博 士 ( 農 学 ) 村 上 泰 展
学 位 論 文 題 名
「天然物由来新規有用薬理活性物質に関する研究」
学位論文内容の要旨
近年ヒトゲノム情報の解析 が進み、分子レベルでの疾病の要因解明の速度はますます 加速している。また種々の医 薬品候補物質を探索するスピードも飛躍的に増加し、多種 多 様 な 医 薬 品候 補物 質が さま ざま な生 物試 験を 通し てス クリ ーニ ン グさ れて いる 。 本研究では、日本人の死因 の上位を占める、がん、脳・心疾患および近年その患者数 が増大しているアレルギー領 域における治療薬探索を目的としたアッセイ系を構築し、
合 成医 薬品 にな いユ ニー クな 医薬 品リ ード化合物の探索源とし て重要な位置を占める 天然物サンプル(微生物代謝 産物や海洋生物の抽出物)からのスクリーニングを実施し た。その結果、それぞれの領 域で新規薬理活性物質を取得することができた。以下にそ の結果を要約する。.
H輩 H3C
RoridinL(1) RoridinM(2) VerrucarinM(3)
これ らはtrichothecene系抗生物質に 属する物質であるが、trichothecene環部分の3 位 に水 酸基 を有 する という点で、初めてのカテゴリーに属する化合 物である。この3位 の 水 酸 基 の 相 対 立 体 構 造 はNOESYス ベ ク ト ル に よ るNOE解 析 とJHH値 の 検 討 に よ り 決定した。
化合 物1,2お よび3は それ ぞ れ3.O,8.7およ び9.0 nMという極めて低い濃度のICso 値 で自 血病 細胞P388に対 して 増殖 抑制 活性 を示 した 。ま た1の 各種 固形 癌細胞に対す る増殖抑制作用を検討した結 果、予想通り自血病細胞に対してより強い増殖抑制活性を 示すことが明らかとなった。 従って自血病に選択的に作用する新規抗腫瘍物質を得るこ と がで きた と考 えら れる 。今 後血vivoモデ ルに おける有効性を検討する予定である。
(2) 新規 抗 酸化 物質formobactin
活 性酸 素による傷害が心臓や脳などの虚血性疾患、 動脈硬化、糖尿病、炎症、リウマ
― …
… … 織 『
― …
… 『
… …
チ、腎不全、自己免疫疾患、癌といった各種の疾患の発症、進展に関与することが示唆 されている。中でも血液の供給が低下した虚血後の組織に血流を再開することによって、
多量の活性酸素の生成が惹起され著しい組織傷害へと導かれることが明らかになり、本 現象は虚血再灌流傷害として臨床の場で注目を集めている。
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学位論文審査の要旨
主 査 教 授 吉 原 照 彦 副 査 教 授 田 原 哲 士 副 査 教 授 葛 西 隆 則 副 査 教 授 佐 野 嘉 拓
学 位 論 文 題 名
「天然物由来新規有用薬理活性物質に関する研究」
近年ヒトゲノム情報の解析が進み、分子レベルでの疾 病の要因解明の速度はますます 加速している。また種々の医薬品候補物質を探索するス ピードも飛躍的に増加し、多種 多 様 な医 薬品 候補 物質 がさ まざ まな 生物 試験 を通 して スク リ ーニ ング され てい る。
本研究では、日本人の死因の上位を占める、がん、脳 ・心疾患および近年その患者数 が増大しているアレルギー領域における治療薬探索を目 的としたアッセイ系を構築し、
合成 医薬 品に ない ユニ ーク な医 薬品 リード化合物の探索源として重要な位置を占める 天然物サンプルからのスクリーニングを実施した。その 結果、それぞれの領域で新規薬 理活性物質を取得することができた。
(1)新規抗腫 瘍抗生物質roridinL,Mおよ びverrucarinM
各種の腫瘍細胞に対する増殖抑制活性を パネル評価することで、特定の癌種に対して 選択 的に 作用 する 物質 を探 索 した 。そ の結 果、 カビMyrothecium verrucar湧cm04株 が白血病細胞に対して選択的に作用する物 質を生産していることを見出し、活性物質を 単離した。活性物質であるrorimnL(1),M(2)およびverrucarinM(3)の平面構造は 各種2D‐NMR分 光法を用いて決定した。
H318 H3C
RoridinL(1) RoridinM(2) VerrucarinM(3)
これらはtrichothecene環部分の・3位に水酸基を有するという点で 、初めてのカテゴ リーに属する 化合物である。
化合 物1,2お よび3はそ れぞ れ3.0,8.7お よぴ9.0 nMとい う極 めて低い濃度のICso 値 で自 血病 細胞P388に対 し て増 殖抑 制活 性を 示し た。 また1の各 種固形癌細胞に対す る増殖抑制作 用を検討した結果、予想通り白血病細胞に対してより強 い増殖抑制活性を 示すことが明 らかとなった。従って自血病に選択的に作用する新規抗 腫瘍物質を得るこ とができたと 考えられる。
(2)新規抗酸化物質formob actin
活性酸素による傷害が心臓や脳などの虚血性疾患、動脈硬化、糖尿病といった各種の 疾患の発症、進展に関与することが示唆されている。
以上のように本論文は天然物由来新規有用薬理物質について多くの新知見を得てお り、学術的並びに実用的に高く評価される。よって、審査員一同は村上泰展が博士(農 学)の学位を受けるのに十分な資格を有するものと認めた。
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