30分間 反応 させ た後 ,反応停止試薬(pH4.3)を加えて反応を停止した.分光光度 計 を 用 い て 波 長370nmで 励 起 さ れ た 波 長460nmの 螢 光 強 度 を 測 定 し , 遊 離 し た7‑amino‑4‑

methylcoumarin(AMC) 濃 度 に 換 算 し ,1分 間 あ た り の 遊 離AMC濃 度 をhPK活 性 と し た ,   2.各分画の特性の検討

  a)8種 類 のMCA基 質 を 用 い て3分 画 の 基 質 特 異 性 を , ま た ,12種 類 の 蛋 白 分 解 酵素 阻害 剤を 添加して3分画の活性に対する阻害効果を比 較検討した.

  b)Thr.#1,Elt.#1に対しては,還元下,非還元下で10%polyacrylamide gelを用いてSDS ‑P AGEお よ び 銀 染 色 を , ま た, ウサ ギ抗hPK抗体 を用 い たWestern blot法 を行 った .Elt .#2に対 し て は ,2〜  15%gradient native PAGE gelを 用 いてnative PAGEおよ びCoomassie Brill‑

iant Blue(CBB) 染 色 を, そし てウ サギ 抗hPK抗体 およ ぴヒ ツジ 抗ヒ トa2‑macroglobulin(以 下ha 2‑M)抗体 を用いたWest ern  blot法を行った.また,Thr.#1,Elt.#1について,Sephacryl S ‑200カ ラ ム を 用 い て ゲ ル ろ 過 を 行 い ,Elt.#2の 精製 過程 にお ける ゲル ろ過 の 結果 も併 せて 分子量を推定し た.

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  c)3分 画 の 精 製 品 と ヒ トsctPAお よ び 合 成MCA基 質 を 用 い て ,aprotinin存 在 下 で 選 択 的 に tPA活性を測定し,3分画のsctPA活性化能の相違を検討した.

  d)3分 画 の精 製品 に, 種々 の量 のウ サギ 抗hPK抗体 を加 えて 免疫 沈降 を 行っ た.4℃ で17時間 静 置 後10%Staphyrosorbを 加 え , 軽 く 撹拌 しな がら 更に4時間 静置 した 後遠 心分 離し ,上 清の 残 存hPK活 性 を 測 定 し て 対 照 と 比 較 し た.Elt.#2に 対 し て は , ヒ ツ ジ 抗a2‑M抗 体 を 用 い た 免 疫 沈 降 法 を も 行 い , 残 存hPK活 性 に 加 え て 残 存sct PA活 性 化 能 に つ い て も 検 討 し た .   3.単ー卵胞の卵胞液総hPK活性の測定

  1995年9月 〜1996年2月 の 期 間 に ,1.に 示し た方 法で 卵胞 ごと に採 取 ,‑80℃ で保 存さ れた 卵 胞液 (270検体 )の 上清8皿1を用 いて ,1, に準じて総hPK活性を測定し,卵胞液量 との相関の 有無を検討した. また,手術時に採取した自然排卵周期(LH surge前)の 卵胞液(6検体)につい ても,同様にhPK活性を測定した.

  卵 胞 液 の 採 取 に あ た っ て は , 対 象 患 者 か ら 予 め 文 書 で 本 研 究 に 対 す る 同 意 を 得 た . 結果

  1.精製

  Thr.#1,Elt.#1,Elt.#2各々より,specific activity 63.2,54.4,11.8(nm oI/min/mgprote‑

in),収率2.69,1.06,9.42(ゲ。),精製倍率341.85,294.00,48.76(倍)の最終精製品が得られた.

  2.各分画の特性

  3分 画 の 基 質 特 異 性 に は ,peptide末 端 のArg‑X結 合 を 特 異 的 に 切断 する こと など 血漿 由来 のhPKと 共通 の傾 向が 認め られ た, いず れも 活性 はDFP(diisopropylfluorophosphate),leu ‑ peptinに強 く阻 害さ れて おり ,serine proteinase群に属すると考えられた,ただしpolypepti‑

de性阻害剤のElt.#2に対する作用は弱かった,

  非 還 元 下S DS‑P AGEで はThr.#1は 分子 量87kDaの 位置 に,Elt. #1は90kDaの 位置 に単 一の バ ン ド と して 検 出さ れた .こ れら のバ ンド はWestern blot法 でも 検出 さ れた .還 元下 では50k Daの 位 置 に 両 者 共 通 の バ ン ド が 認 め ら れ た .Elt.#2はPAGEで は730kDaの 位置 に単 一の バン ド と し て 検 出 さ れ , こ れ は 抗hPK抗 体 はも とよ り, 抗ぱz‑M抗 体を 用い たWestern blot法 にお いても検出された .ゲルろ過により,Thr.#1,Elt.#1,#2の分子量は各々約80,89,725kDaと推 測 さ れ た .い ず れもin vitroでsctPAを活 性 化し 得た が,Elt.#2の 活性 化能 が最 も高 かっ た.

  Thr.#1,Elt.#1とも,免 疫沈降法により残存したhPK活性は用量依存的に低下した.Elt.#2 に つ い て は 抗hPK抗 体 , 抗 口2‑M抗 体 の い ず れ を 用 い た 場 合 も 残 存hPK活性 は消 失, ある いは 著 明 に 低 下 し た が , 残 存sctPA活 性 化 能に つい ては ,抗 ロ2‑M抗体 の添 加に より 低下 を認 めた ものの,抗hPK抗体を用いた場合は殆ど変化しなかった,

  3.卵胞液量と卵胞液総hPK活性との関連

  個 別 保 存 さ れ た 卵 胞 液270検 体 を 用 い て 測 定 し た 総hPK活 性 は11.56土4.93nmol/ml/min

(m土S D)であ り, 活性 は卵 胞液 量と は相 関 しな かっ た. 自然 排卵 周期 の卵 胞液6検体 の総hPK 活性は9.29土3.18nmol/ml/min(m土SD)であった.

考察

  本研 究で 分離 精製 され た3分 画は ,酵 素化 学的 ,免 疫学 的に は いず れもhPKの性質 を有する.

こ の う ちElt.#1は その 推定 分子 量な どか らfree hPKであ ると ,ま たThr.#1はhPKと 分子 量は 異 な る も の の 機 能 的 に は 同 一 で ,hPKのisomerであ ると 考え られ た. こ のisomerは,hPKとは 荷 電状 態が 異な る, 極端 に塩 基性 の 分子 であ り,hPKのtranscate formであると思わ れる.この isom erが存 在す る生 理的 意義 とし て, 卵胞 内のpH, 荷電 状態 な どが 変動 しても,常にsctPA活 性化能を一定の水準以上に維持できるという点が挙げられる.

  Elt.#2は ,強 カなproteinase inhibitorてあ るh口2‑MとhPKとの 複合 体である, この分画の sctPA活 性 化 能 は3分 画 で 最 も 強 カ で あ っ た が , こ の 分 画 よ り 免 疫沈 降 法でhPKを除 去し ても 同 程 度 のsctPA活 性 化 能 を 認 め た こ と よ り ,hPKと は 異 な るtPA activating enzyme(以 下TA E)の 存 在が 示唆 され る, この 酵素 もま たh口2‑Mと複 合体 を形 成 して いる と考えられる,口2‐ Mと 結 合 し て も な お 活 性 を 示 す 酵 素 は こ れ ま で に 報 告 さ れ て い な い . ヒ ト 卵 胞 内sctPA活 性 化を主導しているのは,このTAEであろう.

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(3)

  卵胞液総hPK活性が卵胞液量と無関係であったことは,卵胞液中hPKは血漿由来であると いう見解に矛盾しない,

  以上より,ヒト卵胞破裂に関与するproteinase cascadeの新しいモデルを作成した,即ち,卵 胞発育とともに血漿中よりhPKおよびそのisomer(以下hPKs),PLG,高分子kininogen(以下 HMWK)が 卵胞 内ヘ 移行 し,TAEととも に蓄 積す る.sctPAはLH surgeに伴い卵胞内ヘ分泌さ れると,速やかにTAE,hPKsにより2ctPAに変換され,PLGを活性化する.生じたplasminは直 接的に,あるいはmatrix metalloproteinasesを介し間接的に卵胞壁を脆弱化し,並行してhP KsはHMWKよりbrady kininを遊離して周囲の血管透過性を亢進させ,血漿成分のさらなる流 入により卵胞容量は増大し,卵胞破裂に至ると考察される.

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学位論文審査の要旨

     学位論文題名

ヒト卵胞液における Plasma Kallikrein の分子動態と 卵胞内組織Plasminogen Activator(tPA) 活性イヒ機構

  組織Plas minogen  Activato r(tP A) ‑plas min ogen‑plas min系は,排卵に先立つ卵胞壁の脆弱 化 に 重 要 な 役 割 を 担 う .tPAは , 前 駆 体 の1本 鎖 型(sctPA)よ り2本鎖 型(2ctPA)への 変換 を 受 け 活 性 化 さ れ る が , ヒ ト 卵 巣 顆 粒膜 細 胞 で 産 生 さ れ るtPAの 卵胞内 活性 化機 序は 未解 明 で ある .本 研究で は, ヒト 卵胞 液を 材料にヒトPlasma Kallikrein (hPK)の分離精製を行い,

ヒトsctPA活性化能について検討した.

  卵 胞 液 上 清 に6倍 量PBSを 加 え ,40% 硫 安 塩 析 に て 析 出 し た 分 画 を 脱 塩 透 析 し た . こ の 分 画 をDEAE‑cellulose(DE‑52)陰 イ オ ン 交 換 カ ラ ム(pH8.5) に 通し ,吸 着成 分を0〜0.2M NaCl連 続 濃 度 勾 配 に て 溶 出 し た とこ ろ , カ ラ ム に 非 吸 着 のThr.#l, 吸 着 し0.05M,0.13M NaClに より 溶出さ れたElt. #1,Elt.#2の3つのhPK分画が分離された.精製の結果,Thr.#l, EJt.#l,Elt.#2各々より,specific activity 63.2,54.4,9.0 (nmol/min/mg protein),収率2.69, 1.06,9.42( % ) , 精 製 倍 率341. 85,294.00,48.76( 倍 ) の 最 終 精 製 品 が 得 ら れ た .   hPK活 性 の 測 定 に は , 合 成MCA(4‑methylcoumaryl‑7‑amide)基 質 を 用 い た . 検 体 を 基 質 とpH8.0,37℃で30分 間反 応さ せた 後, 反応停 止試 薬(pH4.3) を加えて反応を停止した.波 長3 70nmで 励 起 さ れ た 波 長460nmの 螢 光 強 度 を 測 定 し , 遊 離 し た7‑amino‑4‑methyl‑

coumarin (AMC)濃 度 に 換 算 し ,1分 間 あ た り の 遊 離AMC濃 度 をhPK活 性 と し た .   8種 類 のMCA基 質 を 用 い て3分 画 の 基 質 特 異 性 を , ま た ,12種 類 の 蛋 白 分 解 酵 素 阻 害 剤 を 添 加 し て3分 画 の 活 性 に 対 す る 阻 害 効 果 を 比 較 し た 結 果 ,3分 画 の 基 質 特 異 性 に は , p ep tide末 端のArg ‑X結 合を 特異 的に 切断す るこ とな ど血 漿由 来のhPKと共通の傾向が認め ら れ, いずれも活性はDFP(diisopropyfluorophosphate),leupeptinに強く阻害されており,

serine proteinase群に属すると考えられた.ただしpolypeptide性阻害剤のElt.#2に対する作 用は弱かった.

郎 三

征 信

本  

  橋

藤 西

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

   非還元下SDS −PAGE ではThr.#l は分子量87kDa ,Elt. #1 は90kDa の位置に単一のバンドと して検 出さ れた .これらのバンドはWestem blot 法でも検出された.還元下では50kDa の 位置に両者共通のバンドが認めら・れた.Elt.#2 はPAGE では730kDa の位置に単一のバンド として検出され,これは抗hPK 抗体はもとより,抗ぱ2‑M 抗体を用いたWestern blot 法にお いても検出された.ゲルろ過により,3 分画の分子量は各々約80 ,89 ,725kDa と推測され た.

  3 分画 の精 製品と ヒトsctPA および合成MCA 基質を用いて,aprotinin 存在下で選択的に tPA 活性化を測定し,3 分画のsctPA 活性化能の相違を検討したところ,いずれもin vitro で sctPA を活性化し得たが,Elt.#2 の活性化能が最も高かった・

  3 分画の精製品に,ウサギ抗hPK 抗体を加えて免疫沈降を行った.Elt.#2 に対しては,ヒ ツジ抗 a2 ― M 抗体を 用い た免 疫沈降 法を も行 い, 残存hPK 活性に加えて残存sctPA 活性化 能についても検討した.その結果,Thr.#l ,Elt. #1 とも,免疫沈降法により残存したhPK 活性は 用量 依存 的に低下した.Elt.#2 にっいては抗hPK 抗体,抗口2‑M 抗体のいずれを用 いた場 合も 残存 hPK 活性は消失,あるいは著明に低下したが,残存sctPA 活性化能にいヽ ては, 抗a2‑M 抗 体の 添加に より 低下 を認 めたも のの,抗hPK 抗体を用いた場合は殆ど変 化しなかった・

   ヒト 単一 卵胞 の卵胞液総hPK について検討した結果,個別保存された卵胞液270 検体を 用いて 測定 した 総hPK 活性は11.56 土4.93nmol/ml/min(m 土SD) であり,活性は卵胞液量と は相関しなかった・

   分離精製された3 分画は,酵素化学的,免疫学的にはいずれもhPK の性質を有し,Elt. #1 は推定分子量などからfree hPK であると,またThr.#l はhPK と分子量は異なるものの機能 的には同一で,hPK のisomer であると考えられた.゛

  Elt.#2 のsctPA 活性化能は最も強カであったが,この分画より免疫沈降法でhPK を除去し ても同程度のsctPA 活性化能を認めたことより,hPK とは異なるtPA activating enzyme の存 在が示唆された.

   公開発表に際し,石橋教授から,Elt.#l とEJt.#2 でDEAE‑ セルロースの次に用いたカラ

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参照

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