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畑作経営の経営管理問題に関する実証的研究

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 佐 々 木 東 一

学 位 論 文 題 名

畑作経営の経営管理問題に関する実証的研究

ー 十 勝 地域 の 畑作 経 営 を対 象として一

学位論文内容の要旨

  本 論 文 は8章 か ら な る 総 頁 数 198ぺ ― ジ の 和 文 論 文 で あ る 。 図13、 表64 和 文58お よ び 英 文3の 引 用 文 献 ・ 参 考 文 献 を 含 み 、 他 に 参 考 論 文12編 が 添 え られてい る。

  本 論 文は 、 大 規槙 農 業が 展 開 して い る北 海 道 十勝 地 域を 対 象 とし て 、 畑作 経 営 の合 理 的 な組 織 展開 の あ り方 と そ こに お ける 経 営 管理 に かか わ る 主要 な 課題 を 実 証的に究 明するこ とを目的 としてい る。

  序章では 、経営管 理に関す る既往の 研究成果 を・踏まえて経営管理領域を整理し、

経営 管 理 の課 題 とそ の 解 明の 重 要 性を 指 摘し て い る。 大 規横 畑 作 経営 に おけ る 経 営管 理 の 分析 体 系に は 経 営成 果 を 測る 収 益性 分 析 と財 務 状態 を 測 る安 全 性分 析 の 観点 が 含 まれ る 必要 が あ ると し 、 これ ら の視 点 に 基づ ぃ た本 研 究 の分 析 鉢系 と そ の分析視 角を整序 している 。

  1章 で は 、 十 勝 地 域 に お け る 畑 作農 業 と 畑作 経 営 の動 向 分析 か ら 、耕 地 面積 規模 の 拡 大お よ び機 械 化 の進 展 に 伴っ て 資本 投 下 額が 著 しく 増 加 して い るこ と 、 投下 資 本 の多 く が借 入 金 に依 存 し てい る こと な ど によ る 問題 点 を 摘出 し てい る 。 さらに、 畑作農家 の実態調 査(調査 戸数:6戸 、調査期間 :  1973〜88年) による分 析か ら 、 耕地 面 積規 模 が 大き い 農 家ほ ど 機械 投 資 額が 多 くな っ て おり 、 機械 所 有 に関して 「大規模 利.閙の 有手H性」 が必ずし も認められ ないこと を明らか にレてい る。

  2章 で は 、 機 械 資 本 の 低 減 に 鰭 びっ く 機 械更 新 の 適切 な 使用 年 数 に対 す る考 え方 に っ いて 考 察し て い る。 ト ラ ク夕 利 用の 実 態 調査結 果(分析台 数:136台) か ら、 所 有 形態 馴 によ る 平 均使 用 年 数は 、 個人 有 が10.1年、 共 有が88年 で あり 、 個人 有 は 十分 な 保守 管 理 を行 う こ とに よ って 共 有 の年 数 を上 回 っ てい る こと 、 ト ラク タ の 実際 の 更新 年 数 は平 均 で9.6年で あ る が「 寿 命」 に よ る年 数 は18.O年 で ある こ と 、な ど を明 ら か にし て い る。 更 新分 析 法 とし て のMAPI方 式 に よっ て 求め

(2)

た卜ラクタ の経済合理的な使用年数は19〜20年と算出され、畑作農家の物理的対 応に よ るト ラ クタ の 更新 行 動 は経 済 合理 的 であ る こと を 明ら かにしてい る。

  第3章で は 、地 域 にお け る主 要作物とし てのてん葉 作の収穫作 業体系には 、     ―、

「タッパ・デガ」、  「ハーベスタ」および「自走式ハーベスタ」と、それぞれ機 種内容が異 なる3つの体系が 現存してい ることから、機種の違いに基づく作業依 系の経営経 済的な評価について考察している。経営収益の拡大を考慮した線形計 画法による 評価分析から、一定の耕地面積規模において期待される最大の農業所 得額に対応した体系は、15ha規模ではタ`、′バ・デガ依系の経営が優位で、20〜30 ha規模ではハ ーベスタ体系の経営が、25〜35ha規模では自走式ハ―ベスタ体系の 経営が優位 であることをとらえ、地域における平均的な経営組織のもとではハ―

ベ ス タ 体 系 が 最 も 合 理 的 な 鉢 系 で あ る こ と を 明 ら か に し て い る 。   第4章では、経営条件の変化に対して新たな経営組織が形成されてしヽることか ら、経営を取り巻く外部条件の変化に対応した最適を経営組織(作物の組合わせ〕

のあり方を 、与件変化 線形計画法 (Parametric Linear Programming)によるモ デル分析を 通して考察している。耕地面積規模を不定とした分析結果から、耕地 面積規模の変化に対するてん菜作の経営的性格jま、面積規模が小さい場合には優 先的に選択 されて高い作付割合を示すが、面積規模がほぽ30ha規模以上になると 作付割合は低下し基幹作物,としての位置が弱まることを明らかにしている。また、

てん菜作の 価格(収益性)を不定とした分析からてん菜作の規範的供給関数を求 め、どの耕地面積規模段階においても現行価格水準(1. 89万円/tア以下ですでに 非弾力的と なることを明らかにしている。さらに、てん菜作と大豆作の価格を不 定とした価 格図(Price maD)による 経営組織変 化の分析か ら、価格変 化に対し て適切でな い作物構成をとった場合、どの組織においても経営収益の絶対額は低 下することを示唆している。

  第5童では、農家財務に負担をおよぼさない経済合理的な投資行動のあり方を、

長期の経営 計画を考慮した逐次線形計画法(Recursive Linear Programming)に よるモデル 分析(計画期間: 10年)を通して考察している。機械の更新年数を8 年とすると、有利に展開する投資臺頁は、「2、 000万円」の長期負債がある場合は L:ユ00万円(175万円/年)まで、「3 000万円」の場合は1,000万円(125万円/年)

までであり 、そ以上の投資額になると農家経済余剰はマイナスとなることを明ら かにしてい る。さらに、モデル分析の結果を踏まえて実態農家の投資行動を検討 し、経営の 収益水準の大きさに対応した行動をとっていることから経済的に妥当 であることを確認している。

  第6章 では、経営 形態の変化 に対応した 目標収益の実現と財務維持を目的とし     ‑ 449―

(3)

た経営管理領域のあり方について考察し、大規模畑作経営の多くは他人資本への 依存によって投下資本額を増大させていることから、資金調達とその運用にかか わる資金管理のあり方が大きな問題となっていることを示唆している。さらに、

耕 地面積規模 が異なる畑 作農家(A農家:

22ha

、E農家:

34ha

)を対象とした収 益性分析から、収益性指標(農業所得、農業純収益、資本収益率など)のとらえ 方によって農家間に相違があることを明らかにしている。とくに、資本集約的な 大規模経営へと大きく変化するほどに、その収益目標は、「農業所得→家族労働 報酬→農業資本純収益→経営利潤」としだいに企業的な性格を強めてくることを 示唆している。

  

終 章は、第1章から第

6

章ま での分析・ 検討を総括し、十勝畑作農家の多くが 資本集約的経営としての性格を強め、その経営特性から投下資本に対する収益性 の向上いかんが問題となり、そのための管理対応としてとくに機械利用のあり方 および組織形成のあり方が重要であることを指摘している。さらに、今後におい て弦一層の規模拡大が想定されることから、規模拡大に対応した作物選択を中心 とする経営組織化と規模拡大に伴う機械装備のあり方など、新たな経営管理にか かわる問題が生じてくることを明らかにしている。

  

以上のように、本研究はこれまで比較的等閑視 されてきた経営管理の問題につ いて、大規模畑作農業が展開している十勝地域の畑作経営を対象として、経営管 理にかかわる主要な問題を取り上げ、それを実証的に究明した研究であり、その 方法として、経営分析および経営計画の視角から問題を解明しており、学術的に は今後の農業経営管理の研究に対して新たな境地を切り開くものである。さらに、

本研究は農業経営発展のための経営組織の具体的展開を提示している点で、営農 指導などの実際界にも貢献するところが大きい。

450 ‑

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学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

七戸 土井 太田原 黒河

学 位 論 文 題 名

長生 時久 高昭     

畑作 経営の経営管理問題に関する実証的研究

ー 十 勝 地 域 の 畑 作 経 営 を 対 象 と し て ―

  本 論 文 は 8章 か ら な る 総 頁 数198ぺ ― ジ の 和 文 論 文 で あ る 。 図13、 表64 和 文58お よ び 英 文 3の 引 用 文 献 ・ 参 考 文 献 を 含 み 、 他 に 参 考 諭 文12纏 が 添 え ら れ て い る 。

  本 論 文 は 、 わ が 国 で も 最 も 規 模 の 大 き い 畑 作 農 業 が 展 開 し て い る 北 海 道 十 勝 地 域 を 対 象 と し て 、 経 営 規 模 の 拡 大 に 伴 っ て 重 大 な 課 題 と を っ て き て い る 経 営 管 理 の 諸 問 題 、 と り わ け 経 営 の 安 定 性 と 収 益 拡 大 の 可 能 性 、 を 多 側 面 に 亘 っ て 実 証 的 に 究 明 す る こ と を 目 的 と し て い る 。 序 章 で は 、 経 営 成 果 を 測 る 収 益 性 分 析 と 財 務 状 態 を 測 る 安 全 性 分 析 の 視 点 に 基 づ い た 本 研 究 の 分 析 体 系 と そ の 分 析 視 角 を 整 序 し て い る 。 第1章 で は 、 十 勝 地 域 に お け る 畑 作 農 糞 の 動 向 分 析 か ら 、 耕 地 面 積 規 模 の 拡 大 お よ び 機 械 化 の 進 展 に 伴 っ て 資 本 投 下 額 が 著 し く 増 加 し て い る こ と に よ る 問 題 点 を 摘 出 し 、15年 間 に 亘 る 畑 作 農 家 の 継 続 的 な 実 態 調 査 結 果 か ら 、 耕 地 面 積 規 模 が 大 き い 農 家 ほ ど 機 械 投 資 額 が 多 い こ と を 明 ら か に し て い る 。 第2章 で は 、 卜 ラ ク 夕 利 用 の 実 態 調 査 結 果 か ら 、 ト ラ ク タ の 実 際 の 更 新 年 数 は 平 均 で96年 で あ る が 、 「 寿 命 」 に よ る 年 数 は18.0年 で あ り 、 更 新 分 析 法 と し て のMAPI方 式 に よ っ て 求 め た ト ラ ク タ の 経 済 合 理 的 な 使 用 年 妻 叟 は1920年 で あ る こ と を 算 出 し て い る 。 第3章 で は 、 て ん 菜 作 の 収 穫 作 糞 鉢 系 に そ れ ぞ れ 機 種 内 容 が 異 な る3っ の 体 系 が 現 存 し て い る こ と か ら 、 機 種 の 違 い に 基 づ く 作 業 体 系 の 経 営 経 済 的 な 評 価 を も と に し た 線 形 計 画 法 に よ る 分 析 か ら 、 一 定 の 耕 地 面 積 規 模 に お け る 最 大 の 農 業 所 得 額 に 対 応 し た 鉢 系 は 、15ha規 模 で は タ ッ バ ・ デ ガ 依 系 の 経 営 が 、2030ha

451

(5)

槙ではハーベスタ体系の経営が、25〜35ha規模では自走式ハーベスタ体系の経営 が優位であることを明らかにしている。

  

4

章で は、経営の 外部条件の変化に対応した最適な経営組織(作物の組合わ せ〕のあり 方を、与件 変化線形計画法(Parametric Linear Programmlng)によ るモデル分析を通して考察して、耕地面積規模の変化に対するてん菜作の経営的 性格は、面積規模が小さい場合には高い作付割合を示すが、面積規模がほぼ30ha 規模以上になると作付割合は低下し基幹作物としての位置が弱まること、さらに、

てん菜作と 大豆作の価 格を不定とした価格図(

Price map

)による経営組織変化 の分析から、価格変化に対して適切でない作物構成をとった場合、どの組織にお いても経営 収益の絶対 額は低下すること、を明らかにしている。第

5

章では、経 済合理的な機械投資行動のあり方を、長期の経営計画を考慮した逐次線形計画法

(Recursive Linear Programming)によるモデル分析(計画期間:10年)を通し て考察し、機械の更新年数を8年とすると、有利に展開する投資額は、「2. 000万 円」の長期負債がある場合は

1

,400万円(175万円/年)までっ「37000万円」の場 合は

1

,000万円(125万円

/

年)までであることを明らかにしている。第6章では、

経営形態の変化に対応した目漂収益の実現と財務睾隹持を目的とした経営管理領域 のあり方について考察し、大規模畑作経営の多くは他人資本への依存によって投 下資本額を増大させていることから、資金調達とその運用にかかわる資金管理の あり方が大きな問題となっていることを示唆している。

  

終章は、以上の分析・検討を総括し、十勝畑作農家の多くが資本集約的経営と しての性格を強め、その経営特性から投下資本に対する収益性の向上いかんが問 題となり、そのための管理対応としてとくに鑓械利用のあり方および組織形成の あり方が重要となっていることを指摘している。

  

以上のように、本研究はこれまで比較的等閑視されてきた経営管理の問題につ いて、大規模畑作農家の実状に即して主要を問題を体系的に取り上げ、克明な実 態調査に基づく的確な計教設定によって、これまで具依的に提示されることのな かった経営管理指標をはじめて明確に示した実証的研究であり、学術的には今後 の農業経営管理の研究に対して新たな墳地を切り開くものである。さらに、営農 指導などの実際界にも貢献するところが大きい。よって審査員一同は、別に行っ た学力確認試験の結果と合わせて、本論文の提出者佐々木東一は博士(農学〕の 学位を受けるのに十分な資格があるものと認定した。

− ・452 ‑

参照

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