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肺胞

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 山 口 悦 郎

学 位 論 文 題 名

肺胞 T 細胞の増殖刺激に対する反応性と      表面抗原に関する研究

学位論文内容の要旨

I.研究目的

  1979年頃 より 呼吸 器 病学において 盛んに行われるようになっ た気管支肺胞洗浄(bron‑

choalveolar lavage,BAL)は,非侵襲的に肺胞領域の細胞や液性成分に関する情報を得る方 法で,本法により主としてび漫性間質性肺炎に関する多くの知見が得られた。その中で特に肺サ ル コ イ ド ー シ ス で は 最 も 頻 回 にBALが 施 行 さ れ , 病 態 の 解 明 が 大 き く 進 展 し た 。   サルコ イドーシスでは気管支肺胞 洗浄液中(BALF)にCD4陽性のT細胞が増加する。これ は病理組織所見でのりンパ球性胞隔炎を反映するとされており,肺サルコイド―シスにかなり特 徴的な所見であ る。CD4陽性T細胞はいわゆる遅延型免疫反応の効果細胞であるため,このり ンパ球性胞隔炎は肺における肉芽腫形成の潜在的ないし先行的病変であると考えられている。こ のりンパ球集積の機序に関し当初,interleukin・2(IL−2)がそれらの細胞より放出されク ローン性に増殖するという報告がなされた。本研究ではこの知見の再検討に始まり,得られた結 果を敷延して肺 胞T細胞一般の増殖シグナル に対する反応性を検討することを目的とした。

u .対象および方法

@T 細胞のIL −2 産生

  対象はサルコイドーシス患者27名(男8名,女19名)。胸部X線写真上の病期はO期6名,

I期10名,矼期10名,m期1名。末梢血のILー2産生を比較した健常対象者は18名(男12名,

女6名)。これらの対象者にBAL細胞,あるいは末梢血単核球から,ノイラミニダーゼ処理 羊赤血球ロゼ ット法にてT細胞を分離した 。それを2%牛胎児血清(FCS)添加RPMI−1640 培地に浮遊させ,O.2%PHA−P存在下ある|`は非存在下で37℃,5%C02下で48時間培養し,

その培養上清中のIL―2活性 を,IL 2依存性細胞株であるCTLL・2の増殖度を指標として 測定した。

◎リンパ球表面のT細胞抗原受容体(TCR)の発現

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  対象は健常者が6名(男3名,女3名)。サルコイドーシス患者は14名(男5名,女9名冫。

胸部X線写真 上の病 期はO期1名,I期8名,II期5名。BAL細胞あ るいは 末梢血 単核球に aロ 鎖TCRを 認 識 す る抗 体 で あ るFITC標 識TCR―1を 結合さ せ,フ ローサ イトメ 一夕一 に て 陽 性 率 を 求 め た 。TCR十 細 胞 のTCRの 発 現 量 は , 平 均 螢光 強 度 で 評価 し た 。

◎ T細 胞 の 細 胞 内 遊 離 カ ル シ ウ ム イ オ ン 濃 度 ( [Ca2゛ ] i) の 測 定   対象は9名のサルコイドーシス患者(男4名,女5名)。胸部X線写真上の病期はI期4名,

H期5名 。T細 胞に螢光 指示薬 であるFura・2/AMを 取り込 ませ, 励起波 長を切 り替える ことの できる 螢光分 光々度 計を用い ,励起 波長34Dnmと380nmにおける510nmの螢光強度 比 よ り 算 出 し た 。 刺 激 剤 と し てPHA・Pと , 抗CD3抗 体 で あ るT3を 用 い た 。

@リンパ球表面CD45RO抗原の発現の検討

・対象は健常者が5名(男4名,女1名)。サルコイドーシス患者は8名(男5名,女3名)。

胸 部X線 写 真 上 の 病 期 はO期2名 ,I期4名 ,H期2名 。 抗 体 はFITC標 識UCHL・1を 用 い,TCR抗原と同様に解析した。

m.結   果

  サルコイドーシス患者において,無刺激肺胞T細胞によるIL―2産生は認められなかった。一 方PHA刺 激時に は明ら かな11‑2産生が認められたものの,自己末梢血T細胞の産生量に比し て有意に低下していた。肺胞T細胞のIL―2産生量と,サルコイドーシスの胞隔炎の指標のひと っであるBALリンパ球比率との間には,有意の負の相関を認めた。末梢血T細胞のIL,2産生 量には,サルコイドーシス患者と健常者間に差を認めなかった。

  健常者,サルコイドーシス患者ともに肺胞リンパ球ではTCRの陽性率は末梢血リンパ球より 有意に上昇していた。一方同抗原発現量は健常者,サルコイドーシス患者ともに全例で肺胞T細 胞の 螢光強 度が減 弱しており,いわゆるmodulationが認められた。このようなmodulation は特発性間質性肺炎(IIP),膠原病による間質性肺炎,塵肺などの種々の呼吸器疾患ばかりで は な く , ク 口 ー ン 病 , 潰 瘍 性 大 腸 炎 な ど の 肺 外 疾 患 で も 認 め ら れ た 。   サルコイドーシス患者肺胞T細胞の細胞内遊離カルシウムイオン([Ca2゛]i)上昇応答は,

PHA刺激 時には 末梢血T細胞よ りも低 下して いたが,抗CD3抗体刺激では肺胞での応答が亢 進していた。

  健常 者 ,サルコ イドー シス患 者とも にmemoryT細 胞マー カーで あるCD45RO抗 原陽性 率 は , 末 梢 血 リ ン パ 球 に 比 し て 肺 胞 リ ン パ 球 で 全 例 に お い て 高 値 で あ っ た 。

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IV.考案および結語

  今回の検討ではこれまでの報告と異なり,サルコイドーシス肺胞T細胞による無刺激でのIL‑

2産生は確認し得 なかった。またPHA刺激下で のIL・2産生も,末梢血T細胞 より減少してい た。一方肺胞T細 胞のTCRは発現が低下してお り,T細胞が強い抗原刺激を受けた際に認めら れ るい わゆ るmodulation現 象を 示 した 。modulationを 受け たT細胞 はPHAな どの レク チ ン反 応 性が 低下 するとされているので,先 のPHA低反応性はひとっにはmodulationの反映 として解釈できると考えられた。

  肺 胞T細胞 のPHA低 反 応性 は,PHAに対す る[Ca2゛]i上昇応答の面か らも確認された。

一方 , 抗CD3抗 体刺 激で はPHAの 場合 とは 対照的に,肺胞T細胞の[Ca2゛]i上昇応答が末 梢血T細胞より亢 進していた。抗原刺激を受け る前のT細胞はnaiveT細胞と 呼ばれ,抗原刺 激 によ ってCD45RO抗原 陽性 のmemoryT細 胞 に分 化す るが ,こ う した 対照 的な[Ca2゛ ]i 上昇 応 答は ,こ のmemoryT細胞の特性に合 致する。実際肺胞T細胞では 末梢血T細胞に比し て,memoryT細胞が多数を占めた。

  以上よルサルコイドーシス肺胞T細胞は,何らかの抗原刺激下にあることが予想される。しか しな が ら興 味あ ることは,このmodulationとmemoryT細胞の集積はサル コイドーシスばか りではなく,健常 者でも認められたことであ る。従って肺胞腔へのmemoryT細胞の集積は,

常在する塵埃や微生物の抗原刺激によっておこるかナょり普遍的な現象である可能性も考えられ た。 し かし 一方 で,PHA刺激 によ る サルコ イド―シス肺胞T細胞のIL←2産生は,BALリン パ球数が多い,言い換えると肺胞T細胞の集積傾向が強いほど減弱していた。従ってそこには疾 患 の 活 動 性 , な い し 病 態 に よ る 影 響 も 反 映 さ れ て い る と 考 え ら れ た 。   以上より今回の研究では,サルコイド―シスの肺胞T細胞機能の検討に始まって,肺胞T紐胞 一般に当てはまる特徴を明らかにすることができた。一方でサルコイドーシスに特徴的な病態が 重畳されている面も認められた。今後肺胞T細胞の機能的解析を行うに際して,このような二面 性を常に念頭に置く必要がある。

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学位論文審査の要旨

  目的 :サルコイドーシスにおける肺胞T細胞のinterleukin,2(IL・2)産生能の検討と,

そ の 結 果 を 敷 延 し て 肺 胞T細胞 一般 の 増殖 シグ ナル に対 す る反 応性 を検 討 する こと 。   対象・方法:のべ29名の健常者とのべ58名のサルコイドーシス患者。肺胞T細胞は気管支肺胞 洗浄(BAL)によって得た細胞より,ノイラミニダーゼ処理羊赤血球法により分離した。IL ‑ 21 11―2依存 性の 細 胞株 であ るCTLL―2の 増殖 度 で定 量し た。T細胞抗 原受容体(TCR) の発現 強度はフロ―サイトメ一夕ー での平均螢光強度で評価した。memoryT細胞マーカーと してCD45ROの発現比率を同じくフローサイ卜メー夕―で測定した。細胞内遊離カルシウムイ オ ン 濃 度 (ECa2゛ ]i)はFura―2を 螢 光指 示薬 とし て, 螢 光分 光々 度計 で 測定 した 。   結果 : サルコイ ドーシス患者のPHA刺激肺胞T細胞のIL・2産生能と[Ca2゛]i上昇応答 は,自 己末梢血T細胞に比して有意 に低下していた。また肺胞T細胞のIL・2産生量と,BAL リンパ 球比率との間に有意の負の相 関を認めた。一方抗CD3抗体 刺激では,肺胞T細胞での ECa2゛ ]i応答が逆に亢進していた 。このような肺胞T細胞の特徴的反応性は,TCR発現量の 低 下 で あ るmodulationと,CD45RO陽性 のmemoryT細 胞へ の 分化 で説 明で き ると 考え ら れたが,同様な変化は健常者でも認められた。以上より今回の研究は,サルコイドーシス肺胞T 細胞の反応性には疾患特異的な面と,肺胞T細胞に共通する面のふたっが重畳されていることを 明らかにした。

  口頭 発表に際し,皆川教授からdown regulationのメカニズム,ク口一ン病や潰瘍性大腸炎 での同 様な結果の解釈,サルコイドーシスのtriggering factorsにっいて,上出教授よりCa fluxは 質 的現 象か ,memoryTcellの 増加によ るものか,CD2を介する刺激 もあるか,小林 教授か らはサルコイドーシスにおける特異性にっいて,リンパ球のcompartmentalizationに っ いて , 小野 江教 授よ りIL−2receptor,76TCRを 調べ たか ,IL―2の確 認などにっいて 質問があった。申請者は概ね妥当に答えたと思う。

  また 皆 川教 授, 上出 教授 か らは 個別 に審 査を 受 け, 合格 との ご 返事 を頂 いて いる 。   以上,本研究は肺胞T細胞の増殖刺激に対する反応性と表面抗原の特徴を明らかにしたもので,

博士(医学)に相当するものと認めた。

    ―136―

和 紀

義 知

上 川

川 皆

授 授

教 教

査 査

主 副

参照

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